説明

ポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置

【課題】小型化が可能であり、十分な流量を得ることのできる、ポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置を提供する。
【解決手段】流路壁面の少なくとも一部を構成する第1可撓性薄膜に、流路の長手方向に伝播する進行波を発生させて流路内の流体を搬送するポンプ装置であって、第1可撓性薄膜の所定部位を面外方向に加振することにより進行波を生起させる加振手段を備える。また、第1可撓性薄膜が非圧縮性流体を封入したチャンバーの一部を構成し、第2可撓性薄膜がチャンバーの他の一部を構成し、第2可撓性薄膜に作用する加振機構によって第2可撓性薄膜に進行波を生起させ、第2可撓性薄膜に生起された進行波に伴う非圧縮性流体の変位によって、第1の可撓性薄膜に進行波を生起させ、第2可撓性薄膜に生起された進行波よりも、第1可撓性薄膜に生起させた進行波の方が面外変位が実質的に大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流路の壁面の少なくとも一部を構成する可撓性部材に進行波を発生させ、流路内の液体との界面に生じるぜん動運動によって送液する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。この方法を用いたポンプ装置は、チャックバルブなどの複雑な機構が不要であるため、小型化に適している。小型のポンプ装置が実現できれば、これを内視鏡先端部に配置して、内視鏡先端部から後方に向かって延在する閉ループの流路に冷媒を循環させる、シンプルで信頼性の高い冷却機構が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−286958号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「日本AEM学会誌」Vol.13,No.4(2005),P.310〜315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポンプ装置を内視鏡装置の先端部に組み込むには断面積は数mm程度以下まで小型化することが望まれるが、上記の従来のポンプ装置ではそのレベルまでの小型化は困難であった。
【0006】
特許文献1記載のポンプ装置の問題点は、進行波を発生させるために複数のアクチュエータを必要としていることである。これはポンプ装置自体の小型化とコスト低減の妨げになると共に、多数の駆動用配線を必要とする。特に内視鏡のシャフト部に多数の配線を通すことはスペースの制約から困難である。
【0007】
非特許文献1記載のポンプ装置では、十分な流量を得るためには振幅の大きな進行波を生起することが必要であるが、単純に大変位の加振機構を組み付けることはポンプ装置の大型化につながってしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化が可能であり、十分な流量を得ることのできる、ポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るポンプ装置は、流路壁面の少なくとも一部を構成する第1可撓性薄膜に、流路の長手方向に伝播する進行波を発生させて流路内の流体を搬送するポンプ装置であって、第1可撓性薄膜の所定部位を面外方向に加振することにより進行波を生起させる加振手段を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の第2の態様に係るポンプ装置は、流路壁面の少なくとも一部を構成する第1可撓性薄膜に、流路の長手方向に伝播する進行波を発生させて流路内の流体を搬送するポンプ装置であって、第1可撓性薄膜が非圧縮性流体を封入したチャンバーの一部を構成し、第2可撓性薄膜がチャンバーの他の一部を構成し、第2可撓性薄膜に作用する加振機構によって第2可撓性薄膜に進行波を生起させ、第2可撓性薄膜に生起された進行波に伴う非圧縮性流体の変位によって、第1の可撓性薄膜に進行波を生起させ、第2可撓性薄膜に生起された進行波よりも、第1可撓性薄膜に生起させた進行波の方が面外変位が実質的に大きいことを特徴としている。
【0011】
本発明の第2の態様に係るポンプ装置において、第2可撓性薄膜に作用する加振機構は、第2可撓性薄膜の所定部位を面外方向に加振することで進行波を生起させることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様に係るポンプ装置において、チャンバーは、開口を有する板状部材の両主面に、第1可撓性薄膜と第2可撓性薄膜を互いに対向して形成した構成であることが好ましい。
【0013】
