説明

ポンプ槽

【課題】水中ポンプ2によって貯留水を排出するときに、槽内を効率良く攪拌して槽内壁面への油脂類の付着や汚泥の堆積、スカムの残留を抑制する。
【解決手段】ポンプ槽1の水中ポンプ2に、該水中ポンプ2の運転開始時に一定時間、該ポンプ吐出流の一部又は全部を槽内に吐出させて該槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置3を付設するとともに、槽底部に、水位が低下するに従って貯留水が旋回しつつ流入する旋回凹部16を有する予旋回槽4を設け、該旋回凹部16に水中ポンプ2の吸入口20aを配置し、槽内攪拌装置3が、予旋回槽4による旋回流が発生する部位よりも高い位置においてポンプ吐出流の一部又は全部を槽内に吐出するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ槽に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ槽底部に予旋回槽を設けたものは一般に知られている。例えば、特許文献1には、水位が低下するに従って貯留水が槽周方向を旋回しつつ流入する旋回凹部と、該旋回凹部よりも高くなった貯水域とを仕切る仕切り壁を設け、この仕切り壁の頂部に水中ポンプを支持することが記載されている。また、水中ポンプに、該水中ポンプの運転開始時に一定時間、該水中ポンプの吐出流の一部又は全部を槽内に吐出させて該槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置を付設することも知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−52396号公報
【特許文献2】特開平11−30198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポンプ槽底部に上記予旋回槽を設けると、槽底部の洗浄が図れる。しかし、ポンプ槽の水位が高くなったときに水中ポンプの運転を始めても、水位が旋回凹部付近に下がるまでは槽内に旋回流は殆ど発生せず、その間は予旋回によるポンプ槽の洗浄効果は得られない。このため、水中ポンプ起動水位付近で槽内面にスカムや油脂類が付着し、臭気発生や定期清掃の負担が大きくなる問題がある。
【0004】
一方、水中ポンプに上記槽内攪拌装置を取り付けると、水中ポンプの運転開始時に一定時間、槽内の撹拌を行なうことができるものの、水中ポンプ自体が槽底部付近に設置されているから、水中ポンプ起動水位付近で槽内面に付着している油脂類の剥離効果、或いは浮遊スカム等の粉砕効果が充分に得られない。
【0005】
そこで、本発明は、水中ポンプによって貯留水を排出するときに、槽内を効率良く攪拌して槽内壁面への油脂類の付着や汚泥の堆積、スカムの残留を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために、上記予旋回槽と槽内攪拌装置とを組み合わせ、且つ予旋回槽には槽底部の攪拌を担わせ、槽内攪拌装置には水中ポンプの高さ付近より上方の貯留水の攪拌を担わせ、この役割分担によって、槽内を効果的に洗浄できるようにした。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、槽内に水中ポンプを備えたポンプ槽であって、
上記水中ポンプに付設され、該水中ポンプの運転開始時に一定時間、該水中ポンプの吐出流の一部又は全部を槽内に吐出させて該槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置を備え、
槽底部に、水位が低下するに従って貯留水が旋回しつつ流入する旋回凹部を有する予旋回槽が形成され、該旋回凹部に上記水中ポンプの吸入口が配置され、
上記槽内攪拌装置が、上記予旋回槽による旋回流が発生する部位よりも高い位置において上記水中ポンプの吐出流の一部又は全部を槽内に吐出するように設けられていることを特徴とする。
【0008】
従って、ポンプ槽の水位が所定高さになったときに水中ポンプを起動すると、この起動と同時に槽内攪拌装置からの噴流水によって貯留水上部が攪拌される。これにより、浮遊スカムを破壊し、また、スカムや油脂類を槽内面から剥離し、当該起動水位付近で油脂等が槽内面に付着することを抑制することができる。水中ポンプの運転開始から一定時間を経過した後(槽内攪拌装置からの水の噴出が停止した後)、引き続く水中ポンプの運転によって水位が槽底部付近まで下がると、貯留水が旋回しつつ旋回凹部に流入していくことによって槽底部が攪拌され、汚泥の堆積やスカムの残留が抑えられる。
