説明

マイカ塗装成形体

【課題】 マイカを含む塗料の塗装が行われた成形体を観察する角度にかかわらず、マイカによる反射光により容易に認識できるようにすること。
【解決手段】 本発明に係るマイカ塗装成形体1には、表面にマイカを含む塗料2が塗装されている。塗料2の塗装が行われる表面は、きめ深さが0.5mm以上となるよう表面の粗さが規定されている。上記表面には溝3が形成され、前記塗料は溝3が形成された表面に対して塗装されるのが好ましく、溝3は、深さが5mm以上であり、溝幅が10mm以上かつ50mm以下となるように形成されるのがよい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイカ塗装成形体に関し、より詳細には、マイカ塗料が塗布される成形体の表面を所定の粗さに規定することにより、塗装されたマイカの結晶の配設方向を異なる方向にして、反射光による視認性を高めることが可能なマイカ塗装成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では夜間の視認性を高めるために、道路脇に設置されるコンクリートの塀や電柱などに対して、自動車のヘッドライトの光を反射させるための塗装を施すことが多くなっている。このようにヘッドライトの光を反射可能な塗装を施すことにより、照明灯の乏しい道路等であっても、塀や電柱などを容易に視認することが可能となる。
【0003】
このような光を反射させる塗装方法として、着色塗料やクリア塗料に対して、アルミ粉末やマイカ(雲母粉末)を混入する方法が提案されている。しかしながら、アルミ粉末は水と接触すると激しく反応して高温となり、火災の原因になる場合もあり得るため、作業性および安全性の観点からマイカを用いることが多い。
【0004】
このように、マイカを混入した塗料を製品やブロックなどに施す方法は、対象物の視認性向上という目的に限られたものではなく、光の反射を利用して表面の美観を高める等を目的とするものにおいても多く採用されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−303589
【特許文献2】特開平08−100087
【特許文献3】特開平7−316476
【特許文献4】特開2000−33334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイカは板状の結晶により構成されているため、単にマイカが含まれる塗料を用いて、コンクリートの塀や柱を塗装しても、ほとんどのマイカ粒子の結晶がコンクリート面に平行に並んでしまう傾向があった。このため、コンクリート面に対して垂直方向から塗装面を観察した場合には、光の反射によりその存在を容易に認識することができるが、コンクリート面に対してより水平な角度方向から塗装面を観察した場合には、マイカにより反射される光量が減少してしまうため、その存在を認識することが容易ではないという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みて成されたものであり、マイカを含む塗料の塗装が行われた成形体を観察する角度にかかわらず、マイカによる反射光により容易に認識することが可能なマイカ塗装成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明に係るマイカ塗装成形体は、マイカを含む塗料が表面に塗装されたマイカ塗装成形体であって、前記塗料の塗装が行われる表面は、きめ深さが0.5mm以上となるように形成されることを特徴とする。
【0009】
このように、塗料の塗装が行われる表面を、きめ深さが0.5mm以上となるように形成することにより、表面の粗い部分(凹凸部分)にマイカの結晶が入り込んで、マイカ結晶の配置方向が異なる方向になる。このため、表面に対して照射された光がマイカで反射される場合において、反射光の反射方向がそれぞれ異なる方向となるため、幅広い角度から反射光を視認することができ、視認性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、上記マイカ塗装成形体は、前記表面に溝が形成され、前記塗料が前記溝の形成された表面に対して塗装されるものであってもよい。この場合において、前記溝は、深さが5mm以上であり、溝幅が10mm以上かつ50mm以下となるように形成されるものであることが好ましい。
【0011】
