説明

ポンプおよび船舶

【課題】ポンプの効率低下を抑制するとともに、軸受およびポンプの寿命短縮を防止することができるポンプおよび船舶を提供する。
【解決手段】内部に流体が流れる流路を形成するシュラウド2と、回転軸線Lまわりに回転可能に支持される回転軸3と、回転壁部41を有する回転ハブ6と、回転壁部41から径方向外側に向かって延びる回転翼5と、表面に沿って流れる流体の流れ方向を転向させて静圧を高める高圧領域を形成する固定壁部61を有する固定ハブ6と、回転軸3の端部を回転可能に支持する軸受62と、高圧領域と軸受62における下流側の端部との間を繋ぐ流入部63と、高圧領域よりも静圧が低い領域と軸受における流体の流れにおける上流側の端部との間を繋ぐ流出部7と、流入部63を流れる流体に含まれる異物を捕集するフィルタ64と、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプおよび船舶、特に、船舶のウォータージェット推進装置に用いて好適なポンプ、および、そのポンプにより推進される船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータージェットポンプ等の水を送出するポンプには、グリースや潤滑剤を用いた軸受が用いられていた。しかしながら、グリースや潤滑剤を用いた軸受では、グリースや潤滑剤が外部に流出し、送出される水に混入するという問題があった。さらに、流出したグリースや潤滑剤を補充等するメンテナンスが定期的に必要になるという問題があった。
【0003】
上述の問題を解決する方法として、例えば、送出される水の一部を潤滑剤として用いる水中軸受を用いたポンプなどが提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【特許文献1】特開平8−135653号公報
【特許文献2】特開平8−326691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の水中軸受を採用する場合には、以下に説明する問題があった。
まず、ウォータージェットポンプ等のポンプに水中軸受を採用した場合、軸受の潤滑剤としてポンプにより送出される水の一部が用いられる場合が多い。このように、送出される水の一部を軸受の潤滑剤として用いると、ポンプの効率が低下するという問題があった。
【0005】
その一方で、送出される水には異物が混入している場合が多く、この異物が混入した水を潤滑剤として用いると、異物による軸受の磨耗が生じて軸受の寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ポンプの効率低下を抑制するとともに、軸受およびポンプの寿命短縮を防止することができるポンプおよび船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のポンプは、内部に流体が流れる流路を形成するシュラウドと、該シュラウドの内部に配置され、回転軸線まわりに回転可能に支持される回転軸と、該回転軸から前記回転軸線を中心とする径方向外側に向かって延びるとともに、前記流路を流れる流体の下流方向に向かって傾斜する回転壁部を有する回転ハブと、前記回転壁部から前記径方向外側に向かって延びる回転翼と、前記シュラウドに固定されるとともに、表面に沿って流れる前記流体の流れ方向を転向させて静圧を高める高圧領域を形成する固定壁部を有する固定ハブと、該固定ハブに配置され、前記回転軸の端部を回転可能に支持する軸受と、前記固定ハブに配置され、前記高圧領域と前記軸受における前記下流側の端部との間を繋ぐ流入部と、前記高圧領域よりも静圧が低い領域と前記軸受における前記流体の流れにおける上流側の端部との間を繋ぐ流出部と、前記流入部を流れる前記流体に含まれる異物を捕集するフィルタと、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、固定壁部により形成された高圧領域の流体は、流入部から軸受に流入し、軸受の潤滑に用いられた後に、軸受から流出部を介して高圧領域よりも静圧が低い領域に流れ出る。
【0009】
流入部は直接固定ハブに配置されているため、干渉を回避するため最低限の流路面積が必要になる固定ハブと回転ハブとの間に流入部を配置する場合と比較して、流入部の流路面積を自由に設定することができる。
【0010】
その一方で、フィルタは固定ハブの内部に配置されているため、干渉を回避する隙間を設ける必要がある固定ハブと回転ハブとの間にフィルタを配置する場合と比較して、隙間を設ける必要がないことから、流体に含まれる異物を確実に捕集することができる。
【0011】
上記発明においては、前記固定壁部は、前記下流方向に向かって前記回転軸線に接近する壁面であって、前記固定壁部に沿って流れる前記流体同士を前記回転軸線の近傍で衝突させる壁面であることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、固定壁部に沿って流れてきた流体は、回転軸線の近傍で互いに衝突し、回転軸線に沿う方向に流れの向きが転向される。その際に、流体の流れ、言い換えると動圧の一部が静圧となり、高圧領域が形成される。
【0013】
上記発明においては、前記フィルタおよび前記流入部の少なくとも一方は、前記流入部を流れる前記流体の流量を調節することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、フィルタおよび流入部の一方に基づいて流入部を流れる流体の流量の調整を行うことや、両方に基づいて流量の調整を行うこともできる。
例えば、網目状に形成されたフィルタの網目の粗さを変更することにより、フィルタにおける圧損を調整して流量の調整を行うことや、流入部の流路面積を変更することにより、流入部における圧損を調整して流量の調整を行うことができる。さらに、フィルタにおける圧損および流入部における圧損を同時に調整することにより、フィルタにおける異物の捕集性能を確保しつつ、流量の調整を行うこともできる。
【0015】
上記発明においては、前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記回転軸線に沿って前記下流方向に延びる流路であることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、流入部を軸受における下流側の端部から回転軸線に沿って下流方向に延びる流路として形成することで、径方向外側に向かって傾斜する流路として形成する場合と比較して、容易に流路を形成することができる。さらに、流入部にフィルタを容易に配置することができる。