【0009】
このように槽内攪拌装置は水中ポンプの高さ付近より上方の貯留水を攪拌する役割を担うことで足りるから、つまり、槽内全体を攪拌する必要はないから、水中ポンプ起動時に槽内攪拌装置が水を噴出する時間を短くすることができる。そのことは水中ポンプの運転効率が高くなること、即ち槽内を短時間で排水できることを意味し、槽内の洗浄を犠牲にすることなく省エネルギーを図る上で有利になる。
【0010】
また、予旋回槽はポンプ槽の残留水を少なくする効果があるため、槽内の汚れ防止に有利であり、この予旋回槽と槽内攪拌装置とを役割分担させて組み合わせたことにより、各々単独採用の場合に比べて高い槽内洗浄効果を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記槽内攪拌装置の吐出流の吐出方向が斜め上向きに設定されていることを特徴とする。
【0012】
従って、例えば、ポンプ槽が深く、ポンプ運転開始レベルが水中ポンプよりかなり高い位置にあるような場合でも、槽内攪拌装置によって貯留水上部を効果的に攪拌することができ、この槽内攪拌装置と予旋回槽とに槽内洗浄の役割分担をさせ易くなる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、槽底部に予旋回槽を設ける一方、この予旋回槽による旋回流が発生する部位よりも高い位置において槽内を攪拌するように槽内攪拌装置を設けたから、ポンプ槽内面にスカムや油脂類が付着すること及びポンプ槽底部に汚泥が堆積することを効果的に防ぐことができ、しかも省エネルギーに有利なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1において、1は下水中継ポンプ槽、2は水中ポンプ、3は該水中ポンプ2に付設された槽内攪拌装置、4はポンプ槽底部に設けられた予旋回槽である。流入口5よりポンプ槽1内に流入した下水は、その水位が高くなると、水中ポンプ2の作動により、所定のレベルに水位が低下するまで排出管6から排出される。この水中ポンプ2の作動のために、ポンプ槽1内に水位検出器(圧力センサ)7が設けられ、さらにポンプ制御装置8が設けられている。すなわち、水位検出器7によって水位が起動W0(ポンプ運転開始レベル)以上になったことが検出されると、制御装置8が水中ポンプ2を起動し、水位が所定の低レベルW1に低下したことが検出されると、その時点から所定時間t後に制御装置8が水中ポンプ2を停止させる。低レベルW1及び時間tは、水位が後述の旋回凹部16の底部近傍レベルW2まで下がったときに水中ポンプ2が停止するように定められる。
【0016】
水中ポンプ2は、ポンプ槽1のマンホール11よりガイドパイプ12を伝って槽内底部に降ろされ、着脱装置13により槽内に着脱自在に設置される。水中ポンプ2の昇降のためにマンホール11の蓋14と水中ポンプ3とが昇降用チェーン15によって連結されている。着脱装置13は、水中ポンプ2をポンプ槽1内に固定された排出管6に結合するものであり、この結合により、水中ポンプ2は排出管6を介してポンプ槽1に設置される。
【0017】
予旋回槽4は、水位が低下するに従って貯留水が旋回しつつ流入する旋回凹部16と、該旋回凹部16よりも底面が高くなった貯留部17とを隣接して有する。この旋回凹部16と貯留部17とは、仕切り部18によって区画されているとともに、導水路19によって連通している。すなわち、図2に示すように、仕切り部18は、その基端がポンプ槽1の内壁に繋がっていて、槽底部の中央を通って旋回凹部16周囲を巡るように延び、先端は先細になってポンプ槽1の内壁よりも内側位置で終わっている。そして、この仕切り部18の外周側の壁とポンプ槽の内壁との間が、貯留部17と旋回凹部16とを結ぶようにポンプ槽1の内壁に沿って延びる湾曲した導水路19に形成されている。導水路19は貯留部17から旋回凹部16に向かって下降傾斜している。
【0018】
水中ポンプ2の吸入管20は、予旋回槽4の旋回凹部16に挿入され、その吸入口20aは旋回凹部16の底部付近において下向きに開口している。
【0019】
