説明

マイクロポンプ

【課題】高出力なマイクロポンプを提供する。
【解決手段】マイクロポンプ1は、第1の基材10と、第2の基材20と、ガス発生材30とを備えている。第1の基材10には、第1のマイクロ流路11が形成されている。第1のマイクロ流路11は、第1の基材10の一主面10aに開口している第1の開口部11aを有する。第2の基材20には、第2のマイクロ流路21が形成されている。第2のマイクロ流路21は、第2の基材20の一主面20aに開口している第2の開口部21aを有する。ガス発生材30は、第1の基材10の一主面10aと、第2の基材20の一主面20aとに接着されている。ガス発生材30は、第1及び第2の開口部11a、21aを塞いでいる。第1の開口部11aと第2の開口部21aとは、ガス発生材30を介して対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型であり、かつ携帯性に優れている分析装置として、マイクロ流体デバイスを用いた分析装置が用いられるようになってきている。このマイクロ流体デバイスを用いた分析装置では、マイクロ流路内においてサンプルの送液、希釈、分析などを行うことができる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、一方の主面に開口するマイクロ流路が形成されている基板の上記主面を覆うようにガス発生層を設けることにより、マイクロ流体デバイスにポンプ機能を付与することが記載されている。
【0004】
また、ガス発生層から発生するためのガスがマイクロ流路とは反対側に流出することを抑制するために、ガス発生層を覆うようにガスバリア層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−107515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のマイクロ流体デバイスでは、ポンプ出力を十分に高めることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高出力なマイクロポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマイクロポンプは、第1の基材と、第2の基材と、ガス発生材とを備えている。第1の基材には、第1のマイクロ流路が形成されている。第1のマイクロ流路は、第1の開口部を有する。第1の開口部は、第1の基材の一主面に開口している。第2の基材には、第2のマイクロ流路が形成されている。第2のマイクロ流路は、第2の開口部を有する。第2の開口部は、第2の基材の一主面に開口している。ガス発生材は、第1の基材の一主面と、第2の基材の一主面とに接着されている。ガス発生材は、第1及び第2の開口部を塞いでいる。第1の開口部と第2の開口部とは、ガス発生材を介して対向している。
【0009】
本発明において、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体に所謂マイクロ効果が発現する形状寸法に形成されている流路をいう。具体的には、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体が、表面張力と毛細管現象との影響を強く受け、通常の寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す形状寸法に形成されている流路をいう。
【0010】
本発明に係るマイクロポンプのある特定の局面では、第1のマイクロ流路と第2のマイクロ流路とが接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高出力なマイクロポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【図2】第2の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【図3】第3の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0014】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0016】
図1に示すように、マイクロポンプ1は、第1及び第2の基材10,20を備えている。第1及び第2の基材10,20のそれぞれは、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどにより形成することができる。基材10,20の形成に好ましく用いられる樹脂としては、有機シロキサン化合物やポリメタクリレート樹脂、環状ポリオレフィンなどが挙げられる。有機シロキサン化合物の具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)や、ポリメチル水素シロキサンなどが挙げられる。
【0017】
第1の基材10には、第1のマイクロ流路11が形成されている。第1のマイクロ流路11の一方側の開口部11aは、第1の基材10の主面10aに開口している。
【0018】
一方、第2の基材20には、第2のマイクロ流路21が形成されている。本実施形態では、第1のマイクロ流路11の流路面積と、第2のマイクロ流路21の流路面積とが等しくされている。第2のマイクロ流路21の一方側の開口部21aは、第2の基材20の主面20aに開口している。第2のマイクロ流路21の他方側の開口部21bも、主面20aに開口している。開口部21bは、第1の基材10に形成されたマイクロ流路12によりマイクロ流路11に接続されている。すなわち、本実施形態では、第1のマイクロ流路11と第2のマイクロ流路21とが接続されている。
【0019】
第1の基材10と第2の基材20との間には、ガス発生材としてフィルム状のガス発生フィルム30が配されている。ガス発生フィルム30は、第1の基材10の主面10aと、第2の基材20の主面20aとに接着されている。このガス発生フィルム30によって、第1のマイクロ流路11の開口部11aと、第2のマイクロ流路21の開口部21aとが塞がれている。
【0020】
ガス発生フィルム30は、例えば熱や光などの外部刺激を受けたときにガスを発生させるフィルムである。
【0021】
ガス発生フィルム30は、例えば熱や光などの外部刺激を受けたときにガスを発生させるガス発生剤を含んでいる。光が照射された際にガスを発生させる光応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾ化合物や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンなどのアジド化合物などが挙げられる。熱が加わった際にガスを発生させる熱応答性ガス発生剤の具体例としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミンや、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0022】
