説明

ポンプ装置

【課題】狭い空間でも配置することのできる新たなポンプ装置を提供すること。
【解決手段】ポンプ装置1は、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cがこの順にZ軸方向に直線状に並んでいるため、ポンプ装置1は軸状になっている。アクティブバルブ部1aには、流体入口6aに連通する流入側流路9に対して、弁体43および駆動機構52を備えたアクティブバルブ4が設けられている。ポンプ部1cには、流入側流路9に連通するポンプ室8が設けられている。流路構成部1bは、アクティブバルブ部1aとポンプ部1cとに挟まれた位置に設けられており、ポンプ部1cには、流入側流路9とポンプ室8とを連通させる連通用流路16、ポンプ室8と流体出口5aとに連通する流出側流路10、および流出側流路10に配置されたパッシブバルブ11とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室の上流側および下流側にアクティブバルブおよびパッシブバルブを備えたポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ室の上流側および下流側にアクティブバルブおよびパッシブバルブを備えたポンプ装置としては、例えば、ポンプ室の同一の壁面に流入側流路および流出側流路が連通し、ポンプ室と流入側流路との連通部分、およびポンプ室と流出側流路との連通部分にアクティブバルブおよびパッシブバルブが設けられた構成が提案されている(特許文献1参照)。かかる構成のポンプ装置によれば、ポンプ室からの流体の供給および停止をアクティブバルブおよびパッシブバルブによって制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−527232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のポンプ装置では、流入側流路および流出側流路がポンプ室の同一の壁面に連通しているため、平面積の大きなポンプ装置になってしまい、各種機器内の狭い空間に配置するには不都合であるという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、狭い空間でも配置することのできる新たなポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るポンプ装置は、流体入口に連通する流入側流路に対して、アクティブバルブ用弁体およびアクティブバルブ用弁体駆動機構を備えたアクティブバルブが設けられたアクティブバルブ部と、前記流入側流路に連通するポンプ室を備えたポンプ部と、前記アクティブバルブ部と前記ポンプ部とに挟まれた位置で前記アクティブバルブ部および前記ポンプ部と直線状に並ぶように設けられた流路構成部と、を有し、当該流路構成部は、前記流入側流路と前記ポンプ室とを連通させる連通用流路と、前記ポンプ室と流体出口とに連通する流出側流路と、当該流出側流路に配置されたパッシブバルブと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るポンプ装置では、アクティブバルブ部、流路構成部、およびポンプ部がこの順に直線状に並んでいるため、ポンプ装置は軸状になっている。このため、各種機器に搭載する際、狭い空間でもポンプ装置を配置することができる。かかる構成の場合でも、本発明では、アクティブバルブ部には、流体入口に連通する流入側流路にアクティブバルブが設けられ、ポンプ部のポンプ室は、流路構成部の連通用流路を介してアクティブバルブ部の流入側流路に連通し、流路構成部においてパッシブバルブが配置された流出側流路はポンプ室に連通している。このため、ポンプ室からの流体の供給および停止をアクティブバルブおよびパッシブバルブによって制御することができる。
【0008】
本発明では、前記流出側流路において前記パッシブバルブより下流側に位置する部分は、前記アクティブバルブ部、前記流路構成部および前記ポンプ部が配列されている方向と交差する方向に延在していることが好ましい。かかる構成によれば、流出側流路においてパッシブバルブより下流側をアクティブバルブ部、流路構成部、およびポンプ部が並んでいる方向(軸線方向)に延ばす必要がない等、流路の構成を簡素化することができるとともに、ポンプ装置を細い軸状に構成することができる。また、流出側流路においてパッシブバルブより下流側が軸線方向と交差する方向に延在しているので、流路構成部の側面に流体出口を設けることができる。
【0009】
