説明

マイクロマニピュレーター及びそれを用いた微小物採取方法

【課題】大掛かりな高圧電源や、電気回路、装備などを必要せず、取出しの困難な微小絶縁物を簡単な方法により容易にピックアップして次の解析などにステップアップできるマイクロマニピュレーターとそれを用いた微小絶縁物の採取方法を提供する。
【解決手段】 先端部が尖鋭又は角錐状若しくは円錐状の金属製ニードル1と、アース接地された導電材部2と、該金属製ニードル1の末端部に前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを備え、前記金属製ニードル1の先端部側以外の基部と導電材部2と開閉接点部3とが柄部6に装着固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小物を容易に静電吸着により採取する金属製ニードルやそれを装着した手動器具であるマイクロマニピュレーター及びそれを用いた微小物採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT産業が益々発展していく中、それを支えるための基幹である半導体関連や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の平面ディスプレイなどの工業分野は、製造工程中に混入する微小物(微小異物)が製品の多大なダメージを与え、製品の高集積化、大画面化への歩留まりに大きな影響を与えている。そのため、これらの微小異物を解析してスループット向上や品質管理のための対策を打つことが大変に重要である。
【0003】
微小異物の採取方法としては、光学顕微鏡下において、金属製ニードルを装着したハンディタイプの器具を、人間の手で直接操作して採取したり、又はその金属製ニードル(針状体)を装備したマイクロマニピュレーターというジョイステック等で、遠隔操作できる装置を使って光学顕微鏡下で拡大視しつつ採取する方法がある。そして、採取した微小異物に対して各種機器分析・解析を行う方法が多くなされている。
【0004】
これらの微小異物は、サブミクロンから数十ミクロン位まであるが、実際に光学顕微鏡下、金属製ニードルで採取して構造解析できるのは、せいぜい数ミクロン以上である。
【0005】
しかし、これらの微小異物の中には、大変に採取が困難なものがある。それは、微小異物が、その存在する場所に接着してしまって、採取に手間がかかる場合は別として、微小異物の中に採取に使用する器具である金属製ニードルに付着し難い物質が存在する場合には採取が困難となる。
【0006】
採取用器具である金属製ニードルに付着し難い原因としては、微小異物に粘着性や柔軟性がないために、微小異物がニードル(針)先に付着し難い場合や、付着させるための分子間力やクーロン力などの相互作用が弱いことなどが考えられる。
【0007】
さらに、それらの微小異物の中には、金属製ニードルを近づけると反発して跳ねてしまうものもある。その原因としては、微小異物が絶縁性であって、静電気を帯電していた場合に、金属製ニードルを近づけると、反対極性の電荷が金属製ニードルから微小異物側に流れ込む結果、金属製ニードルにも微小異物と同一極性の帯電が生じて付着し難くなったり、反発し合ってしまうと考えられる。
【0008】
このような場合は、通常、ガラス製のマイクロピペット(針状のガラス)を使用して、誘電体の帯電列では正極に帯電し易いガラスを摩擦することによりマイクロピペットに生じる静電気を利用して、微小異物の採取を図るなどの方法が知られている。
【0009】
しかしながら、採取すべき微小異物も正極に帯電していた場合には、逆に採取が難しくなったり、また、マイクロピペットの先端部で微小異物の存在する場所を突っついたり、掘り出しを行うと、ガラスであるために容易に割れてしまう欠点があった。
【0010】
これに対して、マイクロビーズに接する部分に高電圧を与えて、マイクロビーズを帯電させて吸着する方法が、例えば、特開2001−1286号公報(特許文献1)に提案されている。
【0011】
また、別の手段としては、互いに絶縁された一対の電極のそれぞれの表面に隣接して、被吸着物を媒質とするコンデンサーを形成し、電極間に電位差を与えることにより、被吸着物を静電気力で電極に吸着する方法が、例えば、特開2003−103487号公報(特許文献2)に提案されている。
【0012】
以下に、公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開2001−1286号公報
【特許文献2】特開2003−103487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、以上のような状況を背景になされたものであり、大掛かりな高圧電源や、電気回路、装備などを必要せず、取出しの困難な微小異物を簡単な方法により容易にピックアップして次の解析などへステップアップできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、先端部が尖鋭又は角錐状若しくは円錐状の金属製ニードル1と、アース接地された導電材部2と、該金属製ニードル1の末端部に前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを備え、前記金属製ニードル1の先端部側以外の基部と導電材