説明

マイクロカプセル型接着剤組成物

【課題】保存性に優れ、螺着時に塗布加工する際に液垂れすることなく、かつ乾燥時の塗膜ムラの起きないマイクロカプセル接着剤組成物、該接着剤組成物で形成したゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】芯材としてエポキシ樹脂を、壁材としてアルデヒド系樹脂、又は尿素樹脂を含むマイクロカプセル(A);乳化能を有するバインダー樹脂を含み、pH6〜13であるエマルジョン(B);水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C);及びアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)を含む、マイクロカプセル型接着剤組成物、及び該マイクロカプセル型接着剤組成物を螺着部材の表面に塗布し、かつ乾燥させることによりプレコート接着剤層を形成する、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、ボルト、ナット等の螺着部の接合面に予め塗布することにより、ゆるみ止め効果や密着性を付与することができる(以下ゆるみ止めと称する)マイクロカプセル型接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ、ボルト、ナット等の螺着部材の螺合面(ねじ山)に予め塗布して使用するゆるみ止め用接着剤は、従来から様々なタイプが知られている(特許文献1〜7)。これらのゆるみ止め用接着剤の代表例として、2液硬化性エポキシ樹脂の一方の成分(エポキシ樹脂主剤又はアミンなどのエポキシ樹脂硬化剤)を内包したマイクロカプセルと、もう一方の成分及びバインダー成分とを、有機溶剤、又は水等の溶媒に溶解もしくは分散させた液状マイクロカプセル型接着剤が知られている。これらの液状接着剤は、一般に螺着部材の螺合面(ねじ山)に塗布した後、乾燥固化させて見かけ固体の被膜を形成させ、接着剤層付きの螺着部材の形態とすることで、保管時の安定性や取扱い容易性といった利便性が得られる。
【0003】
しかしながら、これら従来のマイクロカプセル型接着剤は、螺着部材の螺合面(ねじ山)への付着力が不十分であったり、螺合面に塗布された接着剤が経時的劣化にして締め込みトルクが上昇する等の低保存性に起因する問題を生じ、さらに有機溶剤を使用する接着剤では環境汚染を招くおそれがある等の欠点を有していた。例えば、バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用した接着剤で螺着部材に接着剤層を形成すると、水分等で膨潤するためその性能低下を防ぐことができないという欠点があった。
【0004】
その他にも、バインダー樹脂としてポリアセタール樹脂を用いた接着剤で接着剤層を形成すると上記のような問題点は解決されるが、経時的劣化により締め付け抵抗が上昇する傾向があり、ねじの組み付けが困難になる等の問題が発生する場合がある。さらに、バインダー樹脂としてポリビニルアルコールやポリアセタール樹脂を用いた場合は、これらバインダー樹脂は気体透過性が低いために、螺着部に接着剤を塗布した後の乾燥過程で、表面だけが乾燥して薄膜を形成し、内部に溶媒が残ることにより塗膜のムラが生じて外観を損ない易いといった問題があった。
【特許文献1】特公昭45−11051号公報
【特許文献2】特公昭52−46399号公報
【特許文献3】特開平2−308876号公報
【特許文献4】特開昭53−11883号公報
【特許文献5】特開平7−331187号公報
【特許文献6】特開平10−130587公報号
【特許文献7】特開2003−194032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題点を解決し、接着剤組成物としての保存性に優れ、螺着時に塗布加工する際に液垂れすることなく、かつ乾燥時の塗膜ムラが起きない接着剤組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、塗布加工後の乾燥塗膜が、金属面に密着し、経時的変化による締め込みトルクの上昇等が少ないエポキシ樹脂を内包するマイクロカプセル型で、かつ水性のゆるみ止め接着剤組成物を提供することを目的とする。
さらに本発明は、前記接着剤組成物で形成したゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意検討した結果、本発明者らは、所定のマイクロカプセル、pH6〜13であるバインダー樹脂エマルジョン、アミン系硬化剤、及び加水分解中和物を組み合わせることにより前記課題を解決できるという知見を得た。
したがって本発明は、芯材としてエポキシ樹脂を、壁材としてアルデヒド系樹脂、又は尿素樹脂を含むマイクロカプセル(A);乳化能を有するバインダー樹脂を含み、pH6〜13であるエマルジョン(B);水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C);及びアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)を含む、マイクロカプセル型接着剤組成物を提供する。