さらに、第1可撓性薄膜に、板状部材の開口よりも小さな開口を有する板状もしくは薄膜状部材が積層されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る内視鏡装置は、冷却機構を備えた内視鏡装置において、電子機器が配置された先端部から、内視鏡の長手方向に延在する循環流路の一部に上述のポンプ装置が配置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置は、小型化が可能であり、十分な流量を得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るマイクロポンプを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るマイクロポンプの構成を示す分解斜視図である。
【図3】マイクロポンプが動作しているときの状態を模式的に示す、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】マイクロポンプの内部構造を示す、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】第1実施形態のマイクロポンプを内視鏡装置に適用したときの概略構成を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る水冷ユニットの構成を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態に係るマイクロポンプの構成を示す、上下方向に沿った断面図である。
【図8】第2実施形態に係るマイクロポンプの構成を示す、第2PDMS膜側から見た斜視図である。
【図9】第3実施形態に係るマイクロポンプの構成を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係るマイクロポンプを一部分解して示す斜視図である。
【図11】図10をさらに分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るポンプ装置及びそれを用いた内視鏡装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るポンプ装置は、まず、可撓性薄膜の端部に面外変位を加えることで進行波を発生させている。これによって、単一のアクチュエータでポンプを動作させることができる。
さらに、本発明に係るポンプ装置は、加振機構と流路の間に非圧縮性流体を封入したチャンバーによる面外変位増大機構を備えている。これによって、小変位の加振機構でも十分な送液流量が得られる。
【0019】
(第1実施形態)
(マイクロポンプの構造)
第1実施形態に係るポンプ装置としてのマイクロポンプの構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るマイクロポンプ100を組み立てた状態を示す斜視図である。図2は、マイクロポンプ100の構成を示す分解斜視図である。図3は、マイクロポンプ100が動作しているときの状態を模式的に示す、図1のIII−III線に沿った断面図である。図4は、マイクロポンプ100の内部構造を示す、図1のIV−IV線に沿った断面図である。ここで、図3は、マイクロポンプ100の流路111を含む長手方向に沿った断面図である。
【0020】
図2〜図4に示すように、マイクロポンプ100は、高さ方向上側から順に、流路111が形成されたPDMS流体チャネル110、流路111に対応した位置に開口部121を備えるチタンカバー120、第1可撓性薄膜としての第1PDMS膜130、チタンカバー120の開口部121に対応する位置にチャンバー141が形成されたシリコン基板140、第2可撓性薄膜としての第2PDMS膜150、及び、アクチュエータ160を積み重ねた構成である。PDMS流体チャネル110、チタンカバー120、第1PDMS膜130、シリコン基板140、第2PDMS膜150は、流路111が延びる方向を長手方向(図2のL方向)とする略同一の矩形の平面形状を備え、例えば接着により固定する。ここで、PDMSは、ポリジメチルシロキサンである。
【0021】
図4に示すように、流路111は、チタンカバー120を厚み方向に貫通する開口部121の内壁、及び第1PDMS膜130で下部を構成している。したがって、流路111は、PDMS流体チャネル110の内壁、開口部121の内壁、及び、第1PDMS膜130によって形成される。この流路111には、搬送される流体F1が収容される。
【0022】
図4に示すように、チャンバー141は、シリコン基板140を厚み方向に貫通しており、上面を第1PDMS膜130で、下面を第2PDMS膜150で、それぞれ覆われた構成となっている。したがって、チャンバー141は、第1PDMS膜130、シリコン基板140の内壁、及び、第2PDMS膜150によって形成される。このチャンバー141には、非圧縮性流体F2が充填される。
