説明

マクロファージ遊走阻止因子の酵素活性阻害剤

【課題】 安全性の高い新規なマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の酵素活性阻害剤を提供すること。
【解決手段】 茶カテキン類を有効成分とするマクロファージ遊走阻止因子の酵素活性阻害剤を提供し、さらに該阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発炎症抑制剤並びにマクロファージ遊走阻止因子誘発ガン細胞増殖抑制剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶カテキン類を有効成分とするマクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor:以下においてMIFと略記することがある)の酵素活性阻害剤、該MIF酵素活性阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発炎症抑制剤、並びに該MIF酵素活性阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発ガン細胞増殖抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の白血球に分類されるマクロファージは、炎症反応を惹き起こし異物の除去に寄与する働きをもつが、通常は血管中を血液と共に流動しており、能動的に炎症部位にとどまることはできない。そこで、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)が遊走中のマクロファージを炎症部位に的確にとどめ、我々の身体を異物から保護している。
【0003】
一方で、MIFの過剰な生産は過度の炎症反応を惹き起こすため、MIFは炎症を伴う諸疾患に関与することが知られている。近年ではその関連疾患が拡大をみせ、免疫関連反応、腫瘍増殖、糸球体腎炎、マラリア貧血、敗血症性ショック、腫瘍関連血管新生、硝子体網膜症、乾癬、移植片対宿主病(組織拒絶)、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、中耳炎、クローン病、急性呼吸窮迫症候群、遅延型過敏症等、様々な生体反応に大きな影響を及ぼしていることが明らかになりつつある(非特許文献1〜9参照)。
このように、MIFは我々の身体に必須な因子である一方で、その制御が諸疾患の症状緩和に有益であるため、MIF酵素活性阻害剤はMIFを介する様々な疾患への予防・治療に役立てられている。
【0004】
MIFを制御する試みはこれまでにも種々検討されている。例えば、MIFのもつtautomerase活性を抑制することにより、MIFを介する様々な諸疾患の予防・治療に役立てようと、MIF酵素活性阻害物質を探索する努力が続けられており(非特許文献10参照)、大豆中の成分であるイソフラボンがMIFの酵素活性を抑制することが報告されている(非特許文献11参照)。
【0005】
ところで、茶の主要成分であるカテキン類は、抗酸化作用(特許文献1及び特許文献2参照)、抗菌・静菌作用(特許文献3及び特許文献4参照)、コレステロール上昇抑制作用(特許文献5参照)、血圧上昇抑制作用(特許文献6参照)、血糖上昇抑制作用(特許文献7参照)等、優れた生理活性作用を有することから、食品から医薬産業に至るまで幅広い分野で利用されている。しかしながら、茶カテキン類のMIF酵素活性阻害作用については、これまでに全く報告されていない。
【0006】
【非特許文献1】Jun Nishihira,International Journal of Molecular Medicine、1998,vol.2、no.1、p.17−28
【非特許文献2】Katherine L Meyer−Siegler,BMC Cancer,2004,vol.4,no.34,p.1−12
【非特許文献3】Metz and Bucala,Advances in Immunology,1997,vol.66,p.197−223
【非特許文献4】Swope and Lolis,Reviews of Physiology,Biochemistry and Pharmacology,1999,vol.139,p.1−32
【非特許文献5】Waeber,Metabolism Research and Reviewz,1999,vol.15,no.1,p.47−54
【非特許文献6】Bucala,Annals New York Academy of Sciences,1998,vol.840,p.74−82
【非特許文献7】Bernhagen,Journal of Molecular,1998,vol.76,no.3−4,p.151−161
【非特許文献8】Donnelly and Bucala,Molecular Medicine,1997,vol.3,no.11,p.502−507
【非特許文献9】Bucala,FASEB Journal,1996,vol.10,no.14,p.1607−1613
【非特許文献10】Peter D.Senter,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2002,vol.99,no.1,p.144−149
【非特許文献11】Masaya Orita,Journal of Medicinal Chemistry,2001,vol.44,no.4,p.540−547
【特許文献1】特開昭59−219384号公報
【特許文献2】特開平1−268683号公報
【特許文献3】特開平2−276562号公報
【特許文献4】特開平3−246227号公報
【特許文献5】特開昭60−156614号公報
【特許文献6】特開昭63−214183号公報
