説明

ポンプ装置および配管構造

【課題】ポンプ装置内に滞留する空気を簡易に排除することが出来るポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプ装置は、液体流を発生させる動作を行うポンプ動作部20と、ポンプ動作部の上流側に配置され、循環対象とする恒温水Wをポンプ動作部20に取り入れる第1導入口を備えた上流側連結管30と、ポンプ動作部20と前記第1導入口との間に配置され、恒温水Wの供給系統とは異なる系統から供給される空気抜き水W1をポンプ動作部20に取り入れるための第2導入口を備えたサブ連結管50と、ポンプ動作部20の下流側に配置され恒温水Wを送り出す第1導出口を備えた下流側連結管40と、空気抜き用の空気排出管60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体の汲み上げや移送に使用されるポンプ装置、及びこのポンプ装置が適用された配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置は、機械的なエネルギーによって流体の圧力を増大させ、これによって当該流体を低位から汲み上げたり、移送したりする用に供される。例えば、工場やビルディング等で用いられる温熱冷凍サイクル等において恒温水を循環させる配管系統や、空調用の冷媒流体の供給や循環を行う配管系統では、その配管の途中にポンプ装置が組み入れられる。このポンプ装置としては、吸い込み口と吐き出し口とが直線状に配置されたラインポンプ(例えば特許文献1参照)が汎用されている。
【0003】
ポンプ装置は、移送対象の液体(例えば水)に圧力を与えて水流を発生させるポンプ動作部を備えるが、このポンプ動作部(例えばインぺラの吸い込み部など)に何らかの要因で空気が入り込むことがある。特に、設備配置の制限等の要請で、供給元の貯水(湯)タンクよりも高所にポンプ装置を配置する必要がある場合に顕著となる。ポンプ動作部内に空気が存在すると、ポンピング動作が阻害されたり或いはポンプ故障の原因となったりするため、上記のラインポンプでは、吐き出し口の側に空気抜きコックや自動排気弁が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプ装置の内部に滞留した空気を排除するには、当該ポンプ装置が組み入れられた配管内で水流を発生させ、例えば上記の空気抜きコックを開として空気を逃がせば良い。しかし、内部に空気を抱き込んだ状態であると、そのポンプ装置を用いて前記水流を発生させることができない場合がある。
【0006】
そこで、配管を常時水圧が加わった状態としてポンプ装置を押し込み型で使用する、或いは、貯水タンクよりも高所にポンプ装置を配置せねばならない場合にはその高低差を小さくして比較的ポンプ装置に水圧が加わり易いようにする、という対策が考えられる。しかし、これらの対策では、配管の配置や配管長などの配管設計の詳細検討が必要となり、配管経路の設定に制限がある場合は対応が困難となる。また、既存配管設備の場合では、その設備の大幅な改良が必要となる場合があり、妥当な対応策とは言えない。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、ポンプ装置内に滞留する空気を簡易に排除することが出来るポンプ装置、及びこのポンプ装置が適用された配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係るポンプ装置は、液体流を発生させる動作を行うポンプ動作部と、前記ポンプ動作部の上流側に配置され、第1系統から供給される液体を前記ポンプ動作部に取り入れるための第1導入口と、前記ポンプ動作部と前記第1導入口との間に配置され、前記第1系統とは異なる第2系統から供給される液体を前記ポンプ動作部に取り入れるための第2導入口と、前記ポンプ動作部の下流側に配置され、前記ポンプ動作部から液体を吐出させるための第1導出口と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このポンプ装置によれば、第1系統とは異なる第2系統からポンプ動作部内に液体を供給可能な第2導入口が、前記ポンプ動作部と第1導入口との間に備えられている。このため、第2導入口から導入される液体の液体流により、ポンプ動作部内に滞留することがある空気を排除することが可能となる。
【0010】
