マザー基板のスクライブ方法
【課題】 基板を分断するときの「カケ」「ソゲ」「交点飛び」などの不具合を抑制するマザー基板のスクライブ方法を提供する。
【解決手段】 (a)マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、(b)短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な右辺および左辺をそれぞれ形成する縦方向の第2、第3スクライブラインを形成する工程、(c)第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程とを行う。
【解決手段】 (a)マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、(b)短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な右辺および左辺をそれぞれ形成する縦方向の第2、第3スクライブラインを形成する工程、(c)第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程とを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の脆性材料からなるマザー基板のスクライブ方法に関する。
さらに詳細には、大面積のマザー基板上に形成したスクライブラインから短冊状基板を切り出し、この短冊状基板から単位製品を分断する分断方法において使用されるスクライブ方法に関する。ここで、短冊状基板とは、複数の単位基板(単位製品)が一列に配列された状態の基板をいう。短冊状基板では単位基板が並ぶ方向が長手方向となる。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等のマザー基板から短冊状基板を切り出す場合、図19に示すように、マザー基板Wに対し、互いに直交する方向に配置したカッターホイール20、21を押しつけながら転動させることにより、互いに交差する縦、横の複数条のスクライブラインSa、Sb(図19では1条のみを示している)を形成し、続いて縦方向のスクライブラインSbからブレイクバー22で基板Wをブレイクすることにより短冊状基板Waを形成し、この短冊状基板Waを90度回転させ、ブレイクバー23でスクライブラインSaに沿ってブレイクして単位製品W1を取り出す方法が知られている(例えば特許文献1等)。
【0003】
上記手順による分断方法では、マザー基板Wに縦、横に交差するスクライブラインSa、Sbをカッターホイール20、21でクロススクライブするときに、スクライブラインSa、Sbの交点で「カケ」や「ソゲ」と呼ばれる加工不良が発生することがあった。
【0004】
「カケ」とは、図20に示すように、最初に横方向のスクライブラインSaを形成したあと、カッターホイール21を圧接転動して縦方向のスクライブラインを形成するときに、カッターホイール21の圧接力が負荷されている側の基板(図の左側の基板)が矢印に示すように沈み込み、既設のスクライブラインSaを越えるところで、半分断状態にある右側の基板に乗り上がるときに発生する微細なカケ(図中αで示す)をいう。
【0005】
また、「ソゲ」とは、図21に示すように、最初に横方向のスクライブラインSaを形成したあと、縦方向のスクライブラインを形成するときに、カッターホイール21が既設のスクライブラインSaを越えるところで、スクライブラインSaの垂直方向のクラックKが基板の裏面近傍で斜め方向に伸展されることをいう。この「ソゲ」を図中βで示す。
【0006】
このような「カケ」や「ソゲ」は、当然ながら分断後の製品の品質を損なうものであり、製造歩留まりを低下させる大きな原因となる。
【0007】
そこで、マザー基板をクロススクライブするときに、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を一時的に下げるように押圧力を制御して、「カケ」や「ソゲ」の発生を防ぐようにした方法が特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−315901号公報
【特許文献2】特開2009−132614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の分断方法ではクロススクライブが行われるため、「カケ」や「ソゲ」が生じるおそれがあり、これを防ぐ目的で、特許文献2に記載のように、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を一時的に下げるように押圧力を制御する方法が採用されることがあるが、そのためには押圧力を複雑に変化させる専用の制御プログラムや機械的な動作システムが必要となって手間とコストがかかることになる。また、厚みのある基板や材料組成によってはスクライブ圧をあまり下げることができないものがあり、「カケ」や「ソゲ」を完全に防ぐことができなかった。
また、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を下げると「交点飛び」と呼ばれる不都合な現象が発生するおそれがある。この現象は、最初に形成されたスクライブラインと、これと交差する第2のスクライブラインをカッターホイールにより形成するときに、あとから形成されるべきスクライブラインが交点付近で形成されないことをいう。これは、最初に形成されたスクライブラインの溝両側に応力が残存し、この応力の残存している箇所をカッターホイールが横切るときに、カッターホイールの押圧力が削がれてしまうことが原因であると考えられている。