【特許文献7】特開平4−253918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、安全性の高い新規なマクロファージ遊走阻止因子の酵素活性阻害剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、茶カテキン類が優れたマクロファージ遊走阻止因子の酵素活性阻害作用を有することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1記載の本発明は、茶カテキン類を有効成分とするマクロファージ遊走阻止因子の酵素活性阻害剤である。
請求項2記載の本発明は、茶カテキン類が、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びガロカテキンガレートの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のマクロファージ遊走阻止因子のtautomerase活性阻害剤である。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載の阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発炎症抑制剤である。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は2記載の阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発ガン細胞増殖抑制剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の酵素活性阻害剤は、MIFのtautomerase活性阻害作用において優れており、既知の阻害剤と同様に、MIFを介する種々の疾患、例えば炎症疾患や癌に対する予防・治療効果(炎症抑制、ガン細胞増殖抑制)が期待できる。さらに、有効成分となる茶カテキン類は天然由来の成分であるため安全性においても問題が無く、医薬品としての使用はもとより飲食品、化粧品などに添加して用いるなど多様な利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明のマクロファージ遊走阻止因子(MIF)酵素活性阻害剤の有効成分として機能する茶カテキン類とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)等のカテキンを意味し、これらのカテキンは(+)‐体であっても良く、また、(−)‐体であってもよい。
【0012】
本発明のMIF酵素活性阻害剤は、これらの茶カテキン類の中から選ばれた1種を単独で、もしくは2種以上を所望とする混合比で組み合わせて用いることができるが、上記カテキンのうち、EGC、ECg、EGCg及びGCgの中から選ばれる少なくとも1種を含有するものであることが好ましく、ECg、EGCg及びGCgの中から選ばれる少なくとも1種を含有するものであることがより好ましく、ECg及びEGCgから選ばれる少なくとも1種を含有するものであることが特に好ましい。
【0013】
茶カテキン類の形態としては、液体及び固体(粉末を含む)の別を問わない。このような茶カテキン類は、主にツバキ科に属する茶樹(Camellia sinensis)から得られる葉、茎、木部、樹皮、根、実、種子のいずれか、あるいはこれらの2種類以上の混合物もしくはそれらの粉砕物から水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒あるいはこれらの混合物などにより抽出することにより得られる。特に、茶生葉あるいはその乾燥物から水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒、これらの混合物などを用いて抽出される抽出物自体、或いは必要に応じてさらに精製して得られる精製物として得ることが好ましい。
【0014】
茶カテキン類の精製物に関しては、特公平1−44232号公報、同2−12474号公報、同2−22755号公報、特開平4−20589号公報、同5−260907号公報、同8−09178号公報などに記載された方法により製造することができ、例えば茶葉を上記の溶媒で抽出して得られた抽出物を、有機溶媒分画や吸着樹脂などを用いて所望の程度に精製することができる。茶以外の植物から抽出する場合も、茶の場合と同様の方法により実施すればよい。また、本発明に用いる茶カテキン類は市販品を用いてもよく、このような市販品としては、例えば三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」などを例示することができる。
【0015】
上記したように、茶カテキン類にはMIFの酵素活性阻害作用が認められるので、該茶カテキン類を有効成分として含有する本発明のMIF酵素活性阻害剤は、MIFを介する種々の疾患に対する予防・治療作用が期待される。
本発明のMIF酵素活性阻害剤によるMIF酵素活性阻害効果は、直接、あるいは製剤化したものを摂取することにより発揮される。
その場合の摂取量は、摂取形態、年齢、体重などにより異なり、特に制限されるものではないが、経口的に摂取する場合、体重1kgあたり0.1mg〜100mg/回の摂取が好ましく、0.5mg〜50mg/回の摂取がより好ましい。
【0016】
本発明のMIF酵素活性阻害剤を単独で製剤化して摂取する場合における製剤形態は、有効成分として茶カテキン類を含んでなるものであればどのような形態であってもよく、例えば、粉末状などの固体状であってもよいし、液体やスラリー状であってもよい。
本発明のMIF酵素活性阻害剤は、例えばイソフラボン等他のMIF酵素活性阻害剤と併用して用いても何ら問題は生じない。他のMIF酵素活性阻害剤と併用した場合には、より優れたMIF酵素活性阻害効果或いは個々の阻害剤の量を減じても同等の効果を期待することができる。
【0017】
本発明のMIF酵素活性阻害剤は、飲食品に有効量を含ませることにより、MIF酵素活性阻害効果を有する機能性飲食品として気軽に用いることができる。