このように、表面に溝が形成されている場合には、マイカ塗装成形体の表面に対して光が照射されたときに、光を受ける表面部分と陰になる溝部分とによって、反射光が縞状に視認されるようになる。このため、溝のない平らな面だけで表面が形成される場合に比べて、視認性を向上させることが可能となる。
【0012】
なお、溝の深さを5mm以上の深さとすることにより、陰影を効果的に生じさせることが可能となる。また、溝の幅を10mm〜50mmの間隔で形成することにより、効果的な陰影を発生させることが可能である。10mmよりも溝幅が狭い場合には、陰部分が見えにくくなり、50mmよりも溝幅が広い場合には、陰ができにくくなるため、10mm〜50mmの間隔で調整を行うことが好ましい。
【0013】
さらに上述したマイカ塗装成形体は、ゼロスランプコンクリートを用いて振動および加圧を加えることにより成型された建築用ブロックであってもよい。
【0014】
このように、マイカ塗装成形体を、ゼロスランプコンクリートを用いて振動および加圧を加える即時脱型製法で成型することにより、直ちに成型金型からコンクリートを脱型してマイカ塗装成形体を連続製造することが可能となる。また、コンクリートの配合と締め固めの程度(充填率等)を調整することにより、簡単に所望のコンクリートの粗さを実現することができ、また、溝の形成も成型と同時に行なうことができるため、後加工などを必要としないので、迅速かつ経済的にマイカ塗装成形体を生産することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマイカ塗装成形体は、塗料の塗装が行われる表面を、きめ深さが0.5mm以上となるように成形するため、表面の粗い部分(凹凸部分)にマイカの結晶を入り込ませることができ、マイカ結晶の配置方向を異なる方向にすることが可能となる。このため、表面に対して照射された光がマイカで反射される場合において、反射光の反射方向がそれぞれ異なる方向となり、幅広い角度から反射光を視認することができるので、視認性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係るブロックを示した斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る測定方法1を説明するための図である。
【図3】実施の形態1に係る測定方法1において測定された輝度比率と測定角度との関係を示した図である。
【図4】実施の形態1に係る測定方法2を説明するための図である。
【図5】実施の形態1に係る測定方法2において測定された輝度比率と測定角度との関係を示した図である。
【図6】実施の形態2に係るブロックを示した斜視図である。
【図7】実施の形態3に係るブロックを示した斜視図である。
【図8】実施の形態4に係るブロックを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るマイカ塗装成形体の一例として、マイカ塗料が塗装されたブロックを、図面を用いて説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係るブロック1を示している。ブロック1は、例えば、建物の外壁や塀などの外装形成品(例えば、歩道用コンクリート平板)として用いられるものであり、表面にはマイカ塗料2が塗装されている。実施の形態1では、溶剤系アクリル樹脂塗料(クリヤー)に対して2%のマイカを混入した塗料を塗布している。
【0019】
ブロック1は、略板状態を呈しており、ブロック1の表面は、きめ深さが0.5mm以上になるように形成されている。ここで、きめ深さとは表面の粗さを示すものであり、サンドパッチング方法(舗装試験法便覧(日本道路協会編集・出版)の「6−6舗装路の荒さの測定法」参照)に基づいて求められるものである。
【0020】
具体的には、既知の容積からなる細かい砂をブロック1の表面上に山状に置き、これを円形になるようにゴム板(ゴム板を木の板に貼り付けたもので柄がついている)を用いて敷き広げる。このように砂を敷き広げることにより、ブロック1の表面の微細な凹凸部分に砂を入り込ませることができる。敷き広げる際には、正確な円にはならないので、2方向で直径を計って、その平均値から面積を求める。そして、既知である砂の容積を、敷き広げた砂の面積で除算することにより、平均的な砂の厚さを求めることができ、このようにして求められる砂の深さが、きめ深さに該当する。きめ深さ(mm)は、
