説明

マウスガード用組成物、マウスガード用シートおよびマウスガード

【課題】衝撃吸収性に優れ、従来のものよりも薄く、軽量化でき装着感の良いマウスガードを製造するためのマウスガード用組成物、およびマウスガード用シート、ならびにこのような特性を有するマウスガードを提供すること。
【解決手段】15〜75モル%の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、25〜85モル%のプロピレンから導かれる構成単位(ii)(ただし、構成単位(i)の割合と構成単位(ii)の割合との合計は100モル%である。)とからなる4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜100重量部、および熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜0重量部(ただし、共重合体(A)と樹脂またはゴム(B)との合計量は100重量部である。)含有することを特徴とするマウスガード用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスガード用組成物、マウスガード用シートおよびマウスガードに関する。
【背景技術】
【0002】
ボクシング、ラグビー、アメリカンフットボールなどの激しい動作を伴うスポーツでは、歯列を保護するため、および、脳への衝撃を緩和するため、一般にマウスガードと呼ばれる(マウスピースなどとも呼ばれる)歯列保護具が広く用いられている。
【0003】
従来、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)製のマウスガードなどが知られていたが、衝撃吸収性が低い、咬合力が加わることで破損しやすいなどの問題があったため、種々のマウスガードが開発されている。
【0004】
たとえば、特開2002−355352号公報、国際公開第2002/98521号パンフレット(特許文献1、2)などには、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(水添SIS)系のマウスガード用材料およびマウスガードが開示されている。
【0005】
特開2001−54610号公報、特開2009−84326号公報(特許文献3、4)などには、スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体(SEBS)系のマウスガード用材料およびマウスガードが開示されている。
【0006】
また、ポリオレフィン系の材料を用いた例も知られており、特開平5−23353号公報(特許文献5)および特開平5−23354号公報(特許文献6)には、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体を架橋してなる架橋体から形成されている歯列保護矯正具が開示されている。さらに、特開2005−385号公報(特許文献7)には、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとをメタロセン触媒にて共重合して得られる直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体からなるマウスピース用成形材およびマウスピースが開示されている。
【0007】
他方、国際公開第96/28507号パンフレット(特許文献8)および国際公開第2005/121192号パンフレット(特許文献9)には、4−メチル−1−ペンテン系共重合体およびこれを含有する組成物が開示されている。ただし、これらの文献には、マウスガードに関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−355352号公報
【特許文献2】国際公開第2002/98521号パンフレット
【特許文献3】特開2001−54610号公報
【特許文献4】特開2009−84326号公報
【特許文献5】特開平5−23353号公報
【特許文献6】特開平5−23354号公報
【特許文献7】特開2005−385号公報
【特許文献8】国際公開第96/28507号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2005/121192号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、従来、種々のマウスガード用材料およびマウスガードが知られている。しかしながら、水添SIS系のマウスガード(特許文献1、2)は、衝撃吸収性、軽量性が不十分であり、SEBS系のマウスガード(特許文献3、4)は、衝撃吸収性、応力緩和性、軽量性が不十分であった。また、上記記載の水添SIS系、SEBS系マウスガードともにスチレン由来のオリゴマーを含むことから、衛生面での課題があった。
【0010】
また、特許文献5、6に記載された歯列保護矯正具は、衝撃吸収性、柔軟性の点でさらなる改善の余地があった。
さらに、特許文献7に記載されたマウスピース用成形材は、衝撃吸収性、柔軟性、軽量性の点で改良が必要であった。
【0011】
本発明は、上述したような従来技術における問題点を解決することを目的としており、具体的には、衝撃吸収性に優れ、従来のものよりも薄く、軽量化でき装着感の良いマウスガード(主に、スポーツ用マウスガード)を製造するためのマウスガード用組成物、およびマウスガード用シート、ならびにこのような特性を有するマウスガードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のマウスガード用組成物は、
15〜75モル%の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、25〜85モル%のプロピレンから導かれる構成単位(ii)(ただし、構成単位(i)の割合と構成単位(ii)の割合との合計は100モル%である。)とからなる4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜100重量部、および
熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜0重量部(ただし、共重合体(A)と樹脂またはゴム(B)との合計量は100重量部である。)
を、含有することを特徴としている。
【0013】
前記マウスガード用組成物は、好ましくは、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜98量部、および前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜2重量部含有する。
【0014】
本発明のマウスガード用シートは、本発明のマウスガード用組成物からなることを特徴としている。
本発明のマウスガードは、本発明のマウスガード用組成物からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衝撃吸収性に優れ、従来のものよりも薄く、軽量化でき装着感の良いマウスガードの製造に適したマウスガード組成物、およびマウスガード用シート、ならびにこのような特性を有するマウスガードが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のマウスガード用組成物、マウスガード用シートおよびマウスガードをさらに詳細に説明する。
【0017】
[マウスガード用組成物]
本発明のマウスガード用組成物は、
15〜75モル%の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、25〜85モル%のプロピレンから導かれる構成単位(ii)(ただし、構成単位(i)の割合と構成単位(ii)の割合との合計は100モル%である。)とからなる4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜100重量部、および
熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜0重量部(ただし、共重合体(A)と樹脂またはゴム(B)との合計量は100重量部である。)
を、含有する。
なお、前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)の量が0重量部である態様も、便宜上「組成物」と表現する。
【0018】
<4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)>
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)は、15〜75モル%の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、25〜85モル%のプロピレンから導かれる構成単位(ii)(ただし、構成単位(i)の割合と構成単位(ii)の割合との合計は100モル%である。)とからなる。
【0019】
4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)の割合は、好ましくは20〜72モル%であり、より好ましくは20〜65モル%であり、さらに好ましくは20〜33モル%である。
【0020】
また、プロピレンから導かれる構成単位(ii)の割合は、好ましくは28〜80モル%であり、より好ましくは35〜80モル%であり、さらに好ましくは67〜80モル%である。
【0021】
前記構成単位(i)の割合が15モル%よりも過小であると、マウスガードの衝撃吸収性、柔軟性、軽量性が損なわれ、75モル%よりも過大であると、マウスガードの衝撃吸収性、柔軟性が損なわれる。
【0022】
なお、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)は、本発明の目的を損なわない程度の少量(たとえば、10モル%以下)であれば、他のモノマーから導かれる構成単位を含んでいてもよい。他のモノマーの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1-オクテンなどが好ましい。
【0023】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、好ましくは0.01〜5.0(dL/g)、より好ましくは0.05〜4.0(dL/g)、さらに好ましくは0.1〜3.0(dL/g)、特に好ましくは0.5〜2.5(dL/g)である。後述するように重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得て極限粘度[η]を調整することが出来る。
【0024】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500〜10,000,000、より好ましくは1,000〜5,000,000、さらに好ましくは1,000〜2,500,000である。
【0025】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.5、より好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5である。
【0026】
Mw/Mnの値が上記範囲内にある前記共重合体(A)は、機械特性、耐摩耗性に優れたマウスガードを、優れた成形性で製造する上で有利であり、工業的な価値がより高い。
後述する触媒を用いれば、上記に記載の極限粘度[η]または重量平均分子量(Mw)の範囲内において、Mw/Mnの値が上記範囲内にある前記共重合体(A)を得ることができる。なお、前記Mw/Mnおよび前記Mwの値は、後述する実施例において採用された方法で測定した場合の値である。
【0027】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、酢酸メチルによる抽出量は、好ましくは0〜1.5重量%、より好ましくは0〜1.0重量%、さらに好ましくは0〜0.8重量%、特に好ましくは0〜0.5重量%である。酢酸メチル抽出量は成形時のべたつきの指標となり、この値が大きいと、得られたポリマーは組成分布が大きく低分子量ポリマーを含み、成形時に不具合を生じる。酢酸メチル抽出量が上記範囲内であると、成形時のべたつきによる不具合は生じない。また後述する触媒を用いることで、立体規則性の低いアタクチック成分が少ない共重合体(A)が合成でき、得られたポリマーを成形することで、べたつきがなく、衛生面に優れるマウスガードが得られる。
【0028】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の密度(ASTM D 1505にて測定)は、好ましくは880〜810kg/m3、より好ましくは860〜820kg/m3、さらに好ましくは855〜830kg/m3である。
【0029】
密度は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比によって変えることができ、上記範囲内にある前記共重合体(A)は、軽量なマウスガードを製造する上で有利である。
【0030】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、示差走査型熱量計(DSC)によって測定した融点〔Tm〕は、110℃未満または認められないことが好ましい。融点は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比によって変えることができ、上記範囲内にある前記共重合体(A)は、柔軟なマウスガードを製造する上で有利である。
【0031】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の、−40℃〜+180℃の温度範囲で、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定(測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。)して得られる損失正接tanδの最大値は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.4〜8.0、さらに好ましくは0.6〜6.0、特に好ましくは1.5〜5.0、とりわけ好ましくは2.0〜4.0である。また、tanδの値が最大となる際の温度は、好ましくは−50℃〜100℃、より好ましくは−30℃〜50℃、さらに好ましくは−10℃〜40℃、特に好ましくは0℃〜40℃の範囲にある。tanδの最大値は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比などにより制御することができ、例えば共重合体(A)中の4−メチル−1−ペンテン含量を20〜72モル%にすることで、tanδの最大値を上記範囲内にすることができる。
【0032】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)は、下式で定義される反発弾性率(%)が、口腔内を想定した温度条件である40℃において、0〜25%、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜10%である。
反発弾性率(%)=(跳ね返り高さ)(mm)/460×100
【0033】
反発弾性率は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比により制御することができ、例えば4−メチル−1−ペンテン含量を20〜65モル%にすることで反発弾性率を上記範囲内にすることができる。
【0034】
<製造方法>
次に、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の製造方法について説明する。
