説明

ポリマー電池および電池内蔵ケース

【課題】 容易に製造可能なポリマー電池を提供する。
【解決手段】 複数の正電極部を有する第1のリードフレーム(12)と、複数の負電極部を有する第2のリードフレーム(13)と、正電極部および負電極部の間に配置されたポリマー電解質(17)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー電池と、ポリマー電池を内蔵する電池内蔵ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電池収納ベルトには、複数の電池を、配線を介して接続したものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、袋状の外装ケース内に積層一体化した単電池のものがある。
【0003】
特許文献1では、図8に示すように、衣服用ベルト本体32に複数のボタン型電池33が内蔵され、これらの電池33を接続するための配線35が施されている。また、電池33の電力を外部に供給するためのコネクタ37が、衣服用ベルト本体32に設けられている。
【0004】
特許文献1での他の構成として、板状のガム型電池を内蔵した複数の電池ケースが衣服用ベルト本体の中間に間隔をおいて配置され、これら電池ケース間に電池同士を接続するための配線が施されている。
【0005】
特許文献2では、図9に示すように、樹脂フィルムの間に金属箔を配して全体を積層一体化したラミネートシートからなる袋状の外装ケース47内に、シート状又はフィルム状の正極板、ポリマー製のセパレータおよび負極板を積層一体化した発電要素44を収容している。そして、正極板および負極板それぞれの一端41、42を接続する正極リード45および負極リード46を、外装ケース47のシール部48、49より外部に引き出した状態で封止している。
【特許文献1】特開平6−302307号公報(段落番号0006〜0008、図2)
【特許文献2】特開2001−210372号公報(段落番号0009〜0012、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1、2に開示されたベルトのように、ボタン型電池やガム型電池を用いた構成では、ベルトの厚みが厚くなったり、ベルトが重くなったりしてしまう。また、特許文献1、2に示す構成では、複数のボタン型電池等を個々にベルトに取り付けた後、これら電池間の接続を行っているため、生産性の点で好ましくない。しかも、一方向にしか曲げることができない構成となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリマー電池は、複数の正電極部を有する第1のリードフレームと、複数の負電極部を有する第2のリードフレームと、前記正電極部および前記負電極部の間に配置されたポリマー電解質とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリマー電池によれば、第1および第2のリードフレームを、ポリマー電解質を挟んだ状態で重ねるだけで、容易にポリマー電池を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1であるポリマー電池内蔵のソフトケース(電池内蔵ケース)の構成を示す概略図である。
【0011】
図1において、1は可撓性を有するソフトケースであり、2はポリマー電池である。ソフトケース1の4つの側面、蓋面、底面における外壁と内壁の間には、後述するようにフィルムシートで挟み込まれたポリマー電池2が収納されている。ポリマー電池2は、薄型化および軽量化が可能であり、ソフトケース1の形状が崩れない程度の柔軟性を有している。このため、ポリマー電池2は、ソフトケース1の内部構成材として適している。
【0012】
ソフトケース1の4つの側面、蓋面および底面の6面に、ポリマー電池2を収納することで、ソフトケース1内に収納される携帯機器を長時間使用するための電力を供給することができる。
【0013】
なお、本実施例では、ソフトケース1のすべての面(6面)に、ポリマー電池2を収納した場合について説明したが、すべての面ではなくいずれかの面にポリマー電池2を収納するようにしてもよい。ただし、ソフトケース1のすべての面にポリマー電池2を設けることで、最も多くの電力を供給することができる。
【0014】
一方、柔軟性のあるポリマー電池2を用いることで、曲面となるソフトケース1の面に合わせた状態でポリマー電池2を収納することができる。
【0015】
次に、図2から図7を用いて、ポリマー電池2の構成について説明する。
【0016】
図2は、ポリマー電池の正面図である。図2において、3はポリマー電池2の電池部分である。4a、4b、4cはポリマー電池シートであり、これらのポリマー電池シートは、同じ構成となっている。5b、5cは、ポリマー電池シート4a、4b間やポリマー電池シート4b、4c間をそれぞれ接続する配線である。
【0017】
5aは、電池部分3とコネクタ6を接続する線材である。コネクタ6は、電池部分3で生じた電力を携帯機器20に出力するために用いられたり、電池部分3への充電を行うために用いられたりする。携帯機器20としては、図2に示すようなデジタルカメラの他に、ビデオカメラや携帯電話などがある。
【0018】
3aはフィルムシートであり、電池部分3の表面を構成する。ここで、電池部分3は、ポリマー電池シート4a〜4c、配線5b、5cおよび線材5aを、2つのフィルムシート3aで挟み込んで、熱圧着することで形成される。
【0019】
