説明

ポリマー材料

ポリアリルエーテルケトンのようなポリマー材料とセラミック材料とを含有する顆粒またはペレットを調製して使用し、医療用途用の構成部品の多種多様な部分を溶融加工により作製してもよい。当該セラミック材料は、生体活性ガラスおよび放出制御ガラス、もしくはそのいずれかでもよく、20モル%未満の酸化ナトリウムを含んでも、および水溶性、もしくはそのいずれかでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料に関し、排他的にではないが特に、(例えば医療用インプラントまたはその一部の作製に使用される)多孔質ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質の医療用インプラントの作製はよく知られており、多数の先行技術が存在する。例えば特許文献1では、ポリエーテルエーテルケトンおよび塩(例えば塩化ナトリウム)から多孔質の医療用インプラントを作製する工程が開示されており、この工程では、成分をモールド・キャビティ内に入れ圧縮・加熱して、塩は溶融させずにポリエーテルエーテルケトンだけを溶融させて成形部品を形成する。その後、冷却して混合物を凝固させた後、成形材料を100℃の水浴中に入れて成形部品から塩を溶解させ、多孔質の成形部品を画定する。
【0003】
特許文献2では、医療用途に適した微孔質ポリマー発泡体および微細構造面が開示されている。発泡体の調製では、結晶性有機ポリマーを溶融させ、選択された結晶性固体の短命化合物と組み合わせて概ね等方性の溶液にする。溶液を制御条件下で冷却し、短命化合物とポリマーとの同時結晶化による固固相分離を促進して、固体化した短命化合物が有機ポリマーのマトリックス全体に分散した形で含有される発泡前駆体を作る。その後、溶媒抽出および昇華、もしくはそのいずれか、または類似の工程により短命化合物の結晶を除去し、連続的な開放気泡構造を有する微細気泡発泡体にする。
【0004】
かかる多孔質材料では、潜在的に有毒な薬剤で多孔質材料が汚染されていないことを保証するために、移植前に適切な工程で短命材料を完全に除去しなければならない。完全な除去は難しく、従って、除去(の試み)の後も、レベルの多少はあれ、短命化合物が残る危険性がある。
【0005】
また、生体内でインプラントから浸出して有益な効果を有する活性材料を含有する吸収可能材料による医療用インプラントの作製も知られている。
【0006】
さらに、非特許文献1によると、加圧下での硬化によるエポキシと生体活性ガラスとの組み合わせも知られている。調製されたサンプルの生体活性が研究された。加えて、この論文は、ポリマーまたは金属とともに様々なバイオセラミックスを含有する複合物を開発して機械的特性だけでなく生体活性も向上させようとする試みが行われていることにも言及しており、「HDPE、PMMA、エポキシ、PEEK、澱粉、ポリスルホン、ポリラクチドは、生物医学研究において有用なポリマーであることが判明しており、複合物も、これらのポリマーを、生体ガラスとだけでなく、ガラスセラミックとも併用して作られる」と示唆する。
【0007】
先行技術は、ポリエーテルエーテルケトンと生体活性ガラスとを組み合わせることができると示唆するが、出願人は、ポリエーテルエーテルケトンと生体活性ガラスとが順調に溶融加工されたという開示を知らず、実際、最も広く利用可能で使用される45S5と呼ばれる生体活性ガラスは、ポリエーテルエーテルケトンとは溶融加工できない。生体活性ガラスとポリマーとが反応するように見え、溶融加工温度でもポリマーが固体化する。
【0008】
特許文献3は、コンベアイトガラスセラミックのような生体活性ガラスとPEEKとを組み合わせることの難しさを認めており、組み合わせに二軸スクリュー押出機を使用した結果、PEEKとガラスセラミックとが反応して押出機の機能を妨げる材料が形成された
、と述べている。この結果、特許文献3にはPEEKと生体活性ガラスとを含有する複合物が説明されているものの、かかる複合物は、アルコールのような極性有機溶媒内でPEEKとガラスとを混和させるステップを伴う方法で調製され、その後、溶媒を除去して均質な粒子混合物を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/051307号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5969020号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/039488号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Trends Biomater.Artif.Organs,Vol 18(2),225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態の目的は、特定のポリマー材料内でのガラス(例えば生体活性ガラス)の使用に関連する問題に対処することである。
【0012】
また、本発明の実施形態の目的は、複合材料での細孔形成にガラス(例えば生体活性ガラス)を利用することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に従って、ポリマー材料とセラミック材料とを含有する材料塊を提供し、前記ポリマー材料は、
(a) フェニル部分と、
(b) ケトン部分と、
(c) エーテル部分とを含む種類のものであり、
前記セラミック材料は、生体活性ガラスおよび放出制御ガラスであり、前記セラミック材料は、20モル%未満の酸化ナトリウムを含み、および水溶性、もしくはそのいずれかである。
【0014】
前記生体活性ガラスは、上記の通り20モル%未満の酸化ナトリウムを含んでもよく、前記放出制御ガラスは、好適には水溶性である。20モル%未満の酸化ナトリウムを含有する前記生体活性ガラスは、水溶性でもよい。
【0015】
前記セラミック材料は、好適には、ガラス形成体およびガラス修飾体を含む。
【0016】
ガラス形成体は、二酸化珪素、五酸化リンまたは三酸化ホウ素から選択されてもよい。前記ガラス形成体は、二酸化珪素または五酸化リンを含有することが好ましい。
【0017】
前記セラミック材料は、好適には85モル%以下、好ましくは75モル%以下の前記ガラス形成体を含む。
【0018】
ガラス修飾体は、酸化物または炭酸塩(例えば、金属の酸化物もしくは炭酸塩またはランタニドの酸化物もしくは炭酸塩)でもよい。前記酸化物または炭酸塩の金属は、アルカリまたはアルカリ土類金属でもよい。前記セラミック材料は、LiO,NaO,KO,MgO,ZnOおよびCaOから選択されたガラス修飾体を含むことが好ましい。
【0019】
前記セラミック材料内のガラス形成体とガラス修飾体との合計量は、80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上でもよい。
【0020】
前記セラミック材料は、前記ガラス形成体およびガラス修飾体に加えて、その他の化合物を含んでもよい。その他の化合物が、20モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満含まれてもよい。
【0021】
上記の生体活性ガラスは、好適には、人体に移植された時に反応を誘発することができる。例えば、「生体活性」を有するとは、試験管内の周囲流体とセラミック材料との間のイオン交換によるリン酸カルシウム層(非晶性、部分結晶性または結晶性)の化学的形成を意味してもよい。前記セラミック材料が生体活性を有するか否かの試験管内評価は、Biomaterials(2006年)27:2907〜2915においてコクボが説明している通りに着手してもよい。
【0022】
前記セラミック材料(例えば生体活性ガラス)は、15モル%未満の酸化ナトリウム、好適には13モル%未満の酸化ナトリウム、好ましくは10モル%未満の酸化ナトリウム、より好ましくは7モル%未満の酸化ナトリウム、特に3モル%未満の酸化ナトリウムを含んでもよい。場合によっては、前記セラミック材料は、1モル%未満の酸化ナトリウム、好ましくは0モル%の酸化ナトリウムを含んでもよい。
【0023】
前記セラミック材料(例えば生体活性ガラス)内のアルカリ金属酸化物の総量は、15モル%未満、好適には13モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは7モル%未満、特に3モル%未満でもよい。場合によっては、総量は1モル%未満でもよく、好ましくは0モル%である。
【0024】
上記の生体活性ガラスは、ガラス形成体として二酸化珪素を含んでもよい。二酸化珪素が、10モル%以上、好適には20モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上含まれてもよい。二酸化珪素の量は、70モル%未満、好適には60モル%未満でもよい。
