説明

マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルム、及び液晶表示ディスプレイ

【課題】マイクロレンズ上に十分な密着性をもって配置させることができる感光性ドライフィルムを製造可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)二官能性モノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有するマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物によれば、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物に二官能性モノマーを用いているので、マイクロレンズ保護膜がマイクロレンズ上に配置された場合に、マイクロレンズとマイクロレンズ保護膜との間の密着性を十分に高く維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルム、及び液晶表示ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子、液晶プロジェクタ、光通信機器等の光部品の光学系においては、光要素として、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ、更には表示素子の透明パネル、透明基板、透明な隔壁等、透明で且つ小形、軽量な三次元微小成形体が必要とされる。これら三次元微小成形体は、感光性樹脂組成物を材料に用い、この感光性樹脂組成物を一定の厚みに形成し、得られた感光性樹脂層に、レンズ等の目的形状に従ったパターン露光を層の厚み方向に行い、露光後、現像液により未硬化部分を溶解、除去することにより製造されている(例えば、引用文献1及び2を参照)。
【0003】
三次元微小成形体を作製するために用いられる感光性樹脂層は作製時にガラス基板及び/又は透明基板上に塗布することにより形成されるか、予めカバーフィルム上に形成した感光性樹脂組成物塗布層を乾燥させてなる感光性ドライフィルムをガラス基板に貼り付けることにより形成される。感光性ドライフィルムの場合、ガラス基板上に感光性樹脂組成物層を迅速且つ安定的に形成することができ、一定期間の在庫管理も可能なことから、近年多用されるようになっている。
【特許文献1】特開平7−268177号公報
【特許文献2】特開2004−334184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光部品の光学系において、感光性樹脂組成物からマイクロレンズを形成した場合、この上層に保護膜を設けることによりマイクロレンズの損傷等を防止することができる。このマイクロレンズ保護膜は、感光性ドライフィルムを用いることにより形成されているが、マイクロレンズ保護膜の接着面は、基板等、面積の広いものではなく、マイクロレンズ上の狭い面(点)になるので、従来の感光性ドライフィルムで用いられる材料よりも、マイクロレンズ保護膜の密着性を向上できる材料を検討する必要があった。
【0005】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、マイクロレンズ上に十分な密着性をもって配置させることができる感光性ドライフィルムを製造可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物に、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)二官能性モノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有させた場合、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第一の態様は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)二官能性モノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有するマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の第二の態様は、支持フィルム上に、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層を有することを特徴とするマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムである。
【0010】
本発明の第三の態様は、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが有する前記感光性樹脂層から形成されたマイクロレンズ保護膜を有する液晶表示ディスプレイである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物に二官能性モノマーを用いているので、マイクロレンズ保護膜がマイクロレンズ上に配置された場合に、マイクロレンズとマイクロレンズ保護膜との間の密着性を十分に高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物>
本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)二官能性モノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有する。
【0014】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、クレゾールノボラック系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、アルカリ現像性の点からは(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、次に挙げるモノマーを重合或いは共重合させたものを用いることができる。このような重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、エチレン性不飽和カルボン酸、その他の共重合可能なモノマーを好適に用いることができ、具体的にはスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、プロピオール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、及び無水シトラコン酸等を挙げることができる。アルカリ可溶性樹脂は、透明性の面から、側鎖にベンゼン環を有していることが好ましく、これらの重合性モノマーの中でもベンジルメタクリレートが好適に用いられる。
【0016】
その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルの例示化合物をフマレートに代えたフマル酸エステル類;マレエートに代えたマレイン酸エステル類;クロトネートに代えたクロトン酸エステル類;イタコネートに代えたイタコン酸エステル類;α−メチルスチレン;o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、及びp−ビニルトルエン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、及びp−クロロスチレン;o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、及びp−メトキシスチレン;酢酸ビニル、酪酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル;(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロニトリル;イソプレン、クロロプレン、3−ブタジエン;並びにビニル−n−ブチルエーテル等を挙げることができる。
