説明

ポンプ装置

【課題】 ポンプを停止すると一切の制御なしに吐出管のサイフォン部に空気が入ってサイフォンが解消できるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】 ポンプ2と吐出管3を具備し、該吐出管3が吐出し水面10より高い位置を経由して該吐出し水面10の下に開口するサイフォン部9を有するポンプ装置において、サイフォン形状の吐出管3頂付近に一端が接続された空気供給管7の他端と一端が大気に開放された空気吸込管6の他端を規定高さで合流部4とし、該合流部4を吐出管3の接続口5に接続し、ポンプ2の運転中は吐出水の動水位により空気をポンプ吐出管3に吸込むことなくサイフォンを形成したまま運転を継続し、該ポンプ停止後は空気吸込管6及び空気供給管7を通して自動的にサイフォン部9の頂部に空気を吸込みサイフォンを破壊する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、清水その他の液体を揚水或いは排水するポンプ装置で、吐出管が吐出し水面よりも高い位置を経由して吐出し水面下に開口するサイフォン形状の吐出管を有するポンプ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のサイフォン形状の吐出管を有するポンプ装置においては、吐出管のサイフォン部に空気を供給するための電磁弁や電動弁或いは手動弁を設けている。そしてポンプ停止後、この弁を開いて吐出管のサイフォン部に空気を供給し、真空破壊をしてサイフォンを解消している。
【0003】上記電磁弁や電動弁或いは手動弁を設けると、装置が複雑になるばかりではなく、これらの弁のメンテナンス等も必要となる。また、手動弁においては、ポンプ停止後、該手動弁を手動で開くという煩わしい作業を必要とし、弁を開くことを忘れる恐れもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ポンプを停止すると一切の制御なしに吐出管のサイフォン部に空気が入ってサイフォンが解消できるポンプ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ポンプと該ポンプの吐出口に接続される吐出管を具備し、該吐出管が吐出し水面より高い位置を経由して該吐出し水面下に開口するサイフォン形状の吐出管を具備するポンプ装置において、サイフォン形状の吐出管頂付近に一端が接続された空気供給管の他端と一端が大気に開放された空気吸込管の他端を規定高さで合流させて一本の合流管とし、該合流管をポンプ吐出管に接続し、ポンプ運転中は吐出水の動水位により空気をポンプ吐出管に吸込むことなくサイフォンを形成したまま運転を継続し、該ポンプ停止後は空気吸込管により自動的に吐出管内に空気を吸込みサイフォンを破壊するように構成したことを特徴とする。
【0006】上記のように、吐出管頂付近に空気供給管の他端と空気吸込管の他端を規定の高さで合流させた合流管をポンプ吐出管に接続し、該ポンプ停止後は空気吸込管により自動的に吐出管内に空気を吸込みサイフォンを破壊するように構成したので、ポンプを停止すると一切の制御なしに吐出管のサイフォン部に空気が入ってサイフォンが解消できる。
【0007】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポンプ装置において、空気供給管と空気吸込管を合流する規定高さを、合流管を接続する吐出管の動水位より低くしたことを特徴とする。
【0008】上記のように、空気供給管と空気吸込管を合流する規定高さを、合流管を接続する吐出管の動水位より低くしたことにより、ポンプを運転すると合流部よりも高い位置まで水が入るので空気吸込管と空気供給管は管に入った水で分断され、吐出管のサイフォン部に空気が供給されず、吐出管はサイフォンを形成したままポンプ運転を継続する。
【0009】請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のポンプ装置において、合流管を接続する吐出管の接続部の高さを空気供給管の他端と空気吸込管の他端を合流させる合流部の高さと同じ又は該合流部の高さより低くしたことを特徴とする。
