説明

マグネット式ヒーター

【課題】 より短時間にかつ効率よく熱媒体用流体を高温に加熱することができる自動車などの車両用補助暖房熱源補助ヒータの提供。
【解決手段】 磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であり、前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の内壁にバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に寒冷時や極寒時におけるディーゼルエンジンやガソリンエンジンを動力源とする主に自動車などの各種車両用エンジンの起動性向上や電気自動車を含む各種車両や船舶のキャビン暖房などに使用されるエンジン冷却水などの熱媒体用流体の補助加熱手段として用いられ、またエンジン駆動される発電機、溶接機、コンプレッサー、建設機械などのエンジン冷却水の予熱あるいは急速昇温(ウォーミングアップ時間の短縮)に用いるマグネット式ヒーターに関する。
【0002】
【従来の技術】寒冷地などにおける始動時のエンジン冷却水の暖房に利用される自動車などの車両用補助暖房熱源として、ビスカス式ヒーターが知られている(特開平2−246823号公報、実開平4−11716号公報、特開平9−254637公報、特開平9−66729号公報、特開平9−323530公報等参照)。ビスカス式ヒーターは、シリコンオイルなどの粘性流体をせん断により発熱させ、ウォータージャケット内を循環する循環水に熱交換して暖房熱源に利用する方式であって、その構造としては、例えばハウジング内部に発熱室と、この発熱室の外域にウォータージャケットを形成し、ハウジングには軸受装置を介して駆動軸が回動可能に支承され、駆動軸には発熱室内で回動可能なロータが固定されており、発熱室の壁面とロータとの間隙にシリコンオイルなどの粘性流体が封入され、ウォータージャケット内では循環水が入水ポートから取入れられ、出水ポートから外部の暖房回路へ送り出されるべく循環されている。
【0003】車両の暖房装置に組込まれたこのビスカス式ヒーターでは、駆動軸がエンジンにより駆動されれば、発熱室内でロータが回動するため、粘性流体が発熱室の壁面とロータの外面との間隙でせん断により発熱し、この発熱がウォータージャケット内の循環水に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路でエンジン冷却水など車両の暖房に供されることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したビスカス式ヒーターは、シンプルな構造により、小型化と低コストを実現でき、また摩耗のない非接触式の機構で高い信頼性と安全性を確保することができ、さらに水温が上昇し、補助ヒーターが不要になると温度制御により自動的に運転が停止するため、無駄なエネルギーは使用しないなどの特徴を有するが、粘性流体として用いるシリコンオイルの耐熱性は240℃程度が限界であり、シリコンオイルの温度をあまり高くできないことと、始動時シリコンオイルが撹拌されて高温に発熱するまでに時間がかかると共に、シリコンオイルの温度が上昇すると粘度が低下することによりせん断抵抗が低下して単位時間当りの発熱量が次第に減少する傾向があるためにエンジン冷間時間での急速な暖房効果が得られないという難点がある。また、ビスカス式ヒーターは、使用環境が極低温の場合粘性流体の粘度が高くなるため、起動時の負荷トルクが増大する。特にエンジン駆動の場合は起動時に過大な負荷がかかることになる。このため、特にディーゼルエンジン搭載の寒冷地仕様車の場合、このようなビスカス式ヒータは有効性において十分とはいえず、より短時間にかつ効率よく熱媒体用流体を高温に加熱することができる補助ヒータが望まれていた。
【0005】本発明は、このようなビスカス式ヒーターの有する問題点にかんがみなされたもので、ビスカス式ヒーターに比しより高温にしかも短時間に熱媒体用流体の温度を上昇させることができ、かつ耐熱性に優れたマグネット式ヒーターを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るマグネット式ヒーターは、磁石と導体間に形成される磁路をせん断することにより導体側に発生するスリップ発熱を熱媒体用流体に熱交換する方式であり、その要旨は、磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であって、その第1の実施態様は前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の内壁にバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とし、また第2の実施態様は前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の側壁に埋設したバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とし、また第3の実施態様は前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケット内の前記永久磁石と対向する側の内壁と僅かなギャップを隔てて当該ジャケット内に対向配置した、導体で囲繞されたバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とし、さらに第4の実施態様は樹脂製の熱媒体用流体ジャケットの一部が前記導体で構成されて駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットの導体と僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケット内の前記永久磁石と対向する側の導体の内壁にバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とするものである。また、本発明では前記永久磁石に替えてサーマルフェライトを用いたり、導体にエディカレント材またはヒステリシス材を用いたりするものである。
