説明

ポリマー混合物および射出成形品のためのその使用

本発明は請求項1記載の(メタ)アクリレート(コ)ポリマー成分a)、b)、c)および/またはd)をベースとするポリマー混合物に関し、前記ポリマー混合物から製造される試験体は以下の特性を有する。I.少なくとも2600MPaの引っ張り弾性率(ISO527)、II.少なくとも109℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、III.少なくとも17KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)およびIV.少なくとも1.5cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)。本発明は更に射出成形体および射出成形体を製造するための前記ポリマー混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー混合物および射出成形品のためのその使用に関する。
【0002】
従来の技術
少ない燃料消費の高まる要求から出発して自動車工業は自動車の自重を絶えず更に減少することを求める。過去において自動車外装部分に広い範囲でスチール部品が使用されたが、経済的な理由からこれらの部品を低い密度を有し、同時に製造費用が少ない材料から製造することが期待される。
【0003】
これらの成形部品の特性は低い自重、同時に高い耐候性、高い剛性、良好な耐衝撃性、特に長時間の使用温度範囲で加熱した場合の良好な寸法安定性、例えば洗剤に対する良好な耐薬品性、良好な引っ掻き強さおよび高い光沢により決定される。
【0004】
鋼板を使用する場合に、鋼板の自重の不足のほかに更に等級A表面を達成するために、成形部品を製造の後に塗装しなければならないという欠点が存在する。従って質量を低下するために、スチール部品をプラスチック部品に交換することが多くなり、同時に部品形状に関して高い形態的自由度に対する自動車設計者の要求を考慮する。
【0005】
この分野では従来種々の熱可塑性樹脂、例えばPC、ASA、ASA/PC、PMMAおよびガラス繊維充填ポリマー、例えばガラス繊維充填ポリアミドが使用された。
【0006】
成形部品は一般に射出成形法により製造するので、熱可塑性樹脂を使用する場合に、部品の形状(少ない層厚で長い流動通路)を考慮して、不良品を避けるために、プラスチック溶融物の良好な流動性に対する要求が更に存在する。自動車製造者に広い範囲で色の選択を可能にするために、プラスチックは更に光の透過性が高い場合に固有色をほとんど有するべきでない。
【0007】
ガラス繊維強化プラスチックの使用は良好な機械的特性を生じるが、この場合にも均一な光沢のある等級A表面特性を達成するために、鋼板と同様に後での塗装が必要である。
【0008】
ポリカーボネートは高い熱形状安定性のほかにきわめて良好な靱性を有する。しかしこの場合に黄色化を生じる不足する耐候性および低い表面の硬さが表面の塗装を必要とする。更にこの材料の不十分な剛性が前記使用に問題である。
【0009】
ASA、PMMAおよびASAとPCの混合物のような熱可塑性材料はポリカーボネートに比べて改良された耐候性を有する。しかしASAおよびASA/PCにおいては材料の剛性および不足する引っ掻き強さを生じる表面の硬さが前記部品の要求を満足するために十分でない。
【0010】
PMMAは優れた耐候性および光学特性、高い剛性、高い表面硬さ、良好な熱形状安定性、および良好な溶融流動性を有する材料である。しかし前記使用のためにはPMMAの靱性が低すぎる。この不足を相殺するために、PMMAを技術水準から知られた衝撃性改良剤と混合することにより最適化できる。しかしこの改良により熱形状安定性および表面硬さが低下し、耐衝撃性改良PMMAが前記要求を満たさなくなる。
【0011】
良好な材料特性を有するポリメチルメタクリレートをベースとする多くの市販された成形材料が知られている。
【0012】
課題と解決手段
ポリメチルメタクリレートをベースとする多くの市販された成形材料はすでにきわめて満足する材料特性を有するが、質的に価値の高い射出成形部品、例えば自動車外装部品を製造するために要求される特性がすべての個々の要求に一様に達成できないという欠点を有する(比較例4〜9)。これはこれらの部品の使用可能性をきわめて制限する。
【0013】
従って本発明の課題は前記欠点を有しない釣り合いのとれた特性を有する熱可塑性材料を提供することである。
【0014】
前記課題は、以下の成分:
a)25℃でクロロホルム中55ml/g以下の溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる低分子(メタ)アクリレート(コ)ポリマー
b)架橋ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性改良剤
