説明

ポリ乳酸フィルム及びその製造方法

【課題】透明性が高く、耐熱性の良好なポリ乳酸フィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを溶融混練してなるポリ乳酸組成物を溶融押出してなる、示差走査熱量計で測定(DSC測定)した下記式で示されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上、ヘーズが10%以下、140℃で10分間熱処理した後のヘーズの変化が5%以下であるポリ乳酸フィルム。
[数1]
S = {△Hmsc/(△Hmsc+△Hmh)} × 100 (1)
(式中、△Hmhは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃未満の低融点融解ピークの融解エンタルピー、△Hmscは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃以上の高融点融解ピークの融解エンタルピーを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性、成形性に優れたポリ乳酸フィルム及びその製造方法に関する。さらに本発明は、光学用ポリ乳酸フィルム、包装用ポリ乳酸フィルム、及び成型用ポリ乳酸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化などの環境問題、石油枯渇への懸念や産油国の供給事情などにより石油価格が高騰し非石油系樹脂の開発が必要とされている。
そのなかでもポリ乳酸は石油系樹脂の代替と成りうる可能性をもつだけではなく、その透明性や低屈折率などの光学特性に特徴があり、それを活かした用途展開も期待されている。
【0003】
しかし、ポリ乳酸は通常、融点が160℃程度と低く融解や変形などの耐熱性に課題があった。また生分解性や湿熱環境下での劣化が比較的速い速度で進行し物性の安定性に課題があるために、用途が限られる欠点を有していた。
【0004】
一方で、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸とD−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている。(特許文献1及び非特許文献1)このステレオコンプレックスポリ乳酸はポリL−乳酸やポリD−乳酸に比べて、200〜230℃と格段に高融点であり、高結晶性を示す興味深い現象が発見されている。
【0005】
このステレオコンプレックスポリ乳酸を使用することで高温加工や耐熱用途での使用が可能となり、さらに生分解性や湿熱環境下における劣化の改良、またその透明性を生かした光学用フィルム、包装用フィルムなどの高透明フィルムでの長寿命化が期待されている。
【0006】
しかしながらステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリL−乳酸相及びポリD−乳酸相(以下ホモ相と呼ぶことがある。)とステレオコンプレックスポリ乳酸相(以下コンプレックス相と呼ぶことがある。)の複合組成物であり、DSC測定では通常ホモ相結晶の融解ピークに対応するピーク温度190℃以下の低融点結晶融解ピークとコンプレックス相結晶の融解ピークに対応するピーク温度190℃以上の高融点結晶融解ピークの2本のピークが測定される。
【0007】
ポリ乳酸フィルムは、溶融押出法、溶液キャスト法などの方法で製膜されるが、生産性に関しては、溶融押出法が溶液キャスト法より優れている。
しかし従来技術においては、ステレオコンプレックスポリ乳酸は、(1)溶融粘度、(2)前述したように異なる融点の結晶形態の存在、(3)熱分解による気泡の発生、(4)結晶配向などにより目的の透明なフィルムを得ることはできなかった。
【0008】
すなわち、実用的強度、タフネスのフィルムを製膜するに足る高重量平均分子量のステレオコンプレックスポリ乳酸を溶融押出法により製膜した場合、溶融粘度が高いため、押し出し系の溶融樹脂配管やダイの壁面で流動斑が発生し、未延伸フィルムだけでなく延伸工程以降のフィルムにも筋状の表面斑が発生し、その表面光散乱で十分な透明が得ることは困難であった。
【0009】
溶融粘度を低下させるため、樹脂温度を高くすると、ポリ乳酸の熱分解のため気泡が発生し内部ヘーズの上昇によりヘーズの悪化を招く可能性が高くなり、透明なフィルムを得る目的に反する事態を引き起こす問題が発生することがある。また分子量をさげて粘度を下げた場合には押出しフィルムが脆くなり十分な機械強度が得られない問題にも直面する。
【0010】
また、溶融押出しフィルム化するとき、加水分解を防ぐため、樹脂を前もって乾燥処理する必要があるが、例えば熱風オーブン等で加熱乾燥するとき、あるいはステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂を溶融押出しフィルム化するとき、押出し機の溶融予熱ゾーンを通すとステレオコンプレックスポリ乳酸は結晶化しホモ相結晶とコンプレックス相結晶が成長する。
【0011】
低融点のホモ相結晶と高融点のコンプレックス相結晶の両方が存在することとなり、この混合物は融解と混練に配慮しても流動特性の異なる2つの状態として存在し、海島構造の形成または流動配向により高融点部分と低融点部分の層構造が発生することとなり、2相分離による流動斑が発生し光散乱を引き起こし、高透過率で均一なフィルムを得ることは困難であった。
【0012】
さらにポリ乳酸フィルムは延伸倍率が特定範囲を超えた場合、ステレオコンプレックスポリ乳酸の特徴であるが透明性が悪化する。すなわち延伸倍率が低いと耐熱性が低い問題に加え、比較的低温度では前述した結晶化が進行し光透過率が悪化し、延伸倍率が高すぎると結晶配向のため透明性が悪化するという問題があった。
【0013】
【特許文献1】特開昭63−241024号公報
【非特許文献1】Macromolecules,24,5651(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のポリ乳酸フィルムは、耐熱性が低いために、プレス成型、真空成型、圧空成型等の成型加工の際にフィルムが割れて充分な成型加工ができなかったり、成型加工後にひび割れやしわ等が発生したり、表面が平滑でなくなったりする問題があった。
また、未延伸フィルムのごとく配向結晶化の程度が低いフィルムにおいては、加熱により白化しやすく、室温では透明であっても、加熱を含む成型加工を施すと全部もしくは一部が白化してしまう等の問題があった。
【0015】
本発明の目的は、透明性、耐熱性、及び成形性に優れ、特に高温に晒されても高い透明性を維持することのできる、ポリ乳酸フィルム及び該フィルムの製造法を提案することにある。
本発明の更なる目的は、透明性、耐熱性、及び成形性に優れた光学用ポリ乳酸フィルム、包装用ポリ乳酸フィルム、及び成型用ポリ乳酸フィルムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸としてステレオコンプレックスタイプのポリ乳酸を用い、押し出し工程における流動を制御することによって、未延伸の状態であっても高温環境下における白化が抑制され、高い透明性が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち本発明は、
1.L−乳酸単位を主成分とし、L−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(B)成分と、D−乳酸単位を主成分とし、D−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(C)成分とを、重量比で(B/C)=10/90〜90/10で溶融混練してなるポリ乳酸(A)を溶融押出してなるポリ乳酸フィルムであって、示差走査熱量計測定(DSC測定)及び下記式から求められるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上、ヘーズが10%以下、140℃で10分熱処理した後のヘーズの変化が5%以下であるポリ乳酸フィルム。
[数1]
S = {△Hmsc/(△Hmsc+△Hmh)} × 100 (1)
(式中、△Hmhは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃未満の低融点融解ピークの融解エンタルピー、△Hmscは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃以上の高融点融解ピークの融解エンタルピーを表す。)
2.2倍未満に一軸方向に延伸された、1に記載のポリ乳酸フィルム。
3.面積倍率で4倍未満に延伸された、1または2に記載のポリ乳酸フィルム。
4.三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)を含有する、1から3のいずれかに記載のポリ乳酸フィルム。
5.カルボキシル末端基濃度が0から10eq/tonである、1から4のいずれかに記載のポリ乳酸フィルム。
6.ポリ乳酸(A)の重量平均分子量が8万から25万である、1から5のいずれかに記載のポリ乳酸フィルム。
