説明

ポリマー套管及びケーブル終端接続部

【課題】ヒートサイクルにより遮蔽金具と導電層が離れた場合であっても、遮蔽金具と導電層とを電気的に接続することができ、部分放電の発生を防ぐことができるポリマー套管及びケーブル終端接続部を提供すること。
【解決手段】ポリマー套管100は、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面に配設され、上端部が遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に取付けられる環状の下部金具160と、下部金具160の上端部の内径角部に、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とに向かって開口する環状の溝部163と、溝部163に配設され、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に密着する導電性Oリング170とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー套管及びケーブル終端接続部に係り、詳細には、電力ケーブルの気中終端接続部又はブッシングに用いられるポリマー套管及びポリマー套管を用いたケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、套管の軽量化、スリム化、縮小化、套管種類の共通化及び作業工程の簡略化などを図る観点から、エポキシブッシング等の絶縁体の表面にシリコーンゴム等のポリマー被覆体を直接モールドした完全乾式のポリマー套管が使用されている。
【0003】
特許文献1には、電力ケーブルの気中終端に使用されるポリマー套管を用いたケーブル終端接続部が開示されている。特許文献1記載のケーブル終端接続部は、ポリマー套管とケーブル端末部とから構成されている。ポリマー套管は、中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル受容口を有する硬質の絶縁筒と、絶縁筒の外周に設けられ、外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体と、絶縁筒の周面から外方に突出されたフランジ部を有する支持金具とを備えている。ポリマー被覆体は、支持金具よりも上位に位置され、ケーブル受容口は支持金具よりも下位に位置されている。絶縁筒の下端は、中間金具に収容される。中間金具内部には、絶縁筒の底面部に密着するOリングが嵌め込まれる。
【0004】
特許文献2には、支持碍子を使用せずにケーブル終端接続部を組み立てることができるポリマー套管が開示されている。特許文献2記載のポリマー套管は、導体引出棒の外周に設けられた固体絶縁体と、固体絶縁体の外周に設けられたポリマー被覆体と、ポリマー被覆体の外周に長手方向に離間して設けられた多数個の笠状の襞部とを備えている。固体絶縁体は、大径固体絶縁体と小径固体絶縁体とを有し、その連設部分には環状の取付金具が埋設・固定され、小径固体絶縁体の取付金具の近傍の外周には電界緩和用の埋込金具が埋設されている。また、大径固体絶縁体の下端部近傍の外周には、銀ペイントの塗布層などからなる導電層が設けられ、この導電層の外周にはシリコーンゴムなどからなる絶縁層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−33899号公報
【特許文献2】特開2007−103228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のポリマー套管にあっては、エポキシブッシングの外周に銀ペイント等の導電塗料の塗布層などからなる導電層を、遮蔽金具(特許文献1の支持金具に相当、特許文献2の取付金具及び埋込金具に相当)の下面に跨って形成することにより、遮蔽金具と電気的に接続していた。例えば、特許文献2記載のポリマー套管では、大径固体絶縁体に形成された導電層は、その端部のみが取付金具(遮蔽金具)に電気的に接続されている。このため、使用中のヒートサイクルにより、エポキシブッシングの外周から遮蔽金具(取付金具)に跨って形成したつなぎの部分(エポキシブッシング外周と遮蔽金具(取付金具)とが接する部分)において、導電層が剥離するおそれがある。導電層が剥離することにより、ひいては導電層と遮蔽金具(取付金具)との電気的接触が離れてしまうことがありうる。遮蔽金具と導電層が離れた場合、導電層が電気的に浮いて部分放電が発生するおそれがある。また、導電層を導電塗料の塗布ではなく、金属蒸着などで形成した場合も同様の問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ヒートサイクルにより遮蔽金具と導電層とが離れた場合であっても、遮蔽金具と導電層とを電気的に接続することができ、部分放電の発生を防ぐことができるポリマー套管及びケーブル終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリマー套管は、高電圧に接続される導体を先端部に有する硬質の絶縁筒と前記絶縁筒に埋設される埋込部と該絶縁筒の周面から半径方向外方に突出したフランジ部とを有する遮蔽金具と、前記遮蔽金具よりも下方部位の前記絶縁筒の外周面に導電性材料により形成された導電層と、前記導電層が形成された前記絶縁筒の外周面に配設され、上端部が前記フランジ部の下端面に取付けられる環状の下部金具とを備えるポリマー套管であって、前記下部金具の上端部の内径角部に、前記導電層が形成された前記絶縁筒の外周面と前記遮蔽金具の前記フランジ部の下端面とに向かって開口する環状の溝部と、前記溝部に配設される導電性Oリングと、を備える構成を採る。