また、ガス発生フィルム30は、バインダー樹脂や、添加剤等をさらに含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やグリシジルアジドポリマー等が好ましく用いられる。また、ガス発生フィルム30が光応答性ガス発生剤を含む場合は、ガス発生フィルム30は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンアントラキノン、ベンゾイン、アクリジン誘導体等の光増感剤をさらに含んでいてもよい。
【0023】
なお、ガス発生フィルム30の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜200μm程度とすることができる。
【0024】
ところで、特許文献1に記載のように、ガス発生層を設け、ガス発生層をガスバリア層で覆っている場合は、ガス発生層からガスが発生した際にガス発生層と基材との間にガス圧が付加されることにより、ガス発生層が基材から剥離し、ガス発生層と基材との間に空間が形成される場合がある。そのような場合には、マイクロ流路に供給されるガス圧が低くなり、ポンプの出力が低くなってしまう。
【0025】
それに対して本実施形態では、開口部11aと、開口部21aとがガス発生フィルム30を介して対向している。このため、ガス発生フィルム30に外部刺激が付与されガスが発生すると、第1の基材10とガス発生フィルム30との間にガス圧が付加されると共に、第2の基材20とガス発生フィルム30との間にもガス圧が付加される。第1の基材10とガス発生フィルム30との間に付加されたガス圧によりガス発生フィルム30に付加される応力の向きと、第2の基材20とガス発生フィルム30との間に付加されたガス圧によりガス発生フィルム30に付加される応力の向きとは、逆方向となる。よって、両応力は打ち消し合う。従って、ガス発生フィルム30と第1及び第2の基材10,20との剥離を抑制することができる。その結果、第1のマイクロ流路11に供給されるガス圧と、第2のマイクロ流路21に供給されるガス圧とのそれぞれを高めることができる。よって、高出力なマイクロポンプ1を実現することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、第1のマイクロ流路11と第2のマイクロ流路21とが接続されている。よって、第1のマイクロ流路11に供給されたガス圧と、第2のマイクロ流路21に供給されたガス圧との総和に匹敵する高いガス圧を供給することができる。従って、さらに高出力なマイクロポンプ1を実現することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、第1の開口部11aの全体と第2の開口部21aの全体とが対向している例について説明した。但し、第1の開口部の一部と第2の開口部の一部とが対向しており、第1及び第2の開口部のうちの少なくとも一方の一部が他方と対向していなくてもよい。
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0029】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0030】
上記第1の実施形態では、第1のマイクロ流路11と第2のマイクロ流路21とが接続されている例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図2に示すように、第1のマイクロ流路11と第2のマイクロ流路21とは、互いに接続されていなくてもよい。この場合であっても、第1の開口部11aと第2の開口部21aとが対向しているため、第1及び第2のマイクロ流路11,21のそれぞれから供給されるガス圧を高めることができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
【0032】
本実施形態では、ガス発生フィルム30を、第1のマイクロ流路11側の第1の部分30aと、第2のマイクロ流路21側の第2の部分30bとに区画する区画部材31が設けられている。第1のマイクロ流路11には、第1の部分30aから発生したガスが供給される。一方、第2のマイクロ流路21には、第2の部分30bから発生したガスが供給される。
【0033】
本実施形態においても、第1の部分30aと、第2の部分30bとから同時にガスを発生させることにより、上記第1の実施形態と同様に、ガス発生フィルム30の剥離を抑制でき、マイクロポンプの高出力化を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、第1の部分30aと、第2の部分30bとは、同種のガス発生剤を含むものであってもよいし、異なる種類のガス発生剤を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…マイクロポンプ
10…第1の基材
10a…主面
11…第1のマイクロ流路
11a…第1の開口部
12…マイクロ流路
20…第2の基材
20a…主面
21…第2のマイクロ流路
21a…第2の開口部
30…ガス発生フィルム
30a…第1の部分
30b…第2の部分
31…区画部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面に開口している第1の開口部を有する第1のマイクロ流路が形成された第1の基材と、
一主面に開口している第2の開口部を有する第2のマイクロ流路が形成された第2の基材と、
前記第1の基材の前記一主面と、前記第2の基材の前記一主面とに接着されており、前記第1及び第2の開口部を塞いでいるガス発生材と、
を備え、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが前記ガス発生材を介して対向している、マイクロポンプ。
【請求項2】
前記第1のマイクロ流路と前記第2のマイクロ流路とが接続されている、請求項1に記載のマイクロポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184938(P2012−184938A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46301(P2011−46301)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】