説明

マイクロ波生ごみ処理機

【課題】
マイクロ波生ごみ処理機において、漏洩するマイクロ波電力の抑制。
【解決手段】
加熱容器1の上部は、開閉可能な取手2a1付蓋2aと、この蓋2aが設置された生ごみ投入管2bなどから構成されている。蓋2aには生ごみ投入管2bの内壁面側に位置するようにチョーク構造体2cを設置している。チョーク構造体2cは金属性円筒状のチョーク空洞2c1,チョーク入り口2c2,フッ素樹脂などの低損失誘電体から成るチョークカバー2c3から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、固定槽と熱風供給装置とマイクロ波供給装置と攪拌装置を有したマイクロ波乾燥機を開示している。このマイクロ波乾燥機では、固定槽内に投入した生ごみを、攪拌装置により攪拌しつつ、熱風供給装置による熱風と、マイクロ波供給装置によるマイクロ波とにより加熱して、最適含水率にまで乾燥させるようにしたものである。同文献の図1および図2に示されるように、固定槽は円筒ドラム形状となっており、その中心軸が水平面に対して傾斜する状態で配置されている。生ごみの投入口となる投入用ハッチは、固定槽の上周面に開閉自在に取り付けられている。また、乾燥物の取り出し口となると取出用ハッチは、固定槽の左端面に取り付けられている。なお、取出用ハッチが固定槽の左端面に密着して、クランプ機構によりクランプすることで取出口が閉状態となり、クランプ機構を解除して取出用ハッチを固定槽の左端面から離すことにより取出口が開状態となる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−56178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、マイクロ波乾燥機の投入用ハッチの電波シールについては配慮されておらず、投入用ハッチの隙間を通して装置外部へのマイクロ波電力の漏洩が発生する。実用化に際してはこれらの点が重要な課題となる。
【0005】
本発明は、マイクロ波を用いて生ゴミを乾燥させる生ごみ処理機からのマイクロ波の漏洩を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、投入口に設けられた開閉可能な蓋にチョーク構造体からなる電波シール機構を設けるとともに、前記チョーク構造体を投入管の内壁面側に位置するように蓋に設置した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生ごみ処理機によれば、マイクロ波を用いて生ゴミを乾燥させるときに外部に漏洩するマイクロ波を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて一実施例を説明する。図1は、本実施例の生ごみ処理機の要部断面図である。本実施例の生ごみ処理機は、加熱容器1,投入口2,加熱手段であるマグネトロン3,攪拌手段4,処理ごみ排出手段5,排気ファン6などを備えている。
【0009】
加熱容器1は水平方向に設置した円筒形の容器であり、投入された生ごみを蓄えることができる。加熱容器1の片方の側面下部(図1では右下)には、投入された生ごみ100から出た水分を排出するための排水管1aが設けられている。また、生ごみ100を加熱乾燥処理する過程で発生した水蒸気を含む空気を加熱容器1外に排出する排気ファン6が設けられている。
【0010】
投入口2は加熱容器1の上部に設けられており、着脱可能な蓋2aと、蓋2aを装着することで閉鎖される投入管2bから構成される。
【0011】
マグネトロン3は、導波管3aを介して加熱容器1にマイクロ波を供給する。また、マグネトロン3を外気で冷却する冷却ファン3bが設置されている。さらに、導波管3aと加熱容器1との接続部には、導波管3a内に異物(加熱容器内の生ごみ、加熱された生ごみから発生した水蒸気,油分など)が浸入することを防止する導波管保護板3cが設置されている。なお、導波管保護板3cは、マイクロ波を透過するフッ素樹脂等の材質で造られている。
【0012】
攪拌手段4は、加熱容器1内の生ごみ100を攪拌するとともに処理ごみ排出手段5の方向に移動させる。この攪拌手段4は、加熱容器1の内部に位置する攪拌棒4aおよび攪拌羽根4bと、加熱容器1の側面外側に位置する攪拌モータ4cで構成される。攪拌棒4aは、加熱容器1の円筒軸方向に回転軸を持ち、攪拌羽根4bが複数設けられている。攪拌モータ4cは攪拌棒4aに駆動力を与える。
【0013】