c)25℃でクロロホルム中65ml/g以上の溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる高分子(メタ)アクリレート(コ)ポリマーおよび/または
d)25℃でクロロホルム中50〜55ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられるa)と異なる他の(メタ)アクリレート(コ)ポリマー
を含有するポリマー混合物により解決され、成分a)、b)、c)および/またはd)はそれぞれ個々のポリマーまたはポリマーの混合物であってもよく、成分a)、b)、c)および/またはd)は合計して100質量%であり、
ポリマー混合物は更に一般的な添加剤、助剤および/または充填剤を含有することができ、ポリマー混合物から製造される試験体が同時に以下の特性:
I.少なくとも2600MPaの引っ張り弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、
III.少なくとも17KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)および
IV.少なくとも1.5cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)
を有する。
【0015】
発明の実施
ポリマー混合物
本発明は成分a)、b)およびc)および/またはd)を含有するポリマー混合物に関する。従ってポリマー混合物は成分a)、b)およびc)からまたは成分a)、b)およびd)からまたは4個のすべての成分からなっていてよい。成分a)、b)、c)および/またはd)はそれぞれ個々のポリマーとしてまたは相当する定義の複数のポリマーの混合物として存在することができる。
【0016】
ポリマー混合物の特性
成分a)、b)およびc)および/またはd)はポリマー混合物から製造される試験体が同時に以下の特性:
I.少なくとも2600MPa、有利に少なくとも2750MPa、特に少なくとも2850MPaまたは3000MPaの引張り弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃、有利に少なくとも110℃、特に少なくとも112℃、例えば110〜125℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、
III.少なくとも17KJ/m、有利に少なくとも18KJ/m、20KJ/m、25KJ/mまたは30KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)および
IV.少なくとも1.5cm/10分、有利に少なくとも1.65cm/10分、2.0cm/10分または3.0cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)
を有するように量割合および組成が選択される。
【0017】
一般的な添加剤、助剤および/または充填剤は前記特性をできるだけ損なわないかまたは最高でも損傷が少なくなるように選択する。
【0018】
他の特性
成分a)、b)およびc)および/またはd)は更にポリマー混合物から製造される試験体が少なくとも以下の特性の一部を有するように量割合および組成が選択される。
【0019】
固有色
DIN5033/7による光透過率TD65が少なくとも50%、有利に少なくとも55%。
【0020】
黄色値
DIN6167(光種類D65、層厚3mmで10°)により決定した黄色値は20未満、有利に17未満であるべきである。
【0021】
耐化学薬品性
以下の一定の外部繊維伸び%で、イソプロパノールで表面を湿らせた場合の破断時間
0.39%:>1800秒、
0.50%:>700秒。
以下の一定の外部繊維伸び%で、エタノール/水の70:30の比率の混合物で表面を湿らせた場合の破断時間
0.39%:>1800秒、
0.50%:>200秒。
【0022】
表面硬さ
以下の力をかけた場合のテーバー引掻き硬度
0.7N:表面の損傷が検出されない
1.5N:2.0μm未満、有利に1.6μm未満
3.0N:6μm未満、有利に5μm未満。
【0023】
表面光沢
R(60°):>48%、有利に>50%。
【0024】
成分の量的割合
成分が存在する量的割合は以下のとおりであり、合計100質量%になる。
成分a)25〜75質量%、有利に40〜60質量%、特に45〜55質量%、
成分b)10〜60質量%、有利に10〜20質量%
成分c)および/またはd)10〜50質量%、有利に12〜40質量%。
【0025】
c)が30〜45質量%、有利に35〜40質量%であり、d)が有利に存在しない場合に(例3参照)、116〜120℃の範囲のきわめて高いVST値を有する試験体が得られる。
【0026】
c)およびd)が両方存在し、成分の割合が有利にc)10〜15質量%およびd)15〜25質量%である場合に(例2参照)、R(60°)=48〜50の高い光沢と一緒に114〜118℃の範囲の高いVST値を有する試験体が得られる。