【0035】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の製造には、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3-193796号公報あるいは特開平02-41303号公報中に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられ、さらに好ましくは、下記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒が好適に用いられる。
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR4までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、
Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、
Yは炭素またはケイ素であり、
Qはハロゲン、炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、
jは1〜4の整数である。)
上記一般式(1)または(2)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0038】
炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基の水素の一部または全部が水酸基、アミノ基、ハロゲン基、フッ素含有炭化水素基などの官能基で置換されていても良い。炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、クロロフェニル、クロロビフェニル、クロロナフチル等が挙げられる。
【0039】
ケイ素含有炭化水素基は、好ましくはケイ素数1〜4かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。
【0040】
フルオレン環上のR5からR12までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。
【0041】
また、フルオレン環上のR5からR12の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5=R12、R6=R11、R7=R10、かつR8=R9であることが好ましく、フルオレン環が無置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレンまたは2,3,6,7−四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、7位はそれぞれR7、R10、R6、R11に対応する。
【0042】
上記一般式(1)のR13およびR14は、水素および炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0043】
Yは炭素またはケイ素である。一般式(1)の場合は、R13およびR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としては、メチレン、ジメチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、フルオロメチルフェニルメチレン、クロロメチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジクロロフェニルメチレン、ジフルオロフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジビフェニルメチレン、ジp−メチルフェニルメチレン、メチル−p−メチルフェニルメチレン、エチル−p−メチルフェニルメチレン、ジナフチルメチレンまたはジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチル−tert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、フルオロメチルフェニルシリレン、クロロメチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジp−メチルフェニルシリレン、メチル−p−メチルフェニルシリレン、エチル−p−メチルフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン等を挙げることができる。
【0044】
一般式(2)の場合は、Yは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基Aと結合し、シクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等を構成する。好ましい具体例としては、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレン等を挙げることができる。
【0045】
一般式(1)および(2)のMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、Mとしてはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
Qはハロゲン、炭素原子数1〜20の炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組み合わせで選ばれる。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、およびメシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、およびテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Qは同一でも異なった組み合わせでもよいが、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0046】
本発明における上記メタロセン化合物の具体例として、国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第2006/025540号パンフレットまたは国際公開第2007/308607号パンフレット中に例示される化合物が好適に挙げられるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0047】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の製造にメタロセン化合物を用いる場合、触媒成分は、
(a)メタロセン化合物(たとえば、上記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物)と、
(b)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
さらに必要に応じて、
(c)微粒子状担体と
から構成される。製造方法としては、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載の方法を採用することが出来る。
【0048】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)(以下「成分(b−1)」ともいう。)、メタロセン化合物(a)(以下「成分(a)」ともいう。)と反応してイオン対を形成する化合物(以下「成分(b−2)」ともいう。)、有機アルミニウム化合物(b−3)(以下「成分(b−3)」ともいう。)、および微粒子状担体(c)の具体例としては、これらの化合物または担体としてオレフィン重合の分野において従来公知のもの、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載された具体例が挙げられる。
