説明

マイクロカプセル及びその使用

本発明は、ホームケア又はパーソナルケア製品中で使用できる、水性の内部相と油性の内部相との両方を有する香料含有マイクロカプセルの製造方法、並びにこれらのマイクロカプセルの製造方法及びそれらを含む消費者製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ホームケアまたはパーソナルケア製品中で使用できる、水性の内部相と油性の内部相との両方を有する香料含有マイクロカプセルの製造方法、並びにこれらのマイクロカプセルの製造方法及びそれらを含む消費者製品に関する。
【0002】
先行技術
香料産業が直面している問題の1つは、発香性化合物によって提供される嗅覚上の利益が、その揮発性、特に"トップノート"の揮発性によって比較的速く損失することにある。この問題は一般に、その芳香を制御して放出するために、送達系、例えば、香料を含有するカプセルを使用して取り組まれている。
【0003】
複数のコアを含む幾つかのカプセルが先行技術から公知である。それにもかかわらず、これらのカプセルは本発明のものとは大きく異なっている。
【0004】
例えば、WO2004/041251号は、少なくとも1つがコアセルベート複合体を含む、3つのシェルを有するマルチコアカプセルを記載している。かかるカプセルは、水中に豊富であり且つ本発明のカプセルのポリウレア又はポリウレタン壁よりも緊密に架橋していない膜を有する。結果として、香料はこの種のカプセルによって十分に保持されていない。更に、記載されたコアセルベート化したカプセルは、機能的な香料分野で通常使用される複数種のベースにおいて十分に安定していない。
【0005】
S. Kiyoyamaら、Journal of Chemical Engineering of Japan, vol. 34 (1) (2001)、第36〜42頁は、水中油中水型エマルション系中のスチレンとジビニルベンゼンとのその場の共重合によって製造された架橋したマイクロカプセルを記載している。この種のモノマーで形成された壁を有するカプセルは、カチオン電荷を有することができず、従って、該カプセルは、本発明のカチオン性ポリウレア又はポリウレタンカプセルほど、使用される香料ベース中に分散されず、また、適用される表面上に堆積しない。
【0006】
US4,083,798号は、第1のエマルションを形成するために水相を油相中に分散させることによって製造された組成物を記載している。次に、この第1のエマルションを液滴として、水溶性タンパク質及びゲル状多糖類の存在下で、第2の水相中に分散させる。この種のカプセル壁は本発明のカプセルのポリウレア又はポリウレタン壁ほど緊密に架橋しておらず、従って香料を保持する効率が著しく低い。
【0007】
J.A. Hansonら、Nature、第455巻 (2008年)、第85-87頁は、単一成分、両親媒性ジブロックコポリペプチド界面活性剤を使用して安定化された水中油中水型エマルションを記載している。
【0008】
WO02/060573号は、外部カプセルの囲いを有する外部カプセル及びそこに配置された内部カプセルからなるカプセル中カプセル系を記載している。外部及び内部カプセルの両方が、ポリウレア又はポリウレタン壁などの多種多様なタイプの壁を有することができる。しかしながら、開示されたカプセルはカチオン性ではない。
【0009】
要約するために、ポリウレア又はポリウレタンベースであると同時にカチオン性であるマルチコアのカプセルは従来から知られていない。他の先行技術文献は、ポリウレア又はポリウレタンカプセルを記載しており、その幾つかはカチオン性であるが、本発明のカプセルと同じ有利な特性を有していない。特に、親水性及び疎水性の両方の成分を封入可能な多数のコアを有するカチオン性ポリウレア及びポリウレタンカプセルは従来から知られていない。先行技術は、マルチコアのカチオン性ポリウレア及びポリウレタンマイクロカプセル又はかかるカプセルの有利な特性を全く示唆していない。特に、カプセル壁に共有結合された永久カチオン電荷を有する、マルチコアのポリウレア又はポリウレタンのマイクロカプセルは、開示又は示唆されていない。
【0010】
本発明の課題は、親水性及び疎水性材料の両方を封入可能なカチオン性のマルチコアマイクロカプセルを提供することである。本発明のカプセルはこの課題を解決する。実際に、それらのカプセルは、緊密に架橋したポリウレア又はポリウレタン壁を有し、これは芳香成分を保持するのに非常に効率的である。それらのカプセルは更に、高い電荷密度を有する永久カチオン電荷を有し、従ってそれらが適用される表面上への堆積が向上し、且つ消費者製品ベース中に良好に分散するという利点を有する。更に、永久カチオン性電荷は化合物上に存在しており、該化合物は、マイクロカプセル壁に共有結合し、従って、それらが使用される媒体においてアニオン性化合物の存在下でさえも、該カプセル壁上で安定なままである。
【0011】
発明の要旨
本発明は、水性の内部相及び油性の内部相を有するカチオン性ポリウレア及びポリウレタンマイクロカプセルに関する。本発明はまた、これらのカプセルの製造方法、並びに芳香組成物及びそれらを含有する着香された物品に関する。
【0012】
図面の説明
図1は、本発明のマイクロカプセルの構造を概略的に示す。
図2は透過率及び蛍光画像化によって得られた本発明のマイクロカプセルの共焦点走査顕微鏡法(CLSM)画像を示す。内部の油相は薄い灰色で表されるのに対して、内部の水相は、薄い灰色領域によって囲まれた、濃い灰色で表される。
図3は、本発明のカプセルのCLSM画像を示す。非常に良好な分散が確認されている。
図4は、市販の液体洗剤ベースで使用される時の本発明のカプセルにおける香料保持の安定性を示す。
図5は、布地用柔軟剤ベースで使用される時の本発明のカプセルにおける香料保持の安定性を示す。
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明の1対象は、
a)連続的な油相中に分散された少なくとも1つの水相からなるコアであって、
i.該水相が、少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物で成形された層によって囲まれ;
ii.該連続的な油相が芳香成分又は組成物を含む;
該コアと、
b)該コアを囲み、且つ