7.L−乳酸単位を主成分とし、L−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(B)成分と、D−乳酸単位を主成分としD−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(C)成分とを、重量比で(B/C)=10/90〜90/10で溶融混練してなるポリ乳酸(A)を、ポリ乳酸(A)の樹脂温度が(Tmsc+20)から(Tmsc+50)(℃)となる範囲で溶融押出しすることを特徴とする、ポリ乳酸フィルムの製造方法。
(ここで、Tmscは、DSC測定から求められる結晶融解ピークのピーク温度が190℃以上の高融点結晶融解ピークのピーク温度を表す。)
8.ドラフト比が2以上80以下である、7に記載の製造方法。
9.溶融押し出し後、実質的に延伸しない、または2倍未満に一軸延伸する、または面倍率で4倍未満に二軸延伸することを特徴とする7または8に記載の製造方法。
10.上記1〜6のいずれかに記載の光学用ポリ乳酸フィルム。
11.上記1〜6のいずれかに記載の包装用ポリ乳酸フィルム。
12.上記1〜6のいずれかに記載の成型用ポリ乳酸フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリ乳酸フィルムは、透明性、耐熱性、及び成形性が良好であり、高温に晒されても高い透明性を維持することができる。そのため、本発明のポリ乳酸フィルムは、光学用途、包装用途、成型用途等に好適に用いることができる。また、本発明のポリ乳酸フルムは高い効率をもって工業的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明について詳細な説明をする。
本発明のポリ乳酸フィルムは、L−乳酸単位を主成分とし、L−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(B)成分と、D−乳酸単位を主成分とし、D−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(C)成分とを溶融混練してなるポリ乳酸(A)よりなることを特徴とする。
【0020】
本発明のポリ乳酸フィルムは、ヘーズが10%以下である。ヘーズが10%を超えるフィルムは白濁を強く感じ、透明性が不良で本発明の範囲外である。
本発明において、ヘーズは、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。
光学用ポリ乳酸フィルムとしては透明性が高いほど好ましく、ヘーズは、好ましくは1%以下である。
【0021】
以上のように、透明性の観点からヘーズは低いほど好ましいが、ヘーズを低くするためにはフィルム厚みを薄くする必要があり、また滑剤等の添加量を少なくする必要があり、よって取り扱い性が低くなる傾向にある。また、透明性を高くするためにフィルム厚みを薄くすると、成型用ポリ乳酸フィルムにおいては、成型加工時にポリ乳酸フィルムが破断してしまいやすくなる傾向にある。このような観点から、ヘーズの下限は、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは3%以上である。
【0022】
また、本発明のポリ乳酸フィルムは、140℃で10分熱処理した後のヘーズの変化((熱処理後のヘーズ)−(熱処理前のヘーズ))が5%以下である。かかる変化が上記数値範囲にあると、成型用途において、加熱成型後の白化が抑制される。このような観点から、ヘーズの変化は、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0023】
本発明のポリ乳酸フィルムのフィルム厚みは、40μm以上120μm以下が好ましい。フィルム厚みが上記数値範囲にあると、取り扱い性に優れる。また、本発明が規定するヘーズを達成することが容易となる。このような観点から、フィルム厚みは、さらに好ましくは60μm以上100μm以下、特に好ましくは70μm以上90μm以下である。
【0024】
ポリ乳酸(B)成分は、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリ乳酸及びその他のモノマーとの共重合体などが示されるが、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリL‐乳酸であることが特に好ましい。
【0025】
ポリ乳酸(B)成分は、結晶性及びフィルムの耐熱性などの物性の点より、L−乳酸単位は90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。
【0026】
即ち、D−乳酸単位及び/またはL−乳酸単位以外の共重合成分単位は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
このポリ乳酸(B)成分は結晶性を有しており、その融点が150℃以上190℃以下であることが好ましく、さらには160℃以上190℃以下であることがより好ましい。
【0027】
これらの範囲に入る融点を有していれば、該ポリ乳酸成分よりステレオコンプレックスポリ乳酸を形成した場合に、より高融点のステレオコンプレックス結晶を形成し且つ結晶化度を上げることが出来るからである。
【0028】
本発明に用いるポリ乳酸(B)成分は、その重量平均分子量が8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万以下であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万から20万の範囲である。
【0029】
かかる重量平均分子量範囲のポリ乳酸(B)成分を使用することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸を工業的に効率よく製造することが可能となり、ポリ乳酸(A)の流動斑を抑制しつつ、本発明のポリ乳酸フィルムの透明性範囲に合致させることが出来るからである。
【0030】
ポリ乳酸(C)成分は、実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリ乳酸及びその他のモノマーとの共重合体などが示されるが、実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリD−乳酸であることが特に好ましい。
【0031】
ポリ乳酸(C)成分は、結晶性及びフィルムの耐熱性などの物性の点より、D−乳酸単位は90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。
即ち、L−乳酸単位及び/またはD−乳酸以外の共重合成分単位は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0032】
このポリ乳酸(C)成分は結晶性を有しており、その融点が150℃以上190℃以下であることが好ましく、さらには160℃以上190℃以下であることがより好ましい。
これらの範囲に入る融点を有していれば、該ポリ乳酸成分よりステレオコンプレックスポリ乳酸を形成した場合に、より高融点のステレオコンプレックス結晶を形成し且つ結晶化度を上げることが出来るからである。
【0033】
本発明に用いるポリ乳酸(C)成分は、その重量平均分子量が8万から25万の範囲であることが好ましく、10万以上25万以下であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万以上20万の範囲である。
【0034】
かかる重量平均分子量範囲のポリ乳酸(C)成分を使用することによりステレオコンプレックスポリ乳酸を工業的に効率よく製造することが可能となり、ポリ乳酸(A)の流動班を抑制しつつ、本発明のポリ乳酸フィルムの透明性範囲に合致させることが出来るからである。
【0035】
本発明で用いるポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分には、その結晶性を損なわない範囲で所望により、L−乳酸、D−乳酸以外の共重合成分を含有させることができるが、かかる共重合成分としては、特に限定するものではない。例えば、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2から30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2から30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
【0036】
ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。
例えば、L−またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法などが例示される。
【0037】
なかでも、直接脱水縮合方法あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が品質、生産効率の点より好ましく、なかでもラクチド類の溶融開環重合法が最も好ましく選択される。
【0038】
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分が前述した所定の特性を有するように重合させることが出来るものであれば、いずれも用いることができる。
