説明

マイクロブロア

【課題】ブロア室や流路の設計を変更することなく、流量及び/又は圧力特性を変更することが可能なマイクロブロアを提供する。
【解決手段】ブロア本体1に第1壁部2aと第2壁部3bとを設け、振動板5と対向する壁部の位置に第1,第2開口部2b,3cを形成する。両壁部の間に、外部から流体を導入するための流入通路7、7aを形成する。振動板を振動させると、第1ブロア室6から連続的に吐出される流体によって流入空間7a内の流体が一緒に第2開口部3cから吐出される。振動板5を間にして第1ブロア室6と逆側に第2ブロア室8を形成する第3壁部9を設け、第3壁部に第3開口部9aを形成する。振動板の振動エネルギーにより第3開口部9aから流体を吸い込み、流入通路7へ供給することで、流量及び/又は圧力特性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気やガスのような圧縮性流体を輸送するのに適したマイクロブロアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器の筐体内部で発生する熱を外部に放出させるため、あるいは燃料電池で発電するのに必要な酸素を供給するための送風用ブロアとして、圧電マイクロブロアが知られている。圧電マイクロブロアは、圧電素子への電圧印加により屈曲振動する振動板を用いた一種のポンプであり、構造が簡単で、小型・薄型に構成でき、かつ低消費電力であるという利点がある。
【0003】
特許文献1には、大流量と高圧力とを発生できる圧電マイクロブロアが提案されている。この圧電マイクロブロアは、図9に示すように、ブロア本体10と、外周部がブロア本体10に対して固定され、圧電素子21を有する振動板20と、ブロア本体10と振動板20との間に形成されたブロア室30とを備えている。ブロア室30の一つの壁面を構成する第1壁部11には、振動板20の中心部と対向する位置にブロア室30の内部と外部とを連通させる第1開口部12が形成されている。第1壁部11を間にしてブロア室30と反対側には、所定の空間16をあけて第2壁部13が設けられており、第1開口部12と対向する第2壁部13の部位には第2開口部14が形成されている。ブロア本体10には、外部から流体を吸い込み、第1壁部11と第2壁部13との間の流入空間16へ導く流入通路15が形成されており、流入通路15はブロア本体10の下面側に開口している。振動板20を振動させることにより、ブロア室30を容積変化させて第1開口部12に高速の気流を発生させ、流入空間16へ導入された周囲の流体を巻き込んで、第2開口部14から連続した噴流として吐出することができる。特に、振動板20の共振駆動に伴って第1壁部11を励振させた場合には、流量及び圧力を大幅に増大させることができる。
【0004】
前記のような構造の圧電マイクロブロアの場合、ブロア室30の形状を最適化することで、流量や圧力等の特性設計を行っている。一方、流入通路15(流入空間16を含む)については、流路抵抗のみを考慮し、ある一定以上の開口部寸法があれば、特性を維持できるとの考えに基づいて設計している。そのため、ブロア室30や流入通路15の形状が決まれば、流量及び/又は圧力特性を変更することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/069266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブロア室や流路の設計を変更することなく、流量及び/又は圧力特性を変更することが可能なマイクロブロアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ブロア本体と、外周部が前記ブロア本体に対して固定され、電気信号を印加することにより屈曲振動する振動板と、前記ブロア本体と振動板との間に形成された第1ブロア室と、前記第1ブロア室の一つの壁面を構成し、前記振動板と対向する第1壁部と、前記振動板と対向する前記第1壁部の部位に形成され、前記第1ブロア室の内部と外部とを連通させる第1開口部と、前記第1壁部を間にして第1ブロア室と反対側に設けられた第2壁部と、前記第1開口部と対向する前記第2壁部の部位に形成された第2開口部と、前記第1壁部と第2壁部との間に外部から流体を導入する流入通路とを備え、前記振動板を振動させることにより、前記流入通路を介して導入された流体を第2開口部から吐出するマイクロブロアにおいて、前記振動板を間にして前記第1ブロア室と反対側の前記ブロア本体の部位に、前記振動板との間で第2ブロア室を形成するための第3壁部が設けられ、前記ブロア本体又は第3壁部には、外部と第2ブロア室とを連通させる第3開口部が形成され、前記振動板の振動に伴って前記第3開口部を介して第2ブロア室に流入した流体を前記流入通路へと供給できるように、前記流入通路は前記第2ブロア室と接続されていることを特徴とする、マイクロブロアを提供する。
