説明

ポリ塩化ビニリデン被覆、被覆の製造方法およびその使用

本発明は、HDPEの粒子(12)を含む、ポリ塩化ビニリデンから構成された被覆(8)に関する。配合される粒子は、LDPE、LLDPE、PP、PVDC、PVC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、PTFE、硬質ワックス、合成樹脂、およびそれらの混合物および共重合体を含んでなる群から選択された重合体でもよい。被覆(8)は、複合材料中のフィルム(9)に施され、該複合材料は、基材フィルム(11)を有し、その基材にフィルム(9)が結合剤(10)により結合される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニリデンのシート状に形成された材料を基材とするフィルム、被覆の製造方法およびその使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
以下、「複合材料」または「複合フィルム」と呼ぶ多層複合材料は、食品および薬学的製品の包装などに使用される。そのような複合材料の最上層にあるフィルムまたは層は、塩化ビニリデン重合体または共重合体の分散液で被覆されることが多い。例えば、薬学的製品の包装には、PVCフィルムまたはPVC−PE複合フィルムを塩化ビニリデン共重合体分散液で被覆し、続いて熱成形工程でブリスターに加工し、次いで充填製品を満たし、アルミホイルまたは薄い重合体カバーフィルムによって密封する。塩化ビニリデンモノマーは、通常、メタクリレート、アクリレート、塩化ビニルまたはアクリロニトリルとの共重合体に重合される。塩化ビニリデン共重合体被覆の目的は、密封可能な被覆を形成すること、および/または蒸気、酸素および臭気に対するバリヤー層を形成することである。
【0003】
塩化ビニリデン共重合体分散液を用いて形成されたプラスチックフィルムは、新しい状態にある時、特にワックスまたは他の潤滑性添加剤を含まない時には、ブロッキング傾向、すなわち平滑な表面に密着する(例えば身の回りにあるフィルムロールのラップのように)傾向を示す一方で、金属、プラスチックおよび有機材料に対する非常に高い静止摩擦および滑り摩擦係数を示すのが特徴である。滑り摩擦係数は、PVDC被覆の表面が、遅かれ速かれ硬化して結晶化が進行するために、硬化した場合に低下することがある。しかし、機械部品に密着する傾向、または充填製品で、特にゼラチンカプセルで満たした時に滑り特性が乏しいという傾向は低下しない。PVDC層の、高温機械部品、例えば熱成形機の加熱区域に対する好ましくない粘着傾向も観察されている。
【0004】
複合フィルムを巻き付けた後、ブロッキング傾向により、フィルムの隣接するラップとの接触により引き起こされるダビングスポット(dabbing spots)が軟質PVDC表面上に形成される。PVDC分散液被覆に通常使用されるスクリーンシリンダーまたはトリ−ヘリックスローラー被覆機構の場合のように、PVDC表面が非常に平滑である場合、包み込まれた空気を除去しないままでいると、取り込まれた気泡のために隣接するラップとの接触が阻害され、光沢のある表面を有する大きな区域が形成される。これらの区域に、曇った表面を有する区域が隣接し、これが隣接するラップと接触し、その結果、ダビングスポットが生じる。ダビングスポット自体は、PVDC被覆に技術的な欠陥を生させるわけでなないが、美観的な理由から許容されない場合が多い。しかし、多くの場合、PVDC被覆されたフィルムは、好ましくないフィルムの変形を生じ、巻き込まれた気泡のために二次的な欠陥を生じる場合がある。
【0005】
一般的に、この空気の取込効果は、空気を側方から逃がすことができる特殊な表面構造を付けることにより、軽減される。また、ダビングスポットも、基本的に表面構造の波の最上層部に常に現れるためフィルムの全表面を横切って一様に配分され、フィルムは、この方法によってより均質な外観を呈する。
【0006】
そのような表面構造を特に発生させるには、被覆機械に追加の装置を使用することになる。構造の品質、すなわち複合材料の最上層の、粗さの高さ、外観、平均層厚を、機械の設定により調整する必要があり、一般的に、平滑なフィルム表面と比較して、表面構造を発生させることにより、フィルム厚が低下し、従って、生産性が低下することがある。表面の不均質性のために、PVDC被覆されたフィルム上に表面構造を付けることは不利であり、さらに、被覆された複合材料をPVDC側で追加の張り合わせまたは被覆工程に付する場合は、表面構造を付けることができない場合もある。
【0007】