このような「交点飛び」の現象が発生すると、当然ながらスクライブラインから基板を分断したときにきれいな分断面を得ることができず、高品質の製品を作ることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、短冊状基板を分断するときの「カケ」「ソゲ」「交点飛び」のようなクロススクライブに起因する不具合を抑制したマザー基板のスクライブ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明方法では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明に係るマザー基板のスクライブ方法は、カッターホイールによるマザー基板のスクライブ方法であって、(a)マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、(b)次いで、前記第1スクライブラインと平行であって前記短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な右辺をそれぞれ形成する縦方向の第2スクライブライン、および、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な左辺をそれぞれ形成する縦方向の第3スクライブラインを形成する工程、(c)次いで、前記第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、前記短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程、とからなるようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクライブ方法によれば、短冊状基板上で、各単位製品を区分けする縦方向のスクライブライン(第2スクライブライン、第3スクライブライン)が、横方向のスクライブライン(第1スクライブライン、第4スクライブライン)の間で形成されるので、横方向のスクライブラインを乗り越えて交差することにより形成される交点が存在しなくなり、これにより、上述した交点での「カケ」や「ソゲ」の発生を著しく減少することができるとともに、「交点飛び」の現象もなくすことができ、分断面のきれいな高品質の短冊状基板を得ることができる。
【0013】
ここで、縦方向の第2スクライブライン、および、縦方向の第3スクライブラインは、短冊状基板中の単位製品の数と同数のカッターホイールを使用して、第2スクライブラインどうし、第3スクライブラインどうしを同時にスクライブするようにしてもよい。
形成される短冊状基板の各単位製品を区分けする縦方向のスクライブラインは、短冊状基板の単位製品の数と同じ数のカッターホイールを使用して行われるので、スクライブ作業を短時間で効率的に行うことができる効果がある。
【0014】
また、横方向の第1スクライブラインを形成する工程と第4スクライブラインを形成する工程とでは、マザー基板を固定してカッターホイールを横方向に移動することにより加工し、縦方向の第2スクライブラインと第3スクライブラインとを形成する工程では、カッターホイールを固定し、マザー基板を移動することにより加工するようにしてもよい。
これにより、基板を90度回転させることなく、縦方向と横方向とのスクライブラインを効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のスクライブ方法を実施する際に使用される分断装置の一例を概略的に示す平面図。
【図2】本発明の分断装置におけるスクライブ部を概略的に示す正面図。
【図3】本発明の分断装置におけるブレイク部の概略図。
【図4】本発明の分断装置による第1手順を示す図1同様の説明図。
【図5】本発明の分断装置による第2手順を示す説明図。
【図6】本発明の分断装置による第3手順を示す説明図。
【図7】本発明の分断装置による第4手順を示す説明図。
【図8】本発明の分断装置による第5手順を示す説明図。
【図9】本発明の分断装置による第6手順を示す説明図。
【図10】本発明の分断装置による第7手順を示す説明図。
【図11】本発明の分断装置による第8手順を示す説明図。
【図12】本発明の分断装置による第9手順を示す説明図。
【図13】本発明の分断装置による第10手順を示す説明図。
【図14】本発明の分断装置による第11手順を示す説明図。
【図15】本発明の分断装置による第12手順を示す説明図。
【図16】本発明の分断装置による第13手順を示す説明図。
【図17】本発明の分断装置による第14手順を示す説明図。
【図18】本発明の分断装置による第15手順を示す説明図。
【図19】従来の短冊状基板の切り出し手段を示す説明図。
【図20】従来のクロススクライブ時に生じる「カケ」の現象を説明する図。
【図21】従来のクロススクライブ時に生じる「ソゲ」の現象を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスクライブ方法の詳細を、図1〜図18に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のスクライブ方法を実施する際に使用される分断装置1の一例を概略的に示す平面図である。この分断装置1は、マザー基板Wにスクライブラインを加工するためのスクライブ部Aと、スクライブラインからマザー基板Wを短冊状に分断する第1ブレイク部Bと、分断された短冊状基板Wa(図11参照)を単位製品W1に分断する第2ブレイク部Cと、前記第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを受け取って基板長手方向に沿って第2ブレイク部Cに搬送する搬送部Dとからなる。
【0017】
スクライブ部A(図2参照)は、左右一対の支柱2、2と、これら支柱2、2に橋架された横梁(ビームともいう)3とを備え、横梁3はX方向に沿って配置されている。横梁3には複数の、本実施例では4個のスクライブヘッド4がガイド5に沿ってX方向に移動可能に設けられている。このスクライブヘッド4の個数は、後述する短冊状基板Waに形成される単位製品W1の数に合わせて設定される。スクライブヘッド4の下端にはマザー基板Wに縦、横のスクライブラインを加工するためのカッターホイール6が取り付けられている。カッターホイール6は、スクライブヘッド4に内蔵する切替機構(不図示)により、その転動方向がX方向、並びにX方向と平面上で直交するY方向の両方に切り替えることができるように取り付けられている。
【0018】