【0049】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の製造において、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれによっても実施できる。
液相重合法においては、不活性炭化水素溶媒を用いてもよく、不活性炭化水素の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;およびエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などを挙げることができる。
【0050】
また、4−メチル−1−ペンテンおよびプロピレン自身を溶媒とする塊状重合を実施することもできる。
また、4−メチル−1−ペンテンの単独重合と4−メチル−1−ペンテンとプロピレンとの共重合を段階的に行うことにより、組成分布が制御された4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を得ることも可能である。
【0051】
重合を行うに際して、成分(a)は、反応容積1リットル当り、周期律表第4族金属原子換算で通常10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モルとなるような量で用いられる。成分(b−1)は、成分(b−1)と、成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−1)/M]が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(b−2)は、成分(b−2)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。成分(b−3)は、成分(b−3)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0052】
重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜100℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0053】
重合に際して生成ポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよく、その量は4−メチル−1−ペンテンおよびプロピレンの合計1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0054】
<熱可塑性樹脂またはゴム(B)>
前記の熱可塑性樹脂またはゴム(B)は、特に制限はなく、例えば、以下の樹脂、ゴムが挙げられる。
【0055】
熱可塑性ポリオレフィン系樹脂(前記共重合体(A)を除く。)、具体的には、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン;
熱可塑性ポリアミド系樹脂、具体的には、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612);
熱可塑性ポリエステル樹脂、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー;
熱可塑性ビニル芳香族系樹脂、具体的には、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、および前述の水素添加物);
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;石油樹脂;
共重合体ゴム、具体的には、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム等が例示される。
【0056】
これらの熱可塑性樹脂、ゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの中でも、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、ポリスチレン、スチレン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、アイオノマー、フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂より好ましい形態としてはアイソタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴム、が好ましい。
【0057】
前記ロジン系樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸などで変性した変性ロジン、ロジン誘導体が挙げられる。また、このロジン誘導体としては、前記の天然ロジン、重合ロジンまたは変性ロジンのエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物などが挙げられる。さらに、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0058】
前記テルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒドなどからなる樹脂が挙げられ、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、などにスチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンなどの芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂なども挙げられる。また、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0059】
前記石油樹脂としては、たとえばタールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合石油樹脂が挙げられる。すなわち、C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分とを共重合した樹脂)、スチレン・α−メチルスチレン共重合体石油樹脂、α−メチルスチレン重合体石油樹脂、イソプロペニルトルエン重合体石油樹脂などが挙げられ、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエンなどを含有しているクマロンインデン系樹脂、p−ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、o−キシレン、p−キシレンまたはm−キシレンをホルマリンと反応させてなるキシレン系樹脂なども挙げられる。
【0060】
また、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる1つ以上の樹脂は、耐候性および耐変色性に優れるために水素添加誘導体が好ましい。前記樹脂の環球法による軟化点は、40〜180℃の範囲にあることが好ましい。また、前記樹脂のGPCにより測定される数平均分子量(Mn)分子量は100〜10,000程度の範囲にあることが好ましい。
ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる1つ以上の樹脂として、市販品を使用してもよい。
【0061】
<軟化剤>