【0017】
上記発明においては、前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記高圧領域における最も静圧が高い部分に向かって延びる流路であることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、流入部が高圧領域における最も静圧が高い部分に開口するため、その他の部分に流入部の開口を設ける場合と比較して、流入部の流体流入側の開口における流体の静圧と、流出部の流体流出側の開口における流体の静圧との圧力差が大きくなり、軸受を通過する流体の流量を増やすことができる。
【0019】
上記発明においては、前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記下流方向に向かって前記径方向外側に傾斜する複数の流路であることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、流入部を下流方向に向かって径方向外側に傾斜する流路とすることで、複数の流路を容易に形成することができる。さらに、当該流路の数を調節することにより、流入部における圧損を調節し、流入部を通過する流体の流量を調節することができる。
当該流路の数の調整は、例えば、予め設けた流路の一部を塞ぐことによって行われてもよい。
【0021】
上記発明においては、前記流出部は、前記回転ハブと前記固定ハブとの間に形成された隙間であり、前記固定ハブから径方向外側に向かって延びる案内羽根が設けられていることが望ましい。
【0022】
本発明によれば、回転ハブと固定ハブとの間の隙間を流出部とすることにより、流出部を別途設けることなく確保することができる。つまり、回転ハブと固定ハブとの間は、相対移動する両ハブの干渉を防止されるために、隙間が必ず設けられる。この干渉を防止する隙間と、流出部とを兼用させることにより、流出部を別途設けることなく確保することができる。
【0023】
その一方で、当該流出部から流出した流体の少なくとも一部は、固定壁面に沿って下流側に向かって流れて、再び流入部に流入して循環流れを形成する。例えば、回転翼の回転数が低下して、送出される流体流量が低下した場合であっても、当該循環流れによって、案内羽根の近傍における流量低下が抑制され、ポンプの運転が不安定になることが防止される。
【0024】
上記発明においては、前記流出部の壁面を構成するとともに、前記流出部を流れる前記流体に前記回転軸線を中心とする周方向の流速成分を加える回転インペラ部が設けられていることが望ましい。
【0025】
上記発明においては、前記固定ハブには、前記流出部の壁面を構成するとともに、前記流出部を流れる前記流体に前記回転軸線を中心とする周方向の流速成分を加える固定インペラ部が設けられていることが望ましい。
【0026】
本発明によれば、流出部から流出する流体に周方向の流速成分が付加されるため、案内羽根に流入する流体における径方向の流速分布を均一化することができ、案内羽根の設計を容易にすることができる。
【0027】
例えば、案内羽根の固定ハブ近傍における周方向の流速成分が、他の部分における周方向の流速成分よりも遅い場合には、流出部から流出する流体に、上記固定ハブ近傍における周方向の流速成分を増速させる周方向の流速成分を加えることにより、案内羽根に流入する流体における径方向の流速分布を均一化することができる。
【0028】
逆に、案内羽根の固定ハブ近傍における周方向の流速成分が速い場合には、流出部から流出する流体に、上記固定ハブ近傍における周方向の流速成分を減速させる周方向の流速成分を加えることにより、案内羽根に流入する流体における径方向の流速分布を均一化することができる。
【0029】
上記発明においては、前記流出部は、前記軸受における前記上流側の端部から、前記固定壁面における前記流れが剥離する領域に向かって延びる流路であることが望ましい。
【0030】
本発明によれば、固定壁面における流体の流れが剥離する領域に、流出部を開口させることにより、静圧が局所的に低い部分に流出部の開口が設けられる。そのため、その他の部分に流出部の開口を設ける場合と比較して、流入部の流体流入側の開口における流体の静圧と、流出部の流体流出側の開口における流体の静圧との圧力差が大きくなり、軸受を通過する流体の流量を増やすことができる。
【0031】
上記発明においては、前記流出部は、前記軸受における前記上流側の端部から、前記径方向外側に向かって前記下流側に傾斜する流路であることが望ましい。
【0032】
本発明によれば、流出部を径方向外側に向かって、下流側に傾斜する流路とすることで、固定壁面における流体の流れが剥離する領域に流出部を開口させることができる。
【0033】
上記発明においては、前記固定ハブから前記径方向外側に向かって延びるとともに、前記回転軸線に沿って延びる整流フィンが設けられていることが望ましい。
【0034】
本発明によれば、例えば、周方向の流速成分を有する水等は、整流フィンの近傍を流れる際に、周方向の流速成分が減少することとなる。その結果、ポンプから流出する水等に含まれる周方向の流速成分が少なくなることから、ポンプの効率低下が防止される。
【0035】
本発明の船舶は、船体の外部から水を導入するとともに、前記船体の後部に導くダクトと、該ダクトの内部の水を前記船体の後部に向かって送出する上記本発明のポンプと、が設けられていることを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、上記本発明のポンプを用いることにより、ポンプの効率低下を抑制するとともに、軸受およびポンプの寿命短縮を防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のポンプおよび船舶によれば、固定壁部により形成された高圧領域の流体は、流入部から軸受に流入し、軸受の潤滑に用いられた後に、軸受から流出部を介して高圧領域よりも静圧が低い領域に流れ出る。つまり、流入部は直接固定ハブに配置することができるため、干渉を回避するため最低限の流路面積が必要になる固定ハブと回転ハブとの間に流入部を配置する場合と比較して、流入部の流路面積を自由に設定することができ、ポンプの効率低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0038】