i.永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物;及び
ii.ポリアミン又はポリオール
と少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応生成物で成形されたシェルと
を含む、マイクロカプセルである。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、水相は、少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物並びにポリアミン又はポリオールとの反応生成物で形成された層によって囲まれている。
【0015】
本発明の一実施態様において、ポリイソシアネートは、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む有機化合物だけでなく、以下に規定されるように、ポリアミン又はポリオールとも反応する。このような場合、層は少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物並びにポリアミン又はポリオールとの反応生成物で形成されている。
【0016】
図1は、内部の水相を囲む層が、少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物で形成されている時の本発明のマイクロカプセルの図式的説明である。
【0017】
水相を囲む層がポリイソシアネートと有機化合物との反応生成物並びにポリアミン又はポリオールとの反応生成物で形成される場合、マイクロカプセルの一般的な構造は同じであるが、内部の水相を囲む層はカプセルの外側壁と同じ方法で架橋している。
【0018】
水相は水及び任意に他の水混和性溶媒を、有利には親水性の活性剤と一緒に含む。かかる親水性の活性剤は、例えば、香水、着色剤、抗菌もしくは抗真菌剤又は芳香組成物において現在使用されている他の添加剤(但し、水に溶解可能であることを条件とする)である。有利にはかかる親水性の活性剤は香水である。親水性の活性剤は、有利には2を下回るlogP値によって特徴付けられている。化合物のlogP値は、例えば、EPI suite v3.10, 2000, U.S. Environmental Protection Agencyを使用して計算により容易に決定することができる。
【0019】
本発明の目的のために、「香水」とは、芳香組成物の形態での、単一の芳香成分又はこれらの成分の混合物を意味する。「芳香成分」とは、本明細書中では、表面に適用される時に快楽効果を付与するために、芳香調製物又は組成物において活性成分として使用される化合物であると理解されている。換言すれば、芳香化合物であると考えられる、かかる化合物は、香料分野の当業者によって、組成物の香気又は物品もしくは表面の香気を、積極的に又は心地良く、付与又は修正することができ、且つ単に香気を有するだけではないものとして認識されなければならない。更に、この定義は、必ずしも香気を有する必要はないが、芳香組成物、着香物品又は表面の香気を変調することができ、結果として、かかる組成物、物品又は表面の香気のユーザーによる感知を修正できる化合物を含むことも意味する。
【0020】
かかる芳香成分の特定の例は、現行の文献、例えば、Perfume and Flavour Chemicals,1969年(及び後続の版),S. Arctander著,モントクレア, ニュージャージー州(米国)、並びに香料産業に関する多くの特許及び他の文献内で見出され得る。それらの成分は消費者製品に着香する、即ち、心地よい匂いを消費者製品に付与する技術分野の当業者にはよく知られている。
【0021】
水相は、有利には、マイクロカプセルの密度を調整するために、シリカ粒子又は酸化チタンなどの親水性の無機粒子を含むこともできる。それをすることによって、マイクロカプセルの密度は、それらを組み込むことが意図される最終製品の密度に近い値になり、従って、該カプセルは、かかる液体製品中への均一な懸濁及び分散が維持される。このことは、芳香成分の比重が通常1g/mlより低いため、芳香マイクロカプセルにおいて特に有利である。
【0022】
ポリイソシアネート化合物はいずれも、有機化合物との反応及び任意にポリアミン又はポリオールとの反応に好適であるが、少なくとも2つのイソシアネート基又は少なくとも3つのイソシアネート基を含むポリイソシアネートが有利である。低揮発性のポリイソシアネート分子が、その低毒性のために有利である。特に、ポリイソシアネートは有利にはヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットからなる群から選択してよく、それらの中ではヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットが更に一層有利である。
【0023】
ポリイソシアネートと反応する有機化合物(本明細書では「有機化合物」と呼ばれる)は、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってよいが、但し、該化合物は少なくとも1つの永久第4級アンモニウム基及び少なくとも1つの第1級アミン又はヒドロキシル基を含むことを条件とする。永久第4級アンモニウム基とは、本明細書では、常に存在する、特に、pHとは無関係に存在する、第4級アンモニウム基を意味する。この定義は、酸性のpHでのみプロトン化されるアミン基を除外する。有機化合物は、従って、永久カチオン電荷を有する。
【0024】
ポリイソシアネートとの反応に好適な化合物の特定の例は、2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド(Acros Organics社製のジラール試薬T)、アミノ酸リシン及びアルギニン、四級化されたトリエタノールアミン、2−アミノエチル−トリメチルアンモニウムクロリド塩酸塩及び水酸化2−ヒドロキシエチル−トリメチルアンモニウムであり、その中でも特に2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、四級化されたトリエタノールアミン及び2−アミノエチル−トリメチルアンモニウムクロリド塩酸塩が認められている。アミノ酸リシン及びアルギニンも、それらが天然の化合物であるために特に有用である。