【0009】
本発明のケーブル終端接続部は、上記構成のポリマー套管の絶縁筒の下端部にケーブル端末の受容口を有し、ケーブル端末の受容口に、ケーブル端末が装着されている構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用中のヒートサイクルにより、導電層が絶縁筒の外周と遮蔽金具とのつなぎの部分で剥離し、遮蔽金具と導電層との電気的接触が離れた場合であっても、遮蔽金具と導電層とを電気的に接続することができ、部分放電の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図
【図2】上記実施の形態に係るポリマー套管の構成を示す部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るポリマー套管の構成を示す部分断面図、図2は、図1のポリマー套管の部分拡大断面図である。本実施の形態は、先端部は架空線や引込線など高電圧に接続され、下端部に電力ケーブルの端末を接続するための気中終端接続部に適用した例である。
【0014】
以下の説明において、内部導体、絶縁筒及び遮蔽金具の「先端部」とは、高圧側をいい、図中では上方向に相当し、また、内部導体、絶縁筒、及び遮蔽金具の「下端部」とは、低圧側をいい、図中では下方向に相当する。
【0015】
図1に示すように、ポリマー套管100は、中心に高電圧に接続される導体としての導体引出棒110を有し、下端部にケーブル端末の受容口190を有する硬質の絶縁筒120と、絶縁筒120の外周に設けられ、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体130とを備える。
【0016】
導体引出棒110は、銅若しくは銅合金、又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金等の通電に適した金属製の棒体で形成されている。
【0017】
導体引出棒110の先端部は、絶縁筒120の先端部から突出されており、硬質の絶縁筒の先端部に、高電圧に接続される導体を有した構造となっている。また導体引出棒110の下端部には導体挿入孔110aが設けられている。導体挿入孔110aの奥壁の中央部分には、円柱状のボス110bが開口部に向かって導体挿入孔110aと同心状に突設されている。ボス110bの外周には環状の凹溝110cが設けられている。凹溝110cには、導体引出棒110に接続端子を引き留めるためのチューリップコンタクト115が取り付けられる。チューリップコンタクト115は、円形に配列した複数個のフィンガー接触子を有するリング状接触子115aと、リング状接触子115aの上下外周に離間して配設された一対のガータースプリング115b,115cとを有する。
【0018】
絶縁筒120は、導体引出棒110を軸心に配置させた固体絶縁体であり、導体引出棒110外周にモールドにより一体的に形成される。絶縁筒120は、機械的強度の高い材料、例えばエポキシ樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの硬質プラスチック樹脂で形成される。
【0019】
絶縁筒120は、導体引出棒110の下方部位の外周面、すなわち導体挿入孔110aと対応する部分の外周面に設けられる大径絶縁筒121と、この大径絶縁筒121の上部に連設され、導体引出棒110の先端部を除く部分の外周面に設けられる小径絶縁筒122とを備える。
【0020】
大径絶縁筒121の下端部には、ケーブル端末部のストレスコーン(不図示)を受容するコーン状の受容口190が設けられており、この受容口190は導体引出棒110の導体挿入孔110aと連通している。なお、本実施の形態では、導体挿入孔110aと対応する部分を小径絶縁筒121よりも大径化しているが、この部分を小径絶縁筒122と同径にしてもよい。
【0021】
ポリマー被覆体130は、機器の外部(気中)に配置され、電気絶縁性及び耐候性を有し、電気絶縁性及び耐候性に優れた材料、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子絶縁材料により形成される。
【0022】
ポリマー被覆体130は、小径絶縁筒122の外周面に設けられ、その外周面には多数個の襞部130aがポリマー被覆体130の長手方向に沿って離間して形成されている。襞部130aは、高電圧側である導体引出棒110の上端部と、接地側である後述する下部金具160とが閃絡することを防止するため、ポリマー被覆体130の表面漏洩距離を確保する目的で設けられている。図1では、襞部130aは、大径襞部と小径襞部とが交互に設けられている。
【0023】
ポリマー套管100は、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122の連設部分に電界緩和用の環状の遮蔽金具140を備える。
【0024】
