説明

ポーラスコンクリートパネル

【課題】従来の防音パネルの設置が不可能な道路にも設置可能であり、かつ、設置工事の工期を短縮できてコストを削減する。
【解決手段】空隙率が24%〜30%、厚さが30mm〜50mmであり、吸音率の卓越周波数が750Hz〜1500Hzの範囲内、好ましくは1000Hz近傍となるように形成したポーラスコンクリートパネルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路騒音対策などに用いる防音用のパネルに関するものであり、特に施工の容易化とコストの削減を図ったポーラスコンクリートパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両騒音の伝播を軽減するために中央分離帯や道路の側縁に防音用のパネルを設置することが行われている。此種防音用のパネルとしては、樹脂や金属のパネルが用いられることが多いが、より騒音を低減する手段として、例えばパネルの両面に吸音材を貼り付けた防音パネル(特許文献1)や二枚のパネルで吸音材を挟んだ防音パネル(特許文献2, 3)などが提案されている。
【特許文献1】特開平10−18236号公報
【特許文献2】特開平10−121599号公報
【特許文献3】特開平10−219868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、道路の中央分離帯や道路と民有地或いは歩道との境に防音パネルを設置する場合は、一定間隔で地盤に支柱を埋立て、支柱の上部側面に防音パネルを架設する方法が一般的であるが、長手方向に直交する方向の幅が広く、中央分離帯や路側帯に十分なスペース(概ね700mm以上)がない場合は設置することができない。また、支柱の設置や防音パネルの取付けに時間と手間がかかり、ガラス繊維などの吸音材を用いた防音パネルは高価であるので施工コストが高く、交通に与える影響も多いという問題がある。
【0004】
そこで、従来の防音パネルの設置が不可能な道路にも設置可能であり、かつ、設置工事の工期を短縮できてコストを削減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ポーラスコンクリートパネルであって、該ポーラスコンクリートパネルは、空隙率が24%〜30%、厚さが30mm〜50mmであり、吸音率の卓越周波数が750Hz〜1500Hzの範囲内、好ましくは1000Hz近傍となるように形成することを特徴とするポーラスコンクリートパネルを提供する。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、上記ポーラスコンクリートパネルは、表面に酸化チタンを主成分とする光触媒層を形成した請求項1記載のポーラスコンクリートパネルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポーラスコンクリートパネルは、上述したように、空隙率が24%〜30%、厚さが30mm〜50mmで、吸音率の卓越周波数が750Hz〜1500Hzの範囲内、好ましくは1000Hz近傍となるように空隙率および厚さを設定することにより、主要帯域が1000Hz〜1250Hzである交通騒音を効果的に吸収できる。
【0008】
また、表面に酸化チタンを主成分とする光触媒層を形成することにより、ポーラスコンクリートパネルの空隙内に付着した煤煙などの汚れが自然浄化され、清掃の手間が著しく軽減される。
【0009】
かくして、本発明のポーラスコンクリートパネルで防音用のパネルを構築すれば、車両の走行騒音を効果的に吸収することができ、しかも、施工および保守の容易化とコストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るポーラスコンクリートパネルについて、好適な実施例をあげて説明する。従来の防音パネルの設置が不可能な道路にも設置可能であり、かつ、設置工事の工期を短縮できてコストを削減するという目的を、空隙率が24%〜30%、厚さが30mm〜50mmであり、吸音率の卓越周波数が750Hz〜1500Hzの範囲内、好ましくは1000Hz近傍となるように形成することにより実現した。
【実施例1】
【0011】
図1および図2は自立式吸音版1を示し、図1(a)は複数の自立式吸音版1を連結した状態を示している。自立式吸音版1は、断面形状がほぼ台形のプレキャストコンクリート製躯体2と、その上部2aの両側面2b, 2cに貼り付けたポーラスコンクリートパネル3とによって構成されている。図2に示すように、躯体2の上部2aの下は両側面方向に幅を拡大した接地ベース部2dとなっており、接地ベース部2dの接地面積を広くして安定性を高めている。なお、Pは舗装であり、接地ベース部2dの下端部は舗装P内に埋め込まれる。
【0012】
ポーラスコンクリートパネル3は、躯体2の上部2aの両側面2b, 2cに形成されている凹溝部2eに嵌め込まれており、セメントペースト又はモルタルによって両者を接着している。躯体2の長手方向の両端となる正面と背面には、その中央を上下方向にはしる縦溝2fが形成されていて、図3に示すように縦溝2f内にC型金物4がその開口面を外側に向けて埋め込まれている。5は自立式吸音版1を連結するためのH型金物であり、図4に示すように二個の自立式吸音版1の正面と背面を突き当てて、向き合った二個のC型金物4の空間部へ上方からH型金物5を挿入すれば、二個の自立式吸音版1が連結される。上記のような急速施工を可能とする継手手段を設けることにより、一般のボルトとナットによる締結構造よりも施工性がよく、自立式吸音版設置工事にかかる時間を短縮することができる。
【0013】
なお、図5に示すように、H型金物5の係合作用面5aの形状を下から上に向かって厚さが増加する楔形としておけば、H型金物5を上方から二個のC型金物4の空間部へ挿入したときにH型金物5の係合作用面5aの楔作用によって二個の自立式吸音版1がより堅固に締結される。
【0014】
