説明

マイクロカプセルを含有する安定な懸濁液およびそれらの調製方法

温度織物の生産に使用される安定な懸濁液。懸濁液は、好ましくは、少なくとも1種の相変化材料を含むマイクロカプセルを含む。相変化材料を含有するマイクロカプセルを用意すること、ポリマーおよびそれらの前駆体の少なくとも1種からなる群から選択される織物を生成する成分を溶解できる溶媒を用意すること、そして、この溶媒とこのマイクロカプセルとを混合してこの第1の懸濁液を生成させること、を含む安定な懸濁液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年7月4日出願のイスラエル国特許出願第176693号明細書の利益を主張し、その開示は、参照により本明細書中にその全てを取り込む。
【0002】
本発明は、一般的に温度調節織物に関する。さらに特に、本発明は、そうした織物の生産に使用される安定な懸濁液に関し、その懸濁液は、少なくとも1種の相変化材料を含むマイクロカプセルを含む。
【背景技術】
【0003】
人間の体は、冷却するための発汗プロセス、および単離された媒体としての体毛の使用によって、一定のレベルでその温度を保つ。
【0004】
しかし、自然の人間の体温調節能力には限りがあり、そして衣類によって妨げられる。
【0005】
相変化材料等の温度調節材料は、体の近くに置かれた場合に、皮膚および微気候温度を調節することを助けることができる。相が温度を所望の範囲内で変化させる相変化材料は、体温が上昇するにつれて皮膚からエネルギーを吸収し、そして体が冷めるにつれて体に熱を放出する。これは、人間の皮膚および微気候温度において、より少ない変動、より大きな居心地の良さ、より少ない発汗、およびより低い微気候の相対湿度となる。
【0006】
家が、例えば、絵の具、じゅうたん、家具仕上げ、家具ファブリックまたは家具コーティング等の相変化材料を含有する要素を備えている場合、相変化材料はまた、エネルギーを節約するものとして機能でき、この要素は、暖かい間は過剰な熱を吸収し、そして冷たい間には熱を放出する。同じような方法で、それはまた絶縁、屋根ふき材、ウォールボード、壁紙、天井材、床および床被覆材等の建築および建設材料において使用できる。さらに、相変化材料はまた、温度調節または温度緩衝が利益を有することができるヘルスケア、アパレル、電子、輸送、配送、化粧品/パーソナルケア、食品および飲料包装、電気器具、消耗品等の多数の他の市場において使用できる。
【0007】
一般的に、温度調節材料は、熱エネルギーを吸収または放出する能力を有する何らかの物質(または物質の混合物)を含むことができ、温度を安定化させる範囲においてまたは範囲内で熱流を減少させるかまたは除く。温度を安定化させる範囲は、特別な転移温度または転移温度の範囲を含むことができる。典型的には、相変化材料が、2つの状態(例えば、液体および固体状態、液体および気体状態、固体および気体状態、または2種の固体状態)の間で転移を受けるにつれて、相変化材料が適切に最終製品中に位置する場合に、相変化材料が熱を吸収または放出する時間の間、熱エネルギーの流れを妨げることができる。この作用は、典型的には一時的であり、例えば、加熱または冷却プロセスの間に、相変化材料の潜熱が吸収されまたは放出されるまで起こる。熱エネルギーは、相変化材料に蓄積または相変化材料から除去でき、そして相変化材料は、典型的には熱源または冷却源によって効率的に回復できる。
【0008】
相変化材料は、通常封入されている。カプセル化は、液体状態への相変化の後の、相変化材料の漏出に対する保護;および汚染からの相変化材料の保護、高められた耐久力;製品の感じ等、いくつかの理由から望ましい。
【0009】
いくつかの用途、例えば、衣類では、このカプセルは、マイクロメートル/ナノメートルの粒径範囲であることが好ましい。これらの粒径範囲において、相変化材料のカプセルは、外観、織地または製品の生産工程を変えることなく、製品中に取り込まれることができる。マイクロメートル/ナノメートルの粒径範囲にあるカプセルを、本明細書中においてマイクロカプセルと呼ぶ。マイクロカプセルに封入された相変化材料を、マイクロカプセル化された相変化材料(mPCM)と呼ぶ。
【0010】
マイクロカプセル化された相変化材料は、種々の方法で市販用の製品に導入できる。いくつかの工業的手順によって、バインダー、そして場合により他の成分と組み合わされたmPCMは、典型的には、市販用の製品の上に被覆される。被膜は、米国特許第5、366、801号明細書;米国特許第6、207、738号明細書;米国特許第6、217、993号明細書;米国特許第6、503、976号明細書;米国特許第6、514、362号明細書;および米国特許第6、660、667号明細書中に記載されたように、たとえば、ナイフオーバーロールコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング、スクリーン印刷、フォームコーティング、ラミネート、吸尽、スプレー、パディング(padding)、押し出し、エンボス加工またはブロック加工等の公知の方法を使用でき、それらの類似の教示は参照により本明細書中に取り込まれる。
【0011】
多くの市販用の製品は、繊維で形成されている。マイクロカプセル化された相変化材料は、最終の市販用の製品に転化する前または後で、繊維上に被覆できる。あるいは、mPCMは、それらの製造工程において、繊維中に取り込むことができる。
【0012】
通常、溶液紡糸法および溶融紡糸法の2つの方法が、合成繊維を製造するために使用される。溶液紡糸法は、一般的にアクリルを生成させ、またはセルロース繊維を再生させるために使用されるが、一方、溶融紡糸法は、一般的に、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、および他の類似のタイプ繊維を生成させるために使用される。溶液紡糸法は、乾式紡糸および湿式紡糸の2種の主な紡糸技術に分けられる。湿式紡糸法においては、出糸突起が、化学浴中に沈んでいるかまたは化学浴の非常に近くに保持されており、そして繊維が現れるにつれて、繊維は化学浴と接触し、そして溶液から沈殿し、そして固体化する。乾式紡糸法では、希釈または化学反応によってポリマーを沈殿させる代わりに、固化は、加熱または冷却できる空気または不活性ガスの流れの中で、溶媒を蒸発させることによって達成される。
【0013】
例えば、米国特許第6、855、422号明細書;米国特許第6、689、466号明細書;および米国特許第4、756、958号明細書、ならびに米国特許出願公開20050208300号明細書;米国特許出願公開20040126555号明細書;米国特許出願公開20020054964号明細書、ならびにAcrylic Fibers by R.Cox in Synthetic Fibers:Nylon、Polyester、Acrylic、Polyolefins、Woodhead Publishing ISBN 1 85573 588 1(これらに関連する教示を、参照により本明細書中に取り込む)中に記載されているように、相変化材料およびマイクロカプセル化された相変化材料を繊維中に取り込むために、幾つかの方法が開発された。これらの方法の多くは、マイクロカプセル化された相変化材料(mPCM)の分散体に関連する共通の困難に苦しむ。繊維の製造工程の間に、取り込まれたマイクロカプセルは、より大きい粒子の凝集体を生成する傾向がある。この凝集は、製造および収率の問題、ならびに美しくないmPCMを含有する繊維の生産となる場合がある。特に影響されるのは、強度、デニールの変動、濃いおよび薄いしみ等の繊維の物理的特性である。マイクロカプセルが凝集する場合、フィルターの閉塞、管壁上への堆積、圧力および流れの変動および出糸突起穴の閉塞等の生産の問題が生じる場合がある。これは、繊維のデニールにおける変化および/または生産ラインの停止をさらに生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