遮蔽金具140は、絶縁筒120の大径絶縁筒121と小径絶縁筒122との連設部に外表面のみを露出するように埋設される筒状部141と、筒状部141の内側上端部に筒状部141と同心状に連設され、上端部を小径絶縁筒122側に向けて同心状に埋設される円筒部142と、筒状部141の周面から半径方向外方に突出したフランジ部143とを有する。上記筒状部141及び円筒部142は、ポリマー被覆体130の下方部位の絶縁筒120に埋設される埋込部を形成する。本実施の形態では、フランジ部143の内径は、図1では小径絶縁筒122の外径と略同径に形成されている。
【0025】
ポリマー套管100は、遮蔽金具140よりも下方部位の絶縁筒120の外周面に導電層150を備える。
【0026】
導電層150は、大径絶縁筒121の外面に、導電性材料として銀ペイントなどの導電塗料を塗布して形成される。導電層150の形成により、大径絶縁筒121表面を等電位とし、電界を一定に保つことができる。導電層150は、大径絶縁筒121の、遮蔽金具140部以外の外面を覆い、且つ遮蔽金具140のフランジ部143の下面の一部領域まで延びて形成される。大径絶縁筒121の外周面の導電層150は、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に接触し、電気的に接続されている。ここでは、導電層150は大径絶縁筒121の外面から下端面に延びて形成されている。
【0027】
ポリマー套管100は、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面に配設され、上端部がフランジ部143の下端面に取付けられる環状の下部金具160を備える。
【0028】
下部金具160は、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面を囲繞し、上端部が遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に、締付ボルト181により固定される。
【0029】
下部金具160は、大径絶縁筒121の外周面を覆って大径絶縁筒121を保護する筒部161と、筒部161の上端部位置から径方向外方に向けて延出される固定フランジ部162と、大径絶縁筒121の外周面の導電層150と遮蔽金具140の底部との双方に接触するように配設された導電性Oリング170を収納する溝部163とを有する。
【0030】
また、下部金具160は、筒部161内部の下端面に導電層150と電気的に接触する導電性Oリング191を収納する溝部164を有する。
【0031】
図2に示すように、溝部163は、下部金具160の上端部の内径角部に、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とに向かって開口する。
【0032】
溝部163は、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とが直交する筒部161の上端部位置の角部(固定フランジ部162の内周面の端部)において、筒部161の上端部位置の角部を断面L字形状に切り欠くように形成される。このため、断面L字形状の環状の溝部163は、一方の溝面が、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面に向かって開口し、他方の溝面が遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に向かって開口する。
【0033】
溝部163は、導電性Oリング170を溝部163に収納した場合、収納した導電性Oリング170が、大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に弾性変形しながら密着可能な溝深さに形成する。
【0034】
溝部163は、溝部163に収納した導電性Oリング170を、大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に密着させる形状であればよく、断面L字形状には限定されない。例えば、この溝部163は、曲面の凹溝、又はテーパ面形状であってもよい。但し、本実施の形態で採用した断面L字形状の溝部163は、大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方において、その両端面で導電性Oリング170を適度に押圧することで導電性Oリング170の密着性を高めることができる。また、断面L字形状の溝部163は、凹溝などに比べ切削加工が容易である。また、導電性Oリング170を溝部163に嵌着する組立作業も容易で、且つ組立の際の導電性Oリング170の配置ズレなども発生しにくい効果がある。
【0035】
ポリマー套管100は、溝部163に配設され、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に密着する導電性Oリング170を備える。
【0036】
導電性Oリング170は、シリコーンゴム又はEPゴムにカーボンを混入して導電性を持たせた導電性弾性リングである。
【0037】