本発明において、前記アクティブバルブ部、前記流路構成部、および前記ポンプ部はいずれも、互いに分離可能なユニットとして構成されていることが好ましい。このような構成によれば、アクティブバルブ部、流路構成部、およびポンプ部の一部を取り換えて別の構造とすることや、アクティブバルブ部、流路構成部、およびポンプ部の向きを変えて別の構造とすることが容易である。
【0010】
この場合、前記アクティブバルブ部の外面と前記流路構成部との外面とは、前記アクティブバルブ部と前記流路構成部との境界部分で連続した平面を構成し、前記流路構成部の外面と前記ポンプ部の外面とは、前記流路構成部と前記ポンプ部との境界部分で連続した平面を構成していることが好ましい。かかる構成によれば、ポンプ装置の外面に余計な突起や段差がないので、各種機器に搭載するのが容易である等の利点がある。
【0011】
本発明において、前記アクティブバルブは、前記アクティブバルブ用弁体によって開閉される流体流通口、当該流体流通口が開口している弁座、および前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢手段を備え、前記アクティブバルブ用弁体は、流体の流通方向の上流側から前記弁座に当接して前記流体流通口を閉鎖する閉鎖位置と、前記弁座から流体の流通方向の上流側に離れて前記流体流通口を開放する開放位置との間を往復移動可能であって、前記アクティブバルブが駆動されていないときには前記付勢手段の付勢力によって前記閉鎖位置にあり、前記アクティブバルブが駆動されたときに前記アクティブバルブ用弁体は前記閉鎖位置から前記開放位置に移動することが好ましい。かかる構成によれば、流体入口からアクティブバルブ内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力は、アクティブバルブ用弁体を閉鎖位置に向かって移動させる方向に働く。この結果、アクティブバルブが駆動されていない場合、すなわち、付勢手段の付勢力によって弁体が閉鎖位置に保持されて上流側流路が閉状態となっている場合に、流体入口側の圧力が上昇しても、弁体は流体入口からアクティブバルブ内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力によって閉鎖位置に付勢され、流入側流路の閉状態が維持される。従って、ノーマルクローズ型のアクティブバルブを用いなくても、流体が流体入口からポンプ室を経由して流体出口へ流出してしまうことを回避することができる。
【0012】
本発明では、前記アクティブバルブ部において、前記流入側流路は、前記流体流通口と同軸状に延在する流体流路を備え、前記アクティブバルブ用弁体は、前記流体流路内において前記閉鎖位置と前記開放位置との間で移動可能となっていることが好ましい。かかる構成によれば、ポンプ装置を軸状にするのに適している。
【0013】
本発明において、前記アクティブバルブ用弁体駆動機構は、筒状胴部を備えるコイルボビンと、前記筒状胴部に巻き回された駆動コイルと、前記筒状胴部の内側に配置されたマグネットと、を備え、前記筒状胴部の内側が前記流体流路であり、前記マグネットは前記弁体に搭載されていることが好ましい。かかる構成によれば、簡素な構成でポンプ装置を軸状に構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るポンプ装置では、アクティブバルブ部、流路構成部、およびポンプ部がこの順に直線状に並んでいるため、ポンプ装置は軸状になっている。このため、各種機器に搭載する際、狭い空間でもポンプ装置を配置することができる。かかる構成の場合でも、本発明では、アクティブバルブ部には、流体入口に連通する流入側流路にアクティブバルブが設けられ、ポンプ部のポンプ室は、流路構成部の連通用流路を介してアクティブバルブ部の流入側流路に連通し、流路構成部においてパッシブバルブが配置された流出側流路はポンプ室に連通している。このため、ポンプ室からの流体の供給および停止をアクティブバルブおよびパッシブバルブによって制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した容積型ポンプ(ポンプ装置)の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した容積型ポンプのポンプ部の構成を示す断面図である。
【図3】本発明を適用した容積型ポンプのポンプ部の分解斜視図である。
【図4】本発明を適用した容積型ポンプの流路構成部の説明図である。
【図5】本発明を適用した容積型ポンプのアクティブバルブ部の断面図である。