新しく被覆し、巻き付けた複合材料フィルムは、数時間または数日の間に、あまり緊密に巻いていない部分、またはフィルムが薄い所で、若干潰れるために弛緩し、フィルム厚さが大きいところでは緊張する。新しく被覆されたPVDCのブロック傾向により、フィルムラップ間の滑り容量が不十分であり、同時に弛緩するために、フィルム表面に沿って張力が生じ、そのために、ブロック傾向が強すぎる場合、複合フィルムが個別のフィルムまたは層に壊れ、材料破壊につながることさえある。
【0008】
独国特許第10064800A1号には、微粒化されたポリエチレンワックスが開示されており、この材料は、高圧条件下で、分子量調整材として脂肪族または脂環式ケトンを使用し、エチレンの共重合により製造され、続いて微粒化される。微粒化とは、物質を1μm〜最大100μmの範囲内の粒子径に分割することを意味する。これらの物質は、粉砕または噴霧により、所望の形態に加工されている。微粒化されたポリエチレンワックスとしては、多くの用途、例えば印刷インク用のキャリヤー、塗料、歯磨きペースト用の研磨剤、および化粧品製剤、例えばアイシャドウ、口紅、またはブラッシャー、用の添加剤、が公知である。
【0009】
独国特許第4316025A1号は、粘着性顆粒(granulate)の表面を非粘着性にするための溶剤として好適な、平均粒子径1〜30μmの微粒化されたポリエチレンワックスに関する。この微粒化されたポリエチレンワックスは、顆粒の0.01〜2重量%の少量でも、その効果を発揮する。これらの微粒化されたポリエチレンワックスは、関連するポリエチレン溶融物を、2段階ノズルを使用して、ガスでスプレーすることにより、製造される。
【0010】
欧州特許第0403542B1号には、モノマー混合物から形成される塩化ビニリデンインターポリマーを含んでなる重合体組成物が開示されている。このモノマー混合物は、塩化ビニリデン60〜99重量%、および塩化ビニリデンと共重合し得る、少なくとも一種のエチレン型不飽和コモノマー40〜1重量%を含む。塩化ビニリデンインターポリマーを処方パッケージと混合するが、この処方パッケージは、その処方パッケージの総重量に対して0.1〜95重量%の弱酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、エチレン単独重合体、および少なくとも一種の可塑剤および潤滑剤を含む。この塩化ビニリデンインターポリマーを使用し、重合体化合物のキャスティング、ブロー成形、押出成形、共押出、張り合わせ、またはカレンダー加工により、物体を製造することができる。
【0011】
欧州特許第0736067B1号には、PVDCを含むポリオレフィン混合物を安定化させる方法、およびPVDCを含む安定化されたポリオレフィン混合物が開示されている。このプラスチック混合物は、ポリオレフィンおよびPVDC0.05〜20重量%および少なくとも一種の有機ホスファイトまたはホスホナイトならびに少なくとも一種の脂肪酸の金属塩を含む。
【0012】
独国特許第19832500A1号は、少なくとも一種のシクロオレフィン共重合体を含むフィルム、およびそのフィルムの少なくとも片側に張り合わせた熱可塑性フィルムを含む、熱成形可能な複合フィルムに関する。この熱成形可能なフィルムは、シクロオレフィン共重合体を含むフィルムに、無溶剤単一成分接着剤により張り合わせる。熱可塑性フィルムは、PVDCを含む。このフィルムの厚さは全体で100〜500μmであり、PVCフィルムの厚さは5〜150μmであり、COCフィルムの厚さは50〜400μmである。この熱成形可能な複合フィルムは、PTP包装の製造に使用される。熱可塑性フィルムは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリウレタンからも選択することができる。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、複合材料用、とりわけ複合フィルム用の複合フィルムの滑り特性改良するための低静止摩擦および滑り摩擦係数を特徴とする被覆を製造すること、および被覆すべき複合フィルムの機械における取扱、および対応する機械における仕上げを容易にすることである。
【0014】
この目的は、シート状に形成された材料用の、ポリ塩化ビニリデンを基剤とする被覆であって、重合体、天然物質、変性された天然物質、無機材料、またはそれらの混合物から製造された粒子がポリ塩化ビニリデン中に含まれる、被覆により達成される。
【0015】
この場合の粒子密度は、0.1〜2.0g/cmであり、平均粒子径は1μm〜100μmである。
【0016】
この目的には、最大粒子直径はPVDC層の厚さ以上である。
【0017】
本発明の一実施態様においては、粒子が、HDPE、LDPE、LLDPE、ポリプロピレン、PVDC、PVC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、合成樹脂、硬質ワックス、ならびにそれらの混合物および共重合体を含んでなる群から選択される。