その一方で、フィルタを固定ハブの内部に配置できるため、干渉を回避する隙間を設ける必要がある固定ハブと回転ハブとの間にフィルタを配置する場合と比較して、隙間を設ける必要がないことから、流体に含まれる異物を確実に捕集することができ、軸受およびポンプの寿命短縮を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係るウォータージェットポンプおよびウォータージェットポンプを備えた船舶ついて図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
本実施形態では本願発明のポンプを、送出された水を船舶S1(図2参照。)の推進に用いるウォータージェットポンプ(ポンプ)1に適用して説明する。
ウォータージェットポンプ1は、図1に示すように、上流側(図1の右側)から水または海水(以下、「水等」と表記する。)を吸込み、下流側(図2の左側)に送出するポンプである。
【0040】
図2は、図1のウォータージェットポンプが設けられる船舶の概略構成を説明する模式図である。
さらに、ウォータージェットポンプ1は、図2に示すように、船舶S1の船体S2に設けられたダクトS3の内部に配置され、ダクトS3における船首側(図2の右側)の開口から水等を吸込み、ダクトS3における船尾側(図2の左側)の開口から水を噴出させて、船舶S1に推進力を与えるものである。
【0041】
ダクトS3は、図2に示すように、船体S2の内部を貫通するとともに、内部を水等が流れる筒状の部材である。ダクトS3における船首側の開口は船体S2の船底に設けられ、船尾側の開口は船体S2の船尾に設けられている。
【0042】
ウォータージェットポンプ1には、図1に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ4と、回転翼5と、固定ハブ6と、流出部7と、案内羽根8と、が設けられている。
【0043】
シュラウド2は、図1に示すように、ダクトS3の一部を構成する筒状の部材であり、その内部は水等が流れる流路とされている。さらに、シュラウド2は、案内羽根8を介して固定ハブ6を支持するものでもある。
シュラウド2の内部には、回転軸3や、回転ハブ4や、回転翼5や、固定ハブ6や、流出部7や、案内羽根8などが配置されている。特に、シュラウド2の内周面から径方向内側に向かって、言い換えると、回転軸3に向かって案内羽根8が延びて配置されている。
【0044】
回転軸3は、図1に示すように、回転軸線Lまわりに回転可能に支持され、回転ハブ4や回転翼5に回転駆動力を伝達する略円柱状の部材である。回転軸3の一方の端部は、シュラウド2の外部へと延び船舶S1の原動機(図示せず)と接続されている。シュラウド2の内部に配置された回転軸3の他方の端部の近傍には回転ハブ4が配置されている。
【0045】
回転ハブ4は、図1に示すように、回転翼5を支持する部材であって、回転翼5とともに回転軸3より回転駆動される部材である。
回転ハブ4には、シュラウド2内を流れる水等の上流側(図1の右側)から、下流側(図1の左側)に向かって、径方向外側へ、つまりシュラウド2側へ傾斜する回転壁面(回転壁部)41が設けられている。言い換えると、回転壁面41は、なだらかに傾斜角が変化する略円錐面状に形成された面である。
【0046】
なお、本実施形態では、回転ハブ4は、回転壁面41を構成する板状の部材を有し、回転ハブ4の内部に空間が形成されている例に適用して説明するが、回転ハブ4の内部に空間がなく、中実に形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0047】
回転翼5は、図1に示すように、回転軸3を介して回転駆動されることにより、シュラウド2内の水等を上流側から下流側に向かって送出する翼である。複数の回転翼5は、回転ハブ4の回転壁面41から径方向外側へ、つまりシュラウド2側へ延びるとともに、径方向に等間隔に配置されている。
なお、回転翼5の形状等は、公知の形状等を用いることができ、特に限定するものではない。
【0048】
図3は、図1の固定ハブなどの構成を説明する模式図である。
固定ハブ6は、図1および図3に示すように、回転軸3を回転可能に支持する部材であり、回転ハブ4とは、回転軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置される部材である。
固定ハブ6には、固定壁面(固定壁部)61と、軸受62と、流入部63と、フィルタ64と、が設けられている。
【0049】
固定壁面61は、図1および図3に示すように、上流側(図3の右側)から下流側(図3の左側)に向かって径方向内側に、つまり回転軸線L側に傾斜する壁面である。言い換えると、回転軸線L上に頂点を有し、なだらかに傾斜角が変化する略円錐面状に形成された壁面である。
固定壁面61には、径方向外側に向かって、つまりシュラウド2に向かって延びる案内羽根8が配置されている。言い換えると、固定壁面61とシュラウド2との間に複数の案内羽根8が、径方向に等間隔に配置されている。
【0050】
軸受62は、図1および図3に示すように、固定ハブ6の内部であって、回転軸線L上に配置された部材である。具体的には、軸受62は、固定ハブ6内に固定配置された略円筒状の部材であって、その内部に回転軸3の下流側の端部が回転可能に挿入されるものである。
【0051】
軸受62の下流側の端部には水等を供給する流入部63が接続され、上流側の端部には水等を排出する流出部7が接続されている。
なお、軸受62としては、水等を潤滑剤として用いる公知の軸受を用いることができ、特に限定するものではない。
【0052】
流入部63は、図1および図3に示すように、回転翼5により下流側に送出された水等の一部を軸受62に導く流路である。
流入部63は、固定ハブ6に設けられた回転軸線Lに沿って延びる流路であって、一方の端部が軸受62に接続され、他方の端部が固定ハブ6の下流側端部に開口される流路である。
【0053】
フィルタ64は、図1および図3に示すように、流入部63を通過する水等に含まれる異物を捕集して除去するものである。フィルタ64は固定ハブ6の内部、例えば、流入部63と軸受62との間に配置されている。
フィルタ64としては、水等に含まれる異物を捕集する公知のフィルタを用いることができ、特に限定するものではない。
【0054】
ここで、流入部63から軸受62に流入する水等の流量は、流入部63における流路断面積、および、フィルタ64における網目の粗さの少なくとも一方に基づいて調節されている。言い換えると、流入部63における圧損、および、フィルタ64における圧損の少なくとも一方に基づいて調節されている。
【0055】