【0023】
図2、図3に示すように、第2PDMS膜150の下面には屈曲型の圧電式のアクチュエータ160によって変位する接圧部材161が接触配置されている。接圧部材161は、長板状のアクチュエータ160の端部上面に固定されるとともに、チャンバー141の長手方向の一方の端部側であって流路111に対応する位置に配置されている。マイクロポンプ100においては、アクチュエータ160と接圧部材161が加振機構を構成する。また、チタンカバー120、第1PDMS膜130、シリコン基板140、第2PDMS膜150、及び、チャンバー141内の非圧縮性流体F2が加振手段を構成する。
【0024】
接圧部材161は、アクチュエータ160に通電して振動させることで、第2PDMS膜150の端部を面外方向に加振する(図3の振動V)。この加振によって、第2PDMS膜150において、流路111が延びる方向への進行波が生起される。チャンバー141内には非圧縮性流体F2が満たされているため、第2PDMS膜150に生起した進行波によって第1PDMS膜130にも対応する進行波が生起される。したがって、チャンバー141内の非圧縮性流体F2は図3のW方向に、流路111内の流体F1は図3のT方向に、それぞれ送液される。
【0025】
ここで、面外方向とは、加振される前の平面状の第2PDMS膜150の面内方向(図3、図4の左右方向)以外の方向であり、別言するとチタンカバー120の上下面の面内方向以外の方向である。この面外方向は、少なくとも、加振される前の第2PDMS膜150の面に垂直な方向、言い換えるとマイクロポンプ100の高さ方向(図1〜4の上下方向)を含む。
【0026】
また、チタンカバー120に形成された開口部121、及び、シリコン基板140に形成されたチャンバー141は、ともに流路111の方向に長い矩形の貫通開口である。チタンカバー120の開口部121は、シリコン基板140のチャンバー141よりも幅が狭くなっている。チタンカバー120の剛性が第1PDMS膜130の剛性よりも高いため、第1PDMS膜130の変位は、チタンカバー120に固定された部分では抑えられ、チタンカバー120の開口部121に対応する範囲で起きる。すなわち、変位の範囲の観点では、実質的に、上側の第1PDMS膜130で変位が起きる範囲は下側の第2PDMS膜150において変位が起きる範囲よりも小さくなる。
【0027】
このように、上側の第1PDMS膜130は、下側の第2PDMS膜150と比較して、チタンカバー120によって変位可能な範囲が実質的に小さく形成されている。このため、上側の第1PDMS膜130の面外方向の変位は、開口部121に対応する範囲に限定され、変位量は下側の第2PDMS膜150よりも大きくなる。すなわち、チャンバー141よりも開口部121を小さくすることによって、第1PDMS膜130における面外方向の変位増大効果が得られる。したがって、単一の加振用アクチュエータで送液が行えると共に、小さな加振用アクチュエータの変位で大きな送液流量が得られる。
【0028】
ここで、製法としては、図2において、アクチュエータ160とPDMS流体チャネル110以外の部材はシリコンウェハーを用いたMEMSプロセスでバッチ処理によって製作できるので低コスト化が可能である。
なお、上述のようにチタンカバー120を設ける構成に代えて、上側の第1PDMS膜130に相当するPDMS膜において、チタンカバー120の開口部121に同様の面積の領域のみを局部的に薄くすることによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、PDMS膜において薄くした部分がそれ以外の部分よりも変位しやすくなるため、第2PDMS膜150に生起して非圧縮性流体F2を介して伝えられた進行波の変位が増大する。
【0029】
(内視鏡の冷却機構への適用例)
図1〜4に示したマイクロポンプ100を内視鏡装置に適用した例について説明する。図5は、第1実施形態のマイクロポンプ100を内視鏡装置に適用したときの概略構成を示す斜視図である。図6は、第1実施形態に係る水冷ユニットの構成を示す斜視図である。
【0030】
一般的な内視鏡スコープは細長いチューブ形状であり、先端部に撮像ユニットや光源などの機能要素が配置されている。近年の内視鏡の高機能化に伴い、これら先端部の機能要素の発熱が問題となりつつある。このため、先端部を効率的に冷却する液冷ユニットの開発が望まれているが、実際に発熱する先端部に送液ポンプを配置するのはスペースの点で困難であり、先端部から離れたスコープの操作部やスコープ外部にポンプを配置するしかないのが現状であった。
【0031】
図5に示す例では、内視鏡装置の先端部において、各種の機能要素(図示は省略)を組み付けた金属部材180の外周部に、マイクロポンプ100を含む水冷ユニットを組み付けている。