【0018】
本発明の別の態様においては、粒子が、HDPE、LDPE、LLDPE、ポリプロピレン、PVDC、PVC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン重合物(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、合成樹脂、硬質ワックス、ならびにそれらの混合物および共重合体を含んでなる群から選択された重合体の一種から製造された表面被覆を有する。
【0019】
本発明の別の実施態様としては、請求項7〜13に記載されている特徴に従う。
【0020】
シートに形成された材料用の、ポリ塩化ビニリデンを基剤とする、そのような被覆の製造方法は、PVDC分散液を用意し、その中に粒子を直接供給するか、またはその中に粒子分散液を攪拌しながら供給することを特徴とする。この目的には、1または数種類の乳化剤を含むか、または含まない水中に、攪拌しながら粒子粉末を加えることにより、粒子分散液を調製する。粒子分散液には、好ましくは顔料分散剤または他の分散促進性添加剤を加える。本方法の別の実施態様では、PVDCおよび粒子分散液の混合物を、シートに形成された材料の上に最上部層として塗布し、乾燥させる。
【0021】
特に、PVDC5〜80重量%を含むPVDC分散液、および粒子10〜95重量%を含む粒子分散液を混合する。
【0022】
本方法のその他の実施態様は、請求項19〜21に記載されている。
【0023】
本発明の被覆は、プラスチックフィルム、紙シート、および金属ホイルの被覆に使用される。特に、この被覆は、PVC単層−フィルム、PVCとPEから製造された多層複合材料、PVC−PE複合フィルムと1層の金属ホイルから製造された複合材料、シクロオレフィン共重合体から製造された単層フィルム、ならびにシクロオレフィン共重合体とPVCおよび/または他の重合体から製造された複合フィルムの被覆に使用される。上記の種類の、PVDCで被覆した後、張り合わせおよび/またはコーティングにより改良された複合フィルムも使用される。全ての通常の重合体フィルム、例えばPET、PP、PE、アクリレート、ABS、PS、セロハン、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、PCTFE、等、および上記重合体フィルムの2種類以上から製造されたそれぞれの複合材料に、本発明の被覆を施すことができる。PVDCフィルム、密着性促進剤、およびキャリヤーフィルムから製造された多層複合材料、ならびにPVDCフィルム、密着性促進剤、ポリエチレン、密着性促進剤、およびキャリヤーフィルムから製造された多層複合材料のPVDC層を被覆するための被覆が特に好ましい。PVDCフィルムとは、初期の作業工程でプライマーとしてPVDC分散液がすでに上に塗布されているPVDCフィルムを意味する。PVDC被覆されたフィルムを含む他の多層複合材料は、PVC/PE/PVDC/PVDC+HDPE/PE/PVC、PVC/COC/PVDC/−PVDC+HDPE、PVC/PVDC/PVDC+HDPE/PEである。本発明の被覆は、金属ホイルに、ならびに金属ホイルとこのように被覆された重合体フィルムから製造された複合材料上にも塗布できる。これらの用途の全てにおいて、未変性PVDCを含むプライマーを予め塗布せずに、本発明の被覆を使用することもできる。これらのフィルムは、PTP包装物の製造のような用途に使用される。
【0024】
重合体粒子、好ましくはHDPE微粒化物(micronizates)、を、複合フィルムの最上部ポリ塩化ビニリデン共重合体層中に埋め込むことにより、上記の難点が排除されるか、または大幅に軽減され、これらの複合フィルムの製造方法が簡素化され、より効率的になる。これらの重合体粒子は、フィルムのラップ間でスペーサーとして作用し、フィルムシートのPVDC表面の滑り特性を改良する。
【0025】
これらの粒子に好適であると考えられる、液体および粉末形態にある重合体は、特定のPVDC分散液との相容性が高く、摩耗性ではなく、特にPVDC被覆またはPVDC被覆が塗布されるキャリヤーまたはベースフィルムの下側より実質的に硬くない粒子である。これらの粒子が、複合材料の他のフィルム表面より硬い場合、粒子の表面はできるだけ平滑でなければならず、理想的には球状である。粒子は、静止摩擦および滑り摩擦係数ができるだけ低いのが理想的である。粒子は、PVDC乾燥に一般的である100℃までの乾燥温度で、被膜形成すべきではなく、乾燥中にPVDCと「融合」すべきではない、すなわち均質なPVDC/粒子重合体被膜を形成すべきではない。反対に、重合体粒子は、PVDC層から突出し、それによって、それらのスペーサーとしての機能を果たすべきである。