【0010】上記のように、合流管を接続する吐出管の接続部の高さを空気供給管の他端と空気吸込管の他端を合流させる合流部の高さと同じ又は該合流部の高さより低くしたことにより、ポンプが停止し吐出管内が負圧となった場合、該空気供給管と空気吸込管を分断していた管内の水が確実に吐出管に流入し、空気供給管を通して吐出管のサイフォン部に空気が供給され、サイフォンは解消される。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置において、空気吸込管の大気開放端の高さを合流管を吐出管に接続する接続部の動水位よりも高くしたことを特徴とする。
【0012】上記のように、空気吸込管の大気開放端の高さを合流管を吐出管に接続する接続部の動水位よりも高くしたことにより、ポンプの運転を継続し、吐出管の接続部の動水位が規定圧(正圧)となると空気吸込管からの水の流出がなくなる。
【0013】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプ装置において、空気吸込管に逆流防止弁を設けたことを特徴とする。
【0014】上記のように、空気吸込管に逆流防止弁を設けたことにより、ポンプ運転開始時にサイフォン部に空気が残った状態の時に空気吸込管からポンプの吐出水が流出することを防止できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。図1において、2は吸込口2aが吸込水槽11の吸込み水面1の下に開口するポンプである。該ポンプ2の吐出口には吐出管3が接続されている。
【0016】上記吐出管3は吐出水槽12の吐出し水面10より高い位置を経由して、その先端が吐出し水面10の下に開口するサイフォン部9を形成している。該サイフォン部9の頂部の接続口8に空気供給管7の一端が接続され、該空気供給管7の他端と一端が大気に開放された空気吸込管6の他端を合流させ、該合流部4を吐出管3の接続口5に接続している。合流部4と吐出管3の接続口5は同じ高さに位置する。また、空気吸込管6の大気開放端の高さは合流部4を吐出管に接続する接続口5の動水位よりも高くしている。
【0017】上記構成のポンプ装置において、ポンプ2が停止しているときは吐出管3内には空気だけで水は入っていない。ポンプ2を運転すると吐出管3内を水が充満して流れるが、吐出管3のサイフォン部9の空気は該サイフォン部9の上部に溜まっている。この状態でポンプ2の運転を継続すると吐出管3内の水流によってサイフォン部9の空気が順次押し出され、該サイフォン部9にも水が充満して流れてくるので、ポンプ2の吐出し量も規定の流量となり、吐出管3の接続口5の動水位も規定圧(正圧)となり、空気吸込管6からの水の流出もなくなる。
【0018】空気吸込管6の他端と空気供給管7の他端の合流部4が接続口5の動水位よりも低ければ、該合流部4よりも高い位置まで水が入るので空気吸込管6と空気供給管7は管に入ってきた水で分断され、サイフォン部9には空気が供給されないから、吐出管3はサイフォンを形成したままポンプ2の運転を継続する。なお、図1R>1において、h1はポンプ運転中の空気供給管7と空気吸込管6の水位差を示し、h2は接続口5の中心から空気吸込管6の水位を示す。該空気供給管7と空気吸込管6の水位差h1は吐出し水面10と該サイフォン部9の頂部の空気供給管7の接続口8の水位差h3に等しくなる(h1=h2)。
【0019】ポンプ2が停止すると吐出管3内が負圧となり、空気吸込管6から空気が吐出管3に流入し吐出管3内の水は吸込水槽11に流出する。同時に空気吸込管6と空気供給管7を分断していた水が吐出管3に流出してしまうので、空気吸込管6からの空気が空気供給管7を経由して空気供給管7の接続口8からサイフォン部9に空気が供給されて真空が破壊されサイフォン部9内の水も吸込側及び吐出側に分断して流下してしまう。
【0020】図2は図1に示すポンプ装置の管路縦断面図にサイフォン部9に水が充満して流れている定常状態のときの動水位を記入した図である。同図において、縦軸は吸込水位を基準とした吐出管3の長さを取って吐出管プロフィルと動水位を表したもので、動水位と吐出管プロフィルの高さの差がその地点の吐出管に掛かる圧力の水柱である。
【0021】ポンプ位置L0(ポンプ2の位置)から吐出管3の長さBの位置、即ち動水位曲線Dと吐出管プロフィルCとの交点Aまでの間は吐出管プロファイルCよりも動水位曲線Dが上にあるので圧力(正圧)が掛かっており、交点Aでは吐出管3に掛かる圧力は零である。交点Aから吐出端までは動水位曲線Dよりも吐出管プロファイルCが上になり吐出管3内が負圧でサイフォンを形成している。なお、Eは停止後の動水位の変化を示す。