【図6】本発明を適用した別の容積型ポンプ(ポンプ装置)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら、本発明を適用したポンプ装置として、容積型ポンプを説明する。。なお、以下の説明においては、互いに交差する方向をX軸方向およびY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に交差する方向をZ軸方向(ポンプ装置の軸線方向)とする。また、以下に参照する図面では、X軸方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とし、Y軸方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側とし、Z軸方向の一方側(上方側)をZ1側とし、他方側(下方側)をZ2側として表してある。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置(容積型ポンプ)の全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、ポンプ装置の斜視図および断面図である。
【0018】
図1に示すように、ポンプ装置1は、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cがこの順にZ軸方向の一方側Z1から他方側Z2に直線状に並んでいるため、ポンプ装置1は軸状になっている。
【0019】
かかるポンプ装置1において、アクティブバルブ部1aには、流体入口6aに連通する流入側流路9に対して、弁体43(アクティブバルブ用弁体)および駆動機構52(アクティブバルブ用弁体駆動機構)を備えたアクティブバルブ4が設けられている。ポンプ部1cには、流入側流路9に連通するポンプ室8が設けられている。流路構成部1bは、アクティブバルブ部1aとポンプ部1cとに挟まれた位置に設けられており、流路構成部1bには、アクティブバルブ部1aの流入側流路9とポンプ部1cのポンプ室8とを連通させる連通用流路16と、ポンプ室8と流体出口5aとに連通する流出側流路10と、流出側流路10に配置されたパッシブバルブ11とが設けられている。
【0020】
本形態において、アクティブバルブ部1aでは、流入側流路9がZ軸方向に延在し、Z軸方向の一方側Z1でX軸方向の他方側X2に屈曲している。アクティブバルブ部1aでは、X軸方向の他方側X2に向けて流入管6が突出し、その先端が、流入側流路9と連通する流体入口6aになっている。
【0021】
流路構成部1bにおいて、連通用流路16は、Z軸方向に延在しているとともに、Z軸方向の一方側Z1で屈曲し、流入側流路9に連通している。また、連通用流路16は、Z軸方向の他方側Z2には直線的に延在してポンプ室8に連通している。また、流路構成部1bにおいて、流出側流路10はポンプ室8からZ軸方向の一方側Z1に向けて直線的に延在した後、X軸方向の一方側X1に向けて延在するように屈曲している。本形態では、流出側流路10のうち、X軸方向に延在する部分の途中位置にパッシブバルブ11が設けられている。また、流出側流路10のうち、パッシブバルブ11より下流側でX軸方向に延在している部分101は、流路構成部1bからのX軸方向の一方側X1に向けて突出した流出管5の内部に連通し、かかる流出管5の先端が流体出口5aになっている。
【0022】
本形態において、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cは互いに分離可能なユニットとして構成されており、Z軸方向に止められたボルト1e等により連結された状態にある。ここで、アクティブバルブ部1aのハウジング7a、流路構成部1bのハウジング7b、およびポンプ部1cのハウジング7cはいずれも、概ね角形であり、互いに連結している部分のサイズが同一である。このため、アクティブバルブ部1aの外面と流路構成部1bとの外面とは、アクティブバルブ部1aと流路構成部1bとの境界部分71abで連続した平面を構成しており、流路構成部1bの外面とポンプ部1cの外面とは、流路構成部1bとポンプ部1cとの境界部分71bcで連続した平面を構成している。このため、ポンプ装置1の外面には余計な突起や段差がない。
【0023】
(ポンプ部1cの構成)
図2は、本発明を適用したポンプ装置1のポンプ部1cの構成を示す断面図である。図3は、本発明を適用したポンプ装置1のポンプ部1cの分解斜視図である。
【0024】
図2に示すように、ポンプ部1cの内部にはポンプ室8が形成されており、ポンプ室8の底面はダイヤフラム12(可動体/ポンプ用弁体)によって規定されている。また、ポンプ部1cには電磁式アクチュエータ3が構成されており、電磁式アクチュエータ3によってダイヤフラム12を往復動させることによりポンプ室8の容積を変化させる。すなわち、ポンプ装置1は、アクティブバルブ4を開けてポンプ室8の容積を拡大することによって流体入口6aからポンプ室8に流体を吸引し、アクティブバルブ4を閉めてポンプ室8の容積を縮小することによってポンプ室8に吸引した流体を流体出口5aから吐出する。