さらに、粒子材料は、PVDC粒子層中に曇りがほとんど生じないように、屈折率がPVDCの屈折率と類似しているべきである。粒子材料の密度は、0.1〜2.0g/cm、特に1.30g/cm以下であり、粒子分散液の表面への移行、従って、PVDC表面からの突き出しが促進されるように、1g/cmより小さいのが好ましい。このためには、最大粒子径が被覆の厚さ以上である。過大粒子に関連する粒子含有量の不規則性、または不均質塗布が起こらないように、粒子の平均粒子径も、塗布系と相容性を有する必要がある。PVDC被覆のバリヤー効果に悪影響を及ぼさないように、粒子は、多孔質であってはならない。バリヤー効果は、複合フィルムまたは複合材料の塗布区域でできるだけ高い必要がある。
【0026】
原則的に、粒子としては、上記の条件に完全に、または部分的に適合する全ての重合体、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、PP、PVDC、PVC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ABS、PTFE、硬質ワックス、合成樹脂、その他、ならびにそれらの混合物および共重合物、が考えられる。好適な表面被覆を有する粒子も使用できる。そのような被覆された粒子のコア材料は、例えば上に挙げた重合体、ならびに天然物質、例えばセルロース、天然ワックス、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)、セラック、変性された天然物質、例えばカゼイン誘導体およびカゼイン縮合物、セルロース誘導体、例えばセルロースアセテートおよびセルロースナイトレート、または無機物質、例えば二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、二酸化チタン、である。被覆材料としては、上に挙げた重合体、または他の、対応する好適な表面被覆、例えばシラン、シロキサン、オルモサー(有機変性されたセラミック)、セラミック材料、を使用できる。
【0027】
純粋に無機の性質を有し、上記の特性を有する粒子、例えば二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、二酸化チタン、も使用できる。
【0028】
粒子が重合体に由来する場合、それらの粒子は、重合、重縮合、重付加、重合体類似体または予備加工された重合体の混合物により製造することができる。粒子形態および分割は、通常、重合の際に直接、すなわち懸濁または乳化重合により、または後の段階での機械的な分割および/またはキャリヤー液体中での懸濁および安定化により、行うことができる。無機粒子は、例えば天然物質から粉砕するか、または合成により製造することができる。これらの粒子は、表面被覆を施すことができる。
【0029】
粒子を使用する場合、乾燥被覆の粒子比率は、通常、0.1重量%〜10重量%である。HDPE微粒化物の形態にある粒子では、例えば乾燥被覆の約0.2〜2乾燥重量%の微粒化物が特に効果的であることが立証されている。
【0030】
そのような、粒子を含むPVDC被覆を製造するには、シートに形成された材料に塗布する前に、PVDC分散液を攪拌しながら対応する量の粒子懸濁液または分散液と、該懸濁液または分散液がPVDC分散液と均質に混合されるまで、混合する。この目的には、市販の非せん断攪拌機、たとえばプロペラ攪拌機、を使用する。続いて、被覆すべき材料上にPVDC被覆を施すための塗布工具を使用して混合物を塗布し、乾燥させる。粒子径が正しく選択され、PVDC分散液との相容性が得られれば、被覆および/または乾燥挙動に関して、未変性PVDC分散液に対する差は確認できない。完成した、被覆された材料には、下記のような実質的な処理および製品上の利点がある。
1.被覆された材料表面の静止摩擦および滑り摩擦は、特に新しく被覆された状態で、未変性PVDC被覆よりもかなり少ない。
2.新しく被覆された材料のブロッキング傾向は、PVDC表面が構造化されていないが、明らかに低下している。これに関して、「構造化されていない」とは、表面から粒子が突き出ているが、その表面は、波の谷や山を形成しないことを意味する。
3.フィルムロール上で隣接するフィルムラップの裏側における痕跡により引き起こされるブロック点形成が大幅に低下するか、または完全に無くなる。
4.表面構造化が無いにも関わらず、粒子のスペーサー効果により、空気がフィルムまたは材料のリールから逃げることができる。空気が取り込まれると、フィルムまたは材料の変形を引き起こし、新しいPVDCのブロッキング傾向のために、フィルムの不規則なつや消し表面を生じることがある。