【0027】
d)が30〜40質量%、有利に33〜38質量%であり、c)が有利に存在しない場合に(例1参照)、きわめて低い程度の固有色および60〜65%の範囲のDIN5033/7による光透過率TD65と一緒に109〜113℃の範囲のVST値を有する試験体が得られる。
【0028】
ポリマー混合物は一般的な添加剤、助剤および/または充填剤を含有できる。
【0029】
ポリマー混合物の製造
ポリマー混合物は、粉末状、粒状または有利にペレットの形で存在できる成分のドライブレンディングにより製造できる。
【0030】
ポリマー混合物は個々の成分を溶融し、溶融状態で混合することにより、または個々の成分の乾燥予備混合物を溶融することにより処理してすぐ使用できる成形材料を生じることができる。例としてこれを一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機中で行うことができる。得られた押出品を引き続きペレット化できる。一般的な添加剤、助剤および/または充填剤を直ちに混合するかまたは引き続き必要とされる最終的使用者により添加することができる。
【0031】
成分a)
成分a)は25℃でクロロホルム中、55ml/g以下、有利に50ml/g以下、特に45〜55ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる低分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。
【0032】
これは95000g/モルの分子量Mw(質量平均)に相当する(Mwは検量標準としてポリメチルメタクリレートに関してゲル浸透クロマトグラフィーにより決定する)。例えば分子量Mwはゲル浸透クロマトグラフィーまたは光散乱法(例えばB.H.F.Mark等、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、10巻、1頁以降、J.Wiley、1989参照)により決定できる。
【0033】
成分a)は有利にメチルメタクリレート、スチレンおよび無水マレイン酸からなるコポリマーである。
【0034】
例として、適当な成分の割合は、以下のとおりであってよい:
メチルメタクリレート50〜90質量%、有利に70〜80質量%、
スチレン10〜20質量%、有利に12〜18質量%、および
無水マレイン酸5〜15質量%、有利に8〜12質量%。
【0035】
相当するコポリマーは公知の方法でラジカル重合により得ることができる。例として欧州特許第264590号は、メチルメタクリレート、ビニル芳香族化合物および無水マレイン酸からなるモノマー混合物、および場合により低級アルキルアクリレートから成形材料を製造する方法を記載し、その際非重合性有機溶剤の存在または不在で50%変換するまで重合を行い、少なくとも50%の変換をこえて有機溶剤の存在で少なくとも80%の変換まで重合を継続し、引き続き低分子揮発性成分を蒸発する。
【0036】
特開昭60−147417号は高い耐熱性のポリメタクリレート成形材料の製造方法を記載し、その際メチルメタクリレート、無水マレイン酸および少なくとも1種のビニル芳香族化合物からなるモノマー混合物を、溶液重合または塊状重合に適した反応容器に導入し、100〜180℃の温度で重合する。ドイツ特許第4440219号は他の製造方法を記載する。
【0037】
例えばメチルメタクリレート6355g、スチレン1271gおよび無水マレイン酸847gからなるモノマー混合物を、例えば重合開始剤としてt−ブチルペルネオデカノエート1.9gおよびt−ブチル3,5,5−トリメチルペルオキシヘキサノエート0.85gおよび分子量調節剤として2−メルカプトエタノール19.6gおよびパルミチン酸4.3gを用いて処理することにより成分a)を製造できる。得られた混合物を重合室に導入し、例えば10分間ガス抜きする。前記材料を引き続き水浴中で例えば60℃で6時間引き続き水浴温度55℃で30時間重合させる。約30時間後、重合混合物が約126℃の最高温度に達する。水浴から重合室を取り出した後で重合室中の成分a)に適したように、例えば熱風乾燥室中、117℃で約7時間、ポリマーを熱処理する。
【0038】
成分b)
成分b)は架橋ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性改良剤である。成分b)は有利に2個または3個のシェル構造を有する。
【0039】
ポリメタクリレートの耐衝撃性改良剤は周知である。例えば欧州特許第0113924号、欧州特許第0522351号、欧州特許第0465049号、欧州特許第0683028号および米国特許第3793402号は耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料の製造および構造を記載する。例えば適当な市販された製品はMETABLEN(登録商標)IR441、三菱レーヨンである。