【0025】
本発明のマイクロカプセル中のポリイソシアネートの量は、マイクロカプセルの全質量を基準として、典型的には2〜20質量%の間で含まれるが、カチオン性有機化合物の量は、典型的には0.2〜5質量%である(これらのパーセンテージはマイクロカプセルの全質量を基準とする)。
【0026】
連続的な油相は疎水性の活性剤を含む。かかる疎水性活性剤は、例えば、香水、着色剤、抗菌もしくは抗真菌剤又は芳香組成物において現在使用されている任意の添加剤である。有利にはかかる疎水性の活性剤は香水である。疎水性の活性剤は、有利には2を上回るlogP値によって特徴付けられている。香水は上で定義される通りである。
【0027】
香水は、香料産業において現在使用されている溶剤中に溶解されてよい。該溶剤は有利にはアルコールではない。かかる溶剤の例は、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、Abalyn(登録商標)(製造元:Eastman)、安息香酸ベンジル、エチルシトレート、リモネン又は他のテルペン、又はイソパラフィンである。有利には、該溶剤は非常に疎水性であり、且つ例えば、Abalyn(登録商標)のように、高度に立体障害されている。連続相は、追加的に任意の成分として、香料分野で通常使用されている他の種類の疎水性の活性剤及び添加剤を含有してよい。
【0028】
本発明のマイクロカプセル中の、活性剤、及び有利には香水の総量は、典型的には、マイクロカプセルの全質量を基準として、25〜60質量%の間、有利には30〜60質量%の間、更に有利には40〜60質量%の間で含まれる。この量は、コアに(即ち、油相中に並びに水相中に)含有されている、全ての活性剤、及び有利には全ての香水を含む。
【0029】
このコアは、上述の通り、ポリアミン又はポリオールと、少なくとも1つのポリイソシアネートとの反応及び少なくとも1つのカチオン性有機化合物との反応によって形成された架橋したポリウレア又はポリウレタン壁に封入されている。ポリアミン又はポリオールと、ポリイソシアネート及びカチオン性有機化合物の反応によって得られたカチオン性乳化剤との界面重合、並びに油相に溶解している遊離のポリイソシアネート分子との界面重合が行われる。最初に、ポリアミン又はポリオールと乳化剤との反応が起こり、これによってコアを囲む層が形成され、従って壁の架橋が達成される。ポリアミン又はポリオールは、油相の境界近くに存在する遊離のポリイソシアネート分子とも反応する。この2重の反応は、外側にカチオン電荷を有し且つ油相を効率的に保持するのに十分に広い壁を提供する。
【0030】
ポリウレアのマイクロカプセル壁は、ポリアミンが使用される時に形成される。特に効率的なポリアミンは水溶性グアニジン塩及びグアニジンである。「水溶性グアニジン塩」とは、水中に可溶性であり且つグアニジンと酸との反応から得られる塩を意味する。かかる塩の1つの例は、炭酸グアニジンである。
【0031】
ポリオールが架橋剤として使用される場合、ポリウレタンのマイクロカプセル壁が形成される。ポリオールとして、グリセロールが有利である。
【0032】
ポリアミン又はポリオールに対して特定の割合のポリイソシアネートの使用が有利である。従って、有利には、イソシアネート基のモル毎に、1〜10モル、有利には2〜5モルのアミン又はアルコール基が存在する。従って、過剰な架橋剤が添加されている。
【0033】
ポリウレア壁又はポリウレタン壁の特定の組成は、カプセルがテキスタイル、肌又は髪上に置かれると、充分に緩慢で且つ徐々に一定の香気の放出を達成する一方、製品ベース中で芳香保持の所望の安定性を示す(例えば、消費者製品の界面活性剤による香料の排出を効率的に妨げる)ような、放出と保持との間の微妙なバランスにあるマイクロカプセルを得る上での鍵である。上述のものの中での、ポリアミン又はポリオールの選択及びポリイソシアネートの選択は、カプセルの特性及び安定性の精密な調節を可能にする。
【0034】
以下に記載したプロセスを使用するそれらの形成時に、カプセルは連続的な外部の水相に分散される。しかしながら、本発明のカプセルは、単離した形態で又は乾燥した形態で提供することもでき、その場合、外部の水相は残っていない。
【0035】
本発明のマイクロカプセルは、有利には、5〜100μmの間、有利には5〜50μmの間に含まれる平均直径によって特徴付けられている。本文脈において、「平均直径」は算術平均を意味する。この大きさのマイクロカプセルを用いて、目的とする表面、例えばテキスタイル、髪又は肌へのマイクロカプセルの最適な堆積及び/又は付着が得られる。
【0036】
これらのカプセルは、有利には40〜80mVの間、有利には60〜80mVの間に含まれるゼータ電位によっても特徴付けられる。ゼータ電位を測定するための好適な装置はZetasizer Nano ZS (Malvern Instruments)である。
【0037】
カプセル表面での永久カチオン電荷の存在のために、ゼータ電位はpHによって変化しない。更に、カチオン電荷が共有結合されているので、カチオン性化合物は、複数の消費者製品ベースで直面し得るアニオン性界面活性剤などのアニオン性化合物の存在下でさえも除去されない。ゼータ電位は従って全種類の条件下で安定のままである。
【0038】
本発明のマイクロカプセルは、以下の工程
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第4級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物とを、水中で又は親水性の活性剤の水溶液中で反応させて、かかる反応によって得られた生成物中で水相のエマルションを形成し、水相は水で又は親水性の活性剤の水溶液で形成される;
b)香料及び任意にポリアミン又はポリオールを含む油相を工程a)で得られたエマルションに添加し;且つ
c)水を工程b)で得られたエマルションに添加し、かかるポリアミン又はポリオールが工程b)で未だ添加されていない場合、任意にポリアミン又はポリオールを添加してマイクロカプセルを形成する、
を含む、方法によって製造することができる。
【0039】