【0007】すなわち、本発明に係るマグネット式ヒーターは永久磁石、サーマルフェライトなどの磁石と、磁気ヒステリシスの大きな材料(以下「ヒステリシス材」と呼ぶ)やエディカレント材などの導体(発熱体)の2つの部材が僅かなギャップを隔てて向かい合い、磁石と導体を相対的に回転させて磁路をせん断することにより導体側に発生するスリップ発熱を利用したもので、導体にエディカレント材またはヒステリシス材を用いることによって数秒〜数十秒で200〜600℃の温度に発熱させることができるという特徴を有する。なお、上記した「スリップ発熱」とは前記磁石により発生した磁界内で、該磁界を切る方向に導体を動かす(回転させる)と、当該導体内に渦電流(エディカレント)が発生し、この渦電流の導体内における電気抵抗により発熱することを意味する。
【0008】また、本発明におけるバックプレートは、導体製の熱媒体用流体ジャケットにスリップ発熱を生じさせるために必要な渦電流を発生させるために設けるものであるが、このバックプレートと永久磁石との間の距離が大きいと磁気損失が多くなり熱媒体用流体ジャケットに吸収されるスリップ発熱が少なくなるという問題を生じるため、本発明では永久磁石とバックプレート間の距離を縮めて磁気損失を減らすとともに導体製の熱媒体用流体ジャケットにスリップ発熱を効率よく確実に吸収できるようにした。すなわち、バックプレートと永久磁石との間の距離を縮める手段として、本発明の第1の実施態様では、熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の内壁にバックプレートを設けるようにし、第2の実施態様では熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の側壁にバックプレートを埋設し、第3の実施態様では熱媒体用流体ジャケット内の前記永久磁石と対向する側の内壁と僅かなギャップを隔てて当該ジャケット内に導体で囲繞されたバックプレートを対向配置し、第4の実施態様では樹脂製の熱媒体用流体ジャケットの少なくとも永久磁石対向面に導体を設け、この導体の内壁にバックプレートを設ける手段をこうじた。このような手段をこうじることにより、永久磁石とバックプレート間には強力な磁場が形成されるので、導体製の熱媒体用流体ジャケットに十分な渦電流が発生し、ヒーター効率が高められることとなる。また、熱媒体用流体ジャケットを樹脂製とすることによりヒーターの重量を軽減できるとともに、その低い熱伝導率により熱媒体用流体に対する保温性が向上することとなる。
【0009】本発明は磁石と導体間の相対回転により主として導体が発熱し、磁石も導体からの輻射熱により磁力は少し弱まり、駆動トルクは多少減少するが、前記したビスカス式ヒーター程の比ではなく、発熱量は高い値を維持し続けることができる。
【0010】本発明において、僅かなギャップを隔てて対向配置した磁石と導体を相対的に回転させて磁路をせん断する方法としては、磁石側と導体側のいずれか一方を回転させる方法、磁石側と導体側を互いに相反する方向に回転させる方法、磁石側と導体側の回転数を変えて同一方向に回転させる方法などがある。なお、ギャップは特に限定するものではないが、通常0.3〜1.0mm程度である。
【0011】また、本発明における回転駆動源としては、エンジンによりプーリなどを介して駆動する方式、あるいはエンジンとは別設の専用のモーターや風力、水力などを用いることができる。
【0012】さらに、このマグネット式ヒーターのON/OFF制御手段としては、電磁クラッチ、サーマルフェライト、電磁ブレーキ、電磁コイルなどを用いることができる。なお、サーマルフェライトは、永久磁石にソフトフェライトを貼り付けたものが一般的であり、ある温度以上に発熱すると磁路がソフトフェライト中を通るようになり、反対に発熱温度がある温度以下に下がると磁路がソフトフェライトの外側に形成されるという特性を有する磁石であるため、磁石にサーマルフェライトを用いた場合は、自動的にON/OFF制御が可能となるので、ON/OFF制御系は不要である。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明の請求項1に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図、図2は同請求項2に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図、図3は同請求項3に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図、図4R>4は同請求項4に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図であり、1は駆動軸、2、12はウォータージャケット、3は軸受装置、4はバックプレート、5、15は永久磁石回転体、6は永久磁石、7、17はプーリ、8は循環水、9は締結ボルトをそれぞれ示す。
【0014】まず、図1に示すマグネット式ヒーターは、駆動軸1の外周に軸受装置3を介して例えばエディカレント材として純銅製のウォータージャケット(導体)2を非回動に支承し、このウォータージャケット2と僅かなギャップを隔てて対向配置したドーナツ状の永久磁石6を有する永久磁石回転体5を前記駆動軸1と一体に取付けている。永久磁石6はヨーク6aを介して取付けられている。前記ウォータージャケット2の内部には、前記永久磁石6と対向する側の内壁にバックプレート4が貼着されている。このバックプレート4は材質的には特に限定するものではないが、フェライト系ステンレス鋼板や、メッキなどにより防食処理を施したSi含有鋼板などが好ましい。ウォータージャケット2には入水ポート2aと出水ポート2bが設けられている。なお、駆動軸1には締結ボルト9によりプーリ7が取付けられ、車両のエンジンなどによりベルトで回転されるようになっている。
