マイクロメカニカル接合方法
【課題】超小型チョークコイル等の電力系・電波系部品の一部である極細電線と端子との接合方法を提供し、電線に被膜が施されていても確実な導通を得る。
【解決手段】電線3を端子等の母材2に接合するメカニカル接合方法を開示しており、このメカニカル接合方法は、母材2に、溝4を形成する溝形成手順と、電線3を溝4内に設置し固定する設置手順と、溝4の少なくとも一方の側部において、母材2にツール8を圧入してツール8を圧入した付近の母材2が電線3を包み込むように変形して、電線3と母材2を接合する圧入手順とを具備する。電線3に施された被膜の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して電線と母材を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備することを特徴とする。
【解決手段】電線3を端子等の母材2に接合するメカニカル接合方法を開示しており、このメカニカル接合方法は、母材2に、溝4を形成する溝形成手順と、電線3を溝4内に設置し固定する設置手順と、溝4の少なくとも一方の側部において、母材2にツール8を圧入してツール8を圧入した付近の母材2が電線3を包み込むように変形して、電線3と母材2を接合する圧入手順とを具備する。電線3に施された被膜の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して電線と母材を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の接合方法に係り、より特別には、細電線又は極細電線を端子等に接合するための機械的接合方法であるマイクロメカニカル接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のマイクロエレクトロニクスの発展は微細な電子部品の製造技術に依存している。一方、携帯電話などに代表されるような電子機器には、さらに一層の小型化が要求されており、それらを構成する集積回路などは小型化、高密度化が弛まなく進められている。LSIの集積化が進むと動作速度の高速化と入力端子の多ピン化が必然的に要求される一方で、電子機器の小型・軽量化にともないデバイスの小型化も要求される。LSIの接続は、LSIチップの端子から入出力信号を取り出すための内部接続と、LSIパッケージとプリント回路基板を接合する外部接続とからなっている。内部接続は、従来Auワイヤボンディング法が主流であったが、多ピン化と高速化が同時に実現できるバンプ接合によるフリップチップ法が注目されるようになってきている。外部接続は、従来の表面実装型のリードをもったQFP(Quad Flat Package)に代わって、ソルダバンプを使い、高速化、多ピン化、小型化に応えられるソルダバンプ接続が注目を集め、急激に利用範囲が拡大している。
【0003】
このように集積チップの接合法の研究には様々な報告がなされている。これに対し、電力系、電波系の部品−超小型チョークコイル、超小型コンデンサ等は、小型化が可能であるものの、小型化した部品の実装が難しく、製品開発及び実用化を遅延させる一因となっている。
【0004】
例えば、小型軽量電子機器に使用されるチョークコイルの場合、直径数10μmの極細電線を用いてソレノイドコイルを作成することが可能である。しかし、その極細電線を端子に接続する際に非常な困難を伴う。すなわち、極度に細い電線であるため、折り曲げれば切断される。超音波接合などでは、往々にして、超電波振動子(コーン)で極細電線を押しつぶし、破断の原因を作る。一方で、変形させないようにしてはんだ付けをすると、極細電線とはんだの金属反応により細線を溶融させてしまう恐れがある。また、製造コストや環境問題の観点からも、はんだの使用は極力避ける傾向にあり、新たな微細接合技術の開発が望まれている技術分野となっている。
【0005】
集積回路・集積チップに適用されるマイクロ接合技術としては、マイクロソルダリング(はんだ付)技術をはじめとして様々な技術が実用化されているが、これに対し、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の場合、部品の一部である極細電線の太さが数10μmオーダー(毛髪の太さの数分の一)になると、極細電線を端子へ固定する際にはんだ付けを用いると、極細電線とはんだとの溶解反応により、図10に示すように細線が溶融されてしまう。このため、これら部品の製作及び基板への実装にはんだ付けを用いることが難しく、これが超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の実用化を遅延させる一因となっている。すなわち、従来技術としては「はんだ付け」があるが、はんだ付けでは、本発明で目的としている極細電線と端子との接合を十分に達成できるとは言えない。
【0006】
毛髪よりも細い銅線に対し、溶融はんだを接触させると、金属・合金間の溶解反応により、極細銅線は溶解破断する危険性が高い。そこで、はんだを用いない接合技術が必要となる。金属・合金の溶解を伴わない接合方法としては、金属・合金同士の固相接合技術と機械的接合(結合)技術がある。極細線の固相接合技術としては、LSI端子接続に用いられるワイヤボンディング技術がよく知られている。これは金細線を塑性変形させながら端子に圧着させる技術で、酸化皮膜を殆ど形成しない金線に対しては、有効な技術である。しかし、金と比較して酸化皮膜を形成しやすく、且つ塑性変形しにくい銅線に対しては、ワイヤボンディング技術は適用が難しい。接合しにくい銅線に対し、無理に塑性変形を起こさせると、銅線は容易に破断し、接合は行えない。そこで、出願人は、極細電線には殆ど変形を与えず、多少の塑性変形を与えても破断・破壊することのない端子側本体(母材)に対し、極細電線を包み込むような塑性変形を起こさせることにより接合を達成する、新規な機械的方法が本発明のメカニカル接合方法、特には、マイクロメカニカル接合方法を考案した。
【0007】
極細電線に対しては変形や加熱を加えず,端子側の接合部のみに微細な塑性変形を生じさせ、極細電線を端子側金属で包み込むように接合する方法が有効であると考えられる。単に機械的に保持することによって達成される接合は一般にメカニカル接合と呼ばれるが、サブミリ〜ミクロンオーダーでこれを実現させる技術として、出願人は、下記の特許文献1を既に出願しているが、この文献以外には、これまでに報告が無く新規性の高い技術と考えられる。特許文献1の内容は、本発明において組み込まれる。特許文献1では、マイクロメカニカル接合により極細電線を微小端子に強固に固定する技術は確立されているが、極細電線に絶縁被膜が施されている場合には、絶縁被膜を確実に破壊して、電線と母材との導通を確保しなければならない。従って、絶縁被膜を有する電線に関しても、確実に導電性を確保できるマイクロメカニカル接合に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−282573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線と端子との接合方法を提供することを目的とする。極細電線をメカニカルに接合しようとする発想は新規性が高く、類似の発想に関する報告は、出願人による文献以外にはこれまでのところ見あたらない。