工程a)において、イソシアネート基は、第1級アミン又はアルコール基と反応するが、該基は水分子とも反応し、それによってイソシアネートと反応し得るアミン基に変換される。この反応は、油相中の架橋を誘導するが、その速度は、イソシアネートと第1級アミン又はアルコールとの間の反応速度よりも遅いまま維持されている。この反応も、有機化合物が2つ以上の反応基を含有する時に起こり得る。工程a)の反応から得られる生成物は、永久カチオン電荷を有する界面活性剤の構造を有し且つ乳化剤として作用する。従って、これは本明細書では「乳化剤」と呼ばれる。
【0040】
エマルションは、上述の反応によって得られた乳化剤で形成された連続相中に分散された水相の液滴によって生じる。反応が親水性の活性剤の水溶液中で起こる時、かかる活性剤はエマルションの水相中に残存する。
【0041】
ポリイソシアネートとカチオン性有機化合物との反応は、典型的には20〜70℃の間に含まれる温度で起こる。
【0042】
工程b)では、上述のような、疎水性の活性剤を含む油相を、工程a)で得られたエマルションと混合する。新規なエマルションが形成し、その際、工程a)で形成された水相は油相中に分散する。工程a)で形成された乳化剤の層が、水相と油相との境界面で形成される。
【0043】
本発明の一実施態様において、ポリアミン又はポリオールを油相と一緒に工程b)で添加し、ポリアミン又はポリオールが水相の液滴を囲む膜に到達し、それによってこの内部膜の最適な架橋を実現する。
【0044】
工程c)での水の添加によって、水に分散された油相の液滴が形成し、これは連続相を形成する。工程b)で得られた、乳化剤によって囲まれた水相液滴は、油相に分散されたままであるので、かかる水相液滴は、新たに形成された油相液滴中に分散する。工程a)で得られた乳化剤の層が、水と油相の分散された液滴との間に新たに形成された境界面で形成される。油相と水の境界面にある乳化剤は、ポリアミン又はポリオールの作用によって架橋して外側のカプセル壁を形成する。外側壁の架橋は、ポリアミン又はポリオールを工程b)又は工程c)に添加する時に同じように達成される。
【0045】
本発明の有利な実施態様において、ポリアミン又はポリオールを工程b)では添加しないが、工程c)で添加する。
【0046】
最適な架橋を達成するために、工程a)で使用されるイソシアネート基のモル毎に、1〜10モル、有利には2〜5モルのアミン基又はアルコール基を有利には工程b)又はc)で添加する。
【0047】
ポリウレア又はポリウレタン壁の架橋は、通常、20〜85℃の範囲の温度で行われる。有利には、反応を2〜15時間、更に有利には4〜10時間維持する。ポリイソシアネートとポリオールとの間の反応は、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒の使用を含む。
【0048】
ポリウレタン壁の場合、架橋工程は、塩基性、中性又は酸性の媒体のいずれかで実施してよいのに対して、ポリウレア壁の架橋は、9を上回るpHで実施する。
【0049】
この定義及び本発明の方法で使用される各成分の濃度は、上述の通り、カプセル自体に関連する説明の一部である。
【0050】
本発明の方法は、更に、例えば、噴霧乾燥のような、当該技術分野でよく知られた方法を用いてマイクロカプセルを有する粉末の形成工程を含む。
【0051】
本発明の方法は、ポリビニルアルコールの不在下で実施されるという利点を有する。ポリビニルアルコールは、ポリウレア及びポリウレタンマイクロカプセルをもたらす多くの乳化プロセスで使用されている。それにもかかわらず、これは一部の液体洗剤配合物において強力な相分離を引き起こす。従って、該配合物中にポリビニルアルコールが存在しないという事実によって、本発明のマイクロカプセルは、液体洗剤ベース中に混合された時に相分離を引き起こさない。
【0052】
本発明のマイクロカプセルは、カプセル化香料の制御された放出のために有利に使用することができる。従って、これらのマイクロカプセルを、芳香組成物又は着香消費者製品において芳香成分として含むことが特に評価されている。
【0053】
従って、本発明の別の対象は、以下を含む芳香組成物である:
a)芳香成分として、上記で定義された本発明のマイクロカプセル;
b)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
c)任意に少なくとも1種の香料補助剤。
【0054】
「香料担体」とは、本明細書では、香料の観点から実質的に中性である、即ち、芳香成分の官能特性を著しく変更しない材料を意味する。前記担体は液体であってよい。
【0055】
液体担体としては、限定されない例として、乳化系、即ち、溶剤及び界面活性剤系、又は香料において一般的に使用される溶剤を挙げてよい。香料において一般に使用される溶剤の性質及び種類の詳細な説明は、網羅できない。しかしながら、非限定の例として、溶剤、例えば、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はクエン酸エチルを挙げることができ、それらが最も一般的に使用されている。
【0056】
一般的に言えば、「香料ベース」とは、本明細書では、本発明のカプセルと一緒に少なくとも1種の芳香共成分を含む組成物を意味する。
【0057】
「芳香共成分」は、上記で定義される通り、任意の芳香成分であってよい。
【0058】
一般的に言えば、「香料補助剤」とは、本願明細書では、付加された利点、例えば色、特定の光耐性、化学的安定性などを付与することができる成分を意味する。香料ベース中で一般的に使用される補助剤の性質及び種類の詳細な説明は網羅することができないが、かかる成分は当業者に良く知られている。
【0059】
上記で定義されたマイクロカプセル及び少なくとも1種の香料担体からなる組成物は、本発明の特定の実施態様を表す。本発明の別の実施態様は、少なくとも1種の香料ベース、及び任意に少なくとも1種の香料補助剤を更に含む、かかる芳香組成物である。
【0060】
更に、上記で定義されたマイクロカプセル又はかかるマイクロカプセルを含む芳香組成物は、有用な芳香成分であり、これは現代の全ての香料分野、例えば、微粉香料又は機能的香料の分野において有利に使用することができる。実際に、マイクロカプセル及びそれらを含有する香料は、芳香成分の更に制御された堆積及び結果として起こる放出を達成するために、微粉香料又は機能的香料において有利に使用してよい。
【0061】