製造工程のいくつかにおいて、溶液中でmPCMの懸濁液が生成され、そして次にポリマーまたはポリマー前駆体(例えばモノマー)の溶液と紡糸のために、混合される。製造工程は、mPCMの懸濁液が、ポリマー(または前駆体)と混合される前に、長期間、実質的な凝集または相分離のない貯蔵を可能とするのに充分安定である方法で生成される場合には、簡素化される。さらに、mPCMは、混合後にmPCMの所望の分布を有する繊維の生産を可能にするために、混合物中において均一に分散していることが好ましい。そうした所望の安定な懸濁液、そしてさらに分散体を達成することは、例えば、溶液の高いイオン強度のせいで多くの場合難しい。多くの場合、’’クリーム化’’が観察される。この用語は、上層にマイクロカプセルがある2つの層の形成を記載するために使用される。クリーム化が配管で起こる場合、クリーム化は、取り除くのが非常に困難である配管上にスキンまたは被膜を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の一つの形態によれば、温度を調節する、ポリマーを含有する織物の生産のための安定な第1の懸濁液が提供され、この懸濁液は、溶媒および少なくとも1種の相変化材料を含有する複数のマイクロカプセルを含み、このマイクロカプセルは、このポリマーを含有する織物に取り込まれ、そしてこの安定な第1の懸濁液は、このポリマーおよびそれらの前駆体の少なくとも1種からなる群から選択される織物を生成する成分を溶解可能である点に特徴があり;そしてこの懸濁液は、少なくとも約20時間安定である。
【0016】
本発明の好ましい態様では、懸濁液が少なくとも約20時間安定(重大な凝集がないことを意味する)であるだけでなく、懸濁液中のマイクロカプセルはまた、劣化に対して安定である。そうした劣化は、液体の形態の場合には、相変化材料の好ましくない漏出となる場合がある。
【0017】
従って、好ましい態様では、懸濁液中のマイクロカプセルの少なくとも約95%が、懸濁液中において少なくとも約20時間、損なわれていないままである。特に好ましい態様によれば、懸濁液中のマイクロカプセルの少なくとも約98%が、懸濁液中において少なくとも約20時間、損なわれていないままである。最も好ましい態様では、懸濁液中のマイクロカプセルの少なくとも約98%が、懸濁液中において少なくとも約40時間、損なわれていないままである。
【0018】
本発明の他の好ましい態様では、この織物は、少なくとも1種のタイプのポリマー繊維で生成されている。
【0019】
好ましくは、該ポリマーは、アクリロニトリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマーおよびポリオレフィン系ポリマーからなる群から選択される。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい態様では、この溶媒は、水溶液である。
【0021】
好ましくは、この水溶液は、ナトリウム塩基、チオシアン酸ナトリウム、塩化亜鉛、n−メチルモルホリン酸化物、アンモニア、硫酸銅、硝酸、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)およびn−メチルピロリドン(NMP)からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分を含む。
【0022】
本発明のまた他の好ましい態様では、この第1の懸濁液は、消泡剤、流れ調整剤、湿潤剤、分散剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分をさらに含む。
【0023】
好ましくは、該水溶液は、ナトリウム塩基、チオシアン酸ナトリウム、塩化亜鉛、n−メチルモルホリン酸化物、アンモニア、硫酸銅、硝酸、アセトン、DMFおよびNMPからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分を含む。
【0024】
本発明の別の形態では、該マイクロカプセルは、シェルおよびコアを含み、そして該シェルは、アクリル酸およびそれらの誘導体、メタクリル酸およびそれらの誘導体、ホルムアルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボン酸誘導体、シリカ前駆体およびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1種の成分で形成されている。
【0025】
マイクロカプセルは、シェルおよびコアを含むことができ、このコアは、オクタデカン、15〜25個の炭素原子を有する直鎖の炭化水素、15〜25個の炭素原子を有する分枝鎖の炭化水素からなる群から選択される相変化材料を含む。
【0026】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1種の相変化材料は、約20℃〜約50℃の範囲にある融点を有する。本発明のまた別の態様によれば、少なくとも1種の相変化材料は、約80J/g〜約400J/gの範囲にある溶融エンタルピーを有する。
【0027】
本発明の好ましい態様では、このマイクロカプセルは、シェルおよびコアを含み、そしてこのシェル:コアの重量比は、約0.5:9.5〜約4:6の範囲にある。
【0028】
重量比はまた、約1:9〜約3:7の範囲にあることができる。
【0029】
マイクロカプセルは、この懸濁液の約5〜約40wt%を形成することができる。
【0030】
マイクロカプセルは、この懸濁液の約10〜約30wt%を形成することができる。
【0031】
マイクロカプセルは、種々の規則的なまたは不規則な形(例えば、球状、楕円など)および種々のサイズを有することができる。個々のマイクロカプセルは、同一または相違する形またはサイズを有することができる。本発明の態様によれば、マイクロカプセルは、約0.1〜約20μmの範囲の最大線寸法を有する。好ましくは、マイクロカプセルは、約0.3〜約2μmの範囲の最大線寸法を有する。
【0032】
本発明の別の形態では、ポリマーは、アクリロニトリル系であり、安定な懸濁液の溶媒は、水およびチオシアン酸ナトリウムを含み、チオシアン酸ナトリウムの濃度は、溶媒の約40〜約60wt%の範囲であり、そしてマイクロカプセルは、この懸濁液の約5〜約30wt%を形成する。関連した態様によれば、ポリマーは、アクリロニトリル系であり、安定な懸濁液の溶媒は、水およびチオシアン酸ナトリウムを含み、チオシアン酸ナトリウムの濃度は、溶液の約45〜約55wt%であり、そしてマイクロカプセルは、この懸濁液の約8〜約20wt%を形成し、そして懸濁液は、室温に保たれる。
【0033】
本発明の別の形態では、このポリマーは、セルロース系であり、この溶媒は、水および水酸化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムの濃度は、約1%〜約5%であり、そしてこのマイクロカプセルは、この懸濁液の約5〜約30%を形成する。
【0034】
本発明の別の形態では、ポリマーおよびそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー繊維を生成する成分と組み合わせて、上記のように規定された第1の懸濁液から生成された第2の懸濁液が提供される。
【0035】
このマイクロカプセルは、この第2の懸濁液中で均一に分散することができる。
【0036】
別の形態によれば、第2の懸濁液は、少なくとも1種の機能性化合物を取り込むマイクロカプセルを含む、この機能性は、難燃性、生物活性、抗菌活性、耐臭気、UV吸収、湿気管理ならびに水、グリース、汚れおよび/またはしみに対する耐性からなる群から選択される。
【0037】
種々の他の態様によれば、そうしたマイクロカプセルは、この組み合わせることの前に、この安定な懸濁液中に存在し、組み合わされたポリマーまたは前駆体と共に導入され、この組み合わせることまたはこれらの選択肢の任意の組み合わせの後で導入される。好ましい態様によれば、すべてのタイプのマイクロカプセルは、第2の懸濁液中で均一に分散している。
【0038】