【0039】
即ちラクチドの溶融開環重合触媒としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等がよく知られている。
【0040】
これらの内、スズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウム及び稀土類元素より選択される少なくとも一種を含有する触媒であることが好ましい。以下該触媒を特定金属含有触媒と略称することがある。
【0041】
かかる特定金属含有触媒としては、従来公知であり以下の化合物が例示される。
すなわち、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズブトキシド、酸化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−イミン錯体四塩化チタン、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、チタンテトラブトキシド、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ジエチル亜鉛、三酸化アンチモン、三臭化アンチモン、酢酸アンチモン、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マグネシウム、イットリウムアルコキシドなどが例示される。
【0042】
触媒活性、副反応の少なさを考慮すると、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズなどのスズ含有化合物及びアルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムブトシキド、アルミニウム−イミン錯体などのアルミニウム含有化合物が好ましい物として挙げられる。さらに好ましくは以下のものが例示される。
【0043】
即ち、ジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、塩化スズ、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドなどがさらに好ましい物として例示される。
【0044】
触媒の使用量はラクチド類1kgあたり0.42×10−4から100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4から42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4から16.8×10−4(モル)モル使用される。
【0045】
ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分はその重合触媒を従来公知の方法、例えば、溶媒で洗浄除去するか、触媒活性を失活、不活性化しておくのがポリ乳酸(A)及びポリ乳酸フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のため好ましい。
【0046】
金属含有触媒の存在下溶融開環重合されたポリ乳酸の触媒失活に使用される失活剤としては、以下の化合物が例示される。
すなわちイミノ基を有し、且つ特定金属系重合触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド、リンオキソ酸、リンオキソ酸エステル及び式(2)で表される有機リンオキソ酸化合物群から選択される、少なくとも1種を含有し、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量添加された樹脂である。
−P(=O)m(OH)n(OX2−n (2)
(式中、mは0または1、nは1または2、X、Xは各々独立に炭素数1から20の置換基を有していても良い炭化水素基を表す。)
該失活剤の使用量はさらに好ましくは前記基準で0.4から15当量、特に好ましくは0.5から10当量の範囲である。
【0047】
その構造中にイミノ基を有し、且つ金属系重合触媒に配位し得るフェノー四座のキレート配位子である有機リガント(イミン系化合物)は、従来の触媒失活剤の様なブレンステッド酸や塩基ではないため、ポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性を悪化させることなく熱安定性を向上させることが可能である。かかるイミン系化合物としてはN,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)プロパンジアミン、等が挙げられる。
【0048】
リンオキソ酸としては、例えばジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、一般式(xHO・yP)で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸、及びこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテルが例示される。触媒失活能から酸あるいは酸性エステル類が好適に使用される。
【0049】
リンオキソ酸のエスエテルを形成するアルコール類に関しては特に制限はないが、一価アルコールとしては炭素数1から22個の置換基を有していてもよい式(3)で表されるアルコール類が好ましく使用される。
Y−OH (3)
(式中、Yは炭素数1から22の置換基を有していても良い炭化水素基を表す。)
【0050】
具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、フェノール、ヘキサデシルアルコールなどが挙げられる。
【0051】
多価アルコールとしては炭素数2から22個の置換基を有していても良い式(4)で表される多価のアルコール類、糖アルコール類などが挙げられる。
X(−OH) (4)
(式中、Xは炭素数2から22個の置換基を有していても良い炭化水素基、aは2から6の整数を表す。)
【0052】
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングコール、ポリプロピレングリコール、myo−イノシトール、D−,L−イノシトール、scyllo−イノシトールなどのイノシトール類、シクリトールなどが挙げられる。
【0053】
特に好ましくは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスフィン酸、リン酸ジブチル、リン酸ジノニル、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)プロパンジアミンが例示され、なかでもリン酸、亜燐酸、ピロ燐酸が特に好ましい。
【0054】
これらの失活剤は単独で使用しても良いし場合によっては、複数併用することもできる。これらの失活剤は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、さらに好ましくは、0.5から15当量、より好ましくは0.5から10当量、特に好ましくは0.6から7当量使用される。
失活剤の使用量が少なすぎると触媒金属の活性を十分低下させることができないし、また過剰に使用すると失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0055】
本発明におけるポリ乳酸(A)は、前述のポリ乳酸(B)成分とポリ乳酸(C)成分とを重量比で10/90から90/10の範囲で、220〜300℃で溶融混練することにより得ることができる。
【0056】
ポリ乳酸(B)成分とポリ乳酸(C)成分の重量混合比は、ポリ乳酸(A)のステレオコンプレックス結晶化度(S)を高くするために、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40の範囲が選択される。できるだけ50/50に近い混合比が好ましく選択される。
【0057】
溶融混練温度は、ポリ乳酸の溶融時の安定性及びステレオコンプレックス結晶化度(S)の向上の観点より、230〜300℃、好ましくは240〜280℃、さらに好ましくは245〜275℃の範囲が選択される。
【0058】
かかる混合比、混練温度範囲で溶融混練することにより、ポリ乳酸(A)のステレオコンプレックス結晶化度(S)を80%以上にすることができ好ましい。また、本発明のポリ乳酸フィルムの、DSC測定から求められるステレオコンプレックス結晶化度(S)は、好ましくは90%から100%、さらに好ましくは95%から100%、特に好ましくは100%である。
【0059】
溶融混練方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式あるいは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。例えば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機製バイボラック、三菱重工業製N−SCR、日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
【0060】
本発明のポリ乳酸(A)の、DSC測定により求められるステレオコンプレックス結晶化度(S)は80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。