本発明のマイクロカプセル及びそれらを含有する芳香組成物は、多様な種類の着香消費者製品において使用することができる。この結果は非常に驚くべきことであり、なぜなら、前記消費者製品は多量(典型的にはそれ自体の質量の10%より多く)の特定の種類の界面活性剤/張力活性剤/溶剤を含有することがあり、これらは前記カプセルの安定性及び性能を著しく損なうことが知られているからである。換言すれば、本発明のマイクロカプセルの消費者製品での使用は、先行技術のカプセルの同じ使用に対して予想外の利点を提供する。
【0062】
本発明のマイクロカプセルは、処理される表面上での香料の堆積の改善と共に、化学的に攻撃的な環境における安定性の改善を提供し、従って、特に洗剤及び布地用柔軟剤中での香料の良好な保持を提供する。カチオン性ポリウレアマイクロカプセルも消費者製品ベース中でよく分散するので、該カプセルを該ベースに添加する際に、及び充分な保管期間の間に、相分離は誘発されない。本発明のマイクロカプセルは、カプセル化香料の制御された放出を提供し、前記香料はマイクロカプセルからゆっくりと放出され、従って、香料の長い持続性及び強さを著しく改善する。
【0063】
その結果、着香物品であって、
a)芳香成分として、上記で定義されたマイクロカプセル又は上記で定義された芳香成分;及び
b)消費者製品ベース;
を含む着香物品も本発明の対象である。
【0064】
明確にするために、「消費者製品ベース」とは、本明細書では、芳香成分と適合性がある消費者製品を意味することを言及すべきである。換言すれば、消費者製品ベースは、機能的配合物、並びに消費者製品に対応する、任意の追加の有益剤を含む。本発明のマイクロカプセルは、嗅覚的に有効な量で消費者製品ベースに混合される。
【0065】
消費者製品の成分の性質及び種類は、本明細書ではより詳細な説明を保証せず、いずれにしてもそれは網羅できず、当業者はその一般的な知見に基づき、且つ前記製品の性質及び所望の効果によってそれらを選択することができる。
【0066】
適した消費者製品ベースの例として、固体又は液体の洗剤及び布地用柔軟剤、強洗浄用洗剤(heavy duty cleaner)、並びに香料産業において一般的に使用される他の製品、即ち、香水、コロン又はアフターシェーブローション、着香石鹸、シャワー又はバスソルト、ムース、クリーム、オイル又はジェル、衛生製品又はヘアケア製品、例えば、シャンプー、ボディケア製品、消臭剤又は制汗剤、空気清浄剤及びさらに化粧品が挙げられる。洗剤としては、家庭用のために又は産業用途のために意図されているかにかかわらず、ここでは例えば、様々な表面を洗い上げ、清浄化するか又は処理するための洗剤組成物又は洗浄製品などの用途を含むことが意図されており、例えば、テキスタイル、皿又は硬質表面処理用に意図されている。他の着香物品は、布地用コンディショナー、アイロン水、ペーパー、ワイプ又は漂白剤である。
【0067】
有利な着香物品は、粉末及び液体洗剤、布地用コンディショナー及びヘアケア製品、例えば、シャンプーである。
【0068】
本発明のマイクロカプセルを種々の前述の物品又は組成物中に混合することができる割合は、広範の値に及ぶ。これらの値は、それらが混合されるべき物品又は製品の性質、及び所望の嗅覚効果に依存し、またマイクロカプセルが当該技術分野で通常使用される芳香共成分、溶媒又は添加剤と混合される場合には所定の組成物中での共成分の性質にも依存する。
【0069】
例えば、上述のような芳香組成物中での本発明のカプセルの典型的な濃度は、芳香組成物の質量に対して、1質量%〜40質量%、有利には5質量%〜20質量%の間に含まれる広範囲の値で変化し得る。これらの化合物が上述の様々な消費者製品の着香において直接的に適用される場合には、これよりも低い濃度、例えば、消費者製品の全質量に対して、0.001質量%〜5質量%、更に有利には0.3質量%〜2質量%、又は更に0.5質量%〜1質量%のオーダーで使用することができる。
【0070】
本発明のマイクロカプセルを混合できる消費者製品ベースの配合物は、かかる製品に関する豊富な文献内に見出され得る。それらの配合物は、本明細書では詳細な説明が保証されず、これはいずれにしても網羅されない。かかる消費者製品を配合する当業者は、一般的な知見及び入手可能な文献に基づき、適した成分を完全に選択できる。特に、かかる配合物の例は、かかる製品に関する特許及び特許出願、例えば、WO2008/016684号(第10〜14頁)内、US2007/0202063号(段落[0044]〜[0099])内、WO2007/062833号(第26〜44頁)内、WO2007/062733号(第22〜40頁)内、WO2005/054422号(第4〜9頁)内、EP1741775号内、GB2432843号内、GB2432850号内、GB2432851号内又はGB2432852号内に見出され得る。
【0071】
本発明の別の対象は、表面上での香料の特徴的な香気の拡散効果を増強又は長引かせるための方法であって、
前記表面を
a)前記香料を含有する、上記で定義された、本発明のマイクロカプセル;
b)a)のマイクロカプセルを含む、上記で定義された、本発明の芳香組成物;又は
c)a)のマイクロカプセルを含む、上記で定義された、本発明の着香物品
を用いて、芳香成分を放出させやすい条件下で処理することを特徴とする、前記方法である。
【0072】
かかる処理のために適した表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、毛髪及び皮膚である。
【0073】
表面上への適用が意図される香料の効果を長引かせる方法も本発明に包含されており、前記方法は:
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第4級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物とを、水中で又は親水性の活性剤の水溶液中で反応させて、かかる反応によって得られた生成物中で水相のエマルションを形成し、該水相は水で又は親水性の活性剤の水溶液で形成される;
b)香料及び任意にポリアミン又はポリオールを含む油相を工程a)で得られたエマルションに添加し;
c)水を工程b)で得られたエマルションに添加し、かかるポリアミン又はポリオールが工程b)で未だ添加されていない場合、任意にポリアミン又はポリオールを添加してマイクロカプセルを形成し、且つ