5.PVDC表面の静止摩擦が低下するために、新しく被覆されたロール材料の弛緩移動により引き起こされる、材料表面に対して平行に作用するせん断力を、隣接するフィルムラップに面したPVDC表面の滑りにより、より効果的に減少させることができる。これによって、PVDC層とベースキャリヤーとの間のせん断力により、滑りの悪いPVDC表面に対してもたらされる材料の破壊が防止される。
6.平らなフィルムからブリスターを製造するのに使用される熱成形機械の機械部品に対する、PVDC被覆された平らなフィルムの摩擦抵抗が低下する。これにより、過剰のシート張力により引き起こされるフィルムの圧搾が低下するか、または完全に排除される。
7.錠剤またはカプセル形態にある包装製品の充填は、静止摩擦および滑り摩擦係数が大きく低下しているので、錠剤やカプセルがブリスターキャビティ中に、より効率的に滑り込むことができるので、大幅に改善される。特に、ゼラチンカプセルは、未変性PVDCを使用した場合、キャビティ中に滑り込まず、キャビティ中で直立するか、またはキャビティから飛び出す傾向さえある。このために、充填区域のすぐ下流にある密封区域で、潰れた包装製品が粘着し、その結果、長い清掃手順が必要になる。
8.さらに、機械の末端で、表面を構造化するための追加の装置および特殊な作業工程の必要がないことは有利である。表面特徴は、組成にのみ依存するので、安全に適用でき、容易に再現することができる。
9.この被覆により、構造化された表面よりも美観的に、より魅力的な、平滑で、平坦な表面が得られる。
10.平坦な表面により、構造化された表面よりも、最上部PVDC層の層体積をより大きく設定することができるが、これは、構造化された層で乾燥可能な最大層厚は、構造の最高点、すなわち波頭のピークにより予め決定されるのに対し、平らな表面では、乾燥可能な層厚は、構造化可能な層の乾燥可能な層厚と等しく大きいが、これと対照的に、波の谷部分が無く、均質に一定した層厚を有するためである。
【0031】
このように変性した表面は、被覆されたフィルムの裏側に対して、および成形工具のキャビティに対して、非常に容易に滑ることが立証されていることも有利である。これによって、一方で、明らかに少ない抵抗/エネルギー消費で、充填していない、完全に形成されたキャビティが、例えば切り取ったブリスターフォーマット片の形態で噛み合っているブリスターフィルムを取り外す可能性、または他方、新しく形成されたブリスターカップを、変性されたPVDC側をブリスターカップの外側に使用するという条件下で、深絞り工具から取り出すこともできるだろう。第一の場合、より迅速に取り外すことができ、従って、生産性を向上させることができ、第二の場合、ブリスター機械を中断せずに稼働させることができ、従って、吐出量を増加することができる。
【0032】
図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
図1に示す複合フィルムの断面は、キャリヤーまたはベースフィルム4、密着促進剤3、およびPVDCフィルム2を含む。密着促進剤3は、PVDCフィルム2をキャリヤーフィルム4に張り合わせている。PVDCフィルム2の上側にPVDC被覆7が施してあり、このPVDC被覆は、構造化された表面5を有するので、PVDC被覆の層厚が複合フィルム6の幅を横切って不均質であり、波の頂上および谷を含む。
【0034】
図2に示す複合フィルムの断面は、キャリヤーまたはベースフィルム11、密着促進剤10、PVDCフィルム9、およびPVDCから製造された被覆8からなり、被覆8の中にHDPEから製造された粒子12が埋め込まれている。粒子12は、様々な粒子径を有し、平均粒子径は6〜8μmであり、HDPE分散に好適であり、これによって、被覆厚が6μmまでになる。最大粒子径は約12μmである。
【0035】
層厚12μmに対しては、平均粒子径12〜13μmである。最大粒子は、大きさが約17μmである。被覆8の平らな表面13から多くの粒子径12が突き出ており、巻き付けた複合フィルム1の隣接するラップ間のスペーサーとして作用する。
【0036】
PVDC分散液とHDPE分散液の混合物
以下に記載する例の目的は、本発明をより詳細に説明するためであり、請求項に規定する本発明の保護範囲を制限するものではない。それぞれの場合、PVDC分散液からなる塗料1000リットルを、市販の、または新しく調製したHDPE分散液と混合する。PVDC分散液は、PVDC分散液の総重量に対してPVDC55重量%の比率を有し、密度が1.29g/cmである。HDPE分散液では、HDPE部分が、HDPE分散液の総重量に対して65重量%であり、密度が0.96g/cmである。
【実施例】
【0037】