この技術は、それ程容易な技術とは言えず、極細電線を切断・破断せずに目的箇所に設置し、その近傍の端子母材に微小塑性変形を起こさせて、その極細電線を切断・破断せずに包み込むように固定し且つ被膜を有する電線と母材間の電気的な導通を確保する接合方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、電線と端子部の接合においては、従来はんだによる接合が一般的に行われてきたが、環境問題等のある、はんだを使用せず、別の方法である本願において呼ぶところのメカニカル接合を使用した電線の接合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの形態は、上述した目的を達成するために、電線(3)を端子等の母材(2)に接合するメカニカル接合方法を開示しており、このメカニカル接合方法は、母材(2)に、溝(4)を形成する溝形成手順と、電線(3)を溝(4)内に設置し固定する設置手順と、溝(4)の少なくとも一方の側部において、母材(2)にツール(8)を圧入して、ツール(8)を圧入した付近の母材(2)が電線(3)を包み込むように変形して、電線(3)と母材(2)を接合する圧入手順とを具備する。電線(3)に施された被膜(32)の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して電線(3)と母材(2)を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備することを特徴とする。
【0012】
被膜破壊手段は、溝(4)の底面の一方の角部に設けられた矩形状で段差状の突起(5)等の機械的に実施される手段であることが好ましい。
【0013】
溝(4)の寸法・形状、突起(5)の寸法・形状、前記ツール(8)の形状、打ち込み位置及び打ち込み深さを少なくとも含むメカニカル接合の諸元を有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することが好ましい。
【0014】
本発明の別の形態において、被膜破壊手段は、溝(4)を横切るようにツール(8)を、溝(4)の長手方向に対して斜めに打ち込むことにより実施される機械的な手段であっても良い。
【0015】
本発明の更に別の形態において、被膜破壊手順は、熱を電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されても良く、あるいは薬品を電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されても良い。
【0016】
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以上のように、これまで、はんだ付けでは実現できなかった極細銅線の端子への接合が可能となり、その技術が必要とされる電子部品の製造が可能となる。
電線に被膜が施されている場合においても、例えば、溝に突起(又は、段差)等の被膜破壊手段を設けることにより、被膜を破壊し、電線と母材を電気的に確実に導通させることが出来る。
また、これまで、はんだ付けにより接合を行ってきたやや太めの銅線と端子の接続に適用することで、接合には本来余分な材料である「はんだ」が不要となり、コスト節減および環境問題改善等への大きな効果を生み出す。
さらにマクロ的な部品へまで適用を拡大することを考えると、全世界におけるあらゆる電気・電子部品のはんだ付け部の多くが、本発明に基づく機械的接合(マイクロメカニカル接合)に置き換わることも想定される。鉛(Pb)フリーはんだへの移行が急務とされているが、その解決策の一つとしても、有力な技術と認識される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態のマイクロメカニカル接合方法の概念図であり、電線3を溝4に設置した状態を示す。
【図2】図2は、図1に示す第1の実施の形態の概念図において、ツール8を打ち込んで電線3と母材2を接合した状態を示す。
【図3】図3は、第1の実施の形態における突起5の種々の形状を示す概念図である。
【図4】図4は、極細電線の断面図の一例であり、銅線及び被膜の寸法が示されている。
【図5(a)】図5(a)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、有限要素分割を示す。
【図5(b)】図5(b)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果を示す。
【図5(c)】図5(c)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果の拡大図を示す。
【図6(a)】図6(a)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた別の状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果を示す。
【図6(b)】図6(b)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた別の状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果の拡大図を示す。
【図7】図7は、溝及び突起の寸法、ツール打ち込み位置及び深さを定義する図である。
【図8】図8は、本発明による接合部の断面写真であり、種々の接合条件(諸元)による例を示す。
【図9】図9は、本発明による接合部の断面写真であり、電線と母材が摩擦接合した例を示す。
【図10】図10は、はんだ付けにより破断した銅線(直径0.1mm)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の従来技術に関する説明で述べた問題点を考慮すると、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線に対しては、金属・合金の溶解を伴うはんだ付けではなく、端子側接合部を微細に塑性変形させ、極細電線を端子側金属で包み込むように接合する機械的接合法が有効であると考えられる。その機械的接合方法、即ちメカニカル接合方法の概念の一例を図1及び2に示す。但し、図1及び2に示す接合部の形状及び構成は、本発明であるメカニカル接合、特には、マイクロメカニカル接合に必要とされる接合部の一例に過ぎないことを付言しておく。
【0020】
以下、図面に基づいて、電線、特には極細電線の本発明の接合方法、即ち、マイクロメカニカル接合方法の実施の形態を詳細に説明する。図1と2は、本発明に係るマイクロメカニカル接合方法の第1の実施の形態の概念図を図解的に示している。
【0021】
まず図1を参照すると、ミクロンオーダーからサブミリオーダー(1mm以下)の直径Dを有する極細電線3(以下、電線3と呼ぶ)が、母材2に設けられた溝4に挿入するようにセットされた状態を示している。電線3は、例えば、図4に示すように、円形断面の銅線31(又は、銅線部分)の直径が80μmで、それに10μmの被膜32が施されて合計の直径が100μmである。本実施の形態において、電線3及び電線の接合されるべき端子部等の母材2の材質は、銅であるが、本発明はこれに限定されず、電線3及び母材2は、銅合金、金、鉄等の別の導電性材料であっても良く、それぞれが異なる導電性材料であっても良い。溝4の幅Bは、電線3の直径D(図4の例では100μm)より少し大きいので、やはりミクロンオーダーからサブミリオーダーである。
【0022】
本実施の形態において、溝4は、図1に示すごとく、矩形形状であり、溝4の底面の一方の角部に矩形形状の突起(又は、段差)5が設けられている。突起5の寸法は、電線3が溝内に設置された場合に、突起5が電線3に接触する程度の大きさであることが好ましいが、後記するように、溝4が変形させられた際に、突起5が電線3に接触する程度の大きさであっても良い。溝4は、三角形、台形、四角形、U字形状、J字形状等の別の断面形状であっても良い。溝4の深さHは、図1に示すごとく、電線3の直径Dより大きいことが好ましいが、Dより小さくても良い。溝4は、電線3の長手方向(図の紙面に垂直な方向)に伸張して、母材2のこの部分を貫通するように形成されることが好ましいが、本発明はこれに限らず、ある程度の長さだけを伸張するように形成されても良い。溝4及び突起5の加工は、放電加工、レーザー加工等の既知の加工方法であって良いが、電線3の寸法に対応する溝4の幅B及び深さH、及び突起5の形状・寸法に応じた溝加工方法が選択されて良い。溝4及び突起5は、圧刻等のより簡単で現場的な方法で加工することも可能である。