【0025】
高レベルの二酸化珪素を含む前記生体活性ガラスは、不水溶性または低溶解性でもよい。
【0026】
生体活性ガラスの特性は、網目構造連結性により異なる(Journal of Materials Science:Material in Medicine 10(1999年)697〜701(ウォレス)およびJournal of Materials Science Letters 15(1996年)1122〜1125(ヒル)参照)。前記生体活性ガラスは、2以上の、好ましくは2.1より高い網目構造連結性でもよい。網目構造連結性は3.2未満、好ましくは2.5未満でもよい。上記のヒル論文に記載の架橋密度は−0.10より高くても、好ましくは0より高くてもよい。架橋密度は0.8未満でもよい。
【0027】
また、放出制御ガラスも、生体活性を有することができるはずだが、そうである必要はない。放出制御ガラスは、生体適合性を有し、および生物学的に不活性、もしくはそのいずれかであることが好ましい。
【0028】
前記放出制御ガラスは、二酸化珪素を、好適には20モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、特に1モル%未満含む。
【0029】
前記放出制御ガラスは、ガラス形成体として五酸化リンを含んでもよい。五酸化リンが
、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、特に30モル%以上含まれてもよい。五酸化リンの量は、85モル%未満または60モル%未満でもよい。
【0030】
好適には、前記放出制御ガラスは、酸化ナトリウムを15モル%未満、好適には13モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは7モル%未満、特に5モル%未満含む。
【0031】
前記放出制御ガラス内のアルカリ金属酸化物の総量は、15モル%未満、好適には13モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは7モル%未満、特に5モル%未満のアルカリ金属酸化物であることが好適である。
【0032】
前記放出制御ガラスは、アルカリ土類金属の酸化物もしくは炭酸塩、またはランタニドの酸化物もしくは炭酸塩を含んでもよい。前記ガラス内のかかる酸化物または炭酸塩の総量は、80モル%未満、好ましくは75モル%未満、より好ましくは70モル%未満、特に60モル%未満でもよい。前記ガラス内のかかる酸化物または炭酸塩の総量は、5モル%以上、好ましくは15モル%以上、より好ましくは25モル%以上でもよい。前記ガラス内のかかる酸化物または炭酸塩の総量は、40モル%以下でもよい。
【0033】
前記放出制御ガラスは、38℃の水に完全に溶解できることが好ましい。
【0034】
溶解時(単離時、すなわち、前記材料塊の一部ではない時)、前記放出制御ガラスは、pHが7未満、好適には6.8未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6未満であることが好適である。
【0035】
前記第1の態様の材料塊は、前記ポリマー材料と前記セラミック材料との単純混合物を、例えば融解配置のようには2材料が互いに固着していない状態で、含有してもよく、または前記材料塊は、例えば2つの材料を一緒に溶融加工することにより作られた融解配置を含有してもよい。かかる溶融加工は、圧縮成形、射出成形、押出成形または同種の他の手段によるものでもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、前記材料塊は、前記ポリマー材料および前記セラミック材料を含む粒子を含有する。
【0037】
材料塊を、その後の工程ステップに使用して、部品(例えば医療用インプラントもしくはその一部、または非医療用途の部品)を製造することができる。これらの部品を配置して、材料塊が組み込まれた医療用インプラントもしくは部品の内部、表面もしくは周辺において生体活性を有し、および骨もしくはその他の組織の形成を促進する、もしくはそのいずれかになるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、セラミック材料を、短命材料として機能するよう配置してもよい。この場合、セラミック材料は、部品の使用前または使用後に、溶解工程で(非水性溶媒、または好ましくは水性溶媒を用いて)除去してもよい。セラミック材料が短命材料として機能する部品は、医療用途に使用しても非医療用途に使用してもよい。部品の使用中に除去されるようセラミック材料を配置する場合、セラミック材料の溶解は、部品に組み込まれている活性材料が放出されるよう配置してもよい。この場合、部品は、機能的効果を有しても、および活性材料の送達媒体として機能しても、もしくはそのいずれかでもよい。医療用途では、セラミック材料を、生体内で除去されるよう配置して(または、移植前に浸出させて)、医療用インプラントまたはその一部に細孔が形成されるようにしてもよい。
【0038】
セラミック材料は、短命材料として機能する場合、水溶性の放出制御ガラスを含有する
ことが好ましい。
【0039】
前記材料塊は、容積が0.1〜1mlの範囲、好ましくは0.3〜0.8mlの範囲、より好ましくは0.4〜0.8mlの範囲の粒子を含んでもよい。塊内の概ね全ての粒子が、上記の容積を有することが好ましい。
【0040】
平均容積(材料塊内の粒子の総容積を前記粒子の総数で割った商)は、0.1ml以上、好ましくは0.3ml以上、より好ましくは0.4ml以上でもよい。平均容積(上記の通り)は0.8ml未満でもよい。
【0041】
前記材料塊は、直径が1mm以上、好ましくは2mm以上の粒子を含んでもよい。直径は6mm未満、好ましくは5mm未満、より好ましくは4mm未満でもよい。塊内の概ね全ての粒子が、上記の直径を有することが好ましい。
【0042】
前記粒子の平均直径(全ての粒子の直径の和を総数で割った商)は、1mm以上、好ましくは2mm以上でもよい。平均直径は6mm未満、好ましくは5mm未満、より好ましくは4mm未満でもよい。
【0043】
前記材料塊は、重量が0.01g〜0.1gの範囲、好適には0.02g〜0.08gの範囲、好ましくは0.03g〜0.06gの範囲の粒子を含んでもよい。塊内の概ね全ての粒子が、上記の平均重量を有することが好ましい。
【0044】
材料塊内の粒子の平均重量(すなわち、全ての粒子の総重量を総数で割った商)は、0.01g〜0.1gの範囲、好適には0.02g〜0.08gの範囲、好ましくは0.03g〜0.06gの範囲でもよい。塊内の概ね全ての粒子が、上記の平均重量を有することが好ましい。
【0045】
前記粒子は、ペレットまたは顆粒であることが好ましい。
【0046】
前記材料塊は、1kg以上、好ましくは5kg以上の粒子を含んでもよい。
【0047】
前記材料塊は、10〜90重量%、好適には20〜80重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%のセラミック材料を含有する粒子を含んでもよい。場合によって材料塊は、セラミック材料を50〜80重量%、60〜80重量%、または70〜80重量%含んでもよい。
【0048】
前記材料塊は、セラミック材料を10〜90重量%、好適には20〜80重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%含んでもよい。場合によって材料塊は、セラミック材料を50〜80重量%、60〜80重量%、または70〜80重量%含んでもよい。
【0049】
前記材料塊は本質的に、前記ポリマー材料とセラミック材料とから成ることが好ましい。
【0050】
前記材料塊は、前記ポリマー材料を10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%含んでもよい。場合によって材料塊は、前記ポリマー材料を20〜50重量%、20〜40重量%または20〜30重量%含んでもよい。
【0051】
前記材料塊内におけるポリマー材料の重量対セラミック材料の重量の比は、0.1以上、好ましくは0.2以上でもよい。前記比は10未満、好ましくは8以下、より好ましく
は5以下でもよい。場合によって比は、0.25〜1の範囲でもよい。
【0052】