特に好ましくは、DSC測定によって求められるステレオコンプレックスポリ乳酸に起因する高融点ピークがシングルピークとなる態様、即ちステレオコンプレックス結晶化度(S)が100%の態様である。
【0061】
ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分をかかる混合比範囲で溶融混練し、かかるステレオコンプレックス結晶化度範囲を有するポリ乳酸(A)を溶融押し出しし、フィルム化することは、前述した2相分離による流動斑を抑制でき、透明性が良好で耐熱性に優れたポリ乳酸フィルムの製造に好適である。
【0062】
本発明におけるポリ乳酸(A)及び本発明のポリ乳酸フィルムの重量平均分子量は、8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万であることがより好ましい。とりわけ好ましくは12万から20万の範囲である。
かかる重量平均分子量範囲は、流動斑の抑制し、透明性を向上させるのに好適であると共に、フィルムの機械的物性、耐久性を高めるために好適である。
【0063】
本発明においてポリ乳酸フィルムのDSC測定から求められるコンプレックス相結晶の融解エンタルピーは35J/g以上、好ましくは40J/gから80J/gの範囲である。
ポリ乳酸結晶100%の結晶融解エンタルピーは93J/gといわれており、上記結晶化エンタルピー値を有するポリ乳酸フィルムは、十分高い結晶化度を有し、高い耐熱性を有するものといえる。
【0064】
本発明のポリ乳酸フィルムには、結晶化核剤として、三斜晶系無機粒子(D)、燐酸エステル金属塩(E)の少なくとも1種を含有させることが好ましい。
かかる剤の配合により、ポリ乳酸フィルム等のステレオコンプレックス結晶化度(S)を90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上とすることができる。
【0065】
特に、DSC測定から求められるステレオコンプレックスポリ乳酸に起因する高融点ピークを単一ピークとする、即ちステレオコンプレックス結晶化度(S)を100%とするために有効である。
かかる高いステレオコンプレックス結晶化度(S)を有するポリ乳酸(A)は、高いステレオコンプレックス結晶化度(S)、透明性、耐熱性フィルムを実現するのに好適である。
【0066】
ポリ乳酸の結晶化度を向上させる核剤としては、各種剤が知られているが、本発明においては明確な作用機構は不明であるが、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上させる、あるいはポリ乳酸フィルムの透明性を向上させるのに好適な三斜晶系無機粒子(D)及びまたは燐酸エステル金属塩(E)が好ましく使用される。
【0067】
かかる三斜晶系無機粒子(D)としては例えば、ワラストナイト(wollasutonite)、ゾノトライト(xonotollite)、硼酸石、炭酸水素マグネシウムカリウム、メタ珪酸カルシウム(α)、メタ珪酸カルシウム(β)メタ珪酸マンガン、硫酸カルシウム、硫酸セリウム(III)、燐酸亜鉛、燐酸二水素亜鉛、燐酸二水素カルシウム、アルミノ珪酸アルミニウム、アルミノ珪酸カリウムなどが例示される。
【0068】
これらのうち、ポリ乳酸等ステレオコンプレックス結晶化度(S)の向上、フィルムの透明性向上の観点より、ワラストナイト、硫酸カルシウム、メタ珪酸カルシウムが、なかでもワラストナイト、メタ珪酸カルシウム(α)などが好ましいものとして挙げられる。
【0069】
本発明で使用する燐酸エステル金属塩(E)として好ましいものとして、式(5)、(6)であらわされる芳香族有機燐酸エステル金属塩が挙げられる。
【0070】
【化1】

【0071】
【化2】

【0072】
芳香族有機燐酸エステル金属塩は1種類あるいは複数種類のものを併用することもできる。
式(5)においてRは水素原子、又は炭素数1から4個のアルキル基を表す。Rで表される炭素原子数1から4個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、などが例示される。R、Rは各々独立に水素原子、炭素数1から12個のアルキル基を表す。
【0073】
炭素数1から12個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tet−ブチル基、アミル基、tet−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、iso−オクチル基、tet−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、iso−ノニル基、デシル基、iso−デシル基、tet−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、tet−ドデシル基などが挙げられる。
【0074】
はNa、K、Liなどのアルカリ金属原子、Mg、Ca等のアルカリ土類金属原子、亜鉛原子又はアルミニウム原子を表す。pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子の時は0を、Mがアルミニウム原子のときは1または2を表す。
式(5)で表される燐酸エステル金属塩のうち好ましいものとしては、例えばRが水素原子、R、Rがともにtet−ブチル基のものが挙げられる。
【0075】
式(6)においてR、R、Rは各々独立に水素原子、炭素数1から12個のアルキル基を表す。
、R、Rで表される炭素数1から12個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tet−ブチル基、アミル基、tet−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、iso−オクチル基、tet−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、iso−ノニル基、デシル基、iso−デシル基、tet−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、tet−ドデシル基などが挙げられる。
【0076】
はNa、K、Liなどのアルカリ金属原子、Mg、Ca等のアルカリ土類金属原子、亜鉛原子又はアルミニウム原子を表す。pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子の時は0を、Mがアルミニウム原子のときは1または2を表す。
【0077】
式(6)で表される燐酸エステル金属塩のうち好ましいものとしては、例えば、R、Rがメチル基、Rがtet−ブチル基のもの、M、Mがアルミニウムのものが挙げられる。
【0078】
燐酸エステル金属塩のうち市販されているもの、例えば(株)ADEKA製の商品名、アデカスタブNA−10、アデカスタブNA−11、アデカスタブNA−21、アデカスタブNA−71、アデカスタブNA−30、アデカスタブNA−35なども本発明の燐酸エステル金属塩として所望の目的に有効に使用できる。
【0079】
これらのうち、燐酸エステルアルミニウム塩のアデカスタブNA−71及び燐酸エステルアルミニウム塩と有機助剤を含有するアデカスタブNA−21が、フィルム透明性の点から好ましい物として例示される。なかでも粉砕、分級された高分散性の平均粒径5μm以下の微細粒子状のアデカスタブNA−71、アデカスタブNA−21が好適である。
【0080】
かかる三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)の使用量はポリ乳酸(A)100重量部あたり0.01から5重量部の範囲である。0.01重量部より少量であると所望の効果がほとんど認められないか、実用に供するにはあまりに小さいものでしかない。
【0081】
また5重量部より多量に使用すると、フィルム形成時に熱分解を起こしたり、劣化着色が起きたりする場合があり好ましくない。
したがって、好ましくは0.05から4重量部の範囲、特に好ましくは0.1から3重量部の範囲が選択される。
【0082】
かかる量比の三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)を使用することにより、本発明のポリ乳酸フィルム成形時に、2相分離に起因する流動斑の生成を抑制でき、透明性が良好で、耐熱性が良好なフィルムを製造することができる。
【0083】
また、本発明に使用される三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)は、粒径ができるだけ小さいもの、特に10μm超の大型粒子の含有割合の少ないものが、ポリ乳酸フィルムの透明性の観点から好ましいが、実用上は0.01から10μmのものが好適に使用される。さらに好ましくは0.05から7μmのものが選択される。10μm超の大型粒子の含有割合が20%を超えるとポリ乳酸フィルムのヘーズが高まり好ましくない。
【0084】
かかる粒径の三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)は、ボールミル、サンドミル、ハンマーククラッシャー、アトマイザーにより、市販の三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)を粉砕し、各種分級機により分級することにより得ることができる。
