説明

ポリマー表面と改質されたガラス表面との間に界面を有する物品

物品は、(a)ガラス表面、およびガラス表面の少なくとも一部分と接触して配置され、そして結合しているナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、および(b)改質されたガラス表面と接触して配置され、そして結合しているポリマー層を含む。ガラス表面とポリマー表面との界面の加水分解安定性を改善するための方法は、ガラスとポリマー表面との界面を形成させる前に、ガラス表面の少なくとも一部分を、ナノスケールの無機酸化物粒子を用いて処理して、表面の一部分上に大量のそうした粒子を堆積させることによって、ガラス表面を改質するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2007年6月11日に出願の米国仮特許出願番号第61/002、003号明細書の利益を主張する。
本発明は、ポリマーとガラス表面との間に接着界面を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、ポリマー被膜または感圧性接着剤、およびガラス表面等のポリマーの間に耐久性のある接着界面を形成させることは困難である。これは、ポリマーによるガラス表面の乏しい濡れ性、ポリマーのガラス表面への乏しい接着性、およびポリマーガラス界面の乏しい加水分解安定性等の要因により、接着不良となる。ポリマー/ガラス界面を形成する前にシランカップリング剤でガラス表面の処理等のポリマー/ガラス接着界面の濡れ性、接着性および耐加水分解を改善するための公知技術がある。しかし、これらの技術は、常に効果的とは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、さらに耐久性のあるポリマー/ガラス接着界面を作るための改善されたアプローチへのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の形態において、本発明は、
(a)ガラス表面、およびガラス表面の少なくとも一部分と接触して配置され、そして結合しているナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、および、
(b)改質されたガラス表面と接触して配置され、そして結合しているポリマー層、
を含む物品を対象にする。
第2の形態において、本発明は、ガラスとポリマー表面との界面を形成させる前に、ガラス表面の少なくとも一部分を、ナノスケールの無機酸化物粒子を用いて処理して、表面の一部分上に大量の粒子を堆積させることを含む、ガラス表面とポリマー表面との界面の加水分解安定性を改善するための方法を対象にする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、水中に24時間浸漬させた後のコーティングされたガラスパネルを示す。
【図2】図2.1〜2.4は、水中に24時間浸漬させた後の予め処理されたコーティングされたガラスパネルを示す。
【図3】図3は、沸騰水中に1時間浸漬した後の未処理のガラスパネルおよびナノ粒子で処理したガラスパネル上の接着剤付き紙ラベルを示す。
【図4】図4は、沸騰水中に1時間浸漬した後の未処理のガラスパネル上の接着剤付きプラスチックラベルを示す。
【図5】図5は、沸騰水酸化カリウム溶液中に浸漬した後の未処理のガラスパネル上の接着剤付きプラスチックおよび紙ラベルを示す。
【図6】図6は、沸騰水中に1時間浸漬した後の未処理のガラスパネル上のアルキド被膜を示す。
【図7】図7は、沸騰水中に1時間浸漬した後の未処理およびナノ粒子で処理したガラスパネル上のポリウレタン被膜を示す。
【図8】図8は、沸騰水中に1時間浸漬した後の未処理のガラスパネル上のアクリルエナメル被膜を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のガラス基材の成分は、溶融ガラス、石英、ケイ素、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはアルミノケイ酸ガラス等のシリカ(SiO)を含むか、またはシリカから誘導されたガラスを含む任意のアモルファス無機材料、およびリン酸塩から誘導されたガラス、ホタル石、フルオロジルコニウム酸塩、フルオロアルミン酸塩、カルコゲニド、またはセラミック材料を含むシリカに基づかないガラス基材であることができる。
【0007】
好適なガラスは、任意選択的に、例えば、ソーダ灰、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ゲルマニウム、または酸化ランタン等の金属酸化物、および、バリウム、ホウ素、クロム、銅、鉛、鉄、金、チタン、カドミウム、またはニッケル等の金属、ならびに金属酸化物、金属および金属酸化物と金属の混合物を含むガラスの特性を変更する添加物を、さらに含むことができる。
【0008】
一態様では、本発明のガラス基材の成分は、シリカ系ガラス、さらに典型的には、酸化カルシウムを含むアルミノホウケイ酸ガラスであるタイプ「E」ガラス、「S」ガラス、または「C」ガラス繊維である。
【0009】
本発明のガラス基材の成分は、例えば、繊維、平板、平面または成形シート、棒、中空管、球、薄片、粉末、または第2の基材上において支持された連続もしくは不連続であることができる層として、を含む成形品等の任意の物理的形状であることができる。一態様では、ガラス基材は、平面パネル、瓶、または繊維等の成形された容器である。
【0010】
一態様では、ガラス基材の表面は、約200nm未満、さらに典型的には、約100〜約200nmの二乗平均平方根(「RMS」)表面粗さを有する。
【0011】