好ましくは、安定な懸濁液が、温度を調節する、ポリマーを含有する織物の生産に使用される場合において、その形成のために、ポリマーおよび/または前駆体を溶解することができるように、溶媒が選択される。本発明の態様によれば、溶媒は、水溶液である。例えば、ポリマーがアクリロニトリル系である場合には、チオシアン酸ナトリウムの水溶液は、好適な溶液であり、一方、ポリマーがセルロース系である場合には、水酸化ナトリウムの水溶液は、好適な溶液である。本発明の態様によれば、溶媒は、室温で提供される。溶媒および複数のマイクロカプセルは、混合されて、安定な懸濁液を生成する。本発明の態様によれば、溶媒は、低せん断混合機で混合しながら、マイクロカプセルに加えられる。
【0039】
本発明の別の形態では、上記で規定したこの第1の懸濁液の製造方法が提供され、相変化材料を含有するマイクロカプセルを用意すること;このポリマーおよびそれらの前駆体の少なくとも1種からなる群から選択される織物を生成する成分を溶解できる溶媒を用意すること;およびこの溶媒とこのマイクロカプセルとを混合して、この第1の懸濁液を生成することのステップを含む。
【0040】
一態様では、この溶媒は、ほぼ室温から120℃の範囲にある温度で提供される。
【0041】
一態様では、この第1の懸濁液は、ほぼ室温から120℃の範囲にある温度で保たれる。
【0042】
一態様では、この第1の懸濁液は、低せん断混合下に保たれる。
【0043】
このマイクロカプセルは、容器中に提供でき、そしてこの溶媒は、この容器中でこのマイクロカプセルに加えられ、この第1の懸濁液を生成する。この溶媒は、水性溶媒であることができる。
【0044】
このマイクロカプセルは、流体中のマイクロカプセルの第3の懸濁液として提供されることができ、そしてこの第3の懸濁液は、水性媒体中にあることができる。
【0045】
第3の懸濁液におけるマイクロカプセルと水との重量比は、約30〜80%の範囲にあることができる。その第3の懸濁液は、任意の公知の方法、例えばマイクロカプセルと水または水溶液とを混合することによって、生成される。いくつかの場合では、懸濁液は、相変化材料を含むマイクロカプセルを製造する工程において生成される。そうした場合には、懸濁液は、そのままで、またはなんらかの改質後に、第3の懸濁液として使用される。
【0046】
本発明の一つの形態では、この第3の懸濁液の粘度は、約100〜約3000cpsの範囲にある。
【0047】
本発明のまたほかの形態では、この第3の懸濁液の粘度は、約1000〜約2000cpsの範囲にある。
【0048】
好ましくは、この第3の懸濁液は、ほぼ室温から120℃の範囲にある温度において提供される。
【0049】
本発明のこの形態の他の態様において、この方法は、消泡剤、湿潤剤、流れ調整剤、分散剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分を、この第1の懸濁液に加えるステップをさらに含む。
【0050】
本発明のまた別の好ましい態様では、ポリマーおよびそれらの前駆体からなる群から選択される織物を生成する少なくとも1種の成分を用意すること、そしてこの成分と、この第1の懸濁液とを組み合わせて、この第2の懸濁液を生成させることのステップを含む、上記で規定したこの第2の懸濁液の製造方法が提供される。
【0051】
ポリマーおよび/または前駆体は、任意の形態、例えば溶液で提供される。ポリマーおよび/または前駆体を溶解できる任意の溶媒は、そうしたポリマーおよび/または前駆体の溶液に好適である。本発明の態様によれば、その溶媒は、第1の懸濁液の生成において溶媒として使用される成分からなる。別の態様によれば、ポリマーおよび/または前駆体溶液の溶媒は、第1の懸濁液中の溶媒と、組成において類似する、例えば、両者は、ポリマーがアクリロニトリル系である場合、チオシアン酸ナトリウムの水溶液であり、そしてポリマーがセルロース系である場合、水酸化ナトリウムの水溶液である。組み合わせることは、混合等の公知の方法を使用できる。本発明の態様によれば、マイクロカプセルは、第2の懸濁液中で均一に分散している。
【0052】
本発明のこの形態において、この方法は、この第2の懸濁液の湿式紡糸または乾式紡糸をさらに含む。
【0053】
本発明はまた、この紡糸ステップの1つにより製造される場合、繊維に関する。
【0054】
本発明の好ましい態様において、このマイクロカプセルは、この繊維中で均一に分散している。
【0055】
本発明のこの形態において、この繊維は、好ましくは他の繊維と組み合わされて、織物を形成する。
【0056】
本発明の他の好ましい態様では、この方法によって生産される繊維を含む市販用の製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、例3によって生成されたマイクロカプセルの新たに生成された安定な懸濁液の粒径分布のグラフ表現であり;そして
【図2】図2は、24時間後の、例3によって生成されたマイクロカプセルの安定な懸濁液の粒径分布のグラフ表現である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書中で使用される場合、’’安定な懸濁液’’の用語は、例えば、相変化材料を含む複数のマイクロカプセルが溶媒中で懸濁され、そしてこのマイクロカプセルの大部分が、均一に分散している懸濁液をいうことができる。この用語はまた、マイクロカプセルの大部分が実質的に凝集していない懸濁液をいうことができる。この用語はまた、マイクロカプセルの大部分が溶媒の上に浮かばず、またはその底に沈まない懸濁液をいうことができる。この用語はまた、クリーム化が起こらない懸濁液をいうことができる。
【0059】
本明細書中で使用される場合、’’ポリマー前駆体’’の用語は、例えば、任意選択的に他の化合物と共に、重合によってポリマーに転化できる化合物をいう。モノマー類は、ポリマー前駆体の例である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、’’均一に分散した’’の用語は、例えば、マイクロカプセルの大部分が凝集していない状態をいう。
【0061】
本明細書中で使用される場合、’’溶解することができる溶媒’’の用語は、例えば、ポリマーまたはそれらの前駆体が、少なくとも1重量%の溶質を含有する溶液が調製できる程度に可溶性である溶媒をいう。
【0062】
本明細書中で使用される場合、’’潜熱’’の用語は、例えば、状態の変化を受ける物質によって吸収されたまたは放出されたエネルギーの量をいう。
【0063】
本明細書中で使用される場合、’’相変化材料’’の用語は、例えば、温度を安定化させる範囲においてまたは範囲内で熱の伝導を調節するために、エネルギーを吸収または放出する能力を有する材料をいう。温度を安定化させる範囲は、特異的な転移温度または転移温度の範囲を含むことができる。いくつかの例において、相変化材料は、相変化材料が熱を吸収または放出する場合、典型的には、相変化材料が2つの状態間の転移を受ける一定期間、熱の伝導を妨げることができる。この動きは、典型的には一時的であり、そして加熱または冷却工程の間に、相変化材料の潜熱が吸収されまたは放出されるまで起こるであろう。熱は、相変化材料に蓄積されまたは相変化材料から除かれることができ、そして相変化材料は、典型的には、熱源または冷却源によって効率的に回復できる。ある実施では、相変化材料は、2種または3種以上の材料の混合物であることができる。2種または3種以上の異なる材料を選択し、そして混合物を生成させることによって、温度を安定化させる範囲を所望の用途のために調整できる。生じる混合物は、以下の論文にしたがって取り込まれる場合、2種または3種以上の異なる転移温度または単一の改質された転移温度を示すことができる。
’’A Review on Phase−change Energy Storage:ApplicationMaterials and Applications’’by Farid、M.M.、et.al in Energy Conversion and Management 45、(2004)1597〜1615.
’’Review on Thermal Energy Storage with Phase−change:Materials、Thermal Transer Analysis and Applications’’by Zalba、B.、et.al in Applied Thermal Engineering l 23 (2003)、251〜283.