導電性Oリング170は、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に密着した状態で配置されることになる。したがって、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面と下部金具160の固定フランジ部162の上端面との間の気密性の確保に加えて、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との間の気密性を確保することができる。この二面に亘るシール機能により、外部から内方中心への水の浸入をより確実に防止することができる。
【0038】
さらに、導電性Oリング170は、上記気密性を確保するシール機能に加え、以下の導電性機能を併せ持つ。
【0039】
図2破線に示すように、大径絶縁筒121の外面には、銀ペイントなどの導電性塗料の塗布により導電層150が形成されている。ここで、大径絶縁筒121の外面の導電層150のうち、大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とが直交する部分の導電層150に着目する。上記直交部分において、大径絶縁筒121の外周面の導電層150は、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に接触し、両者は電気的に接続されている。すなわち、大径絶縁筒121の外周面の導電層150は、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面において、その端部のみが直接接触している。因みに、従来例では、エポキシブッシングの導電層と下部金具とは、導電層の端部のみの接触により電気的に接続されていた。
【0040】
本実施の形態では、溝部163に配設された導電性Oリング170は、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方の面に密着する。このため、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とは、導電性Oリング170を介して電気的に接触され、導電層150と遮蔽金具140とを同電位に保持することができる。大径絶縁筒121の外周面の導電層150の端部と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との直接接続に、さらに導電性Oリング170を介した大径絶縁筒121の外周面の導電層150と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との密着による電気的接続が加わることになる。したがって、例えば使用中のヒートサイクルにより遮蔽金具140と導電層150とが離れることがあっても、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とは、導電性Oリング170を介して常に同電位に保たれる。その結果、遮蔽金具140と導電層150との間が電気的に浮いた状態となることがなく、部分放電の発生を防止することができる。
【0041】
導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との間で、良好な気密性及び導電性機能を確保するためには、導電性Oリング170が適度に弾性変形しながら、導電性Oリング170が面接触により両面に密着することが好ましい。この観点から、導電性Oリング170の外径寸法及び溝部163の溝深さが決められる。なお、導電性Oリング170を過剰に弾性変形させることは、導電性Oリング170の劣化につながり、シール機能が得られず、また導電性Oリング170の組立作業に手間取ることになる。
【0042】
本実施の形態では、上記溝部163に配設された導電性Oリング170に加えて、下部金具160の溝部164に、下部ブッシング121Aの底面部に密着する導電性Oリング191が取付けられる。
【0043】
導電性Oリング191は、導電性シール部材であり、導電性パッキンでもよい。導電性Oリング191は、ケーブル端末側の気密性を確保するとともに、外部から内部への水の浸入を防止するシール機能と、下部金具160と下部ブッシング121Aの底面部に形成された導電層150とを電気的に接続して、より確実に導電層150と下部金具160とを電気的に接触させる導電性機能とを併せ持つ。
【0044】
このように、ポリマー套管100を用いた完全乾式の気中終端接続部の構成上、下部金具160の上端部の内径角部の溝部163に配設される導電性Oリング170と、下部金具160内部の下端面の溝部164に配設される導電性Oリング191との、2つの導電性シール部材を有している。
【0045】
以下、上述のように構成されたポリマー套管100を用いた完全乾式の気中終端接続部について説明する。
【0046】
絶縁筒120の大径絶縁筒121は、エポキシ樹脂等の硬質の絶縁体からなり、導体引出棒110と共に一体にモールドされ、気中終端接続部における下部ブッシング121Aを構成する。大径絶縁筒121の外面、すなわち下部ブッシング121Aの外面には銀ペイントなどの導電性塗料が塗布され導電層150が形成されている。下部ブッシング121Aは、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に取り付けられる下部金具160に収容される。
【0047】
下部ブッシング121Aの受容口190の開口部、すなわち下部金具160の底面に開口した開口部192は、ケーブル端末を接続しない場合には、耐食アルミ合金などからなるシール蓋193により密閉される。
【0048】