【0085】
三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)の粒径を0.01μmより小さくすることは工業的に困難であり、また実用上それほど小さくする必要もない。しかし粒径が10μmより大きいあるいは大きいものの含有割合が高いと、フィルムのヘーズが高まる問題が大きくなり好ましくない。
【0086】
本発明のポリ乳酸フィルムは、カルボキシル基量は10当量/10g以下であることがフィルムキャステリング時の安定性、耐加水分解抑制、重量平均分子量低下抑制の観点から好ましく、5当量/10g以下であることがさらに好ましく、2当量/10g以下であることが特に好ましい。
【0087】
本発明においては、用途に応じて、カルボキシル基末端基を低減する手段として、カルボキシル基と反応性のカルボキシ基封止剤を配合することが溶融フィルム化時の安定性及び得られたフィルムの湿熱環境での安定性のため好ましい。
【0088】
カルボキシ基封止剤は、ポリ乳酸樹脂の末端カルボキシル基を封止に加え、ポリ乳酸樹脂や各種添加剤の分解反応で生成するカルボキシル基、乳酸、ギ酸などの低分子化合物のカルボキシル基を封止し樹脂を安定化することができ、フィルム化時の樹脂温度を、流動斑を抑えるにたる温度まで昇温できる利点ももたらす。
【0089】
かかるカルボキシル基封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもカルボジイミド化合物が好ましい。
【0090】
本発明で使用するカルボジイミド化合物としては、例えばカルボジイミド化合物としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、オクチルデシルカルボジイミド、ジt‐ブチルカルボジイミド、ジベンジルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、ジ‐o−トルイルカルボジイミド、ジーp−トルイルカルボジイミド、ビス(p−ニトロフェニル)カルボジイミド、ビス(p−アミノフェニル)カルボジイミド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)カルボジイミド、ビス(p−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−エチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−エチルフェニル)カルボジイミドビス(o−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(o−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)カルボジイミド、p−フェニレンビス(o−トルイルカルボジイミド)、p−フェニレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、p−フェニレンンビス(p−クロロフェニルカルボジイミド)、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、エチレンビス(フェニルカルボジイミド)、エチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−エチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−ブチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリブチルフェニル)カルボジイミド、ジβナフチルカルボシイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボシイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボシイミドなどのモノまたはポリカルボジイミド化合物が例示される。
【0091】
なかでも反応性、安定性の観点からビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。
【0092】
また、これらのうち工業的に入手可能なジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドの使用も好適である。
さらに上記ポリカルボジイミド化合物として市販のポリカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく好適に使用することができる。
【0093】
かかる市販のポリカルボジイミド化合物としては、例えば日清紡(株)より市販されているカルボジライトの商品名で販売されているカルボジライトLA−1、あるいはHMV−8CA、ラインケミージャパン(株)からスタバクゾールの商品名で市販されているスタバクゾールI、スタバクゾールP、スタバクゾールP100などを例示することができる。
【0094】
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリジジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、グリシジルアミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。かかる剤を配合することで、機械的特性、成型性、耐熱性、耐久性にすぐれたポリ乳酸樹脂組成物及び成型品を得ることができる。
【0095】
グリシジルエーテル化合物の例としては、例えばステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、その他ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、などを挙げることができる。なかでもビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0096】
グリシジルエステル化合物の例としては、例えば安息香酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられる。なかでも安息香酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
【0097】
グリシジルアミン化合物の例としては、例えば、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、などが挙げられる。
【0098】
グリシジルイミド、グリシジルアミド化合物の例としては、例えばN−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロモフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロモフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジル−1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステアリルアミドなどが挙げられる。なかでもN−グリシジルフタルイミドが好ましい。
【0099】
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレ−ト、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペ−ト、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、などが挙げられる。
【0100】
その他のエポキシ化合物としてエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、などを用いることができる。
【0101】