材料塊が2種類以上のポリマー材料を含み、かかるポリマー材料がマトリックスを画定するよう配置されて、かかるマトリックス内にセラミック材料が分散している場合、本願に記載の前記ポリマー材料の重量(またはその他の数量)は、前記マトリックスを画定するよう配置された全てのポリマー材料の総重量の和を指してもよい。しかしながら、マトリックスを画定するよう配置されたポリマー材料の重量(またはその他の数量)は、単一のポリマー材料の重量を指すことが好ましい。前記材料塊(例えば上記の粒子)は、セラミック材料が内部に分散しているマトリックスを画定するよう配置された単一のポリマー材料を含むことが好ましい。
【0053】
材料塊が2種類以上のセラミック材料を含み、かかるセラミック材料がポリマー材料内に分散している場合、本願に記載の前記セラミック材料の重量(またはその他の数量)は、全てのセラミック材料の総重量の和を指してもよい。しかしながら、セラミック材料の重量(またはその他の数量)は、単一のセラミック材料の重量を指すことが好ましい。前記材料塊(例えば上記の粒子)は、ポリマー材料内に分散している単一のセラミック材料を含むことが好ましい。
【0054】
前記材料塊の90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に約100重量%が、単一のポリマー材料と単一のセラミック材料とで構成されていることが好ましい。
【0055】
前記材料塊は、好適には、均質な塊(例えば均質な粒子)を含有し、前記ポリマー材料とセラミック材料とを含有する。セラミック材料がポリマー材料全体に分散および分布、もしくはそのいずれかとなっていることが好ましい。セラミック材料の大部分の粒子がセラミック材料の他の粒子に接触するよう、セラミック材料が配置・分布していることが好ましい。すなわち、セラミック材料のごく少数の粒子が、前記ポリマー材料内に完全に閉じ込められていることが好ましい。これは、高レベルのセラミック材料を使用するとともにポリマー材料とセラミック材料とが完全に混合され、確実に均等な塊になることを保証することにより達成できる。
【0056】
好ましくは、前記材料塊(例えば粒子)は、融解ポリマー材料(例えばポリマー材料の融解粒子)を含む。前記融解ポリマー材料は、好適には網目構造を画定し、かかる網目構造は、好適には、前記材料塊全体を通じて(例えば、前記材料塊の前記粒子を通じて)概ね連続している。前記網目構造は、好適には不規則形状である。前記塊(例えば粒子)内のセラミック材料は、前記網目構造の部分間に配置してもよく、および前記網目構造に接触、もしくはそのいずれかになっていてもよい。セラミック材料は、不連続粒子を含有してもよく、かかる不連続粒子は、互いに接触してもよいが、互いに融合していないことが好ましい。前記材料塊内の粒子は、好ましくは80%以上、より好ましくは90重量%以上、特に概ね全部が上記の通りである。
【0057】
前記材料塊(例えば粒子)は、ポリマー材料とセラミック材料との溶融加工(例えば押出成形)を備える工程で得られることが好ましい。
【0058】
押出成形物(例えばレース形態のもの)は、切断(例えば細断)して粒子を画定してもよい。
【0059】
前記ポリマー材料は、ノッチ付きアイゾット衝撃強度(80mm×10mm×4mmの試験片に0.25mmのノッチを切り(タイプA)、ISO180に従って23℃で試験する)が、4KJm−2以上、好ましくは5KJm−2以上、より好ましく6KJm−2以上でもよい。上記の通りに測定した前記ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、10KJm
−2未満、好適には8KJm−2未満でもよい。
【0060】
上記の通りに測定したノッチ付きアイゾット衝撃強度は、3KJm−2以上、好適には4KJm−2以上、好ましくは5KJm−2以上でもよい。前記衝撃強度は50KJm−2未満、好適には30KJm−2未満でもよい。
【0061】
前記ポリマー材料は、溶融粘度(MV)が、好適には0.06kNsm−2以上、好ましくは0.09kNsm−2以上、より好ましくは0.12kNsm−2以上、特に0.15kNsm−2以上である。
【0062】
MVは、好適には、0.5×3.175mmの炭化タングステン製ダイを使用し、400℃で機能する毛細管レオメトリーを用いて1000秒−1の剪断速度で測定する。
【0063】
前記ポリマー材料は、MVが1.00kNsm−2未満、好ましくは0.5kNsm−2未満でもよい。
【0064】
前記ポリマー材料は、MVが0.09〜0.5kNsm−2の範囲、好ましくは0.14〜0.5kNsm−2の範囲、より好ましくは0.3〜0.5kNsm−2の範囲でもよい。
【0065】
前記ポリマー材料は、ISO527(試験片タイプ1b)に従って測定した引っ張り強さ(23℃で50mm/分の速度で試験する)が、20MPa以上、好ましくは60MPa以上、より好ましくは80MPa以上でもよい。引っ張り強さは、好ましくは80〜110MPaの範囲、より好ましくは80〜100MPaの範囲である。
【0066】
前記ポリマー材料は、ISO178に従って測定した曲げ強度(80mm×10mm×4mmの試験片を23℃で2mm/分の速度で3点曲げ試験する)が、50MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは145MPa以上でよい。曲げ強度は、好ましくは145〜180MPaの範囲、より好ましくは145〜164MPaの範囲である。
【0067】
前記ポリマー材料は、ISO178に従って測定した曲げ弾性率(80mm×10mm×4mmの試験片を23℃で2mm/分の速度で3点曲げ試験する)が、1GPa以上、好適には2GPa以上、好ましくは3GPa以上、より好ましくは3GPa以上でもよい。曲げ弾性率は、好ましくは3.5〜4.5GPaの範囲、より好ましくは3.5〜4.1GPaの範囲である。
【0068】
前記ポリマー材料は、非晶性でも半結晶性でもよい。かかる材料は、半結晶性であることが好ましい。
【0069】
ポリマーの結晶化度および結晶化範囲は、例えばブランデルおよびオズボーン(Polymer24,953,1983年)に記載の、広角X線回析(別名、広角X線散乱またはWAXS)により測定することが好ましい。あるいは、結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)により評価してもよい。
【0070】
前記ポリマー材料の結晶化度は、1%以上、好適には3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上でもよい。特に好ましい実施形態では、結晶化度は25%を超えてもよい。
【0071】
前記ポリマー材料(結晶性の場合)の融解吸熱(Tm)の主ピークは、300℃以上で
もよい。
【0072】
前記ポリマー材料は、下記一般式IVの反復単位、
【0073】
【化1】

または下記一般式IVの反復単位を含んでもよく、
【0074】
【化2】

式中、AおよびBは別個に0または1を表し、EおよびE’は別個に酸素原子もしくは硫黄原子または直接結合を表し、Gは酸素原子もしくは硫黄原子、直接結合、またはPhがフェニル基を表す−O−Ph−O−部分を表し、m,r,s,t,v,wおよびzは0または1を表し、Arは、1つ以上のフェニル部分を介して隣接部分に結合されている下記の部分(i)〜(v)のうちの1つから選択される。
【0075】
【化3】

本明細書に別途記載しない限り、フェニル部分は、1,4−結合で結合部分に結合される。
【0076】
前記ポリマー材料は、IVまたはIVの反復単位を含むホモポリマーでもよい。
【0077】
前記ポリマー材料は、一般式IVの反復単位を有するホモポリマーであることが好ましい。
【0078】
Arは、下記の部分(vi)〜(x)から選択されることが好ましい。
【0079】
【化4】

(vii)では、中間のフェニルは、1,4−置換でも1,3−置換でもよい。好ましいのは1,4−置換である。
【0080】
適切な部分Arは、部分(ii)、(iii)、(iv)および(v)であり、これらのうち、部分(ii)、(iii)および(v)が好ましい。その他の好ましい部分Arは、部分(vii)、(viii)、(ix)および(x)であり、これらのうち、部分(vii)、(viii)および(x)が特に好ましい。
【0081】
特に好ましい種類のポリマー材料は、本質的にフェニル部分から成りケトンおよびエーテル部分、もしくはそのいずれかと合わさったポリマー(またはコポリマー)である。すなわち、好ましい種類のポリマー材料には、−S−、−SO−、またはフェニル以外の芳香族基を含む繰り返し単位は含まれない。上記の種類の好ましい生体適合性ポリマー材料は、次のものを含む。
【0082】
(a)本質的に式IVの単位から成るポリマーであって、Arが部分(v)を表し、EおよびE’が酸素原子を表し、mが0を表し、wが1を表し、Gが直接結合を表し、sが0を表し、AおよびBが1を表すもの(すなわち、ポリエーテルエーテルケトン)。