【0008】
本発明は次のような知見に基づく。即ち、従来のマイクロブロアの場合、振動板の背面側(第1ブロア室とは逆側)は外部へ開放されており、振動板の駆動エネルギーの一部は開放された空間へ放出される。つまり、振動板の駆動エネルギーは、流入通路へ流入する流体の吸い込みには直接寄与していない。本発明では、振動板の背面側に疑似的な共鳴空間(第2ブロア室)を形成することで、開放空間へ放出されていた振動板のエネルギーを有効利用して積極的に流体を第2ブロア室へ吸い込み、流入通路へ送り込むものである。その結果、第1ブロア室や流路を変更しなくても、流量及び/又は圧力特性を変更することができる。
【0009】
第2ブロア室を形成するために、振動板を間にして第1ブロア室と反対側に第3壁部が設けられている。第3壁部は、例えば蓋部材をブロア本体に固定することで簡単に形成でき、一度組み立てたブロアであっても、第3壁部によって特性変更が可能である。ブロア本体又は第3壁部には外部と第2ブロア室とを連通させる第3開口部が形成されており、振動板の振動に伴って、第3開口部を介して第2ブロア室に流入した流体が流入通路へと導かれるように、流入通路は第2ブロア室と接続されている。振動板の振動に伴って第2ブロア室内で疑似的な共鳴が起こり、第3開口部から流体が吸い込まれ、流入通路へ送り込まれるため、第2開口部から吐出される流体の流量増加及び/又は圧力上昇を実現できる。第3開口部の開口面積を変化させることで、流量及び/又は圧力特性を可変できる。
【0010】
第2ブロア室の体積を一定値とした場合、第3開口部と振動板の駆動領域との面積比を変化させることによって、流量及び圧力特性の最適値を求めることができる。本発明者の実験によれば、面積比を0.4以上とすることで、全開放状態(従来技術)より流量及び圧力特性が良好となり、面積比=0.7付近で流量及び圧力の極大値を生じる。さらに面積比の増大に伴って流量及び圧力は低下し、面積比=1.6付近で全開放状態と同じ特性レベルとなる。そのため、第3開口部と振動板の駆動領域との面積比を0.4〜1.6の範囲とした場合に、良好な流量及び圧力特性を得ることができる。特に、上記範囲の中でも面積比が0.5〜1.4の範囲では、全開放の場合に比べて流量及び圧力が1.2倍以上になり、さらに好ましい。
【0011】
本発明における振動板とは、ダイヤフラム(金属板又は樹脂板)の片面に平面方向に伸縮する圧電素子を貼り付けたユニモルフ型、ダイヤフラムの両面に互いに逆方向に伸縮する圧電素子を貼り付けたバイモルフ型、ダイヤフラムの片面にそれ自体が屈曲変形する積層型圧電素子を貼り付けたバイモルフ型、さらには振動板全体が積層型圧電素子で構成されたものなどでもよい。いずれにしても、電気信号を印加することによって、屈曲振動するものであればよい。圧電素子をダイヤフラムに貼り付けた振動板の場合、圧電素子の形状は円板状でもよいし、リング状でもよい。振動板の振動モードは3次モードでも、1次モードでもよい。
【0012】
本発明のマイクロブロアは、圧電素子を比較的低い電圧で駆動する場合に、流量及び圧力の上昇効果が顕著に表れる傾向がある。これは、音響インピーダンスの共鳴現象での効果が、低電圧で駆動した時に顕著に表れるからと推測される。逆に、高電圧の場合は、圧電素子の変位が増大する効果の方が大きいので、音響インピーダンスの共鳴現象の効果が相対的に低下するからである。このため、本発明は低電圧(例えば10V以下)で圧電素子を駆動した際に有効であり、低消費電力で流量及び/又は圧力の大きなマイクロブロアを実現できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、振動板を間にして第1ブロア室と反対側に疑似的な共鳴空間(第2ブロア室)を形成することで、振動板の駆動エネルギーを有効利用して第3開口部から積極的に流体を吸い込み、流入空間へ供給することができる。そのため、第1ブロア室や流路の設計を変更しなくても、第3開口部の開口面積を変更することにより、流量及び/又は圧力特性を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るマイクロブロアの第1実施形態の断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】第3開口部と振動板の駆動領域との面積比を変化させた時の流量及び圧力特性の変化を示す図である。
【図4】第3開口部の種々の形状を示す図である。