【0023】
本実施の形態の接合方法においては、平坦な母材2に溝4を加工して、その後電線3を溝4内に挿入するように設置する。この状態が図1に示される。その後、ツール8を溝4の周辺に打ち込むこと(打刻)又は押し込むこと(圧刻又は圧入)により、電線3を母材2で押し潰すように母材2を変形させて、電線3を母材2により押さえ込んで接触させることにより、電線3を母材2に接合する。この際、突起5(請求項における機械的な被膜破壊手段に相当する)の角が電線3と接触し、突起5の角は、電線3の被膜32にくい込み、被膜32を突き破って、突起5は銅線31に直接接触し、電線3と母材2は電気的に導通する(実験の実機におけるツール8の圧刻(押し込み)又は打刻状態を図8及び9に示している。)。図1及び2に示す本実施の形態においては、溝4の縁部からの距離S1が等しい位置で溝4の片側において、ツール8を母材2に打ち込む(圧入する)。
【0024】
上記の機械的な被膜破壊手段については、上記の矩形形状の突起5以外に、様々な形態が考えられる。突起5の別の形状の種々の例について、図3に示す。突起5は、図3に示すように、尖った三角形の錐形状や、鋸形状、丸みを持った形状等種々の形状が考えられる。突起5の設置位置は、溝4の底面の他、溝4の側面であっても良い。被膜破壊手段は、溝4を横切るようにツール8を溝4の長手方向に対して斜めになるように打ち込むことにより、電線3を押し潰しながら(電線3を切断しても良い)電線3と母材2を導通させるような形態であっても良い。
【0025】
本実施の形態におけるツール(又は、マイクロプロジェクションツール)8については、図1及び2に図式的に示すように、断面が三角形状で先端の尖った形状で、先端部が長手方向に三角柱状の楔状であるが、ツール8は、これ以外の形状、例えば、先端が円錐状、角錐状のもの、鑿状等の、母材2を図2に示すように変形可能な形状であれば良い。ツール8の先端形状についても、必ずしも先端が尖ってなくても良く、丸い形状、平らな形状等別の形状であっても良い。また、図1及び2の例では、ツール8の先端は、1つであり、溝4の長手方向に平行に、溝4の片側に打ち込まれるが、本発明はこれに限定されない。即ち、ツール8の先端は、前出の特許文献1のように2つあって、ツール8の先端が溝4の両側に打ち込まれても良い。また、ツール8の打ち込み方向は、溝4の長手方向に対して平行ではなく、斜めであっても良く、更には溝4を横断するように打ち込まれても良い。ツール8の圧入方向は、母材2に対して実質的に垂直な方向又は斜めの方向(横方向)であって良い。ツール8の材質については、母材よりも硬い材質であることが好ましく、例えば、工具鋼等が考えられる。また、特許文献1のごとく、母材2に小さな別の切り欠きを設け、その切り欠きにツール8を打ち込んでも良い。
【0026】
本発明は、特には、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線と端子との接合技術であるが、極細電線をメカニカルに接合しようとする発想は新規性が高く、類似の発想に関する報告は特許文献1以外に見あたらない。この技術はそれ程容易な技術とは言えず、極細電線を切断・破断せずに目的箇所に設置し、その近傍の端子母材に微小塑性変形を起こさせて、その極細電線を切断・破断せずに包み込むように固定するためには、固定時の全体的形状、例えば母材に予め微小な溝4を形成し、その中に正確に極細電線を設置し、その溝4の極近傍にくさび形状ツール8を押し込んだ際に、どのような塑性変形が起こり、どのような固定力が発生するか、不明である。従って、これらの点について、事前に有限要素解析して、溝4及び突起5の形状、ツール8の打ち込み位置及び深さ等の仕様を決定することが好ましい。また、単に機械的に保持することによって達成される接合は、一般にメカニカル接合と呼ばれるが、サブミリ〜ミクロンオーダーでこれを実現させる技術はこれまでに報告が無く、新規性の高い技術といえるので、本発明のメカニカル接合方法においては、まず有限要素解析により接合に必要な諸元を決定する解析手順を設けることが好ましい。
【0027】
解析手順の具体的な内容の説明については、実機実験の諸元を決めるために行った有限要素解析シミュレーションを説明することにより行う。
更に、極細電線(又は、電線)に対し殆どダメージを与えないまま確実に端子と接合するためには、単純に端子側に塑性変形を起こさせるだけでなく、接合部形状・構造ならびにそれらを形成するためのツール形状、打ち込み位置及び打ち込み深さ等について適正条件が存在すると考えられる。本発明においては、まず、有限要素解析により種々のシミュレーションを行い、必要とされる諸元の概要を明らかにした上で、接合装置を試作し、それらの接合諸元を実現させることで所望の接合が達成できることを実験により確認した。
【0028】
まず、有限要素解析によるシミュレーションを行い、接合強度を達成し且つ、絶縁被膜を破壊し導電性を確保するための具体的な接合部形状・寸法について検討したので、この一例を図5及び6に示す。その一例として,溝の底部側部に設定した段差(突起)の高さを極細電線直径Dの0.5倍に設定した場合について、図5(a)に有限要素分割、図5(b)に計算結果(von Mises等価応力図(塑性変形及び残留応力分布図))、図5(c)に計算結果の拡大図を示す。ここで、計算に用いた各パラメータは以下の通りとした。
・極細電線の直径:D=φ100μm,
・極細電線表面のポリウレタン絶縁被膜の厚さ:10μm,
・極細電線の芯線:直径φ80μmの無酸素銅,
・段差付き溝の開口部幅:1.5D,
・溝深さ:2.5D,
・段付部の高さ:0.5Dと0.75Dの2種類,
・端子全体の材質:無酸素銅
・楔の押し込み位置:段の付いていない側の溝壁から2Dの位置
・楔の半頂角:14°
図5(c)では、ポリウレタン絶縁被膜内の応力状況を分かりやすく示すため、応力の大きさを示す尺度を変更してある。溝内に設置した段差(突起)エッジ部の効果により、エッジ部との接触部分およびその反対側の溝側面との接触部分の極細電線内に大きな応力が発生している状況が分かる。図5で解析した諸元の例の場合、絶縁被膜を破壊し導電性を確保することが出来ると考えられる。
【0029】
図6に溝側底部の段差(突起)高さを極細電線直径の0.75倍に設定した場合のvon Mises等価応力図(塑性変形及び残留応力分布図)を示す。図5の計算結果に比べて、極細電線内に発生する応力は小さくなっている。また、極細電線が溝底部から浮き上がるように位置を移動していることも分かる。その結果、楔を押し込んだ側の溝側面との間に摩擦力が発生し、その摩擦発生部分においても絶縁被膜の破壊が生じる可能性も示されている。図6の例の場合も、絶縁被膜を破壊し導電性を確保することが出来ると考えられる。
【0030】
[試験結果]