一態様では、ガラス基材は、約10nm未満、さらに典型的には、約2nm未満のRMS表面粗さを有する。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「一次粒子」の用語は、単一の離散した粒子を意味し、そして「二次粒子」の用語は、2つまたは3つ以上の一次粒子の凝集体を意味する。「一次」または「二次」を特定しない「粒子」への言及は、一次粒子、または二次粒子、または一次粒子および二次粒子を意味する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、粒子に関する「ナノスケール」の用語は、粒子が約1〜約1000ナノメートル(「nm」)の平均粒子直径(「D50」)を有することを意味する。一態様では、ナノスケールの一次粒子は、約5〜約1000nm、またさらに典型的には、約10〜約800nm、そしてまたさらに典型的には、約20〜約500nmのD50を有する。一態様では、ナノスケールの一次粒子は、約1〜約500nm、またさらに典型的には、約1〜約100nm、そしてまたさらに典型的には、約1〜約50nmのD50を有する。粒径は、動的光散乱を使用して決定できる。
【0014】
好適な無機酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステンおよび酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化インジウム、および酸化スズ、酸化鉄、ならびにそうした酸化物の混合物、ならびに酸化セリウムジルコニウム等のそうした元素の混合物の酸化物等の単一元素の酸化物を含む。
【0015】
無機酸化物粒子は、例えば、金属イオン、硝酸イオン等の結合(linked)または吸収(absorbed)イオンをさらに含むことができる。
【0016】
一態様では、無機酸化物は、結晶性の固体である。さらに典型的には、無機酸化物粒子の水性ゾルは、帯電力および/または静水力によって安定化されており、そしてpH、イオン性強度、および濃度の摂動による不安定化に曝される。そうした無機酸化物は、典型的には高度な酸性または高度なアルカリ性反応条件下で合成される。
【0017】
一態様では、無機酸化物は、酸化鉄、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムから選択される。さらに典型的には、無機酸化物は、酸化セリウムである。
【0018】
ゾルゲル技術、水添加による金属アルコキシドの直接加水分解、金属塩の強制加水分解または金属アルコキシドと金属ハロゲン化物との反応による等の好適な無機酸化物粒子を製造するための方法が知られている。
【0019】
一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子は、セリウム塩の沈殿によって製造される。
【0020】
一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子は、「スラリー」とも呼ばれる水媒体中に分散したそうした粒子のゾルの形態で最初に存在する。典型的には、水媒体は、少なくとも40wt%、さらに典型的には、少なくとも50wt%の水そしてまたさらに典型的には、少なくとも60wt%の水を含む。一態様では、水媒体は、本質的に水からなる。水媒体は、任意選択的に、例えば、テトラヒドロフラン、N、N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の(C〜C)アルカノールおよびエチレングリコールまたは、プロピレングリコール等のジオール等の1種または2種以上の水混和性有機液体をさらに含むことができる。
【0021】
一態様では、ゾルの水媒体は、100重量部(「pbw」)のそうした水媒体に基づいて、約0〜約100pbw、さらに典型的には、約40〜約100pbw、そしてまたさらに典型的には、約50〜約100pbwの水、および0〜約90pbw、さらに典型的には、0〜約60pbw、そしてまたさらに典型的には、約0〜約50pbwの1種または2種以上の水混和性有機液体を含む。
【0022】
ゾルは、安定なゾル、すなわち、ナノスケールの無機酸化物粒子が水媒体中に分散したままであるゾルを提供するのに効果的なpHを少なくとも最初に示す。一態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子のスラリーは、ナノスケールの酸化セリウム粒子を含み、そして約5以下のpHを示す安定なスラリーである。別の態様では、ナノスケールの無機酸化物粒子スラリーは、酸化ジルコニウム粒子からなり、そして約4以下のpHを示す安定なスラリーである。
【0023】
一態様では、ゾルは、ゾルの全重量に基づいて、0超〜約10wt%(wt%」)、さらに典型的には、約0.01〜約5wt%のナノスケールの無機酸化物粒子を含む。一態様では、ゾルは、約0.01〜約1.0wt%、そしてまたさらに典型的には、約0.01〜約0.5wt%のナノスケールの無機酸化物粒子を含む。
【0024】
一態様では、ゾルの水媒体は、ゾルを不安定化させることなく、ゾルから基材の表面上への粒子の堆積を促すのに効果的な量で溶解された電解質をさらに含む。理論に拘束されることを望まないが、電解質の存在は、ゾルのナノスケールの無機酸化物粒子間の静電相互作用を低下させ、そしてナノスケールの無機酸化物粒子が、ゾルから基材の表面上へ堆積するにつれて、帯電の蓄積を防止すると考えられている。一態様では、有効量の電解質は、100pbwの水媒体当り、すなわち、100pbwのゾルの水と任意の水混和性有機液体成分との合計量当たり、0超〜約1pbw、さらに典型的には、約0.01〜約0.1pbwの電解質である。
【0025】