さらに本発明は、該マイクロカプセル型接着剤組成物を、螺着部材の表面に塗布し、かつ乾燥させることによりプレコート接着剤層を形成することを特徴とする、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法を提供する。
さらに本発明は、該マイクロカプセル型接着剤組成物を、螺着部材の表面に塗布し、かつ乾燥させることにより形成したプレコート接着剤層を有する、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマイクロカプセル型接着剤は、塗布前の液状組成物の状態においてカプセルの膨潤や該組成物自体の接着剤成分の硬化といった変質が少なく、優れた保存安定性を有する。また、螺着部に該接着剤組成物を塗布、加工するときに液垂れが少なく、また、乾燥時に塗膜のムラの発生を抑制するという効果がある。さらに、pH6〜13のエマルジョンをバインダーとして用いることで塗布時の安定性や被着体の腐食防止という優れた効果が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を構成する各成分について以下説明する。
本発明におけるマイクロカプセル(A)の芯材を構成するエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を持つ非水溶性、又は難溶性のエポキシ樹脂を用いる。この非水溶性、又は難溶性は、例えば、該エポキシ樹脂を水中に添加し攪拌したときに白濁することで確認できる。このようなエポキシ樹脂の具体例を挙げると、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるフェノールノボラック樹脂などがある。
本発明におけるマイクロカプセル(A)の壁材としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ゼラチン等がある。
【0009】
該マイクロカプセル(A)は、界面重合法、in−situ法、スプレードライ法、コアセルベーション法等の公知の技術を用いて調製することができる。本発明のマイクロカプセルの製造方法としては、カプセル壁膜の強度、及び緻密さを得るため、特にin−situ法が好ましい。該in−situ法の製造方法は、水中でエポキシ樹脂を分散させ、粒径を調節した後、その水分散液中に尿素等と、ホルマリン又は壁膜になり得るプレポリマーを添加し、pHを酸性条件にした後、加熱攪拌することで重合反応させてカプセル壁膜を形成するものである。
【0010】
本発明におけるエマルジョン(B)に用いるバインダー樹脂は、乾燥後被膜を形成し、マイクロカプセル(A)を螺着部に固定するバインダーであれば、特に種類は問わない。該バインダー樹脂の具体例を挙げると、金属に対して密着性がよいアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂などがある。該バインダー樹脂の具体的な商品の例を挙げると、ボンコートDC−118(アクリル系;pH=8大日本インキ化学工業製)、ラックスターDA−401(ブタジエン系;pH=8大日本インキ化学工業製)、ボンディック1530(ウレタン系;pH=8大日本インキ化学工業製)などがある。
該アクリル系樹脂を含むエマルジョンは、乳化重合により得られるアクリル系ポリマーを水に分散したものである。一般に、樹脂エマルジョンの乳化重合において、粒径制御のために水性媒体中に電解質物質を添加する。該乳化重合の際に使用するアクリル酸エステルモノマーは、広い範囲のモノマーと容易に共重合し、アクリル酸エステル単体ポリマー、及びアクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸などと共重合して安定なエマルジョンをつくる。
【0011】
また、前記酢酸ビニル樹脂を含むエマルジョンは、乳化剤、又は保護コロイド、重合開始剤、中和剤水溶液を加熱攪拌しながら、酢酸ビニルモノマーを連続的に添加する乳化重合により製造することができる。該酢酸ビニルモノマーは、単独重合、又は多くのモノマーと共重合し、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、脂肪酸ビニルエステル、エチレンなどと共重合させることができる。
前記ウレタン系樹脂のエマルジョンには各種製法が存在する。転相乳化法では、ポリオール成分にイソシアネートを反応させて、ポリマー化された末端がヒドロキシル基のポリウレタン樹脂を調製し、次にトルエンなどの溶剤で希釈し、これに乳化剤水溶液を滴下、攪拌することにより乳化することにより製造する。ブロックイソシアネート法では、ポリオール成分に過剰当量のイソシアネートを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを、ケトオキシム類、フェノール類などのブロック剤で処理して末端のイソシアネート基をブロックし、これに乳化剤水溶液を滴下、攪拌することにより乳化して製造する。プレポリマー法では、乳化剤を使用し、末端イソシアネート基を有するプレポリマーを水中に機械的に乳化し、鎖伸長剤を用いて、粒子界面で反応させ、ポリマー化することにより製造する。自己乳化法では、ポリマー中に極性基を導入し、ポリマーを自己乳化型にし、乳化剤を使用せずに製造する。