上記に示すような有限要素解析によるシミュレーション結果を基に、実際に接合装置を組立てて、作成した接合部の断面状態を確認した。図7(a)に突起(又は、段差)を設置した溝の形状および寸法、図7(b)に楔の押し込み位置および押し込み深さの各パラメータ[イ]〜[ヘ]の定義を示す。また、上記シミュレーション結果を基に各パラメータを設定し、接合試験を実施した際のパラメータ設定例を表1に示す(表1のパラメータ(イ)〜(ヘ)の単位はμm)。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示した条件で接合を行った実施例を図8に示す。接合条件(パラメータ[イ]〜[ヘ]の大きさ)により、接合部の変形状況および絶縁被膜の破壊状況が異なるが、適切な条件を選択することにより導通確保が可能なことが分かる。図8の各図の番号と、表1のケースNoが対応する。ケースNo.(3)〜(5)の条件であれば、絶縁被膜を破壊し良好な導通を確保できることが分かる。
【0033】
図6において、楔を押し込んだ側の溝側面との間に摩擦力が発生し、その摩擦発生部分においても絶縁被膜の破壊が生じる可能性を示したが、実際に楔を押し込んだ側の側面と極細電線との接触部において、摩擦により絶縁被膜が破壊され導通が確保された実施例を図9に示す。また、表2に、極細電線と端子との間の導通試験結果について示す(表2のパラメータ(イ)〜(ヘ)の単位はμm)。
【0034】
【表2】
【0035】
溝底部に適切な突起(段差)5を設置して接合を行った場合には、表2中に示されるように全ての接合試験片において導通が確認され、本発明の有効性が示された。従って、本発明のマイクロメカニカル接合は、電線と母材(端子部等)の接合方法として十分な性能を実現可能であることが証明できた。試験結果等からすると、100%導通が得られるパラメータの範囲としては、例えば、次のものが少なくとも挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。250≦イ≦300、70≦ロ≦80、ハ=80、30≦ニ≦70、ホ=350、250≦ヘ≦350(単位μm)。
【0036】
上記の第1の実施の形態においては、はんだ付けの難しい100μm程度以下の微細電線の端子等の母材への接合をマイクロメカニカル接合で行う場合について説明したが、はんだ付け可能な電線についても、原理的には同様であるので、マイクロメカニカル接合を適用することが可能である。マイクロメカニカル接合により、はんだを使用せず、電線を接合できるので、はんだを使用することにより生じる、はんだリサクルに係わる問題、環境問題等を解決することが出来るメリットがある。
【0037】
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態における機械的な被膜破壊手段を使用せず、電線の被膜32の破壊を熱的に実施する。第2の実施の形態においては、電線3の被膜32に熱を作用させることにより、被膜32を少なくとも部分的に破壊することにより、電線3と母材2の電気的な導通を確立する。電線3と母材2の接合は、第1の実施の形態と同様に、溝4に電線3を設置し、ツール8により溝4周辺の母材2を変形することにより行う。電線3と母材2間の電気的導通は、被膜32が破壊されるので、電線3と母材2を接合すれば確立出来る。被膜32の破壊は、ツール8による電線3の母材2への接合前、接合中のいずれであっても良い。第2の実施の形態のその他の構成は、基本的に第1の実施の形態と同様であっても良い。
【0038】
第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における機械的な被膜破壊手段及び第2の実施の形態における熱的な被膜破壊手段を使用せず、電線3の被膜32の破壊を薬品等を使用して化学的に実施する。第3の実施の形態においては、電線3の被膜32に薬品を作用させることにより、被膜32を少なくとも部分的に破壊することにより、電線3と母材2の電気的な導通を確立する。電線3と母材2の接合は、第1の実施の形態と同様に、溝4に電線3を設置し、ツール8により溝4周辺の母材2を変形することにより行う。被膜32の破壊は、ツール8による電線3の母材2への接合前、接合中のいずれであっても良い。第3の実施の形態のその他の部分は、基本的に第1の実施の形態と同様であっても良い。
【0039】
次に上記実施の形態の効果及び作用について説明する。
本発明の第1の実施の形態のマイクロメカニカル接合方法により以下の効果が期待できる。
・これまで、はんだ付けでは実現できなかった極細電線(銅線等)の端子への接合が可能となり、その技術が必要とされる電子部品の製造が可能となる。
・これまで、はんだ付けにより接合を行ってきたやや太めの銅線と端子の接続に適用することで、接合には本来余分な材料である「はんだ」が不要となり、コスト節減可能であると共に、環境問題改善できる。
・さらにマクロ的な部品へまで適用を拡大することを考えると、あらゆる電気・電子部品のはんだ付け部の多くが、本発明に基づく機械的接合(メカニカル接合)に置き換わることが可能であり、鉛(Pb)フリーはんだへの移行が急務とされているが、はんだ自体を不要とする接合が可能となる。
・電線に被膜が施されている場合においても、溝に突起(又は、段差)等の機械的な被覆破壊手段を設けることにより、被覆を破壊し、電線と母材を電気的に確実に導通させることが出来る。
・有限要素解析シミュレーションを事前に実施して、溝、突起等の接合諸元を適切に選定することにより、実機実験をする必要性を排除して、確実に電線と母材を接合し、且つ電気的に導通できる。
【0040】
本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態ののマイクロメカニカル接合方法により、第1の実施の形態と同様な効果が期待できる。
【0041】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 母材
3 (極細)電線
4 溝
5 突起(又は、段差)
8 ツール
31 銅線(銅線部分)
32 被膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の接合方法に係り、より特別には、細電線又は極細電線を端子等に接合するための機械的接合方法であるマイクロメカニカル接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のマイクロエレクトロニクスの発展は微細な電子部品の製造技術に依存している。一方、携帯電話などに代表されるような電子機器には、さらに一層の小型化が要求されており、それらを構成する集積回路などは小型化、高密度化が弛まなく進められている。LSIの集積化が進むと動作速度の高速化と入力端子の多ピン化が必然的に要求される一方で、電子機器の小型・軽量化にともないデバイスの小型化も要求される。LSIの接続は、LSIチップの端子から入出力信号を取り出すための内部接続と、LSIパッケージとプリント回路基板を接合する外部接続とからなっている。内部接続は、従来Auワイヤボンディング法が主流であったが、多ピン化と高速化が同時に実現できるバンプ接合によるフリップチップ法が注目されるようになってきている。外部接続は、従来の表面実装型のリードをもったQFP(Quad Flat Package)に代わって、ソルダバンプを使い、高速化、多ピン化、小型化に応えられるソルダバンプ接続が注目を集め、急激に利用範囲が拡大している。
【0003】
このように集積チップの接合法の研究には様々な報告がなされている。これに対し、電力系、電波系の部品−超小型チョークコイル、超小型コンデンサ等は、小型化が可能であるものの、小型化した部品の実装が難しく、製品開発及び実用化を遅延させる一因となっている。
【0004】
例えば、小型軽量電子機器に使用されるチョークコイルの場合、直径数10μmの極細電線を用いてソレノイドコイルを作成することが可能である。しかし、その極細電線を端子に接続する際に非常な困難を伴う。すなわち、極度に細い電線であるため、折り曲げれば切断される。超音波接合などでは、往々にして、超電波振動子(コーン)で極細電線を押しつぶし、破断の原因を作る。一方で、変形させないようにしてはんだ付けをすると、極細電線とはんだの金属反応により細線を溶融させてしまう恐れがある。また、製造コストや環境問題の観点からも、はんだの使用は極力避ける傾向にあり、新たな微細接合技術の開発が望まれている技術分野となっている。