【0017】
上記モノマーの重合体・共重合体のほかに、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びカルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体や、更に、これらセルロース誘導体とエチレン性不飽和カルボン酸や(メタ)アクリレート化合物等との共重合体を用いることができる。更に、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応生成物であるポリブチラール樹脂等のポリビニルアルコール類;δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、及びβ,β−ジメチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類が開環重合したポリエステル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール単独又は二種以上のジオール類と、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、及びアジピン酸等のジカルボン酸類との縮合反応で得られたポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びポリペンタメチレングリコール等のポリエーテル類;並びにビスフェノールA、ヒドロキノン、及びジヒドロキシシクロヘキサン等のジオール類と、ジフェニルカーボネート、ホスゲン、及び無水コハク酸等のカルボニル化合物との反応生成物であるポリカーボネート類が挙げられる。これらのアルカリ可溶性樹脂成分は、単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性の見地からは、カルボキシル基を含有させることが好ましい。このようなアルカリ可溶性樹脂成分は、例えば、カルボキシル基を有するモノマーとその他のモノマーをラジカル重合させることにより製造することができる。この場合、(メタ)アクリル酸を含有させることが好ましい。
【0019】
アルカリ可溶性樹脂は、分子量が10000以上110000以下であることが好ましく、40000以上80000以下であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の分子量が上記範囲内にあることにより、マイクロレンズ保護膜の硬度を好適な範囲に維持することができ、マイクロレンズ保護膜にクラックが生じることを防止できる。
【0020】
また、アルカリ可溶性樹脂は、ガラス転移点が20℃以上120℃以下であることが好ましく、40℃以上100℃以下であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂のガラス転移点が上記範囲内にあることにより、マイクロレンズ保護膜の硬度を好適な範囲に維持することができ、マイクロレンズ保護膜にクラックが生じることを防止できる。
【0021】
[(B)二官能性モノマー]
二官能性モノマーは、いわゆる重合性モノマーであって、分子内に2つの重合可能なエチレン性不飽和基を有することを特徴とする。本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物は、二官能性モノマーを含有することにより、マイクロレンズ保護膜に形成されてマイクロレンズ上に配置された場合においても、マイクロレンズとの十分な密着性を維持することができる。
【0022】
二官能性モノマーとしては、ビスフェノール骨格を有する化合物として、ビスフェノールA型化合物、ビスフェノールF型化合物、ビスフェノールS型化合物を挙げることができる。これらの中でも、ビスフェノールA型化合物であり、一般式(B−1)で表されるアルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【化1】

[一般式(B−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、m+nは5以上60以下の平均モル数である。]
【0023】
一般式(B−1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシトリエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシペンタエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシデカエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシトリプロポキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシペンタプロポキシ}フェニル]プロパン、及び2,2−ビス[4−{(メタ)アクリロキシデカプロポキシ}フェニル]プロパン等を挙げることができるが、これら例示に限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
一般式(B−1)で表される化合物は、分子量が300以上5000以下であることが好ましく、450以上3000以下であることがより好ましい。分子量は、800以上であることにより、クラック耐性が良好となり、1000以上となると硬化後の柔軟性も良好となる。分子量は、1500以上であることが更に好ましく、1600以上であることが特に好ましい。
【0025】
更に、柔軟性を良好にするという観点から、n+mの値が10以上60以下であることが更に好ましく、20以上40以下であることが特に好ましい。
【0026】
一般式(B−1)で表される化合物を2種類以上組み合わせて用いる場合には、その平均分子量が、800以上であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましく、1500以上3000以下であることが更に好ましく、1600以上3000以下であることが特に好ましい。平均分子量を800以上とすることにより、クラック耐性を良好にすることができる。平均分子量が1000以上であると、更に硬化後の柔軟性も良好になる。
【0027】
また、二官能性モノマーは、その他公知な重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を含有していてもよい。例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタンモノマー、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等を含有してもよい。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、この例示に限定されるものではない。