【0032】
図6は図5に示した水冷ユニットのみを示している。この水冷ユニットは、内部に流路を設けた金属製の水冷ジャケット113と、水冷ジャケット113内の流路に接続され、冷却液を循環させるチューブ112と、チューブ112の途中に配置したマイクロポンプ100と、を備える。水冷ジャケット113内の流路とチューブ112で冷却液の閉ループを構成している。チューブ112の冷却液は、マイクロポンプ100を用いて、上記閉ループ内で循環する。チューブ112は、内視鏡の外皮170(例えば湾曲管、蛇管部)内において、外皮170が延びる方向(スコープの長手方向)に延在するように配置されている。
【0033】
水冷ジャケット113は、先端部の金属部材180に組み付けられており、水冷ジャケット113と金属部材180の間で熱交換を行う。そして、水冷ジャケット113から冷却液に移動した熱は、チューブ112内を流れる過程でスコープ後方で周囲に放出される。これを繰り返すことによって金属部材180の温度を下げることができる。
【0034】
上述のように、マイクロポンプ100は、小型で大きな流量が得られると共に、細長い形状をしている。このため、マイクロポンプ100は、径方向(長手方向に鉛直な方向)のスペース制約が厳しい内視鏡に特に好適である。また、前述のように単一の圧電式のアクチュエータ160で機能するので必要な配線が少ないことも信頼性やアセンブリ工数削減の観点で有利である。
さらに、マイクロポンプ100を用いた水冷ユニットでは、冷却液を循環させるチューブが短くてすむ。すなわち、従来のポンプを操作部に配置する場合は送液用チューブを先端部まで引き出す必要があるのに対して、マイクロポンプ100を用いた水冷ユニットでは、先端部の発熱量などに依存するが、チューブ112を先端部から操作部まで引き回さなくても充分な冷却効果を得ることができる。したがって、マイクロポンプ100を用いることにより、スコープの操作部やスコープ外部まで冷却液循環チューブを引き出す従来の方式よりも、構造が簡単で信頼性を高めることができる。
【0035】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るマイクロポンプ200の構成を示す、上下方向に沿った断面図である。図8は、マイクロポンプ200の構成を示す、第2PDMS膜250側から見た斜視図である。図7においては、第1実施形態のPDMS流体チャネル110、アクチュエータ160に対応する部材の図示を省略している。また、図8においては、第2PDMS膜250の図示を省略している。
【0036】
第1実施形態のマイクロポンプ100では、上側の第1PDMS膜130の変形領域を下側の第2PDMS膜150よりも小さくするために、第1PDMS膜130の変形を抑制するチタンカバー120を形成していた。これに対して、第2実施形態のマイクロポンプ200では、上側の第1PDMS膜230(第1可撓性薄膜)の変形領域を下側の第2PDMS膜250(第2可撓性薄膜)よりも小さくするために、シリコン基板240のチャンバー241のサイズを変えている。具体的には、シリコン基板240の上下方向(図7の上下方向)の直交断面におけるチャンバー241のサイズが、第2PDMS膜250からシリコン基板240へ向かうほど小さくなるように、チャンバー241を形成している。チャンバー241には、非圧縮性流体F2が封入される。
なお、このような断面が台形形状となるシリコン基板240のチャンバー241の加工は、適切な面方位と選択して、強アルカリ溶液による異方性エッチングを用いることで比較的容易に行うことができる。
【0037】
第1PDMS膜230上には第1実施形態のPDMS流体チャネル110と同様にPDMS流体チャネルが積載され、第2PDMS膜250の下面には第1実施形態のアクチュエータ160と同様に圧電式のアクチュエータが接触配置される。
【0038】
このような構成において、第2PDMS膜250及び第1PDMS膜230において変位が起きるのは、チャンバー241に対応する範囲となる。したがって、第1PDMS膜230において変位が起きる範囲は、第2PDMS膜250において変位が起きる範囲よりも小さくなる。よって、チタンカバーを用いることなく上側の第1PDMS膜230と下側の第2PDMS膜250の変形領域幅を変えることで、第1実施形態と同様に、変位増大効果が得られる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0039】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係るマイクロポンプ300の構成を示す斜視図である。図10は、マイクロポンプ300を一部分解して示す斜視図である。図11は、図10をさらに分解して示す斜視図である。
【0040】