【0005】
集積回路・集積チップに適用されるマイクロ接合技術としては、マイクロソルダリング(はんだ付)技術をはじめとして様々な技術が実用化されているが、これに対し、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の場合、部品の一部である極細電線の太さが数10μmオーダー(毛髪の太さの数分の一)になると、極細電線を端子へ固定する際にはんだ付けを用いると、極細電線とはんだとの溶解反応により、図10に示すように細線が溶融されてしまう。このため、これら部品の製作及び基板への実装にはんだ付けを用いることが難しく、これが超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の実用化を遅延させる一因となっている。すなわち、従来技術としては「はんだ付け」があるが、はんだ付けでは、本発明で目的としている極細電線と端子との接合を十分に達成できるとは言えない。
【0006】
毛髪よりも細い銅線に対し、溶融はんだを接触させると、金属・合金間の溶解反応により、極細銅線は溶解破断する危険性が高い。そこで、はんだを用いない接合技術が必要となる。金属・合金の溶解を伴わない接合方法としては、金属・合金同士の固相接合技術と機械的接合(結合)技術がある。極細線の固相接合技術としては、LSI端子接続に用いられるワイヤボンディング技術がよく知られている。これは金細線を塑性変形させながら端子に圧着させる技術で、酸化皮膜を殆ど形成しない金線に対しては、有効な技術である。しかし、金と比較して酸化皮膜を形成しやすく、且つ塑性変形しにくい銅線に対しては、ワイヤボンディング技術は適用が難しい。接合しにくい銅線に対し、無理に塑性変形を起こさせると、銅線は容易に破断し、接合は行えない。そこで、出願人は、極細電線には殆ど変形を与えず、多少の塑性変形を与えても破断・破壊することのない端子側本体(母材)に対し、極細電線を包み込むような塑性変形を起こさせることにより接合を達成する、新規な機械的方法が本発明のメカニカル接合方法、特には、マイクロメカニカル接合方法を考案した。
【0007】
極細電線に対しては変形や加熱を加えず,端子側の接合部のみに微細な塑性変形を生じさせ、極細電線を端子側金属で包み込むように接合する方法が有効であると考えられる。単に機械的に保持することによって達成される接合は一般にメカニカル接合と呼ばれるが、サブミリ〜ミクロンオーダーでこれを実現させる技術として、出願人は、下記の特許文献1を既に出願しているが、この文献以外には、これまでに報告が無く新規性の高い技術と考えられる。特許文献1の内容は、本発明において組み込まれる。特許文献1では、マイクロメカニカル接合により極細電線を微小端子に強固に固定する技術は確立されているが、極細電線に絶縁被膜が施されている場合には、絶縁被膜を確実に破壊して、電線と母材との導通を確保しなければならない。従って、絶縁被膜を有する電線に関しても、確実に導電性を確保できるマイクロメカニカル接合に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−282573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線と端子との接合方法を提供することを目的とする。極細電線をメカニカルに接合しようとする発想は新規性が高く、類似の発想に関する報告は、出願人による文献以外にはこれまでのところ見あたらない。この技術は、それ程容易な技術とは言えず、極細電線を切断・破断せずに目的箇所に設置し、その近傍の端子母材に微小塑性変形を起こさせて、その極細電線を切断・破断せずに包み込むように固定し且つ被膜を有する電線と母材間の電気的な導通を確保する接合方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、電線と端子部の接合においては、従来はんだによる接合が一般的に行われてきたが、環境問題等のある、はんだを使用せず、別の方法である本願において呼ぶところのメカニカル接合を使用した電線の接合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの形態は、上述した目的を達成するために、電線(3)を端子等の母材(2)に接合するメカニカル接合方法を開示しており、このメカニカル接合方法は、母材(2)に、溝(4)を形成する溝形成手順と、電線(3)を溝(4)内に設置し固定する設置手順と、溝(4)の少なくとも一方の側部において、母材(2)にツール(8)を圧入して、ツール(8)を圧入した付近の母材(2)が電線(3)を包み込むように変形して、電線(3)と母材(2)を接合する圧入手順とを具備する。電線(3)に施された被膜(32)の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して電線(3)と母材(2)を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備することを特徴とする。
【0012】
被膜破壊手段は、溝(4)の底面の一方の角部に設けられた矩形状で段差状の突起(5)等の機械的に実施される手段であることが好ましい。
【0013】
溝(4)の寸法・形状、突起(5)の寸法・形状、前記ツール(8)の形状、打ち込み位置及び打ち込み深さを少なくとも含むメカニカル接合の諸元を有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することが好ましい。
【0014】
本発明の別の形態において、被膜破壊手段は、溝(4)を横切るようにツール(8)を、溝(4)の長手方向に対して斜めに打ち込むことにより実施される機械的な手段であっても良い。
【0015】
本発明の更に別の形態において、被膜破壊手順は、熱を電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されても良く、あるいは薬品を電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されても良い。
【0016】
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以上のように、これまで、はんだ付けでは実現できなかった極細銅線の端子への接合が可能となり、その技術が必要とされる電子部品の製造が可能となる。
電線に被膜が施されている場合においても、例えば、溝に突起(又は、段差)等の被膜破壊手段を設けることにより、被膜を破壊し、電線と母材を電気的に確実に導通させることが出来る。
また、これまで、はんだ付けにより接合を行ってきたやや太めの銅線と端子の接続に適用することで、接合には本来余分な材料である「はんだ」が不要となり、コスト節減および環境問題改善等への大きな効果を生み出す。
さらにマクロ的な部品へまで適用を拡大することを考えると、全世界におけるあらゆる電気・電子部品のはんだ付け部の多くが、本発明に基づく機械的接合(マイクロメカニカル接合)に置き換わることも想定される。鉛(Pb)フリーはんだへの移行が急務とされているが、その解決策の一つとしても、有力な技術と認識される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態のマイクロメカニカル接合方法の概念図であり、電線3を溝4に設置した状態を示す。
【図2】図2は、図1に示す第1の実施の形態の概念図において、ツール8を打ち込んで電線3と母材2を接合した状態を示す。