【0025】
ダイヤフラム12は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等からなるゴム製の弾性体であり、上方から見たときに円形の平面形状を備えている。ダイヤフラム12の中央部分の下側には、電磁式アクチュエータ3においてZ軸方向に直動可能な移動体33が連結されいる。移動体33は、側面が移動体33の移動方向と平行になるように配置された直方体形状のマグネット331を備えている。マグネット331は2極着磁されており、左右で異なる極に着磁された磁極面331a、331bとなっている。本実施形態では、磁極面331aがS極に着磁され、磁極面331bがN極に着磁されている。
【0026】
また、図3に示すように、移動体33は、マグネット331の磁極面331a、331bを除く外周面部分を保持しているマグネットホルダ332を備えている。マグネットホルダ332は、マグネット331の前後の側面を装置前後方向から保持する前後の縦枠部332aと、前後の縦枠部332aの上端部を連結している上側枠部332bと、前後の縦枠部332aの下端部を連結している下側枠部332cとを備えている。前後の縦枠部332aの各々には、磁極面331a、331bと平行に突出するガイド突部333が設けられている。各ガイド突部333は直方体形状をしており、上下方向に所定の長さ寸法を備えている。上側枠部332bには、ダイヤフラム12との接続部334が上方に突出するように設けられている。下側枠部332cには、下方に突出するガイド軸335が設けられており、ガイド軸335は、ハウジング7cの底部に設けられた端板32のガイド穴内でZ軸方向に移動可能に支持されている。なお、本実施形態では、ガイド突部333は、回転防止としての機能を有している。
【0027】
かかる移動体33の周りには、第1固定体35および第2固定体36からなる固定体34が設けられており、第1固定体35および第2固定体36は各々、ヨーク37およびヨーク37に巻き回されている駆動コイル38を備えている。第1固定体35は、駆動コイル38が移動体33の磁極面331aと一定のギャップを開けて対向するように配置されており、第2固定体36は、駆動コイル38が磁極面331bと一定のギャップを開けて対向するように配置されている。
【0028】
2つのヨーク37は各々、上下方向に延びる軸部371と、軸部371の上端部分から内側に突出している第1突部372と、軸部371の下端部分から内側に突出している第2突部373とを備えている。駆動コイル38は、ヨーク37の第1突部372と第2突部373との間で移動体33の移動方向(上下方向)と直交する方向に巻き回されている。駆動コイル38は、移動体33の移動方向と直交する平面による断面形状が長方形となっており、断面形状の一方の長辺となっている外周面部分がマグネット331の各磁極面331a、331bと対向している。なお、ヨーク37の下端部分はハウジング7cの底部に設けられた端板32によって支持されている。
【0029】
かかる電磁式アクチュエータ3において、駆動コイル38への給電が行なわれていない状態で、移動体33は、マグネット331と各ヨーク37の第1突部372との磁気的な吸引力とダイヤフラム12の反力の作用、またはマグネット331と各ヨーク37の第2突部373との磁気的な吸引力とダイヤフラム12の反力の作用によって、上昇位置(Z軸方向の一方側Z1)の位置、または下降位置(Z軸方向の他方側Z2)に保持されている。この状態から、移動体33をZ軸方向に移動させる際には、駆動コイル38への給電を行なう。この結果、フレミングの左手の法則により、駆動コイル38とマグネット331の磁界との間に働くローレンツ力が、移動体33を移動させる力として働く。また、アンペールの右ネジの法則により、駆動コイル38への給電によって、駆動コイル38およびヨーク37は電磁コイル(電磁石)として機能する。その際、例えば、移動体33の左側に配置されている第1固定体35は、上側をS極とし、下側をN極とする電磁コイルとして機能する。移動体33の右側に配置されている第2固定体36は、上側をN極とし、下側をS極とする電磁コイルとして機能する。この結果、移動体33のマグネット331と、第1固定体35および第2固定体36の間には、上側において電磁的な反発力が発生し、下側において、電磁的な吸引力が発生する。かかる力は、移動体33を移動させるための推力となる。
【0030】
(流路構成部1bの構成)
図4は、本発明を適用したポンプ装置1の流路構成部1bの説明図であり、図4(a)、(b)は、流路構成部1bの断面図、およびパッシブバルブ11の説明図である。
【0031】