上記構成において、前記第1導入口の上流側に取り付けられ、前記下流側から前記上流側に向けた液体流の発生を阻止する逆止弁をさらに備えることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、逆止弁の存在により、第2導入口から液体をポンプ装置内へ導入したときに、上流側から下流側に向けた順方向の液体流を確実に発生させることができ、ポンプ動作部内の空気を効率的に抜くことができる。
【0011】
上記構成において、前記ポンプ動作部と前記第1導出口との間に配置され、開閉弁が備えられた第2導出口をさらに備えることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、第2導入口から液体がポンプ装置内へ導入される際に、その液体流によって前記第2導出口を通してポンプ動作部内の空気を逃がすことができる。
【0012】
本発明の他の局面に係る配管構造は、上記のポンプ装置と、前記第1導入口に一端が接続される第1配管と、前記第1導出口に一端が接続される第2配管と、前記第1配管を介して前記ポンプ装置に吸引される液体が貯留される液貯留容器と、前記第2導入口に一端が接続され、前記ポンプ動作部に滞留する空気を排除する液体を供給するための第3配管と、を備えることを特徴とする(請求項4)。
【0013】
この配管構造によれば、第3配管及び第2導入口を介して、ポンプ動作部内にその上流側からポンプ動作部に滞留する空気を排除するための液体を供給することが可能となる。このため、第2導入口から導入される液体の液体流により、ポンプ動作部内に滞留することがある空気を排除することが可能となる。
【0014】
上記構成において、前記ポンプ装置は、前記液貯留容器より高位に配置されていても良い(請求項5)。このような配管構造においては、ポンプ装置内に空気が滞留し易くなるが、本発明では第2導入口が備えられているので、これを利用して滞留空気を容易に排除することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1配管の他端及び前記第2配管の他端が、いずれも前記液貯留容器に連通されていることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、液貯留容器を起点及び終点とする循環配管系統を有する配管構造において、この循環配管系統とは別系統の空気抜き液体流系統を備えた配管構造を構築することができる。
【0016】
上記構成において、前記第2配管の他端に接続され、前記第2配管を通して前記ポンプ動作部に液体を送り込むサブポンプをさらに備えることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、空気抜き液体流をサブポンプにより容易に発生させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプ装置内に滞留する空気を、第2導入口を利用して簡易に排除することが出来る。従って、安定的に運転させることができるポンプ装置、及びこのポンプ装置が適用された配管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置を示す一部切り欠き分解斜視図である。
【図2】図1に示すポンプ装置の一部切り欠き組み立て斜視図である。
【図3】図2に示すポンプ装置のIII−III線断面図である。
【図4】配管構造の一実施形態を示す説明図であり、(A)は、ポンプ装置が定常運転を行っている状態、(B)は、ポンプ装置が始動されるときの状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置10を示す図であり、図1は、一部切り欠き分解斜視図、図2は、図1に示すポンプ装置の一部切り欠き組み立て斜視図、図3は、図2のIII−III線断面図である。なお、図1〜図3において、X方向を左右方向、Y方向を前後方向といい、特に−Xを左方、+Xを右方、−Yを前方、+Yを後方という。
【0020】
本実施形態のポンプ装置10は、吸い込み口と吐き出し口とが直線状に配置されたラインポンプラインであって、恒温水W(液体の一例)を配管内で循環させる水流を発生させる。ポンプ装置10は、遠心力で水を汲み上げるポンプ動作部20と、上流端に第1フランジ31(第1導入口)を有する上流側連結管30と、下流端に第2フランジ41(第1導出口)を有する下流側連結管40と、先端に第3フランジ51(第2導入口)を有するとともに第1開閉バルブ52が介設されたサブ連結管50と、第2開閉バルブ61(開閉弁)が介設された空気排出管60(第2導出口)と、ポンプ動作部20に駆動力を伝達する駆動モータ70とが、それぞれ箱形を呈したケーシング11に装着されることによって構成されている。