部2と開閉接点部3とが柄部6に装着固定されているたことを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1は、該金属製ニードル1表面の気中自然放電電荷量未満の約±1〜±1000eVの電荷量に自然帯電可能であることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0016】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1の導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至2のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1の先端部表面及び該金属製ニードル1の導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0018】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターにおいて、前記帯電用被覆層4が、前記柄部6と接する金属製ニードル1の基部表面に設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0019】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1乃至5のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1を装着固定する柄部6の先端部側に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を使用することにより形成された
帯電用領域7が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0020】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項1乃至6のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターにおいて、前記誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質が、正極帯電用の物質としての酸化珪素(ガラス)又はナイロン樹脂であり、負極帯電用の物質としてのフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂であることを特徴とするマイクロマニピュレーターである。
【0021】
本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1乃至7のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターの開閉接点部の電気的接続をONに切り換えて、前記金属製ニードルをアース接地された前記導電材に接続してアース接地した後に、前記金属製ニードルを、予め帯電している粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該金属製ニードル表面に前記帯電している微小絶縁物の静電誘導による逆極性の静電気を帯電させ、互いに逆極性に帯電した静電気のクーロン力により該金属製ニードル表面に微小絶縁物を静電吸着させて採取することを特徴とするマイクロマニピュレーターを用いた微小物採取方法である。
【0022】
本発明の請求項9に係る発明は、上記請求項1乃至7のいずれか1項に係るマイクロマニピュレーターの開閉接点部の電気的接続をOFFに切り換えて、前記金属製ニードルを該金属製ニードル表面の気中自然放電電荷量未満の±1〜±1000eVの電荷量に自然帯電させた後に、該金属製ニードルを粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該微小絶縁物表面に、前記帯電している金属製ニードルの静電誘導による逆極性の静電気を帯電させ、互いに逆極性に帯電した静電気のクーロン力により該金属製ニードル表面に微小絶縁物を静電吸着させて採取することを特徴とするマイクロマニピュレーターを用いた微小物採取方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマイクロマニピュレーターは、金属製ニードル1と、アース接地された導電材部2と、該金属製ニードル1の末端部に前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを備えており、微小異物を採取する際には、開閉接点部3をONに切り替えて、金属製ニードル1とアース接地された導電材部2とを通電接続することにより、金属製ニードル1の帯電電荷量を、アース接地された導電材部2の帯電電荷量と同じ電荷量(例えば±0eV)にすることができる。
【0024】
そして、電荷量が±0eVのアースされた状態の前記金属製ニードル1を粒径1〜100μm程度の帯電している微小絶縁物に近づけた時には、金属製ニードル1の表面には、予め帯電している微小絶縁物の静電気の静電誘導により、該微小絶縁物の帯電電荷極性(正極、又は負極)とは逆極性(負極、又は正極)の電荷の静電気が帯電し、この互いに相違する逆極性による金属製ニードル1と微小絶縁物との間のクーロン力によって、金属製ニードル1先端部1aの表面に微小絶縁物を静電吸着させて採取することができる。