【図5】本発明に係るマイクロブロアの第2実施形態の断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明に係るマイクロブロアの第3実施形態の断面図である。
【図8】第3開口部の他の例の形状を示す図である。
【図9】従来のマイクロブロアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
図1,図2は本発明に係るマイクロブロアの第1実施形態を示し、電子機器の送風用ブロアとして用いる例を示す。このマイクロブロアAのブロア本体1は、内ケース2と、内ケース2の外側を所定の隙間をもって非接触で覆う外ケース3とを備えている。本実施形態では、外ケース3の中に下方が開口した円筒形の空洞部3aが形成されており、この空洞部3aの中に円形の内ケース2が所定の隙間をあけて収容され、内ケース2は外ケース3に対してばね連結部4を介して弾性的に支持されている。ばね連結部4は、内ケース2の外周部と外ケース3の側壁部との間に周方向に間隔を開けて複数個(ここでは4個)設けられている。ばね連結部4は板ばね等のばね部材よりなり、後述する振動板5の振動方向のばね弾性が低く、振動板5の振動方向と垂直な方向のばね弾性が高く設定されている。そのため、振動板5の共振駆動に伴って内ケース2が上下方向に振動したとき、その振動が外ケース3に漏洩するのを抑制する働きを持つ。内ケース2と外ケース3との間には空気の流入通路7が形成されている。
【0016】
内ケース2は下方が開口した断面コの字形に形成され、内ケース2の開口を閉じるように振動板5が固定されて、内ケース2と振動板5との間に第1ブロア室6が形成されている。本実施形態の振動板5は、圧電セラミックよりなる圧電素子5aを薄肉な弾性金属板よりなるダイヤフラム5bの中央部に貼り付けたユニモルフ構造であり、圧電素子5aに所定周波数の電圧を印加することにより、振動板5全体がベンディングモードで共振駆動される。この例では圧電素子5aは、ダイヤフラム5bの第1ブロア室側と逆側の面に固定されている。
【0017】
第1ブロア室6の一つの壁面を構成し、振動板5と対向する内ケース2の部位には、第1壁部2aが設けられている。ここで、第1壁部2aを薄肉な弾性金属板で形成し、振動板5を所定のモードで共振駆動したとき、それに伴って第1壁部2aを励振させるように構成することが好ましい。なお、第1壁部2aとばね連結部4とを同一部材で形成してもよい。振動板5の中心部と対向する第1壁部2aの部位には、第1ブロア室6の内部と外部とを連通させる第1開口部2bが形成されている。第1壁部2aと対向する外ケース3の部位には第2壁部3bが設けられ、第2壁部3bの中心部、即ち第1開口部2bと対向する部位には第2開口部3cが形成されている。この第2開口部3cが空気の吐出口となる。第1壁部2aと第2壁部3bとの間には所定の流入空間7aが形成され、この空間7aは前述の流入通路7の一部を構成している。流入空間7aは、流入通路7から導入された外部の空気を第1開口部2b及び第2開口部3cの付近に導く役割を持つ。
【0018】
外ケース3の下面側、即ち振動板5を間にして第1ブロア室6と反対側には、振動板5との間で第2ブロア室8を形成するための第3壁部9が設けられている。この例では、第3壁部9は外ケース3の下端部開口を閉じるように固定された蓋部材で構成されている。第3壁部9の中央部には、外部と第2ブロア室8とを連通させる第3開口部9aが形成されている。第2ブロア室8の容積及び第3開口部9aの開口面積は、振動板5の振動に伴って疑似的な共鳴空間を形成できるように設定されている。第2ブロア室8と流入通路7とは相互に接続されている。そのため、第3開口部9aを介して第2ブロア室8に流入した空気は、流入通路7を通って流入空間7aへと供給される。
【0019】
ここで、前記構成よりなるマイクロブロアAの動作について説明する。圧電素子5aに所定周波数の交流電圧を印加すると、振動板5が1次共振モード又は3次共振モードで共振駆動され、それにより第1ブロア室6の容積が周期的に変化する。第1ブロア室6の容積が増大するとき、流入空間7a内の空気が第1開口部2bを通り第1ブロア室6へと吸い込まれ、逆に第1ブロア室6の容積が減少するとき、第1ブロア室6内の空気が第1開口部2bを通り流入空間7aへと排出される。振動板5は高周波で駆動されるため、第1開口部2bから流入空間7aへと排出された高速/高エネルギーの空気流は、流入空間7aを通過して第2開口部3cから排出される。このとき、流入空間7a内にある周囲の空気を巻き込みながら第2開口部3cから排出するので、流入通路7から流入空間7aへ向かう連続した空気の流れが生じ、第2開口部3cから空気は噴流となって連続的に吐出される。空気の流れを図1に矢印で示す。特に、振動板5の共振駆動に伴って第1壁部2aを励振させるようにすれば、吐出流量の飛躍的な増大を図ることができる。