【0029】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物においては、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して二官能性モノマーを20質量部以上100質量部以下含有することが好ましく、20質量部以上80質量部以下含有することが更に好ましく、30質量部以上70質量部以下含有することが特に好ましい。二官能性モノマーの含有量が、上記範囲内にあることにより、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物が本発明の効果に優れたものとなる。また、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムをマイクロレンズ上に配置したとしても、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムがマイクロレンズ保護膜に追従することがなく、その平坦な形状を十分に維持することができる。
【0031】
本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、光重合性化合物として、二官能性モノマー以外の化合物を含んでいてもよい。そのような化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0032】
これらの二官能性モノマー以外の光重合性化合物を含有する場合において、光重合性化合物全体に占める二官能性モノマーの割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0033】
なお、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物においては、光重合性モノマーとして、二官能性モノマーのみを含有し、その他の光重合性モノマーは含有しないことが最も好ましい。
【0034】
[(C)光重合開始剤]
本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物に含有される光重合性化合物としては、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化されてモノマーの重合を開始させる公知の化合物を用いることができる。このような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、及び2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、及び2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、及び2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、及び1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン;並びにクマリン系化合物等を挙げることができる。
【0035】
光重合開始剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂の固形分100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上15質量部以下であることが更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内にあることにより、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物の感度を十分に保つことができると共に、含有量が過剰であることに起因する組成物表面での吸収の増大により内部の光硬化が不十分となることがない。
【0036】
[(D)その他の成分]
マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物は、上記成分の他に粘度調整等の目的で必要に応じて、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、及び石油系溶剤等の希釈用の有機溶剤を含有していてもよい。
【0037】
上記希釈用の有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、メチルラクテート、エチルラクケート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレンブリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、メチルブチレート、エチルブチレート、及びプロピルブチレート等のほか、「スワゾール」(丸善石油化学株式会社製)、及び「ソルベッツ」(東燃石油化学株式会社製)等の製品名で入手可能な石油系溶剤等を挙げることができる。
【0038】
また、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物は、その他にも、密着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、表面張力改質剤、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤、及び増感剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0039】
<マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルム>
本実施形態に係るマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、支持フィルム上に、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層を有することを特徴とする。マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの使用にあたっては、マイクロレンズの上に露出した感光性樹脂層を重ねた後、感光性樹脂層から支持フィルムを剥離することによって、マイクロレンズ上に感光性樹脂層を容易に設け、マイクロレンズ保護膜を形成することができる。
【0040】
支持フィルムの構成材料としては、溶剤耐性を有する従来と同様の材料を用いることができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムを挙げることができる。これらの可撓性フィルムの中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。上記支持フィルムには、転写が容易となるように、必要に応じて離型処理がなされていることが好ましい。
【0041】
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが有する感光層は、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物から形成されるものである。感光層の膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、20μm以上40μm以下であることが更に好ましい。また、本実施形態においては、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物を30μmの膜厚の感光層に成膜した場合の450nmにおける光透過率が、90%以上であることが好ましい。
【0042】