【0083】
(b)本質的に式IVの単位から成るポリマーであって、Eが酸素原子を表し、E’が直接結合を表し、Arが構造(ii)の部分を表し、mが0を表し、Aが1を表し、Bが0を表すもの(すなわち、ポリエーテルケトン)。
【0084】
(c)本質的に式IVの単位から成るポリマーであって、Eが酸素原子を表し、Arが部分(ii)を表し、mが0を表し、E’が直接結合を表し、Aが1を表し、Bが0を表すもの(すなわち、ポリエーテルケトンケトン)。
【0085】
(d)本質的に式IVの単位から成るポリマーであって、Arが部分(ii)を表し、EおよびE’が酸素原子を表し、Gが直接結合を表し、mが0を表し、wが1を表し、rが0を表し、sが1を表し、AおよびBが1を表すもの(すなわち、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン)。
【0086】
(e)本質的に式IVの単位から成るポリマーであって、Arが部分(v)を表し、EおよびE’が酸素原子を表し、Gが直接結合を表し、mが0を表し、wが0を表し、s、r、AおよびBが1を表すもの(すなわち、ポリエーテルエーテルケトンケトンケトン)。
【0087】
(f) 式IVの単位を有するポリマーであって、Arが部分(v)を表し、EおよびE’が酸素原子を表し、mが1を表し、wが1を表し、Aが1を表し、Bが1を表し、rおよびsが0を表し、Gが直接結合を表すもの(すなわち、ポリエーテル−ジフェニル−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−)。
【0088】
前記ポリマー材料は、本質的に、上記の単位(a)〜(f)のうちの1つから成ってもよい。あるいは、前記ポリマー材料は、上記の(a)〜(f)から選択された少なくとも2単位を有するコポリマーを、有してもよい。好ましいコポリマーは単位(a)を含む。例えばコポリマーは、単位(a)および(f)を有してもよく、または単位(a)および(e)を有してもよい。
【0089】
前記ポリマー材料は、好ましくは下記式(XX)の繰り返し単位を有し、より好ましくは、本質的にかかる繰り返し単位から成り、
【0090】
【化5】

t1およびw1は別個に0または1を表し、v1は0、1または2を表す。好ましいポリマー材料では、前記繰り返し単位が、t1=1、v1=0およびw1=0であるか、t1=0、v1=0およびw1=0であるか、t1=0、w1=1およびv1=2であるか、またはt1=0、v1=1およびw1=0である。より好ましいものでは、t1=1、v1=0およびw1=0であるか、またはt1=0、v1=0およびw1=0である。最も好ましいものでは、t1=1、v1=0およびw1=0である。
【0091】
好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンおよびポリエーテルケトンケトンから選択される。より好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される。特に好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトンである。
【0092】
前記セラミック材料は、好適には、前記ポリマー材料の融点より高い融点を持つ。前記セラミック材料の融点は、前記ポリマー材料の融点より100℃以上、好適には200℃
以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上高くてもよい。セラミック材料の融点は450℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、特に700℃以上でもよい。
【0093】
前記セラミック材料は、ガラス転移温度が、前記ポリマー材料の融点より(例えば10℃以上、または50℃以上、または100℃以上)高いことが好ましい。
【0094】
前記材料塊は、セラミック材料の不連続粒子を含んでもよく、かかる不連続粒子は、好適にはポリマー材料内に分散している。前記材料塊の粒子内に分散している前記セラミック材料は、D50が1〜20000μmの範囲でもよい。D50は10〜2000μmの範囲であることが好ましい。いくつかの実施形態では(例えば、材料塊を使用して多孔質部材を作り骨誘導能に使用する場合)、D50は、骨内殖に適した細孔の作製が可能な10〜1200μmの範囲でもよい。その他の実施形態では、より低い多孔性が必要となる場合があり、この場合、D50は10〜100μmの範囲でもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記セラミック材料、または前記セラミック材料の一部を、それが組み込まれた部分(例えば、人体内の本来の位置にある時のインプラント)から浸出させるよう配置してもよい。前記材料塊は、さらなる活性材料を含んでもよく、かかる活性材料を、遊離時に有益な効果を有するよう配置してもよい。例えば、前記材料塊から作られた部品(例えばインプラント)から溶解してもよい前記活性材料は、例えば抗菌剤(例えば銀含有または抗生物質含有)、放射性化合物(例えば、治療、研究、追跡、造影、滑膜切除または微小線量測定用にα線、β線またはγ線を放射するもの)、または骨統合もしくは骨に関連するその他の経過を促進するような活性剤といった、活性材料を含有してもよい(例えば、活性剤はリン酸カルシウムでもよい)。
【0096】
前記材料塊は、その他の添加物、例えば、材料塊から作られた構成部品の機械的特性を改善するよう配置された添加物を含有するような補強剤を含んでもよい。好ましい補強剤は繊維を含有する。
【0097】
前記繊維は、繊維状充填剤または非繊維状充填剤を含有してもよい。前記繊維は、繊維状充填剤と非繊維状充填剤との両方を含んでもよい。
【0098】
前記繊維充填材は、連続的でも非連続的でもよい。好ましい実施形態では、前記繊維充填材は非連続的である。
【0099】
不連続繊維は、平均長さが10mm未満、好ましくは7mm未満であることが好ましい。
【0100】
前記繊維充填材は、無機繊維材料、高融解性の有機繊維材料、並びに炭素繊維から選択してもよい。
【0101】
前記繊維充填材は、無機繊維材料、アラミド繊維のような非融解性および高融解性の有機繊維材料、並びに炭素繊維から選択してもよい。
【0102】
前記繊維充填材は、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、ホウ素繊維、フルオロカーボン樹脂繊維およびチタン酸カリウム繊維から選択してもよい。好ましい繊維充填材は、ガラス繊維および炭素繊維である。
【0103】
繊維充填材は、ナノ繊維を有してもよい。
【0104】
前記非繊維充填材は、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、白土、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、粘土、ガラス粉末、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、フルオロカーボン樹脂および硫酸バリウムから選択してもよい。 さらに、非繊維状充填剤のリストは、グラファイト、炭素粉末およびナノチューブを含んでもよい。非繊維充填材は、粉末状または薄片状粒子の形で導入してもよい。
【0105】
好ましい補強剤は、ガラス繊維および炭素繊維、もしくはそのいずれかである。
【0106】
その他の添加物は、例えば硫酸バリウムといった放射線不透過剤、および同時係属出願PCT/GB2006/003947に記載のその他の放射線不透過剤を含有してもよい。20重量%以下、または5重量%以下の放射線不透過剤が含まれてもよい。含まれる放射不透過剤は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0%である。
【0107】
その他の添加物は、着色料(例えば二酸化チタン)を含んでもよい。3重量%以下の着色料が含まれてもよいが、含まれる着色料は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0%である。
【0108】
前記材料塊は、15重量%以下、例えば10重量%以下のその他の材料を(つまり、前記ポリマー材料およびセラミック材料に追加して)含んでもよい。従って、ある好ましい実施形態では、前記材料塊は、20〜80重量%のセラミック材料(好ましくは1種類のセラミック材料)、20〜80重量%のポリマー材料(好ましくは1種類のポリマー材料)および15重量%以下のその他の材料(例えば上記の種類)を含む。別の好ましい実施形態では、前記材料塊は、40〜80重量%のセラミック材料(好ましくは1種類のセラミック材料)、20〜60重量%のポリマー材料(好ましくは1種類のポリマー材料)および10重量%以下のその他の材料(例えば上記の種類)を含む。さらなる好ましい実施形態では、前記材料塊は、55〜80重量%のセラミック材料(好ましくは1種類のセラミック材料)、20〜45重量%のポリマー材料(好ましくは1種類のポリマー材料)および5重量%以下のその他の材料(例えば上記の種類)を含む。