d)工程c)で得られたマイクロカプセルを表面に適用する
ことを含む。
【0074】
本発明のカプセル及びそれらを製造する方法は、以下の実施例に更に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明のマイクロカプセルの構造の概略図である。
【図2】図2は透過率及び蛍光画像化によって得られた本発明のマイクロカプセルの共焦点走査顕微鏡法(CLSM)画像である。
【図3】図3は、本発明のカプセルのCLSM画像である。
【図4】図4は、液体洗剤ベースでの本発明のカプセルの香料保持の安定性を示す。
【図5】図5は、布地用柔軟剤ベースでの本発明のカプセルの香料保持の安定性を示す。
【0076】
実施例
実施例1
本発明によるマイクロカプセルの調製
カプセル化されることが意図された芳香組成物を、以下の成分を指示された量で混合することによって調製した。
【表1】

【0077】
次に本発明のカプセルを以下の方法によって調製した。
【0078】
a)1.55gの量のジラード試薬T(2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、製造元:Acros Organics)を微量のフルオレシンを含有する1.07gの水に溶解した。この溶液と、3.33gのDesmodur(登録商標)N100(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく無溶媒脂肪族ポリイソシアネート樹脂、製造元:Bayer)とを、Ultra Turraxを用いて24000rpmで2分間混合した。得られた溶液を、磁気撹拌しながら室温で2時間維持した。
【0079】
b)次いで反応混合物を、微量のナイルレッドを含有する表1に記載した30.0gの香料中に、Ultra Turraxを用いて24000rpmで3分間分散させた。
【0080】
c)次いで炭酸グアニジンの水溶液を、2.64gの炭酸グアニジン(製造元:Fluka)を6.06gの水に溶解することによって調製した。得られた溶液を工程b)で得られた反応混合物に徐々に添加した。この系を次いで500rpmで機械的に撹拌しながら70℃で3時間維持した。
【0081】
従って得られるカプセルは特徴付けられた。10μmの平均粒度を、レーザー回折計測(MasterSizer, Malvern Instruments Ltd)によって測定した。65.9+0.6mVのゼータ電位を、Zetasizer Nano ZS (Malvern Instruments Ltd)で測定した。この高い値は、マイクロカプセルの表面での高密度のカチオン電荷を示す。
【0082】
実施例2
本発明によるマイクロカプセルの調製
a)1.46gの量のジラード試薬T(2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、製造元:Acros Organics)を微量のフルオレシンを含有する2.02gの水に溶解した。この溶液と、6.75gのDesmodur(登録商標)N100(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく無溶媒脂肪族ポリイソシアネート樹脂、製造元:Bayer)とを、Ultra Turraxを用いて24000rpmで2分間混合した。得られた溶液を、磁気撹拌しながら室温で2時間維持した。
【0083】
b)次いで反応混合物を、微量のDABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、製造元:Fluka)及びナイルレッドを含有する表1に記載した30.1gの香料中に、Ultra Turraxを用いて24000rpmで5分間分散させた。
【0084】
c)この系を次いでボルテックス撹拌機を用いて400rpmで連続的に撹拌した。グリセロールの水溶液(製造元:Fluka)を次いで、2.73gの炭酸グアニジンを5.41gの水に溶解することによって調製した。得られた溶液を次いで工程b)で得られた反応混合物に2つの部分で添加した。この系を次いで500rpmで機械的に撹拌しながら70℃で21時間維持した。
【0085】
従って得られるカプセルは特徴付けられた。18μmの平均粒度を、レーザー回折計測(MasterSizer, Malvern Instruments Ltd)によって測定した。73.3±5.0mVのゼータ電位を、Zetasizer Nano ZS (Malvern Instruments)で測定した。この高い値は、マイクロカプセルの表面での高密度のカチオン基を示す。
【0086】
実施例3
本発明によるマイクロカプセルの調製
a)0.75gの量のジラード試薬T(2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、製造元:Acros Organics)を微量のフルオレシンを含有する1.07gの水に溶解した。この溶液を、3.33gのDesmodur(登録商標)N100(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく無溶媒脂肪族ポリイソシアネート樹脂、製造元:Bayer)とUltra Turraxを用いて21500rpmで2分間混合した。得られた溶液を、磁気撹拌しながら室温で2時間維持した。
【0087】
b)次いで反応混合物を、微量のナイルレッドを含有する表1に記載した15.1gの香料中に、Ultra Turraxを用いて21500rpmで2分間分散させた。
【0088】
c)次いで炭酸グアニジンの水溶液を、0.6gの炭酸グアニジン(製造元:Fluka)を2.77gの水に溶解することによって調製した。得られた溶液を工程b)で得られた反応混合物に徐々に添加した。この系を次いで500rpmで機械的に撹拌しながら70℃で3時間維持した。
【0089】
従って得られるカプセルは特徴付けられた。12μmの平均粒度を、レーザー回折計測(MasterSizer, Malvern Instruments Ltd)によって測定した。64.8±0.4mVのゼータ電位を、Zetasizer Nano ZS (Malvern Instruments)で測定した。この高い値は、マイクロカプセルの表面での高密度のカチオン基を示す。
