説明

マイクロ波センサ装置及びマイクロ波センサシステム

【課題】検知エリアが反射波の多い環境であっても安定した検知動作を行なうことができるマイクロ波センサ装置を提供する。
【解決手段】受信アンテナにより受信したマイクロ波を増幅して検波し、受信検波信号を出力する受信検波回路(30);と、受信検波回路から出力される受信検波信号を監視し、該受信検波信号が所定値以上変化したことを検知して侵入警報を出力する監視手段(42,43,44);と、受信検波回路から出力される受信検波信号により、検知エリアにおける反射波の有無を検出する反射波検出部(80,80’);と、反射波検出部が反射波を検出した場合は、反射波を検出しない場合よりも速い応答速度で受信検波回路のゲインを制御するAGC回路(60,70)をもつマイクロ波センサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備システムに用いられる、侵入者を検知する侵入者検出装置に関し、特にマイクロ波帯の無線電波を利用したマイクロ波センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デパートや工場等では、夜間の強盗や侵入者の警備に多数の警備員を配置する代わりに、無人の複数の出入口、門、フェンスなど侵入される恐れのある個所にマイクロ波センサを配置し、該マイクロ波センサからの侵入警報を検知する警備システムが種々実用化されている。
【0003】
特許文献1は、上述のような警備システムに用いられるマイクロ波センサの一つとして、マイクロ波送信機から検知エリアに対してマイクロ波帯の電波を常時送出し、検知エリアの対向位置に設置したマイクロ波受信機で該電波を受信することによりマイクロ波による電界を検知エリアに形成し、該電界の乱れを検出して侵入警報を送出するマイクロ波センサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−209756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のマイクロ波センサでは、検知エリアの周辺に金網や金属片等の電波反射体が存在する場合、侵入者を検知する際に周辺環境である電波反射体の多重反射の影響を受けて検出信号が大きく変動し、侵入警報を正しく出力することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、検知エリアが反射波の多い環境であっても安定した検知動作を行なうことができるマイクロ波センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決する一実施形態は、
本発明の一実施形態は、マイクロ波センサ装置であって、
受信アンテナにより受信したマイクロ波を増幅して検波し、受信検波信号を出力する受信検波回路(30);と、前記受信検波回路から出力される受信検波信号を監視し、該受信検波信号が所定値以上変化したことを検知して侵入警報を出力する監視手段(42,43,44);と、前記受信検波回路から出力される受信検波信号により、前記検知エリアにおける反射波の有無を検出する反射波検出部(80,80’);と、前記反射波検出部が反射波を検出した場合は、反射波を検出しない場合よりも速い応答速度で前記受信検波回路のゲインを制御するAGC回路(60,70)を有する。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、マイクロ波センサシステムであって、検知エリアの一方側に配置される送信アンテナからマイクロ波を送信する送信機と、前記検知エリアの他方側に前記送信アンテナに対向して配置される受信アンテナを備えた受信機とからなり、前記受信機は、
前記受信アンテナにより受信したマイクロ波を増幅して検波し、受信検波信号を出力する受信検波回路と、前記受信検波回路から出力される受信検波信号を監視し、該受信検波信号が所定値以上変化したことを検知して侵入警報を出力する監視手段と、前記受信検波回路から出力される受信検波信号により、前記検知エリアにおける反射波の有無を検出し、反射波がある場合には反射波がない場合よりも速い応答速度で前記受信検波回路のゲインを制御するAGC回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これによれば、検知エリアが反射波の多い環境であっても反射波の影響を軽減できると共に検知エリアの側面通過による影響も軽減でき、反射波による誤判断を無くして安定した検知動作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ波センサの構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるAGC回路の詳細な構成を示すブロック図。
【図3】検知エリアの周辺に金網や水面等の電波反射体が存在する場合の例を示す図。
【図4】同実施形態における反射波検出部の検知波形を示す図。