’’Actual Problems in Using Phase−Change Materials to Store Solar Energy’’ by Kenisarin、M.、et.al、Paper presented at the NATO Advanced Study Institute Summer School on Thermal Energy Storage for Sustainable Energy Consumption (TESSEC)、Cesme、 Izmir、Turkey、June、2005。
【0064】
本発明の種々の態様にしたがって安定化からの利益を得ることができる相変化材料は、種々の有機物質を含む。例示的な相変化材料は、例としてでかつ限定することなく、炭化水素(例えば、直鎖のアルカンまたはパラフィン系炭化水素、分枝鎖アルカン、不飽和炭化水素、ハロゲン化炭化水素、および脂環式炭化水素)、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基エステル、1−ハロゲン化物、第一級アルコール、芳香族化合物、無水物(例えば、ステアリン酸無水物)、エチレンカーボネート、グリコール、多価アルコール(例えば、2、2−ジメチル−1、3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1、3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリタール、ペンタグリセリン)、ポリマー、ポリグリコール、金属、およびそれらの混合物を含む。
【0065】
相変化材料の選択は、相変化材料の潜熱および転移温度によることができる。相変化材料の潜熱は、典型的には、その熱の伝導を低下させまたは除去するその能力と関係する。いくつかの例において、相変化材料は、少なくとも約50J/g、少なくとも約60J/g、少なくとも約70J/g、好ましくは少なくとも約80J/g、特に好ましくは少なくとも約90J/g、および最も好ましくは少なくとも約100J/g等の少なくとも約40J/gである潜熱を有することができる。従って、例えば、相変化材料は、約40J/g〜約400J/g、好ましくは約60J/g〜約400J/g、特に好ましくは約80J/g〜約400J/g、および最も好ましくは約100J/g〜約400J/gの範囲の潜熱を有することができる。相変化材料の転移温度は、典型的には相変化材料によって維持されることができる所望の温度または温度の所望の範囲と関係する。ある例において、相変化材料は、約0℃〜約100℃、約0℃〜約50℃、約10℃〜約50℃、好ましくは約15℃〜約45℃、特に好ましくは約22℃〜約40℃、および最も好ましくは22℃〜約28℃等の約−10℃〜約110℃の範囲の転移温度を有することができる。相変化材料の選択は、その反応性またはシェルを形成する材料と反応性がないこと、周囲または処理条件下における耐劣化性、その生分解性、およびその毒性等の他の検討事項によることができる。
【0066】
表1は、本発明の種々の態様にしたがって安定化させた相変化材料として使用できる例示的なパラフィン系炭化水素のリストを提供する。
【0067】
【表1】

【0068】
相変化材料は、2種または3種以上の物質(例えば、2種または3種以上の上記の例示的な相変化材料)の混合物であることができる。2種または3種以上の異なる物質(例えば、2種の異なるパラフィン系炭化水素)を選択し、そしてその混合物を生成させることによって、任意の所望の用途のために、温度を安定化させる範囲が広い範囲で調整できる。本発明のいくつかの態様により、相変化材料は、2種または3種以上の物質(例えば、2種または3種以上の上記の例示的な相変化材料)のコポリマーを含むことができる。
【0069】
相変化材料の選択は、典型的には生じる多成分の繊維の所望の転移温度または所望の用途によるであろう。例えば、室温近辺の転移温度を有する相変化材料は、生じる多成分の繊維がユーザーに快適な温度を保つために設計された衣服に取り込まれる用途に望ましいことができる。
【0070】
本発明のいくつかの態様によれば、特に有用な相変化材料は、10〜44個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素(すなわち、C10〜C44のパラフィン系炭化水素)を含む。表1は、本明細書中に記載されたシリカカプセル中で相変化材料として使用できる例示的なC13〜C28パラフィン系炭化水素のリストを提供する。パラフィン系炭化水素の炭素原子の数は、典型的にはその融点と関係する。例えば、1分子当たり28個の直鎖の炭素原子を含むn−オクタコサンは、61.4℃の融点を有する。比較すると、1分子当たり13個の直鎖の炭素原子を含むn−トリデカンは、−5.5℃の融点を有する。本発明のある態様によれば、1分子当たり18個の直鎖の炭素原子を含み、そして28.2℃の融点を有するn−オクタデカンが、衣類用途のために特に望ましい。
【0071】
ほかの有用な相変化材料は、多成分の繊維の所望の用途に好適な転移温度(例えば、衣類用途のための約22℃〜約40℃)を有するポリマー相変化材料を含む。ポリマー状の相変化材料は、1種または2種以上のタイプのモノマー単位を含む種々の鎖構造を有するポリマー(またはポリマーの混合物)を含むことができる。特に、ポリマー状の相変化材料は、直鎖ポリマー、分枝ポリマー(例えば、星型分枝ポリマー、くし型分枝ポリマー、または樹状分岐ポリマー)、またはそれらの混合物を含むことができる。ポリマー状の相変化材料は、ホモポリマー、コポリマー(例えば、ターポリマー、統計的コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期的コポリマー、ブロックコポリマー、放射(radial)コポリマー、またはグラフトコポリマー)、またはそれらの混合物を含むことができる。当業者が理解するように、ポリマーの反応性および機能性は、例えば、アミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、エポキシド、無水物、イソシアネート、シラン、ケトン、およびアルデヒド等の官能基を加えることで変更できる。また、ポリマー状の相変化材料を含むポリマーは、架橋;絡み合い;またはその強靱性または熱、湿気、または薬品に対するその耐性を高めるために水素結合を行うことができる。
【0072】
本発明のいくつかの態様によれば、ポリマー状の相変化材料は、非ポリマー状の相変化材料(例えば、パラフィン系炭化水素)と比較して、より大きな分子量、より大きい分子サイズ、またはより高い粘度を有する所望のものであることができる。このより大きい分子サイズまたはより高い粘度の結果として、ポリマー状の相変化材料は、そのシェルからより漏れにくい傾向を示すことができ、例えば、より大きい分子サイズまたはより高い粘度は、ポリマー状の相変化材料がシェルの外側を形成する鞘部材または密閉部材を通って流れることを防ぐことができる。
【0073】
例えば、ポリエチレングリコールは、本発明のいくつかの態様において、相変化材料として使用できる。ポリエチレングリコールの平均分子量は、典型的にはその融点と関係する。例えば、570〜630(例えば、Carbowax600)の平均分子量の範囲を有するポリエチレングリコールは、20℃〜25℃の融点を有するであろう。他の温度を安定化させる範囲において有用であることができるほかのポリエチレングリコールは、Carbowax400(4℃〜8℃の融点)、Carbowax1500(44℃〜48℃の融点)、およびCarbowax6000(56℃〜63℃の融点)を含む。60℃〜65℃の範囲内にある融点を有するポリエチレンオキサイドはまた、本発明のいくつかの態様において相変化材料として使用できる。さらに望ましい相変化材料は、例えば、グリコール(またはそれらの誘導体)と二酸(またはそれらの誘導体)との重縮合によって生成できる0℃〜40℃の範囲内に融点を有するポリエステルを含む。表2は、グリコールと二酸との種々の組み合わせで生成できる例示的なポリエステルの融点を説明する。
【0074】
【表2】

【0075】
本発明のいくつかの態様によれば、所望の転移温度を有するポリマー状の相変化材料は、相変化材料(例えば、上記の例示的な相変化材料)と、ポリマー(またはポリマーの混合物)とを反応させることによって生成できる。従って、例えば、n−オクタデシル酸(すなわち、ステアリン酸)は、ポリビニルアルコールと反応またはエステル化されて、ポリビニルステアレートを与えることができ、またはドデカン酸(すなわち、ラウリン酸)は、ポリビニルアルコールと反応またはエステル化されて、ポリビニルラウレートを与えることができる。相変化材料(例えば、アミン、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、硫黄等の1種または2種以上の官能基を有する相変化材料)とポリマーとの種々の組み合わせは、反応して所望の転移温度を有するポリマー状の相変化材料を与えることができる。
【0076】
相変化材料は、2種または3種以上の物質(例えば、上記の2種または3種以上の例示的な相変化材料)の混合物を含むことができる。2種または3種以上の異なる物質(例えば、2つの異なるパラフィン系炭化水素)を選択し、そしてそれらの混合物を生成させることによって、温度を安定化させる範囲は、任意の特別な用途のために広い範囲で調整できる。本発明のいくつかの態様によれば、2種または3種以上の異なる物質の混合物は、2種または3種以上のはっきりとした転移温度または単一の改変された転移温度を示すことができる。