槽内攪拌装置3は、図3に示すように水中ポンプ2の側壁に接続されていて、図4に示す吐出流導入路21を通して水中ポンプ2の吐出流の一部(又は全部。以下、同じ。)を弁収容部22に導入するようになっている。槽内攪拌装置3のケーシング23は、吐出流導入路21が形成されたケーシング本体24と、その下側に結合されたダイヤフラムカバー25とよりなり、ケーシング本体24の上側に保護カバー26が設けられている。
【0020】
ケーシング本体24とダイヤフラムカバー25とよりなるケーシング内は、下部ダイヤフラム28によって、ボール弁29を収容する上部の弁収容部22と下部の作動流体としてのオイルを収容する下部オイル室32とに区画形成されている。下部ダイヤフラム28はその周縁部がケーシング本体24とダイヤフラムカバー25とに挟持されている。
【0021】
一方、ケーシング本体24の頂部には凹部が形成されていて、該凹部の周縁部と保護カバー26との間に上部ダイヤフラム33の周縁部が挟持されて、該ケーシング本体24の凹部と上部ダイヤフラム33とによって上部オイル室34が形成されている。保護カバー26は上部ダイヤフラム33を保護するものである。
【0022】
下部オイル室32と上部オイル室34とは、ケーシング本体24及びダイヤフラムカバー25に形成されたオイル通路35によって連通し、ダイヤフラムカバー25にオイル通路35のオイル流量を調整する調整弁36が取付けられている。
【0023】
ケーシング本体24の上部には、ポンプ吐出流の一部をポンプ槽1内に噴出させる噴出孔38が、弁収容部22を挟んで吐出流導入路21と対向するように形成されている。噴出孔38の入口には弁座39が形成され、噴出孔38の出口側にはノズル41が取付けられている。ノズル41の噴出口は、予旋回槽4による旋回流が発生する部位よりも高い位置にポンプ吐出流の一部又は全部を噴出するように斜め上向きに、且つその噴出流がポンプ槽1の内壁面に対して平面視で斜めに当たるように設定されている。ダイヤフラムカバー25は、ケーシング23の底壁を構成し、この底壁は下部ダイヤフラム28を底壁に沿わせて収めるべく下方へ突出した凸曲面状に形成されている。
【0024】
上記槽内攪拌装置3の作動を説明するに、ポンプ始動前は、図4に示すように、ボール弁29が弁収納部22の下方にあって噴出孔38は開の状態にある。この状態で水中ポンプ2を始動すると、ポンプケーシングからポンプ吐出流(下水)の一部が導入路21より弁収容部22に流入し、ノズル41からポンプ槽1内へ噴出する。
【0025】
そして、弁収容部22をポンプ吐出流が通過することにより、該弁収容部22に負圧が発生し、この負圧によって、オイルが上部オイル室34から下部オイル室32に移動するとともに、上部ダイヤフラム33が下降し、下部ダイアフラム28が上昇して、ボール弁29が持ち上がり始める。
【0026】
水中ポンプ2の運転開始から一定時間(例えば、20〜50秒)を経過すると、下部ダイアフラム28は上方に突出した状態になり、ボール弁29は下部ダイヤフラム28に押し上げられ弁座39に当接して噴出孔38を閉じる。これにより、ノズル41からの下水の噴出は停止し、ポンプ吐出流の全量が排出管6へ流れるようになる。一方、弁収容部22内は、ボール弁29が弁座39に押し当てられた状態で正圧になり、上部ダイアフラム33、下部ダイヤフラム28及びオイルはポンプ始動前の状態に戻る。ポンプ作動が停止すると、ボール弁29は弁座39から離脱して下部ダイヤフラム28の上に落ちる。
【0027】
従って、上記ポンプ槽システムによれば、ポンプ槽1の水位が起動レベルW0以上になると、そのことが水位検出器7によって検出され、制御装置8により水中ポンプ2の運転が開始される。この運転開始により、ポンプ吐出流の一部が槽内攪拌装置3によりポンプ槽1内に噴出される。これにより、槽内が攪拌され、浮遊スカム51が破壊され、浮遊油脂が攪拌され、ポンプ起動水位付近のポンプ槽1内壁面に付着している油脂類52やスカムが該壁面から剥離する。
【0028】
この実施形態では、槽内攪拌装置3のノズル41から下水が斜め上向きに且つポンプ槽1の内壁面に対して平面視で斜めに当たるように噴出するから、ポンプ槽1が深く、ポンプ運転開始レベルが水中ポンプ2よりかなり高い位置にあるような場合でも、その噴出流によって貯留水上部に旋回流を形成することができる。よって、上記浮遊スカム51の破壊、浮遊油脂類の分散、ポンプ槽内壁面からの油脂類52等の剥離が効率良く進む。
【0029】