きめ深さ(mm)=砂の容積(cm)÷ 敷き広げた砂の面積(cm)×10
で求めることができる。実施の形態1では、飯豊硅砂6号を用い、砂の量を1.0cmとして測定を行った。
【0021】
このようにして測定されるきめ深さが0.5mm以上となるように、ブロック1の表面が形成されていれば、表面にマイカを塗装した場合であっても、ブロック表面の粗い部分(凹凸部分)にマイカの結晶が入り込んで、いろいろな向きに傾いた状態で(つまり、ブロック表面に平行な向きに結晶が並ぶことなく)塗装されることになる。このため、マイカに当たった光の反射方向がブロック表面の正面方向だけに限定されてしまうことを防止することができ、ブロック1を観察する角度にかかわらず、マイカによる反射光により容易にブロック1を認識することが可能となる。
【0022】
また、ブロック1の表面には、一定間隔を保ちつつ形成された溝3が縦横方向に設けられている。この溝3は、深さが10mm、幅が20mmになるように規定されている。
【0023】
ブロック1は、内面に溝3に対応する凸部が形成された成型金型を用いて成型されており、ブロック1の素材としてゼロスランプ(流動性ゼロ)の生コンクリートを用い、成型金型に生コンクリートを投入して振動を加えながら加圧することによりブロックの成型を行う(即時脱型製法)。即時脱型製法に関しては、例えば、特開2007−283575号公報(残存型枠の成型方法)など開示されているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
このように、即時脱型製法によってコンクリートの成形を行う方法の他に、成形金型に生コンクリートを流し込んで成形する流し込み製法も知られている。即時脱型製法であっても、流し込み製法であっても、金型(型枠)の表面の粗さを変えることによって、コンクリートの表面の粗さを任意に変えることが可能である。しかしながら、即時脱型製法では、強烈な振動を加えて瞬時にコンクリートを締め固めることができるため、直ちに脱型してブロック1の連続製造を行うことが可能となり、脱型のためのコンクリートの養生期間等を考慮する必要がなくなる。また、コンクリートの配合と締め固めの程度(充填率等)を調整することにより、簡単に所望のコンクリートの粗さを実現することができ、また、溝3を形成するための後加工などを必要としないので、迅速かつ経済的にブロック1を生産することができる。
【0025】
また、ブロック1の表面には、溝3が形成されているため、マイカの反射光に陰影を生じさせることができる。具体的には、光を反射するブロックの表面部分と陰になる溝3部分とにより、反射光が縞状に視認されることになる。このため、溝3のない平らな面だけでブロック1の表面が形成される場合に比べて、視認性を向上させることが可能となる。
【0026】
なお、実施の形態1に係るブロック1では、溝3の深さを10mmとしたが、5mm以上の深さを確保すれば陰影を効果的に生じさせることが可能である。また、実施の形態1では、溝3の幅を20mmとしたが、この溝3の幅も、20mmに限定されるものではなく、10mm〜50mmの間隔を確保することにより、効果的な陰影を発生させることが可能である。なお、10mmよりも溝幅が狭い場合には、陰部分が見えにくくなり、50mmよりも溝幅が広い場合には、陰ができにくくなるため、10mm〜50mmの間隔で調整を行うことが好ましい。
【0027】
次に、上述したようにして成形されるブロックであって、きめ深さを異なる寸法に規定した3つのブロックを用いて、ブロックに照射された照明光に対する反射光の輝度比率を、ブロックの表面に対する観察角度に応じて検出し、視認性の違いを測定した。
【0028】
[測定方法1:正面方向から光が照射されたブロックに対して観察する側の角度を変化させた場合の輝度変化測定]
測定方法1では、図2に示すように、ブロック1の真正面であって、ブロック表面から32cmだけ離れた位置にビームランプ(ビーム角30度BRF110V150W)4をセットし、ビームランプ4からブロック表面へ照射する放射輝度を479W/mに調整した。ブロック1の真正面位置(ブロック1の表面に対して直角となる位置)を90度として、ブロック1の観察角度を変えた5カ所の位置(詳細には、22度、35度、41度、63度、73度の5カ所)に輝度計5を設置し、各観察角度の輝度を測定した。そして、測定された5ヶ所の輝度を、測定角度が73度の場合に測定された輝度で除算することにより、輝度比率(%)を測定した。