【0040】
耐衝撃性改良剤
ポリメタクリレートマトリックスは有利に耐衝撃性改良剤1〜30質量%、より有利に2〜20質量%、特に3〜15質量%、特に有利に5〜12質量%を含有する。これらの耐衝撃性改良剤は架橋ポリマー粒子からなるエラストマー相を有する。耐衝撃性改良剤は公知方法で粒状重合または乳化重合により得られる。
【0041】
最も簡単な場合は50〜500μm、有利に80〜120μmの範囲の平均粒度を有する、粒状重合により得られる架橋粒子の場合である。これらは一般にメチルメタクリレート少なくとも40質量%、有利に50〜70質量%、ブチルアクリレート20〜40質量%、有利に25〜35質量%、および架橋モノマー、例えば多官能性(メタ)アクリレート、例えばアリルメタクリレート0.1〜2質量%、有利に0.5〜1質量%、および場合により他のモノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、例えばエチルアクリレートまたはブチルアクリレート、有利にメチルアクリレート、またはビニル重合可能な他のモノマー、例えばスチレン0〜10質量%、有利に0.5〜5質量%からなる。
【0042】
有利な耐衝撃性改良剤は2個または特に3個の層からなるコア−シェル構造を有し、乳化重合により得られるポリマー粒子である(例えば欧州特許第0113924号、欧州特許第0522351号、欧州特許第0465049号および欧州特許第0683028号参照)。これらの典型的な粒度(直径)は100〜500nm、有利に200〜400nmの範囲である。
【0043】
1つのコアおよび2つのシェルを有する三層または三相構造を以下の方法を使用して製造することができる。最も内側の(硬質)シェルは例えば実質的にメチルメタクリレート、きわめて少ない割合のコモノマー、例えばエチルアクリレートおよび架橋剤、例えばアリルメタクリレートからなっていてもよい。中間の(軟質)シェルは例えばブチルアクリレートおよび場合によりスチレンからなる構造を有することができるが、最も外側の(硬質)シェルは多くは実質的にマトリックスポリマーと同じ構造であり、これによりマトリックスに対する相容性および良好な接合を生じる。耐衝撃性改良剤中のポリブチルアクリレートの割合は耐衝撃性に決定的であり、有利に20〜40質量%、特に25〜35質量%の範囲である。
【0044】
成分c)
成分c)は単独にまたは成分d)と一緒に存在してもよい任意成分である。
【0045】
モノマー組成物中の成分c)は成分a)と同じであってもよい。製造は、かなり高い分子量ポリマーを生じるために、重合パラメーターを選択する以外は、実質的に類似していてもよい。これは例えば使用される分子量調節剤の量の減少により達成できる。
【0046】
成分c)はクロロホルム中、25℃で65ml/g以上、有利に68〜75ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる、かなり高い分子量の(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。
【0047】
これは160000g/モルの分子量Mw(質量平均)に相当する(Mwは検量標準としてポリメチルメタクリレートに関してゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した)。例えば分子量Mwはゲル浸透クロマトグラフィーによりまたは光散乱法により決定できる(例えばB.H.F.Mark等、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、10巻、1頁以降、J.Wiley、1989参照)。
【0048】
モノマー組成物中の成分c)は成分a)と同じであってもよい。成分c)は有利にメチルメタクリレート、スチレンおよび無水マレイン酸のコポリマーである。
【0049】
例として、適当な成分の割合は、以下のとおりであってよい:
メチルメタクリレート50〜90質量%、有利に70〜80質量%、
スチレン10〜20質量%、有利に12〜18質量%、および
無水マレイン酸5〜15質量%、有利に8〜12質量%。
【0050】
成分d)
成分d)は単独にまたは成分c)と一緒に使用できる任意成分である。
【0051】
成分d)はクロロホルム中、25℃で50〜55ml/g、有利に52〜54ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる、a)と異なる他の(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。
【0052】