【図3】図3は、第1の実施の形態における突起5の種々の形状を示す概念図である。
【図4】図4は、極細電線の断面図の一例であり、銅線及び被膜の寸法が示されている。
【図5(a)】図5(a)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、有限要素分割を示す。
【図5(b)】図5(b)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果を示す。
【図5(c)】図5(c)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果の拡大図を示す。
【図6(a)】図6(a)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた別の状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果を示す。
【図6(b)】図6(b)は、第1の実施の形態において溝、突起の寸法を決めた別の状態の有限要素解析の説明図であり、計算結果の拡大図を示す。
【図7】図7は、溝及び突起の寸法、ツール打ち込み位置及び深さを定義する図である。
【図8】図8は、本発明による接合部の断面写真であり、種々の接合条件(諸元)による例を示す。
【図9】図9は、本発明による接合部の断面写真であり、電線と母材が摩擦接合した例を示す。
【図10】図10は、はんだ付けにより破断した銅線(直径0.1mm)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の従来技術に関する説明で述べた問題点を考慮すると、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線に対しては、金属・合金の溶解を伴うはんだ付けではなく、端子側接合部を微細に塑性変形させ、極細電線を端子側金属で包み込むように接合する機械的接合法が有効であると考えられる。その機械的接合方法、即ちメカニカル接合方法の概念の一例を図1及び2に示す。但し、図1及び2に示す接合部の形状及び構成は、本発明であるメカニカル接合、特には、マイクロメカニカル接合に必要とされる接合部の一例に過ぎないことを付言しておく。
【0020】
以下、図面に基づいて、電線、特には極細電線の本発明の接合方法、即ち、マイクロメカニカル接合方法の実施の形態を詳細に説明する。図1と2は、本発明に係るマイクロメカニカル接合方法の第1の実施の形態の概念図を図解的に示している。
【0021】
まず図1を参照すると、ミクロンオーダーからサブミリオーダー(1mm以下)の直径Dを有する極細電線3(以下、電線3と呼ぶ)が、母材2に設けられた溝4に挿入するようにセットされた状態を示している。電線3は、例えば、図4に示すように、円形断面の銅線31(又は、銅線部分)の直径が80μmで、それに10μmの被膜32が施されて合計の直径が100μmである。本実施の形態において、電線3及び電線の接合されるべき端子部等の母材2の材質は、銅であるが、本発明はこれに限定されず、電線3及び母材2は、銅合金、金、鉄等の別の導電性材料であっても良く、それぞれが異なる導電性材料であっても良い。溝4の幅Bは、電線3の直径D(図4の例では100μm)より少し大きいので、やはりミクロンオーダーからサブミリオーダーである。
【0022】
本実施の形態において、溝4は、図1に示すごとく、矩形形状であり、溝4の底面の一方の角部に矩形形状の突起(又は、段差)5が設けられている。突起5の寸法は、電線3が溝内に設置された場合に、突起5が電線3に接触する程度の大きさであることが好ましいが、後記するように、溝4が変形させられた際に、突起5が電線3に接触する程度の大きさであっても良い。溝4は、三角形、台形、四角形、U字形状、J字形状等の別の断面形状であっても良い。溝4の深さHは、図1に示すごとく、電線3の直径Dより大きいことが好ましいが、Dより小さくても良い。溝4は、電線3の長手方向(図の紙面に垂直な方向)に伸張して、母材2のこの部分を貫通するように形成されることが好ましいが、本発明はこれに限らず、ある程度の長さだけを伸張するように形成されても良い。溝4及び突起5の加工は、放電加工、レーザー加工等の既知の加工方法であって良いが、電線3の寸法に対応する溝4の幅B及び深さH、及び突起5の形状・寸法に応じた溝加工方法が選択されて良い。溝4及び突起5は、圧刻等のより簡単で現場的な方法で加工することも可能である。
【0023】
本実施の形態の接合方法においては、平坦な母材2に溝4を加工して、その後電線3を溝4内に挿入するように設置する。この状態が図1に示される。その後、ツール8を溝4の周辺に打ち込むこと(打刻)又は押し込むこと(圧刻又は圧入)により、電線3を母材2で押し潰すように母材2を変形させて、電線3を母材2により押さえ込んで接触させることにより、電線3を母材2に接合する。この際、突起5(請求項における機械的な被膜破壊手段に相当する)の角が電線3と接触し、突起5の角は、電線3の被膜32にくい込み、被膜32を突き破って、突起5は銅線31に直接接触し、電線3と母材2は電気的に導通する(実験の実機におけるツール8の圧刻(押し込み)又は打刻状態を図8及び9に示している。)。図1及び2に示す本実施の形態においては、溝4の縁部からの距離S1が等しい位置で溝4の片側において、ツール8を母材2に打ち込む(圧入する)。
【0024】
上記の機械的な被膜破壊手段については、上記の矩形形状の突起5以外に、様々な形態が考えられる。突起5の別の形状の種々の例について、図3に示す。突起5は、図3に示すように、尖った三角形の錐形状や、鋸形状、丸みを持った形状等種々の形状が考えられる。突起5の設置位置は、溝4の底面の他、溝4の側面であっても良い。被膜破壊手段は、溝4を横切るようにツール8を溝4の長手方向に対して斜めになるように打ち込むことにより、電線3を押し潰しながら(電線3を切断しても良い)電線3と母材2を導通させるような形態であっても良い。
【0025】
本実施の形態におけるツール(又は、マイクロプロジェクションツール)8については、図1及び2に図式的に示すように、断面が三角形状で先端の尖った形状で、先端部が長手方向に三角柱状の楔状であるが、ツール8は、これ以外の形状、例えば、先端が円錐状、角錐状のもの、鑿状等の、母材2を図2に示すように変形可能な形状であれば良い。ツール8の先端形状についても、必ずしも先端が尖ってなくても良く、丸い形状、平らな形状等別の形状であっても良い。また、図1及び2の例では、ツール8の先端は、1つであり、溝4の長手方向に平行に、溝4の片側に打ち込まれるが、本発明はこれに限定されない。即ち、ツール8の先端は、前出の特許文献1のように2つあって、ツール8の先端が溝4の両側に打ち込まれても良い。また、ツール8の打ち込み方向は、溝4の長手方向に対して平行ではなく、斜めであっても良く、更には溝4を横断するように打ち込まれても良い。ツール8の圧入方向は、母材2に対して実質的に垂直な方向又は斜めの方向(横方向)であって良い。ツール8の材質については、母材よりも硬い材質であることが好ましく、例えば、工具鋼等が考えられる。また、特許文献1のごとく、母材2に小さな別の切り欠きを設け、その切り欠きにツール8を打ち込んでも良い。
【0026】