【図5】同実施形態における反射波検出部の検知波形を示す図。
【図6】反射波環境におけるマイクロ波センサの検知出力を示す図。
【図7】同実施形態における反射、周波数、遅延時間、AGC速度、検出頻度の関係の一例を示すグラフ。
【図8】90度移相による反射波検出部を有するマイクロ波センサを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(構成)
図1は本発明の一実施形態に係るマイクロ波センサの構成を示すブロック図である。図1において、マイクロ波帯の電波例えば24.15GHzの電波を送出する送信機1は、送信アンテナ2を備えている。上記送信アンテナ2は検知エリア3の一方側に設けられ、該検知エリア3の他方側に上記送信アンテナ2に対向するように受信アンテナ4が設けられ、送信アンテナ2と受信アンテナ4との間にマイクロ波ビームが形成される。上記受信アンテナ4は、送信機1から送信アンテナ2を介して送信されるマイクロ波を受信し、受信機20に入力する。この受信機20は、受信検波回路30、直流増幅器41、比較器42、タイミング制御器43、リレー回路44及びAGC(Automatic Gain Control)回路50により構成される。
【0012】
上記受信検波回路30は、増幅器31、ミキサ32、局部発振器33、ディジタルアッテネータ34、中間周波増幅器35、検波器36により構成される。上記増幅器31は、受信アンテナ4で受信されたマイクロ波の信号を増幅してミキサ32の一方の入力端子に供給する。ミキサ32の他方の入力端子には、局部発振器33から局部発振信号が入力される。ミキサ32は、増幅器31で増幅された信号を局部発振器33から供給される局部発振信号と混合し、IF信号(中間周波信号)に変換する。上記ミキサ32から出力される中間周波信号は、ディジタルアッテネータ34及び中間周波増幅器35を介して検波器36に入力されて検波される。
【0013】
上記検波器36から出力される受信検波信号aは、詳細を後述するAGC回路50のAGC電圧発生部60に入力されると共に直流増幅器41に入力されて増幅された後、AGC回路50のAGCゲート制御部70及び反射波検出部80及び比較器42の一方の入力端子に入力される。この比較器42の他方の入力端子には、検知基準電圧E0が供給される。上記比較器42は、直流増幅器41の出力信号を検知基準電圧E0と比較し、検知エリア3の侵入者の“あり”/“なし”に応じて変化する検波出力に対応した信号をタイミング制御器43を介してリレー回路44に出力する。
【0014】
リレー回路44は比較器42からタイミング制御器43を介して送られてくる信号によって動作し、侵入者の有無を示す信号を監視ライン45により監視センター(図示せず)へ出力する。上記タイミング制御器43は、検知エリア3に飛来する鳥や落ち葉、外来ノイズによる瞬間的な受信入力の変化に対する誤検知防止のために設けたもので、例えばCR時定数のワンショット・マルチバイブレータ等によって構成される。
【0015】
上記AGC回路50は、AGC電圧発生部60、AGCゲート制御部70及び反射波検出部80によって構成される。
上記AGC電圧発生部60は、受信検波回路30から出力される受信検波信号aを増幅する増幅器61、この増幅器61で増幅された信号をディジタル信号に変換するA/D変換器62、上記ディジタル信号をAGCゲート制御部70から与えられる制御信号でON/OFFするディジタルゲート63、このディジタルゲート63から出力されるディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器64、このD/A変換器64で変換されたアナログ信号を遅延する遅延回路65、上記遅延された信号を増幅する増幅器66からなる。AGC電圧発生部60は、この増幅器66の出力信号により上記受信検波回路30におけるディジタルアッテネータ34の減衰量及び中間周波増幅器35のゲインを制御する。
【0016】
上記ディジタルゲート63は、AGCゲート制御部70から与えられるゲート信号によってON/OFF制御され、ゲート信号が“high”レベルのときにONし、ゲート信号が“Low”レベルのときにOFFすると共に、OFFされた時のディジタル値を保持して出力するように構成されている。また、遅延回路65は、反射波検出部80から与えられる制御信号によって遅延量が制御される。すなわち、遅延回路65は、検知エリア3に反射波がない場合には遅延量が増大して応答の遅いAGC電圧を出力し、検知エリア3に反射波が生じている場合には遅延量が減少して応答の速いAGC電圧を出力するように動作する。
【0017】
また、図2は、上記AGC回路50の詳細を示したもので、AGC電圧発生部60における遅延回路65を抵抗R及び可変コンデンサ(電圧可変容量コンデンサ)VCからなる時定数回路により構成した場合の例を示している。