これは80000〜200000g/モル、有利に100000〜150000g/モルの分子量Mw(質量平均)に相当する(Mwは検量標準としてポリメチルメタクリレートに関してゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した)。例えば分子量Mwはゲル浸透クロマトグラフィーによりまたは光散乱法により決定できる(例えばB.H.F.Mark等、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、10巻、1頁以降、J.Wiley、1989参照)。
【0053】
成分d)はメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレート少なくとも80質量%および場合によりメチルメタクリレートと共重合可能な他のモノマー20質量%までのコポリマーである。
【0054】
成分d)はラジカル重合したメチルメタクリレート単位80〜100質量%、有利に90〜95質量%および場合によりラジカル重合可能な他のコモノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、特にメチルアクリレート、エチルアクリレートまたはブチルアクリレート0〜20質量%からなる。マトリックスの平均分子量Mwは有利に90000〜200000g/モル、特に100000〜150000g/モルの範囲である。
【0055】
成分d)は有利にメチルメタクリレート95〜99.5質量%およびメチルアクリレート0.5〜5質量%、有利に1〜4質量%からなるコポリマーである。
【0056】
成分d)は.少なくとも107℃、有利に108〜114℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)を有することができる。メルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)は例えば2.5cm/10分以上の範囲であってもよい。
【0057】
一般的な添加剤、助剤および/または充填剤
ポリマー混合物は自体公知の方法で一般的な添加剤、助剤および/または充填剤、例えば熱安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤を含有できる。
【0058】
射出成形法のために潤滑剤または離型剤が特に重要であり、射出成形体へのポリマー混合物の起こりうる付着を阻止または排除できる。
【0059】
例えば助剤として存在する潤滑剤は20個より少ない、有利に16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の群、または20個より少ない、有利に16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪アルコールの群から選択できる。ポリマー混合物に対して多くても0.25質量%、例えば0.05〜0.2質量%のきわめて少ない成分割合が有利である。
【0060】
適当な物質の例はステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸とパルミチン酸の工業的混合物である。他の適当な物質の例はn−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、およびn−ヘキサデカノールとn−オクタデカノールの工業的混合物である。
【0061】
1つの特に有利な潤滑剤または離型剤はステアリルアルコールである。
【0062】
射出成形体
射出成形体は本発明のポリマー混合物から自体公知の方法で射出成形法により製造できる。
【0063】
使用
ポリマー混合物は以下の特性を有する射出成形体を製造するために使用できる。
I.少なくとも2600MPa、有利に少なくとも2750MPa、特に少なくとも2850MPaの引っ張り弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃、有利に少なくとも110℃、特に少なくとも112℃、例えば110〜118℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、
III.少なくとも17KJ/m、有利に少なくとも18KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)および
IV.少なくとも1.5cm/10分、有利に1.65cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)。
【0064】
射出成形体は家庭用器具、伝達器具、趣味またはスポーツ用器具の部品として、または自動車、船舶または航空機の構造の車体部品または車体部品の部品として使用できる。自動車の車体部品または車体部品の部品の典型的な例はスポイラー、板材、屋根部品、外部ミラーケースである。
【0065】
発明の有利な効果