【0109】
好ましくは、前記材料塊(例えば粒子)は、本質的にポリマー材料とセラミック材料とから成り、より好ましくは、本質的に1種類のポリマー材料と1種類のセラミック材料とから成る。
【0110】
本発明の第2の態様に従って、第1の態様に従って材料塊を作る方法を提供し、前記方法は、
(a) 第1の態様に従って説明した通りのポリマー材料とセラミック材料とを接触させるステップと、
(b) 前記混合物を材料塊に形成するステップと、を備える。
【0111】
材料塊、粒子、ポリマー材料およびセラミック材料は、前記第1の態様に記載の特徴を有してもよい。
【0112】
ステップ(a)の終わりに、混合物が概ね均質であることが好ましい。ステップ(a)での当初の接触は、周囲温度で行われてもよく、例えば、ポリマー材料とセラミック材料とを乾式混合してもよい。あるいは、かつ、好ましくは、セラミック材料は当初、周囲温度より高い温度(例えばポリマー材料の融解温度)でポリマー材料と接触させてもよい。好ましい実施形態では、セラミック材料は、当初、配合機内(例えば配合機のスクリュー内)でポリマー材料と接触させる。
【0113】
前記のポリマー材料とセラミック材料とが溶融加工されることが好ましい。これは、成形(例えば圧縮または射出)もしくは押出成形または同種の他の手段を伴ってもよい。
【0114】
前記材料塊がその他の添加物(前記第1の態様に従って説明した通り)を含む場合、前記その他の添加物は、溶融加工される混合物に含まれてもよい。第2の態様の方法で用いる加工条件に耐えうる添加物を選択することが好ましい。
【0115】
混合物の溶融加工は、押出機により着手してもよい。従って、押出機でポリマー材料とセラミック材料とを混合しても、および溶融加工しても、もしくはそのいずれかにしてもよい。ポリマー材料とセラミック材料とを溶融加工して、一定の長さの混合物を押出成形するとともに前記長さを細分することにより粒子を画定しても(例えば、切断、細断または同種の他の手段により上記の種類の粒子を画定しても)よい。かかる粒子は、好適には溶融加工で溶融されたポリマー材料により画定されて好適には網目構造を画定するようになった融解ポリマー材料と、網目構造内に配置されたセラミック材料とを含有し、前記セラミック材料が前記溶融加工により溶融されないことが好適である。
【0116】
混合物は、好適には溶融加工されて上記の粒子を画定し、かかる粒子は、好適にはその後冷却される。
【0117】
本発明の第3の態様に従って、構成部品を作る方法を提供し、前記方法は、
(a) 第1の態様に従って各々説明した通りのポリマー材料とセラミック材料とを溶融加工して、構成部品の少なくとも一部を画定するステップと、
(b) 任意選択的にセラミック材料を除去するステップと、を有する。
【0118】
前記ポリマー材料とセラミック材料とは、第1の態様に従って説明した通りの材料塊に含まれてもよく、およびかかる材料塊は、第2の態様による方法で作られてもよく、もしくはそのいずれかであってもよい。
【0119】
この方法は、非医療用途に使用しても医療用途に使用してもよい。非医療用途は、フィルター、メッシュ、軽量部品、および活性材料(例えば潤滑剤)を溶離するよう配置された部品の製造を含む。
【0120】
構成部品は、人体に組み込まれる、又は関連付けられるような装置の一部または全部を具備してもよい。従って、構成部品は、好適には医療用インプラントの一部または全部であってもよい。医療用インプラントは、柔組織または硬組織と置換し又はこれを補完するよう配置してもよい。当該インプラントは、骨と置換しても骨を補完してもよい。当該インプラントを使用して、外傷性傷害または頭蓋顎顔面傷害に対処してもよい。当該インプラントは、関節置換術に(例えば股関節または指関節の置換の一部として)使用しても、脊髄手術に使用してもよい。
【0121】
この方法では、前記材料塊は、好適には、前記材料塊内のポリマー材料の融点よりは高いがセラミック材料の融点よりは低い温度で、溶融処理される。
【0122】
前記材料塊は、既知の方法で溶融加工してもよい。前記材料塊は、押出機または成形機(例えば射出成形機)で溶融加工することが好ましい。押出成形または成形は、前記構成部品(またはその一部)を直接的に作製するために用いてもよく、または前記構成部品(またはその一部)の前駆体を作製するために用いてもよく、かかる前駆体をさらなる加工(例えば機械加工)に掛けて、前記構成部品(またはその一部)を画定してもよい。
【0123】
前記材料塊を押出機で溶融加工する場合、繊維、ロッド、チューブ、バー、プレートまたはフィルムを作製してもよい。ロッド、チューブ、バーまたはプレートは、前記構成部品(またはその一部)の前駆体を画定してもよく、かかる前駆体を、例えば機械加工により、さらに加工してもよい。前記フィルムは、単独で直接的に使用してもよく、またはその他の材料と関連付けて装置を画定してもよい。押出成形に関して言及する場合、様々な組成および特性、もしくはそのいずれかの領域を含む構成部品が画定される同時押出成形を含む。
【0124】
前記構成部品は、中空または空洞の領域を含んでもよい。
【0125】
前記材料塊を成形機で溶融加工する場合、所期の形状を作製してもよい。略網目状のインゴットを、さらなる加工(例えば機械加工)用に作製してもよく、または使用前にさほど機械加工を必要としない構成部品を作製してもよい。好ましい成形機は射出成形機である。成形に関して言及する場合、様々な組成および特性、もしくはそのいずれかの領域を含む構成部品が画定されるオーバーモールドを含む。
【0126】
特に有利な方法は、様々な組成の領域を含む構成部品(またはその一部)を作製するステップを備えてもよい。例えば、上記の種類の前記材料塊を成形することにより、第1の領域を作製してもよく、第1の領域に隣接して第2の領域を成形することにより、第2の領域を作製してもよく、前記第2の領域は、前記材料塊の組成と異なる第2の組成から成形される。前記第2の組成は、第1の態様に従って説明した通りの材料塊の形態でもよく(例えば、ポリマー材料およびセラミック材料を含む)、または第1の態様による材料塊でなくてもよい(例えば、セラミック材料を含まなくてもよい)。好ましい実施形態では、前記第1および第2の領域は、同じポリマー材料(例えばポリエーテルエーテルケトン)を含有してもよい。これらの領域は、前記領域の調製に使用されるセラミック(またはその他の)材料の量または性質によって異なってもよい。構成部品(またはその一部)は、さらなる領域を1つまたは複数含んでもよい。
【0127】
別の方法では、領域を含む構成部品(またはその一部)を作製し、かかる領域が様々な多孔性を有するか、または様々なレベルのセラミック材料を含む(そして、その後、様々な多孔性の領域を画定するような)ようにしてもよい。例えば、第1の量のセラミック材料を含む上記の種類の前記材料塊を成形することにより、第1の領域を作製してもよく、第2の量のセラミック材料を含む上記の種類の前記材料塊を成形することにより、第2の領域を作製してもよく、前記第1と第2との量は異なる。構成部品は、さらなる領域を1つまたは複数含んでもよい。従って、この方法を用いて、様々なレベルのセラミック材料(またはセラミック材料が除去された場合、多孔性)を含む構成部品(またはその一部)を作製してもよい。例えば、構成部品(またはその一部)は、ある位置から別の位置へ向かって、セラミック材料(多孔性)のレベルが徐々に増加しても、または階段状に変化してもよい。
【0128】
第1の実施形態では、この方法で作られた構成部品(またはその一部)を、例えば人体に組み込まれ又は関連付けられるような装置の一部または全部として、方法のステップ(b)でセラミック材料を除去した後に限り使用してもよい。この場合、使用前に方法を用いて、多孔性の構成部品(またはその一部)を画定してもよい。方法によるセラミック材料の唯一の目的が、かかる細孔形成の促進であってもよい。
【0129】
第2の実施形態では、この方法で作製した構成部品(またはその一部)を、例えば人体に組み込まれ又は関連付けられるような装置の一部または全部として、セラミック材料が装置に関連付けられ残っている間に、およびセラミック材料の除去前に、もしくはそのいずれかに配置して使用してもよい。従って、セラミック材料は、好適には、人体内に存在