遮蔽金具140のフランジ部143の下端面には、環状の下部金具160が締付ボルト181を介して固定されている。また、フランジ部143の外周縁部の下端面は底部金具1の上面に当接され、締付ボルト182により固定される。
【0049】
下部金具160の固定フランジ部162の上端面は、遮蔽金具140のフランジ部143の外周縁部の下端面に締付ボルト181を介して固定される。
【0050】
下部ブッシング121Aは、シール蓋193を外し、電力ケーブルなどのケーブル端末(不図示)を取り付けることができる。ケーブル端末は、図示しないが段剥ぎされたケーブルの導体部分に圧縮され先端をチューリップコンタクト115に接続するための接続端子を有し、ポリマー套管100の受容口190に電界を緩和するためのゴム製のストレスコーンが装着される周知の構造である。
【0051】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のポリマー套管100は、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面に配設され、上端部が遮蔽金具140のフランジ部143の下端面に取付けられる環状の下部金具160と、下部金具160の上端部の内径角部に、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とに向かって開口する環状の溝部163と、溝部163に配設され、導電層150が形成された絶縁筒120の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面との双方に密着する導電性Oリング170とを備える。
【0052】
このため、使用中のヒートサイクルにより遮蔽金具140と導電層150とが離れることがあっても、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とは、導電性Oリング170を介して常に同電位に保たれ、導電性Oリング170により遮蔽金具140と導電層150との間が電気的に浮いた状態となることがなく、部分放電の発生を防止することができる。
【0053】
このように、下部金具160の上端部の内径角部に溝部163を形成し、この溝部163に導電性Oリング170を収納した本構成において初めて、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と遮蔽金具140のフランジ部143の下端面とが、常時、同電位に保たれ、安定した電気的接続が可能になる。
【0054】
同時に、導電性Oリング170は、Oリングのシール機能として、遮蔽金具140のフランジ部143の下端面と下部金具160の固定フランジ部162の上端面との間の気密性及び、導電層150が形成された大径絶縁筒121の外周面と下部金具160の内周面との間の気密性を確保することができ、外部から内方中心への水の浸入をより確実に防止することができる。
【0055】
これに加えて、本実施の形態では、下部金具160内部に下部ブッシング121Aの底面部に形成された導電層150に密着する導電性シール部材としての導電性Oリング191が取付けられる。導電性Oリング191は、ケーブル端末側の気密性を確保するとともに、より確実に導電層150と下部金具160とを電気的に接触させることができる。
【0056】
ところで、従来例においても、ダイレクトモールドの下部金具にはOリングが嵌め込まれ、下部金具はOリングを介して下部遮蔽金具(本実施の形態の遮蔽金具140に対応する)に接続されており、OリングとこのOリングを収納するための凹溝は、必須であった。本実施の形態では、導電性Oリング170が、従来例のOリングのシール機能を兼用している。このため、部材の追加は不要であり、低コストで実施が可能である。むしろ、下部金具160の上端部の内径角部に形成する溝部163は、従来例のOリングを収納するための凹溝より加工及び組立作業が容易であることから、より低コスト化が期待できる。
【0057】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。例えば、ポリマー套管及びケーブル終端接続部は、気中終端接続部に適用した例について説明しているが、ガス中終端接続部、油中終端接続部などに適用してもよい。すなわち、本発明は、導電層150が形成された絶縁筒120外周面に配設される下部金具160と遮蔽金具140との接続部分に特徴があるため、ポリマー被覆体130の有無には関係なく、ポリマー被覆体130を有さないポリマー套管であってもよい。
【0058】
上記実施の形態では、大径絶縁筒121と小径絶縁筒122からなる絶縁筒120について説明しているが、導体挿入孔110aと対応する部分を小径絶縁筒122と同様に細くした、いわゆる細径化した絶縁筒を使用してもよい。
【0059】
また、上記ポリマー套管及びケーブル終端接続部を構成する各部、例えば遮蔽金具、下部金具、導電性Oリング等の種類及び名称などは前述した実施の形態に限られない。
【0060】
上記実施の形態では、導電性シール部材として導電性Oリングについて説明しているが、気密性、電気的接触の効果を得る限り、導電性パッキンを使用してもよい。
【0061】