【0025】
また、微小異物を採取する際には、開閉接点部3をOFFに切り替えて、金属製ニードル1とアース接地された導電材部2とを遮断開放して、金属製ニードル1を自然放置又は逆極性に帯電し易い帯電列の素材による摩擦若しくは接触により、該金属製ニードル1を、±1〜±1000eV程度の該金属製ニードル1先端からの自然放電帯電電荷量未満の電荷量に帯電させることができる。
【0026】
そして、±1〜±1000eV程度の電荷量に帯電している状態の前記金属製ニードル1を、粒径1〜100μm程度の微小絶縁物に近づけた時には、微小絶縁物の表面には、金属製ニードル1に帯電している±1〜±1000eV程度の電荷量の静電気の静電誘導により、該金属製ニードル1の静電気の電荷極性(正極、又は負極)とは逆極性(負極、
又は正極)の電荷の静電気が帯電し、この互いに相違する逆極性による金属製ニードル1と、微小絶縁物との間のクーロン力によって、金属製ニードル1先端部1aの表面に、微小絶縁物を静電吸着させて採取することができる。
【0027】
さらに、本発明のマイクロマニピュレーターは、金属製ニードル1の表面のうち、アースに接地された導電材部2との接続部分である開閉接点部以外の部分に、誘電体の帯電列における正極、或いは負極に帯電し易い物質を、真空蒸着或いは塗工することにより帯電用被覆層4を形成したり、あるいは金属製ニードル1の取り付けられた柄部6の先端部(基部)の部材に、誘電体の帯電列における正極、或いは負極に帯電し易い物質を使用したりして、帯電し易くすることにより、静電気のクーロン力、或いはその静電誘導によるクーロン力によって、1〜100μm程度の微小絶縁物を容易に採取することができるようになる。
【0028】
また、既存の金属製ニードルや、それを装備したマイクロマニピュレーターを、上述したように少し工夫するだけで、従来の問題が解決でき、各種製品の品質管理や、生産効率向上、歩留まり向上へ、迅速な対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を、実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。
【0030】
本発明のマイクロマニピュレーターは、図1の側断面図に示すように、先端部1aが尖鋭、又は角錐状若しくは円錐状の金属製ニードル1と、末端配線部2bにてアース接地された導電材部2と、金属製ニードル1の末端部1bに該末端部1bと導電材部2の先端部2aとの電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを備えている。
【0031】
そして、前記金属製ニードル1の先端部1a側以外の末端部1b側の基部と導電材部2と開閉接点部3とが、木製、又はプラスチック製、又はセラミック製の柄部6によって装着保持されて固定されているものである。
【0032】
前記金属製ニードル1は、自然帯電可能な金属材料であって、金属製ニードル1の末端部1bと導電材部2の先端部2aとの電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をOFFにして電気的接続を遮断して、自然放置するか、又は、金属製ニードル1に対して逆の極性電荷に帯電し易い素材(後述)を用いて、該金属製ニードル1を摩擦するか若しくは接触させることにより、金属製ニードル1の表面からの気中にて自然放電する帯電電荷量未満の電荷量の、例えば±1〜±1000eV程度の電荷量に自然帯電させることが可能である。なお、1eV(エレクトロンボルト)のエネルギーは、SI単位に換算すると、1×1.60219×10-19 J(ジュール)、又は1×1.60219×10-19 N・mである。
【0033】
本発明のマイクロマニピュレーターは、図2の側断面図に示すように、金属製ニードル1の末端部1bにおける前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられている。
【0034】
又は、図3に示すように、前記金属製ニードル1の先端部1aの表面、及び該金属製ニードル1の末端部1bにおける前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられている。又は、前記金属製ニードル1の前記柄部6と接する表面に前記帯電用被覆層4が設けられていてもよい。
【0035】
又は、図4に示すように、前記金属製ニードル1を装着固定する柄部6の先端部側に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を使用することにより形成された帯電用領域7が設けられていてもよい。
【0036】
前記誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質としては、正極帯電用の物質として、酸化珪素(ガラス)又はナイロン樹脂等を挙げることができ、負極帯電用の物質として、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明のマイクロマニピュレーターを用いた微小帯電物採取方法の実施の形態を以下に詳細に説明する。
【0038】