する時に有害な効果を有さない種類のものである。かかるセラミック材料は、生体内で構成部品(またはその一部)から浸出するよう配置することが好ましい。好適には、前記セラミック材料の浸出は、生体内で前記構成部品(またはその一部)の多孔率が増大するよう配置される。また、かかる多孔性は、プラス効果を有するようにも配置してもよい。
【0130】
第3の態様の方法は、ポリマー材料とセラミック材料とを含有する混合物による基体(例えば成形部品)のオーバーモールドに用いてもよく、または、ポリマー材料とセラミック材料とを含有する混合物による基体の被覆に用いてもよい。オーバーモールドまたは被覆の後、セラミック材料を任意選択的に浸出させてもよく、またはセラミック材料が使用時に浸出して、任意選択的に、オーバーモールドまたは被覆に使用された混合物に含まれる活性材料を送達してもよい。
【0131】
第3の実施形態では、この方法で作製した構成部品(またはその一部)を処理して、第1の実施形態に従って説明した通りセラミック材料を除去してもよい。その後、構成部品(またはその一部)の多孔質領域に別の材料を含浸させてもよい。かかる材料は、生体内で構成部品(またはその一部)から浸出するよう配置してもよく、または構成部品(またはその一部)の細孔内に留まって存在時に効果(例えば生物学的効果)を発揮するよう配置してもよい。上記のように含浸させてもよい材料の具体例は、コラーゲン、または薬物負荷生体吸収性ポリマーである。
【0132】
第4の実施形態では、第1、第2または第3の実施形態の構成部品(またはその一部)は、中空または空洞の領域を含んでもよく、かかる領域に、第3の実施形態で説明した通り別の材料を含浸させてもよい。
【0133】
前記方法が、ステップ(b)で前記セラミック材料を除去するステップを含む場合、前記方法は、ステップ(a)での溶融加工後に形成された生成物と、セラミック材料を除去する手段とを接触させ、好適には多孔性を画定するステップを伴うことが好適である。接触はいつ行われてもよい。しかしながら好適には、接触は、例えば人体に組み込まれ又は関連付けられるような装置の一部または全部として使用される構成部品(またはその一部)の作製に伴う前記生成物の機械加工または物理的操作の後に行われる。これは、セラミック材料が本来の位置にある間は生成物の強度が優り、例えば機械加工に耐えるためである。
【0134】
前記セラミック材料を除去する手段は、前記セラミック材料を可溶性にするよう配置してもよい。前記手段は、好適には、溶媒を含有する。前記溶媒は、非水性でも水性でもよい。前記溶媒は、好ましくは水を含有し、水を80重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に99重量%以上含む。溶媒は本質的に水から成ることが好ましい。
【0135】
セラミック材料を除去する手段は、次のようなステップを有してもよい。すなわち、溶融加工後に形成された生成物を、100℃より高い温度かつ周囲圧力より高い圧力の溶媒処方(好ましくは、上記の通り水を含有するもの)と接触させ、溶媒処方にセラミック材料を充填し、充填された溶媒を生成物から分離するステップ。
【0136】
この方法では、前記溶媒処方は、前記生成物との接触時、温度が150℃を超えても、好適には200℃を超えてもよい。前記溶媒処方は、前記生成物との接触時、温度が500℃未満、好適には450℃未満、好ましくは400℃未満、好ましくは350℃未満でもよい。
【0137】
溶媒処方は、前記生成物との接触時、4バール以上、好適には8バール以上、好ましくは10バール以上の圧力下にあってもよい。圧力は300バール未満、好ましくは200
バール未満、より好ましくは100バール未満、特に50バール未満でもよい。圧力は、溶媒処方が前記生成物との接触時に液体状態に保たれるよう、選択されることが好ましい。
【0138】
この方法では、溶媒処方を第1の領域から、前記生成物が配置された第2の領域を経て第3の領域へ流れるよう配置することが好ましい。
【0139】
第4の態様に従って、第3の態様の方法で得られる構成部品またはその一部を提供する。
【0140】
第5の態様に従って、人体への移植用の医療用インプラントを提供し、前記医療用インプラントは、ポリマー材料およびセラミック材料を含む材料を含有し、前記ポリマー材料は、
(a) フェニル部分と、
(b) ケトン部分と、
(c) エーテル部分とを含む種類のものであり、
前記セラミック材料は、生体活性ガラスおよび放出制御ガラス、もしくはそのいずれかであり、前記セラミック材料は、20モル%未満の酸化ナトリウムを含み、および水溶性、もしくはそのいずれかである。
【0141】
第5の態様の材料は、第1の態様の材料塊の特徴を有してもよい。
【0142】
前記医療用インプラントは、柔組織または硬組織と置換し、又はこれを補完するよう配置してもよい。当該インプラントは、骨と置換しても骨を補完してもよい。
【0143】
前記医療用インプラントの多孔性が、例えばセラミック材料の溶解により、人体への移植後に増大するよう配置することが好ましい。
【0144】
本発明の態様または本願記載の実施形態の特徴は、必要な変更を加えて、本発明の態様または本願記載の実施形態の別の特徴と組み合わせてもよい。
【0145】
本発明の特定の実施形態を、以下に、添付の図面を参照しながら実施例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1a】多孔質層がオーバーモールドされている寛骨臼カップの斜視図。
【図1b】多孔質層がオーバーモールドされている寛骨臼カップの断面図。
【図2a】ある種類の多孔質材料がオーバーモールドされた区域と、別の材料がオーバーモールドされた隣接区域とがある、他の実施形態による寛骨臼カップの斜視図。
【図2b】ある種類の多孔質材料がオーバーモールドされた区域と、別の材料がオーバーモールドされた隣接区域とがある、他の実施形態による寛骨臼カップの断面図。
【図3】様々な特性を有する区域を有している移植可能装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0147】
初期ステップとして、実施例1に記載の一般手順および実施例2〜5に記載の特定のガラスを用いて、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と選択したガラスとを溶融加工する試みを行った。選択したガラスは下記の通り。
【0148】
− 生体活性ガラス45S5 −広く市販されている一般的な生体活性ガラスで、SiO(46モル%)、NaO(24モル%)、CaO(27モル%)、P(3モ
ル%)を含有する。
【0149】
− 生体活性ガラス13−93ガラス粉末 −生体活性ガラスで、SiO(53重量%)、NaO(6重量%)、KO(12重量%)、CaO(20重量%)、P(4重量%)、MgO(5重量%)を含有する。
【0150】
− 生体活性ガラス13−92 −ガラス粉末で、0重量%のNaOを含有する。
【0151】
− 放出制御ガラス −Mo−Sciから入手、公称組成はAgO(1〜30重量%)、LiO、NaO、KO(0〜12重量%)、Al(0〜5重量%)、P(0〜70重量%)およびB(40〜80重量%)(本願ではCRG−1という)。
【0152】
実施例1 溶融加工の一般手順
調合を試みる前に、原材料である中粘性の未充填ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマー(英国インヴィビオ社から入手したインヴィビオLT2)および選択したガラスを下準備した。大気水蒸気の除去を助長して加工に利するために、選択したガラスを5時間、200℃の乾燥炉に入れた。これをPEEKについても繰り返し、PEEKが吸収していた水の0.5%を除去した。
【0153】
二軸スクリュー配合機に、ストランドダイおよび好適なポリマー・粉末計量装置を取り付けて使用した。選択したガラスおよびPEEK原材料を、2つの配合ホッパーに手で充填した。出口端に、ストランドコンベヤ、ペレット成型機、長さ別に分ける分類器、および適した清潔な収集容器を配置した。適切なサイズの機械を選んで、過剰なポリマー滞留時間を削減した。PEEKポリマーへのガラスの添加は、ポリマーが(スクリュー内に発生した剪断力および温度により)流体状態である時に、押出機のサイドフィーダーを介して行った。粘性が低めのPEEKポリマー(中粘性LT2)を選択し、充填剤の大量添加の結果としての粘度増加の影響を打ち消す一助とした。二軸スクリュー配合機は、360〜400℃の温度で稼動した。ステンレス鋼製の通常のスクリュー断面を、45:1の最小L/D比で使用した。押出端に、4mmオリフィス付き2穴ダイを使用した。スクリューに沿った温度プロフィールは、360〜400℃の間で変化した。