【0021】
恒温水Wは、本実施形態においては、工場やオフィス用のビルディング等に空調用として使用される温熱冷凍サイクル用の循環水である。かかる恒温水Wは、通常、所定の空調装置や冷凍装置等で循環的に使用される。
【0022】
ケーシング11は、略直方体状に形成され、平面視で矩形状の底板12と、この底板12の前縁部から立設された前板13と、同後縁部から立設された後板14と、底板12の左右の縁部から立設された左右方向一対の側板15と、これら前板13、後板14および一対の側板15の上縁部に架設された天板16とを備えている。
【0023】
一対の側板15は、左縁部の下部の角部がそれぞれ円弧状に形成されているとともに、底板12には、これらの円弧に沿うように湾曲されて形成された円弧部121が設けられている。円弧部121は、底板12に沿って後方から前方へ向かった水流を淀みなく反転させるものである。
【0024】
円弧部121の右方位置には、下面からの押し起こしにより形成された円錐状の円錐膨出部122が形成されている。円錐膨出部122は、底板12に沿った水流を上方へ向けて案内し、これによってポンプ動作部20の直下位置で恒温水Wに上向流を生じさせるためのものである。
【0025】
前板13の上方位置であって、前後方向の中央部には、ケーシング11内の恒温水Wを下流側連結管40へ導出するための導出口131が設けられている。また、後板14には、前後方向で導出口131と対向する位置に、恒温水Wをケーシング11内へ導入するための導入口141が設けられている。
【0026】
後板14には、導入口141の上方位置から前方に向かって先下がりに傾斜した、上流側連結管30からの恒温水Wを下方へ向かわせるためのガイド板142が設けられている。従って、導入口141からケーシング11内へ導入された恒温水Wは、ガイド板142の裏面側に案内されて斜めに下降しながら前進し、円錐膨出部122へ向かうことになる。
【0027】
天板16の中央部より若干左方寄りの位置には、ポンプ動作部20をケーシング11内へ装着するための、平面視で正方形状を呈する装着開口161が設けられている。装着開口161の四隅の外方の天板16には、駆動モータ70の後述の支持プレート74をネジ止めするためのネジ孔162がそれぞれ螺設されている。
【0028】
ポンプ動作部20は、駆動モータ70の駆動軸73の下端部に同心で固定された状態で、装着開口161を介してケーシング11内に装着され、駆動軸73回りに回転することにより発生される遠心力で、ケーシング11内の恒温水Wを上流側連結管30から下流側連結管40を通して循環させる。
【0029】
ポンプ動作部20は、下面開口からケーシング11内の恒温水Wを汲み上げ、遠心力により上側部の開口から水平方向へ向けて排出する。ポンプ動作部20は、上下方向に延びる軸筒体21と、この軸筒体21の上端部に同心かつ連通状態で連設された内部が空洞の十字回転体22と、前記軸筒体21の下端部から同心で下方に向けて連設された逆漏斗状の円形フード部材23と、前記十字回転体22の上面から同心で上方に向かって突設された中心軸24とを備えている。
【0030】
十字回転体22は、平面視で十字状を呈する上部十字板221と、下部でこの上部十字板221に対向配置された同一形状の下部十字板222と、これら上下の十字板221,222の各側面間に架設された曲折側壁223とを備える。十字回転体22は、内部が空洞とされているとともに、各十字の腕の部分の先端には、水を吹き出すための吹き出開口224が形成されている。
【0031】
上部十字板221には、その上面の中心位置に中心軸24が同心で一体的に接続されている。下部十字板222には、その下面の中心位置に軸筒体21と連通する連通孔222aが同心で穿設されている。下部十字板222は、軸筒体21の上縁部と一体的に接続されている。
【0032】
円形フード部材23は、十字回転体22の下部十字板222に同心かつ十字回転体22と連通状態で一体的に接続されている。円形フード部材23の下端部は、径寸法が前記円錐膨出部122の径寸法より若干大きめに設定されているとともに、同下端部と底板12との間には隙間が形成されている。これによって円錐膨出部122に案内されて形成された恒温水Wの上向流は、円形フード部材23によって確実に捕捉される。