飲食品に対する本発明のMIF酵素活性阻害剤の配合量は、有効量、すなわち、MIF酵素活性阻害効果を発揮する配合量となるように、対象となる飲食品の形態や種類に応じて適宜設定することが好ましい。一般的には、最終製品中で0.0001〜5重量%であればよいが、0.001〜1重量%であることが好ましく、さらに0.01〜0.5重量%がより好ましい。
本発明のMIF酵素活性阻害剤を飲食品へ配合させる方法は、特に制限されるものではなく、飲食品の調製段階において、この分野で通常知られた慣用的な方法を用いて配合することができる。
【0018】
本発明のMIF酵素活性阻害剤が配合されうる飲食品は、MIF酵素活性阻害剤の有効成分となる茶カテキン類を配合することができるものであればどのような形態であってもよく、例えば、水溶液や混濁物や乳化物などの液状形態であっても、ゲル状やペースト状の半固形状形態であっても、粉末や顆粒、カプセル、タブレットなどの固形状形態であってもよい。
【0019】
本発明のMIF酵素活性阻害剤が配合されうる飲食品の種類は特に限定されないが、好ましいものは飲料、さらに好ましいものは容器詰めされた飲料であり、具体的には、例えば、炭酸飲料、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)の果汁、果汁飲料や果汁入り清涼飲料、柑橘類の果肉飲料や果粒入り果実飲料、トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガスなどの野菜を含む野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、緑茶飲料・烏龍茶飲料・紅茶飲料などの茶系飲料、これらの粉末状もしくは顆粒状飲料や濃縮飲料、スポーツ飲料、ドリンク剤などの栄養飲料、アルコール飲料などが挙げられる。さらには、製造、販売時には粉末状などの形態(例えば、粉末清涼飲料等)であって、飲用時に適宜の濃度に水などで溶解して利用されるような飲料も含む。
【0020】
本発明のMIF酵素活性阻害剤を単独で製剤化する際、あるいは飲食品等として配合する際は、必要に応じて、増量剤、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、糖類、甘味料、酸味料、ビタミン類などの公知の各種添加剤と適宜組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン系非界面活性剤などが挙げられる。
【0021】
糖類としては、グルコース、フラクトースなどの単糖類のほか、マルトース、シュクロースなどの二糖類、ポリデキストロース、ペクチン、キサンタンガム、アラビアガム、アルギン酸などの多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シクロデキストリンなどのオリゴ糖、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなどの糖アルコールなどを例示することができる。
甘味料としては、天然甘味料(ソーマチン、ステビア抽出物、グリチルリチンなど)、合成甘味料(サッカリン、アスパルテームなど)などを利用できる。
酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸などが挙げられる。
【0022】
ビタミン類としては、ビタミンB類、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、メソイノシトール、葉酸、コリン、ビタミンU、ビタミンPなどの水溶性ビタミン類およびビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン類が挙げられる。
その他の添加剤としては、グレープフルーツ、リンゴ、オレンジ、レモン、パイナップル、バナナ、ナシなどの各種果汁(濃縮果汁);グルタミン酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸;イノシン酸、グアニル酸などの呈味成分;カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素などのミネラルないし微量元素などが挙げられる。
【0023】
また、飲食品と同様に、適当な担体などにMIF酵素活性阻害剤を有効成分として含ませれば、医薬品や医薬部外品として応用することもできる。
医薬品としては、日本薬局方に収められている医薬品であれば特に限定されるものではなく、その製剤形態としては、例えば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤・煎剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーゼ剤などが挙げられる。
医薬部外品としては、厚生労働大臣が指定した医薬部外品で口に含むことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、内服液剤、健康飲料、消毒剤、消毒保護剤、ビタミン含有保健剤などが挙げられる。
【0024】
本発明のMIF酵素活性阻害剤は、MIFに起因する様々な免疫関連反応、腫瘍増殖、糸球体腎炎、炎症、マラリア貧血、敗血症性ショック、腫瘍関連血管新生、硝子体網膜症、乾癬、移植片対宿主病(組織拒絶)、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、中耳炎、クローン病、急性呼吸窮迫症候群、遅延型過敏症等の疾病または病理学的状態を治療するために使用できる。中でも本発明のMIF酵素活性阻害剤は、MIFに起因する炎症や腫瘍細胞の増殖を顕著に阻害することができる。したがって、本発明はMIFに起因する炎症疾患や癌を予防・治療する方法をも提供するものである。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
実施例1