好適な電解質は、ゾルから基材の表面上に粒子の堆積を促すのに効果的な量で存在する場合、ゾルを不安定化せず、そして有機塩、無機塩、およびそれらの混合物を含むものである。電解質は、典型的にはカチオン性成分およびアニオン性成分を有する塩を含む。好適なカチオンは、一価または多価であることができ、有機または無機であることができ、そして、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、およびリチウムカチオン、および第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウムまたはピリジニウムカチオンを含むことができる。好適なアニオンは、一価または多価であることができ、有機または無機であることができ、そして例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、シアネートアセテート、安息香酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、およびホスホン酸塩アニオンを含む。好適な電解質は、例えば、多価アニオンとピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウム等の一価のカチオンの塩、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ハロゲン化亜鉛、塩化バリウム、および硝酸カルシウム等の一価のアニオンと、多価のカチオンとの塩、および塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、臭化アンモニウム、アルカリ金属硝酸塩、希土類硝酸塩、および硝酸アンモニウム等の一価のアニオンと一価のカチオンとの塩を含む。
【0026】
一態様では、電解質は、多価のアニオンと一価のカチオンとの塩および一価のカチオンと一価のアニオンとの塩、の1種または2種以上を含む。
【0027】
一態様では、電解質は、一価のカチオン性成分および一価のまたは多価のアニオン性成分を含む。一態様では、電解質は、硝酸塩を含む。好適な硝酸塩は、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウム、ならびに硝酸アンモニウム、またはそれらの混合物等のアルカリ金属硝酸塩を含む。
【0028】
一態様では、電解質およびナノスケールの無機酸化物粒子を含む安定なナノスケールの無機酸化物粒子のゾルは、表面と安定な電解質を含むナノスケールの無機酸化物粒子のゾルとを接触させることによって、ゾルから基材の表面上に堆積される。
【0029】
一態様では、ゾルは、安定な電解質を含むナノスケールの酸化セリウム粒子のゾルであり、そして約3以下、さらに典型的には、約2以下のpHを示す。
【0030】
基材の表面を、安定な電解質を含有するナノスケールの無機酸化物粒子のゾルと接触させ、そして表面をその後に水性すすぎ溶液中ですすいだ。
【0031】
一態様では、基材をゾル中に浸すことによって、基材の表面をゾルと接触させた。
【0032】
ナノスケールの無機酸化物粒子のゾルから基材表面の少なくとも一部分上への大量のナノスケールの無機酸化物粒子の堆積を可能にするのに効果的な時間の間、基材の表面をゾルと接触させた。所与のゾルでは、より長い接触時間は、典型的にはゾルから基材の表面上へのより大量の粒子の堆積となった。一態様では、充分な接触時間は、0秒超の任意の時間、さらに典型的には、0秒超〜約100時間である。一態様では、接触時間は、0秒超〜約24時間、さらに典型的には、約100ミリ秒超〜約5時間、そしてまたさらに典型的には、約1秒〜約1時間である。
【0033】
一般的に、処理された表面とゾルとの接触の中止と、処理された表面のすすぎとの間の時間は重要ではない。一態様では、処理された表面は、すすがれて、処理された表面から任意の緩く付着したナノスケールの無機酸化物粒子を除かれる。典型的には、表面とゾルとの接触を中止し、そして表面とゾルとの接触を中止した直後または実質的に直後に、表面を水性のすすぎ溶液ですすぐ。任意選択的に、処理された表面は、表面とゾルとの接触を中止した直後かつすすぎの前の時間の間に乾燥できる。
【0034】
水性のすすぎ溶液は、水を含み、そして任意選択的に、約70wt%まで、さらに典型的には、約30wt%までの水混和性有機液体を含むことができる。
【0035】
一態様では、すすぎ溶液は、処理された表面からの、堆積されたナノスケールの無機酸化物粒子の脱着を妨げるのに効果的な量の電解質、典型的には0超〜約1wt%、さらに典型的には、約0.01wt%〜約0.1wt%の電解質をさらに含む。
【0036】
すすぎ溶液のpHは重要ではない。ゾルのナノスケールの無機酸化物粒子が、ナノスケールの酸化セリウム粒子である一態様では、すすぎ溶液は、7以上、さらに典型的には7〜約12のpHを示し、そしてさらに典型的には、約10〜約12である。
【0037】
本発明の物品の一態様では、層のナノスケール粒子の少なくとも一部分が、ガラス基材の表面と直接接触して配置されており、そしてガラス基材の表面に結合している。さらに典型的には、ナノスケール粒子の少なくとも一部分は、ナノ粒子と基材の表面との間に任意の結合剤または中間層なしで、基材の表面上へのナノ粒子の直接の吸着により、基材の表面に結合している。
【0038】
一態様では、ガラス表面とポリマー表面との界面の加水分解安定性を改善するための方法は、ナノスケールの無機酸化物粒子を用いてガラス表面の少なくとも一部分を処理して、ガラスとポリマー表面との界面を形成する前に、ガラス表面の一部分上へ大量のそうした粒子の直接吸着させることによってガラス表面の一部分を改質することを含む。
【0039】
一態様では、ナノスケールの無機粒子に関して本明細書中で使用される場合、表面上のナノスケールの粒子の層は、単層である。「単層」用語は、一粒子厚の層をいう。
【0040】
一態様では、粒子の層に関して本明細書中で使用される場合、疎水性表面上のナノスケールの粒子の層は、粒子の不連続的な層である。「不連続な」の用語は、層が離散した粒子間および/またはさらに密接に充填された粒子の領域間に、ボイド空間の領域を含むことを意味する。
【0041】
一態様では、疎水性表面上のナノスケール粒子の層は、粒子の少なくとも実質的に連続的な層である。粒子の単層に関して本明細書中で使用される場合、「連続的な」の用語は、層の典型的な粒子が層の他の粒子によって実質的に囲まれ、かつ接触するように、層の粒子が密接に充填されていることを意味する。