【0090】
実施例4
本発明によるマイクロカプセルの調製
a)0.85gの量の四級化されたトリエタノールアミン(製造元:Fluka)を、3.5gのDesmodur(登録商標)N100(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく無溶媒脂肪族ポリイソシアネート樹脂、製造元:Bayer)、3.0gの表1に記載された香料、及び微量のDABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、製造元:Fluka)を有する溶液中に混合した。この混合物をUltra Turraxを用いて24000rpmで1分間分散させ、得られた溶液を、磁気撹拌しながら室温で15分間維持した。
【0091】
b)次いで反応混合物を、表1に記載した12gの香料中に、Ultra Turraxを用いて24000rpmで1分間分散させた。
【0092】
c)27gの水をゆっくりと混合物に添加し、これをUltra Turraxを用いて24000rpmで5分間分散させた。
【0093】
d)次いで炭酸グアニジンの水溶液を、1.0gの炭酸グアニジン(製造元:Fluka)を3.0gの水に溶解することによって調製した。得られた溶液を工程c)で得られた反応混合物に徐々に添加した。この系を次いで500rpmで機械的に撹拌しながら70℃で16時間維持した。
【0094】
実施例5
本発明によるマイクロカプセルの調製
a)0.43gの量の2−アミノエチル−トリメチルアンモニウムクロリド塩酸塩(製造元:Fluka)を、0.25gの水に溶解し、次いでpHを30%の水酸化ナトリウム溶液を用いて約11に調整した。得られた溶液を、1.79gのDesmodur(登録商標)N100(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく無溶媒脂肪族ポリイソシアネート樹脂、製造元:Bayer)と混合した。全混合物を室温で磁気撹拌しながら7分間維持した。
【0095】
b)次いで反応混合物を、表1に記載した7.56gの香料中に、Ultra Turraxを用いて24000rpmで1分間分散させた。次に13.18gの量の水をこの分散液に添加し、これをUltra Turraxを用いて24000rpmで5分間混合した。
【0096】
c)次いで炭酸グアニジンの水溶液を、0.68gの炭酸グアニジン(製造元:Fluka)を1.66gの水に溶解することによって調製した。得られた溶液を工程b)で得られた反応混合物に徐々に添加した。この系を次いで600rpmで機械的に撹拌しながら70℃で4時間維持した。
【0097】
従って得られるカプセルは特徴付けられた。7μmの平均粒度を、レーザー回折計測(MasterSizer, Malvern Instruments Ltd)によって測定した。46.3±0.2mVのゼータ電位を、Zetasizer Nano ZS (Malvern Instruments)で測定した。この高い値は、マイクロカプセルの表面での高密度のカチオン基を示す。
【0098】
実施例6
カプセル構造の決定
カプセルの構造を共焦点走査顕微鏡法(CLSM)によって決定した。この技術は、上記の方法の最初に、微量のナイルレッドを香料に添加し且つフルオレシンを水に添加することによって、マイクロカプセルの観察及び内部相の組成物の分析を可能にした。図2は、実施例3のカプセルのCLSM画像を示す。香料相はナイルレッドの蛍光によって薄い灰色で表され、内部の水相はフルオレシンの蛍光によって濃い灰色で表され、外部の水相は黒で表される(蛍光なし)。カプセルのマルチコア構造は、複数のカプセルにおいて、内部の水相(濃い灰色)が内部の香料(油の)相(薄い灰色)によって囲まれているので、明らかである。
【0099】
図3は、CLSM法であるが蛍光を使用しないで得られた、実施例3のカプセルの別の表現である。図3a)は、実施例1のマイクロカプセルのCLSM画像を示すが、図3b)は実施例2のマイクロカプセルを示す。再び、これらの図は、形成されたカプセルのほとんどがマルチコア構造を有することを示す。
【0100】
実施例7
本発明のマイクロカプセルを含む液体洗剤及びマイクロカプセルの安定性
実施例1のマイクロカプセルを0.75%で市販の着香されていないTide(登録商標)2X HE Free of perfume & dye(Procter and Gamble社の商標、米国)濃縮液体洗浄剤内に混合した。これらの製品を次いで38℃で3週間貯蔵した。
【0101】
放出した香気を毎週分析した。この結果を図4に示す。貯蔵の3週間後、各成分毎の放出した香気の量は、ヘキシルサリチレートを除き、20%を超えていなかった。これらのパーセンテージは、1週間後及び2週間後に測定されたものよりも僅かに高かったに過ぎない。これは、液体洗剤におけるマイクロカプセル中での香料保持の良好な安定性を示す。
【0102】
実施例8
本発明のマイクロカプセルを含む布地用柔軟剤及びマイクロカプセルの安定性
布地用柔軟剤ベースを、以下の成分を指示された量で混合することによって調製した。
【表2】

【0103】
実施例1のマイクロカプセル懸濁液を、上で調製された着香されていない柔軟剤ベース中に1.25%で混合した。これらの製品を次いで38℃で3週間貯蔵した。
【0104】
放出した香気を毎週分析した。この結果を図5に示す。貯蔵の3週間後、放出した香気の量は、ヘキシルサリチレートを除き、20%をわずかに上回ったに過ぎない。これらのパーセンテージは、1週間後及び2週間後に測定されたものよりも僅かに高かったに過ぎない。これは、布地用柔軟剤ベースにおけるマイクロカプセル中での香料保持の良好な安定性を示す。
【0105】
マイクロカプセルと布地用柔軟剤ベースとの間で分配する香料の割合は、液体洗剤で観察されるものと同等である(実施例7を参照のこと)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)連続的な油相中に分散された少なくとも1つの水相からなるコアであって、
i.前記水相が、少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物で成形された層によって囲まれ;
ii.前記連続的な油相が芳香成分又は組成物を含む;