第1実施形態のマイクロポンプ100では、流路111を設けたPDMS流体チャネル110の一つの側面に、進行波を発生させる機構(加振手段)を設けて流体を移動させていた。これに対して、第3実施形態のマイクロポンプ300においては、流路311内の流量をより増大させるために、流路311を設けたPDMS流体チャネル310の対向する2つの側面に、進行波を発生させる第1ポンプ300a(加振手段)及び第2ポンプ300b(加振手段)をそれぞれ設けている。なお、第3実施形態では、PDMS流体チャネル310の2面のみにポンプを設けていたが、ほかの面にも同様にポンプを配置してもよい。
【0041】
第1ポンプ300aと第2ポンプ300bは略同一の構成であって、PDMS流体チャネル310の対向する2つの面に、第1PDMS膜330a、330bをそれぞれ向けるように配置されている。したがって、第1ポンプ300aと第2ポンプ300bは、PDMS流体チャネル310に関して対称に配置される。これにより、流路311は、PDMS流体チャネル310の内壁と、第1PDMS膜330a、330bにより囲まれて構成され、外部へ延びる接続口312に連通する。流路311内には、搬送される流体F1が収容される。
【0042】
第1ポンプ300aは、PDMS流体チャネル310側から順に、第1可撓性薄膜としての第1PDMS膜330a、流路311に対応した位置に開口部321aを備えるチタンカバー320a、チタンカバー320aの開口部321aに対応する位置にチャンバー341aが形成されたシリコン基板340a、第2可撓性薄膜としての第2PDMS膜350a、及び、アクチュエータ360aを積み重ねた構成である。
【0043】
第2ポンプ300bは、PDMS流体チャネル310側から順に、第1可撓性薄膜としての第1PDMS膜330b、チタンカバー320b、シリコン基板340b、第2可撓性薄膜としての第2PDMS膜350b、及び、アクチュエータ360bを積み重ねた構成である。これらの第1PDMS膜330b、チタンカバー320b、シリコン基板340b、第2PDMS膜350b、及び、アクチュエータ360bは、第1ポンプ300aの第1PDMS膜330a、チタンカバー320a、シリコン基板340a、第2PDMS膜350a、及び、アクチュエータ360aにそれぞれ対応するため詳細な説明は省略する。
【0044】
チャンバー341aは、シリコン基板340aを厚み方向に貫通しており、シリコン基板340aの内壁のほか、PDMS流体チャネル310側はチタンカバー320aを介して第1PDMS膜330aにより覆われ、反対側は第2PDMS膜350aで覆われた構成となっている。このチャンバー341aには、非圧縮性流体F2が充填される。
【0045】
第2PDMS膜350aには、屈曲型の圧電式のアクチュエータ360aによって変位する接圧部材362aが接触配置されている。接圧部材362aは、長板状のアクチュエータ360aの一方の端部に固定されるとともに、チャンバー341aの長手方向の一方の端部側であって流路311に対応する位置に配置されている。また、アクチュエータ360aの他方の端部は、固定部361aを介して第2PDMS膜350aに固定されている。
第1ポンプ300aにおいては、アクチュエータ360aと接圧部材362aが加振機構を構成する。また、第1PDMS膜330a、チタンカバー320a、シリコン基板340a、第2PDMS膜350a、及び、チャンバー341a内の非圧縮性流体F2が加振手段を構成する。
【0046】
接圧部材362aは、圧電式のアクチュエータ360aに通電して振動させることで、第2PDMS膜350aの端部を面外方向(第1ポンプ300a、第2ポンプ300bを積層する方向)に加振する。この加振によって、第2PDMS膜350aにおいて、流路311が延びる方向への進行波が生起される。チャンバー341a内には非圧縮性流体F2が満たされているため、第2PDMS膜350aに生起した進行波によって、チタンカバー320aを介して第1PDMS膜330aにも対応する進行波が生起される。
【0047】
また、チタンカバー320aに形成された開口部321a、及び、シリコン基板340aに形成されたチャンバー341aは、ともに流路311の方向に長い矩形の貫通開口である。開口部321aは、チャンバー341aよりも幅が狭くなっている。チタンカバー320aの剛性が第1PDMS膜330aの剛性よりも高いため、第1PDMS膜330aの変位は、チタンカバー320aで覆われた部分では抑えられ、チタンカバー320aの開口部321aに対応する範囲で起きる。すなわち、変位の範囲の観点では、実質的に、第1PDMS膜330aで変位が起きる範囲はPDMS350aにおいて変位が起きる範囲よりも小さくなる。
【0048】