【0033】
中心軸24の上端面には、円盤状の下部カップリング部材241が同心で一体的に設けられている。下部カップリング部材241は、駆動モータ70の駆動軸73に設けられた上部カップリング部材731に一体的に連結され、これによって駆動モータ70の駆動力がポンプ動作部20へ伝達される。
【0034】
上流側連結管30は、ポンプ動作部20の上流側に配置され、恒温水Wの取り入れ口として機能する部分である。上流側連結管30は、導入口141と同心で後板14の外面側から右方へ向けて突設され、後述の逆止弁部材80を介して汲み上げ管92(図4)に接続される。上流側連結管30の右端には、第1フランジ31が設けられ、この第1フランジ31と、汲み上げ管92のフランジとがボルト止めで連結される。
【0035】
下流側連結管40は、ポンプ動作部20の下流側に配置され、恒温水Wの吐き出し口として機能する部分である。下流側連結管40は、導出口131と同心で前板13の外面側から左方へ向けて突設され、後述の戻し管93(図4)が連結される。下流側連結管40の左端には、第2フランジ41が設けられ、この第2フランジ41と、戻し管93のフランジとがボルト止めで連結される。
【0036】
サブ連結管50は、ポンプ動作部20と上流側連結管30との間に配置され、恒温水Wの循環系統(第1系統)とは異なる水供給系統(第2系統)から、空気抜き水W1(図4(B)参照)をケーシング11内へ導入するための連結管である。サブ連結管50は、前方の側板15の右下角部から前方に向けて突設され、後述のサブ配管94(図4)が連結される。サブ連結管50には、第1開閉バルブ52が介設されているとともに、その先端である前端に第3フランジ51が設けられている。この第3フランジ51と、サブ配管94のフランジとがボルト止めで連結される。
【0037】
空気排出管60は、ケーシング11内へ空気抜き水W1が導入されたときに、その水流で当該ケーシング11内に存在する空気A(図4)を排出するために設けられている。空気排出管60は、開放状態とされた上端(第2導出孔)を有し、天板16の後方左角部に立設されている。この空気排出管60には、第2開閉バルブ61が設けられている。
【0038】
ポンプ装置10の始動時には、予め第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61の双方が開放され、サブ連結管50からの空気抜き水W1がケーシング11内へ導入される。このときにケーシング11内の空気は、水嵩の増加により空気排出管60を介して外部へ排出される。ケーシング11内が空気抜き水W1で満杯になった時点で第1および第2開閉バルブ52,61が閉止され、引き続き駆動モータ70が駆動され、ポンプ動作部20による恒温水W(図4)の汲み上げが開始されるものである。
【0039】
駆動モータ70は、ポンプ動作部20を駆動回転させるためのものであり、縦置きでケーシング11の天板16上に据え付けられる。駆動モータ70は、内部に固定子および回転子が設けられたモータ本体71と、このモータ本体71の下端面から同心で下方に向けて延設された支持パイプ72と、この支持パイプ72に貫通されて下端部から外部に突出した駆動軸73と、支持パイプ72に外嵌された状態でその下端部に固定された支持プレート74とを備えている。
【0040】
駆動軸73の下端部には、中心軸24の下部カップリング部材241に対応した円盤状の上部カップリング部材731が同心で一体的に付設されている。この上部カップリング部材731を下部カップリング部材241に同心でネジ止め固定することにより、ポンプ動作部20が同心で駆動モータ70の駆動軸73に取り付けられる。
【0041】
支持プレート74は、駆動モータ70をケーシング11に据え付けるためのものであり、ケーシング11の天板16に設けられた装着開口161より若干大きめの正方形状に設定されている。支持プレート74の4つの角部には、ケーシング11の天板16に螺設されたネジ孔162に対向する貫通孔741が穿設されている。
【0042】
駆動軸73に取り付けられた状態のポンプ動作部20を、装着開口161を介してケーシング11内に挿入し、引き続き支持プレート74で装着開口161を閉止した状態で、各貫通孔741を介してボルトBをネジ孔162に螺着し締結することにより、ポンプ動作部20および駆動モータ70が、図2に示すように、ケーシング11に装着される。