【0020】
前述の説明では、振動板5と第1ブロア室6との協同作用による空気の流れのみを説明したが、振動板5は第1ブロア室6の容積を変化させるだけでなく、第2ブロア室8の容積も第1ブロア室6と逆位相で変化させることができる。そのため、振動板5と第2ブロア室8との協同作用によって第2ブロア室8を疑似的な共鳴空間とすることができ、第2開口部3cから吐出される空気の流量及び/又は圧力の特性を向上させることができる。その際、第2ブロア室8の容積及び/又は第3開口部9aを適切に設定することで、流量及び/又は圧力の増大を図ることができる。
【0021】
図3(a),(b)は、第3開口部9aの開口面積(図1のS1で示す)と振動板5の駆動領域(図1にS2で示す)との面積比(S1/S2)を変化させたときの第2開口部3cから吐出される空気の流量及び圧力を、第3開口部9aを全開放状態(S1=S3)とした場合に対する比率として表したものである。なお、面積比の変化は、振動板5の駆動領域の面積S2を一定とし、第3開口部9aの開口面積S1を変化させたものである。面積比=2.1とは、第2開口部9aが全開放状態、つまり従来構造と同様に第2ブロア室を形成しない場合に等しい。
【0022】
図3は、以下の実験条件のもとで実施した結果である。
ブロア全体の縦×横×厚み=20×20×2mm
第1ブロア室の直径×高さ=φ13mm×0.2mm
第2ブロア室の直径×高さ=φ18mm×0.4mm
第2開口部の径=φ0.8mm
流入空間の高さ=0.4mm
流入通路の流路幅=0.5mm
振動板の駆動領域の(径・面積)=φ13mm、150mm2
圧電素子の(径・面積)=φ11mm、90mm2
第3開口部の(径・面積)=φ1〜18mm、3〜255mm2
駆動周波数=約26kHz(3次モードで駆動)
駆動電圧=10Vpp
【0023】
図3から明らかなように、第3開口部9aと振動板5の駆動領域との面積比を0から徐々に増大させたとき、0.4以下の領域では流量及び圧力特性は全開放状態に比べて劣る。その理由は、第2ブロア室8の共鳴現象が、第2ブロア室8の空気を第3開口部9aを介して吐き出す方向に作用したためであると考えられる。面積比が0.4を超えると、流量及び圧力特性は全開放状態に比べて良好となり、面積比=0.7付近で流量及び圧力の極大値を生じる。極大値付近では、流量は約1.4倍、圧力は約1.7倍となった。さらに面積比が増大すると、流量及び圧力特性は低下し、面積比が1.6付近で全開放状態と同じレベルとなり、面積比=2.1付近まで続く。このように、面積比を0.4〜1.6の範囲とした場合に、全開放状態に比べて良好な流量及び圧力特性を得ることができた。特に、0.5〜1.4の範囲では、全開放の場合に比べて流量及び圧力が1.2倍以上になり、好ましい結果が得られた。これは、第2ブロア室8が振動板5の振動と共鳴して疑似的な共鳴空間を形成し、この共鳴が逆方向に作用することで、振動板5の振動エネルギーが第3開口部9aから第2ブロア室8へ空気を積極的に吸い込むのに作用したためと考えられる。このように第3開口部9aの開口径を変化させることにより、流量及び/又は圧力特性を自由に変更することができる。
【0024】
なお、図3は圧電素子の駆動電圧を10Vppとした場合であるが、それより高電圧(例えば15Vpp、20Vpp)で駆動することもできる。但し、高電圧で駆動する場合に比べて低電圧で駆動した方が、流量及び/又は圧力特性において良好な結果が得られた。これは、第2ブロア室8の音響インピーダンスの共鳴現象での効果が、低電圧で駆動した時に高電圧に比べてより顕著に表れるからであると推測される。
【0025】
図4は、第3開口部9aの種々の形状を示す。(a)は単一の円形形状の穴の例、(b)は単一の四角形状の穴の例、(c)は複数の四角形状の穴で構成した例、(d)は複数の円形形状の穴で構成した例である。いずれの場合でも、同等な効果を発揮することができる。なお、第3開口部として複数の穴を有する場合の開口部の面積は、複数の穴の開口面積の和である。
【0026】
〔第2実施形態〕
図5,図6は本発明に係るマイクロブロアの第2実施形態を示す。このマイクロブロアBは、ブロア本体10の下端部に固定される蓋部材(第3壁部)40を除いて、従来技術のマイクロブロア(図9参照)とほぼ同じ構造であるため、同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0027】
ブロア本体10の下面には、蓋部材よりなる第3壁部40が固定され、振動板20と第3壁部40との間で第2ブロア室41が形成されている。第3壁部40の中央部には、外部と第2ブロア室41とを連通させる第3開口部42が形成されている。第2ブロア室41と流入通路15との間は、連通溝43を介して相互に接続されている。そのため、第3開口部42を介して第2ブロア室41に流入した空気は、連通溝43を通って流入通路15へと導かれる。