酵素活性の測定は、Zhangらの方法に従って行った(Zhang X, Bucala R: Inhibition of macrophage migration inhibitory factor (MIF) tautomerase activity by dopachrome analogs. Bioorg Med Chem Lett. 1999 Nov 15;9(22):3193-8.)。
【0027】
基質溶液の調製
tautomeraseの阻害活性を調査するために、MIFの基質としてL-ドーパクロームメチルエステルを用いた。まず、10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)で10mM L-ドーパメチルエステル溶液((株)シグマ製)を調製し、tautomeraseアッセイを行う30分前にL-ドーパメチルエステル溶液1mlを10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)7mlで希釈した。そして、20mM 過ヨウ素酸ナトリウム水溶液((株)シグマ製)1mLを前記した希釈溶液へ添加して10分間反応を行い、L-ドーパメチルエステルからL-ドーパクロームメチルエステルを生成させた。次に、反応溶液に1mlの20mM メチオニン水溶液を加え、過度の酸化反応を止め、オレンジ色を有する基質溶液を調製した。
【0028】
MIF(酵素)溶液の調製
リコンビナントヒトMIF或いはリコンビナントラットMIFを200マイクログラム/ml(0.2マイクログラム/マイクロリットル)となるように10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)に溶解した。
【0029】
カテキン溶液の調製
試験に使用したカテキン類はSigma社製を使用した。各カテキンを1mMとなるように10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)に溶解した。
【0030】
tautomeraseアッセイ
基質溶液0.1mLに10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)0.1mLを加え、添加直後(0分)及び1分後の吸光度(波長475nm)を分光光度計で測定し、0分の吸光度と1分後の吸光度の差をブランク値とした。
MIFのtautomerase活性は、基質溶液0.1mLに10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)0.1mLを加えた後MIF溶液1マイクロリットルを添加し、0分及び1分後の吸光度(波長475nm)を分光光度計で測定し、0分の吸光度と1分後の吸光度の差からブランク値を引いた値として表した。
カテキン類存在下でのMIFのtautomerase活性は、基質溶液0.1mLにカテキン溶液0.1mLを加えた後、MIF溶液1マイクロリットルを添加し、0分及び1分後の吸光度(波長475nm)を分光光度計で測定し、0分の吸光度と1分後の吸光度の差からブランク値を引いた値として表した。
MIFのtautomerase活性残存率は下式に基づいて算出し、8回の平均値及び標準偏差を求めた。ヒトMIFのtautomerase活性に関する結果を図1に示し、ラットMIFのtautomerase活性に関する結果を図2に示す。
【0031】
(数1)
MIFのtautomeraseの活性残存率(%)
=100×(カテキン存在下でのMIFのtautomerase活性/カテキン無添加でのMIFのtautomerase活性)
【0032】
図1又は図2から明らかなように、EGC、ECg、EGCg、GCgを加えることにより、カテキン無添加であるコントロールと比べて、MIFの酵素活性が有意に阻害された。中でも、ECg、EGCg、GCgの3種類のカテキンのMIF酵素活性阻害作用が強く、ECg及びEGCgがさらにMIFの酵素活性を阻害する作用が強かった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、茶カテキン類を有効成分とするマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の酵素活性阻害剤が提供される。これは、医薬品等としての利用の他、飲食品に添加して用いることにより、MIFを介する種々の疾患、例えば炎症疾患や癌に対する予防・治療効果(炎症抑制、ガン細胞増殖抑制)が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カテキン類によるヒトMIFのtautomerase活性阻害を示す。
【図2】カテキン類によるラットMIFのtautomerase活性阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶カテキン類を有効成分とするマクロファージ遊走阻止因子のtautomerase活性阻害剤。
【請求項2】
茶カテキン類が、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート及びガロカテキンガレートの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のマクロファージ遊走阻止因子のtautomerase活性阻害剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発炎症抑制剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の阻害剤を含有するマクロファージ遊走阻止因子誘発ガン細胞増殖抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−22946(P2007−22946A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205085(P2005−205085)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】