なお、支持フィルムと感光性樹脂組成物層との間、又はマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの支持フィルムを有する面と反対の面に設けられる保護フィルムと感光性樹脂組成物層との間には、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの特性を損なわない範囲で他の層が存在していてもよい。他の層としては、具体的には、接着層、酸素バリア層、及び離型層等を挙げることができる。
【0043】
本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを製造するにあたっては、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物を調製し、アプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、リップコーター、コンマコーター、スリットコーター等を用いて、支持フィルム上に乾燥膜厚が10μmから100μmとなるように本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物を塗布する。特に、リップコーターは、膜厚の均一性に優れ、且つ、厚さの厚い膜が効率よく形成できるため好ましい。支持フィルムは厚さ15μmから125μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が好適である。
【0044】
本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、感光性樹脂層の上に更に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムにより保護されることにより、貯蔵、搬送、及び取り扱いが容易となる。また、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、使用期限はあるものの、予め製造しておき、所定期間貯蔵しておくことができる。従って、配線回路を有するディバイスの製造に際し、即座に使用することができ、配線回路形成工程を効率化することができる。上記保護フィルムとしては、厚さ15μmから125μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が好適である。
【0045】
次に、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの使用方法について説明する。まず、マイクロレンズの上に、露出した感光性樹脂層を重ねて、支持フィルム上から加熱ローラーを移動させることにより、感光性樹脂層をマイクロレンズの表面に熱圧着させる。マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムに保護フィルムが設けてある場合には、感光性樹脂層から保護フィルムを剥離し、マイクロレンズの上に露出した感光性樹脂層を重ねて、支持フィルム上から加熱ローラーを移動させることにより、感光性樹脂層をマイクロレンズの表面に熱圧着させる。感光性ドライフィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラーでロール上に巻き取って保存すれば再利用が可能である。
【0046】
熱圧着は、表面温度を30℃から110℃に加熱し、ロール圧0.1kg/cmから5kg/cm、移動速度0.1m/minから10.0m/minの範囲で行うのがよい。上記マイクロレンズは予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40℃から100℃の範囲が選択される。
【0047】
次いで、所定のマスクパターンを備えるマスクを密着させ、しかる後、マスクを介して露光、或いは直接描画露光することにより、感光性樹脂層を選択的に露光させる。この露光には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプ等を用いることができる。また、i線、h線、エキシマレーザー、X線、電子線等を用いることができる。超高圧水銀灯露光装置としては、特に限定されないが、例えばORC社、ウシオ電機社等の超高圧水銀灯露光装置を用いることができる。本発明に係る感光性ドライフィルムの露光には、超高圧水銀灯露光装置の中でも、平行光露光装置を用いることが特に好適である。
【0048】
本発明に係るマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを用いると、マイクロレンズとの密着性がよく、高感度であり、また作業性もよい。この露光処理後、マスクと支持フィルムとを取り去り、現像を行って感光性樹脂層の未露光部を選択的に除去し、露光部の感光性樹脂層が残留したパターンを形成する。
【0049】
現像に用いる現像液としては、アルカリ現像液、即ちリチウム、ナトリウム、カリウム等アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、及びピロリン酸塩;ベンジルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン;モルホリン、ピペラジン、ピリジン等の環状アミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミン;テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類;トリメチルスルホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルスルホニウムヒドロキシド、ジメチルベンジルスルホニウムヒドロキシド等のスルホニウムヒドロキシド類からなる水溶液;並びに、その他、コリン、ケイ酸塩含有緩衝液等の汎用のアルカリ現像液や有機溶剤、即ち、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、或いはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類を用いることができる。
【0050】
以上より、本発明のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムから、微細なパターンであっても、良好なパターン化されたマイクロレンズ保護膜を得ることができる。
【0051】
<液晶表示ディスプレイ>
本実施形態に係る液晶表示ディスプレイは、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが有する感光性樹脂層から形成されたマイクロレンズ保護膜を有する。マイクロレンズ保護膜は、基板上に形成されたマイクロレンズアレイ上に、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを配置した後、パターン化された活性線で露光され、現像されることによって形成される。
【0052】
本実施形態においては、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物に二官能性モノマーを用いているので、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが、マイクロレンズ上に配置された場合においても、マイクロレンズとの十分な密着性を維持することができる。また、この場合においても、マイクロレンズに追従してマイクロレンズ間の空間を埋め込むことが無く、その平坦な形状を維持できると共に、硬化後のマイクロレンズ保護膜においてクラック等が生じることがない。このため、本実施形態のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、液晶表示ディスプレイの製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