【0028】
本実施形態のマイクロブロアBの場合も、第1実施形態のマイクロブロアAと同様に、振動板20の振動エネルギーを利用して第3開口部42から空気を第2ブロア室41へ吸い込み、流入通路15へと送り出すので、従来技術に比べて流量及び/又は圧力特性を増大させることができる。さらに、第3開口部42の開口径を変化させることで、図3と同様に流量及び/又は圧力特性を変更することができる。
【0029】
〔第3実施形態〕
図7は本発明に係るマイクロブロアの第3実施形態を示す。このマイクロブロアCの構造は第1実施形態のマイクロブロアAと比べて、第3開口部9bを除いて同一であるため、同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施形態では、第3開口部9bがブロア本体1の側面に開口している。この例では、第3開口部9bが外ケース3の側壁と蓋部材9との境界部に形成されているが、外ケース3に形成してもよいし、蓋部材9に形成してもよい。このマイクロブロアCは、ブロア本体1の下面側に第3開口部9bを形成できない場合に好ましい。
【0030】
図8は、第3開口部9bの幾つかの例を示す。(a)は第3開口部9bが細長い長孔形状の例、(b)は複数の角穴で構成された例、(c)は複数の丸穴で構成された例である。いずれの場合も、第3開口部9bの開口面積を適切に設定することで、第2ブロア室8を疑似的な共鳴空間とすることができ、流量及び/又は圧力特性を可変することができる。
【0031】
前記実施形態では、第3壁部を構成する蓋部材がマイクロブロア専用の部品である例を示したが、本マイクロブロアを回路基板や電子機器のケースに固定する場合に、基板又はケースの壁部を第3壁部として利用することができる。さらに、第3壁部はブロア本体と別体部品である必要はなく、一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
A〜C マイクロブロア
1 ブロア本体
2 内ケース
2a 第1壁部
2b 第1開口部
3 外ケース
3b 第2壁部
3c 第2開口部
4 ばね連結部
5 振動板
6 ブロア室(第1ブロア室)
7 流入通路
7a 流入空間
8 第2ブロア室
9 第3壁部(蓋部材)
9a,9b 第3開口部
10 ブロア本体
11 第1壁部
12 第1開口部
13 第2壁部
14 第2開口部
15 流入通路
16 流入空間
20 振動板
21 圧電素子
30 ブロア室(第1ブロア室)
40 第3壁部(蓋部材)
41 第2ブロア室
42 第3開口部
43 連通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロア本体と、外周部が前記ブロア本体に対して固定され、電気信号を印加することにより屈曲振動する振動板と、前記ブロア本体と振動板との間に形成された第1ブロア室と、前記第1ブロア室の一つの壁面を構成し、前記振動板と対向する第1壁部と、前記振動板と対向する前記第1壁部の部位に形成され、前記第1ブロア室の内部と外部とを連通させる第1開口部と、前記第1壁部を間にして第1ブロア室と反対側に設けられた第2壁部と、前記第1開口部と対向する前記第2壁部の部位に形成された第2開口部と、前記第1壁部と第2壁部との間に外部から流体を導入する流入通路とを備え、前記振動板を振動させることにより、前記流入通路を介して導入された流体を第2開口部から吐出するマイクロブロアにおいて、
前記振動板を間にして前記第1ブロア室と反対側の前記ブロア本体の部位に、前記振動板との間で第2ブロア室を形成するための第3壁部が設けられ、
前記ブロア本体又は第3壁部には、外部と第2ブロア室とを連通させる第3開口部が形成され、
前記振動板の振動に伴って前記第3開口部を介して第2ブロア室に流入した流体を前記流入通路へと供給できるように、前記流入通路は前記第2ブロア室と接続されていることを特徴とする、マイクロブロア。
【請求項2】
前記第3開口部と前記振動板の駆動領域との面積比が0.4〜1.6の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロブロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−27079(P2011−27079A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176204(P2009−176204)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】