例えば、網目状に形成されたフィルタ64の網目の粗さを変更することにより、フィルタ64における圧損を調整して流量の調整を行うことや、流入部63の流路面積を変更することにより、流入部63における圧損を調整して流量の調整を行うことができる。さらに、フィルタ64における圧損および流入部63における圧損を同時に調整することにより、フィルタ64における異物の捕集性能を確保しつつ、流量の調整を行うこともできる。
【0056】
流出部7は、図1および図3に示すように、軸受62から流出した水等を、シュラウド2の内部の流路に戻す流路である。
流出部7は、回転ハブ4と固定ハブ6との間に形成された流路であって、回転軸3を中心とした略円板状に延びる流路である。言い換えると、流出部7は、回転ハブ4と固定ハブ6との間に形成された隙間である。
そのため、流出部7における水等が流出する開口部は、回転翼5と案内羽根8との間に開口している。言い換えると、回転ハブ4と固定ハブ6との間に開口している。
【0057】
案内羽根8は、図1に示すように、回転翼5により送出された水等の流れに含まれる周方向の流速成分を取り除き整流する部材である。さらに、案内羽根8は、固定ハブ6をシュラウド2に対して固定する固定部材でもある。
案内羽根8は、固定ハブ6とシュラウド2との間に配置されるとともに、周方向に等間隔に配置される翼である。言い換えると、固定ハブ6の回転壁面41から径方向外側へ、つまりシュラウド2側へ延び、シュラウド2に接続される翼である。
【0058】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ1における水等の送出について説明する。
【0059】
ウォータージェットポンプ1における回転軸3が、図1および図2に示すように、船舶S1の原動機(図示せず)により回転駆動されると、回転軸3から回転ハブ4を介して回転翼5が回転駆動される。
【0060】
回転翼5は、回転駆動されることにより上流側のシュラウド2およびダクトS3の内部の水等、さらには、船体S2の外部の水等を吸込み、下流側に送り出す。
回転翼5により送り出された水等は、回転軸線Lに沿って下流方向に向かう流速が増速されるとともに、回転軸線Lを中心とする周方向の流速成分が付加される。
【0061】
回転翼5により下流側に送り出された水等は、案内羽根8が設けられた領域に流入し、案内羽根8の間を下流に向かって流れる。水等は案内羽根8の間を流れる間に、水等の流速に含まれる周方向の流速成分が小さくなる。
【0062】
その一方で、水等は、案内羽根8が設けられた領域を回転軸線Lに向かって流れ、案内羽根8が設けられた領域を通過した水等は、互いに衝突する。その後、水等は、さらに下流側に向かって流れて、ダクトS3における船尾側の開口から船体S2の外部へと噴出される。
【0063】
ここで、本実施形態の特徴である軸受62への水等の供給について説明する。
図4は、図1の固定ハブ周辺の水等の静圧分布を説明する等圧線図である。
固定ハブ6における下流側(図4の左側)の端部の近傍には、図4に示すように、高圧領域HRが形成されている。この高圧領域HRは、上述のように、案内羽根8が設けられた領域を通過した水等が互いに衝突し、水等の流速つまり動圧の一部が静圧に変換されることにより形成されている。
言い換えると、固定壁面61に沿って流れてきた水等は、回転軸線Lの近傍で互いに衝突し、回転軸線Lに沿う方向に流れの向きが転向される。その際に、水等の流れの動圧の一部が静圧となり、高圧領域HRが形成される。
【0064】
高圧領域HRが形成されることにより、流入部63の下流側開口における水等の静圧も高くなり、流出部7のシュラウド2側の端部における水等の静圧よりも高くなる。
この静圧の差により、軸受62の潤滑に用いられる水等は、図3に示すように、流入部63から軸受62に流入し、流入部63を通過する際に、フィルタ64により異物が取り除かれる。異物が取り除かれた水等は、軸受62の潤滑に用いられた後に、軸受62から流出部7に流入し、流出部7から回転翼5と案内羽根8との間に流出する。
【0065】
上記の構成によれば、流入部63は直接固定ハブ6に配置されているため、干渉を回避するため最低限の流路面積が必要になる固定ハブ6と回転ハブ4との間に流入部63を配置する場合と比較して、流入部63の流路面積を自由に設定することができる。
そのため、軸受62の潤滑に最低限必要な流量の水等のみを、軸受62に供給することができることから、本実施形態のウォータージェットポンプ1は、軸受62の潤滑によるポンプの効率低下を抑制することができる。
【0066】
その一方で、フィルタ64は固定ハブ6の内部に配置されているため、干渉を回避する隙間を設ける必要がある固定ハブ6と回転ハブ4との間にフィルタ64を配置する場合と比較して、隙間を設ける必要がないことから、水等に含まれる異物を確実に捕集することができる。そのため、本実施形態のウォータージェットポンプ1は、軸受62およびウォータージェットポンプ1の寿命短縮を防止することができる。
【0067】
流入部63を軸受62における下流側の端部から回転軸線Lに沿って下流方向に延びる流路として形成することで、径方向外側に向かって傾斜する流路として形成する場合と比較して、容易に流路を形成することができる。さらに、流入部63にフィルタ64を容易に配置することができる。
【0068】
回転ハブ4と固定ハブ6との間の隙間を流出部7とすることにより、流出部7を別途設けることなく確保することができる。つまり、回転ハブ4と固定ハブ6との間は、相対移動する両ハブ4,6の干渉を防止されるために、隙間が必ず設けられる。この干渉を防止する隙間と、流出部7とを兼用させることにより、流出部7を別途設けることなく確保することができる。
【0069】
その一方で、流出部7から流出した水等の少なくとも一部は、固定壁面61に沿って下流側に向かって流れて、再び流入部63に流入して循環流れを形成する。例えば、回転翼5の回転数が低下して、送出される水等の流量が低下した場合であっても、当該循環流れによって、案内羽根8の近傍における流量低下が抑制され、ウォータージェットポンプ1の運転が不安定になることを防止できる。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5を参照して説明する。
本実施形態のウォータージェットポンプの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、流出部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図5を用いて流出部近傍の構成のみを説明し、その他の実施形態等の説明を省略する。