なお、該バインダー樹脂を用いて調製したエマルジョン(B)のpHは6〜13とするのが好ましい。該pHが6より低い場合は、バインダー樹脂が、アミン系硬化剤(C)のアミンと作用して乳化分散状態が変化して、著しく増粘し、螺着部に塗布加工できなくなることがあり好ましくない。反対に該pHが13を越える場合は金属部品への腐食等の影響が懸念されるため好ましくない。
【0012】
本発明で用いる硬化剤は、硬化時にエポキシ樹脂を常温で迅速に硬化させ、かつ塗布加工された状態で硬化剤が揮発しないものであれば、特に制限なく用いることができる。これらの条件に適合する硬化剤としては、不揮発で水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C)が好ましい。該アミン系硬化剤(C)の例を挙げると、イミダゾール、1,3−ビス−4−ピペリジルプロパン、1,6−ヘキサンジアミン、メチレンジアニリン、置換アルキレンジアミン、アルキレンジアミンと反応させた二量化不飽和脂肪酸(Versamid125)の液体ポリアミド等の不揮発性アミン類、揮発性液状アミンと酸を反応させた不揮発性の個体アミン塩、アミン付加化合物、及び水溶性、又は水分散性のポリアミド樹脂等がある。
【0013】
本発明で用いるアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体との加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)は、本接着剤を螺着部に塗布加工する際の垂れを防止する目的で添加する。前記アルキルビニルエーテルのアルキル基は、直鎖、又は分枝のいずれでもよく、かつその炭素原子数は1〜18個であるのが好ましい。該加水分解中和物の例を挙げると、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体加水分解物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、アンモニア水、トリエタノールアミン等の有機塩基で中和したもの、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のデカジエン架橋物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、アンモニア水、トリエタノールアミン等の有機塩基で中和したものがある。
【0014】
また、本発明のマイクロカプセル型接着剤には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。該添加剤の例を挙げると、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン等の充填剤、カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン化合物等の有機、無機顔料、染料、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等がある。
【0015】
本接着剤組成物の製造方法の一例を挙げる。まず、80℃に加熱したイオン交換水中にアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物を溶解し、冷却後トリエタノールアミンで中和する。次に、充填剤であるシリカ粉、顔料である酸化チタンを添加し攪拌する。続いて硬化剤のアミン化合物、アクリル系等のpHが6〜13のエマルジョン、顔料を添加して攪拌を続ける。最後にエポキシ樹脂マイクロカプセルを添加し、カプセルが破壊されないように均一になるまで攪拌することにより、本発明の接着剤組成物を製造することができる。なお、該組成物の製造方法は、その具体的用途に対応した添加成分の種類や添加量、又は製造物の粘度などの性状により、必要に応じて変更することができる。
【0016】
本接着剤組成物における配合割合は、重量比で、マイクロカプセル10〜60部、好ましくは30〜50部、エマルジョン1〜40部、好ましくは5〜20部、アミン系硬化剤1〜50部、好ましくは15〜35部、及び前記加水分解中和物は0.1〜10部、好ましくは5〜10部である。また、該接着剤組成物に添加する水は5〜100部、特に60〜80部とするのが好ましい。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
(1) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物の調製:
メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体とのアルキルジエン架橋物(商品名STABILEEZE QM;(株)三晶)10gを1Lの水中に加え、攪拌しながら80℃に加熱し、1時間かけて溶解させた。次いで。室温まで冷却後トリエタノールアミン10gを添加しゲル状のメチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物を得た。