図4に示すように、流路構成部1bにはZ軸方向に延在する連通用流路16が形成されており、連通用流路16のZ軸方向の一方側Z1の端部は、アクティブバルブ部1aの流入側流路9に連通し、Z軸方向の他方側Z2の端部はポンプ室8に連通している。また、流路構成部1bにおいて、流出側流路10はポンプ室8からZ軸方向の一方側Z1に向けて直線的に延在した後、X軸方向の一方側X1に向けて延在するように屈曲している。本形態では、流出側流路10のうち、X軸方向に延在する部分の途中位置が弁室13になっており、かかる弁室13を利用してパッシブバルブ11が構成されている。本形態において、パッシブバルブ11は逆止弁である。
【0032】
パッシブバルブ11は、流出側流路10の途中位置において下流側に向く弁座111と、この弁座111に流体の流通方向の下流側から当接して流出側流路10の開口102を塞ぐ弁体112(パッシブバルブ用弁体)と、弁体112と弁室13の端面130との間に挿入された円錐台状の圧縮コイルバネ113とを備えており、圧縮コイルバネ113は、弁体112を弁座111に向けて付勢している。
【0033】
かかるパッシブバルブ11は、ポンプ室8の容積がダイヤフラム12によって縮小されることによりポンプ室8が高圧になって流出側流路10において圧縮コイルバネ113による所定の付勢力以上の所定圧力が流出方向にかかると、流出側流路10を開状態とし、流体が弁室13を通って流出側流路10の下流側部分101に流れることを許容する。また、流出側流路10に流出方向とは反対方向に圧力がかかると、流出側流路10を閉状態とする。
【0034】
(アクティブバルブ部1aの構成)
図5は、本発明を適用したポンプ装置1のアクティブバルブ部1aの断面図である。図5に示すように、アクティブバルブ部1aには、円筒形状の胴部41と、胴部41に対してZ軸方向の他方側Z2に設けられた封止部材42とを備えている。封止部材42には小径の流路423が形成されており、かかる流路423の周縁は環状の弁座44となっている。本形態において、胴部41の内部は流入側流路9の一部となっており、かかる流入側流路9は、流路423と連通する流体流路45を備えている。また、流体流路45は、流路423において上流側で開口する流体流通口423aに連通している。
【0035】
流体流路45にはアクティブバルブ4が構成されており、流体流路45の内部には軸線方向に往復移動可能な状態で弁体43(パッシブバルブ用弁体)が挿入されている。弁体43は、流路423の流体流通口423aを開閉することによって流入側流路9を開閉する。
【0036】
本形態において、弁体43は円柱形状をしている。弁体43は、ステンレス製のパイプ431と、パイプ431の内側に上下方向に配列された円柱状の3つのマグネット432とを有している。また、弁体43は、隣り合うマグネット432の間、およびそれらの両端に円板状の磁性板433を有している。また、弁体43は、パイプ431の内部に、Z軸方向の一方側Z1にステンレス製の蓋部材435を備え、他方側Z2に止め輪436を備えている。さらに、弁体43は、他方側Z2に円形のゴムシート437を備えている。ここで、隣り合うマグネット432は、互いに同一の極を相手方のマグネットの方に向けている。より詳細には、Z軸方向の一方側Z1のマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、その下方に隣接配置されているマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されており、さらにその下方に配置されているマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されている。その結果、弁体43では、磁性板433が位置する個所に磁力線が集中している。
【0037】
本形態において、流体流路45は、弁体43を駆動するための駆動コイル46を巻き回しているコイルボビン47の内側に形成されている。コイルボビン47の外周側には円筒形のヨーク48が配置されている。コイルボビン47は樹脂製である。なお、封止部材42は、押さえ板50によりヨーク48の内側に固定されており、押さえ板50は、磁性材料からなる。このため、押さえ板50は、弁体43に搭載されているマグネット432との間で磁気的な吸引力を発生させ、マグネット432とともに弁体43を弁座44に向けて付勢する付勢手段51を構成している。
【0038】
コイルボビン47は、Z軸方向に延びる筒状胴部472と、筒状胴部472の外周面で拡径する5つのフランジ部473とを備えている。コイルボビン47の筒状胴部472および5つのフランジ部473によって囲まれた4つの空間は、駆動コイル46が巻回される4つの巻線部となっている。本実施形態では、コイルボビン47に巻回された4つの駆動コイル46は、弁体43のマグネット432と共に弁体43を移動させるための駆動機構52(パッシブバルブ用弁体駆動機構)を構成している。