図1〜図4に示す本発明のマイクロマニピュレーターのうちいずれかのマイクロマニピュレーターを用いて微小帯電物を採取するものであるが、その一実施の形態としては、例えば図1に示すマイクロマニピュレーターの金属製ニードル1の末端部1aと、導電材部2の先端部2aとの接続点である開閉接点部3の電気的接続をONに切り換えて、金属製ニードル1の末端部1aと導電材部2の先端部2aとを通電接続し、金属製ニードル1をアース接地された前記導電材部2に接続してアース接地して、金属製ニードル1の帯電電荷量をアース接地と同じ電荷量の±0eV(アース電荷量)にする。
【0039】
続いて、前記金属製ニードル1の先端部1aを、予め帯電電荷量が±0eVの静電気を帯電した状態の粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該金属製ニードル1の表面に、微小絶縁物の帯電している静電気の静電誘導により、該微小絶縁物の帯電電荷に対して逆極性の静電気を帯電させて、互いに相違する逆極性電荷の静電気のクーロン力により、その金属製ニードル1の先端部1aの表面に該微小絶縁物を静電吸着させて採取するものである。
【0040】
本発明のマイクロマニピュレーターを用いた微小帯電物採取方法の他の実施の形態としては、例えば、図1に示すマイクロマニピュレーターの金属製ニードル1の末端部1bのON/OFF切り替え開閉接点部3をOFF(開放)に切り替えて、金属製ニードル1の末端部1bと導電材部2の先端部2aとの電気的接続を遮断し、金属製ニードル1のアース接地を解除する。
【0041】
続いて、金属製ニードル1を自然放置して自然帯電させるか、又は金属製ニードル1を後述する素材に接触させるか、又は後述する素材と摩擦することにより、金属製ニードル1(帯電用被覆層4の形成されていないもの、又は帯電用被覆層4の形成されているもの)の表面に正極(+)又は負極(−)の電荷の静電気を帯電させる。
【0042】
この金属製ニードル1は、大気中にて自然放電する帯電量未満の電荷量まで帯電させることができ、例えば、±1〜±1000eVの電荷量になるまで、帯電させることができる。
【0043】
続いて、±1〜±1000eVの大気中にて自然放電する電荷量未満の電荷量まで帯電させた前記金属製ニードル1の先端部1aを、粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該微小絶縁物の表面に、前記金属製ニードル1の電荷量±1〜±1000eVの静電気の静電誘導により、該金属製ニードル1の静電気の電荷に対して逆極性の静電気を帯電させて、互いに相違する逆極性電荷の静電気のクーロン力により、その金属製ニードル1の先端部1aの表面に該微小絶縁物を静電吸着させて採取するものである。
【0044】
本発明においては、金属製ニードル1がアースに接地された導電材部2に対して電気的にONの状態であって、接続されていると、アースからの電荷の出入りが可能となる。そのため、静電気を帯びた微小絶縁物に金属製ニードル1を近づけると、静電誘導により、金属製ニードル1の表面には、微小絶縁物とは反対極性の電荷がアースから集まる。
【0045】
この静電誘導により、引き合う力(クーロン力)が生じて付着力が生まれる。この時、金属製ニードル1が、アースに接地された導電材部2と電気的にOFFの状態であって、接続されていなければ、金属製ニードル1中の自由電子が微小絶縁物の帯電を中和するように出入りするだけで、この様な付着力は生まれず、微小物の帯電量が大きく絶縁性が高ければ、中和しきれずに逆に付着し難くもなる。
【0046】
金属製ニードル1の金属素材としては、白金、タンタル、モリブデン、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅、チタニア、ステンレス、鉄、錫、タングステン、及びこれらの合金などが含まれるが、特に制限はない。このうち、特に優れた機械的強度と硬度を有するタングステン、タングステン合金を用いるのが好ましい。これらは、直径1mmφ程度の繊維状物(針状物)を適宜長さに切断して、その一端部を公知の電解研磨法や機械研磨法により尖鋭、或いは角錐状又は円錐状に加工して先端部1aを形成する。先端部1aの最先端の径は、1μm〜20μm程度、好ましくは2.5μm〜5μm程度あれば、微小絶縁物(微小異物)を採取し易い。
【0047】
また、本発明のマイクロマニピュレーターにおいては、下記に示す帯電列において正極、或いは負極に帯電し易い物質を、図2、図3に示すように、金属製ニードル1の表面に真空蒸着或いは塗工することにより帯電用被覆層4を形成したり、図4に示すように、金属製ニードル1を装着固定する柄部6の先端部側の素材に使用することにより帯電用領域7を形成したりして、故意に、静電気を金属製ニードル1の表面に帯電させて微小絶縁物(微小異物)を採取し易くすることができる。
【0048】
帯電列(帯電系列)とは、二つの物質を接触、或いは摩擦させた時に、正極に帯電し易い物質から、負極に帯電し易い物質まで、一列に並べたものであり、正極(+)に帯電し易い物質から負極(−)に帯電し易い物質までを順に列挙すると、(+)側、空気、ガラス、人毛、ナイロン、ウール、毛皮、アルミ、ポリエステル、紙、木綿、鉄、アセテートファイバー、ニッケル、銅、銀、真ちゅう、ステンレス、ゴム、アクリル、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、サラン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、テトラフロロエチレン(テフロン(登録商標))(−)側となる。