【0043】
上流側連結管30と汲み上げ管92(図4)との間には、逆止弁部材80が介設されている。逆止弁部材80は、汲み上げ管92から上流側連結管30へ向かう恒温水Wの流通を許容するが、上流側連結管30から汲み上げ管92へ向かう逆流を阻止する。同様に、空気抜き水W1がケーシング11内へ導入されたときにおいても前記逆流を防止し、空気抜き水W1の順方向の水流を形成させて、空気排出管60からの空気抜きを確実に実行させる役目を果たす。
【0044】
逆止弁部材80は、外径寸法が上流側連結管30の第1フランジ31の外径寸法と等しく設定された円形枠体81と、この円形枠体81の中心孔811を塞ぐ円形の逆止弁82とを備えている。円形枠体81は、上流側連結管30の第1フランジ31と、汲み上げ管92のフランジとにより挟持された状態でボルト止めされる。
【0045】
逆止弁82は、中心孔811より大径で、かつ、上流側連結管30の内径寸法より小径に設定されている。逆止弁82は、円形枠体81における上流側連結管30側において、その上端部が中心孔811の上縁部に揺動可能に取り付けられている。従って、恒温水貯留槽91(液貯留容器)からの恒温水Wが汲み上げ管92および上流側連結管30を介してポンプ装置10のケーシング11内へ供給されるときには、逆止弁82が水圧によって上流側連結管30側へ揺動する。これにより、恒温水Wは、逆止弁部材80を通過することができる。
【0046】
また、後述のサブポンプ97の駆動でサブ連結管50を介してケーシング11内へ導入された空気抜き水W1が、上流側連結管30を介し汲み上げ管92へ向けて逆流しようとしたときは、逆止弁82が円形枠体81の方向に押圧され、これによって中心孔811が閉止される。従って、空気抜き水W1が汲み上げ管92を通って恒温水貯留槽91に戻されることはない。
【0047】
上記のように構成されたポンプ装置10によれば、当該ポンプ装置10が、図3に示すように、定常運転を行っているときは、第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61が閉止された状態で駆動モータ70の駆動によりポンプ動作部20が駆動軸73回りに回転される。この場合、十字回転体22内の恒温水Wが遠心力で吹き出開口224から外部へ放出されて水流が形成され、恒温水Wは下流側連結管40を通って送り出される。
【0048】
一方、十字回転体22内の恒温水Wが放出されることによって十字回転体22内が負圧になるため、ケーシング11内の恒温水Wが円形フード部材23を介して吸い上げられる。従って、ケーシング11内における円錐膨出部122の上方位置の円形フード部材23内には上昇流が形成され、これによってケーシング11内の恒温水Wは、十字回転体22から連続的に下流側連結管40に向けて送り出されることになる。
【0049】
このとき、逆止弁部材80の逆止弁82は、恒温水Wの水流によって上流側連結管30の方向へ向けて揺動しているため、恒温水Wは、支障なく逆止弁82を通過してケーシング11内へ導入される。
【0050】
これに対し、ポンプ動作部20に空気が滞留していることが想定される場合、具体的にはポンプ装置10の始動に際しては、第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61がそれぞれ開放されるとともに、後述の戻し管93に設けられた第3開閉バルブ931(図4)が閉止される。この状態でサブ連結管50を介して空気抜き水W1がケーシング11内に導入される。この空気抜き水W1の導入によってケーシング11内は空気抜き水W1で満たされた状態になり、内部に滞留している空気は空気排出管60を介して排出される。
【0051】
実際には、第2開閉バルブ61の先端から空気抜き水W1が溢れ出るか否かにより、ケーシング11内が空気抜き水W1で満たされたか否か、つまり空気抜きが完了したか否かが確認できる。空気抜きの完了後、第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61が閉止されるとともに、第3開閉バルブ931が開放され、引き続き駆動モータ70が駆動される。こうすることで、ポンプ動作部20は、ケーシング11内が空気抜き水W1で満たされているため空回りすることはなく、空気抜き水W1を下流側連結管40へ向けて送り出す。これによるポンプ動作部20内の圧力低下で、恒温水Wが汲み上げ管92および逆止弁部材80を介してケーシング11内へ導入されることになる。