所望量のPVDC分散液を1000リットル容量の容器に入れ、均質に攪拌する。PVDC分散液を攪拌しながら、計算量のHDPE分散液を、発泡しないように、細い流れで加え、混合物をさらに5〜10分間攪拌する。使用するHDPE分散液は、既成の市販されている分散液、またはHDPE粉末を、1または数種類の乳化剤、顔料分散剤、または他の分散添加剤、陰イオン系界面活性剤を加えて、または加えずに、水に攪拌しながら加えることにより、新しく調製した分散液でよい。HDPE粉末をPVDC分散液中に直接加えることも可能であるが、その際、不均質な被覆厚を生じることがある塊の形成を阻止するように、特別な注意を払う必要がある。
【0038】
実施例1
HDPE分散液の部分は、被覆の総体積(リットル)の1体積%であった。乾燥させたフィルムのPVDCおよびHDPEの関連する部分χは、下記のように計算した。
【数1】

【0039】
【表1】

【0040】
実施例2
HDPE分散液の部分は、被覆の総体積(リットル)の2体積%であった。
【0041】
【表2】

【0042】
以下に、図1に示すような一般的に公知の、純粋なPVDC被覆を含む複合フィルムの測定した静止摩擦および滑り摩擦係数を、実施例1および2によるフィルムの測定値と並置する。摩擦力は、硬質ゼラチンで被覆したアルミニウム製の試験プローブで測定する。
【0043】
測定条件は下記の通りである。
試験プローブ速度 5mm/分
試験プローブの質量 200g
材料 アルミニウム、陽極酸化
試験プローブ上の被覆 硬質ゼラチン
空気湿度 50%RH
方法 ASTMD1894に類似
3種類のフィルムの
PVDC被覆の製造後日数 10日
【0044】
【表3】

【0045】
本発明の被覆中にあるHDPE部分に対する静止摩擦係数の強い間接的依存性が見られる。HDPE部分が増加するにつれて、静止摩擦係数が低下する。式:((HRKOP−HRK)/HRKOP)×100%(式中、HRKOPは、PVDC被覆中に粒子を含まないPVDCで被覆した複合フィルムの静止摩擦係数であり、HRKは、PVDC被覆中に粒子を含むPVDCで被覆した複合フィルムの静止摩擦係数である。)から、HDPE部分が1体積%および2体積%で、静止摩擦係数HRKは61%および72%低下している。
【0046】
複合フィルムの処理
処理の際、粒子を含まないPVDC被覆と比較して、下記の利点が達成された。
1.PVDC被覆を含むPVDC被覆された複合フィルムを外側から加工した時、ブリスターを深絞りからより容易に取り出せる。
2.機械部品に対する摩擦抵抗が低いために、フィルムシートの圧搾が少ない。
3.複合フィルムから製造されたブリスターパック(PVDC側を充填製品に向けた)中へのゼラチンカプセルの充填特性が優れている。
4.複合フィルムが高温機械部品に急速に粘着する傾向が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】PVDCフィルム/キャリヤーフィルムと構造化されたPVDC表面からなる複合フィルムの通常のPVDC被覆の断面を図式的に示す図である。
【図2】本発明の、PVDCフィルム/キャリヤーフィルムから製造された複合フィルム上にある、粒子と混合されたPVDCからなる被覆の断面を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された材料用の、ポリ塩化ビニリデンを基剤とする被覆であって、重合体、天然物質、変性された天然物質、無機材料、またはそれらの混合物から製造された粒子が前記ポリ塩化ビニリデン中に含まれることを特徴とする、被覆。
【請求項2】
前記粒子の密度が0.1〜2.0g/cmであり、平均粒子径が1μm〜100μmである、請求項1に記載の被覆。
【請求項3】
前記粒子の密度が1.30g/cm以下であり、特に1g/cm以下である、請求項2に記載の被覆。
【請求項4】
最大粒子直径が、前記被覆の厚さ以上である、請求項2に記載の被覆。
【請求項5】
前記粒子が、HDPE、LDPE、LLDPE、ポリプロピレン、PVC、PVDC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン重合物(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、合成樹脂、硬質ワックス、ならびにそれらの混合物および共重合体を含んでなる群から選択される、請求項1に記載の被覆。
【請求項6】
前記粒子が、HDPE、LDPE、LLDPE、ポリプロピレン、PVC、PVDC、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン重合物(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、合成樹脂、硬質ワックス、ならびにそれらの混合物および共重合体の群の重合体の一種から製造された表面被覆を有する、請求項5に記載の被覆。
【請求項7】