【0049】
正極側にある物質と負極側にある物質とを接触、或いは摩擦させると、前者は正極性に、後者は負極製に帯電する。接触帯電における帯電極性および帯電圧の大小は、2つの物質の帯電列上の位置(仕事関数の差)によって決まる。
【0050】
これらの物質のうち、正極側のガラスやナイロン、負極側のポリ塩化ビニルやテフロン(登録商標)などは、非常に帯電し易く、負極側のこれらは、帯電列上の正極側にある空気中に放置しておくだけで帯電する。
【0051】
また、帯電列において正極、或いは負極に帯電し易いこれらの物質を、金属製ニードル1の表面上に被覆することにより帯電用被覆層4を形成する方法としては、ガラスの場合は、通常の真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法やプラズマ気相成長法(CVD法)により酸化珪素(ガラス)層を設けたり、金属アルコキシドを原料とするSol−Gel法に基づき、ディップコーティング法により酸化珪素(SiO2 )薄膜を形成させることができる。層厚(膜厚)は、両方ともに、100〜300nm程度が好ましく、100nm以下であると効果が低く、300nm以上であると薄膜に亀裂が
生じ易くなる。
【0052】
また、ナイロン樹脂なども、その原料溶液や溶融溶液、溶媒溶液などに金属製ニードル1を浸漬し、ゆっくり引き上げるディップコーティング法により、金属製ニードル1の表面にナイロン樹脂の薄膜を被覆して、帯電用被覆層4を形成することが可能である。膜厚は、100〜300nm程度が好ましく、100nm以下だと効果が低く、300nm以上だと薄膜の亀裂が生じ易くなる。
【0053】
また、金属製ニードル1の表面のうち、末端部1bの表面あるいは先端部1aと末端部1bの表面など、金属製ニードル1の部分的な表面に帯電用被覆層4を形成しない場合には、その部分的な表面にフォトレジスト剤やマスキング剤を適用することにより、末端部1bの表面あるいは先端部1aと末端部1bの表面以外の表面に帯電用被覆層4を形成することができる。また、金属製ニードル1の全表面に帯電用被覆層4を形成した後に、機械的な切削加工により、帯電用被覆層4を部分的に切削除去することも可能である。
【0054】
このように、正極側にある物質又は負極側にある物質からなる帯電用被覆層4を被覆した金属製ニードル1の該帯電用被覆層4の表面に、その帯電用被覆層4の物質とは逆の極側にある物質を接触させるか、又は擦り合わせて摩擦することにより、前述したように正極側にある物質と負極側にある物質とを接触或いは摩擦させると、前者は正極性に後者は負極製に帯電することから、該金属製ニードル1の正極側にある物質又は負極側にある物質からなる帯電用被覆層4は、その極側の極性に帯電するとともに、該帯電用被覆層4の下層にある金属製ニードル1の金属表面も同一極性に帯電する。
【0055】
また、金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2との電気的接続をON/OFFに切り替えることにより、適宜に制御することが可能である。
【0056】
また、金属製ニードル1の先端部1aのみ、帯電用被覆層4を除去した場合の先端部1aの帯電は、金属製ニードル1の素材と、被覆化された帯電用被覆層4を構成する物質の帯電列(仕事関数)の関係で異なるが、多くの場合、帯電用被覆層4の物質と同一極性で帯電する。
【0057】
金属製ニードル1の先端部1aに被覆形成された帯電用被覆層4の除去方法としては、金属製ニードル1の周方向に回転させながら、紫外線レーザ光を先端部1aに照射して、分解除去することもできるが、簡単に行う方法としては、サンドペーパー(紙ヤスリ)など、ヤスリにより擦り落しても構わない。好ましい方法としては、回転円盤上に配置した研磨紙を使った研磨やバフを使った研磨が、金属製ニードル1の先端部1aの形状を損なわずに顕微鏡で確認しながら加減して行えるので好ましい。
【0058】
また、正極側のナイロン樹脂や負極側のポリ塩化ビニルやテフロン(登録商標)などのプラスチックスは、成形加工し易い物質なので、公知の圧縮成型や押出し成形、溶融成形によって、任意の形状の部材を作製し、図4に示すように、それを金属製ニードル1の基部を取付け装着する柄部6の先端部の部材として使用して帯電用領域部7とすることができる。この場合、単純に金属製ニードル1を柄部6の先端部の部材に突き通すことにより作製することが可能であり、その場合の金属製ニードル1の帯電極性は、前記同様に、部材の作製に使用した物質と同一極性で帯電する場合が多い。
【0059】
また、金属製ニードル1の表面の静電気の帯電電荷量は、正極、或いは負極の1〜1000eV程度が適当と考えられ、±1eV以下(即ち、−1eV〜+1eV)であると、静電気の効果が低く、±1000eV以上(即ち、−1000eV以下、+1000eV以上)であると、金属製ニードル1の先端部1aが尖鋭なために気中放電を起してしまう
場合がある。より好ましい金属製ニードル1の帯電量は、正極、或いは負極の10〜500eV程度が、微小絶縁物の採取と金属製ニードル1から分析装置の測定個所への採取された微小絶縁物の取り離し(捕集)が容易と考えられる。