このように、PDMS流体チャネル310側の第1PDMS膜330aは、第2PDMS膜350aと比較して、チタンカバー320aによって変位可能な範囲が実質的に小さく形成されている。このため、PDMS流体チャネル310側の第1PDMS膜330aの面外方向の変位は、開口部321aに対応する範囲に限定されて、第2PDMS膜350aの変位よりも大きくなる。すなわち、チャンバー341aよりも開口部321aを小さくすることによって、第1PDMS膜330aにおける面外方向の変位増大効果が得られる。したがって、単一の加振用アクチュエータで送液が行えると共に、小さな加振用アクチュエータの変位で大きな送液流量が得られる。
【0049】
さらに、第1実施形態のマイクロポンプ100と異なり、流路311の両面に2つの第1ポンプ300a、第2ポンプ300bを配置している。このため、第1実施形態のマイクロポンプ100に比して、より大きな流量が得られる。したがって、全体サイズの制約が比較的ゆるい用途ではこちらの方が好適である。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係るポンプ装置は、小型かつ大きな流量の大きなポンプ装置が求められる内視鏡装置に適している。
【符号の説明】
【0051】
100 マイクロポンプ(ポンプ装置)
110 PDMS流体チャネル
111 流路
112 チューブ
113 水冷ジャケット
120 チタンカバー
121 開口部
130 第1PDMS膜
140 シリコン基板
141 チャンバー
150 第2PDMS膜
160 アクチュエータ
161 接圧部材
170 外皮
180 金属部材
200 マイクロポンプ(ポンプ装置)
230 第1PDMS膜
240 シリコン基板
241 チャンバー
250 第2PDMS膜
300 マイクロポンプ(ポンプ装置)
300a 第1ポンプ
300b 第2ポンプ
310 PDMS流体チャネル
311 流路
312 接続口
320a チタンカバー
320b チタンカバー
321a 開口部
330a 第1PDMS膜
330b 第1PDMS膜
340a シリコン基板
340b シリコン基板
341a チャンバー
350a 第2PDMS膜
350b 第2PDMS膜
360a アクチュエータ
360b アクチュエータ
361a 固定部
362a 接圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路壁面の少なくとも一部を構成する第1可撓性薄膜に、流路の長手方向に伝播する進行波を発生させて前記流路内の流体を搬送するポンプ装置であって、
前記第1可撓性薄膜の所定部位を面外方向に加振することにより前記進行波を生起させる加振手段を備えることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
流路壁面の少なくとも一部を構成する第1可撓性薄膜に、流路の長手方向に伝播する進行波を発生させて前記流路内の流体を搬送するポンプ装置であって、
前記第1可撓性薄膜が非圧縮性流体を封入したチャンバーの一部を構成し、
第2可撓性薄膜が前記チャンバーの他の一部を構成し、
前記第2可撓性薄膜に作用する加振機構によって前記第2可撓性薄膜に進行波を生起させ、
前記第2可撓性薄膜に生起された進行波に伴う前記非圧縮性流体の変位によって、前記第1の可撓性薄膜に進行波を生起させ、
前記第2可撓性薄膜に生起された進行波よりも、前記第1可撓性薄膜に生起させた進行波の方が面外変位が実質的に大きいことを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
前記第2可撓性薄膜に作用する加振機構は、前記第2可撓性薄膜の所定部位を面外方向に加振することで進行波を生起させることを特徴とする請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記チャンバーは、開口を有する板状部材の両主面に、前記第1可撓性薄膜と前記第2可撓性薄膜を互いに対向して形成した構成であることを特徴とする請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記第1可撓性薄膜に、前記板状部材の開口よりも小さな開口を有する板状もしくは薄膜状部材が積層されていることを特徴とする請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
冷却機構を備えた内視鏡装置において、
電子機器が配置された先端部から、内視鏡の長手方向に延在する循環流路の一部に請求項1又は請求項2に記載のポンプ装置が配置されることを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−82690(P2012−82690A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226865(P2010−226865)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】