(2) マイクロカプセル成分の調製:
エポキシ樹脂(エピコート828;ジャパンエポキシレジン社製)1000gを、水1500g中で分散させた。塩酸で該懸濁液のpHを3に調整した後、メラミン樹脂プレポリマを200g添加し、80℃で3時間反応させた。冷却後水酸化ナトリウムで中和した後、遠心脱水機で脱水した後、乾燥させて平均粒径50μm、エポキシ樹脂含有率80%のマイクロカプセルを得た。
【0018】
(実施例2)
イオン交換水70gに実施例1で調製したメチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物10gと、シリカ粉(クリスタライトAA)10gを添加して均一になるまで30分攪拌した。これに1−3ジピペリジルプロパン30gとpH=7.5のブタジエン系エマルジョン(商品名ラックスターDA401;大日本インキ化学工業製)を5g、及び実施例1で調製したエポキシ樹脂含有率80%のマイクロカプセル40gを添加し混合して接着剤組成物を得た。
【0019】
(実施例3)
実施例2で用いたpH=7.5のブタジエン系エマルジョンの代わりに、pH=8.0のアクリル系エマルジョン(商品名ボンコートDC−118;大日本インキ化学工業製)を使用したこと以外は、実施例2と同じ手順で調製して接着剤組成物を得た。
【0020】
(比較例1)
メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物の添加を省いた以外は、実施例2と同じ手順で調製して接着剤組成物を得た。
【0021】
(比較例2)
pH=7.5のブタジエン系エマルジョンの代わりに、pH=4.0のアクリル系エマルジョン(商品名ポリトロンU−154;旭化成工業製)を使用したこと以外は実施例2と同じ手順で調製して接着剤組成物を得た。
【0022】
(比較例3)
pH=7.5のブタジエン系エマルジョンの代わりに、水溶性ポリアセタール樹脂(商品名エスレックKW−10;積水化学工業製)を使用したこと以外は実施例2と同じ手順で調整して接着剤組成物を得た。
【0023】
(比較例4)
pH=7.5のブタジエン系エマルジョンの代わりに、ポリビニルアルコール(ゴーセノールGH−20;日本合成化学製)を使用したこと以外は実施例2と同じ手順で調整して接着剤組成物を得た。
【0024】
(比較例5)
pH=7.5のブタジエン系エマルジョンの代わりに、煙霧室シリカ(アエロジル#200;日本アエロジル製)を使用したこと以外は実施例2と同じ手順で調製して接着剤組成物を得た。
【0025】
(実施例4)
実施例1、及び2で調製した接着剤組成物を、クロメート処理された鉄製ボルト(M=10mm;JIS B 1180に規定のもの)に塗布し、室温で60分、次に80℃で20分間乾燥して接着剤がプレコートされたボルトを製造した。次いで、下記試験を実施した。
トルク試験:製造した接着剤プレコートボルトを、クロメート処理された鉄製ナット(JIS B 1180規定のもの)に締めつけたときの締め込みトルクを測定した。また、所定トルク(29.4N・m)で締めつけた後25℃で48時間静置した後、ナットをゆるめるときのトルクのn=5の平均値を破壊トルクとして測定した。
また、前記各接着剤組成物を25℃で30日間静置保存した。この接着剤を上記のように塗布乾燥し、接着剤がプレコートされたボルトを製造し、締め込みトルク、破壊トルクを測定した(接着剤組成物として保存後に試験)。さらに、この接着剤がプレコートされたボルトを40℃で30日保存促進させたときの破壊トルク、締め付け抵抗を測定した(プレコートボルトとして保存後に試験)。その結果を表1に示す。
【0026】
(比較例6)
比較例1〜5で製造した接着剤組成物を用い、実施例4記載の方法で、接着剤プレコートボルトを製造した。次いで、前記接着剤組成物、及び製造したボルトの性能を、実施例4記載の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
なお、表中の記号は以下を意味する。
○:良好 ×:不良 −:未計測
*1 締め込み時にカプセルの脱落が多かったため、初期試験以外は実測しなかった。
*2 配合物保存中にゲル化したため、初期試験以外は実測しなかった。
【0029】