【0015】上記構成のマグネット式ヒーターにおいて、駆動軸1がプーリ7を介してエンジンにより駆動されると、該駆動軸1と一体構造の永久磁石回転体5が回動し永久磁石6が回動することにより、エディカレント材製のウォータージャケット(導体)2との間に形成されている磁路がせん断されて該ウォータージャケット2にスリップ発熱が生じる。この時、ウォータージャケット(導体)2の内壁に貼着されているバックプレート4の作用により、永久磁石6との間に強力な磁場が形成され、ウォータージャケット2に十分な渦電流が発生し、ヒーター効率が高められる。このウォータージャケット2の発熱は、当該ジャケット2内の熱媒体用流体としての循環水8に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0016】つぎに、図2に示すマグネット式ヒーターは、図1に示すものと同様、駆動軸1の外周に軸受装置3を介してエディカレント材製のウォータージャケット(導体)2を非回動に支承し、このウォータージャケット2と僅かなギャップを隔てて対向配置したドーナツ状の永久磁石6を有する永久磁石回転体5を前記駆動軸1と一体に取付けた構成において、前記ウォータージャケット(導体)2の前記永久磁石6と対向する側の側壁にバックプレート4を埋設した構造となしたものである。
【0017】上記構成のマグネット式ヒーターにおいて、駆動軸1がプーリ7を介してエンジンなどにより駆動されると、該駆動軸1と一体構造の永久磁石回転体5が回動し永久磁石6が回動することにより、エディカレント材製のウォータージャケット(導体)2との間に形成されている磁路がせん断されて該ウォータージャケット2にスリップ発熱が生じる。この場合は、ウォータージャケット(導体)2と一体に埋設されているバックプレート4の作用により、前記図1に示すヒーターと同様、永久磁石6との間に強力な磁場が形成され、ウォータージャケット2に十分な渦電流が発生し、ヒーター効率が高められる。このウォータージャケット2の発熱は前記と同様、当該ジャケット2内の熱媒体用流体としての循環水8に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0018】図3に示すマグネット式ヒーターは、図1に示すものと同様、駆動軸1の外周に軸受装置3を介してエディカレント材製のウォータージャケット(導体)2を非回動に支承し、このウォータージャケット2と僅かなギャップを隔てて対向配置したドーナツ状の永久磁石6を有する永久磁石回転体5を前記駆動軸1と一体に取付けた構成において、前記ウォータージャケット(導体)2内の前記永久磁石6と対向する側の内壁と僅かなギャップを隔てて当該ジャケットの内部空間にジャケットと同材質のエディカレント材製の導体4−1で囲繞されたバックプレート4を対向配置した構造となしたものである。なお、前記導体4−1で囲繞されたバックプレート4はウォータージャケット2の内壁に支持体2−1を介して固定されている。
【0019】上記構成のマグネット式ヒーターの場合も前記と同様、駆動軸1がプーリ7を介してエンジンなどにより駆動されると、該駆動軸1と一体構造の永久磁石回転体5が回動し永久磁石6が回動することにより、エディカレント材製のウォータージャケット(導体)2との間に形成されている磁路がせん断されて該ウォータージャケット2にスリップ発熱が生じる。このヒーターの場合は、ウォータージャケット2の内部空間に支持されている導体4−1で囲繞されたバックプレート4の作用により、前記図1に示すヒーターと同様、永久磁石6との間に強力な磁場が形成され、ウォータージャケット2に十分な渦電流が発生し、導体4−1で囲繞されたバックプレート4とウォータージャケット内壁との間を流動する循環水8にスリップ発熱が熱交換される。したがって、このマグネット式ヒーターの場合も高いヒーター効率が得られる。
【0020】一方、図4に示すマグネット式ヒーターは、ヒーター全体の重量を軽減するためと、熱媒体流体に体する保温性を確保するためにウォータージャケット本体を樹脂製としたもので、その構造は断面[字形のウォータージャケット本体12−1の前面側に当該ジャケット本体の断面形状に対応するごとく形成したエディカレント材製の導体12−2をシールリング12−3、12−4を介して一体に取付けてなるウォータージャケット12を駆動軸1の外周に軸受装置3を介して非回動に支承し、このウォータージャケット12の導体12−2と僅かなギャップを隔てて対向配置したドーナツ状の永久磁石6を有する永久磁石回転体15を締結ボルト9にて前記駆動軸1に一体に取付けている。前記ウォータージャケット12の内部には、前記永久磁石6と対向する側の導体12−2の内壁にバックプレート4が貼着されている。ウォータージャケット2には入水ポート(図面省略)と出水ポート12bが設けられている。なお、駆動軸1は前記と同様プーリ17を介して車両のエンジンなどによりベルトで回転されるようになっている。
【0021】上記構成のマグネット式ヒーターの場合は、駆動軸1がプーリ17を介してエンジンにより駆動されると、該駆動軸1と一体構造の永久磁石回転体15が回動し永久磁石6が回動することにより、樹脂製のウォータージャケット本体12−1に取付けられたエディカレント材製の導体12−2との間に形成されている磁路がせん断されて該導体12−2にスリップ発熱が生じる。このヒーターの場合は、永久磁石6と対向する側の導体12−2の内壁に貼着されているバックプレート4の作用により、前記図1に示すヒーターと同様、永久磁石6との間に強力な磁場が形成され、ウォータージャケット12の導体12−2に十分な渦電流が発生し、ヒーター効率が高められる。このウォータージャケット12の導体12−2の発熱は前記と同様、当該ジャケット2内の熱媒体用流体としての循環水8に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。なお、このマグネット式ヒーターの場合は、ウォータージャケット本体12−1を樹脂製としたことにより、ウォータージャケット全体がエディカレント材製(純銅製など)の前記図1〜図3に示すマグネット式ヒーターに比べ重量を軽減できるとともに、一般的に低い樹脂の熱伝導率により熱媒体流体に対する保温性が向上するという効果に加え、ウォータージャケットの容積を増大できることと、導体12−2のバックプレート4より周方向外方で回転に伴う相対速度が大きく、発熱量の多い部分に近く、かつ表面積(伝熱面積)が増加して十分冷却されるため熱を良く回収して永久磁石6に対する輻射熱の低減、およびシールリング12−3、12−4に対する熱影響を少なくできるなどの効果が得られる。