本発明のポリマー混合物または本発明の成形材料は成形体、特に自動車外装部品のようなきびしい材料の要求を満たす射出成形部品を製造するために使用できる。4つの特に重要な要求、引っ張り弾性率、ビカー軟化温度、衝撃強さ、およびメルトインデックスがここで連続しておよび同時に首尾よく満たされ、大きさの程度は処理および使用に適している。特に良好な流動性は精巧な形状の部品に関しても必要な射出成形の処理能力を生じる。意想外にも、ここで得られる射出成形部品は高い耐候性および耐熱性と一緒に十分な靱性を有する。更に一連の他の好ましい特性、例えば耐化学薬品性、黄色度指数、および固有色がきわめて満足したやり方で達成される。この特性は成分a)〜d)の混合比によりそれぞれの場合の要求に個々に調節できる。
【0066】
実施例
成分a)の製造
メチルメタクリレート6355g、スチレン1271gおよび無水マレイン酸847gのモノマー混合物を、重合開始剤としてt−ブチルペルネオデカノエート1.9gおよびt−ブチル3,5,5−トリメチルペルオキシヘキサノエート0.85gおよび分子量調節剤として2−メルカプトエタノール19.6gおよびパルミチン酸4.3gで処理する。得られた混合物を重合室に導入し、10分間ガス抜きする。その後水浴中、60℃で6時間、引き続き水浴温度55℃で30時間重合させる。約30時間後に重合混合物が126℃の最高温度に達する。重合室を水浴から取り出した後に重合室中のポリマーを熱風乾燥室中で、117℃で更に7時間熱処理する。
【0067】
得られたコポリマーは透明でほとんど無色であり、48.7ml/gのVN(クロロホルム中、25℃でのISO1628−6による溶液粘度数)を有する。コポリマーの流動性をISO1133により、230℃、3.8kgで、MVR3.27cm/10分として測定した。
【0068】
成分a)はメチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%および無水マレイン酸10質量%からなる前記のコポリマーである。
【0069】
使用される成分b)は市販されている耐衝撃性改良剤、METABLEN(登録商標)IR441、三菱レーヨンからなっていた。
【0070】
使用される成分c)はクロロホルム中、25℃で68ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)を有する、メチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%および無水マレイン酸10質量%からなる市販されているコポリマーからなっていた。
【0071】
使用される成分d)はクロロホルム中、25℃で約52〜54ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)を有する、メチルメタクリレート99質量%およびメチルアクリレート1質量%からなる市販されているコポリマーからなっていた。
【0072】
本発明の実施例1〜3
実施例1:
ポリマー混合物は以下の成分からなっていた:
成分a)50質量%、
成分b)15.6質量%、
成分c)0質量%、
成分d)34.4質量%、
潤滑剤:n−オクタデカノール0.1質量%(成分a)〜d)の全部に対して)。
【0073】
実施例2:
ポリマー混合物は以下の成分からなっていた:
成分a)50質量%、
成分b)13質量%、
成分c)15質量%、
成分d)22質量%。
【0074】
実施例3
ポリマー混合物は以下の成分からなっていた:
成分a)50質量%、
成分b)13質量%、
成分c)37質量%、
成分d)0質量%。
【0075】
比較例4〜9
比較例4:
耐衝撃性改良剤34質量%を含有する、メチルメタクリレート99質量%およびエチルアクリレート1質量%からなるマトリックスを有する市販されている耐衝撃性改良成形材料。
【0076】
比較例5:
メチルメタクリレート96質量%およびメタクリル酸4質量%からなる市販されている成形材料。
【0077】
比較例6:
メチルメタクリレート99質量%およびメチルアクリレート1質量%からなる市販されている成形材料、Mw約110000。
【0078】
比較例7:
三相耐衝撃性改良剤20質量%を含有する、メチルメタクリレート99.5質量%およびn−ブチルアクリレート0.5質量%からなるマトリックスを有する、市販されている耐衝撃性改良成形材料。
【0079】
比較例8:
メチルメタクリレート99質量%およびメチルアクリレート1質量%からなる市販されている成形材料、Mw約110000(比較例6の成形材料と製造者が異なる)。
【0080】
比較例9:
クロロホルム中、25℃で68ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)を有する、メチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%および無水マレイン酸10質量%からなる、市販されている成形材料(実施例1〜3の成分c)に相当する)。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