【実施例】
【0060】
本発明のマイクロマニピュレーター及びそれを用いた微小絶縁物の採取方法を、具体的な実施例に従って以下に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0061】
<実施例1>
図1に示すように、直径1mmφ、先端部1aの径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1の末端部1b側の基部を、アースに接地された導電材部2と、電気的接続がON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを付加した専用の柄部6に装着して、実施例1のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0062】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記実施例1にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、ON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をONにして金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2とを電気的に接続し、金属製ニードル1をアースに接地された状態にして採取したところ、アクリル系樹脂の微小粉体は金属製ニードル1によって直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0063】
<実施例2>
上記実施例1の微小絶縁物として、ナイロン樹脂の微小粉体を用いた以外は、実施例1にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、実施例1と全て同じ操作を行った所、実施例1と同様に直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0064】
<実施例3>
図2に示すように、直径1mmφ、先端部1aの径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1の末端部1bのみマスキング剤にてマスキングした後、該金属製ニードル1を電子線加熱方式による真空蒸着装置内に均等に蒸着するような位置に設置し、酸化珪素を蒸発させ、そこに酸素ガスを導入して、金属製ニードル1の末端部1b以外の全表面に膜厚200nmの酸化珪素の蒸着薄膜による帯電用皮膜層4を形成した。
【0065】
次に、上記金属製ニードル1の末端部1b側の基部を、アースに接地された導電材部2と、電気的接続がON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを付加した専用の柄部6に装着して、実施例3のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0066】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記実施例3にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、ON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をONにして金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2とを電気的に接続し、金属製ニードル1をアースに接地された状態にして採取したところ、アクリル系樹脂の微小粉体は金属製ニードル1によって直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0067】
<実施例4>
図3に示すように、直径1mmφ、先端部1aの径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1の末端部1bのみマスキング剤にてマスキングした後、該金属製ニードル1を電子線加熱方式による真空蒸着装置内に均等に蒸着するような位置に設置し、酸化珪素を蒸発させ、そこに酸素ガスを導入して、金属製ニードル1の末端部1b以外の全表面に膜厚200nmの酸化珪素の蒸着薄膜による帯電用皮膜層4を形成した。
【0068】
続いて、上記帯電用皮膜層4を形成した金属製ニードル1の先端部1aを、回転円盤上のバフに当ててバフ研磨を行い、該先端部1aの帯電用皮膜層4を除去して金属製ニードル1の金属面を露呈させた。
【0069】
次に、上記金属製ニードル1の末端部1b側の基部を、アースに接地された導電材部2と、電気的接続がON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを付加した専用の柄部6に装着して、実施例4のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0070】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記実施例4にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、ON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をONにして金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2とを電気的に接続し、金属製ニードル1をアースに接地された状態にして採取したところ、アクリル系樹脂の微小粉体は金属製ニードル1によって直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0071】