本実施例のポリマー電池2は、図2に示すようにポリマー電池シート4a〜4cを、配線5b、5cを介して直列に接続したものである。ここで、リチウムイオン電池でポリマー電池を構成した場合、ポリマー電池シート4a〜4cのうち1つの電池シートの電圧が平均3.7Vとなる。このため、ポリマー電池2の全体では11.1V(3.7V×3)となる。
【0020】
また、充電電圧は12.6V(4.2V×3)となり、コネクタ6の出力電圧は約12.6Vから9V(約3.0V×3)となる。
【0021】
図3は、1つのポリマー電池シートの構成を示す図である。図3において、7は保護回路基板である。保護回路基板7は、ポリマー電池セル11a〜11iをコバルト系リチウムイオン電池で構成した場合における過電圧充電を防止するため、過放電でポリマー電池セル11a〜11iの電圧が下がりすぎるのを防止するため、及び過電流を防止するために設けられている。
【0022】
なお、ポリマー電池セル11a〜11iをマンガン系リチウムイオン電池で構成した場合には、保護回路基板7の代わりに、過電流を防止するためのPTCなどの保護素子を用いてもよい。
【0023】
8は、後述するリードフレーム12、13と保護回路基板7を接続する配線である。9は、リードフレーム12、13間を絶縁するための絶縁用フィルム(絶縁シート)である。絶縁用フィルム9は、リードフレーム12のリード部12aと、リードフレーム13のリード部13aとの間に配置されている。
【0024】
10はフィルム(シート材)であり、後述するポリマー電池セル11a〜11i、リードフレーム8及び絶縁用フィルム9を挟んだ状態で熱圧着される。11a〜11iはポリマー電池セルである。
【0025】
12は正電極のリードフレームであり、図4に示すように複数の正電極部12bと、各正電極部12bを接続するリード部12aとを有している。13は負電極のリードフレームであり、図5に示すように複数の負電極部13bと、各負電極部13bを接続するリード部13aとを有している。
【0026】
本実施例では、ポリマー電池セル11a〜11iの一部を構成する負電極部13b及び正電極部12bは、リード部13a、12aを介して接続されており、リードフレーム12、13として一体的に構成されている。ここで、リードフレーム12、13は、柔軟性を有している。
【0027】
各ポリマー電池セル11a〜11iは、外面を構成する2枚のフィルムシート10によってリードフレーム12、13を挟んで、熱圧着することで形成されている。ここで、リードフレーム12、13のリード部12a、13aの間には絶縁用フィルム9が配置されており、リード部12a、13aは相互に絶縁された状態にある。
【0028】
本実施例では、配線8を用いて、リードフレーム12、13の端面と保護回路基板7を接続しているが、リードフレーム12、13を直接、保護回路基板7に接続してもよい。
【0029】
ポリマー電池セル11a〜11iから配線8を介して保護回路基板7に出力された電圧は、コネクタ6を介して外部の携帯機器に供給される。また、外部からの供給される電力が、コネクタ6や保護回路基板7を介してポリマー電池セル11a〜11iに充電される。
【0030】
ポリマー電池セル11a〜11iは平面状に配置されており、各ポリマー電池セル間は、上述したように2つのフィルムシート10の熱圧着によって絶縁されている。このため、ポリマー電池セル11a〜11iは個々の電池セルとして機能している。各ポリマー電池セル11a〜11iを小型化することで、ポリマー電池2の柔軟性を高めることができる。
【0031】
図6は、ポリマー電池シート4a〜4cの横断面図、すなわち、図3のA―A断面図である。また、図7は、ポリマー電池セルの縦断面図、すなわち、図3のB―B断面図である。
【0032】
2つのフィルムシート10のうち一方のフィルムシート10の上に、リードフレーム12、ポリマー電池セル11a〜11i、リードフレーム13、絶縁用フィルムシート9、保護回路基板7を配置した後に、他のフィルムシート10を重ねる。そして、熱圧着することで、ポリマー電池シート4a〜4cが構成される。
【0033】
図7において、14は正極活物質層、15はセパレータ、16は負極活物質層、17は電解質ゲル層(ポリマー電解質)を示している。
【0034】
ポリマー電池セル11a〜11iは、図7の下側から順に、フィルムシート10、リードフレーム12、正極活物質層14、電解質ゲル層17、セパレータ15、負極活物質層16、リードフレーム13、フィルムシート10が積層されている。ここで、絶縁用フィルム9は、リードフレーム12、13の一部の領域間に配置されている。上述した積層体を熱圧着することで、各ポリマー電池セル11a〜11iで密封される。
【0035】
ポリマー電池セル11a〜11iの熱圧着する前の状態で、電池部分3に対して充電を行い、充電した電荷を放電できるようにした後、2つのフィルムシート10を熱圧着する。
【0036】
電解質ゲル層17は、ゲル素材に電解液を沁み込ませることで構成されており、電解液が漏れ出す可能性が少ない。また、ポリマー電池セルの外面を、柔軟性を持つフィルムシート10で構成することで、内部の電解液が漏れるといったこともなくなる。そして、電解液の漏れによって配線が切れてしまうといった不具合を防止することができる。
【0037】
本実施例によれば、各ポリマー電池セル11a〜11iの負電極及び正電極それぞれを一体加工のリードフレーム12、13で構成することで、ポリマー電池セル間の接続を電池の製造過程で行うことができる。このため、従来のように電池をベルトに装着してから電池間の接続を行う場合に比べて、電池の生産性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施例では、各ポリマー電池セル間を2枚のフィルムシート10で挟んで熱圧着することによって形成されたポリマー電池を使用しているため、ソフトケース1の側面、蓋面、底面における外壁と内壁の間の狭いスペースであっても電池を組込むことができる。