【0154】
主スクリュー回転速度は、150〜250rpmに設定した(が、高負荷材料向けには、より高速にできた)。当該速度を前者の範囲内に維持して、長期の滞留時間および潜在的なポリマー劣化を回避した。
【0155】
実施例2〜5 PEEKと選択したガラスの配合
実施例1の手順に従って、様々なガラスを配合する試みを行った。詳細および結果を表1に記載する。
【0156】
【表1】

455Sガラスは、溶融の結果生じる非常に高い粘度により溶融加工できず、かかる高粘度がPEEKとガラスに融和性が無いことを示すものであることが、正しく理解されるはずである。着手した調査では、おそらくはガラスとの反応により、ポリマーが不安定になることが示唆される。その他のガラスは、特にPEEK・ガラス混合物が掛けられる溶融加工サイクルの回数を最小限に抑えた場合、溶融加工可能であり有用な生成物を生み出す可能性がある。ただし、実施例5は、多数のサイクルを経て容易に溶融加工できる。
【0157】
融和性のあるPEEK・ガラスの組み合わせを使用し、実施例7の一般工程を用いて顆粒を調製してもよく、その次に、この顆粒を使用し、実施例8〜13の一般工程を用いて所期の形状にしてもよい。
【0158】
実施例7 顆粒の調製
混合の前に、原材料である中粘性の未充填(ポリエーテルエーテルケトン)PEEKポリマー(英国インヴィビオ社から入手したインヴィビオLT2)および選択したガラスを下準備した。必要な場合、ガラスは選別し、骨誘導用の細孔を得るために適した適切な粒子サイズ(直径100〜1000μmの粒子範囲)にしてもよい。これは、等級別に配列したメッシュに通すふるい分けにより達成してもよい。大気水蒸気の除去を助成して加工に利するために、PEEKおよびガラスを使用前に炉で乾燥させた。
【0159】
二軸スクリュー配合機に、ストランドダイおよび好適なポリマー・粉末計量装置を取り付けて使用してもよい。ガラスおよびPEEK原材料を、2つの配合ホッパーに充填してもよい。出口端に、ストランドコンベヤ、ペレット成型機、長さ別に分ける分類器、および適した清潔な収集容器を設けてもよい。適切なサイズの機械を選んで、過剰なポリマー滞留時間を削減してもよい。ポリマーが(スクリュー内に発生した剪断力および温度により)流体状態である時にガラスの添加を行い、ガラスとPEEKとを好適な比率で送り込んでもよい。粘性が低めのPEEKポリマーを選択し、充填剤の大量添加の結果としての粘度増加の影響を打ち消す一助としてもよい。二軸スクリュー配合機は、360〜400℃の温度で稼動してもよい。押出端に、4mmオリフィス付き2穴ダイを使用してもよい。
【0160】
主スクリュー回転速度は、150〜250rpmでもよい(が、高負荷材料向けには、より高速にできるはずである)。当該速度を前者の範囲内に維持して、長期の滞留時間を回避してもよい。配合された材料は、およそ3mmの連続レースとして押出成形してもよい。このレースを、ストランドコンベヤ上に捕捉しながら空気冷却してもよい。レースをペレットに変えるために、ペレット成型機を使用してもよい。
【0161】
実施例8 顆粒を略網目状のインゴットにする射出成形
20mm×20mm×100mm寸法のインゴットを、好適には機械加工用に、実施例1の顆粒を使用して射出成形機で作製してもよい。
【0162】
実施例9 顆粒をプラークにする射出成形
実施例8に記載の手順に従って、150mm×75mm×10mmのプラークを調製してもよく、かかるプラークを機械加工して、多孔性から利益を得るような医療装置の代表的サンプルにしてもよい。
【0163】
実施例10 部分多孔質領域の形成
20mm×20mm×100mm寸法の略網目状のインゴットを、部分多孔質領域を有する形で作ってもよい。モールドツールキャビティ内に、予備成形したインゴットを入れてもよく、かかるインゴットは、実施例8に記載の手法を用いて製造したものが、その後、機械加工して所定の容積を除去し、半インゴットおよびその他の部分インゴットにしたものである。半インゴットおよび部分インゴットは、機械加工して十分な容積が除去されモールドツール内に再挿入された時に残りのモールド・キャビティ空間内に新たなポリマーが流れ込むことのできる中実インゴットでもよい。残りのキャビティ空間内への射出準備の整った射出成形機に、無充填PEEK(または、ポリマーに加えて任意選択的な充填剤を含有する代替混合物)を充填してもよい。
【0164】
実施例11 棒材の押出成形
顆粒を使用し押出成形により、棒材を作製してもよい。棒材を機械加工して医療装置を画定し、その後、ガラスの除去により生体内での多孔性を生み出すことができるはずである。
【0165】
実施例12 フィルムの形成
実施例7の顆粒からフィルム状および薄シート状の材料を作製するために、数個の部品を合わせてサンドイッチ状にしたものから成るテンプレートを使用してもよい。中央形状(通常、正方形)にくり抜かれた1mm厚の金属板の下面に、楽に外せるよう膠着防止剤で被覆した薄いアルミホイルシートを位置付けしてもよい。中央くり抜き部内に十分な量の顆粒を入れ、くり抜き部をざっと覆い、収縮を見越してツールから溢れさせてもよい。
【0166】
実施例13 大規模フィルム生産
スリットダイを通じて顆粒を押出成形することにより、フィルムを調製して所期の寸法のフィルムを画定してもよい。
【0167】
実施例14 直接的な装置または構成部品形状の射出成形
上記の方法に従って、実施例7の顆粒を、機械加工することなく医療装置の一部または全部を画定するようモールド・キャビティが配置されている射出成形機に送り込んでもよい。
【0168】
上記の実施例に記載した工程および生成物、もしくはそのいずれかは、広汎な用途を有してもよい。
【0169】
一般論として、顆粒は、充填または未充填のポリエーテルエーテルケトンを含有する標準的顆粒が使用されるような状況に使用してもよい。かかる状況は、押出成形、同時押出成形、成形またはオーバーモールドの工程を含む。
【0170】
フィルムは、柔組織または硬組織と置換するよう調製してもよい。かかる配置は、構造補強のために薄い支持層が必要となるような外傷または頭蓋顎顔面傷害の治療に役立つものでもよい。材料に細孔を設ける(生体内でガラスの浸出により形成されてもよい)と、内殖により組織の固定および統合が促進される。
【0171】
ガラスを含有し、負荷が好適で粒子サイズが適切な顆粒を使用し、顆粒を溶融するとともにダイを通じて材料を押出成形しチューブ状に成形することにより、チューブを作製してもよい。この形状は、(例えば空気中またはコンベアライン上で)冷却して様々な長さに切断することができる。チューブは、提案する用途に応じて剛性壁または薄壁にすることができ、構成部品または機能部分としての用途を有してもよい。チューブの管腔は、空のままであるか、または未充填もしくは充填PEEK、別のポリマーもしくは金属を充填することができるはずである。管腔内に追加する材料は、溶融加工(例えば材料上へのオーバー押出)を用いて挿入し、永久的に結合させることができる。内部材料は因子を含有してもよく、かかる因子が、ガラスの溶解により形成された細孔を通じて出て行き、用途に応じて細孔サイズが1〜1000μmの範囲の構造的多孔質PEEKチューブ内の、特定の活性を伝達する。
【0172】
一例として、微孔を加工した小直径チューブ/中空繊維を、骨内殖繊維として使用するために、ガラスを使用して作製してもよい。
【0173】
別の実施形態では、上記の顆粒を使用して、生体内での医療用途に使用するネジまたはボルトを、挿入できるようにオーバーモールドしてもよいが、ガラスの溶解により形成される特定の細孔を画定することにより、組織内殖を改善してもよい。
【0174】
顆粒を使用して押出成形により、単一または多重フィラメントの繊維を作製してもよい。多孔性は生体内で形成されてもよい。繊維を縫合糸または撚り糸に使用してもよく、その後、かかる糸を織物、組み紐もしくは編み地または不織布にして、移植に適した生地にすることもできるはずである。
【0175】
顆粒は、固着または組織統合の改善が必要とされる装置の製造に使用してもよい。図6を参照すると、ポリマー製寛骨臼カップは、PEEKと炭素繊維とを含有する混合材料から作られるようなカップ本体2、およびガラスを含有するポリマー(例えばPEEK)を含有するとともに、実施例7に説明した通りに作られた顆粒でオーバーモールドされるようなオーバーモールド外層4を含む。ガラスは、生体内で層4から浸出し多孔質層4から離脱してもよく、それにより組織統合が促進されてもよい。
【0176】
図7aおよび図7bに記載のさらなる変形形態では、寛骨臼カップは、カップ本体2、および今度は半球面だけを被覆する外層4を含む。他方の半球面6は、異なる材料(例えば、代替充填剤入りまたはエラストマーのような成形可能材料入りPEEK)で形成してもよい。