【0029】
図3は、測定角度と輝度比率との対応を示した図である。測定方法1の測定では、きめ深さが0.39mmのブロックと、きめ深さが0.82mmのブロックと、きめ深さが1.27mmのブロックとを用いて測定した。
【0030】
図3に示すように、きめ深さが1.27mmと0.82mmの場合では測定角度が22度であっても、輝度比率が50%までしか低下しなかったが、きめ深さが0.39mmの場合には、29%まで低下した。ブロック1の表面をある程度粗くすると、塗料に混ぜたマイカの結晶がブロック表面の粗い部分(凹凸部分)に沿って様々な向きに並び、ブロック表面に照射された光を様々な方向へと反射することができる。このような反射光の違いによって輝度比率に違いが生じるため、結果として、視認性を確保することが可能な観察角度を広くすることが可能となる。
【0031】
一方で、きめ深さが浅く、ブロック1の表面の粗さが小さくて平坦な面となっている場合には、マイカ結晶の設置方向が一定方向を向いた状態で並ぶことになり、一定方向にしか光を反射しなくなってしまう。このため、きめ深さが深いブロックに比べて視認可能な観察角度が狭くなってしまう。
【0032】
[測定方法2:一定方向から光が照射され、同一方向から観察する者が視認している状態において、ブロックの設置角度を変化させた場合の輝度変化測定]
測定方法2では、図4に示すように、ブロック1の設置位置から430cmだけ離れた位置に車6を止めて、ヘッドライト7のハイビームを用いてブロック1を照射した。また、ブロック設置位置から200cmだけ離れた位置であって、車両の中心寄りに10度振った位置(具体的には、その延長上に運転席が存在するように位置決めすることにより、運転席からの視認性を再現することができる)に、輝度計5を設置する。このような状態において、ブロック1の設置角度(正面位置角度)を、光の進入方向を基準として15度ずつ傾動させ、5つの傾動角度(具体的には、30度、45度、60度、75度、90度の5つの傾動角度)の輝度を、輝度計5を用いて測定した。そして、各角度において測定された輝度計5の輝度を、傾動角度が90度の場合に測定された輝度で除算することにより、傾動角度毎の輝度比率を測定した。なお、測定方法2の場合においても、きめ深さが0.39mmのブロックと、きめ深さが0.82mmのブロックと、きめ深さが1.27mmのブロックとを用いて測定を行った。
【0033】
図5に示すように、きめ深さが1.27mmの場合と0.82mmの場合では、測定角度にかかわらず輝度比率がほとんど等しい値となり、差が生じなかった。一方で、きめ深さが0.39mmのブロックでは、きめ深さが1.27mm・0.82mmの場合に比べて、測定された輝度比率が60%〜70%程度まで低下している。このような測定結果から明らかなように、ブロック1の表面を一定以上の粗さとすることにより、ヘッドライト7が正面から照射された場合だけでなく、斜め方向から照射された場合であっても、ヘッドライト7の光を視認可能に反射させることができ、幅広い角度で視認性を確保することが可能となる。
【0034】
上述した実施の形態1では、ゼロスランプ(流動性ゼロ)の生コンクリートを用い、成型金型に生コンクリートを投入して振動を加えながら加圧することにより、略板状態を呈するブロック1を成型し、このブロック1の表面にマイカ塗料を塗装した場合について説明をしたが、次述する実施の形態2〜実施の形態4に示すブロックでは、コンクリートの配合、寸法および形状等をより詳細に示す。そして、このような配合等に基づいて成型されたコンクリートを備えたブロックを用いて、上述した測定方法1(正面方向から光が照射されたブロックに対して観察する側の角度を変化させた場合の輝度変化測定)の測定を行い、その測定結果を示す。
【0035】
[実施の形態2]
実施の形態2に係るブロックは、図6に示すような建築用ブロックコンクリートである。ブロック10は、幅390mm、高さ190mm、厚さ120mmで構成されており、フェイスシェル面11は平面形状となっている。このフェイスシェル面11には、溶剤系アクリル樹脂塗料(クリヤー)に2%のマイカを混入した塗料が塗装されている。実施の形態2に係るブロック10は、実施の形態1に示したブロック1のような溝3が形成されていない点で、ブロック1と相違する。
【0036】