処理ごみ排出手段5は、加熱容器1に接続された処理ごみ排出管5a,この処理ごみ排出管5aに接続されたごみパックケース5b、その内部に設けられたごみパック5c,空気吸出口5dなどから構成されている。ごみパック5cは処理ごみ排出管5aに対して開口しているとともに着脱可能であり、空気を通過する紙などの材質で造られている。ごみパックケース5bには、処理ごみが溜まったごみパック5cを取り出すための開閉扉5eが設けられている。
【0014】
このように構成した生ごみ処理機の動作を説明する。生ごみは、投入口2の蓋2aを取り外して加熱容器1内に投入される。蓋2aを投入口2に装着した後、生ごみの乾燥処理が開始される。生ごみの乾燥処理中は、マグネトロン3を用いた生ごみの加熱,攪拌手段4を用いた生ごみの攪拌,排気ファン6を用いた排気が並行して行われる。生ごみから出た水分は排水管1aを介して排出され、生ごみから出た水蒸気は排気ファン6を介して排出される。そして、加熱容器1内の温度上昇,マグネトロン3から排出される冷却空気の温度上昇のいずれかに基づいて生ごみの乾燥が終了したことを検出すると生ごみの乾燥処理が終了する。
【0015】
乾燥処理後の生ごみは攪拌手段4を使って処理ごみ排出手段5の方向へ移動させられる。これを実現するため、攪拌手段4に設けられた攪拌羽根4bは回転方向に対して傾斜しており、傾斜した攪拌羽根4bが回転することによって加熱容器1内の生ごみが徐々に処理ごみ排出管5aの方に移動する。
【0016】
処理ごみ排出管5aの方へ移動した生ごみ100は、処理ごみ排出手段5を利用して加熱容器1から排出される。処理ごみ排出手段5の利用方法を具体的に説明する。空気吸出口5dに掃除機などの吸引手段を接続し空気を吸引すると、ごみパック5cは空気を通過するため、加熱容器1内の空気が吸引されることになる。乾燥処理を終えた生ごみは、処理ごみ排出管5aの近傍に集められており、また重量が軽くなっているため、加熱容器1内の空気とともに処理ごみ排出管5aを通ってごみパック5cの内部に吸引される。なお、このとき、排気ファン6を空気が逆流することによって加熱容器1内に空気が供給される。
【0017】
処理済みの生ごみを吸引,格納したごみパック5cは、使用者によって開閉扉5eを介してごみパックケース5bから取り出される。使用者は、新たなごみパックをごみパックケース5bに装着する。
【0018】
次に、蓋2aの構造について図2,図3,図4を用いて詳細に説明する。図2は投入口2の拡大断面図、図3は蓋2aの拡大立体断面図、図4は蓋2aの拡大立体図である。
【0019】
図4に示すように蓋2aには投入管2bとの着脱を容易にするため取手2a1が設けられている。また、図2に示すように、蓋2aには投入管2bの内壁面側に位置するチョーク構造体2c(電波シール機構)を有している。チョーク構造体2cは円筒状の金属で周方向を囲まれたチョーク空洞2c1,チョーク構造体2cへの入り口であるチョーク入り口2c2,チョーク空洞2c1への異物の侵入を防ぐ、フッ素樹脂などの低損失誘電体から成るチョークカバー2c3から構成されている。なお、ここでは投入口2の断面が円状であることを考慮してチョーク空洞2c1を囲む金属を円筒状のものにしたが、チョーク空洞2c1を囲む金属の形状は投入口2の形状に応じて変形することができる。
【0020】
本実施例では、生ごみを加熱するマグネトロン3から発振されるマイクロ波の周波数fを2450MHz(マイクロ波の波長λ=12.2cm )とし、その出力は数百ワットから数キロワットまで可変できるものとする。マイクロ波電力が加熱容器1内に供給された場合、蓋2aに適切なマイクロ波漏洩防止手段を設けないと蓋2aと投入管2bのわずかの隙間を通してマイクロ波電力が外部へ漏洩する。本実施例は、投入口2にチョーク構造体2cを構成して漏洩マイクロ波電力を抑制している。
【0021】
次に、本実施例のチョーク構造体2cでマイクロ波電力の漏洩を抑制できる理由を説明する。図5は、長さlの線路の一端にインピーダンスZlを接続したときの、他端から見た入力インピーダンスZinを説明するための図である。図5の構成を用いるとき、入力インピーダンスZinは、
in=Z0×(Zl+jZ0tanβl)/(Z0+jZltanβl) …(式1)
で求められる。ここで、Zl=0とすると、式1は、
in=jZ0tanβl …(式2)
となる。また、位相定数β=2π/λであるため、式2は、
in=jZ0tan(2π/λ)l …(式3)
となる。ここで、l=λ/4とすると、
in=jZ0tan(π/2)=無限大 …(式4)
となり、l=λ/4とすれば他端から見た入力インピーダンスZinを無限大にできることが分かる。
【0022】