【0052】
以下、図4を基に、上記ポンプ装置10を用いた配管構造90の実施形態について説明する。図4(A)は、ポンプ装置10が定常運転を行っている状態、図4(B)は、ポンプ装置10が始動されるときの状態をそれぞれ示している。図4におけるXによる方向表示は、図3の場合と同様(−X:左方、+X:右方)である。なお、図4においては、各管において太い実線矢印で水(図4(A)では恒温水W、図4(B)では空気抜き水W1)が流通している状態を示し、細い実線で水が流通していない状態を示している。
【0053】
配管構造90は、上記のポンプ装置10と、このポンプ装置10が汲み上げて循環させる恒温水Wが貯留された恒温水貯留槽91(液貯留容器)と、この恒温水貯留槽91と上流側連結管30との間に介設された汲み上げ管92(第1配管)と、恒温水貯留槽91と下流側連結管40との間に介設された戻し管93(第2配管)と、恒温水貯留槽91とサブ連結管50との間に介設されたサブ配管94(第3配管)とを備えている。図示の通り、ポンプ装置10は恒温水貯留槽91よりも高所に配置されている。
【0054】
汲み上げ管92には、当該汲み上げ管92内を流れる恒温水Wとの熱交換で所定の被処理流体の温度を恒温水Wの温度にする負荷装置95が介設されている。戻し管93には、負荷装置95での熱交換で温度変化した恒温水Wの温度を元の温度に戻す温度復元装置96が介設されている。また、サブ配管94には、空気抜き水W1をポンプ動作部20に送り込むサブポンプ97が介設されている。さらに、戻し管93には、温度復元装置96の上流側に、第3開閉バルブ931が介設されている。
【0055】
かかる構成の配管構造90によれば、ポンプ装置10が定常運転されるときは、第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61が閉止されているとともに、第3開閉バルブ931が開放されている。この定常運転では、恒温水貯留槽91内の恒温水Wは、図4(A)に太い矢印で示すように、汲み上げ管92を通って汲み上げられ、負荷装置95で被処理流体との間で熱交換を行った後、ポンプ動作部20を介して戻し管93へ導出され、温度復元装置96で元の温度に復元された後に恒温水貯留槽91へ戻され、以後、負荷装置95、ポンプ装置10および温度復元装置96の間を循環することになる。
【0056】
ついで、長期間の休止の後にポンプ装置10を再始動されるような場合には、ポンプ装置10が恒温水貯留槽91よりも高所に配置されていることもあって、恒温水Wがケーシング11内から抜け出てしまっている場合が多い。つまり、ケーシング11内に空気が滞留していることが多い。このような場合、まず第3開閉バルブ931が閉止された後に第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61が開放される。そうすると、図4(B)に太い矢印で示すように、ポンプ装置10のケーシング11内と恒温水貯留槽91内とがサブ配管94を介して連通状態になる。
【0057】
この状態でサブポンプ97を駆動すると、恒温水貯留槽91内の恒温水Wが空気抜き水W1としてサブ配管94内に導出され、ケーシング11内に送り込まれる。このとき、ケーシング11内の空気は、空気排出管60を介して外部に排出されるため、ケーシング11内は速やかに空気抜き水W1によって満たされる。ケーシング11内の空気抜き水W1は、逆止弁部材80の逆止弁82に阻止されて汲み上げ管92へ流れ込むことがないため、空気抜き水W1を必要最小限に留めることが可能になる。
【0058】
ついで、空気排出管60からの空気抜き水W1の噴出によりケーシング11内が空気抜き水W1で満たされたことが確認されると、サブポンプ97が停止される。引き続き、第1開閉バルブ52および第2開閉バルブ61が閉止されるとともに、第3開閉バルブ931が開放され、同時に駆動モータ70が駆動される。この駆動モータ70の駆動によるポンプ動作部20の動作で、恒温水貯留槽91内の恒温水Wが汲み上げ管92を介して汲み上げられ、以後は、先の図4(A)に示すように、ポンプ装置10の定常運転に移行するものである。
【0059】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば以下のような変形実施形態を取ることもできる。
【0060】