また、上記AGCゲート制御部70は、図1の直流増幅器41で増幅された受信検波信号bをAGC基準電圧E1と比較して出力する比較器71、この比較器71の出力により発振動作が制御される発振器72、この発振器72の出力信号によりワンショットパルスを発生するリトリガブル・ワンショット・マルチバイブレータ(以下、リトリガブル・ワンショット・マルチと略称する)73から成る。このリトリガブル・ワンショット・マルチ73から出力される信号により、上記AGC電圧発生部60のディジタルゲート63を制御する。
【0018】
上記比較器71は、図1の直流増幅器41からAGC基準電圧E1より高いレベルの受信検波信号bが出力されている間“high”レベルの信号を出力し、受信検波信号bがAGC基準電圧E1以下になると“Low”レベルの信号を出力する。発振器72は、比較器71から“high”レベルの信号が出力されている間、発振動作してトリガパルスをリトリガブル・ワンショット・マルチ73に出力し、比較器71の出力信号が“Low”レベルになると発振動作を停止する。また、リトリガブル・ワンショット・マルチ73は、発振器72が発振動作を行っている間“high”レベルの信号を継続して出力し、発振器72が発振を停止すると出力信号が“Low”レベルになる。
【0019】
また、反射波検出部80は、図1の直流増幅器41で増幅された受信検波信号bを反射波基準電圧E2と比較して出力する比較器81、この比較器81の出力信号を電圧値に変換する周波数−電圧変換回路82からなり、この周波数−電圧変換回路82から出力される反射波制御電圧により上記AGC電圧発生部60における遅延回路65の遅延動作を制御する。
【0020】
(反射波)
ここで、本発明の一実施形態であるマイクロ波センサ装置が対応しようとする反射波を説明する。図3において、検知エリア3に例えば車両11や人12等の侵入者が入ったとき、侵入者による電波の反射や遮断の影響を受けて電界強度が変化し、図1の受信検波回路30の受信検波出力が低下するため、リレー回路44が動作して接点が切替わり、侵入警報が監視ライン45に出力される。
【0021】
受信アンテナ4を設置した場所の周辺環境が自由空間に近い理想状態であれば、受信アンテナ4における受信電界は、侵入の検知時、図4(a)に示すように速やかな立下がり特性を示す。しかし、図3に示すように検知エリア3の周辺に金網13や水面14あるいは金属片等の電波反射体が存在する場合は、周辺環境である電波反射体の多重反射の影響を受けて、侵入の検知時以外にも図4(b)に示すように激しく強弱を繰り返す信号波形となる。また、図5(a)は図1および図2のc点の出力波形に反射波がない場合、図5(b)はc点の出力波形に反射波がある場合を示している。
【0022】
この結果、検知エリア3の周辺に電波反射体が存在する反射波環境における検知出力、すなわち図1の直流増幅器41から出力される検知信号は、図6に示すように大きく変動する波形となり、検知幅よりも広いエリアの側面追加において図1の比較器42による誤作動を引き起こす恐れが生じる。
【0023】
(動作)
次に、上述した構成をもつマイクロ波センサシステムの動作を、図1を用いて以下に詳細に説明する。受信アンテナ4で受信されたマイクロ波の信号は、受信機20の受信検波回路30に入力され、増幅器31で増幅される。この増幅器31で増幅された信号は、ミキサ32に入力され、局部発振器33から出力される局部発振信号と混合されてIF信号に変換される。このIF信号は、ディジタルアッテネータ34で信号レベルが調整されると共に中間周波増幅器35で増幅された後、検波器36に入力されて検波され、受信検波信号aとして出力される。この受信検波信号aは、検知エリア3に車両11や人12等の侵入者がいない場合には高いレベルに保持されているが、検知エリア3に侵入者が入ると侵入者による反射や遮断の影響を受けて電界強度が乱れ、信号レベルが低下する。
【0024】
上記検波器36から出力される受信検波信号aは、直流増幅器41で増幅され、受信検波信号bとして比較器42へ送られる。比較器42は、直流増幅器41から出力される受信検波信号bを検知基準電圧E0と比較することにより、検知エリア3への侵入者の有無を監視し、受信検波信号bが検知基準電圧E0より低下すると侵入者“あり”と判断し、リレー回路44を駆動してスイッチを切替え、侵入警報を監視ライン45により監視センターへ出力する。
【0025】
一方、上記受信検波回路30から出力される受信検波信号aはAGC電圧発生部60へ送られ、直流増幅器41から出力される受信検波信号bはAGCゲート制御部70及び反射波検出部80へ送られる。
上記受信検波回路30からAGC電圧発生部60へ送られた受信検波信号aは増幅器61で増幅された後、A/D変換器62でアナログ信号に変換され、ディジタルゲート63を介してD/A変換器64へ送られる。上記ディジタルゲート63は、AGCゲート制御部70からの信号によりON/OFF制御される。この場合、ディジタルゲート63は、検知エリア3に侵入者が存在しない場合はON状態、侵入者が存在するとOFF状態に制御される。
【0026】