<実施例5>
図2に示すように、直径1mmφ、先端部1aの径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1の末端部1bのみマスキング剤にてマスキングした後、該金属製ニードル1を原料のテトラエトキシシラン(Si(OC2 5 4 )に0.1Nの塩酸水溶液とエタノールを加え30分間攪拌して加水分解させた溶液に、先端部1aから浸漬して、ゆっくり引き上げ(ディップコーティング)、これを300〜450℃で熱処理することにより、金属製ニードル1の末端部1b以外の全表面に膜厚200nmのディップコート薄膜による帯電用皮膜層4を形成した。
【0072】
次に、上記金属製ニードル1の末端部1b側の基部を、アースに接地された導電材部2と、電気的接続がON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを付加した専用の柄部6に装着して、実施例5のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0073】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記実施例5にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、ON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をONにして金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2とを電気的に接続し、金属製ニードル1をアースに接地された状態にして採取したところ、アクリル系樹脂の微小粉体は金属製ニードル1によって直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0074】
<実施例6>
図4に示すように、直径1mmφ、先端部1aの径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1の末端部1b側の基部を、アースに接地された導電材部2と、電気的接続がON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを付加した専用の柄部6に装着し、その柄部6
の先端部側に、該金属製ニードル1に密接するようにして、誘電体の帯電列における正極に帯電し易い物質としてナイロン樹脂、或いは負極に帯電し易い物質としてフッ素樹脂を使用して形成した先端柄部を帯電用領域7として設けて、実施例6のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0075】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記実施例6にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて、ON/OFF切り替え可能な開閉接点部3をONにして金属製ニードル1とアースに接地された導電材部2とを電気的に接続し、金属製ニードル1をアースに接地された状態にして採取したところ、アクリル系樹脂の微小粉体は金属製ニードル1によって直ぐに容易に採取でき、採取された微小粉体を分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約30秒間で完了した。
【0076】
<比較例1>
直径1mmφ、先端径が5μmのタングステン製の金属製ニードル1を、通常市販されている固定用金具の付いた専用の柄部6に装着して、比較例1のマイクロマニピュレーターを作製した。
【0077】
そして、採取用の微小絶縁物として、予め分析しておいたアクリル系樹脂の微小粉体(粉体の平均粒径;約50μm)をアルミ箔上に置き、その微小粉体を、顕微鏡観察しながら、上記比較例1にて作製したマイクロマニピュレーターを用いて採取したが、そのマイクロマニピュレーターの金属製ニードル1を近づけると微小粉体が反発してしまい、採取が容易ではなかった。そして、漸く採取された微小粉体を、分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約5分間を要し、上記実施例1〜5にて作製した各々マイクロマニピュレーターを用いて採取した場合に比較して微小絶縁物の採取に時間を要した。
【0078】
<比較例2>