式1から式4を図2に当てはめて説明する。A点にインピーダンスZl を接続したときに点線Bから見た入力インピーダンスZinは式1から求めることができる。また、A点は金属板で短絡されているので電気的にはインピーダンスZl は零となるため、点線Bから見た入力インピーダンスZinは式2で求めることができる。さらに、A点と点線Bの距離をλ/4にすれば点線Bから見たインピーダンスZinは式4に示されるように無限大となる。つまり、チョーク空洞2c1の奥部にあるA点とチョーク入り口2c2の点線Bの距離をおよそλ/4(本実施例では3.05cm )にすることで点線Bから見たインピーダンスZinを無限大にすることができる。一方、点線Bからλ/4離れたC点(蓋2aと投入管2bの隙間)でのインピーダンスも零となるため、C点はA点と同様に短絡されたものと見なせる。
【0023】
したがって、投入管2bとチョーク構造体2cの外周壁面の隙間を通ってきたマイクロ波電力の大部分は、インピーダンスZinが無限大の点線Bで加熱容器1側に反射する。反射しなかった一部の漏洩マイクロ波電力は投入管2bとチョーク構造体2cの外周壁面の隙間を通って蓋2aのC点に向かうが、短絡と見なせるC点では電気的に遮断されるのでマイクロ波電力は外部へ漏洩しない。
【0024】
以上で説明したように本実施例のマイクロ波生ごみ処理機は、開閉可能な蓋2aにチョーク構造体2cからなる電波シール機構を設けることより、蓋2aの隙間を通して装置外部へのマイクロ波電力の漏洩を防止できる。さらにはチョーク構造体を投入管2bの内壁面側に設置されるよう蓋2aに備えたことにより、投入管外周囲への出っ張りもなく、しかも投入管径を変えることなく、コンパクトな電波シール機構を有する安全な生ごみ処理機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例に関わる生ごみ処理機の要部断面図。
【図2】投入口2の拡大断面図。
【図3】蓋2aの拡大立体断面図。
【図4】蓋2aの拡大立体図。
【図5】長さlの線路の一端にインピーダンスZlを接続したときの、他端から見た入力インピーダンスZinを説明する図。
【符号の説明】
【0026】
1 加熱容器
1a 排水管
2 投入口
2a 蓋
2a1 取手
2b 投入管
2c チョーク構造体
2c1 チョーク空洞
2c2 チョーク入り口
3 マグネトロン
3a 導波管
3b 冷却ファン
3c 導波管保護板
4 攪拌手段
4a 攪拌棒
4b 攪拌羽根
4c 攪拌モータ
5 処理ごみ排出手段
5a 処理ごみ排出管
5b ごみパックケース
5c ごみパック
5d 空気吸出口
5e 開閉扉
6 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に設置した円筒形の加熱容器と、
着脱可能な蓋を備えた投入口と、
前記加熱容器に導波管を介してマイクロ波を供給するマグネトロンと、
前記加熱容器の円筒軸方向に回転軸を持つ攪拌棒と、
前記加熱容器に設けられた処理ごみ排出管と、
前記加熱容器に設けられた排水管と、
前記加熱容器内の空気を加熱容器外に排出する排気ファンから構成され、
前記開閉可能な蓋にチョーク構造体からなる電波シール機構を備えたことを特徴とするマイクロ波生ゴミ処理機。
【請求項2】
前記蓋に構成した電波シール機構のチョーク構造体を生ごみ投入管の内壁面側に設けたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波生ごみ処理機。
【請求項3】
生ごみを投入する投入管と、
該投入口から投入された生ごみを蓄える加熱容器と、
該加熱容器の内部にマイクロ波を供給するマグネトロンと、
前記投入管に着脱可能に設けられ、前記加熱容器を経由して前記投入管に向かうマイクロ波を反射するチョーク構造体を有した蓋と、
を具備することを特徴とするマイクロ波生ごみ処理機。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロ波生ごみ処理機において、前記チョーク構造体は、円筒状の金属で周方向を囲まれたチョーク空洞と、チョーク空洞への入り口であるチョーク入り口と、低損失誘電体から成るチョークカバーと、で構成され、
前記チョーク空洞の奥部と、前記チョーク入り口との距離は、前記マグネトロンが供給するマイクロ波の波長λのおよそ1/4であることを特徴とするマイクロ波生ごみ処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34627(P2009−34627A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202453(P2007−202453)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】