樹脂固形分に換算して100質量部のベンジルメタクリレート:メタクリル酸の質量比が80:20の共重合体(平均分子量80000、50質量%MEK溶液)に、二官能性モノマーとして81質量部のBPE500(商品名、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、分子量804、新中村化学工業株式会社製)を添加し、光重合開始剤として、3.5質量部のDETX−S(商品名、2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社製)を添加して、マイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物とした。このマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し、乾燥させてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムとした。
【0055】
<実施例2>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを68質量部のBPE1300(商品名、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、分子量1684、新中村化学工業株式会社製)とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0056】
<実施例3>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを74質量部のBPE1300(上述)とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0057】
<実施例4>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを、54.4質量部のBPE1300(上述)と、13.6質量部のBPE500(上述)との混合物とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0058】
<実施例5>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを、34質量部のBPE1300(上述)と、34質量部のBPE500(上述)との混合物とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフルムを調製した。
【0059】
<実施例6>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを、13.6質量部のBPE1300(上述)と、54.4質量部のBPE500(上述)との混合物とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0060】
<実施例7>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを、40.5質量部のBPE1300(上述)と、40.5質量部のBPE500(上述)との混合物とした点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0061】
<実施例8>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーである20質量部のBPE500(上述)に加えて、60質量部のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加した点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0062】
<比較例1>
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムの調製において、二官能性モノマーを含まず、80質量部のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのみを添加した点以外は、実施例1と同様にしてマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを調製した。
【0063】
[評価]
(ラミネート時の密着性)
レンズ径130μm、膜厚25μmのマイクロレンズが形成されたガラス基板上に、ロール温度50℃、ロール圧力0.5kg/cm、ロール速度2.0m/minで、実施例1から8、及び比較例1のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムをラミネートし、目視によりマイクロレンズ上での密着状態について確認を行った。
○;密着した
×;密着していなかった(密着していない状態でロールから排出された)
【0064】
なお、この密着性試験におけるラミネート条件は従来のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムのラミネート条件(ロール温度約100℃、ロール圧力1kg/cmから3kg/cm)に比べ、低温・低圧に設定されている。
【0065】
(クラック耐性)
実施例1から8で調製した膜厚30μmのマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムを、ロール温度50℃、ロール圧力0.5kg/cm、ロール速度2.0m/minでガラス基板上にラミネートし、50mJ/cmから200mJ/cmの露光量で露光を行って、1.0%のNaCO溶液で90秒間現像を行った。脱イオン水で30秒間リンスした後、130℃で60分間加熱した。形成されたマイクロレンズ保護膜について、−30℃から80℃、60分間のヒートサイクルを500サイクル繰り返し、ヒートサイクル後のクラックの発生の程度を元に、以下の基準で評価した。
○;クラックが発生しない
△;わずかにクラックが発生
×;クラックが発生
【0066】
なお、比較例1については、マイクロレンズ上にマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが密着しなかったので、評価しなかった。
【0067】
(粘着性)
マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、ラミネート時にマイクロレンズを埋め込まないで接触面積の小さいマイクロレンズの先端部分で密着させるために、極力低温、低圧でラミネートを行う必要がある。このため、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムは、十分な粘着性を備えていることが必要となる。
【0068】
粘着性の評価はJIS K7125動摩擦試験により、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムがマイクロレンズ保護膜形成用材料に適したものであるかどうかを判断した。即ち、A4版ガラス基板上に実施例1から8、及び比較例1のマイクロレンズ形成用感光性ドライフィルムをラミネートしたものを固定し、25℃における動摩擦係数を以下の基準で評価した。
○;1.0N以上1.5N以下
△;0.7Nを超え1.0N未満、又は1.5Nを超え2.0N以下