【0077】
本発明の態様によれば、マイクロカプセルは、シェルおよびコアを含む。別の態様によれば、コアは、相変化材料を含む。シェルは、相変化材料を封入すること、含有すること、取り囲むこと、および吸収することの少なくとも1つを提供する。このシェルは、繊維の製造の間に相変化材料に一定の保護(例えば、高温またはせん断応力からの保護)を提供しながら、相変化材料の取り扱いを容易にすることができる。ホルムアルデヒド系のもの、イソシアネート、アミン、カルボン酸誘導体等の合成ポリマー、ゼラチンまたはセルロース等の天然材料およびアクリルポリマー、シリカ等のそのほかを含む種々の材料は、マイクロカプセルシェルに好適である。シェルポリマーは、熱可塑性または熱硬化性、架橋されているかまたは未架橋、軟質または硬質、柔軟なまたは剛体であることができる。本発明の態様によれば、シェルは、欧州特許第1321182号明細書および米国特許第6716526号明細書および国際公開第2004092299号パンフレットおよび国際公開第2005105291号パンフレット(その詳細は参照により、それらの全てを本開示に取り込む)中に記載された等のホルムアルデヒド系ポリマー、シリカ粒子、またはアクリル酸、メタクリル酸等のアクリルポリマー前駆体、ホルムアルデヒドおよびシリカ前駆体から生成される。
【0078】
本発明の安定な懸濁液は、温度調節織物に含まれることになるポリマーを溶解できるか、またはそうしたポリマーの前駆体を溶解できる溶媒を含む。任意のポリマーは、そうした温度調節織物中に取り込まれる場合、本発明に好適である。本発明の別の態様によれば、ポリマーは、アクリロニトリル系ポリマーおよびセルロース系ポリマーの少なくとも1種である。取り込まれるポリマーまたはそれらの前駆体を溶解できる任意の溶媒が好適である。本発明の態様によれば、溶媒は、水溶液である。本発明の別の態様によれば、水溶液は、ナトリウム塩基、チオシアン酸ナトリウム、塩化亜鉛、アセトン、DMF、NMPおよび硝酸等の少なくとも1種の溶質を含む。本発明の別の態様によれば、マイクロカプセルのない溶媒中での溶質の濃度は、約0.5%〜約90wt%の範囲内にある。本発明の別の態様によれば、マイクロカプセルを含まない溶媒中の溶質濃度は、約1%〜約70wt%の範囲内にある。
【0079】
本発明の安定な懸濁液は、この溶媒およびこの相変化材料を含むマイクロカプセルを含む。本発明の態様によれば、マイクロカプセルは、懸濁液の約5〜約50wt%を形成する。本発明の態様によれば、マイクロカプセルは、懸濁液の約10〜約30wt%を形成する。
【0080】
この溶媒およびこのマイクロカプセルを含む本発明の安定な懸濁液の特徴は、この懸濁液が少なくとも20時間の間安定であることである。本発明の態様によれば、安定な懸濁液は、少なくとも40時間安定である。本明細書中で使用される場合、’’安定な懸濁液’’の用語は、マイクロカプセルの大部分が均一に分散している懸濁液をいうことができる。本明細書中で使用される場合、’’均一に分散した’’の用語は、マイクロカプセルの大部分が凝集していない状態をいう。’’安定な懸濁液’’の用語はまた、マイクロカプセルの大部分が凝集していない懸濁液をいうことができる。この用語はまたマイクロカプセルの大部分が溶媒の上に浮いておらず、そしてその底に沈んでいない懸濁液をいうことができる。この用語はまた、クリーム化が観察されない懸濁液をいうことができる。
【0081】
本発明のまた別の態様によれば、安定な懸濁液は、消泡剤、湿潤剤、流れ調整剤、分散剤および界面活性剤から成る群から選択される添加物を含む。好適な添加物は:
a)水溶性ポリマー、水に不溶性のポリマー、クレイ、微結晶セルロースエアロゾル等の流量制御およびレオロジー的試薬;
b)アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤、ポリアクリル酸の誘導体、低または高分子量の不飽和酸性ポリカルボン酸ポリエステル、ポリ第四級アンモニウム化合物、ポリカルボン酸、長鎖ポリアミンアミドの塩、および酸性基を有するブロックコポリマーのアルキロールアンモニウム塩等の分散剤;
c)(Byk ChemieからのBYK−348、BYK−346、BYK−333等の)ポリエーテル改質ポリジメチルシロキサン等の湿潤剤、
を含む。
【0082】
一般的に、湿潤剤は、ケイ素化合物、フッ素化合物、ポリグリコール、脂肪酸、脂肪アミド、脂肪アルコール類およびそれらのエステルおよびエーテルから成る群から選択できる。好適な試薬は、種々の混合物、上記のリストからのブレンドおよびコポリマーをまた含むことができる。
【0083】
本発明の好ましい態様において、この第1の懸濁液は、いくつかの機能性面を有する少なくとも1種の化合物をさらに含み、この機能性は、例えば、難燃性、生物活性、抗菌活性、耐臭気、UV吸収、湿気管理ならびに水、グリース、汚れおよび/またはしみに対する耐性を含むことができる。本発明の態様によれば、機能性化合物および機能性は、表3に記載されているもの、および任意の類似のまたは関連した機能からなる群から選択される。
【0084】
【表3】

【0085】
本発明の1つの態様によれば、機能性化合物は、安定な懸濁液中に溶解される。別の態様によれば、機能性化合物は、シェル中に封入される。関連した態様によれば、シェルは、相変化材料のマイクロカプセルのシェルに特性が類似する。別の態様によれば、機能性化合物のマイクロカプセルのシェルは、相変化材料のマイクロカプセルのシェルと同じ材料でできている。関連した態様によれば、機能性化合物は封入されており、そしてマイクロカプセルは、本発明の安定な懸濁液中で均一に分散している。
【0086】
本発明の態様によれば、安定な懸濁液は、制御された温度に保たれる。関連した態様によれば、その温度は、約15℃〜約120℃の範囲にある。別の態様によれば、温度は、約20℃〜約50℃の温度に保たれる。別の態様によれば、安定な懸濁液は、低せん断混合下に保たれる。溶液の態様によれば、低せん断混合は、1〜100/秒、好ましくは1〜10/秒のずり速度のパドルまたはプロペラによる混合または攪拌である。
【0087】
本発明によれば、溶媒および複数のマイクロカプセルを含むこの安定な懸濁液は、温度を調節する、ポリマーを含む織物の生産に使用される。
【0088】
本発明の別の態様によれば、そのポリマーは、セルロース系である、安定な懸濁液の溶媒は、水および水酸化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムの濃度は、溶媒の約1%〜約8wt%の範囲であり、そしてマイクロカプセルは、この懸濁液の約15%〜約50wt%を形成する。関連した態様によれば、ポリマーは、セルロース系であり、安定な懸濁液の溶媒は、水および水酸化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムの濃度は、溶媒の約1.5%〜約3wt%であり、そしてマイクロカプセルは、この懸濁液の約15%〜約30wt%を形成し、そして懸濁液は、室温に保たれる。
【0089】
本発明の形態はまた、安定な懸濁液を使用する方法によって生産された織物を提供する。さらに具体的に言うと、提供された織物は、市販用の製品である。本発明の1つの態様によれば、織物または市販用の製品は、単数又は複数の繊維を含む。
【0090】
本発明の別の態様によれば、安定な懸濁液は、消泡剤、流れ調整剤、湿潤剤および分散剤および界面活性剤、例えば、上記のリストのものからなる群から選択される少なくとも1種の添加物を含む。任意選択的に、好適な添加物は、マイクロカプセルを提供するために使用される場合、第3の懸濁液中に存在する。例えば、添加物は、マイクロカプセルの製造工程で使用され、そしてそのまままたは何らかの改質の後で、懸濁液が第3の懸濁液として使用されるその生産の間、生成された懸濁液中にとどまる。別の態様によれば、添加物は、そのままでまたは任意の組み合わせ、例えば溶液で、混合前におよび/または混合後に、提供される成分、例えば第3の懸濁液または溶媒に加えられる。
【0091】
本発明のまた別の態様によれば、混合の間および/または混合後に、安定な(第1の)懸濁液は、ほぼ室温から約120℃の範囲にある温度に保たれる。別の態様によれば、混合の間および/または混合後に、安定な懸濁液は、低せん断混合下に保たれる。
【0092】
本発明の態様によれば、ポリマーを含有する温度調節織物の製造方法がまた提供され、この方法は、本明細書中の下記の難燃性、生物活性、抗菌、耐臭気およびUV吸収からなる群から選択される機能性を有する少なくとも1種の機能性化合物を用意すること、そして取り込むことを含む。本発明の1つの態様によれば、機能性化合物および機能性は、表3に記載されているものからなる群から選択される。本発明の1つの態様によれば、機能性化合物は、溶解された形態で提供される。別の態様によれば、機能性化合物は、シェル中に封入される。関連した態様によれば、シェルは、相変化材料のマイクロカプセルのシェルに特性が類似する。別の態様によれば、機能性化合物のマイクロカプセルのシェルは、相変化材料マイクロカプセルのシェルと同じ材料でできている。任意の形態の提供された機能性材料および/またはそのマイクロカプセルは、例えば安定な第1の溶液において、またはポリマーおよび/もしくは前駆体とともに、これらを組み合わせる前またはそうした組み合わせの後において、適合する。機能性化合物および/またはそのマイクロカプセルを取り込むことは、任意の公知の方法、例えば混合を使用できる。本発明の別の態様によれば、機能性化合物は封入され、そして、そのマイクロカプセルは、第2の懸濁液中で均一に分散している。本発明の態様によれば、生成された第2の懸濁液は、相変化材料と機能性化合物との両方のマイクロカプセルを含み、そして両方のマイクロカプセルは、第2の懸濁液中で均一に分散している。別の態様によれば機能性材料は、相変化材料を含むマイクロカプセル中に提供される。
