説明

マイクロ波を用いた加熱処理装置

【課題】照射されたマイクロ波を的確に分散することにより、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止することができるマイクロ波を用いた加熱処理装置を提供すること。
【解決手段】筐体3に複数のマイクロ波発振器2を設置し、各マイクロ波発振器2からマイクロ波を照射するようにしたもので、各マイクロ波発振器2の照射口21の前方に、頂点を照射口21に向けた円錐形状の反射板1をそれぞれ設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いた加熱処理装置に関し、特に、照射されたマイクロ波を的確に分散することにより、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止することができるマイクロ波を用いた加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、マイクロ波発振器を利用する装置の一つとして、ダイオキシン等の有害物質を含む飛灰を処理する加熱処理装置がある。
この加熱処理装置は、図3〜図4に示すように、マイクロ波発振器2を備えた筐体3と、この筐体3の内側下部に配置されたスクリューコンベア4とを備え、スクリューコンベア4により飛灰を攪拌しながらマイクロ波を照射して排出口8に送るようにしている。
マイクロ波発振器2は、処理する飛灰の量と処理時間に応じて設けられるが、大型のマイクロ波発振器は高価であるため、多数の小型のマイクロ波発振器2が筐体3に設置される。
【0003】
ところで、このようなマイクロ波発振器を用いた加熱処理装置では、マイクロ波発振器から発振したマイクロ波が筐体の壁面等で反射して照射口に進入すると、マイクロ波発振器の内部を損傷するといった問題がある。
これに対し、従来では、照射口の前方にファンのような羽根を回転するように設け、羽根に当てたマイクロ波をランダムな方向に拡散して、元の照射口や隣接する照射口に進入しにくくしている。
【0004】
しかしながら、前記加熱処理装置のように、飛灰に応じて多数のマイクロ波発振器を設置する場合は、羽根の取付ピッチや角度などの設定に非常に難しい技術が必要となり、場合によっては、試行錯誤を繰り返すことによって羽根の設定条件を決定せざるを得ないという問題を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のマイクロ波を用いた加熱処理装置が有する問題点に鑑み、照射されたマイクロ波を的確に分散することにより、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止することができるマイクロ波を用いた加熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置は、筐体に設置した複数のマイクロ波発振器からマイクロ波を照射するようにしたマイクロ波を用いた加熱処理装置において、各マイクロ波発振器の照射口の前方に、頂点を照射口に向けた円錐形状の反射板をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置によれば、筐体に設置した複数のマイクロ波発振器からマイクロ波を照射するようにしたマイクロ波を用いた加熱処理装置において、各マイクロ波発振器の照射口の前方に、頂点を照射口に向けた円錐形状の反射板をそれぞれ設けることから、反射板の角度や高さを照射口のピッチ等に応じて設定することにより、照射されたマイクロ波を的確に分散し、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1〜図4に、本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置の一実施例を示す。
このマイクロ波を用いた加熱処理装置は、筐体3に複数のマイクロ波発振器2を設置し、各マイクロ波発振器2からマイクロ波を照射するようにしたもので、各マイクロ波発振器2の照射口21の前方に、頂点を照射口21に向けた円錐形状の反射板1をそれぞれ設けている。
【0010】
筐体3は、図2〜図4に示すように、天井面に前記複数のマイクロ波発振器2を配設するとともに、スクリューコンベア4をその内側下部に配設し、このスクリューコンベア4によって、供給される飛灰を攪拌しながら排出口8に送るようにしている。
スクリューコンベア4の上流部には、ゴミ焼却場の大型集塵機等から排出される飛灰を蓄える貯留槽5が配設されており、この貯留槽5は、内部に配備したロータリバルブ6の開閉によってスクリューコンベア4上に均等に飛灰を供給する。
また、筐体3には集塵機7が配備されており、筐体3内に装入された飛灰がマイクロ波によって熱せられることによって発生する煙に含まれる塵埃をパンチングメタルからなる吸引口7aを介して吸引ファン(図示省略)によって吸い込み、集塵機7内に配設したフィルタ7bによって浄化空気のみを外部に排出するようにしている。
【0011】
一方、マイクロ波発振器2は、処理する飛灰の量と処理時間に応じて、筐体3の天井面に6台設置されており、それぞれの照射口21からマイクロ波を照射することにより、スクリューコンベア4によって攪拌されながら移動する飛灰を加熱し、ダイオキシン等の有害物質を無害化する。
各マイクロ波発振器2の照射口21の前方には、図1〜図2に示すように、それぞれの中心軸1a、21aを一致させた状態で、頂点を照射口21に向けた円錐形状の反射板1がそれぞれ設けられている。
反射板1は、裾部が照射口21よりも大径に設けられた円錐形の金属板からなり、照射口21の周囲から延設したアーム11によって筐体3に固定されている。
【0012】
ところで、このような加熱処理装置における反射板1の角度や高さ等の設定条件は、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0013】
図2に示すように、反射板1の水平面となす角度θは、特に限定されるものではないが、本実施例では50°に設定するようにしているので、以下、これに基づいて説明することとする。ちなみに、マイクロ波の反射波Kを水平面より上に戻さないようにするためには、θ>45°とする必要があるため、反射板1の水平面となす角度θは、45°より大きく設定するようにする。
ここで、
θ=50°
とすると、図2に示す角度θ、θ、θ及びθは、それぞれ次のようになる。
θ=90°−θ=40°
θ=180°−2・θ=100°
θ=θ−90°=10°(反射波Kは水平面より下向きとなる。)
θ=θ−90°+θ=60°
【0014】
[ケース1]