本発明は、特には、超小型チョークコイル・超小型コンデンサ等の電力系・電波系部品の一部である極細電線と端子との接合技術であるが、極細電線をメカニカルに接合しようとする発想は新規性が高く、類似の発想に関する報告は特許文献1以外に見あたらない。この技術はそれ程容易な技術とは言えず、極細電線を切断・破断せずに目的箇所に設置し、その近傍の端子母材に微小塑性変形を起こさせて、その極細電線を切断・破断せずに包み込むように固定するためには、固定時の全体的形状、例えば母材に予め微小な溝4を形成し、その中に正確に極細電線を設置し、その溝4の極近傍にくさび形状ツール8を押し込んだ際に、どのような塑性変形が起こり、どのような固定力が発生するか、不明である。従って、これらの点について、事前に有限要素解析して、溝4及び突起5の形状、ツール8の打ち込み位置及び深さ等の仕様を決定することが好ましい。また、単に機械的に保持することによって達成される接合は、一般にメカニカル接合と呼ばれるが、サブミリ〜ミクロンオーダーでこれを実現させる技術はこれまでに報告が無く、新規性の高い技術といえるので、本発明のメカニカル接合方法においては、まず有限要素解析により接合に必要な諸元を決定する解析手順を設けることが好ましい。
【0027】
解析手順の具体的な内容の説明については、実機実験の諸元を決めるために行った有限要素解析シミュレーションを説明することにより行う。
更に、極細電線(又は、電線)に対し殆どダメージを与えないまま確実に端子と接合するためには、単純に端子側に塑性変形を起こさせるだけでなく、接合部形状・構造ならびにそれらを形成するためのツール形状、打ち込み位置及び打ち込み深さ等について適正条件が存在すると考えられる。本発明においては、まず、有限要素解析により種々のシミュレーションを行い、必要とされる諸元の概要を明らかにした上で、接合装置を試作し、それらの接合諸元を実現させることで所望の接合が達成できることを実験により確認した。
【0028】
まず、有限要素解析によるシミュレーションを行い、接合強度を達成し且つ、絶縁被膜を破壊し導電性を確保するための具体的な接合部形状・寸法について検討したので、この一例を図5及び6に示す。その一例として,溝の底部側部に設定した段差(突起)の高さを極細電線直径Dの0.5倍に設定した場合について、図5(a)に有限要素分割、図5(b)に計算結果(von Mises等価応力図(塑性変形及び残留応力分布図))、図5(c)に計算結果の拡大図を示す。ここで、計算に用いた各パラメータは以下の通りとした。
・極細電線の直径:D=φ100μm,
・極細電線表面のポリウレタン絶縁被膜の厚さ:10μm,
・極細電線の芯線:直径φ80μmの無酸素銅,
・段差付き溝の開口部幅:1.5D,
・溝深さ:2.5D,
・段付部の高さ:0.5Dと0.75Dの2種類,
・端子全体の材質:無酸素銅
・楔の押し込み位置:段の付いていない側の溝壁から2Dの位置
・楔の半頂角:14°
図5(c)では、ポリウレタン絶縁被膜内の応力状況を分かりやすく示すため、応力の大きさを示す尺度を変更してある。溝内に設置した段差(突起)エッジ部の効果により、エッジ部との接触部分およびその反対側の溝側面との接触部分の極細電線内に大きな応力が発生している状況が分かる。図5で解析した諸元の例の場合、絶縁被膜を破壊し導電性を確保することが出来ると考えられる。
【0029】
図6に溝側底部の段差(突起)高さを極細電線直径の0.75倍に設定した場合のvon Mises等価応力図(塑性変形及び残留応力分布図)を示す。図5の計算結果に比べて、極細電線内に発生する応力は小さくなっている。また、極細電線が溝底部から浮き上がるように位置を移動していることも分かる。その結果、楔を押し込んだ側の溝側面との間に摩擦力が発生し、その摩擦発生部分においても絶縁被膜の破壊が生じる可能性も示されている。図6の例の場合も、絶縁被膜を破壊し導電性を確保することが出来ると考えられる。
【0030】
[試験結果]
上記に示すような有限要素解析によるシミュレーション結果を基に、実際に接合装置を組立てて、作成した接合部の断面状態を確認した。図7(a)に突起(又は、段差)を設置した溝の形状および寸法、図7(b)に楔の押し込み位置および押し込み深さの各パラメータ[イ]〜[ヘ]の定義を示す。また、上記シミュレーション結果を基に各パラメータを設定し、接合試験を実施した際のパラメータ設定例を表1に示す(表1のパラメータ(イ)〜(ヘ)の単位はμm)。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示した条件で接合を行った実施例を図8に示す。接合条件(パラメータ[イ]〜[ヘ]の大きさ)により、接合部の変形状況および絶縁被膜の破壊状況が異なるが、適切な条件を選択することにより導通確保が可能なことが分かる。図8の各図の番号と、表1のケースNoが対応する。ケースNo.(3)〜(5)の条件であれば、絶縁被膜を破壊し良好な導通を確保できることが分かる。
【0033】
図6において、楔を押し込んだ側の溝側面との間に摩擦力が発生し、その摩擦発生部分においても絶縁被膜の破壊が生じる可能性を示したが、実際に楔を押し込んだ側の側面と極細電線との接触部において、摩擦により絶縁被膜が破壊され導通が確保された実施例を図9に示す。また、表2に、極細電線と端子との間の導通試験結果について示す(表2のパラメータ(イ)〜(ヘ)の単位はμm)。
【0034】
【表2】
【0035】
溝底部に適切な突起(段差)5を設置して接合を行った場合には、表2中に示されるように全ての接合試験片において導通が確認され、本発明の有効性が示された。従って、本発明のマイクロメカニカル接合は、電線と母材(端子部等)の接合方法として十分な性能を実現可能であることが証明できた。試験結果等からすると、100%導通が得られるパラメータの範囲としては、例えば、次のものが少なくとも挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。250≦イ≦300、70≦ロ≦80、ハ=80、30≦ニ≦70、ホ=350、250≦ヘ≦350(単位μm)。
【0036】
上記の第1の実施の形態においては、はんだ付けの難しい100μm程度以下の微細電線の端子等の母材への接合をマイクロメカニカル接合で行う場合について説明したが、はんだ付け可能な電線についても、原理的には同様であるので、マイクロメカニカル接合を適用することが可能である。マイクロメカニカル接合により、はんだを使用せず、電線を接合できるので、はんだを使用することにより生じる、はんだリサクルに係わる問題、環境問題等を解決することが出来るメリットがある。
【0037】
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態における機械的な被膜破壊手段を使用せず、電線の被膜32の破壊を熱的に実施する。第2の実施の形態においては、電線3の被膜32に熱を作用させることにより、被膜32を少なくとも部分的に破壊することにより、電線3と母材2の電気的な導通を確立する。電線3と母材2の接合は、第1の実施の形態と同様に、溝4に電線3を設置し、ツール8により溝4周辺の母材2を変形することにより行う。電線3と母材2間の電気的導通は、被膜32が破壊されるので、電線3と母材2を接合すれば確立出来る。被膜32の破壊は、ツール8による電線3の母材2への接合前、接合中のいずれであっても良い。第2の実施の形態のその他の構成は、基本的に第1の実施の形態と同様であっても良い。
【0038】
第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における機械的な被膜破壊手段及び第2の実施の形態における熱的な被膜破壊手段を使用せず、電線3の被膜32の破壊を薬品等を使用して化学的に実施する。第3の実施の形態においては、電線3の被膜32に薬品を作用させることにより、被膜32を少なくとも部分的に破壊することにより、電線3と母材2の電気的な導通を確立する。電線3と母材2の接合は、第1の実施の形態と同様に、溝4に電線3を設置し、ツール8により溝4周辺の母材2を変形することにより行う。被膜32の破壊は、ツール8による電線3の母材2への接合前、接合中のいずれであっても良い。第3の実施の形態のその他の部分は、基本的に第1の実施の形態と同様であっても良い。