【0022】図1のポンプ装置において、空気吸込管6の他端と空気供給管7の他端の合流部4の高さが動水位曲線Dよりも低い位置であれば該合流部4に圧力(正圧)が掛かるのでポンプ2の吐出水で空気吸込管6と空気供給管7を分断し空気供給管7への空気の供給がされないので、交点Aより先の吐出管3のサイフォンを形成したままポンプ2の運転は継続することができる。
【0023】図3は本発明に係るポンプ装置の吐出管のサイフォン部近傍の構成例を示す図である。本ポンプ装置では、図示するように、空気吸込管6の他端と空気供給管7の他端の合流部4よりも吐出管3の接続口5が低くなっている。
【0024】図4は本発明に係るポンプ装置の吐出管のサイフォン部近傍の構成例を示す図である。本ポンプ装置では図示するように、空気吸込管6に逆止弁13を設けている。このように空気吸込管6に逆止弁13を設けることにより、ポンプ運転開始時にサイフォン部9に空気が残った状態の時に空気吸込管6からポンプ2の吐出水が流出することを防止できる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、各請求項に記載の発明によれば、下記のような優れた効果が得られる。
【0026】吐出管頂付近に空気供給管の他端と空気吸込管の他端を規定の高さで合流させた合流管をポンプ吐出管に接続し、該ポンプ停止後は空気吸込管により自動的に吐出管内に空気を吸込みサイフォンを破壊するように構成したので、ポンプを停止すると一切の制御なしに吐出管のサイフォン部に空気が入ってサイフォンが解消できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るポンプ装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示すポンプ装置の管路縦断面図に定常状態のときの動水位を記入した図である。
【図3】本発明に係るポンプ装置の吐出管のサイフォン部近傍の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るポンプ装置の吐出管のサイフォン部近傍の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 吸込み水面
2 ポンプ
3 吐出管
4 合流部
5 接続口
6 空気吸込管
7 空気供給管
8 接続口
9 サイフォン部
10 吐出し水面
11 吸込水槽
12 吐出水槽
13 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポンプと該ポンプの吐出口に接続される吐出管を具備し、該吐出管が吐出し水面より高い位置を経由して該吐出し水面下に開口するサイフォン形状の吐出管を具備するポンプ装置において、前記サイフォン形状の吐出管頂付近に一端が接続された空気供給管の他端と一端が大気に開放された空気吸込管の他端を規定高さで合流させて一本の合流管とし、該合流管を前記ポンプ吐出管に接続し、前記ポンプ運転中は吐出水の動水位により空気を前記ポンプ吐出管に吸込むことなくサイフォンを形成したまま運転を継続し、該ポンプ停止後は空気吸込管により自動的に吐出管内に空気を吸込みサイフォンを破壊するように構成したことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】 請求項1に記載のポンプ装置において、前記空気供給管と空気吸込管を合流する規定高さを、前記合流管を接続する吐出管の動水位より低くしたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のポンプ装置において、前記合流管を接続する前記吐出管の接続部の高さを前記空気供給管の他端と空気吸込管の他端を合流させる合流部の高さと同じ又は該合流部の高さより低くしたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置において、前記空気吸込管の大気開放端の高さを前記合流管を前記吐出管に接続する接続部の動水位よりも高くしたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプ装置において、前記空気吸込管に逆流防止弁を設けたことを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−98085(P2002−98085A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−288543(P2000−288543)
【出願日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】