本発明のマウスガード用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、軟化剤が必要に応じて配合されていてもよい。軟化剤としては、通常使用される従来公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどの石油系物質;コールタールおよびコールタールピッチなどのコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などの脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などの脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどの合成高分子;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどのエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、および液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物;液状チオコールなどが挙げられる。
【0062】
<他の添加剤>
本発明のマウスガード用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機または有機の充填剤、有機系または無機系発泡剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、難燃剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0063】
添加剤の具体例としては、フェノール系安定剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4'−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェロール類、アスコルビン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、リン酸系安定剤、脂肪酸モノグリセライド、N,N−[ビス−2−ヒドロキシエチル]アルキルアミン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、ステアリン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、クレイ、石膏、ガラス繊維、チタニア、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。
【0064】
<マウスガード用組成物(X)>
本発明のマウスガード用組成物は、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜100重量部、熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜0重量部含有し(ただし、共重合体(A)と樹脂またはゴム(B)との合計量は100重量部である。)、マウスガードの衝撃吸収性の観点からは、共重合体(A)の下限値は、好ましくは52重量部、さらに好ましくは55重量部、特に好ましくは60重量部であり、マウスガードの衝撃吸収性および柔軟性、軽量性の観点からは、共重合体(A)の上限値は、好ましくは98重量部、さらに好ましくは95重量部、特に好ましくは90重量部である。
【0065】
本発明のマウスガード用組成物は、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)、ならびに任意に前記添加剤を混合することにより調製できる。製造方法としては、従来公知の混合方法、たとえば、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
また、本発明のマウスガード用組成物は、好ましくは下記物性を有する。
【0066】
(a):ショアーA硬度の値(測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。)が、5〜90、好ましくは10〜80、より好ましくは15〜70、特に好ましくは15〜65である。
【0067】
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体(A1)のショアーA硬度値は、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比、またはマウスガード用組成物(X)中の成分の混合比などよって任意に変えることができ、ショアーA硬度値が上記範囲内であると、マウスガードは柔軟性に優れる。
【0068】
(b):−40℃〜+180℃の温度範囲で、周波数10rad/sで動的粘弾性測定(測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。)して得られる損失正接tanδの最大値が、0.1〜10、好ましくは0.4〜8、より好ましくは0.6〜6、さらに好ましくは0.8〜4である。また、tanδの値が最大となる際の温度が−50℃〜100℃、好ましくは−30℃〜50℃、より好ましくは−10℃〜40℃の範囲にある。tanδの最大値がこれらの範囲内にあれば、マウスガードは優れた衝撃吸収性を発揮することが可能である。tanδの最大値は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比、またはマウスガード用組成物(X)中の共重合体(A)、樹脂またはゴム(B)の混合比などにより制御することができ、例えば4−メチル−1−ペンテン含量を20〜65モル%にすることでtanδの最大値を上記範囲内にすることができる。
【0069】
(c):下式で定義される反発弾性率(%)(測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。)が、室温(23℃)において0〜30%、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜15%であり、口腔内を想定した温度条件である40℃において、0〜30%、好ましくは0〜25%、さらに好ましくは0〜20%である。
反発弾性率(%)=(跳ね返り高さ)(mm)/460×100
【0070】
反発弾性率は4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)のコモノマー組成比、またはマウスガード用組成物(X)中の共重合体(A)、樹脂またはゴム(B)の混合比などによりにより制御することができ、例えば4−メチル−1−ペンテン含量を20〜65モル%にすることで反発弾性率を上記範囲内にすることができる。
【0071】
<グラフト変性>
本発明の目的を損なわない範囲で、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)の一部または全部はグラフト変性されていてもよく、前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)の一部または全部はグラフト変性されていてもよい。グラフト変性に使用される極性化合物、グラフト変性の方法としては、従来公知の化合物、方法が挙げられ、たとえば特開2008−127440に記載された化合物、方法を採用することができる。
【0072】
グラフト変性体のグラフト量は、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.2〜30重量%、更に好ましくは0.2〜20重量%である。
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)または前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)がグラフト変性されていると、組成物の相溶性または接着性の点で優位である。
【0073】
<架橋>
前記マウスガード用組成物の少なくとも一部または全部は、架橋剤により架橋されていても良い。
【0074】
架橋剤としては、特に制限はなく、硫黄、有機過酸化物、SiH基含有化合物が挙げられる。硫黄を用いる際には、その量は、マウスガード用組成物中の前記共重合体(A)および前記樹脂またはゴム(B)との合計100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部である。有機過酸化物を用いる際には、その量は、マウスガード用組成物中の前記共重合体(A)および前記樹脂またはゴム(B)との合計100重量部に対して好ましくは0.05〜15重量部である。