【0177】
一般論として、上記の顆粒を他の材料と併せて使用し、組み合わせ材料に標的機能領域を設けて、特定の領域に有益な特性を与えるような装置が作られるようにしてもよい。例えば、図8を参照すると、領域10は、主要構造支持を提供するよう配置されて、骨を厳密に模倣する未充填または炭素繊維充填のPEEK枠を有してもよい。端部又はある特定
の側部/区域にあって骨に接触するとともに内殖を必要するような(例えば領域12,14内の)特定の区域は、潜在的に多孔質のPEEKを画定するよう成形してもよく、および移植中に吸収されて細孔を残すことができる形態の、ガラスが充填されたPEEKを具備してもよく、もしくはそのいずれかであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料と、セラミック材料とを含有する材料において、
前記ポリマー材料が、
(a)フェニル部分と、
(b)ケトン部分と、
(c)エーテル部分とを含む種類のものであり、
前記セラミック材料が、生体活性ガラスおよび放出制御ガラス、もしくはそのいずれかであり、
前記セラミック材料が、20モル%未満の酸化ナトリウムを含み、および水溶性、もしくはそのいずれかである、材料。
【請求項2】
前記セラミック材料内のアルカリ金属酸化物の総量が20モル%未満、および前記セラミック材料内のアルカリ金属酸化物の総量が10モル%未満である、請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
前記セラミック材料が、網目構造連結性が2以上で3.2未満の生体活性ガラスを含有している、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記セラミック材料が放出制御ガラスを含有し、前記放出制御ガラスが、20モル%未満の二酸化珪素を含有し、ガラス形成体として五酸化リンを含有し、10モル%未満の酸化ナトリウムを含有し、前記放出制御ガラス内のアルカリ金属酸化物の総量が10モル%未満であり、前記放出制御ガラスが、アルカリ土類金属の酸化物もしくは炭酸塩またはランタニドの酸化物もしくは炭酸塩を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記放出制御ガラスが38℃の水に完全に溶解できる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記放出制御ガラスが溶解時に7未満のpHを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記生体活性ガラスが、ガラス形成体として30モル%以上の二酸化珪素を含有する、請求項*に記載の材料。
【請求項8】
前記材料が粒子を含有し、前記粒子が前記ポリマー材料および前記セラミック材料を含み、前記粒子が0.1〜1mlの範囲の容積を有し、前記材料中の粒子の平均重量が0.01g〜0.1gの範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記材料が粒子を含み、前記粒子が40〜80重量%のセラミック材料と20〜60重量%の前記ポリマー材料とを含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記材料が、60〜80重量%のセラミック材料および20〜40重量%のポリマー材料を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の材料。
【請求項11】
前記材料中のポリマー材料の重量対セラミック材料の重量の比が0.25〜1の範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料。
【請求項12】
前記ポリマー材料が、下記一般式IVの反復単位、
【化1】

または下記一般式IVの反復単位を有し、
【化2】

AおよびBが別個に0または1を表し、EおよびE’が別個に酸素原子もしくは硫黄原子または直接結合を表し、Gが酸素原子もしくは硫黄原子、直接結合、またはPhがフェニル基を表す−O−Ph−O−部分を表し、m,r,s,t,v,wおよびzが0または1を表し、Arが、1つ以上のフェニル部分を介して隣接部分に結合されている下記の部分(i)〜(v)のうちの1つから選択される、
【化3】

請求項1〜11のいずれか一項に記載の材料。
【請求項13】
前記ポリマー材料が、好ましくは下記の式(XX)の反復単位を有し、より好ましくは本質的に前記反復単位から成り、
【化4】

t1およびw1が別個に0または1を表し、v1が0,1または2を表す、請求項1〜12のいずれか一項に記載の材料。
【請求項14】
前記ポリマー材料が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンおよびポリエーテルケトンケトンから選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の材料。
【請求項15】
前記ポリマー材料がポリエーテルエーテルケトンである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の材料。
【請求項16】
前記セラミック材料が、前記ポリマー材料の融点より高いガラス転移温度を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の材料。
【請求項17】
前記材料が本質的に1種類のポリマー材料と1種類のセラミック材料とから成る、請求項1〜16のいずれか一項に記載の材料。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の材料を製造するための方法において、
(a)請求項1〜17のいずれか一項に記載の前記ポリマー材料と前記セラミック材料とを接触させるステップと、
(b) 前記混合物を材料に形成するステップとを備える方法。
【請求項19】
前記ポリマー材料とセラミック材料とが押出機内で溶融加工され、一定の長さの混合物を押出成形して前記長さを細分することにより粒子が画定される、請求項*に記載の方法。
【請求項20】
構成部品を製造するための方法において、
(a)請求項1〜*のいずれかに各々記載の通りのポリマー材料とセラミック材料とを溶融加工し、前記構成部品の少なくとも一部を画定するステップと、
(b)任意選択的に前記セラミック材料を除去するステップとを備える方法。
【請求項21】
前記材料が溶融加工され、繊維、ロッド、チューブ、バー、プレート、フィルム、または略網目状のインゴットにされる、請求項*に記載の方法。
【請求項22】
前記の種類の前記材料の塊を成形することにより第1の領域を作るステップと、前記材料の塊の組成と異なる第2の組成を成形することにより前記第1の領域に隣接して第2の領域を成形するステップとを備える工程で、様々な組成の領域を含む構成部品の作製に用いられる、請求項*〜*のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(b)で前記セラミック材料を除去するステップを伴う、請求項*〜*のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
請求項*〜*のいずれかに記載の方法で得られる構成部品またはその一部。
【請求項25】
人体への移植用の医療用インプラントであって、ポリマー材料およびセラミック材料を含む材料を含有し、
前記ポリマー材料が、
(a)フェニル部分と、
(b)ケトン部分と、
(c)エーテル部分とを有する種類のものであり、
前記セラミック材料が、生体活性ガラスおよび放出制御ガラス、もしくはそのいずれかであり、
前記セラミック材料が、20モル%未満の酸化ナトリウムを含み、および水溶性、もしくはそのいずれかである、医療用インプラント。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−505947(P2012−505947A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531570(P2011−531570)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051371
【国際公開番号】WO2010/043900
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508121658)インヴィバイオ リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】INVIBIO LIMITED
【Fターム(参考)】