本発明で用いるオキサゾリン化合物の例としては、2−ブトキシ−1,3−オキサゾリン、2−デシルオキシ−1,3−オキサゾリン、2−ステアリルオキシ−1,3−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−1,3−オキサゾリン、2−アリルオキシ−1,3−オキサゾリン、2−クレジルオキシ−1,3−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−1,3−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−1,3−オキサゾリン、2−メチル−1,3−オキサゾリン、2−ヘプチル−1,3−オキサゾリン、2−オレイル−1,3−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−1,3−オキサゾリン、2−メタアリル−1,3−オキサゾリン、2−フェニル−1,3−オキサゾリン、2−ベンジル−1,3−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−1,3−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−1,3−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−1,3−オキサゾリン、2−p−プロピルフェニル−1,3−オキサゾリン、2,2’−ビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−1,3−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−1,3−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−1,3−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−1,3−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(1,3−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(4−メチル−1,3−オキサゾリン)などが挙げられる。さらに上記化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物なども挙げられる。
【0102】
本発明で用いるオキサジン化合物の例としては、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−プロピルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシー5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられる。
【0103】
さらに2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−P,P’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、などが挙げられる。さらに上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物などが挙げられる。
【0104】
上記オキサゾリン化合物やオキサジン化合物のなかでは2,2’−m−フェニレンビス(1,3−オキサゾリン)や2,2’−p−フェニレンビス(1,3−オキサゾリン)が好ましいものとして選択される。
【0105】
本発明で用いるイソシアネート化合物の例としては、例えば芳香族、脂肪族、脂環族イソシアネート化合物及びこれらの混合物を使用することができる。
モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0106】
ジイソシアネートとしては、具体的化合物としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニル−1,4−ジイソシアネート、などを例示することができる。
【0107】
これらのイソシアネート化合物のなかでは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニルイソシアネートなどの芳香族イソシアネートが好ましい。
上記カルボキシ基封止剤は1種または2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
【0108】
カルボキシル基封止剤の使用量はポリ乳酸(A)樹脂100重量部あたり0.01から10重量部が好ましく、0.03から5重量部がさらに好ましい。本発明においてはさらに封止反応触媒を使用してもよい。
【0109】
このような化合物としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム化合物、燐酸エステル、有機酸、ルイス酸、などが挙げられる。
【0110】
本発明におけるポリ乳酸(A)に上記の核剤及びまたはカルボキシ基封止剤を含有させるには、ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分中に前もって含有させる方法、ポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分を溶融混練時、あるいはポリ乳酸(B)成分、ポリ乳酸(C)成分を溶融混練し、キャスティングフィルム化する時点で配合含有させることもできる。
【0111】
ポリ乳酸(A)組成物は、一度固化ペレット化することもできるが、固化することなく溶融押し出ししてフィルム化することも可能である。
これらの剤を配合するには、従来公知の各種方法を好適に使用することができる。例えば、ポリ乳酸と三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)をタンブラー、V型ブレンンダー、スーパーミキサー、ナウタミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、1軸または2軸の押出機等で混合する方法が適宜用いられる。
【0112】
本発明のポリ乳酸フィルムにおいては、フィルム巻取り、走行性を改良する目的で、本発明の目的に反しない範囲で、ポリ乳酸中、潤滑剤を適用することができる。
この潤滑剤は常温で固体であってもまた液体であってもよく、融点あるいは軟化点が200℃以下のものが好ましい。潤滑剤の具体例としては下記のものを挙げることができ、これらは2種以上を併用してもよい。
【0113】
脂肪族炭化水素:流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、
高級脂肪酸またはその金属塩:ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸、硬化油、モンタン酸ナトリウム等、
脂肪酸アミド:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステリルアミド等、
脂肪酸エステル:n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、ミリシルセロチネート、高級アルコール脂肪酸エステル、エステル系ワックス等、
脂肪酸ケトン:ケトンワックス等、
脂肪族高級アルコール:ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等、
多価アルコール脂肪酸エステルまたは部分エステル:グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等、
非イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等、
シリコーン油:直鎖状メチルシリコン油、メチルフェニルシリコン油、変性シリコーン油等、
フッ素系界面活性剤:フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、モノパーフルオロアルキルエチル燐酸エステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等。
【0114】
これらの潤滑剤は1種類で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。潤滑剤はポリ乳酸中、0.001〜1wt%、さらに好ましくは0.005〜0.5wt%の範囲で適用される。
【0115】
本発明のポリ乳酸フィルムにおいては、フィルム巻取り、走行性を改良する目的で、本発明の目的に反しない範囲で、ポリ乳酸中、滑剤を適用することができる。
かかる滑剤としては、例えば乾式法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭化珪素、酸化スズ等の無機粒子;架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。
【0116】
滑剤としては平均粒径が0.001〜5.0μmの微粒子が好ましく、1種類で使用することもできるし2種類以上併用することも可能である。
これらはポリ乳酸に対し、0.01〜0.5wt%の範囲で配合することができる。
【0117】
またこれらの剤以外にも本発明の趣旨に反しない範囲において、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
【0118】
これらの剤はポリ乳酸重合開始より製膜前の間の段階で、適宜配合することができる。
添加方法としては、通常公知の剤投入法を使用することで剤含有ポリ乳酸を製造することができる。
【0119】
また、剤をポリ乳酸に添加するには、従来公知の各種方法を好適に使用することができる。例えば、ポリ乳酸と燐酸エステル金属塩をタンブラー、V型ブレンンダー、スーパーミキサー、ナウタミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、1軸または2軸の押出機等で混合する方法が適宜用いられる。
【0120】
こうして得られる三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)、カルボキシル基封止剤などを含有するポリ乳酸は、そのまま一旦ペレット状にしてから製膜装置に供給する方法も可能である。
【0121】