【0042】
一態様では、堆積された無機粒子を含む基材は、水蒸気で飽和されているか、または飽和されていない環境内で298°K〜773°K、さらに典型的には、298°K〜473°Kそしてまたさらに典型的には、298°K〜398°Kの温度において、さらに長い間アニールされることができる。
【0043】
無機酸化物粒子は、そうした粒子間で共有結合を形成するために、層の隣接した粒子のヒドロキシル基の間で縮合を受けるのに役立つ表面ヒドロキシル基を含むことができる。
【0044】
一態様では、表面上のナノスケール粒子の層は、粒子の少なくとも実質的に連続的な単層であり、層の典型的な粒子は、単層の他の粒子に実質的に囲まれ、そして単層の他の粒子と結合している。
【0045】
ナノスケールの無機酸化物粒子の層は、本発明の表面改質された基材の化学的および/または物理的特性、例えば、化学的反応性および/または表面エネルギーを改変する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「疎水性表面」は、70°以上、さらに典型的には、90°以上の水との接触角から明らかなように、水をはじく傾向、従って水による濡れに耐性を有する傾向があることを意味する、「親水性の表面」は、70°未満、さらに典型的には、60°未満、そしてまたさらに典型的には、20°未満の水の接触角から明らかなように、水に親和性を示し、従って水によって濡れることができる表面を意味し、そして表面の「疎水性」または「親水性」の特徴は、水との表面の接触角によって測定され、それぞれの場合において、水との接触角は、従来の画像分析方法によって、すなわち、典型的には25℃における、実質的に平面の表面上への水の液滴の配置、液滴の写真撮影、写真画像に表わされた接触角の測定によって、測定される。
【0047】
実質的な平面がないことに起因する繊維の表面形状によって、典型的な繊維に関しては、水滴の接触角は決定しにくい。繊維表面を代表する水滴の接触角測定は、関心の対象である繊維と同じ材料の平面シートまたはサンプル試片を使用して簡便に行うことができる。典型的には、処理された表面は、70°未満、さらに典型的には、60°未満、またさらに典型的には、45°未満の水滴との接触角を示す。
【0048】
一態様では、ポリマー被膜の層は、改質されたガラス表面上において支持され、そして接着的に結合している。
【0049】
一態様では、本発明の物品は:
(a)ガラス表面、およびガラス表面の少なくとも一部分上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、ならびに、
(b)改質されたガラス表面上において支持され、そして接着的に結合しているポリマー被膜の層、
を含む。
【0050】
一態様では、ポリマー層は、有機被膜を含む。好適な有機被膜は、アクリルラテックス被膜、アルキド被膜、ポリエステル被膜、エポキシ被膜および水性ポリウレタン分散体等の水性被膜、ならびに溶剤型ポリウレタン被膜、ポリエステル被膜、アクリル被膜および溶剤型エポキシ被膜等の溶剤型被膜を含む。
【0051】
一態様では、有機被膜は、5℃以上、さらに典型的には、約15℃以上のガラス転移点を示す熱可塑性ポリマーを含む。
【0052】
一態様では、有機被膜は、熱硬化性ポリマーを含む。
【0053】
一態様では、表面改質された基材は、ビニルラテックス被膜またはアクリルラテックス被膜等の水性被膜を用いてコーティングされており、そしてナノスケールの無機酸化物粒子の層は、基材の疎水性表面上への水性被膜の連続的な層の適用を可能にし、そして典型的には基材への被膜の接着を改善する。
【0054】
ガラス基材上の被膜の場合の共通の欠陥モードは、水に暴露した後での接着性の損失である。コーティングされたナノスケールの無機粒子で処理されたガラス基材は、ガラス/被膜界面での加水分解に対して改善された耐性、および/または水蒸気の存在下での接着の損失に対する改善された耐性、および改善された耐久力および有用な寿命を示す。
【0055】
一態様では、本発明の物品は:
(a)表面を有するガラス基材、
(b)表面の少なくともの一部分と接触して配置され、そして結合しているナノスケールの無機酸化物粒子の層、
(c)ナノスケールの無機酸化物粒子の層の少なくとも一部分上に配置された紙シートまたはポリマーシート、および、
(d)紙シートまたはポリマーシートとナノスケールの無機酸化物粒子の層との間に配置され、ナノスケールの無機酸化物粒子の層に結合しかつ紙シートまたはポリマーシートに結合している、接着性ポリマーの層、
を含む薄板状物品である。
【0056】
一態様では、接着性ポリマーの層は、紙シートまたはポリマーシートと改質された表面との間に配置され、改質された表面に接着的に結合しかつ紙シートまたはポリマーシートに接着的に結合している。
【0057】
一態様では、本発明の物品は、
(a)ガラス表面、およびガラス表面の少なくとも一部分上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、
(b)改質された表面の少なくとも一部分上において支持された紙シートまたはポリマーシート、および、
(c)紙シートまたはポリマーシートと改質された表面との間に配置され、そして改質された表面および紙シートまたはポリマーシートに接着的に結合している接着性ポリマーの層を含む薄板状物品である。
【0058】
一態様では、ガラス基材は、ガラス容器であり、そして表面は、容器の外側表面である。
【0059】
一態様では、紙シートまたはポリマーシートおよび接着性ポリマーの層は、ガラス基材のナノスケールの無機酸化物粒子で改質された表面に付着する接着ラベルである。
【0060】
一態様では、接着性ポリマー層は、5℃未満、さらに典型的には、約−20℃〜5℃未満のガラス転移点を有するポリマーを含む感圧性接着組成物である。一態様では、接着性ポリマー層は、アクリルポリマーを含む。
【0061】