a)25℃でクロロホルム中55ml/g以下の溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる低分子(メタ)アクリレート(コ)ポリマー
b)架橋ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性改良剤
c)25℃でクロロホルム中65ml/g以上の溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられる高分子(メタ)アクリレート(コ)ポリマーおよび/または
d)25℃でクロロホルム中50〜55ml/gの溶液粘度(ISO1628、6部)により特徴付けられるa)と異なる他の(メタ)アクリレート(コ)ポリマー
を含有するポリマー混合物であり、成分a)、b)、c)および/またはd)はそれぞれ個々のポリマーまたはポリマーの混合物であってもよく、成分a)、b)、c)および/またはd)は合計して100質量%であり、
ポリマー混合物は更に一般的な添加剤、助剤および/または充填剤を含有することができ、ポリマー混合物から製造される試験体が同時に以下の特性:
I.少なくとも2600MPaの引っ張り弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、
III.少なくとも17KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)および
IV.少なくとも1.5cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)
を有するポリマー混合物。
【請求項2】
成分が以下の量割合:
a)25〜75質量%、
b)10〜60質量%
c)および/またはd)10〜50質量%
で存在し、合計して100質量%になる請求項1記載のポリマー混合物。
【請求項3】
成分a)がメチルメタクリレート、スチレンおよび無水マレイン酸からなるコポリマーである請求項1または2記載のポリマー混合物。
【請求項4】
成分a)がメチルメタクリレート50〜90質量%、スチレン10〜20質量%および無水マレイン酸5〜15質量%からなるコポリマーである請求項3記載のポリマー混合物。
【請求項5】
成分b)が二層シェルまたは三層シェルの構造を有する請求項1から4までのいずれか1項記載のポリマー混合物。
【請求項6】
成分c)がメチルメタクリレート、スチレンおよび無水マレイン酸からなるコポリマーである請求項1から5までのいずれか1項記載のポリマー混合物。
【請求項7】
成分c)がメチルメタクリレート50〜90質量%、スチレン10〜20質量%および無水マレイン酸5〜15質量%からなるコポリマーである請求項6記載のポリマー混合物。
【請求項8】
成分d)がメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレート少なくとも80質量%および場合によりその他のメチルメタクリレートと共重合可能なモノマー20質量%までからなるコポリマーである請求項1から7までのいずれか1項記載のポリマー混合物。
【請求項9】
成分d)がメチルメタクリレート95〜99.5質量%およびメチルアクリレート0.5〜5質量%からなるコポリマーである請求項8記載のポリマー混合物。
【請求項10】
助剤として潤滑剤が含まれている請求項1から9までのいずれか1項記載のポリマー混合物。
【請求項11】
離型剤としてステアリルアルコールが含まれている請求項10記載のポリマー混合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のポリマー混合物からなる射出成形された成形体。
【請求項13】
以下の特性:
I.少なくとも2600MPaの引っ張り弾性率(ISO527)、
II.少なくとも109℃のビカー軟化温度VST(ISO306−B50)、
III.少なくとも17KJ/mの衝撃強さ(ISO179−2D、貫層)および
IV.少なくとも1.5cm/10分のメルトインデックスMVR(ISO1133、230℃/3.8kg)
を有する、射出成形された成形体を製造するための請求項1から11までのいずれか1項記載のポリマー混合物の使用。
【請求項14】
家庭用器具、伝達器具、趣味またはスポーツ器具、自動車、船舶または飛行機における車体部品または車体部品の部品としての請求項12または13記載の射出成形された成形体の使用。

【公表番号】特表2007−510009(P2007−510009A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534606(P2006−534606)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009704
【国際公開番号】WO2005/047392
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】