【0022】なお、上記の各実施例では、熱媒体用流体として水を採用したが、これに限定されず、他の熱媒体用流体、例えば熱媒体油、シリコンオイル、あるいは空気なども採用できる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したごとく、本発明に係るマグネット式ヒーターは、永久磁石やサーマルフェライトなどの磁石と、エディカレント材またはヒステリシス材からなる導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱を利用したものであるから、構造をよりシンプルにでき、小型化と低コスト化を実現でき、また摩耗のない非接触式の機構でより高い信頼性と安全性を確保することができるという効果に加え、例えばエンジン冷間時、急速に暖房が必要な場合、磁石側または導体側をエンジンなどにより駆動することによりエンジン冷却水を急速に暖めるとともにエンジンの暖房機能を著しく向上させることができるという優れた効果を有する。したがって、本発明はより短時間にかつ効率よく熱媒体用流体を高温に加熱することができる補助ヒータとして優れた効果を発揮し、特にディーゼルエンジン搭載の寒冷地仕様車などに極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図である。
【図2】同請求項2に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図である。
【図3】同請求項3に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図である。
【図4】同請求項4に対応するマグネット式ヒーターの一実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1 駆動軸
2、12 ウォータージャケット
3 軸受装置
4 バックプレート
5、15 永久磁石回転体
6 永久磁石
7、17 プーリ
8 循環水
9 締結ボルト
2a 入水ポート
2b、12b 出水ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であって、前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の内壁にバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とするマグネット式ヒーター。
【請求項2】 磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であって、前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケットの前記永久磁石と対向する側の側壁に埋設したバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とするマグネット式ヒーター。
【請求項3】 磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であって、前記導体を熱媒体用流体ジャケットとなして駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、該前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットと僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケット内の前記永久磁石と対向する側の内壁と僅かなギャップを隔てて当該ジャケット内に対向配置した、導体で囲繞されたバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とする
【請求項4】 磁石と導体を僅かなギャップを隔てて対向配置し、該磁石と導体を相対的に回転させることにより導体に生じるスリップ発熱で熱媒体用流体を加熱する方式であって、樹脂製の熱媒体用流体ジャケットの一部が前記導体で構成されて駆動軸に軸受装置を介して非回動に支承され、前記駆動軸により回動可能に設けられ前記熱媒体用流体ジャケットの導体と僅かなギャップを隔てて対向配置した永久磁石を有する永久磁石回転体を備え、かつ前記熱媒体用流体ジャケット内の前記永久磁石と対向する側の導体の内壁にバックプレートを有し、前記永久磁石回転体の回動により熱媒体用流体ジャケットに生じるスリップ発熱により該熱媒体用流体ジャケット内の熱媒体用流体が加熱される構造となしたことを特徴とするマグネット式ヒーター。
【請求項5】 永久磁石に替えてサーマルフェライトを用いることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のマグネット式ヒーター。
【請求項6】 導体にエディカレント材またはヒステリシス材を用いることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のマグネット式ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−123963(P2000−123963A)
【公開日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−297223
【出願日】平成10年10月19日(1998.10.19)
【出願人】(000120249)臼井国際産業株式会社 (168)
【Fターム(参考)】