【0039】
従来のポリマー電池セルは、外装フィルムを折り畳んで1つずつ製造しているが、本実施例では、2枚のフィルムシート10で覆い、熱圧着によって各ポリマー電池セルを製造している。これにより、ポリマー電池セルの集電体、活物質、ゲル等の構成材に対して、従来技術のようにフィルムを折り曲げる際の曲げ力が加わることはない。しかも、フィルムを折り畳んで1つずつ電池セルを製造する場合に比べて、複数のポリマー電池セルを容易に製造することができる。
【0040】
従来例のポリマー電池セルでは、集電体とリードが別体となっており、これらを接続する作業が必要であるが、本実施例では、ポリマー電池セルを構成する複数の負電極および正電極が一体的に構成されているため、ポリマー電池2の製造過程においてポリマー電池セル間の接続を行うことができる。
【0041】
本実施例では、正電極のリードフレーム12の形状と、負電極のリードフレーム13の形状は互いに異なっているが、これらリードフレームの形状を同一形状としてもよい。この場合には、正電極部および負電極部が重なる領域に対して両側にリード部が位置するように、すなわち、2つのリード部が重ならないように、2つのリードフレームを配置することができる。このように配置すれば、リード部間の絶縁を行う必要がなくなり、絶縁フィルム9を設ける必要がなくなる。
【0042】
特許文献2では、袋状の外装ケース内に発電要素を収容し、正極リードおよび負極リードを外装ケースのシール部より外部に引き出しているが、複数の電池を接続するには絶縁被膜で覆われた線材を用いて電池間の接続を行う必要がある。
【0043】
一方、本実施例では、複数のポリマー電池セルの負電極及び正電極それぞれを1つのリードフレームで構成し、2つのリードフレームのリード部間に絶縁フィルム9を配置することで、ポリマー電池セルを平板状に形成できる。これにより、フィルムシート10によって柔軟性があり、薄型のポリマー電池2を構成でき、ソフトケース1の各面における狭いスペースにポリマー電池2を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1であるポリマー電池を内蔵したソフトケースの外観斜視図である。
【図2】ポリマー電池の構成を示す図である。
【図3】ポリマー電池シートの正面図である。
【図4】正電極のリードフレームの正面図である。
【図5】負電極のリードフレームの正面図である。
【図6】ポリマー電池シートの横断面図である。
【図7】ポリマー電池セルの縦断面図である。
【図8】従来の電池収納ベルトの構成を示す図(A〜D)である。
【図9】従来の電池収納ケースの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ソフトケース(ケース体)
2 ポリマー電池
12 正電極のリードフレーム(第1のリードフレーム)
13 負電極のリードフレーム(第2のリードフレーム)
17 電解質ゲル層(ポリマー電解質)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正電極部を有する第1のリードフレームと、
複数の負電極部を有する第2のリードフレームと、
前記正電極部および前記負電極部の間に配置されたポリマー電解質とを有することを特徴とするポリマー電池。
【請求項2】
前記ポリマー電解質は、ゲル素材内に含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリマー電池。
【請求項3】
それぞれ前記正電極部、前記負電極部および前記ポリマー電解質により構成される複数の電池セルが、シート材によって前記電池セルごとに封止されていることを特徴とする請求項1に記載のポリマー電池。
【請求項4】
前記複数の電池セルが、前記正電極部側に配置された第1のシート材と前記負電極部側に配置された第2のシート材とを該電池セル間で圧着させることにより封止されていることを特徴とする請求項3に記載のポリマー電池。
【請求項5】
前記第1のリードフレームのリード部と前記第2のリードフレームのリード部との間に絶縁性シート材が配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のポリマー電池。
【請求項6】
前記第1および第2のリードフレームのリード部は、前記各電池セルを保護するための回路基板又は素子に接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のポリマー電池。
【請求項7】
ケース体と、
請求項1から6のいずれか1つに記載のポリマー電池とを有し、
前記ポリマー電池は、前記ケース体を構成する少なくとも1つの面部の外面と内面との間に配置されていることを特徴とする電池内蔵ケース。
【請求項8】
前記ケース体は、可撓性を有する部材により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電池内蔵ケース。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−147477(P2006−147477A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339238(P2004−339238)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】