×;2.0N以上、又は0.7N以下
【0069】
なお、25℃における動摩擦係数が2.0N以上だと、常温での流動性も大きく、マイクロレンズの埋め込みも大きい傾向にある。更に、マイクロレンズ形成用感光性ドライフィルムをロール化した場合、常温での流動性が大きいため、エッジフュージョンが発生し易く、保存安定性が悪い。一方、動摩擦係数が0.7N以下のものは、密着性が悪く、マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムとして不十分である。
【0070】
25℃における動摩擦係数が0.7Nを超え2.0N以下のものは、密着性が良好で、マイクロレンズの埋め込みも少ない。特に1.0N以上1.5N以下の範囲内であれば、密着性が更に良好になるのみでなく、保存安定性にも優れる。
【0071】
(硬化後の柔軟性)
ISO14577、DIN EN14577に基づくDIN規格、DIN50359のマルテンス硬さ試験法に基づき、実施例1から8、及び比較例1のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムについて、以下の基準で評価した。
○;露光量を150mJ/cmまで上げても、マルテンス硬さ(HM)値が45N/mm以下
△;露光量を150mJ/cmまで上げても、HM値が45N/mmを超え65N/mm以下
△×;露光量150mJ/cmで、HM値が65N/mmを超える
×;露光量120mJ/cmで、HM値が65N/mmを超える
【0072】
なお、露光量を増加させても、マルテンス硬さが増加しにくいものほど、柔軟性が良好であると判断される。
【0073】
(加工性)
レンズ径130μm、膜厚25μmのマイクロレンズが形成されたガラス基板上に、ロール温度50℃、ロール圧力0.5kg/cm、ロール速度2.0m/minで、実施例1から8のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムをラミネートした。マイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが、マイクロレンズ形状に追従した程度を走査型電子顕微鏡(SEM)S−4300(株式会社日立製作所製)を用いて断面方向から観察した。レンズの頂点とマイクロレンズ保護膜の下端部との間の幅で表されるマイクロレンズ保護膜の埋め込み量の、ガラス基板の上面とレンズの頂点との間の幅に対する割合Xを、以下の基準で評価した。
○;Xが20%以内
△;Xが20%を超え30%以内
×;マイクロレンズ形状に追従し、マイクロレンズを完全に埋め込む
【0074】
なお、比較例1については、マイクロレンズ上にマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが密着しなかったので、評価しなかった。
【0075】
以上の結果を表1に示す。
【表1】

【0076】
表1から分かるように、2官能モノマーを有する実施例1から8は、比較例1に比べ、ラミネート時の密着性が良好であった。更に、2官能モノマーのみを有する実施例1から7は、クラックの発生量が少なく、2官能モノマー以外のモノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;6官能モノマー)を有する実施例8や比較例1よりも良好であった。また、実施例2及び3より、平均分子量が高いものほど、クラック耐性が良好になると考えられる。
【0077】
2官能モノマーの含有量が、樹脂成分100質量部に対して、80質量部以下の実施例2から6は、動摩擦係数が良好な範囲内にあり、80質量部以上の実施例1及び実施例7よりも、粘着性が良好であった。また、70質量部以下の実施例2、実施例4から6が特に良好であった。
【0078】
2官能モノマーの平均分子量が1000以上である実施例2、4、及び5は、2官能モノマーの平均分子量が1000未満の実施例6よりも、硬化後の柔軟性が良好であり、実施例2及び4から、平均分子量が1500以上であると更に好ましいことが分かった。
【0079】
加工性については、実施例5及び6から、モノマーの添加総量が70質量部以下で、(平均)分子量がより低くなる(1500未満の)方が良好な傾向にあると分かったが、評価全体(特に柔軟性及びクラック耐性)を考慮すると、実施例の中でも、実施例2が特に好ましく、次いで、実施例4が比較的良好なものであるといえる。実施例3については、平均分子量が高いことからクラック耐性が高く、2官能モノマーの添加量が多いから、硬化後の柔軟性も良好であったが、加工性について、マイクロレンズを完全に埋め込んでしまっていたのは、柔軟性が高すぎたためだと考えられる。また、実施例4については、加工性は実施例3よりも良好ではあるものの、2官能モノマーの平均分子量が1600以下であるため、実施例2及び3と比べて、クラック耐性が不十分であった。
【0080】
以上より、実施例2の組成物のように、2官能モノマーの添加量と平均分子量とをある程度の範囲内でバランスよく有していることが好ましいといえる。2官能モノマーの添加量が70質量部以下で、平均分子量が1600以上の実施例2は、クラック耐性・柔軟性・加工性のいずれも良好な特性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)二官能性モノマーと、(C)光重合開始剤と、を含有するマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)二官能性モノマーは、前記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して20質量部以上100質量部以下である請求項1に記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)二官能性モノマーが、一般式(B−1)で表される化合物である請求項1又は2に記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(B−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、m+nは5以上60以下の平均モル数である。]
【請求項4】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂のガラス転移点が、20℃以上120℃以下である請求項1から3のいずれかに記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、側鎖に芳香族環を有する請求項1から4のいずれかに記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
支持フィルム上に、請求項1から5のいずれかに記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層を有することを特徴とするマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のマイクロレンズ保護膜形成用感光性ドライフィルムが有する前記感光性樹脂層から形成されたマイクロレンズ保護膜を有する液晶表示ディスプレイ。

【公開番号】特開2010−20077(P2010−20077A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180210(P2008−180210)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】