上記比較例1における採取用の微小絶縁物が、ナイロン樹脂の微小粉体である以外は、比較例1と同様にして採取操作を行った所、金属製ニードル1とナイロン樹脂の微小粉体との相互作用(静電誘導、静電吸着作用)が低く、なかなか金属製ニードル1に微小粉体が付着せず、採取が容易ではなかった。そして、漸く採取された微小粉体を、分析機器のスライドガラス(測定容器)に移動するのに約2分間を要し、上記実施例1〜5にて作製した各々マイクロマニピュレーターを用いて採取した場合に比較して微小絶縁物の採取に時間を要した。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のマイクロマニピュレータの一実施の形態を示す概要断面図。
【図2】本発明のマイクロマニピュレータの他の実施の形態を示す概要断面図。
【図3】本発明のマイクロマニピュレータのその他の実施の形態を示す概要断面図。
【図4】本発明のマイクロマニピュレータのその他の実施の形態を示す概要断面図。
【符号の説明】
【0080】
1…金属製ニードル
1a…先端部
1b…末端部
2…導電材部
2a…先端部
2b…末端部
3…ON/OFF切り替え可能な開閉接点部
4…帯電用被覆層
6…柄部
7…帯電用領域部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が尖鋭又は角錐状若しくは円錐状の金属製ニードル1と、アース接地された導電材部2と、該金属製ニードル1の末端部に前記導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3とを備え、前記金属製ニードル1の先端部側以外の基部と導電材部2と開閉接点部3とが柄部6に装着固定されているたことを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1は、該金属製ニードル1表面の気中自然放電電荷量未満の約±1×〜±1000eVの電荷量に自然帯電可能であることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1の導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項4】
請求項1乃至2のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1の先端部表面及び該金属製ニードル1の導電材部2との電気的接続をON/OFF切り替え可能な開閉接点部3の表面以外の表面に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を真空蒸着或いは塗工することにより形成された帯電用被覆層4が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記帯電用被覆層4が、前記柄部6と接する金属製ニードル1の基部表面に設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記金属製ニードル1を装着固定する柄部6の先端部側に、誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質を使用することにより形成された帯電用領域7が設けられていることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターにおいて、前記誘電体の帯電列における正極或いは負極に帯電し易い物質が、正極帯電用の物質としての酸化珪素(ガラス)又はナイロン樹脂であり、負極帯電用の物質としてのフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂であることを特徴とするマイクロマニピュレーター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターの開閉接点部の電気的接続をONに切り換えて、前記金属製ニードルをアース接地された前記導電材に接続してアース接地した後に、前記金属製ニードルを、予め帯電している粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該金属製ニードル表面に、前記帯電している微小絶縁物の静電誘導による逆極性の静電気を帯電させ、互いに逆極性に帯電した静電気のクーロン力により該金属製ニードル表面に微小絶縁物を静電吸着させて採取することを特徴とするマイクロマニピュレーターを用いた微小物採取方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のマイクロマニピュレーターの開閉接点部の電気的接続をOFFに切り換えて、前記金属製ニードルを該金属製ニードル表面の気中自然放電電荷量未満の±1〜±1000eVの電荷量に自然帯電させた後に、該金属製ニードルを
粒径1〜100μmの微小絶縁物に接近させて、該微小絶縁物表面に、前記帯電している金属製ニードルの静電誘導による逆極性の静電気を帯電させ、互いに逆極性に帯電した静電気のクーロン力により該金属製ニードル表面に微小絶縁物を静電吸着させて採取することを特徴とするマイクロマニピュレーターを用いた微小物採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68830(P2006−68830A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251920(P2004−251920)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】