本発明のポリ乳酸フィルムは、所望により、前述した三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)、カルボキシル基封止剤、スルホン酸四級ホスホニウム塩及び前述した潤滑剤などを含有するポリ乳酸組成物を、(Tmsc+20)から(Tmsc+50)℃の温度で溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出し、次いで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造される。
【0122】
その際、ドラフト比(押出し用ダイのリップ開度を冷却ドラム上に押し出されたシートの厚みで除して求められる比率)が、2以上80以下であることが好ましい。ドラフト比が小さくなると、押出しダイのリップからの引取り速度が遅くなり過ぎ、ダイリップからのポリマーの離れ速度が遅いためか、ダイリップスジ欠点などの欠点が多くなり好ましくない。このような観点から、ドラフト比の下限は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、9以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。また、ドラフト比が大きくなり過ぎると、ポリマーがダイリップから離れる時の変形が大きすぎるためか、流動が不安定となり長手方向(MD)の厚み変動(厚み斑)が悪くなり好ましくない。このような観点から、ドラフト比の上限は、60以下であることが好ましく、40以下であることがあさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。
【0123】
樹脂温度は樹脂が十分流動性を有する温度、即ち(Tmsc+20)から(Tmsc+50)(℃)の範囲で実施されるが、樹脂が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましい。好ましくは流動斑が生成しにくい240から300℃、さらに好ましくは245から280℃、特に好ましくは250から275℃の温度が採用される。 フィルムキャスティング時、静電密着法により電極より静電荷を印加させながら冷却ドラムにて冷却固化させることにより未延伸フィルムを製造するのが好ましく、この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状あるいはナイフ状の形状のものが好適に使用される。
【0124】
また該電極の表面物質が白金であることが好ましい。即ち長時間にわたり製膜を続けるとき、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着したり、電極表面が変質したりして静電気の印加能力が低下する懸念があるが、高温空気流を電極あるいはその近傍に噴きつけ電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐことができる。
【0125】
また白金を電極表面物質とし、放電電極を170〜350℃に保つことにより、上記問題をより効率的に防ぐことができる。
尚押出機に供給するポリ乳酸(A)は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前乾燥しておくことが好ましい。水分含有量は100ppm以下であることが特に好ましい。
【0126】
前記未延伸フィルムは、実質的に延伸されないことが好ましいが、必要に応じてさらに一軸方向あるいは二軸方向に延伸して一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムとしてもよい。かかる一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムを得るには、上記未延伸フィルムを延伸可能な温度、即ちポリ乳酸のガラス転移温度(以下Tgと記すことがある。)以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱し、少なくとも一軸方向に延伸する。
【0127】
延伸倍率は、一軸延伸フィルムでは2倍未満、二軸延伸フィルムでは面積倍率で4倍未満の範囲で選択される。
二軸延伸においては単に面積倍率を上記範囲にするほか、縦、横の延伸倍率の差を小さくして、バランスをとることが、収縮率、弾性率等の縦、横の値をバランスさせるために必要である。延伸倍率が上記範囲を満たさないとポリ乳酸フィルムの成形性が低下し、好ましくない。
【0128】
上記の二軸延伸フィルムは、例えば未延伸フィルムを縦方向にまず延伸し、次いで横方向に延伸する縦−横逐次延伸法、縦方向と横方向とを同時に延伸する同時に軸延伸法などにより製造することができる。
【0129】
この二軸延伸フィルムは、さらに縦方向あるいは横方向の一軸方向に、あるいは縦方向及び横方向の二軸方向に再延伸して二軸再延伸フィルムとすることもできるが、最終的な倍率が上記数値範囲となるように行えばよい。
上記一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムは、成形性を低下させない程度に熱処理することで、熱収縮率を低くすることができる。
【0130】
ポリ乳酸(A)の高温相融点Tmsc以下の温度でさらに熱処理し、室温まで冷却することにより一軸延伸熱処理フィルム、あるいは二軸延伸熱処理フルムとすることができる。
【0131】
好ましくは、熱処理温度は低温相融点Tmhから高温相融点Tmsc(℃)の温度範囲で熱処理とすることにより、フィルムの破断も少なく、熱固定効果も十分たかくなり、寸法安定性の良好なフィルムとすることができる。
【0132】
かくして得られた未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、あるいは二軸延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
【0133】
本発明のポリ乳酸フィルムは透明性が良好であり、耐熱性も良好であることから、包装用フルム、コンデンサー用フィルム(例えば肉厚3μm以下のフィルム)、プリンターリボン用フィルム(例えば肉厚5μm程度のフィルム)、感熱孔版印刷用フィルム、磁気記録フィルム(例えばQICテープ用:コンピューター記録用フィルム1/4インチテープ)、モングレアフィルム(例えば肉厚50μm以下のフィルム)に有用である。特にヘーズ4%以下のフィルムは光学用途に有用である。また、耐熱性と成形性とに同時に優れるため、プレス成型、真空成型、圧空成型、インモールド成型等の成型用途に用いても、加熱による白化が生じ難く、有用である。
【0134】
光学用ポリ乳酸フィルムとしては、偏光板の保護フィルム、反射防止フィルムや防眩フィルム等に使用できる。ポリ乳酸フィルムは光学弾性率が低いという特徴があり、例えば大面積の液晶画面の端などでかかる応力により光学特性の変化が少ないため、均一な画面が得られる。さらに、偏光板の保護フィルムとしてポリ乳酸フィルムを使用した場合は、その複屈折率が低く抑えられることで光学特性を安定して得ることができる。
【0135】
さらに、本発明のポリ乳酸フィルムは延伸倍率により屈折率が変化しにくい傾向にあるため、延伸斑によるレターデーションの斑が発生しにくい。
また、水蒸気透過性により、水系のキャスティングフィルムであるポリビニルアルコール(PVA)を十分に乾燥することが可能であり、トリアセチルセルロース(TAC)の代替として使用可能である。
【0136】
さらに、食品用包装フィルムとして使用する場合は、内容物が可視であるだけでなく、耐熱性も高いことから、加熱殺菌が可能となることや電子レンジでの加熱が可能になる等のメリットもある。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
【0138】
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
なお、GPC測定器は下記の構成であり、クロロホルム溶離液を使用、カラム温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノール含有クロロホルム)の試料10μlを注入して測定を行なった。
検出器:示差屈折計 (株)島津製作所製 RID−6A
ポンプ:(株)島津製作所製 LC−9A
カラム:(株)東ソーTSKgelG3000HXL,TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続
【0139】
(2)結晶融点、結晶融解熱(△Hmh、△Hmsc)及びステレオコンプレックス結晶化度(S):
パーキンエルマー(株)製DCS7示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料10mgを窒素雰囲気下、1st RUNにて昇温速度20℃/分で、30℃から250℃に昇温して結晶融解温度(Tmh、Tmsc)、及び結晶融融解熱(△Hmh、△Hmsc)を測定した。なおステレオコンプレックス結晶化度(S)(単位:%)はポリL−乳酸成分及びポリD−乳酸成分よりなるポリ乳酸につき、190℃以下の低温相結晶融解熱(△Hmh)、190℃以上の高温相結晶融解熱(△Hmsc)より下記式によりもとめた。
[数1]