【0093】
本発明の別の態様によれば、ポリマーを含有する温度調節織物の製造方法は、第2の懸濁液をそのままで、または追加の成分とともに、この織物に転化させることのステップを含む。例えば、第2の懸濁液は、表面上に公知の方法によって被覆され、例えば溶媒、沈殿の蒸発および/またはそこに含まれる成分の重合で、そこでさらに処理される。第2の懸濁液をポリマーペレットに転化させることが、また可能であり、マイクロカプセルが、均一に分散しており、ペレットが次に市販用の製品に添加される。ポリマーを含有する温度調節織物の製造方法はまた、第2の懸濁液を繊維に転化させることのステップを含むことができる。本発明の態様によれば、相変化材料を含有するマイクロカプセルは、この製造される繊維中で均一に分散している。
【0094】
多くの織物は、合成繊維でできている。通常、2つの方法、すなわち溶液紡糸法および溶融紡糸法が、合成繊維を製造するために使用される。溶液紡糸法は、一般的にアクリルを生成させ、またはセルロース繊維を再生するために使用されるが、一方、溶融紡糸法は、一般的にナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、および他の類似のタイプ繊維を生成させるために使用される。本発明の態様によれば、マイクロカプセルを含む繊維は、溶融紡糸法によって製造され、融解ポリマーおよびマイクロカプセルが用意され、紡がれ、そして固化のために冷却される。マイクロカプセルが均一に分散しているポリマーペレットは、溶融紡糸を介したそうした繊維生産に有用である。関連した態様によれば、そうした溶融紡糸に使用されるマイクロカプセルのシェルは、シリカでできている。
【0095】
本発明の態様によれば、繊維は、ポリマーおよび/またはポリマー前駆体、相変化材料マイクロカプセルおよび任意選択的にまた上記の様な少なくとも1種の試薬、界面活性剤または機能性化合物を含む紡糸に供給する溶液を含む、溶液の紡糸によって製造される。本発明の別の態様によれば、供給溶液は、上記の第2の溶液を含むことができる。本発明の態様によれば、安定な懸濁液は、上記の様に製造され、そして上記の特定の温度範囲および上記の特定の混合の下で、好適な第1の容器中に貯蔵される。生成された安定な懸濁液は、少なくとも20時間、好ましくは少なくとも40時間の繊維の生産に好適である。ポリマーおよび/または前駆体の溶液はまた、生産され、そして第2の容器中に保たれる。供給溶液は、この第1の容器から懸濁液と、この第2の容器から溶液とを混合することによって生成され、次に少なくとも1つの出糸突起を通して紡がれ、そしてさらに、例えば、任意選択的に重合、乾式紡糸または湿式紡糸を介して処理される。湿式紡糸法において、出糸突起は、化学浴中に沈められまたは化学浴の非常に近くに保たれ、そして繊維が現れるにつれて、それらは化学浴に接触し、そしてそれらは溶液から沈殿し、そして固化する。希釈または化学反応によってポリマーを沈殿させる代わりに乾式紡糸法では、固化は、溶媒を空気または不活性ガスの流れの中で蒸発させることによって達成される。さらに詳細には、Acrylic Fibers by R.Cox in Synthetic Fibers:Nylon、Polyester、Acrylic、Polyolefins、Woodhead Publishing ISBN 1 85573 488 1、および米国特許第5686034号明細書、米国特許第6258304号明細書、米国特許第6333108号明細書および米国特許第6538130号明細書、英国特許2412083号明細書、および国際公開第231236号パンフレット(その関連する教示を参照により取り込む)を参照のこと。
【0096】
本発明の態様によれば、繊維は、アクリロニトリル系である。この態様によれば、第2の容器中の溶液は、好ましくは溶媒中に約5〜約20wt%の溶質を含み。本発明の特に好ましい態様では、容器中の溶液は、溶媒中に約10〜約15wt%の溶質を含む。溶質は、乾燥基準で、好ましくは、約80〜約100wt%のアクリロニトリルモノマー;約0〜約20wt%の中性のモノマー、例えばアクリル酸メチル、ビニルアセテート、メタクリル酸メチルおよびアクリルアミドの少なくとも1種、および約0〜約2wt%の酸コモノマー、例えばスチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、2−メチル−2アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウムおよびイタコン酸でできている。
【0097】
本発明の特に好ましい態様において、溶質は、乾燥基準で、約90〜約95wt%のアクリロニトリルモノマーおよび約0〜約14wt%のこの中性モノマーでできている。
【0098】
別の態様によれば、繊維は、モダクリル繊維であり、溶質中のアクリロニトリルの比率は、より小さく、そして溶質はまた、別のコモノマー、典型的には、ハロゲン化したエチレン性不飽和分子を含む。第2の容器中の溶液の溶媒は、本発明の態様によれば、例えば、約40〜約60wt%の範囲にあるチオシアン酸ナトリウムの濃度を有するチオシアン酸ナトリウムの水溶液である。本発明の別の態様によれば、例えば、モダクリル繊維の場合、溶媒は、アセトンの溶液である。その溶液は、ゆっくりと、攪拌しながら、冷たい溶媒に加えることによって、ポリマーを溶解させ、そして次に完全に溶解するまで温度を上昇させること等の公知の方法によって調製されている。第2の容器中の溶液は、ほぼ室温で保たれる。
【0099】
本発明の態様によれば、第1の容器中で安定な懸濁液は、溶媒としてチオシアン酸ナトリウムの水溶液を含む。その溶液中のチオシアン酸ナトリウムの濃度は、約40〜約60wt%である。安定な懸濁液は、シェルおよびコアを有するマイクロカプセルを含み、シェルは、約5〜約40wt%のマイクロカプセルを形成する。シェルは、シリカおよびホルムアルデヒドポリマー等の化合物でできている。コアは、相変化材料、例えば15〜25個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を含む。典型的には、マイクロカプセルは、約2μmまでのサイズ(最大寸法)である。マイクロカプセルは、約5〜約30wt%の懸濁液を形成し、そして任意選択的にまた例えば上記のような粘度調整剤を含む。安定な懸濁液は、穏やかに攪拌しながら、水性媒体中約50%のマイクロカプセル懸濁液に溶媒を徐々に加えることによって調製される。安定な懸濁液は、穏やかな低せん断混合の下、ほぼ室温で第1の容器中に保たれる。
【0100】
本発明のまた別の態様によれば、供給溶液は、第2の容器からの溶液と、(任意選択的にろ過された)第1の容器からの懸濁液ポリマーの乾燥重量基準で、2〜50%のmPCMの濃度、さらに好ましくは5〜20%のmPCMの濃度を与えるのに好適な相対速度で、混合させることによって生成される。供給溶液は、次に乾式紡糸または(例えば、出糸突起が比較的希薄な水溶液に沈められているかまたはこの水溶液の非常に近傍に保たれる)湿式紡糸によって紡がれて、相変化材料を有するマイクロカプセルを含有するアクリル繊維を生成する。本発明の態様によれば、繊維は、約5〜約20wt%の均一に分散したマイクロカプセルを含む。それらの繊維は、次に織物、編物、および不織布、例えば約1J/g〜約50J/gのエンタルピーを有するもの等の種々の温度に適応できる市販用の製品の生産に使用される。
【0101】
本発明の別の態様によれば、繊維は、セルロース系である。その態様によれば、第2の容器中の溶液は、溶媒中の約5〜約15wt%の溶質、好ましくは約8〜約11wt%の溶質からなる。溶質の組成物は、乾燥基準で、水酸化ナトリウム水溶液の溶媒の約5〜約15%である。第2の容器中の溶液の溶媒は、本発明の態様によれば、例えば、約4〜約10wt%の範囲にある水酸化ナトリウム濃度の水酸化ナトリウムの水溶液である。その溶液は、水酸化ナトリウムを水に溶解させ、そしてセルロースを加えること等の公知の方法によって調製される。好ましくはセルロース粉末が、はり付き、そして凝集することを防ぐために、乾燥セルロースは、攪拌しながら、正確な量の水および溶解された水酸化ナトリウムに加えられる。これは、次にセルロースが溶解し、そして溶液が透明になるまで攪拌される。第2の容器中の溶液は、室温に保たれる。
【0102】