【0039】
コイルボビン47に巻回された4つの駆動コイル46は、励磁電流の向きを逆にするために、隣り合う駆動コイル46同士の巻回方向が逆である。また、4つの駆動コイル46は、例えば、直列に電気的に接続される。かかる駆動機構52において、弁体43が弁座44に当接して、流路423の流体流通口423aを閉鎖している状態では、磁性板433は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
【0040】
ここで、弁体43の外径寸法は、コイルボビン47の筒状胴部472の内径寸法よりもわずかだけ小さく、弁体43がコイルボビン47の筒状胴部472の内側の空間内に挿入された状態では、弁体43の外周側面とコイルボビン47の筒状胴部472の内周面との間を流体が流れる。
【0041】
このように構成したアクティブバルブ4においては、駆動コイル46への給電が制御されることにより開閉動作を行う。より具体的には、駆動コイル46への給電が行なわれていない状態では、弁体43は、弁体43のマグネット432と押さえ板50との磁気的な吸引力によって閉鎖位置に保持されている。かかる閉鎖位置において、弁体43はコイルボビン47の内側の流体流路45をZ軸方向の他方側Z2まで移動している。この状態で、弁体43のゴムシート437が弁座44に当接し、流路423の流体流通口423aを塞いでいる。これにより流入側流路9は閉状態となる。ここで、弁体43は、流路423の流体流通口423aが設けられている弁座44よりも流体の流通方向の上流側に位置している。このため、流体入口6aからアクティブバルブ4の中へ流れ込む流体の流体圧(背圧)が弁体43を閉鎖位置に向かって移動させる方向に力を作用させている。
【0042】
これに対して、流入側流路9を開状態とする際には、駆動コイル46への給電を行なう。アクティブバルブ4では、マグネット432の外周側に筒状に巻き回された駆動コイル46が配置されているので、給電によって駆動コイル46を流れる励磁電流の向きとマグネット432による磁界の向きが直交する。この結果、弁体43は、閉鎖位置から移動し、流入側流路9は開状態となる。かかる開状態では、流体入口6aから流入した流体は、流体流路45の弁体43の外周面とコイルボビン47の筒状胴部472との間に流れ込み、流体流通口423aを介して、流路423を通過し、ポンプ室8へ向かう。
【0043】
また、流入側流路9を閉状態とする際には、駆動コイル46への給電を停止する。駆動コイル46への給電を停止すると、弁体43と押さえ板50との間の磁気的な吸引力および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力により、弁体は閉鎖位置に移動し、流入側流路9は閉状態となる。
【0044】
なお、流入側流路9を閉状態とする際には、弁体43を閉位置から開位置へ移動させる場合と反対方向の励磁電流を駆動コイル46へ供給するようにしてもよい。
【0045】
(ポンプ装置1の動作)
次に、ポンプ装置1の動作を説明する。ポンプ装置1の電磁式アクチュエータ3とアクティブバルブ4とは、不図示の駆動制御機構によって同期して駆動制御される。
【0046】
電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38およびアクティブバルブ4の駆動コイル46に給電されていない状態では、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置に保持されており、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉状態としている。また、電磁式アクチュエータ3の移動体33は、ポンプ室8の容積を最小容積としている。パッシブバルブ11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって流出側流路10を閉状態としている。従って、アクティブバルブ4が駆動されていない場合、流体入口6a側の圧力が上昇すると、弁体43は流体圧によって閉鎖位置に付勢され、流入側流路9の閉状態が維持される。従って、ノーマルクローズ型のアクティブバルブを駆動していないにも拘わらず、流体が流体入口6aからポンプ室8を経由して流体出口5aへ流通してしまうことを回避できる。
【0047】