上記実施の形態では、導電層は導電性材料として銀ペイントなどの導電塗料を塗布した場合について説明しているが、導電性材料として金属蒸着などにより形成された導電層であってもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、絶縁筒120はエポキシ樹脂、ポリマー被覆体130はシリコーンゴムの場合について説明しているが、絶縁筒120、ポリマー被覆体130を、エポキシ樹脂により一体的に形成したポリマー套管でもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、絶縁筒120下端部にケーブル端末の受容口190について説明しているが、本発明のポリマー套管は、特開2007−188735号公報や特開2007−26834号公報に記載されるような、当業者にとって既知である壁貫通ブッシングに適用してもよく、上記の「ケーブル端末の受容口190」に替えて、「ブッシングを接続するための受容口」を備えたポリマー套管でもよい。
【0064】
さらに、上記実記の形態では、導体引出棒110下端部の導体挿入孔110aにおける導体接続方式は所謂チューリップコンタクト方式にて説明しているが、これに限定されず、ケーブル端末又はブッシングを絶縁筒の下端部の受容口に接続するいずれの場合も、例えばマルチラムバンドによる接続方式等の公知の導体接続方法でよい。
【0065】
さらにまた、上記実施の形態では、導体引出棒110について説明しているが、絶縁筒110の先端部に、高電圧に接続される導体を有した構造であれば、例えば絶縁筒110内部の中心には導体が無い構造(すなわち、上記実施の形態で言えば、絶縁筒から突出した部分のみに高電圧に接続される導体がある構造)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るポリマー套管及びケーブル終端接続部は、遮蔽金具と導電層を電気的に接続することができる効果を有し、電力ケーブルの気中終端接続部に用いられるポリマー套管として有用である。
【符号の説明】
【0067】
100 ポリマー套管
110 導体引出棒
120 絶縁筒
121 大径絶縁筒
121A 下部ブッシング
122 小径絶縁筒
130 ポリマー被覆体
140 遮蔽金具
141 筒状部
142 円筒部
143 フランジ部
150 導電層
160 下部金具
161 筒部
162 固定フランジ部
163,164 溝部
170,191 導電性Oリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧に接続される導体を先端部に有する硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒に埋設される埋込部と該絶縁筒の周面から半径方向外方に突出したフランジ部とを有する遮蔽金具と、
前記遮蔽金具よりも下方部位の前記絶縁筒の外周面に導電性材料により形成された導電層と、
前記導電層が形成された前記絶縁筒の外周面に配設され、上端部が前記フランジ部の下端面に取付けられる環状の下部金具とを備えるポリマー套管であって、
前記下部金具の上端部の内径角部に、前記導電層が形成された前記絶縁筒の外周面と前記遮蔽金具の前記フランジ部の下端面とに向かって開口する環状の溝部と、
前記溝部に配設される導電性Oリングと、
を備えるポリマー套管。
【請求項2】
前記導電性Oリングは、前記導電層が形成された前記絶縁筒の外周面と前記遮蔽金具の前記フランジ部の下端面との双方に密着する請求項1記載のポリマー套管。
【請求項3】
前記溝部は、断面形状が断面L字形状に形成される請求項1又は2に記載のポリマー套管。
【請求項4】
前記導電層は、前記絶縁筒の外周面から前記絶縁筒の下端面に延びて形成され、
前記下部金具内部の下端面には前記導電層と電気的に接触する導電性シール部材を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項5】
前記導体は、前記絶縁筒の中心に配設され、前記絶縁筒の先端部から突出される導体引出棒である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項6】
前記絶縁筒の外周に、高分子絶縁材料により、それ自身の外周に複数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体を備え、前記遮蔽金具は前記ポリマー被覆体の下方部位に設けられる請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項7】
前記絶縁筒の下端部にケーブル端末又はブッシングを接続するための受容口を有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー套管。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー套管の前記絶縁筒の下端部にはケーブル端末の受容口を有し、ケーブル端末の受容口に、ケーブル端末が装着されているケーブル終端接続部。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−188719(P2011−188719A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54594(P2010−54594)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】