図5は、本実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
本実施形態のウォータージェットポンプ101には、図5に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ4と、回転翼5と、固定ハブ106と、案内羽根8と、が設けられている。
【0072】
固定ハブ106は、図5に示すように、回転軸3を回転可能に支持する部材であり、回転ハブ4とは、回転軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置される部材である。
固定ハブ106には、固定壁面61と、軸受62と、流入部63と、フィルタ64と、流出部107と、が設けられている。
【0073】
流出部107は、図5に示すように、軸受62から流出した水等を、シュラウド2の内部の流路に戻す流路である。
流出部107は、軸受62における上流側(図5の右側)の端部から、径方向外側に向かって下流側(図5の左側)に傾斜する流路、言い換えると、軸受62における上流側の端部から、固定壁面61における流れが剥離する領域に向かって延び、固定壁面61に開口する流路である。
【0074】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ101の特徴である軸受62への水等の供給について説明する。
ここで、固定壁面61における流出部107の開口が形成されている領域は、上述のように、固定壁面61における流れが剥離する領域であるため、当該開口の近傍領域は、他の領域よりも全圧が低い低エネルギ領域となっている。
【0075】
そのため、軸受62の潤滑に用いられる水等は、第1の実施形態よりも、流入部63の下流側開口から、軸受62を介して流出部7の開口に向かって流れやすくなる。
【0076】
上記の構成によれば、固定壁面61における水等の流れが剥離する領域に、流出部107を開口させることにより、静圧が局所的に低い部分に流出部107の開口が設けられる。そのため、第1の実施形態のように、その他の部分に流出部107の開口を設ける場合と比較して、流入部63における水等の流入側の開口における水等の静圧と、流出部107の水等の流出側の開口における水等の静圧との圧力差が大きくなり、軸受62を通過する水等の流量を増やすことができる。
【0077】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図6および図7を参照して説明する。
本実施形態のウォータージェットポンプの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、流入部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図6および図7を用いて流入部近傍の構成のみを説明し、その他の実施形態等の説明を省略する。
図6は、本実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本実施形態のウォータージェットポンプ201には、図6に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ4と、回転翼5と、固定ハブ206と、流出部7と、案内羽根8と、が設けられている。
【0079】
固定ハブ206は、図6に示すように、回転軸3を回転可能に支持する部材であり、回転ハブ4とは、回転軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置される部材である。
固定ハブ206には、固定壁面61と、軸受62と、流入部263と、フィルタ64と、が設けられている。
【0080】
図7は、図6の流入部の構成を説明する模式図である。
流入部263は、図6および図7に示すように、回転翼5により下流側に送出された水等の一部を軸受62に導く複数の流路である。
流入部263は、軸受62における下流側の端部から、下流方向に向かって径方向外側に傾斜する複数の流路であり、一部の流入部263を閉塞することにより、流入部263における圧損が調節されている。
【0081】
流入部263を下流方向に向かって径方向外側に傾斜する流路とすることで、流入部263は、高圧領域HR(図4参照。)における最も静圧が高い部分に向かって延び、当該最も静圧が高い部分に開口している。
【0082】
図7では、固定ハブ206および流入部263を下流側から見た状態が記載されており、閉塞された流入部263を黒色で塗りつぶして記載している。
本実施形態では、流入部263の半数が閉塞された例に適用して説明するが、閉塞する流入部263の数は、流入部263から軸受62に流入する水等の流量に応じて変化するものであって、特に限定するものではない。
【0083】
このようにすることで、流入部263を下流方向に向かって径方向外側に傾斜する流路とすることで、複数の流路を容易に形成することができる。さらに、当該流路の数を調節することにより、流入部263における圧損を調節し、流入部263を通過する水等の流量を調節することができる。
【0084】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ201の特徴である軸受62への水等の供給について説明する。
ここで、固定ハブ206における流入部263の開口が形成されている領域は、高圧領域HRにおける最も静圧が高い部分であるため、第1の実施形態と比較して、流入部263の開口と、流出部7の開口との間の差圧が大きくなる。
【0085】
そのため、軸受62の潤滑に用いられる水等は、第1の実施形態よりも、流入部263の下流側開口から、軸受62を介して流出部7の開口に向かって流れやすくなる。
【0086】
上記の構成によれば、流入部263は高圧領域HRにおける最も静圧が高い部分に開口するため、その他の部分に流入部263の開口を設ける場合と比較して、流入部263の水等の流入側の開口における水等の静圧と、流出部7の水等の流出側の開口における水等の静圧との圧力差が大きくなり、軸受62を通過する水等の流量を増やすことができる。
【0087】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図8から図10を参照して説明する。