【0075】
また、SiH基含有化合物を用いる際には、その量は、マウスガード用組成物中の前記共重合体(A)および前記樹脂またはゴム(B)との合計100重量部に対して好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。SiH基含有化合物を用いる際には、触媒、および任意成分としてシランカップリング剤および/または反応抑制剤を加えても良い。
【0076】
[マウスガード用シート]
本発明のマウスガード用シートは、本発明のマウスガード用組成物からなり、前述した本発明のマウスガード用組成物を、押出成形、カレンダー成形、プレス成形、射出成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の任意の成形法によりシート状に加工することにより形成される。
【0077】
[マウスガード]
本発明のマウスガードは、本発明のマウスガード用組成物からなり、前述した本発明のマウスガード用組成物またはマウスガード用シートから形成される。
【0078】
本発明のマウスガードは、材料が本発明のマウスガード用組成物またはマウスガード用シートである点を除けば、従来のマウスガードと同様の方法により、たとえば国際公開第2002/98521号パンフレット、特開2010−131181に記載の方法により製造することができる。より具体的には、前記マウスガード用シートを、軟化するまで加熱し、歯列模型または顎模型に沿わせてマウスガードを製造する方法、歯列模型または顎模型を用いて凹型の型を作成し、その中に前記マウスガード用組成物を注入してマウスガードを製造する方法などにより、マウスガードを製造することができる。
【0079】
本発明のマウスガードは、前述した諸特性に優れる本発明のマウスガード用組成物からなるため、以下のような利点を有している。
【0080】
・材料の衝撃吸収性が高いため、従来品よりも薄くても装着感に優れるだけでなく衝撃吸収性にも優れている。
・材料の反発弾性率が低いため、フィット感、特に、強く噛み締めたときのフィット感に優れている。
・材料のショアーA硬度が低いため、歯の凹凸に追従し、装着感に優れている。
・材料の密度が低いため、軽量である。
・材料の耐摩耗性が高く、耐久性に優れている。
・スチレン系エラストマー製マウスガードなどと異なり、臭気がない。
・軟化温度が低いため、EVA製マウスガードなどと比べて成形性に優れている。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
【0082】
[測定条件等]
実施例における物性の測定条件等は、以下のとおりである。
【0083】
〔組成〕
ポリマー中の4−メチル−1−ペンテンおよびプロピレン含量は、13C−NMRにより以下の装置および条件により測定した。日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0084】
〔密度〕
共重合体(A)の密度は、ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD−300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出した。
【0085】
〔融点(Tm)〕
ポリマーの融点(Tm)は,セイコーインスツルメンツ社製DSC220C装置で示差走査熱量計(DSC)により測定した。重合から得られた試料7〜12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その試料を、完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で200℃まで2度目に加熱した。この2度目の加熱試験でのピーク温度を、融点(Tm)として採用した。
【0086】
〔極限粘度〕
極限粘度[η]は,デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
〔分子量(Mw、Mn)・分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体(A)の分子量は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC 150−C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo−ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。
【0087】
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、Mw/Mn値、Mw値およびMn値を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
【0088】
〔酢酸メチル抽出量〕
ポリマーをソックスレー抽出器に採取し、酢酸メチル下で加熱還流を行い、還流前後のポリマー量を秤量して抽出量(%)として採用した。
【0089】
〔各種測定用プレスシートの作製法〕
実施例および比較例の各組成物を、190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形した。1〜3mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度し、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを各種物性評価試料に供した。
【0090】
〔ショアーA硬度〕
ショアーA硬度(JIS K6253に準拠)の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、押針接触後15秒後の目盛りを読み取った。
【0091】
〔動的粘弾性〕
厚さ3mmのプレスシートを作成し、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で−40〜180℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク時温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0092】
〔引張弾性率(YM)、引張破断伸(EL)、引張降伏応力(YS)、引張破断点応力(TS)〕
引張特性である引張弾性率(YM)、引張破断点伸(EL)、引張降伏点応力(YS)および引張破断点応力(TS)の評価は、上記の方法で得られた1mm厚プレスシートから打ち抜いたJISK7113の2号型試験片1/2を評価用試料として用い、23℃の雰囲気下で引張速度30mm/minで実施した。
【0093】
〔反発弾性率〕
厚さ6mmのプレスシートを作成し、JIS K6400に準拠して、このプレスシート上に460mmの高さから16.310gの剛体球を落下させた際の跳ね返り高さL(mm)を測定し、下記式により定義される反発弾性率を求めた。
反発弾性率(%)=L(mm)/460×100
【0094】
〔応力緩和測定〕
応力緩和率の測定では、厚さ3mmのプレスシートを4枚重ねて厚さ12mmとした測定試料を用いた。この測定試料の積層方向に、曲げ試験等で利用する先端直径5mmφの圧縮治具を、23℃で、10mm/minの速度で押し込み、測定試料を圧縮した。荷重が、成年男子が奥歯を噛む力に相当する500N(約50kgf)(以下「最大荷重」という。)となった時点でさらなる圧縮を止め、そのまま5分間整置した後の荷重(緩和後荷重)を測定し、その割合(緩和後荷重/最大荷重)を応力緩和率(%)とした。
【0095】
〔実施例1〕