前記コアと、
b)前記コアを囲み、且つ
i.永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物;及び
ii.ポリアミン又はポリオール
と少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応生成物で成形されたシェルと
を含む、マイクロカプセル。
【請求項2】
水相が、少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第四級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物との反応生成物並びにポリアミン又はポリオールとの反応生成物で形成された層によって囲まれる、請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
内部の水相が親水性の活性剤成分、有利には芳香成分を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
少なくとも1つの水相がシリカ粒子などの親水性の無機粒子を更に含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
永久第4級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む有機化合物が、2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、リシン、アルギニン、四級化されたトリエタノールアミン、2−アミノエチル−トリメチルアンモニウムクロリド塩酸塩及び水酸化2−ヒドロキシエチル−トリメチルアンモニウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
永久第4級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む有機化合物が、2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタンアンモニウムクロリド、四級化されたトリエタノールアミン及び2−アミノエチル−トリメチルアンモニウムクロリド塩酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
ポリアミンがグアニジン又は水溶性グアニジン塩、有利には炭酸グアニジンであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
ポリオールがグリセロールであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
ポリビニルアルコールがないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
40〜80mVの間に含まれるゼータ電位を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
香料の含有率が、マイクロカプセルの総質量に対して、25〜60質量%の間に含まれることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
以下の工程
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと、永久第4級アンモニウム基及び第1級アミン又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の有機化合物とを、水中で又は親水性の活性剤の水溶液中で反応させて、かかる反応によって得られた生成物中で水相のエマルションを形成し、該水相は水で又は親水性の活性剤の水溶液で形成される;
b)香料及び任意にポリアミン又はポリオールを含む油相を工程a)で得られたエマルションに添加し;且つ
c)水を工程b)で得られたエマルションに添加し、かかるポリアミン又はポリオールが工程b)で未だ添加されていない場合、任意にポリアミン又はポリオールを添加してマイクロカプセルを形成する、
を含むことを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法。
【請求項13】
a)芳香成分として、請求項1から11までのいずれか1項に規定されたマイクロカプセル;
b)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
c)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含むことを特徴とする、芳香組成物。
【請求項14】
a)芳香成分として、請求項1から11までのいずれか1項に規定されたマイクロカプセル又は請求項13記載の芳香組成物;及び
b)消費者製品ベース
を含むことを特徴とする、消費者物品。
【請求項15】
表面上での香料の特徴的な香気の拡散効果を増強又は長引かせるための方法において、
前記表面を
a)前記香料を含有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載のマイクロカプセル;
b)a)のマイクロカプセルを含む、請求項13記載の芳香組成物;又は
c)a)のマイクロカプセルを含む、請求項14記載の着香物品
を用いて、芳香成分を放出させ易い条件下で処理することを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a)】
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【図3b)】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512933(P2012−512933A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541700(P2011−541700)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055811
【国際公開番号】WO2010/070602
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】