上記AGCゲート制御部70は、比較器71にて直流増幅器41から出力される受信検波信号bとAGC基準電圧E1とを比較しており、侵入者の有無に応じて比較器71の出力レベルが“high”あるいは“Low”に変化する。検知エリア3に侵入者がいない場合は直流増幅器41から出力される受信検波信号bのレベルがAGC基準電圧より高く、比較器71の出力は“high”となり、発振器72が発振動作する。発振器72が発振動作を行っている状態ではリトリガブル・ワンショット・マルチ73から“high”レベルの信号が出力され、ディジタルゲート63はON状態に保持される。
【0027】
しかし、検知エリア3に侵入者が存在すると直流増幅器41から出力される受信検波信号bのレベルがAGC基準電圧より低くなり、比較器71の出力は“Low”となり、発振器72が発振動作を停止する。発振器72が発振動作を停止すると、リトリガブル・ワンショット・マルチ73はトリガされず、その出力が“Low”となり、ディジタルゲート63はOFFされる。
【0028】
上記のように検知エリア3における侵入者の有無によってディジタルゲート63がON/OFF制御される。
検知エリア3に侵入者がいない場合は、上記のようにAGCゲート制御部70のリトリガブル・ワンショット・マルチ73から“high”レベルの信号が出力され、AGC電圧発生部60のディジタルゲート63はON状態に保持される。このためA/D変換器62から出力されるディジタル信号はディジタルゲート63を通過してD/A変換器64へ送られ、アナログ信号に変換されて連続的にAGC電圧が生成される。このAGC電圧は、遅延回路65で遅延処理された後、増幅器66で増幅されて受信検波回路30へ送られ、ディジタルアッテネータ34の減衰量を調整すると共に中間周波増幅器35のゲインを調整する。
【0029】
また、検知エリア3に侵入者が存在した場合は、上記したようにAGCゲート制御部70のリトリガブル・ワンショット・マルチ73の出力が“Low”となり、AGC電圧発生部60のディジタルゲート63をOFFする。ディジタルゲート63は、OFFされた時のディジタル値、すなわち侵入者が送信アンテナ2と受信アンテナ4との間のマイクロ波ビームを遮断した瞬間のディジタル値を保持すると共に、その値をD/A変換器64に与えて一定レベルのAGC電圧を生成する。この一定レベルのAGC電圧は、遅延回路65及び増幅器66を介して受信検波回路30へ送られ、ディジタルアッテネータ34の減衰量を調整すると共に中間周波増幅器35のゲインを調整する。
【0030】
また、反射波検出部80は、直流増幅器41から出力される受信検波信号bに基づいて検知エリア3における反射波の程度を判定し、それに応じてAGCゲート制御部70における遅延回路65の遅延動作を制御し、反射波の影響を軽減する。
すなわち、反射波検出部80は、比較器81にて、直流増幅器41から出力される受信検波信号bと反射波基準電圧E2とを比較し、図5(a)、(b)に示す出力波形を得る。図5(a)は検知エリア3に反射波がない場合の比較器81の出力波形を示し、図5(b)は反射波がある場合の比較器81の出力波形を示している。この比較器81の出力波形は、反射波があると反射波が無い場合に比較して周波数が高くなることが分かる。
【0031】
上記比較器81の出力信号は、周波数−電圧変換回路82により電圧に変換されて遅延回路65に供給される。遅延回路65を図2に示すように可変コンデンサVC及び抵抗Rの時定数回路で構成した場合、比較器81から出力される信号の周波数が低いと周波数−電圧変換回路82の出力電圧が高くなって可変コンデンサVCの容量は大きくなる。また、比較器81から出力される信号の周波数が高くなると、周波数−電圧変換回路82の出力電圧が低くなって可変コンデンサVCの容量は小さくなる。
【0032】
従って、検知エリア3における反射波が無く、比較器81から出力される信号の周波数が低い場合には、遅延回路65の時定数RCが大きくなって遅延時間が長くなり、AGC電圧発生部60から受信検波回路30へ送られるAGC電圧の応答速度が遅くなる。この結果、受信検波回路30は、応答速度の遅いAGC電圧によってディジタルアッテネータ34及び中間周波増幅器35がゲインコントロールされることになる。
【0033】
また、検知エリア3に反射波が存在し、比較器81から出力される信号の周波数が高くなると、時定数RCが小さくなって遅延時間が短くなり、AGC電圧発生部60から受信検波回路30へ送られるAGC電圧の応答速度が速くなる。この結果、受信検波回路30は、応答速度の速いAGC電圧によってディジタルアッテネータ34及び中間周波増幅器35がゲインコントロールされることになる。
【0034】
上記のように検知エリア3に反射波が存在する場合には、受信検波回路30のディジタルアッテネータ34及び中間周波増幅器35が応答速度の速いAGC電圧によりゲインコントロールされて反射波による電界の変動がキャンセルされる。すなわち、実質的な検知エリアを、反射波の影響を受けない範囲まで狭くすることができる。これにより、反射波の影響が軽減され、検知エリア3の側面を物体が通過することによる反射波の乱れ等に起因する誤検出を防止することができる。
【0035】