本実施形態のウォータージェットポンプの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、流出部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8から図10を用いて流出部近傍の構成のみを説明し、その他の実施形態等の説明を省略する。
図8は、本実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0088】
本実施形態のウォータージェットポンプ301には、図9に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ4と、回転翼5と、固定ハブ306Aと、流出部7と、案内羽根8と、が設けられている。
【0089】
固定ハブ306Aは、図9に示すように、回転軸3を回転可能に支持する部材であり、回転ハブ4とは、回転軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置される部材である。
固定ハブ306Aには、固定壁面61と、軸受62と、流入部63と、フィルタ64と、固定インペラ部365Aと、が設けられている。
【0090】
固定インペラ部365Aは、図9に示すように、固定ハブ306Aにおける回転ハブ4と対向する面に配置され、軸受62から流出部7に向かって流れる水等、言い換えると、流出部7に向かって流れる水等に径方向の流速成分を付与するものである。
【0091】
図9は、図8の固定インペラ部の構成を説明する概略図である。
固定インペラ部365Aには、図8および図9に示すように、径方向外側に向かって、周方向に湾曲した複数の羽根366Aが、周方向に等間隔に設けられている。
ここで、図9における矢印は、回転翼5の回転方向である。
【0092】
なお、本実施形態では、6つの羽根366Aが周方向に等間隔に設けられ、かつ、羽根366Aが回転翼5の回転方向と反対方向へ湾曲する例に適用して説明する。
【0093】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ301の特徴である軸受62への水等の供給について説明する。
なお、水等が流入部63から軸受62に流入し、軸受62における潤滑に用いられるまでは、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0094】
軸受62から流出した水等は、図8に示すように、回転ハブ4と固定ハブ306Aとの間の隙間に流入し、径方向外側に向かって流れる。このとき、図9に示すように、水等は、固定インペラ部365Aの羽根366Aにより、回転翼5の回転方向と反対方向の流速成分が与えられる。
その後、水等は流出部7からシュラウド2の内側に形成された流路に流出する。
【0095】
図10は、図8における案内羽根が設けられた領域における水等の流速分布を説明するグラフである。
図10において、太線で示されたグラフA1は水等の回転軸線Lに沿う方向の流速成分であり、細線で示されたグラフA2は、流出部7から流出した水等が合流しない場合の周方向の流速成分であり、破線で示されたグラフA3は、流出部7から流出した水等が合流した場合の周方向の流速成分である。
【0096】
水等の回転軸線Lに沿う方向の流速成分は、グラフA1に示すように、シュラウド2および固定ハブ306A側の端部近傍で当該流速成分が遅く、シュラウド2および固定ハブ306Aから離れるにしたがって当該流速成分が速くなる。シュラウド2および固定ハブ306Aから所定距離だけ離れると当該流速成分は略一定となる。
【0097】
その一方で、流出部7から流出した水等が合流しない場合、水等の周方向の流速成分は、グラフA2に示すように、固定ハブ306A側の端部近傍で当該流速成分が遅く、固定ハブ306Aから離れるにしたがって当該流速成分が速くなる。
固定ハブ306Aから所定距離だけ離れると当該流速成分は、固定ハブ306Aから離れるにしたがって徐々に遅くなる。これは、回転翼5によって水等に与えられた当該流速成分の影響である。
【0098】
上述の状況の下に、流出部7から流出した水等が合流した場合、水等の周方向の流速成分は、グラフA3に示すように、シュラウド2および固定ハブ306A側の端部近傍で当該流速成分が遅く、シュラウド2および固定ハブ306Aから離れるにしたがって当該流速成分が速くなる。シュラウド2および固定ハブ306Aから所定距離だけ離れると当該流速成分は略一定となる。
【0099】
つまり、本実施形態のように、案内羽根8の固定ハブ306A近傍における水等の周方向の流速成分が、他の部分における周方向の流速成分よりも速い場合には、流出部7から流出する水等に、固定ハブ306A近傍における周方向の流速成分を減速させる周方向の流速成分を加えることにより、案内羽根8に流入する水等における径方向の流速分布を均一化することができる。
【0100】
上記の構成によれば、流出部7から流出する水等に周方向の流速成分が付加されるため、案内羽根8に流入する水等における径方向の流速分布を均一化することができる。そのため、案内羽根8に対する水等の流入角度が、シュラウド2側から固定ハブ306A側に至るまで略一定となることから、案内羽根8の設計を容易にすることができる。
【0101】
図11は、図8における案内羽根が設けられた領域における水等の他の流速分布を説明するグラフである。図12は、図8の固定インペラ部の他の構成を説明する概略図である。
なお、上述のように、案内羽根8の固定ハブ306A近傍における水等の周方向の流速成分が、他の部分における周方向の流速成分よりも速い場合には、固定インペラ部365Aの羽根366Aにより、回転翼5の回転方向と反対方向の流速成分が与えてもよいし、図11のグラフA4に示すように、案内羽根8の固定ハブ306A近傍における水等の周方向の流速成分が、他の部分における周方向の流速成分よりも速い場合には、図12に示すように、固定インペラ部365Aの羽根366Aにより、回転翼5の回転方向と同じ方向の流速成分が与えてもよく、特に限定するものではない。
【0102】
このようにすることで、流出部7から流出する水等に、固定ハブ306A近傍における周方向の流速成分を増速させる周方向の流速成分を加えることができ、案内羽根8に流入する水等における径方向の流速分布を均一化することができる。
【0103】
〔第4の実施形態の変形例〕
次に、本発明の第4の実施形態の変形例について図13および図14を参照して説明する。
本変形例のウォータージェットポンプの基本構成は、第4の実施形態と同様であるが、第4の実施形態とは、流出部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図13および図14を用いて流出部近傍の構成のみを説明し、その他の実施形態等の説明を省略する。