前記粒子が、PVDC乾燥重量基準において0.1〜10重量%の乾燥部分を有する、請求項6に記載の被覆。
【請求項8】
前記粒子が、PVDC乾燥重量基準において0.3〜8重量%の乾燥部分を有する、請求項7に記載の被覆。
【請求項9】
前記粒子が、PVDC乾燥重量基準において0.2〜2重量%の乾燥部分を有する、請求項7に記載の被覆。
【請求項10】
粉末形態にある前記粒子が前記PVDCに加えられる、請求項1に記載の被覆。
【請求項11】
液体であり、陰イオン系PVDC分散液、および微粒化された粒子から製造された陰イオン系分散液の混合物からなる、請求項1に記載の被覆。
【請求項12】
前記陰イオン系分散液が、微粒化された粒子、1または数種類の乳化剤、陰イオン系界面活性剤、顔料分散剤および分散添加剤からなる、請求項11に記載の被覆。
【請求項13】
前記粒子がHDPEからなる、請求項5に記載の被覆。
【請求項14】
シート状に形成された材料用の、ポリ塩化ビニリデンを基剤とする被覆の製造方法であって、PVDC分散液を準備し、前記PVDC分散液中に粒子を直接供給するか、または前記PVDC分散液の中に粒子分散液を攪拌しながら供給することを特徴とする、方法。
【請求項15】
1または数種類の乳化剤を含む、または含まない水中に、攪拌しながら粒子粉末を加えることにより、前記粒子分散液を調製する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子分散液が、顔料分散剤または他の分散促進性添加剤を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
PVDCおよび粒子分散液からなる前記混合物を、シート状に形成された材料の上に最上層として塗布して乾燥させる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
PVDC5〜80重量%を含むPVDC分散液と、粒子10〜95重量%を含む粒子分散液とを混合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PVDC30〜70重量%を含むPVDC分散液と、粒子40〜70重量%を含む粒子分散液とを混合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PVDC分散液80〜99重量%と、粒子分散液1〜20重量%とを混合する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子分散液が、PVDC−HDPEの混合分散液であって、その分散液中に0.50〜3.0重量%HDPEの乾燥部分が含まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆の、プラスチックフィルム、紙シート、および金属ホイルを被覆するための使用。
【請求項23】
前記被覆の、PVC−PE複合フィルムおよび1層の金属ホイルから製造された多層複合材料を被覆するための使用。
【請求項24】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆の、
PVDCフィルム、密着性促進剤、およびキャリヤーフィルムからなる多層複合材料、
PVDCフィルム、密着性促進剤、ポリエチレンフィルム、密着性促進剤、およびキャリヤーフィルムからなる多層複合材料、
PVDCフィルム、密着性促進剤、シクロオレフィン共重合体(COC)、密着性促進剤、およびPVCからなる多層複合材料、または
PVDCフィルム、密着性促進剤、PE、密着性促進剤、およびPVCからなる多層複合材料、
を被覆するための使用。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の被覆の、(PVC/PE/PVDC/PVDC+HDPE/PE/PVC)または(PVC/PVDC/PVDC+HDPE/PE)からなる多層複合材料におけるPVDCフィルムを被覆するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−504380(P2008−504380A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517177(P2007−517177)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006665
【国際公開番号】WO2006/000375
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(503409274)クレックナー ペンタプラスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】