S = {△Hmsc/(△Hmsc+△Hmh)}×100 (1)
【0140】
(3)溶融安定性(%):
試料を窒素雰囲気下、260℃、10分間保持後の還元粘度の保持率を測定した。ポリ乳酸(A)樹脂をフィルム化するとき、溶融安定性が80%以上であれば通常の溶融押しが問題なくでき、溶融安定性合格と判断した。
なお、還元粘度(ηsp/c)は、試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定した。
【0141】
(4)湿熱安定性(%):
試料を80℃、90%RHで11hr保持し、還元粘度(ηsp/c)の保持率(%)を測定、湿熱安定性とし耐久性のパラメーターとした。該パラメーターが80%以上であれば、ポリ乳酸樹脂組フィルムを通常の湿熱条件下で安定的に使用でき耐久性合格と判定した。また90%以上であれば特別に良好と判断した。
【0142】
(5)ヘーズの測定:
日本電色株式会社製 Hazemeter MDH2000を使用し、JIS K7105−1981の6.4に準拠して測定した。
ヘーズが10%を超えると透明性不良と判断した。またヘーズが1%以下の時は光学用フィルムに使用可能な透明性と判断した。
また、サンプルを熱風乾燥機を用いて140℃で10分熱処理し、上記と同様の方法でヘーズを測定し、熱処理前後のヘーズの差(熱処理後のヘーズ−熱処理前のヘーズ)を求め、ヘーズの変化とした。
【0143】
(6)光学純度
光学純度は、クロロホルムに溶解させたポリ乳酸の希薄溶液を所定の容器に入れ、せん光度測定装置を用いてせん光度を測定し100%L乳酸の場合を100%と100%D乳酸の場合を−100%とし試料の旋光度から比例式で割り出したパーセンテージを光学純度とした。
【0144】
(7)厚み変動
サンプルの厚みを、電子マイクロメーターを用いて長手方向(MD)に2m測定し、最高厚さと最低厚さとの差を、平均厚みで除した比率(百分率)を求め、厚み変動(単位:%)とし、以下に準じて評価した。
◎:2%以下
○:2%を超え5%以下
△:5%を超え10%以下
×:10%を超える
厚み変動が大きくなると、フィルム生成時の表層の配向が変動しているためか、ヘーズの変動も大きくなる傾向にあり好ましくない。また、成型加工時における加工性が悪くなる傾向にあり好ましくない。具体的には、上記厚み斑が10%を超えると、実用に耐えない。
【0145】
[参考例1]ラクチドの溶融開環重合によるポリ乳酸の合成例
真空配管、及び窒素ガス配管、触媒、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるので冷却を開始し、内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で、1時間反応を行った後攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
【0146】
さらに20分間静置して気泡を除去した後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧しプレポリマーをチップカッターに押し出し重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し10.13kPaに減圧し残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した後のポリL−乳酸樹脂は重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005wt%であった。
また同様の合成実験を、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを用いて実施し、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005wt%のポリD−乳酸樹脂を重合した。
【0147】
[実施例1〜2、4〜7、比較例1]
前述の合成例で製造したポリL−乳酸樹脂及びポリD−乳酸樹脂をそれぞれ120℃で5時間乾燥し、重量比1/1の混合物を得た。得られた混合物100重量部に表中記載の量の結晶化核剤(三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E))を混合後、表中記載の温度で2軸押出機で溶融混練し、表中に記載のリップ開度を有するダイを用い、ダイ温度260℃で、キャステキング速度40m/分でフィルム状に溶融押し出しし、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
なお溶融安定性はいずれの実験でも80%以上で合格であった。結果を表1中に記載する。
【0148】
【表1】

【0149】
[実施例3]
実施例2において、結晶化核剤に加え、カルボキシル基封止剤として、カルボジライトLA−1(日清紡(株)製)0.3重量部を混合した。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のポリ乳酸フィルムは透明性、及び耐熱性が良好なフィルムであり、コンデンサー用フィルム、プリンンター用フィルム、セラミックライナー用フィルムに好適である。また、良好な透明性を活かし、光学用途にも好適である。また、成形性及び成形性が同時に良好であることを活かし、成型用途にも好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−乳酸単位を主成分とし、L−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(B)成分と、D−乳酸単位を主成分とし、D−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(C)成分とを、重量比で(B/C)=10/90〜90/10で溶融混練してなるポリ乳酸(A)を溶融押出してなるポリ乳酸フィルムであって、示差走査熱量計測定(DSC測定)及び下記式から求められるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上、ヘーズが10%以下、140℃で10分熱処理した後のヘーズの変化が5%以下であるポリ乳酸フィルム。
[数1]
S = {△Hmsc/(△Hmsc+△Hmh)} × 100 (1)
(式中、△Hmhは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃未満の低融点融解ピークの融解エンタルピー、△Hmscは、DSC測定から求められる結晶融解ピーク温度が190℃以上の高融点融解ピークの融解エンタルピーを表す。)
【請求項2】
2倍未満に一軸方向に延伸された、請求項1に記載のポリ乳酸フィルム。
【請求項3】
面積倍率で4倍未満に延伸された、請求項1または2に記載のポリ乳酸フィルム。
【請求項4】
三斜晶系無機粒子(D)及び/または燐酸エステル金属塩(E)を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリ乳酸フィルム。
【請求項5】
カルボキシル末端基濃度が0から10eq/tonである、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリ乳酸フィルム。
【請求項6】
ポリ乳酸(A)の重量平均分子量が8万から25万である、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ乳酸フィルム。
【請求項7】
L−乳酸単位を主成分とし、L−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(B)成分と、D−乳酸単位を主成分としD−乳酸単位以外の成分を0〜10モル%含有するポリ乳酸(C)成分とを、重量比で(B/C)=10/90〜90/10で溶融混練してなるポリ乳酸(A)を、ポリ乳酸(A)の樹脂温度が(Tmsc+20)から(Tmsc+50)(℃)となる範囲で溶融押出しすることを特徴とする、ポリ乳酸フィルムの製造方法。
(ここで、Tmscは、DSC測定から求められる結晶融解ピークのピーク温度が190℃以上の高融点結晶融解ピークのピーク温度を表す。)
【請求項8】
ドラフト比が2以上80以下である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
溶融押し出し後、実質的に延伸しない、または2倍未満に一軸延伸する、または面倍率で4倍未満に二軸延伸することを特徴とする請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学用ポリ乳酸フィルム。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の包装用ポリ乳酸フィルム。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載の成型用ポリ乳酸フィルム。

【公開番号】特開2010−83906(P2010−83906A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250945(P2008−250945)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】