ブロックを構成するコンクリートには、ゼロスランプコンクリートが用いられており、セメント266kg/m、水107kg/m、7号砕石596kg/m、砕砂1,347kg/mの配合で形成されている。コンクリートは、桂機械製作所製K2EX成形機を用いて振動加圧することにより成型され、蒸気養生を行った後に、室内で養生を行った。このようにして得られたコンクリートのきめ深さの測定を行ったところ、3回の測定値の平均値は1.05mmであった。
【0037】
このようにして成型されたブロック10において、測定方法1に示した測定方法を用いて、測定角度が73度の場合の輝度と、22度である場合の輝度とを測定し、73度の場合に測定される輝度に対する22度の場合に測定される輝度の比率を求めた。具体的には、
測定角度が73度の場合の輝度=4,465cd/m
測定角度が22度の場合の輝度=2,273cd/m
輝度比率=2,273÷4,465×100=51%
【0038】
このように、実施の形態2に示したブロック10では、きめ深さが1.05mmであって、0.5mm以上を確保しているため、図2に示したきめ深さ0.82mmおよび1.27mmのブロックと同様に、50%以上の輝度比率を確保することができ、視認性を高めることが可能となる。
【0039】
[実施の形態3]
実施の形態3に係るブロックは、図7に示すようなコンクリート平板である。ブロック12は、縦300mm、横300mm、厚さ60mmで構成されており、表面には、溶剤系アクリル樹脂塗料(クリヤー)に2%のマイカを混入した塗料が塗装されている。
【0040】
ブロックを構成するコンクリートには、スランプ12cmのコンクリートが用いられており、セメント484kg/m、水274kg/m、砂1,452kg/mの配合で形成されている。コンクリートは、型枠にコンクリートを流し込む流し込み製法で成型されており、型枠への流し込みの後、テーブルーバイブレーターで締め固めを行い、蒸気養生を行った。その後、脱型して、室内で乾燥を行った。このようにして得られたコンクリートのきめ深さの測定を行ったところ、3回の測定値の平均は0.35mmであった。
【0041】
このようにして成型されたブロック12において、測定方法1に示した測定方法を用いて、測定角度が73度の場合の輝度と、22度である場合の輝度とを測定し、73度の場合に測定される輝度に対する22度の場合に測定される輝度の比率を求めた。具体的には、
測定角度が73度の場合の輝度=5,256cd/m
測定角度が22度の場合の輝度=1,524cd/m
輝度比率=1,524÷5,256×100=29%
【0042】
このように、実施の形態3に示したブロック12では、きめ深さが0.35mmであって、0.5mm以下となっているため、図2に示したきめ深さ0.39mmのブロックと同様に、50%以下の輝度比率しか確保することができなかった。
【0043】
[実施の形態4]
実施の形態4に係るブロックは、図8に示すような建築用ブロックコンクリートである。ブロック13は、幅398mm、高さ190mm、厚さ140mmで構成されており、フェイスシェル面14には、深さ10mm、幅15〜40mmの複数の溝15が設けられている。このフェイスシェル面14には、溶剤系アクリル樹脂塗料(クリヤー)に2%のマイカを混入した塗料が塗装されている。実施の形態4に係るブロック13は、実施の形態1に示したブロック1と同様に溝が形成されている点で共通する。
【0044】
ブロックを構成するコンクリートには、ゼロスランプコンクリートが用いられており、セメント266kg/m、水107kg/m、7号砕石596kg/m、砕砂1,347kg/mの配合で形成されている。コンクリートは、桂機械製作所製K2EX成形機を用いて振動加圧により成型を行い、その後、蒸気養生を行ってから、室内で養生を行った。このように、実施の形態4に係るブロック13は、実施の形態2に示したブロック10と同一のコンクリート配合で同一の成型方法を用いてコンクリートの成型が行われる。
【0045】
上述のようにして得られたコンクリートのフェイスシェル面14のきめ深さの測定しようとしたが、フェイスシェル面14には溝15が設けられており、平坦面でないため、測定を行うことができなかった。
【0046】
このようにして成型されたブロック13において、測定方法1に示した測定方法を用いて、測定角度が73度の場合の輝度と、22度である場合の輝度とを測定し、73度の場合に測定される輝度に対する22度の場合に測定される輝度の比率を求めた。具体的には、
測定角度が73度の場合の輝度=3,621cd/m