ポンプ室8内への流体の吸引が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電によって弁体43が閉鎖位置から開放位置へ駆動され、流入側流路9が開状態とされる。これと並行して、電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38への給電が行なわれ、これにより、移動体33が駆動される。この結果、ポンプ室8の容積は最大容積に拡大する。その結果、流体はポンプ室8内に吸い込まれる。ポンプ室8内に負圧が発生した状態では、パッシブバルブ11は流出側流路10を閉状態としている。
【0048】
次に、ポンプ室8からの流体の吐出が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電が停止され、流入側流路9が閉状態となる。これと並行して、電磁式アクチュエータ3の駆動コイル38への給電が行なわれる。すなわち、流体の吸引時とは逆方向の励磁電流が駆動コイル38に供給され、移動体33が駆動される。この結果、ポンプ室8の容積は最小容積に縮小する。
【0049】
ここで、ポンプ室8の容積が縮小されるとポンプ室8は高圧となるので、流出側流路10では、圧縮コイルバネ113による弁体112の付勢力と対応する所定圧力以上の力が流出方向にかかる。この結果、流体は、弁体112を流出方向に移動させて、流体出口5aから吐出される。
【0050】
その後、ポンプ装置1が待機状態となると、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置に保持され、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉状態とする。また、電磁式アクチュエータ3の移動体33は、ポンプ室8の容積を最小容積とした位置で停止する。パッシブバルブ11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって流出側流路10を閉状態とする。
【0051】
(作用効果)
以上説明したように、本形態のポンプ装置1では、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cがこの順に直線状に並んでいるため、ポンプ装置1は軸状になっている。このため、各種機器に搭載する際、スペース的な制約が少ない。また、アクティブバルブ部1aには、流体入口6aに連通する流入側流路9に対してアクティブバルブ4が設けられ、ポンプ部1cのポンプ室8は、流路構成部1bの連通用流路16を介してアクティブバルブ部1aの流入側流路9に連通し、流路構成部1bの流出側流路10はポンプ室8に連通している。このため、ポンプ装置1を軸状に構成した場合でも、アクティブバルブ4で流体の供給を制御することができる。
【0052】
また、流出側流路10においてパッシブバルブ11より下流側部分101は、アクティブバルブ部1a、流路構成部1bおよびポンプ部1cが配列されているZ軸方向と交差する方向に延在し、流体出口5aと連通している。このため、流出側流路10においてパッシブバルブ11より下流側部分101をZ軸方向に延ばす必要がない。このため、ポンプ装置1を細い軸状に構成することができる。
【0053】
また、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cはいずれも、互いに分離可能なユニットとして構成されている。このため、図6を参照して後述するように、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cの一部を取り換えて別の構造とすることや、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cの向きを変えて別の構造とすることが容易である。
【0054】
また、アクティブバルブ部1aの外面と流路構成部1bとの外面とは、アクティブバルブ部1aと流路構成部1bとの境界部分71abで連続した平面を構成しており、流路構成部1bの外面とポンプ部1cの外面とは、流路構成部1bとポンプ部1cとの境界部分71bcで連続した平面を構成している。このため、ポンプ装置1の外面に余計な突起や段差がないので、各種機器に搭載するのが容易である等の利点がある。
【0055】
(容積ポンプ1の別の形態)
図6は、本発明を適用した別の容積型ポンプ(ポンプ装置)の斜視図である。上記実施の形態では、アクティブバルブ部1aからX軸方向の他方側X2に向けて流入管6が突出し、流路構成部1bからX軸方向の一方側X1に向けて流出管5が突出していた。但し、アクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cの一部を取り換えて、あるいはアクティブバルブ部1a、流路構成部1b、およびポンプ部1cの向きを変えて、図6(a)、(b)に示す形態としてもよい。
【0056】