ガラス基材上の、例えば、感圧性接着ラベルの場合、共通の欠陥モードは、水への暴露の後の接着性の損失である。接着剤を付けたナノスケールの無機粒子で処理されたガラス基材は、ガラス/接着ラベルの界面での加水分解への改善された耐性、水および/または水蒸気の存在下での、接着の損失への改善された耐性、および改善された耐久力および有用寿命を示す。
【0062】
一態様では、本発明の物品は、ポリマー(b)が、ポリマーマトリックスを構成し、そしてガラス基材(a)が、ポリマーマトリックスを強化するために、ポリマーマトリックス中に分散したガラス強化剤を構成する、複合構造物である。
【0063】
一態様では、本発明の物品は、
(a)ポリマーマトリックス、ならびに、
(b)ガラス繊維(その少なくとも一部分は、ガラス表面、およびガラス表面の少なくとも一部分の上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有し、マトリックスを強化するためにポリマーマトリックス中に配置されている。)、
を含むガラス繊維強化複合物品である。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「繊維」の用語は、特徴的な縦の寸法、典型的には「長さ」、および特徴的な横断寸法、典型的には「直径」または「幅」を有し、特徴的な縦の寸法の特徴的な横断寸法に対する比が約10以上である細長い物品を一般的に意味する。一態様では、繊維は、約10〜50未満のアスペクト比を有する比較的短い繊維である。別の態様では、繊維は、約50超、さらに典型的には、約100以上のアスペクト比を有する比較的長い繊維である。
【0065】
一態様では、ガラス基材は、複数のガラス繊維を含むガラス織物基材を含む。
【0066】
一態様では、表面改質されたガラス繊維は、反応性シラン層によって処理することによって、さらに改質される。
【0067】
一態様では、ポリマーマトリックスは、例えば、熱可塑性ポリエステルポリマー、熱可塑性ポリアミドポリマー、ポリエチレンポリマーまたはポリプロピレンポリマー等の熱可塑性ポリマーである。
【0068】
一態様では、ポリマーマトリックスは、例えば、熱硬化性ポリエステルポリマーまたは熱硬化性エポキシポリマー等の熱硬化性ポリマーである。
【0069】
一態様では、ガラス繊維は、ポリマーマトリックス中に分散した短いガラス繊維である。
【0070】
一態様では、繊維は、長いガラス繊維である。
【0071】
一態様では、ガラス繊維は、織物、不織布、または刻んだ(chopped)繊維マットの形態である。
【0072】
一態様では複合物品は、熱可塑性ポリマーマトリックス、およびマトリックス中に分散した、ナノスケールの無機粒子で処理された短いガラス繊維を含む成形された物品である。一態様では、複合物品は、熱可塑性ポリエステルポリマー、熱可塑性ポリアミドポリマー、ポリエチレンポリマーおよびポリプロピレンポリマーから選択されるマトリックス、およびマトリックス中に分散した、ナノスケールの無機粒子で処理された短いEガラス繊維を含む。好適な物品は、例えば、射出成形技術等の公知のポリマー加工によって製造できる。
【0073】
一態様では、複合物品は、熱可塑性または熱硬化性ポリマーマトリックス、およびマトリックス中に分散した、ナノスケールの無機粒子で処理された長いガラス繊維を含み、ナノスケールの無機粒子で処理された長いガラス繊維は、マトリックス中においてパターン配列されている。一態様では、ナノスケールの無機粒子で処理された長いガラス繊維強化複合物品は、巻かれたガラス繊維で強化したポリマーマトリックス複合物品である。好適な複合物品は、公知のフィラメントワインディング技術によって製造できる。
【0074】
一態様では、複合物品は、ナノスケール無機粒子で処理されたポリマーを含浸したガラス織物の積み重なった層を含む積層体構造であり、そしてナノスケールの無機粒子で処理されたガラス織物は、ナノスケールの無機粒子で処理された不織ガラス繊維、ナノスケールの無機粒子で処理された織られたガラス繊維、またはナノスケールの無機粒子で処理された編まれたガラス繊維を含む。好適な複合物品は、公知のレイアップ技術によって、製造できる。
【0075】
一態様では、複合物品は、ナノスケール無機粒子で処理されたポリアミドを含浸した不織E−ガラス織物の積み重なった層を含む積層体である。
【0076】
それぞれの場合において、典型的な複合物品の欠陥モードは、繊維表面/マトリックス界面における剥離である。ナノスケールの無機粒子で処理されたガラス繊維を使用して製造された複合物品は、ガラス/マトリックス界面における加水分解への改善された耐性、水および/または水蒸気の存在下での、剥離への改善された耐性、および改善された耐久力および有用寿命を示す。
【実施例】
【0077】
例1
例1および1Cのシラン化された(silanized)スライドガラスを次のようにして作製した。
【0078】
例1のシラン化されたスライドガラスを、pHが3に調整された酸化セリウムの1wt%溶液中に5分間浸漬することにより、ガラス顕微鏡スライド(Corning)を処理することによって作製した。次にスライドを蒸留水中ですすぎ、そして室温で空気乾燥させた。次に、処理されたスライドを、ヘキサデシルトリメトキシシランの10wt%溶液中に1分間浸漬し、そして次に120℃の加熱されたオーブン中に置いた。2時間語に、シラン処理されたスライドを真空下で、8時間以上かけて室温まで冷却させた。冷却されたスライドガラスを沸騰したトルエン中で5分間すすぎ、そして次に空気乾燥させた。これらのスライドの表面上での水の後退接触角は、86°であった。
【0079】
例1Cのシラン化されたスライドガラスを、ナノ粒子の分散体を用いて予め処理しなかったスライドガラスを使用して作製した。例1Cのスライドでは、上記に記載した手順を使用してヘキサデシルトリメトキシシランを用いてシラン化した後の水の後退接触角は、77°と測定された。この結果は、酸化セリウム分散体を用いて予め処理したガラスが、ガラスの疎水性の特徴を高めるシラン化(silanization)処理の効率を高めることを示す。