上記槽内攪拌装置3からの下水の噴出は、水中ポンプ2の運転開始から一定時間を経過すると終了し、その後はポンプ吐出量の全量が排出管6から外部に排出される。水位が所定の低レベルW1に低下したことが水位検出器7によって検出されると、その時点から所定時間t後に制御装置8が水中ポンプ2を停止させる。すなわち、水位が予旋回槽4の旋回凹部16に挿入された吸入管20の下端よりも少し上のレベルW2に達した時点で水中ポンプ2の作動が停止する。
【0030】
従って、図5に示すように、水位が予旋回槽4の位置まで下がっても、水中ポンプ2は作動している。そして、この予旋回槽4では、貯留水が貯留部17から傾斜導水路19を通って旋回凹部16に流入することによって貯留水の旋回流を生ずる。これにより、槽底部、すなわち、予旋回槽4内が攪拌され、堆積汚泥やスカムが掻き回されて水中ポンプ2の吸入管20に吸い込まれ、排出管6から排出される。よって、槽底部への汚泥の堆積やスカムの残留が抑えられる。しかも、槽内攪拌装置3は水中ポンプ2の高さ付近より上方の貯留水の攪拌を担うだけでよいから、例えば調整弁36によってオイル流通量を多くしたり、あるいはボール弁29を軽くして、該槽内攪拌装置3から槽内への下水の噴出を早めに切り上げ、水中ポンプ2の運転効率(下水の排出効率)を高めることができる。
【0031】
このように本発明では、貯留水上部の攪拌による浮遊スカム51の破壊、浮遊油脂類の分散、ポンプ槽内壁面からの油脂類52等の剥離を槽内攪拌装置3が担い、槽底部の攪拌による汚泥の堆積やスカムの残留の抑制を予旋回槽4が担うから、換言すれば、槽内攪拌装置3を専ら貯留水上部の攪拌に用いるようにしたから、該槽内攪拌装置3と予旋回槽4とを槽内洗浄に関して適切な形で役割分担させることができ、水中ポンプ2の運転効率を高めながら、槽内を効率良く洗浄することができ、臭気発生の抑制や定期清掃の負担軽減に有利になり、しかも、ポンプ運転効率が向上して省エネルギーに有利になる。
【0032】
なお、上記実施形態の予旋回槽4は、旋回凹部16が一つだけ形成されているが、複数の旋回凹部を有するものであってもよい。
【0033】
また、水中ポンプの据付位置(槽内攪拌装置3の位置)に対して、ポンプ運転開始レベルがそれほど高くないような場合では、槽内攪拌装置3のノズル41を若干下向きにしても、同様に貯留水の攪拌は可能である。
【0034】
また、本発明は、下水中継ポンプ槽に限らず、他の液体を貯留するポンプ槽にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る下水中継ポンプ槽システムの水位が高い状態を示す断面図である。
【図2】同システムの予旋回槽の概略構成を示す平面図である。
【図3】同システムの槽内攪拌装置付き水中ポンプ及び排出管を示す平面図である。
【図4】同槽内攪拌装置の縦断面図である。
【図5】同システムの水位が低い状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ポンプ槽
2 水中ポンプ
3 槽内攪拌装置
4 予旋回槽
6 排出管
16 旋回凹部
20 吸入管
20a 吸入口
41 槽内攪拌装置のノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内に水中ポンプを備えたポンプ槽であって、
上記水中ポンプに付設され、該水中ポンプの運転開始時に一定時間、該水中ポンプの吐出流の一部又は全部を槽内に吐出させて該槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置を備え、
槽底部に、水位が低下するに従って貯留水が旋回しつつ流入する旋回凹部を有する予旋回槽が形成され、該旋回凹部に上記水中ポンプの吸入口が配置され、
上記槽内攪拌装置が、上記予旋回槽による旋回流が発生する部位よりも高い位置において上記水中ポンプの吐出流の一部又は全部を槽内に吐出するように設けられていることを特徴とするポンプ槽。
【請求項2】
請求項1において、
上記槽内攪拌装置の吐出流の吐出方向が斜め上向きに設定されていることを特徴とするポンプ槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−255050(P2007−255050A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80585(P2006−80585)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】