図6(a)に示す形態では、アクティブバルブ部1aからX軸方向の一方側X1に向けて流入管6が突出し、流路構成部1bからX軸方向の一方側X1に向けて流出管5が突出している。これに対して、図6(b)に示す形態では、アクティブバルブ部1aからZ軸方向の一方側Z1に向けて流入管6が突出し、流路構成部1bからX軸方向の一方側X1に向けて流出管5が突出している。
【符号の説明】
【0057】
1・・容積型ポンプ(ポンプ装置)
1a・・アクティブバルブ部
1b・・流路構成部
1c・・ポンプ部
3・・電磁式アクチュエータ(ポンプ用駆動機構)
4・・アクティブバルブ
8・・ポンプ室
5a・・流体出口
6a・・流体入口
9・・流入側流路
10・・流出側流路
11・・パッシブバルブ
12・・ダイヤフラム(ポンプ用弁体)
16・・連通用流路
43・・弁体(アクティブバルブ用弁体)
52・・駆動機構(アクティブバルブ用弁体駆動機構)
112・・弁体(パッシブバルブ用弁体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口に連通する流入側流路に対して、アクティブバルブ用弁体およびアクティブバルブ用弁体駆動機構を備えたアクティブバルブが設けられたアクティブバルブ部と、
前記流入側流路に連通するポンプ室を備えたポンプ部と、
前記アクティブバルブ部と前記ポンプ部とに挟まれた位置で前記アクティブバルブ部および前記ポンプ部と直線状に並ぶように設けられた流路構成部と、
を有し、
当該流路構成部は、前記流入側流路と前記ポンプ室とを連通させる連通用流路と、前記ポンプ室と流体出口とに連通する流出側流路と、当該流出側流路に配置されたパッシブバルブと、を備えていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記流出側流路において前記パッシブバルブより下流側に位置する部分は、前記アクティブバルブ部、前記流路構成部および前記ポンプ部が配列されている方向と交差する方向に延在していることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記アクティブバルブ部、前記流路構成部、および前記ポンプ部はいずれも、互いに分離可能なユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記アクティブバルブ部の外面と前記流路構成部との外面とは、前記アクティブバルブ部と前記流路構成部との境界部分で連続した平面を構成し、
前記流路構成部の外面と前記ポンプ部の外面とは、前記流路構成部と前記ポンプ部との境界部分で連続した平面を構成していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記アクティブバルブは、前記アクティブバルブ用弁体によって開閉される流体流通口、当該流体流通口が開口している弁座、および前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢手段を備え、
前記アクティブバルブ用弁体は、流体の流通方向の上流側から前記弁座に当接して前記流体流通口を閉鎖する閉鎖位置と、前記弁座から流体の流通方向の上流側に離れて前記流体流通口を開放する開放位置との間を往復移動可能であって、前記アクティブバルブが駆動されていないときには前記付勢手段の付勢力によって前記閉鎖位置にあり、前記アクティブバルブが駆動されたときに前記アクティブバルブ用弁体は前記閉鎖位置から前記開放位置に移動することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記アクティブバルブ部において、前記流入側流路は、前記流体流通口と同軸状に延在する流体流路を備え、
前記アクティブバルブ用弁体は、前記流体流路内において前記閉鎖位置と前記開放位置との間で移動可能となっていることを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記アクティブバルブ用弁体駆動機構は、筒状胴部を備えるコイルボビンと、前記筒状胴部に巻き回された駆動コイルと、前記筒状胴部の内側に配置されたマグネットと、を備え、
前記筒状胴部の内側が前記流体流路であり、前記マグネットは前記弁体に搭載されていることを特徴とする請求項6に記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15032(P2013−15032A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146452(P2011−146452)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】