交通騒音の周波数スペクトラムは、1000Hz〜1250Hzが卓越しており、400Hz〜4000Hzの音響エネルギーが全音響エネルギーの93%以上を占めていると言われている。そこで、吸音作用を担うポーラスコンクリートパネル3に関して、吸音特性の卓越周波数を750Hz〜1500Hzとするための構造条件を探ることとして、実験室で種々の空隙率と厚さのポーラスコンクリートパネルの吸音率試験を行った。
【0015】
図6は空隙率24%、図7は空隙率27%、図8は空隙率30%における吸音率グラフである。実験室における結果と実際の路上における結果は必ずしも同一とはならないが、750Hz〜1500Hzの周波数内で空隙率24%〜30%、厚さ40mm〜50mmであれば80%以上の吸音率が得られる結果となった。また、全周波数帯域における騒音低減効果も最良値で約-3db、平均して-1db〜-3dbという結果になった。
【0016】
ポーラスコンクリートパネル3の形状は、自立式吸音版1の全長に亘る一枚構成であってもよいが、例えば30mm×30mm或いは50mm×50mm等の寸法としてこの定形ポーラスコンクリートパネルを躯体へ並べて貼り付けるようにすれば、ポーラスコンクリートパネルの製造および取扱いが容易である。また、定形ポーラスコンクリートパネルを隙間なく並べる取付け方法のほかに、或る程度の間隔をあけて配列する方法でも吸音性能の大幅な劣化はみられない。図9は、その測定結果の一例を示す吸音率:周波数のグラフであり、●は定形ポーラスコンクリートパネルを隙間なく並べた場合の特性グラフ、▲は縦横に3cmの間隔をあけて碁盤目状に配置した場合の特性グラフである。
【0017】
このように、プレキャストコンクリート躯体2の側面にポーラスコンクリートパネル3を設けたハイブリッド構造とすることによって、交通騒音を効果的に吸収できるとともに、多孔質で表面積の大きいポーラスコンクリートパネル3が車両の排気ガス中の煤煙や粉塵などを捕捉する効果も期待できる。
【0018】
一方、時間の経過とともに、ポーラスコンクリートパネル3の空隙内に煤煙や粉塵などが付着して汚れが目立つようになったり吸音効果が低下したりすることが予想されるが、この問題の対策としては、ポーラスコンクリートパネル3の表面に光触媒をコーティングすることが効果的である。
【0019】
ポーラスコンクリートパネル3の表面に光触媒層を形成するには、先ずシーラーを下塗りし、次にベースコートを中塗りした後に光触媒である酸化チタンを主成分とするトップコートを吹付ければ、好適な光触媒層が形成される。ポーラスコンクリートパネル3に光触媒を吹付けることによって、周知のように光触媒に紫外線が当たると光触媒の表面に付着した汚れの有機成分が分解され、汚れの付着力が低下して降雨の際に汚れが洗い流される。これにより自立式吸音版1の初期の美観を長期間維持することができ、清掃や洗浄などのメンテナンスの手間を大幅に軽減することができる。
【0020】
なお、ポーラスコンクリートパネル3に光触媒を吹付けた場合、ポーラスコンクリートパネル3の空隙が埋まって吸音率が低下することが予想されるが、比較試験の結果吸音率の低下は殆どみられなかった。図10はその試験結果であり、●は無塗装、○は光触媒塗装したものの吸音特性であり、その差が殆どないことが示されている。
【0021】
以上、本実施例では、ポーラスコンクリートパネルをコンクリート製躯体の両側面に貼り付けた構成について説明したが、ポーラスコンクリートパネルを単体で道路やトンネルに施工して、防音パネルとして実施することも可能である。
【0022】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明がそれらの改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のポーラスコンクリートパネルを自立式吸音版に応用した状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1(a)の拡大図。
【図3】自立式吸音版の継手部分を示す平面解説図。
【図4】自立式吸音版の連結状態を示す平面解説図。
【図5】継手のH型金物を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】空隙率24%のポーラスコンクリートパネルの吸音特性グラフ。
【図7】空隙率27%のポーラスコンクリートパネルの吸音特性グラフ。
【図8】空隙率30%のポーラスコンクリートパネルの吸音特性グラフ。
【図9】ポーラスコンクリートパネルの取付けピッチの差による自立式吸音版の吸音特性の相違を示すグラフ。
【図10】無塗装自立式吸音版と光触媒を塗装した自立式吸音版の吸音特性グラフ。
【符号の説明】
【0024】
1 自立式吸音版
2 コンクリート製躯体
2a 上部
2b 側面
2c 側面
2d 接地ベース部
2e 凹溝部
2f 縦溝
3 ポーラスコンクリートパネル
4 C型金物
5 H型金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスコンクリートパネルであって、該ポーラスコンクリートパネルは、空隙率が24%〜30%、厚さが30mm〜50mmであり、吸音率の卓越周波数が750Hz〜1500Hzの範囲内、好ましくは1000Hz近傍となるように形成することを特徴とするポーラスコンクリートパネル。
【請求項2】
上記ポーラスコンクリートパネルは、表面に酸化チタンを主成分とする光触媒層を形成した請求項1記載のポーラスコンクリートパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112226(P2006−112226A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315510(P2005−315510)
【出願日】平成17年10月29日(2005.10.29)
【分割の表示】特願2003−376152(P2003−376152)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(592179067)株式会社ガイアートT・K (25)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】