測定角度が22度の場合の輝度=1,758cd/m
輝度比率=1,758÷3,621×100=49%
【0047】
このように、実施の形態4に示したブロックでは、フェイスシェル面14に溝15が設けられているため、実施の形態2に示したブロック10に比べると輝度比率が低くなっているが、それでも実施の形態3に示した輝度比率よりも高い輝度比率を確保することが可能であった。また、輝度比率の値は、実施の形態2に係るブロック10よりも低い値となってしまったが、実施の形態4に係るブロック13には溝15が形成されているため、溝部の存在によりマイカの反射光に対して溝の明暗が生じることになり、視認性の向上を図ることが可能であった。
【0048】
以上、本発明に係るマイカ塗装成形体を、マイカ塗料が塗装されたブロック1、10、13を一例として用いて説明を行ったが、本発明に係るマイカ塗装成形体は、上述した実施の形態1,2,4に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上述した実施の形態1では、マイカ塗装成形体の一例として、略板状態を呈するブロック1を用いて説明を行い、実施の形態2および4では、建築用ブロックの形状を呈するブロック10,13を示して説明を行ったが、マイカ塗装成形体の形状は、上述した実施の形態1,2,4の形状には限定されない。マイカ塗装成形体の形状は、マイカ塗装が行われる対象物の形状に合わせて自由に設定することが可能であるため、壁部に用いられる場合には、ブロック形状であることが好ましく、電柱に用いられる場合に円柱形状であることが好ましい。従って、その使用目的および使用用途に応じて、自由に形状を決定・変形することが可能である。
【0050】
また、上述した実施の形態1に示したブロック1では、溝3が縦横方向に一定間隔を保って形成されている場合について説明を行ったが、溝3は必ずしも縦横方向に形成されているものに限定されず、実施の形態4に示すように、縦方向のみに形成されているものであっても、横方向のみに形成されているものであってもよい。さらに、溝の形成間隔は、一定間隔で形成するものに限定されず、その間隔がそれぞれ異なるように形成されるものであってもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態1に示したブロック1では、溝3が形成されているものについて説明を行ったが、実施の形態2に示すように、溝が全く形成されていないものであってもよい。溝が形成されていないブロックであっても、きめ深さが0.5mm以上確保されたものであれば、マイカの配置方向が異なる方向を向くように配置することができるので、実施の形態2に示したように、幅広い角度で視認性を確保することが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1、10、13 ブロック(マイカ塗装成形体)
2 マイカ塗料(マイカを含む塗料)
3、15 溝
4 ビームランプ
5 輝度計
6 車
7 ヘッドライト
11、14 フェイスシェル面
12 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカを含む塗料が表面に塗装されたマイカ塗装成形体であって、
前記塗料の塗装が行われる表面は、きめ深さが0.5mm以上となるように形成されること
を特徴とするマイカ塗装成形体。
【請求項2】
前記表面には溝が形成され、前記塗料は前記溝が形成された表面に対して塗装されることを特徴とする請求項1に記載のマイカ塗装成形体。
【請求項3】
前記溝は、深さが5mm以上であり、溝幅が10mm以上かつ50mm以下となるように形成されることを特徴とする請求項2に記載のマイカ塗装成形体。
【請求項4】
前記マイカ塗装成形体は、ゼロスランプコンクリートを用いて振動および加圧を加えることにより成型された建築用ブロックであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のマイカ塗装成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−241032(P2010−241032A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93901(P2009−93901)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】