【0080】
シラン化されたスライドガラスを、80℃の水中で2時間加水分解した。例1の加水分解されたスライドガラス上での水の後退接触角は、86°から68°に低下した。酸化セリウムを用いて処理されなかった例1Cのシラン化されたスライドガラスの80℃の水中で2時間の加水分解は、水の後退接触角の77°から49°への低下となった。この結果は、酸化セリウム分散体を用いてガラスを前処理することが、シラン処理されたガラス表面の加水分解の安定性を高めることを示す。
【0081】
例2および2C
例2および2Cのコーティングされたガラス基材を次のように作製した。
【0082】
2にpHを調整し、そして0.1モル/リッターの硝酸ナトリウムを含む水中の酸化セリウムナノ粒子(直径約5nm)の0.1wt%分散体中に平板をディッピングすることにより、酸化セリウム処理されたガラスパネルを、酸化セリウム分散体を用いてフロートガラスの平板をディッピングすることによって作製した。
【0083】
15ミルの厚さを得るために、電動/自動被膜塗布機(Elcometer 4340)を使用して、水性アクリル被膜を適用し、そして最低3日間硬化させることによって、コーティングされたガラスパネルを製造した。酸化セリウム処理されたガラスパネルをコーティングすることにより、例2−1のコーティングされたパネルを作製した。未処理のガラスパネルをコーティングすることにより、例2C−1のコーティングされたパネルを作製した。
【0084】
被膜のパネルへの接着を、ASTM試験方法D3359−02にしたがってクロスハッチ試験を使用して評価した。例2および2C、および以下の例において、被膜のそれぞれの方向に11回カットした格子パターンをカットして格子にかけて感圧性テープを適用し、そして次にこのテープを急速に除去することにより、クロスハッチ試験を行った。テープによって除去された被膜の部分を決定することにより、接着を評価した。典型的には、被膜の損失がなければ、接着は「5B」と分類される。硬化した被膜が、乾燥条件(それぞれの場合における接着結果5B)において、例2−1の処理されたパネルおよび例2C−1の未処理のパネルの両方に良好な接着性を有することが見いだされた。
【0085】
コーティングされたパネルを冷水中に24時間浸漬した。例2C−1のコーティングされたパネルは、広い範囲で水ぶくれ(blistering)を示した。この水ぶくれの形成は、ガラス−ポリマー界面における水の存在によると考えられ、そして被膜のガラスへの接着を劇的に低下させる。図1は、水中に24時間浸漬させた後のコーティングされたガラスパネル;例2C−1の未処理のガラスパネルが左側であり、そして例2−1の酸化セリウム処理されたガラスパネルが右側であることを示す。例2−1の酸化セリウムで処理されたガラスパネルに適用された被膜の水ぶくれは、例2C−1の未処理のパネル上の被膜の水ぶくれと比較して、無視できた。
【0086】
例2−1および2C−1のパネルを、水から除去した後で、それぞれを1時間乾燥させ、そして次にクロスハッチ試験にかけた。この試験の結果を図2に示した。例2Cの未処理のパネルと比較して、例2の処理されたパネルへの被膜(接着結果5B)の接着において、劇的な改善があった。
【0087】
次に、4つのガラスパネルを以下の処理に曝した:
例2C−2のパネルを5分間pH1.5の水中に浸漬した。
例2C−3のパネルを5分間0.1MのNaNO溶液中に浸漬し、
例2C−4のパネルを5分間pH1.5の0.1MのNaNO溶液中に浸漬し、そして
例2−2のパネルを5分間酸化セリウム分散体中に浸漬した。
【0088】
パネルのそれぞれを、そのそれぞれの処理溶液から除き、脱イオン水ですすぎ、そして乾燥させた。乾燥後に、アクリルペイントを4つのパネルのそれぞれに、上記の様に適用した。次にコーティングされたパネルを冷水中に24時間浸漬した。図2.1〜2.4は、水中に24時間浸漬させた後の例2C−2、2C−3、2C−4、および2−2の予め処理されたコーティングされたガラスパネルを示し;2.1は、例2C−2のパネルを示し、2.2は、例2C−3のパネルを示し、2.3は、例2C−4のパネルを示し、そして2.4.は、例2−2のパネルを示す。被膜の水ぶくれは、例2C−2、2C−3、および2C−4のパネル上で観察されたが、例2−2の酸化セリウム処理されたパネルでは観察されなかった。例2−2のコーティングされたパネルは、クロスハッチ試験(接着結果5B)に合格したが、一方、例2C−2、2C−3、および2C−4のパネルのそれぞれは、試験(接着結果(ASTM結果:OB)に不合格であった。
【0089】
例3および3C
例3および3Cの紙ラベル/ガラス積層体を、以下のように製造し、そして試験した。6つの接着剤付き紙ラベル(Avery Dennison)を適用することによって、例3の紙ラベル/ガラス積層体を作製し、パネルのそれぞれの面が3つのラベルを有するように、(例2において上記の様に処理されたそれぞれの)酸化セリウム処理されたパネルに適用した。未処理のきれいなガラスパネルに類似の様式で接着剤付き紙ラベルを適用することによって、例3Cの紙ラベル/ガラス積層体を作製した。
【0090】
例3および3Cの紙ラベル/ガラス積層体を、ビーカーの壁に対して20°〜30°の角度で傾けて、沸騰水のビーカー中に1時間同時に浸漬した。図3は、沸騰水中に1時間浸漬した後のガラスパネル上の接着剤付き紙ラベルを示し;例3Cの未処理のガラスパネルを左側であり、例3のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。例3の酸化セリウム処理されたガラスパネルに適用されたラベルは、剥離しなかった。しかし、例3Cの未処理のガラスパネルから3つのラベルが、ビーカーの底に面した例3Cのパネルの側から剥離し、そしてガラス表面から除去された。
【0091】
例4および4C