そして、反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、当該反射板1に隣接する反射板1に当たらない条件は次のとおりである。
(P−D/2)・tanθ>h
ここで、P:照射口21のピッチ
D:反射板1の直径(ここでは、0.20mとする。)
h:反射板1の高さ
である。
これから、
h=D/2・tanθ=0.12m
P>h+D/2・tanθ=0.14m
となる。
このように、照射口21のピッチP等を設定することによって、反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kを、当該反射板1に隣接する反射板1に当たらないようにして、照射されたマイクロ波を的確に分散して、下方に照射することができる。
【0015】
[ケース2]
また、図2に示すように、反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、当該反射板1に隣接する反射板1に当たる場合は、次の2式が成立する。
ha・tanθ=hb
(P−hb)・tanθ=hb
ここで、ha:反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、当該反射板1に隣接する反射板1に当たる位置の高さ方向の距離(反射板1の頂点からの高さ方向の距離)
hb:反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、当該反射板1に隣接する反射板1に当たる位置の水平方向の距離(反射板1の頂点からの水平方向の距離)
P:照射口21のピッチ(ここでは、0.30mとする。)
である。
これから、
hb=P・tanθ/(1+tanθ)=0.04m
ha=hb/tanθ=0.05m
となる。
【0016】
反射板1に2回当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、反射板1の上方の照射口21に戻らない条件は次のとおりである。
R>W/2−hb
ここで、R:反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、筐体3に当たる位置と反射板1に当たる位置との水平方向の距離
W:照射口21の直径(ここでは、0.11mとする。)
である。
これから、
R>W/2−hb=0.015m
となる。
また、次の式が成立する。
R=(ha+h0)・tan(90°−(180°−2・θ+θ))
=(ha+h0)・tan(2・θ−θ−90°)
=(ha+h0)・tan20°
ここで、h0:筐体3の下面から反射板1の頂点までの距離(ここでは、0.05mとする。)
である。
これから、
R=0.04m
となり、上記R>W/2−hbの条件を満たすことになる。
また、次の式が成立する。
R’=(h0+h)・tan(90°−(180°−2・θ+θ))
=(h0+h)・tan(2・θ−θ−90°)
=(h0+h)・tan20°
ここで、R’:反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、筐体3に当たる位置と隣接する反射板1の下端縁に相当する高さ位置を通過する位置との水平方向の距離
である。
これから、
R’=0.06m
となる。
【0017】
筐体3に当たって反射したマイクロ波の反射波Kが、隣接する反射板1に当たらない条件は次のとおりである。
hb+R+R’<P−D/2
ここで、
hb+R+R’=0.04+0.04+0.06=0.16m
P−D/2=0.30−0.20/2=0.20m
となり、上記hb+R+R’<P−D/2の条件を満たすことになる。
このように、照射口21のピッチP等を設定することによって、反射板1に当たって反射したマイクロ波の反射波Kを、隣接する反射板1及び筐体3に順次反射させ、照射されたマイクロ波を的確に分散して、下方に照射することができる。
【0018】
かくして、本実施例のマイクロ波を用いた加熱処理装置によれば、筐体3に設置した複数のマイクロ波発振器2からマイクロ波を照射するようにしたマイクロ波を用いた加熱処理装置において、各マイクロ波発振器2の照射口21の前方に、頂点を照射口21に向けた円錐形状の反射板1をそれぞれ設けることから、上記ケース1又はケース2のように、反射板1の角度等を照射口21間の距離等に応じて設定することにより、照射されたマイクロ波を的確に分散し、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止することができる。
【0019】
以上、本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置は、反射板の角度や高さを照射口のピッチ等に応じて設定するだけで、照射されたマイクロ波を的確に分散し、元の照射口や隣接する照射口へのマイクロ波の進入を容易に防止するという特性を有していることから、例えば、飛灰のダイオキシンを無害化処理するためのマイクロ波を用いた加熱処理装置に用いることができるほか、複数のマイクロ波発振器を備えるその他の加熱処理装置の用途にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のマイクロ波を用いた加熱処理装置の反射板を示す要部拡大図である。
【図2】同反射板の設定条件の説明図である。
【図3】同実施例のマイクロ波を用いた加熱処理装置を示す側面図である。
【図4】同加熱処理装置を示し、(a)はその平面図、(b)は図3のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 反射板
1a 中心軸
11 アーム
2 マイクロ波発振器
21 照射口
21a 中心軸
3 筐体
4 スクリューコンベア
5 貯留槽
6 ロータリバルブ
7 集塵機
8 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設置した複数のマイクロ波発振器からマイクロ波を照射するようにしたマイクロ波を用いた加熱処理装置において、各マイクロ波発振器の照射口の前方に、頂点を照射口に向けた円錐形状の反射板をそれぞれ設けたことを特徴とするマイクロ波を用いた加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−185757(P2006−185757A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378418(P2004−378418)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】