図13は、本変形例に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
なお、第4の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
本実施形態のウォータージェットポンプ301には、図13に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ304Bと、回転翼5と、固定ハブ6と、流出部7と、案内羽根8と、が設けられている。
【0105】
回転ハブ304Bは、図1に示すように、回転翼5を支持する部材であって、回転翼5とともに回転軸3より回転駆動される部材である。
回転ハブ304Bには、回転壁面41と、回転インペラ部365Bと、が設けられている。
【0106】
回転インペラ部365Bは、図13に示すように、固定ハブ306Aにおける回転ハブ304Bと対向する面に配置され、軸受62から流出部7に向かって流れる水等、言い換えると、流出部7に向かって流れる水等に径方向の流速成分を付与するものである。
【0107】
図14は、図13の回転インペラ部の構成を説明する概略図である。
回転インペラ部365Bには、図13および図14に示すように、径方向外側に向かって、周方向に湾曲した複数の羽根366Bが、周方向に等間隔に設けられている。
ここで、図14における矢印は、回転翼5の回転方向である。
【0108】
なお、本実施形態では、6つの羽根366Bが周方向に等間隔に設けられ、かつ、羽根366Bが回転翼5の回転方向と反対方向へ湾曲する例に適用して説明する。
【0109】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ301の特徴である回転インペラ部365Bについて説明する。
なお、水等が流入部63から軸受62に流入し、軸受62における潤滑に用いられるまでは、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
軸受62から流出した水等は、図13に示すように、回転ハブ304Bと固定ハブ6との間の隙間に流入し、径方向外側に向かって流れる。このとき、図14に示すように、水等は、回転インペラ部365Bの羽根366Bにより、回転翼5の回転方向と反対方向の流速成分が与えられる。
その後、水等は流出部7からシュラウド2の内側に形成された流路に流出する。
【0111】
上記の構成によれば、固定された固定インペラ部365Aを用いて流出部7から流出する水等に周方向の流速成分を付与する方法と比較して、回転駆動される回転インペラ部365Bを用いることから、流出部7から流出する水等に対して、より大きな周方向の流速成分を付与することができる。
【0112】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図15および図16を参照して説明する。
本実施形態のウォータージェットポンプの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、固定ハブの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図15および図16を用いて固定ハブ近傍の構成のみを説明し、その他の実施形態等の説明を省略する。
図15は、本実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0113】
本実施形態のウォータージェットポンプ401には、図15に示すように、シュラウド2と、回転軸3と、回転ハブ4と、回転翼5と、固定ハブ406と、流出部7と、案内羽根8と、が設けられている。
【0114】
固定ハブ406は、図9に示すように、回転軸3を回転可能に支持する部材であり、回転ハブ4とは、回転軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置される部材である。
固定ハブ406には、固定壁面61と、軸受62と、流入部63と、フィルタ64と、整流フィン467と、が設けられている。
【0115】
図16は、図15の整流フィンの構成を説明する概略図である。
整流フィン467は、図15および図16に示すように、固定ハブ406から下流に向かって流れる水等の流れに残る周方向の流速成分を除去するものである。
整流フィン467は、固定ハブ406における下流側端部の円錐状に形成されたコーン61Aから径方向外側に向かって延びるとともに、回転軸線Lに沿って延びる略平板状のリブである。
【0116】
本実施形態では、4つの整流フィン467が周方向に等間隔に配置された例に適用して説明するが、整流フィン467の数は、4つよりも多くても少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0117】
コーン61Aは、固定ハブ406に対して着脱可能に構成された部材である。コーン61Aには、上述の流入部63およびフィルタ64が設けられている。
【0118】
次に、上記の構成からなるウォータージェットポンプ401の特徴である整流フィン467について説明する。
なお、水等による軸受62の潤滑については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0119】
図15に示すように、回転翼5の回転駆動により下流側に送出された水等には、周方向の流速成分が含まれている。水等に含まれている周方向の流速成分の一部は、回転翼5の下流側に配置された案内羽根8を通過する際に取り除かれる。
【0120】
案内羽根8を通過した水等は、その後、整流フィン467の近傍を通過する。整流フィン467の近傍を通過する際に、水等に残されている周方向の流速成分が取り除かれる。これにより、ウォータージェットポンプ401から送出される水等に含まれる周方向の流速成分は、第1の実施形態などと比較して、少なくすることができる。
【0121】
上記の構成によれば、整流フィン467の近傍を流れる際に、水等に含まれる周方向の流速成分が減少する結果、ウォータージェットポンプ401から流出する水等に含まれる周方向の流速成分が少なくなるため、ウォータージェットポンプ401の効率低下を防止することができる。
【0122】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図2】図1のウォータージェットポンプが設けられる船舶の概略構成を説明する模式図である。