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)の1.0ミリモル/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温30℃まで加熱し、全圧が0.74MPaGとなるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1ミリモル、ジフェニルメチレン(1−メチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005ミリモルの量で含むトルエン溶液0.34mlのトルエン溶液を窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。その後60分間、オートクレーブを内温60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むゴム状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは56.3gで、ポリマー中のプロピレン含量は、75.3mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]は1.5dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=287000、Mn=144000、Mw/Mn=2.0であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0096】
〔実施例2〕
重合器内の全圧が0.68MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは45.9gで、ポリマー中のプロピレン含量は、68.9mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]は1.5dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=267000、Mn=134000、Mw/Mn=2.0であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0097】
〔実施例3〕
重合器内の全圧が0.35MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは46.9gで、ポリマー中のプロピレン含量は、52.7mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]=1.4dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=277000、Mn=132000、Mw/Mn=2.1であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0098】
〔実施例4〕
重合器内の全圧が0.20MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは35.5gで、ポリマー中のプロピレン含量は、40.0mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]=1.4dl/gであった。GPCから得られた分子量は、Mw=272000、Mn=131000、Mw/Mn=2.1であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0099】
〔実施例5〕
重合器内の全圧が0.15MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは46.9gで、ポリマー中のプロピレン含量は、38.0mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]=1.4dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=295000、Mn=142000、Mw/Mn=2.1であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0100】
〔実施例6〕
重合器内の全圧が0.10MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは29.7gで、ポリマー中のプロピレン含量は、28.1mol%であった。ポリマーのTmは観察されず、極限粘度[η]=1.4dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=289000、Mn=138000、Mw/Mn=2.1であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0101】
〔比較例1〕
重合器内の4−メチル−1−ペンテンを100ml、重合溶媒としてヘキサンを650ml加え、全圧が0.68MPaGになるようにプロピレンで加圧した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは21.2gで、ポリマー中のプロピレン含量は、90.0mol%であった。ポリマーのTmは69.1℃、極限粘度[η]は1.31dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=262000、Mn=133000、Mw/Mn=2.0であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0102】
〔比較例2〕
重合器内の4−メチル−1−ペンテンを750ml、全圧が0.05MPaGになるようにプロピレンで加圧し、重合温度を60℃とした以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたポリマーは21.2gで、ポリマー中のプロピレン含量は、9.8mol%であった。ポリマーのTmは144.1℃、極限粘度[η]は1.45dl/gであった。GPCから得られた分子量分布は、Mw=296000、Mn=148000、Mw/Mn=2.1であった。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0103】
〔比較例3〕
市販されている水素添加スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(株式会社クラレ社製、ハイブラー5127)を用いた。190℃でのMFRは5g/10minであった。比較例の物性を表1に示す。密度値から軽量性に劣っていることが分かる。
【0104】
〔比較例4〕
市販されている水素添加スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(旭化成株式会社社製、タフテックH1062)を用いた。230℃でのMFRは17g/10minであった。比較例の物性を表1に示す。密度値から軽量性に劣っていることが分かる。
【0105】
〔比較例5〕
市販されているエチレン・α−オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーP0680)を用いた。190℃でのMFRは0.8g/10minであった。比較例の物性を表1に示す。tanδおよび反発弾性率の値から応力吸収性に劣っていることが分かる。
【0106】
〔比較例6〕
市販されているエチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・デュポン・ポリケミカル社製、エバフレックスEV250)を用いた。190℃でのMFRは15g/10minであった。比較例の物性を表1に示す。密度値から軽量性に、ショアーA硬度から柔軟性に劣っていることが分かる。
【0107】
【表1】