本発明の態様によれば、第1の容器中の安定な懸濁液は、溶媒として水酸化ナトリウムの水溶液を含む。その溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は、約1〜約5wt%である。本発明の態様によれば、溶媒のpHは、少なくとも10、好ましくは、少なくとも11.5である。安定な懸濁液は、シェルおよびコアを有するマイクロカプセルを含み、シェルは、マイクロカプセルの約5〜約40wt%を形成する。シェルは、シリカ、アクリル酸、その誘導体、メタクリル酸およびその誘導体等の少なくとも1種の化合物でできている。コアは、相変化材料、例えば、15〜25個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を含む。典型的には、マイクロカプセルは、約2μmまでのサイズ(最大寸法)である。マイクロカプセルは、懸濁液の約10〜約50wt%を形成し、任意選択的にまた、粘度調整剤、例えば、セルロース、セルロース誘導体、酸機能性ポリマー、ポリグリコール、ポリサッカリドおよびポリビニルアルコールを含む。安定な懸濁液は、穏やか攪拌しながら、溶媒を水性媒体中約50%のマイクロカプセル懸濁液に徐々に加えることによって調製される。安定な懸濁液は、穏やかな低せん断混合下、室温で第1の容器中に保たれる。
【0103】
本発明の態様によれば、供給溶液は、第2の容器から溶液と、(任意選択的にろ過した)第1のサンプルから懸濁液とを、セルロース上で所望の%のmPCMを与えるのに好適な相対速度で混合することによって生成される。供給溶液は、次に乾式紡糸または(例えば酸、例えば硫酸の溶液に沈められているか、またはその溶液の近傍にある出糸突起によって)湿式紡糸によって紡がれて、相変化材料を有するマイクロカプセルを含むレーヨンまたはビスコース繊維を生成する。本発明の態様によれば、繊維は、約5〜約40wt%の均一に分散したマイクロカプセルを含む。これらの繊維は、次に織物、編み物、および不織布、例えば約1J/g〜約50J/gとの間のエンタルピーのもの等の種々の温度に適応可能な市販用の製品の生産に使用される。
【0104】
以下の例において、それらの形態がさらに充分に理解され、そして評価されるように、ある好ましい態様と関連して、かつ添付の図を参照して、本発明が記載されるであろうが、これらの特定の態様は本発明を制限することを目的としない。それどころか、付属の請求項によって規定された本発明の範囲内に含まれることができるようなすべての代替、改変および均等を網羅することを目的とする。従って、好ましい態様を含む以下の例は、本発明の実施を具体的に示し、詳細は、一例としてかつ本発明の好ましい態様を具体的に説明する目的のみで示され、そして最も有用と考えら得るものを提供する原因に存在し、そして容易に調合手順、および本発明の原理および概念的な形態の記載が容易に理解されることを理解する。
【実施例】
【0105】
例1 アクリル繊維のためのmPCMの安定な懸濁液
100.0キログラムのホルムアルデヒド系シェルマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたn−炭化水素、115J/g潜熱、50%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)に、攪拌しながら、121.5キログラムの水、次に178.5キログラムのチオシアン酸ナトリウムを加えた。これは、51:49のチオシアン酸ナトリウム:水の比率を有する12.5%のマイクロカプセルを含有する安定な懸濁液を与えた。このマイクロカプセルの懸濁液は、>21時間の間、凝集に対して安定であった。
【0106】
例2−アクリル繊維のためのmPCMの安定な懸濁液
100.0キログラムのホルムアルデヒド系シェルマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたn−炭化水素、115J/g潜熱、50%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)に、攪拌しながら、121.5キログラムの水と、178.5キログラムのチオシアン酸ナトリウムとの予混合された溶液を加えた。これは、51:49のチオシアン酸ナトリウム:水の比率と12.5%マイクロカプセルを含有する安定な懸濁液を与えた。このマイクロカプセルの懸濁液は、>21時間の間、凝集に対して安定であった。
【0107】
例3−レーヨン、ビスコースまたはセルロース繊維のためのmPCMの安定な懸濁液
100.0キログラムのポリアクリルシェルマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたオクタデカン、175J/g潜熱、45%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)に、攪拌しながら、100.0キログラムの水を、次に5.2キログラムの50%NaOH/水溶液を加えた。これは、12.8のpHにある21.95%マイクロカプセルを含有する安定な懸濁液を与えた。このマイクロカプセルの懸濁液は、最初のスラリー粒径分布(図1)および24時間後の分布(図2)によって示されるように、>24時間の間、凝集に対して安定であった。理解されるように、懸濁液の最初に生成された時の分布と24時間後の分布との間に有意差はなかった。この安定な懸濁液は、優れた紡糸性能を提供し、複数日に渡ってラインが止まることなく、フィルターが目詰まりせず、または閉塞せず、そして1.7dtexのビスコース繊維を紡ぐのに使用された。
【0108】
例4−レーヨン、ビスコースまたはセルロース繊維のためのmPCMの不安定な懸濁液
100.0キログラムのポリアクリルシェルマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたオクタデカン、175J/g潜熱、45%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)に、攪拌しながら、81.8キログラムの水を、次に1.8キログラムの50%NaOH水溶液を加えた。これは、9.5のpHで25.0%マイクロカプセルを含有する不安定な懸濁液を与えた。この不安定な懸濁液は、20分後に、圧力の上昇、フィルター閉塞およびラインの停止を生じた。
【0109】
例5−リヨセル繊維のためのmPCMの安定な懸濁液
0.90gの脱イオン水と、相変化材料を含有する水で湿潤した0.20gのマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたパラフィンPCM、120J/g潜熱、50%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)とを、20mlのガラスバイアル中で組み合わせた。次に、8.00gのN−メチルモルホリン酸化物の溶媒(97%NMMO、Aldrich Chemical Co.、Milwaukee、Wis.から入手可能である)を加えて、1.1wt%のmPCMの固体を有する溶液を与えた。バイアルを、125℃のオーブン中に置き、そしてその内容物が、均質に混合し、そして溶媒が溶けるまで、周期的に混合した。この溶液は、直ちに使用でき、または貯蔵のために冷却させ/凝固させ、次に再加熱することができた。この周期は、多数回繰り返すことができた。
【0110】
例6−リヨセル繊維のためのmPCMの安定な懸濁液
0.90gの脱イオン水と、相変化材料を含有する水で湿潤した0.20gのマイクロカプセル(マイクロカプセル化されたパラフィンPCM、120J/g潜熱、50%マイクロカプセル、Ciba specialty chemical co.、Bradford、United kingdomから入手可能である)とを、20mlガラスバイアル中で組み合わせた。次に、8.00gのN−メチルモルホリン酸化物の溶媒(97%NMMO、Aldrich Chemical Co.Milwaukee、Wis.から入手可能である)と、0.90gのマイクロ結晶セルロース(Aldrich Chemical Co.、Milwaukee、Wis.から入手可能である)とを加えて、10wt%の固体を有する溶液を与えた。固体は、90/10の重量比の相変化材料を含有するセルロース/マイクロカプセルを含んでいた。バイアルを125℃オーブン中に置き、そしてその内容物が均質に混合し、そして溶解するまで、周期的に混合した。この溶液は、直ちに使用でき、または貯蔵のために冷却させ/凝固させ、次に再加熱することが可能であった。この周期は多数回繰り返すことができた。
【0111】
本発明が、先の具体的に説明された例の詳細に限定されず、そして本発明がそれらの本質的な属性から離れることなく、他の特異的形態において具体化できることは、当業者に明らかであろうし、そして、したがって本態様および例が全ての点において具体的に説明するものであり、かつ制限するものではなく、上記の記載よりむしろ請求項になされる参照が望ましく、そして請求項の意味および均等の範囲に入る全ての改変が、したがって、そこに包含されることを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を調節する、ポリマーを含有する織物の生産のための安定な第1の懸濁液、
該懸濁液は、溶媒、および少なくとも1種の相変化材料を含有する複数のマイクロカプセルを含み、
該マイクロカプセルは、該ポリマーを含有する織物中に取り込まれ、そして該安定な第1の懸濁液は:
(i)該溶媒が、該ポリマーおよびそれらの前駆体の少なくとも1種からなる群から選択される織物を生成する成分を溶解でき;そして、