【0039】
次に上記実施の形態の効果及び作用について説明する。
本発明の第1の実施の形態のマイクロメカニカル接合方法により以下の効果が期待できる。
・これまで、はんだ付けでは実現できなかった極細電線(銅線等)の端子への接合が可能となり、その技術が必要とされる電子部品の製造が可能となる。
・これまで、はんだ付けにより接合を行ってきたやや太めの銅線と端子の接続に適用することで、接合には本来余分な材料である「はんだ」が不要となり、コスト節減可能であると共に、環境問題改善できる。
・さらにマクロ的な部品へまで適用を拡大することを考えると、あらゆる電気・電子部品のはんだ付け部の多くが、本発明に基づく機械的接合(メカニカル接合)に置き換わることが可能であり、鉛(Pb)フリーはんだへの移行が急務とされているが、はんだ自体を不要とする接合が可能となる。
・電線に被膜が施されている場合においても、溝に突起(又は、段差)等の機械的な被覆破壊手段を設けることにより、被覆を破壊し、電線と母材を電気的に確実に導通させることが出来る。
・有限要素解析シミュレーションを事前に実施して、溝、突起等の接合諸元を適切に選定することにより、実機実験をする必要性を排除して、確実に電線と母材を接合し、且つ電気的に導通できる。
【0040】
本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態ののマイクロメカニカル接合方法により、第1の実施の形態と同様な効果が期待できる。
【0041】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 母材
3 (極細)電線
4 溝
5 突起(又は、段差)
8 ツール
31 銅線(銅線部分)
32 被膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線(3)を端子等の母材(2)に接合するメカニカル接合方法であって、
前記母材(2)に、溝(4)を形成する溝形成手順と、
前記電線(3)を前記溝(4)内に設置し固定する設置手順と、
前記溝(4)の少なくとも一方の側部において、前記母材(2)にツール(8)を圧入して前記ツール(8)を圧入した付近の母材(2)が前記電線(3)を包み込むように変形して、前記電線(3)と前記母材(2)を接合する圧入手順と、
を具備するメカニカル接合方法において、
前記電線(3)に施された被膜(32)の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して前記電線(3)と前記母材(2)を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備する、ことを特徴とするメカニカル接合方法。
【請求項2】
前記被膜破壊手段は、機械的に実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項3】
前記被膜破壊手段は、前記溝(4)に設けられた突起(5)であることを特徴とする請求項2に記載のメカニカル接合方法。
【請求項4】
前記突起(5)は、前記溝(4)の底面の一方の角部に設けられた矩形状の段差であることを特徴とする請求項3に記載のメカニカル接合方法。
【請求項5】
メカニカル接合の諸元を、有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することを特徴とする請求項3又は4に記載のメカニカル接合方法。
【請求項6】
前記メカニカル接合の諸元は、前記溝(4)の寸法・形状、前記突起(5)の寸法・形状、前記ツール(8)の形状、打ち込み位置及び打ち込み深さを少なくとも含む請求項5に記載のメカニカル接合方法。
【請求項7】
前記被膜破壊手段は、前記溝(4)を横切るように前記ツール(8)を、前記溝(4)の長手方向に対して斜めに打ち込むことにより実施されることを特徴とする請求項2に記載のメカニカル接合方法。
【請求項8】
前記被膜破壊手順は、熱を前記電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項9】
前記被膜破壊手順は、薬品を前記電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項10】
メカニカル接合の諸元を、有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することを特徴とする請求項1、2及び7から9のいずれか一項に記載のメカニカル接合方法。
【請求項1】
電線(3)を端子等の母材(2)に接合するメカニカル接合方法であって、
前記母材(2)に、溝(4)を形成する溝形成手順と、
前記電線(3)を前記溝(4)内に設置し固定する設置手順と、
前記溝(4)の少なくとも一方の側部において、前記母材(2)にツール(8)を圧入して前記ツール(8)を圧入した付近の母材(2)が前記電線(3)を包み込むように変形して、前記電線(3)と前記母材(2)を接合する圧入手順と、
を具備するメカニカル接合方法において、
前記電線(3)に施された被膜(32)の少なくとも一部分を、被膜破壊手段により破壊して前記電線(3)と前記母材(2)を電気的に導通させる被膜破壊手順を更に具備する、ことを特徴とするメカニカル接合方法。
【請求項2】
前記被膜破壊手段は、機械的に実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項3】
前記被膜破壊手段は、前記溝(4)に設けられた突起(5)であることを特徴とする請求項2に記載のメカニカル接合方法。
【請求項4】
前記突起(5)は、前記溝(4)の底面の一方の角部に設けられた矩形状の段差であることを特徴とする請求項3に記載のメカニカル接合方法。
【請求項5】
メカニカル接合の諸元を、有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することを特徴とする請求項3又は4に記載のメカニカル接合方法。
【請求項6】
前記メカニカル接合の諸元は、前記溝(4)の寸法・形状、前記突起(5)の寸法・形状、前記ツール(8)の形状、打ち込み位置及び打ち込み深さを少なくとも含む請求項5に記載のメカニカル接合方法。
【請求項7】
前記被膜破壊手段は、前記溝(4)を横切るように前記ツール(8)を、前記溝(4)の長手方向に対して斜めに打ち込むことにより実施されることを特徴とする請求項2に記載のメカニカル接合方法。
【請求項8】
前記被膜破壊手順は、熱を前記電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項9】
前記被膜破壊手順は、薬品を前記電線(3)の被膜(32)に作用させることにより実施されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカル接合方法。
【請求項10】
メカニカル接合の諸元を、有限要素解析により、事前に決定する解析手順を更に具備することを特徴とする請求項1、2及び7から9のいずれか一項に記載のメカニカル接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−96508(P2011−96508A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249169(P2009−249169)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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