表1から明らかなように、実施例に示した本発明によるマウスガード用組成物(共重合体(A))は、低硬度であり、tanδの値が高く、反発弾性率が低い。これらの特性より、該マウスガード用組成物は耐衝撃性に優れていることがわかる。さらに従来のEVAやスチレン系エラストマーと比較しても高い応力緩和率を示すことから、外部衝撃を緩和する能力に優れたマウスガードを該マウスガード用組成物から製造できることがわかる。
【0108】
〔実施例7〕
実施例1で得られた4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体90重量部と、熱可塑性樹脂として(株)プライムポリマー社製ポリプロピレン F107 10重量部を配合した。さらに、得られた組成物に対してチバ・ジャパン(株)社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox1076を1000ppm、リン系加工熱安定剤Irgafos168を1000ppm、日油(株)社製カルシウムステアレートを500ppm配合した後、東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度200℃で、樹脂仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間溶融混練後、20℃設定の冷却プレスで冷却して、マウスガード用組成物を調製した。
【0109】
上記マウスガード用組成物を用いて、190℃に設定した熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形することでマウスガード用シートを作成した。各種物性結果を表2に示す。
【0110】
〔実施例8〕
実施例1で得られた4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体80重量部と、熱可塑性樹脂として(株)プライムポリマー社製ポリプロピレン F327 20重量部を配合した。さらに、得られた組成物に対してチバ・ジャパン(株)社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox1076を1000ppm、リン系加工熱安定剤Irgafos168を1000ppm、日油(株)社製カルシウムステアレートを500ppm配合した後、東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度200℃で、樹脂仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間溶融混練後、20℃設定の冷却プレスで冷却して、マウスガード用組成物を調製した。
【0111】
上記マウスガード用組成物を用いて、190℃に設定した熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形することでマウスガード用シートを作成した。各種物性結果を表2に示す。
【0112】
〔実施例9〕
実施例3で得られた4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体60重量部と、熱可塑性樹脂として三井化学(株)社製エチレン・α−オレフィン共重合体 タフマーP0680 40重量部を配合した。さらに、得られた組成物に対してチバ・ジャパン(株)社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox1076を1000ppm、リン系加工熱安定剤Irgafos168を1000ppm、日油(株)社製カルシウムステアレートを500ppm配合した後、東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度200℃で、樹脂仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間溶融混練後、20℃設定の冷却プレスで冷却して、マウスガード用組成物を調製した。
【0113】
上記マウスガード用組成物を用いて、190℃に設定した熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形することでマウスガード用シートを作成した。各種物性結果を表2に示す。
【0114】
〔比較例7〕
実施例1で得られた4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体40重量部と、熱可塑性樹脂として(株)プライムポリマー社製ポリプロピレン F107 60重量部を配合した。さらに、得られた組成物に対してチバ・ジャパン(株)社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox1076を1000ppm、リン系加工熱安定剤Irgafos168を1000ppm、日油(株)社製カルシウムステアレートを500ppm配合した後、東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度200℃で、樹脂仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間溶融混練後、20℃設定の冷却プレスで冷却して、マウスガード用組成物を調製した。
【0115】
上記マウスガード用組成物を用いて、190℃に設定した熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形することでマウスガード用シートを作成した。各種物性結果を表2に示す。
【0116】
〔比較例8〕
市販されているスチレン・α−オレフィンブロック共重合体を用いたマウスガード材料(商品名:ジーシーインパクトガード、株式会社ジーシー社製)用いた。比較例の物性を表2に示す。
【0117】
〔比較例9〕
市販されているエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いたマウスガード(商品名:+αマウスガード、サンメディカル社製)を用いた。比較例の物性を表2に示す。
【0118】
【表2】

表2からも明らかなように、実施例に示した本発明によるマウスガード用樹脂組成物は、低硬度であり、tanδの値が高く、引張強度に優れ、さらに反発弾性率が低い。この特性より、該マウスガード用組成物は耐衝撃性、耐久性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15〜75モル%の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、25〜85モル%のプロピレンから導かれる構成単位(ii)(ただし、構成単位(i)の割合と構成単位(ii)の割合との合計は100モル%である。)とからなる4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜100重量部、および
熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜0重量部(ただし、共重合体(A)と樹脂(B)との合計量は100重量部である。)
含有することを特徴とするマウスガード用組成物。
【請求項2】
前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(A)を50〜98重量部、および前記熱可塑性樹脂またはゴム(B)を50〜2重量部含有することを特徴とする請求項1に記載のマウスガード用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマウスガード用組成物からなるマウスガード用シート。
【請求項4】
請求項1または2に記載のマウスガード用組成物からなるマウスガード。

【公開番号】特開2012−40136(P2012−40136A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183128(P2010−183128)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】