(ii)該懸濁液が、少なくとも約20時間安定であること、
を特徴とする。
【請求項2】
該マイクロカプセルの少なくとも約95%が、少なくとも約20時間、該懸濁液中で損なわれていないままであることをさらに特徴とする、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項3】
該織物が、少なくとも1種のタイプのポリマーの繊維でできている、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項4】
該ポリマーが、アクリロニトリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマーおよびポリオレフィン系ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項5】
該溶媒が、水溶液である、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項6】
消泡剤、流れ調整剤、湿潤剤、分散剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分をさらに含む、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項7】
該水溶液が、ナトリウム塩基、チオシアン酸ナトリウム、塩化亜鉛、n−メチルモルホリン酸化物、アンモニア、硫酸銅、硝酸、アセトン、DMFおよびNMPからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分を含む、請求項5に記載の第1の懸濁液。
【請求項8】
該マイクロカプセルが、シェルおよびコアを含み、そして該シェルが、アクリル酸およびそれらの誘導体、メタクリル酸およびそれらの誘導体、ホルムアルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボン酸誘導体、シリカ前駆体およびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1種の成分でできている、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項9】
該マイクロカプセルが、シェルおよびコアを含み、そして該コアが、オクタデカン、15〜25個の炭素原子を有する直鎖の炭化水素、および15〜25個の炭素原子を有する分枝鎖の炭化水素からなる群から選択される相変化材料を含む、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項10】
該マイクロカプセルが、シェルおよびコアを含み、そして該シェル:コアの重量比が約0.5:9.5〜約4:6の範囲にある、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項11】
該マイクロカプセルが、該懸濁液の約5〜約40wt%を形成する、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項12】
該マイクロカプセルが、約0.1〜約20μmの範囲の最大の線寸法を有する、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項13】
機能性を有する少なくとも1種の化合物をさらに含み、該機能性が、難燃性、生物活性、抗菌活性、耐臭気、UV吸収、湿気管理ならびに水、グリース、汚れおよび/またはしみに対する耐性からなる群から選択される、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項14】
ほぼ室温から120℃の範囲にある温度で保たれる、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項15】
該ポリマーが、アクリロニトリル系であり、該溶媒が、水およびチオシアン酸ナトリウムを含み、該チオシアン酸ナトリウムの濃度が、該溶媒の約40〜約60wt%の範囲にあり、そして該マイクロカプセルが,
該懸濁液の約5〜約30wt%を形成する、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項16】
該ポリマーが、セルロース系であり、該溶媒が、水および水酸化ナトリウムを含み、該水酸化ナトリウムの濃度が、約1%〜約5%の範囲であり、そして該マイクロカプセルが、該懸濁液の約5〜約30%を形成する、請求項1に記載の第1の懸濁液。
【請求項17】
ポリマーおよびそれらの前駆体からなる群から選択される織物を生成する少なくとも1種の成分と組み合わせて、請求項1の該第1の懸濁液から生成された第2の懸濁液。
【請求項18】
該マイクロカプセルが、該懸濁液中で均一に分散している、請求項17に記載の第2の懸濁液。
【請求項19】
該第2の懸濁液が、少なくとも約20時間安定である、請求項17に記載の第2の懸濁液。
【請求項20】
請求項1に記載の該織物を含む市販用の製品。
【請求項21】
(i)相変化材料を含有するマイクロカプセルを用意すること;
(ii)該ポリマーおよびそれらの前駆体の少なくとも1種からなる群から選択される、織物を生成する成分を溶解できる溶媒を用意すること;そして
(iii)該溶媒と該マイクロカプセルとを混合して、該第1の懸濁液を生成させること、
のステップを含む、請求項1に記載の第1の懸濁液の製造方法。
【請求項22】
該マイクロカプセルが、容器中に提供され、そして該溶媒が、該容器中の該マイクロカプセルに加えられて、該第1の懸濁液を生成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該溶媒が水溶液である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
消泡剤、流れ調整剤、湿潤剤、分散剤および界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる成分を加えることのステップをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
該マイクロカプセルが、流体中のマイクロカプセルの第3の懸濁液として提供される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
流体中のマイクロカプセルの該第3の懸濁液が、容器中に用意され、そして該溶媒が、該容器中の該マイクロカプセルに加えられて、該第1の懸濁液を生成させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該流体が、水性媒体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
該第3の懸濁液の粘度が、約100〜約3000cpsの範囲内にある、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
該第3の懸濁液が、ほぼ室温から120℃の範囲の温度で提供される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
該溶媒が、ほぼ室温から120℃の範囲の温度で提供される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
該第1の懸濁液が、ほぼ室温から120℃の範囲の温度に保たれる、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
該第1の懸濁液が、低せん断混合下に保たれる、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーおよびそれらの前駆体からなる群から選択される、織物を生成する少なくとも1種の成分を用意すること、そして該成分と、該第1の懸濁液とを組み合わせて、該第2の懸濁液を生成させることのステップを含む請求項17に記載の第2の懸濁液の製造方法。
【請求項34】
該第2の懸濁液の湿式紡糸または乾式紡糸をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該懸濁液が紡がれて、繊維を生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該繊維が、他の繊維と組み合わされて、織物を形成する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法により製造された繊維。
【請求項38】
該マイクロカプセルが、該繊維中で均一に分散している、請求項35に記載の繊維。
【請求項39】
請求項35に記載の繊維を含む市販用の製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−509505(P2010−509505A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518448(P2009−518448)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/071373
【国際公開番号】WO2008/030648
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】