(1)上記の実施形態においては、ポンプ装置10が汲み上げ対象としている液体として、工場やオフィス用のビルディング等に空調用として使用される温熱冷凍サイクル用の循環水である恒温水Wである例を示した。これ以外に、本発明は各種のプラントで採用される各種の液体の汲み上げに適用することができる。
【0061】
(2)上記の実施形態においては、空気抜き水W1として恒温水貯留槽91に貯留されている恒温水Wを、サブポンプ97でポンプアップして空気抜き水W1として使用する例を示した。恒温水貯留槽91の恒温水Wを利用せず、別の水源の水(例えば水道水など)を採用してもよい。
【0062】
(3)上記の実施形態においては、上流側連結管30と汲み上げ管92との間に逆止弁部材80が介設されているが、特に逆止弁部材80を設けなくてもよい。但し、逆止弁部材80が設けられていない場合には、空気抜き水W1が汲み上げ管92を介して恒温水貯留槽91にまで逆流するため、空気抜き水W1の使用量が多くなる。
【0063】
(4)空気抜き水W1を導入するためのサブ連結管50を、ポンプ装置10の内部の点検孔として活用したり、水洗用の注水孔として利用したりすることもできる。この場合、第3フランジ51とサブ配管94のフランジとの連結を外し、サブ連結管50の端部開口を露出させれば良い。
【符号の説明】
【0064】
10 ポンプ装置
11 ケーシング
20 ポンプ動作部
30 上流側連結管
31 第1フランジ(第1導入孔)
40 下流側連結管
41 第2フランジ(第1導出孔)
50 サブ連結管
51 第3フランジ(第2導入孔)
52 第1開閉バルブ
60 空気排出管(第2導出孔)
61 第2開閉バルブ(開閉弁)
70 駆動モータ
80 逆止弁部材
90 配管構造
91 恒温水貯留槽(液貯留容器)
92 汲み上げ管(第1配管)
93 戻し管(第2配管)
94 サブ配管(第3配管)
97 サブポンプ
A 空気
W 恒温水(液体)
W1 空気抜き水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流を発生させる動作を行うポンプ動作部と、
前記ポンプ動作部の上流側に配置され、第1系統から供給される液体を前記ポンプ動作部に取り入れるための第1導入口と、
前記ポンプ動作部と前記第1導入口との間に配置され、前記第1系統とは異なる第2系統から供給される液体を前記ポンプ動作部に取り入れるための第2導入口と、
前記ポンプ動作部の下流側に配置され、前記ポンプ動作部から液体を吐出させるための第1導出口と、
を備えることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記第1導入口の上流側に取り付けられ、前記下流側から前記上流側に向けた液体流の発生を阻止する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記ポンプ動作部と前記第1導出口との間に配置され、開閉弁が備えられた第2導出口をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポンプ装置と、
前記第1導入口に一端が接続される第1配管と、
前記第1導出口に一端が接続される第2配管と、
前記第1配管を介して前記ポンプ装置に吸引される液体が貯留される液貯留容器と、
前記第2導入口に一端が接続され、前記ポンプ動作部に滞留する空気を排除する液体を供給するための第3配管と、
を備えることを特徴とする配管構造。
【請求項5】
前記ポンプ装置が、前記液貯留容器より高位に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の配管構造。
【請求項6】
前記第1配管の他端及び前記第2配管の他端が、いずれも前記液貯留容器に連通されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の配管構造。
【請求項7】
前記第2配管の他端に接続され、前記第2配管を通して前記ポンプ動作部に液体を送り込むサブポンプをさらに備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248947(P2010−248947A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97135(P2009−97135)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】