例4および4Cのポリマー接着ラベル/ガラス積層体を、以下のように製造し、そして試験した。6つの接着剤付きプラスチックラベル(Avery Dennison)を適用することにより例4のポリマー接着ラベル/ガラス積層体を、パネルのそれぞれの面が3つのラベルを有するように、酸化セリウム処理されたガラスパネル(例2において上記の様に処理された)に適用した。未処理のきれいなガラスパネルに類似の様式で、接着剤付きプラスチックラベルを適用することによって、例4Cの紙ラベル/ガラス積層体を作製した。
【0092】
例4および4Cのポリマー接着ラベル/ガラス積層体を、ビーカーの壁に対して20°〜30°の角度で傾けて、沸騰水を含むビーカー中に1時間同時に浸漬した。図4は、沸騰水中に1時間浸漬した後のガラス上に接着剤付きプラスチックラベルを示し;例4Cの未処理のガラスパネルが左側であり、そして例4のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。例4の酸化セリウム処理されたガラスパネルに適用されたラベルは、剥離しなかった。しかし、例4Cの未処理のガラスパネルからの3つのラベルは、ビーカーの底に面するパネルの側から剥離し、そしてガラス表面から除去された。
【0093】
例5および5C
例5および5Cの紙ラベルおよびポリマーラベル/ガラス積層体を以下のように製造し、そして試験した。例5の紙ラベルおよびポリマーラベル/ガラス積層体を、(例2中で上記のように処理された)酸化セリウム処理されたガラスパネルのそれぞれの面上に1つの接着剤付き紙ラベルおよび1つの接着剤付きプラスチックラベルを適用することによって、作製した。未処理のきれいなガラスパネルに類似の様式で、接着剤付きプラスチックラベルを適用することによって、例5Cの紙およびポリマーラベル/ガラス積層体を製造した。
【0094】
例5および5Cの紙ラベルおよびポリマーラベル/ガラス積層体を、ビーカーの壁に対して20°〜30°の角度で傾けて1時間、沸騰した水酸化カリウム溶液を含むビーカー中に同時に浸漬し、そして次にこの溶液中に2日間室温で滞留させた。図5は、沸騰水酸化カリウム溶液に浸漬した後のガラス上の接着剤付きプラスチックおよび紙ラベルを示し;例5Cの未処理のガラスパネルが左側であり、そして例5のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。例5の酸化セリウム処理されたガラスパネルに適用されたラベルは、剥離しなかった。しかし、例5Cの未処理のガラスパネルからの1つのプラスチックラベルおよび1つの紙ラベルは、ビーカーの底に面するパネルの側から剥離し、そしてガラス表面から除去された。
【0095】
例6および6C
例6および6Cのエナメルコーティングされたガラスパネルを以下のように製造し、そして試験した。アルキドエナメル(Kern aqua alkyd enamel、 Sherwin Williams)の被膜を、15ミルの厚さを有するように(例3中で上記のように処理された)酸化セリウム処理されたガラスパネルに適用し、そして最低3日間硬化させることによって、例6のエナメルコーティングされたガラスパネルを作製した。未処理のガラスパネルに類似の様式でエナメルの被膜を適用することによって、例6Cのコーティングされたガラスパネルを作製した。
【0096】
それぞれのパネル上の被膜で、クロスハッチパターンをスコアリングし、そしてパネルを沸騰水中に1時間浸漬した。図6は、沸騰水中に1時間浸漬した後のアルキド被膜をコーティングしたガラスパネルを示し;例6Cの未処理のガラスパネルが左側であり、そして例6のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。被膜の少なくともいくらかの水ぶくれが、例6のパネルおよび例6Cのパネル上で観察された。例6Cのパネルより例6のパネルにおいて水ぶくれの程度は低かった。
【0097】
次に、パネルを乾燥させ、そしてそれぞれのパネル上の被膜の接着を、クロスハッチ試験を使用して試験した。処理されたおよび未処理のパネル上の被膜の接着に違いはなかった。
【0098】
例7
例7のポリウレタンコーティングされたガラスパネルを以下のように製造し、そして試験した。水性ポリウレタン分散体の被膜を、酸化セリウム処理されたガラスパネル、および未処理のガラスパネル上に適用し、そして上記に記載した条件によって硬化させた。両パネル上の被膜のクロスハッチパターンをスコアリングした後で、パネルを沸騰水中に1時間浸漬した。図7は、沸騰水中に1時間浸漬した後のガラスパネル上のポリウレタン被膜を示し;例7Cの未処理のガラスパネルが左側であり、そして例7のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。沸騰水中での浸漬の15分以内に未処理のパネル上に被膜は、ガラス表面から剥離した。試験の全期間にわたって処理されたパネル上の被膜で類似の剥離は観察されなかった。
【0099】
例8
例8のアクリルコーティングされたガラスパネルを以下のように製造し、そして試験した。アクリルエナメル(表面エナメル高い光沢アクリルラテックス、 Sherwin Williams)の被膜を、酸化セリウム処理されたガラスパネル、および未処理のガラスパネル上に適用し、そして上記に記載した条件により硬化させた。両方のパネル上の被膜のクロスハッチパターンをスコアリングした後で、パネルを沸騰水中に1時間浸漬した。図8は、沸騰水中に1時間浸漬した後のガラスパネル上のアクリルエナメル被膜を示し;例8Cの未処理のガラスパネルが右側であり、そして例8のセリウム処理されたガラスパネルが右側である。沸騰水中への浸漬の15分以内に未処理のパネル上の被膜は、ガラスから剥離した。試験の全期間にわたって処理されたパネル上の被膜で類似の剥離は観察されなかった。次に、処理されたパネルを乾燥させ、そしてガラス上の被膜の接着を、クロスハッチ試験を使用して試験した。被膜は、処理された表面(5B)上で優れた接着を示した。
【0100】
例9