表1からも明らかなように、実施例2及び3では、製造直後、接着剤組成物として保存した後、及びプレコートボルトとして保存した後の何れにおいても、高い破壊トルクを示し、また、安定した破壊トルク及び締め込み抵抗を示している。したがって、比較例の接着剤組成物と比較し、本発明のマイクロカプセル型接着剤組成物は、接着剤組成物としての安定性や締め込み抵抗の安定性が優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のマイクロカプセル接着剤組成物は、ボルト、ねじ、ナットなど螺着部持つ部材へ適用し、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を形成することができる。しかし、本発明のマイクロカプセル型接着剤組成物は、被着体間にマイクロカプセルを破壊できる程度に加圧可能であれば、使用することができ、その用途に制限はない。したがって、さらに、本発明の接着剤組成物に、マイクロカプセルが破壊できる程度に加圧することにより、平面状部材同士の貼合わせることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材としてエポキシ樹脂を、壁材としてアルデヒド系樹脂、又は尿素樹脂を含むマイクロカプセル(A);乳化能を有するバインダー樹脂を含み、pH6〜13であるエマルジョン(B);水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C);及びアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)を含む、マイクロカプセル型接着剤組成物。
【請求項2】
さらに水(E)を含む、請求項1に記載のマイクロカプセル型接着剤組成物。
【請求項3】
前記マイクロカプセル(A)の芯材として用いるエポキシ樹脂が、非水溶性、又は難水溶性のエポキシ樹脂である、請求項1に記載のマイクロカプセル型接着剤組成物。
【請求項4】
前記エマルジョン(B)に含まれるバインダー樹脂が、乾燥後に被膜を形成し得るアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ブタジエン樹脂、又はこれらの混合物である、請求項1に記載のマイクロカプセル型接着剤組成物。
【請求項5】
前記アミン系硬化剤(C)が不揮発性、又は難揮発性である、請求項1に記載のマイクロカプセル型接着剤組成物。
【請求項6】
芯材としてエポキシ樹脂を、壁材としてアルデヒド系樹脂、又は尿素樹脂を含むマイクロカプセル(A);乳化能を有するバインダー樹脂を含み、pH6〜13であるエマルジョン(B);水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C);及びアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)を含む、マイクロカプセル型接着剤組成物を、螺着部材の表面に塗布し;かつ乾燥させることによりプレコート接着剤層を形成することを特徴とする、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。
【請求項7】
前記マイクロカプセル(A)の芯材として用いるエポキシ樹脂が、非水溶性、又は難水溶性のエポキシ樹脂である、請求項6に記載のゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。
【請求項8】
前記エマルジョン(B)に含まれるバインダー樹脂が、乾燥後に被膜を形成し得るアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ブタジエン樹脂、又はこれらの混合物である、請求項6に記載のゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。
【請求項9】
前記アミン系硬化剤(C)が不揮発性、又は難揮発性である、請求項6に記載のゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。
【請求項10】
前記螺着部材が、ボルト、ネジ、及びナットからなる群から選ばれる螺着面持つ部材である、請求項6に記載のゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材の製造方法。
【請求項11】
芯材としてエポキシ樹脂を、壁材としてアルデヒド系樹脂、又は尿素樹脂を含むマイクロカプセル(A);乳化能を有するバインダー樹脂を含み、pH6〜13であるエマルジョン(B);水溶性、又は水分散性のアミン系硬化剤(C);及びアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解中和物、又はアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体のアルキルジエン架橋物の加水分解中和物(D)を含む、マイクロカプセル型接着剤組成物を、螺着部材の表面に塗布し;かつ乾燥させることによりプレコート接着剤層を形成した、ゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材。
【請求項12】
前記螺着部材が、ボルト、ネジ、及びナットからなる群から選ばれる螺着面持つ部材である、請求項11に記載のゆるみ止め用プレコート接着剤層を有する螺着部材。

【国際公開番号】WO2005/054393
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515893(P2005−515893)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016748
【国際出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】