以上の結果をまとめると、受信検波回路30は、図7のグラフに示すように、AGC回路50により検知エリア3における反射波の有無に応じて、
反射波が少ないときは、AGCを動作させずに、十分高感度で検出する。
反射波が多いときは、AGCを十分動作させ、センサ感度を低下させて誤検出を無くする。
すなわち、
1.反射波少→周波数低い→可変VC容量大→時定数RC大→応答遅い→検知エリア広
2.反射波多→周波数高い→可変VC容量小→時定数RC小→応答速い→検知エリア狭
のように制御される。
【0036】
上記実施形態によれば、受信検波回路30のゲインを制御するAGC回路50を設け、検知エリア3における反射波の有無を検出し、反射波がない場合には応答速度の遅いAGC電圧により受信検波回路30のゲインを制御して検知エリア3を広げ、反射波がある場合には応答速度の速いAGC電圧により受信検波回路30のゲインを制御して検知エリア3を狭くする。換言すれば、検知エリアの中心線付近に人や車が進入することによって生じる急峻で継続的な電界の落ち込み以外は検出しないようにする。これにより、検知エリア3が反射波の多い環境であっても反射波の影響を軽減できると共に検知エリア3の側面通過による影響も軽減でき、安定した検知動作を行わせることができる。
【0037】
(他の反射波検出部)
また、図8に示すように、受信検波信号の一部を移相し、移相した受信検波信号と移相しない受信検波信号とを比較して両者の差分を求め、この差分に基づいて反射波の程度を検出する反射波検出部80’を用いることも可能である。
【0038】
すなわち、図8に示すような反射波検出部80’は、受信アンテナ4で受信されたマイクロ波の信号を例えば90度移相する移相器83と、増幅器31−2と、局部発振器33−2と、増幅器35−2と、検波器36−2と、局部発振器33と、局部発振器33に接続されるプリスケーラ84を有する。さらに、反射波検出部80’は、各検波器36,36−2の出力をそれぞれ増幅する増幅器85,86と、各出力を比較する比較器87と、比較器87の出力に応じて周波数に応じた電圧値に変換し制御信号を遅延回路65に供給する周波数−電圧変換回路82を有している。
【0039】
このような構成をもつ反射波検出部80’によれば、受信検波信号の一部を移相し、移相した受信検波信号と移相しない受信検波信号とを比較して両者の差分を求め、この差分に基づいて反射波の程度を検出することができる。従って、図1の反射波検出部80と同様に、遅延回路65に制御信号を供給することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0041】
1…送信機、2…送信アンテナ、3…検知エリア、4…受信アンテナ、20…受信機、30…受信検波回路、41…直流増幅器、42…比較器、43…タイミング制御器、44…リレー回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナにより受信したマイクロ波を増幅して検波し、受信検波信号を出力する受信検波回路と、
前記受信検波回路から出力される受信検波信号を監視し、該受信検波信号が所定値以上変化したことを検知して侵入警報を出力する監視手段と、
前記受信検波回路から出力される受信検波信号により、前記検知エリアにおける反射波の有無を検出する反射波検出部と、
前記反射波検出部が反射波を検出した場合は、反射波を検出しない場合よりも速い応答速度で前記受信検波回路のゲインを制御するAGC回路を具備することを特徴とするマイクロ波センサ装置。
【請求項2】
前記反射波検出部は、前記受信検波信号を所定値と比較し、この比較結果の変動に基づいて、前記反射波の程度を検出することを特徴とする請求項1記載のマイクロ波センサ装置。
【請求項3】
検知エリアの一方側に配置される送信アンテナからマイクロ波を送信する送信機と、前記検知エリアの他方側に前記送信アンテナに対向して配置される受信アンテナを備えた受信機からなるマイクロ波センサシステムであって、
前記受信機は、
受信アンテナにより受信したマイクロ波を増幅して検波し、受信検波信号を出力する受信検波回路と、
前記受信検波回路から出力される受信検波信号を監視し、該受信検波信号が所定値以上変化したことを検知して侵入警報を出力する監視手段と、
前記受信検波回路から出力される受信検波信号により、前記検知エリアにおける反射波の有無を検出する反射波検出部と、
前記反射波検出部が反射波を検出した場合は、反射波を検出しない場合よりも速い応答速度で前記受信検波回路のゲインを制御するAGC回路と、
を具備することを特徴とするマイクロ波センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266212(P2009−266212A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59910(P2009−59910)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】