3にpHを調整し、そして0.1モル/リッターの硝酸ナトリウムを含む水中酸化ジルコニウムナノ粒子(直径約5nm)の1wt%分散体(Alfa Easer)中にフロートガラスをディッピングすることにより、平板酸化ジルコニウム処理されたガラスパネルを作製した。
【0101】
15ミルの厚さを得るために、電動の/自動被膜塗布機(Elcometer 4340)を使用して、水性アクリル被膜を適用し、そして最低3日間硬化させることによって、コーティングされたガラスパネルを製造した。酸化セリウム処理されたガラスパネルをコーティングすることによって、例9のコーティングされたパネルを作製した。パネル上の被膜のクロスハッチパターンをスコアリングし、そしてパネルを沸騰水中に1時間浸漬した。パネル中で水ぶくれは観察されなかった。熱水からパネルを除いた後で、パネルを乾燥させ、30分間冷却させ、そしてクロスハッチ試験を使用して接着性を試験した。例9のコーティングされたパネルは、クロスハッチ試験(接着結果5B)に合格した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ガラス表面、および該ガラス表面の少なくとも一部分と接触して配置され、そして結合しているナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、ならびに、
(b)該改質されたガラス表面と接触して配置され、そして結合しているポリマー層、
を含んで成る、物品。
【請求項2】
該ガラスが、シリカから誘導されている、請求項1の物品。
【請求項3】
該ガラス基材が、平面パネル、成形された容器、または繊維である、請求項1の物品。
【請求項4】
該無機酸化物が、酸化鉄、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムから選択される無機酸化物を含む、請求項1の物品。
【請求項5】
該無機酸化物が、酸化セリウムを含む、請求項1の物品。
【請求項6】
該ガラス表面上に該ナノスケールの粒子を直接吸着させることによって、該ナノスケールの無機酸化物粒子の少なくとも一部分が、該ガラス表面に結合している、請求項1の物品。
【請求項7】
該ナノスケールの無機酸化物粒子の層が、ナノスケールの無機酸化物粒子の単層である、請求項1の物品。
【請求項8】
該物品の該ポリマー層(b)が、有機被膜の層である、請求項1の物品。
【請求項9】
該ポリマー層が、ポリマー感圧性接着剤の層である、請求項1の物品。
【請求項10】
該物品が、該ナノスケールの無機酸化物粒子の層の少なくとも一部分上に配置した紙シートまたはポリマーシートをさらに含み、そして該物品の該ポリマー層(b)が、該紙シートまたはポリマーシートと改質されたガラス表面との間に配置され、該改質されたガラス表面に結合しかつ該紙シートまたは該ポリマーシートに結合している接着性ポリマーの層である、請求項1の物品。
【請求項11】
該ポリマー(b)が、ポリマーマトリックスを構成し、そして該ガラス基材(a)が、該ポリマーマトリックス中に分散したガラス強化剤を構成する、該物品が、複合構造物である請求項1の物品。
【請求項12】
該ガラス基材が、平面ガラスパネルであり、そして該ポリマー層が、ポリマー被膜の層である、請求項1の物品。
【請求項13】
ナノスケールの無機酸化物粒子を用いて、該ガラス表面の少なくとも一部分を処理して、該ガラス表面と該ポリマー表面との該界面を形成する前に、該表面の該部分上に大量のそうした粒子を堆積させることによって、該ガラス表面を改質する工程を含んで成る、ガラス表面とポリマー表面との界面の加水分解安定性を改善する方法。
【請求項14】
該ガラス表面の上に、該ナノスケールの無機酸化物粒子を直接吸着させることによって、該ガラス表面が改質される、請求項13の方法。
【請求項15】
該ポリマー層が、該改質されたガラス表面上において支持されたポリマー被膜の層である、請求項13の方法。
【請求項16】
該ポリマー層が、該改質されたガラス表面上において支持されたポリマー接着剤の層である、請求項13の方法。
【請求項17】
(a)ガラス表面、および該ガラス表面の少なくとも一部分上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、ならびに、
(b)該改質されたガラス表面上において支持され、そして接着的に結合している有機ポリマー被膜の層、
を含んで成る、物品。
【請求項18】
(a)ガラス表面、および該ガラス表面の少なくとも一部分上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を有するガラス基材、
(b)改質された表面の少なくとも一部分上において支持された紙シートまたはポリマーシート、ならびに、
(c)該紙シートまたはポリマーシートと該改質された表面との間に配置され、そして該改質された表面および該紙シートまたはポリマーシートに接着的に結合された、接着性ポリマーの層、
を含んで成る、薄板状物品。
【請求項19】
(a)ポリマーマトリックス、ならびに、
(b)ガラス繊維であって、ガラス表面、および該ガラス表面の少なくとも一部分上に吸着されたナノスケールの無機酸化物粒子の層を含む改質された表面を少なくともその一部分が有し、該ポリマーマトリックスを強化するために該ポリマーマトリックス中に配置された、ガラス繊維、
を含んで成る、ガラス繊維強化複合物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−502933(P2011−502933A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533095(P2010−533095)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/012522
【国際公開番号】WO2009/061435
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【Fターム(参考)】