【図3】図1の固定ハブなどの構成を説明する模式図である。
【図4】図1の固定ハブ周辺の水等の静圧分布を説明する等圧線図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図7】図6の流入部の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図9】図8の固定インペラ部の構成を説明する概略図である。
【図10】図8における案内羽根が設けられた領域における水等の流速分布を説明するグラフである。
【図11】図8における案内羽根が設けられた領域における水等の他の流速分布を説明するグラフである。
【図12】図8の固定インペラ部の他の構成を説明する概略図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の変形例に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図14】図13の回転インペラ部の構成を説明する概略図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係るウォータージェットポンプの構成を説明する断面視図である。
【図16】図15の整流フィンの構成を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0124】
1,101,201,301,401 ウォータージェットポンプ(ポンプ)
2 シュラウド
3 回転軸
4,304B 回転ハブ
5 回転翼
6,106,206,306A,406 固定ハブ
7,107 流出部
8 案内羽根
41 回転壁面(回転壁部)
61 固定壁面(固定壁部)
62 軸受
63,263 流入部
64 フィルタ
365A 固定インペラ部
365B 回転インペラ部
467 整流フィン
S1 船舶
S2 船体
S3 ダクト
L 回転軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れる流路を形成するシュラウドと、
該シュラウドの内部に配置され、回転軸線まわりに回転可能に支持される回転軸と、
該回転軸から前記回転軸線を中心とする径方向外側に向かって延びるとともに、前記流路を流れる流体の下流方向に向かって傾斜する回転壁部を有する回転ハブと、
前記回転壁部から前記径方向外側に向かって延びる回転翼と、
前記シュラウドに固定されるとともに、表面に沿って流れる前記流体の流れ方向を転向させて静圧を高める高圧領域を形成する固定壁部を有する固定ハブと、
該固定ハブに配置され、前記回転軸の端部を回転可能に支持する軸受と、
前記固定ハブに配置され、前記高圧領域と前記軸受における前記下流側の端部との間を繋ぐ流入部と、
前記高圧領域よりも静圧が低い領域と前記軸受における前記流体の流れにおける上流側の端部との間を繋ぐ流出部と、
前記流入部を流れる前記流体に含まれる異物を捕集するフィルタと、
が設けられていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記固定壁部は、前記下流方向に向かって前記回転軸線に接近する壁面であって、前記固定壁部に沿って流れる前記流体同士を前記回転軸線の近傍で衝突させる壁面であることを特徴とする請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
前記フィルタおよび前記流入部の少なくとも一方は、前記流入部を流れる前記流体の流量を調節することを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記回転軸線に沿って前記下流方向に延びる流路であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポンプ。
【請求項5】
前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記高圧領域における最も静圧が高い部分に向かって延びる流路であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポンプ。
【請求項6】
前記流入部は、前記軸受における前記下流側の端部から、前記下流方向に向かって前記径方向外側に傾斜する複数の流路であることを特徴とする請求項5記載のポンプ。
【請求項7】
前記流出部は、前記回転ハブと前記固定ハブとの間に形成された隙間であり、
前記固定ハブから径方向外側に向かって延びる案内羽根が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポンプ。
【請求項8】
前記回転ハブには、前記流出部の壁面を構成するとともに、前記流出部を流れる前記流体に前記回転軸線を中心とする周方向の流速成分を加える回転インペラ部が設けられていることを特徴とする請求項7記載のポンプ。
【請求項9】
前記固定ハブには、前記流出部の壁面を構成するとともに、前記流出部を流れる前記流体に前記回転軸線を中心とする周方向の流速成分を加える固定インペラ部が設けられていることを特徴とする請求項7記載のポンプ。
【請求項10】
前記流出部は、前記軸受における前記上流側の端部から、前記固定壁面における前記流れが剥離する領域に向かって延びる流路であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポンプ。
【請求項11】
前記流出部は、前記軸受における前記上流側の端部から、前記径方向外側に向かって前記下流側に傾斜する流路であることを特徴とする請求項10記載のポンプ。
【請求項12】
前記固定ハブから前記径方向外側に向かって延びるとともに、前記回転軸線に沿って延びる整流フィンが設けられていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のポンプ。
【請求項13】
船体の外部から水を導入するとともに、前記船体の後部に導くダクトと、
該ダクトの内部の水を前記船体の後部に向かって送出する請求項1から請求項12に記載のポンプと、
が設けられていることを特徴とする船舶。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−25025(P2010−25025A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188887(P2008−188887)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】