スクライブヘッド4の下方には、載置されたマザー基板Wを支持するとともに、載置された基板Wをテーブル7上からY方向に搬送するY方向搬送ローラ付きのテーブル7が配置されている。なお、正確に直線搬送を行うために、テーブル7の片側(基板を搬出する第1ブレイク部B側とは反対側)に、マザー基板Wの上端辺を把持するとともにテーブル7のY方向搬送ローラの搬送運動と連動して、マザー基板WをY方向に搬送するチャック機構(不図示)を設けるようにしてもよい。これらの搬送機構によりマザー基板WをY方向に前後移動できるようにしてある。
【0019】
第1ブレイク部B並びに第2ブレイク部C(図3参照)は、スクライブラインに沿って外力を印加して基板を撓ませることにより基板を分断する一般的なブレイク機構が利用される。詳細な機構の説明は省略するが、基板WのスクライブラインSを設けた面とは反対の面(本実施例では下面)の下方に、スクライブラインSに沿って長く延びる板状のブレイクバー10を設け、基板Wの上面側にはスクライブラインSの左右両脇部分に一対の押えバーまたはローラ11を設けてある。そしてブレイクバー10を上昇させて基板Wを僅かに逆V字状に撓ませることにより、スクライブライン(クラック)を深さ方向に浸透させて分断するように形成されている。
【0020】
第1ブレイク部Bのブレイクバーは、後述する横方向(X方向)のスクライブラインからマザー基板Wを分断できるようにX方向に沿って延設され、スクライブ部Aと搬送部Dとの間に設置されている。
第2ブレイク部Cのブレイクバーは、分断された短冊状基板Waを縦方向(Y方向)のスクライブラインから分断できるようにY方向に延設され、搬送部Dの搬出側に設置されている。
【0021】
搬送部Dは、第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを、Y方向(短冊状基板の長手方向と直交する方向)に移動させるY方向搬送ローラ(不図示)と、X方向(短冊状基板の長手方向と同じ方向)に移動させるX方向搬送ローラ(不図示)を備えたテーブルで構成されており、まずY方向搬送ローラを作動させて第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを受け取り、所定の定位置に停止させたあと、続いてX方向搬送ローラを作動させて第2ブレイク部C側に搬出するようにしてある。
したがって、図1に示されるように、スクライブ部Aと、第1ブレイク部Bと、搬送部Dの短冊状基板Waを受け取る部分とはこの順に基板が搬送されるようにY方向に並び、搬送部Dと第2ブレイク部Cとはこの順に基板が搬送されるようにX方向に並ぶように配置されている。
【0022】
また、第1ブレイク部B並びにテーブル7は、図面の複雑化を避けるため図4〜図18では省略してある。
【0023】
次に上記分断装置1を使用した本発明のスクライブ方法およびその後の分断方法について説明する。
あらかじめ、図1並びに図2に示すように、スクライブ部Aのテーブル7上にマザー基板Wが配置される。テーブル7に載置されるまでの前工程については特に限定されないが、例えばテーブル7自体にX方向、Y方向に移動するための駆動機構(図2のボールネジ9、レール8など)を設けておき、テーブル7をX方向やY方向に移動させることでマザー基板Wを本発明によるスクライブ加工や分断加工を始めるための原点位置に移動させてもよい。
図1において、マザー基板Wに2点鎖線で描かれている仮想線は、これから切り出そうとする短冊状基板およびそれに含まれる単位製品のスクライブ予定ラインを示すものであり、W1は最終的にスクライブ予定ラインから分断して取り出される単位製品の領域を示す。
【0024】
図4に示すように、マザー基板Wをスクライブヘッド4の下方まで移動させ、右端にある1個のスクライブヘッド4のカッターホイールをマザー基板Wの下辺(図2におけるマザー基板Wの手前側の辺)の近傍で横方向(X方向)に延びる第1スクライブ予定ラインL1上(図1参照)に沿って押しつけながら転動させてスクライブする。これにより、マザー基板Wの下辺部分の端材領域13を区分けする横方向の第1スクライブラインS1を加工する。
【0025】
このあと、図5に示すように、この端材領域13を第1スクライブラインS1から第1ブレイク部B(図5では省略のため図1参照)で分断し、端材領域13を外部に破棄する。このときロボットアームなどで掴んで破棄してもよいし、圧縮エアによるブローで除去してもよい。
【0026】
次いで、全てのスクライブヘッド4のカッターホイールの転動方向をY方向に切り替えたあと、図6並びに図7に示すように、4個全てのスクライブヘッド4を使用して、マザー基板Wの既に分断された下辺から、分断後には短冊状基板Waの長手方向に沿った一方の辺(上辺)を形成することになる横方向の第2スクライブ予定ラインL2まで、縦方向(Y方向)に同時にスクライブする。このときカッターホイール4は停止し、テーブル7のY方向搬送ローラによりマザー基板WをY方向に移動することによりスクライブが行われる。これにより、単位製品の実質的な右辺を形成する縦方向の第2スクライブラインS2を加工する。
【0027】
次いで、図8並びに図9に示すように、同様の方法で、4個のスクライブヘッド4でマザー基板Wの下辺から第2横スクライブ予定ラインL2まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な左辺を形成する縦方向の第3スクライブラインS3を加工する。なお、第2スクライブラインS2と第3スクライブラインS3とは逆順で加工してもよい。
【0028】
次いで、図10に示すように、第2横スクライブ予定ラインL2上(図9参照)に沿って、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールをX方向に移動させてスクライブすることによって横方向の第4スクライブラインS4を形成する。
【0029】
このあと、図11に示すように、テーブル7のY方向搬送ローラおよび搬送部DのY方向搬送ローラによりマザー基板WをY方向に移動し、第4スクライブラインSの裏面側からマザー基板Wを第1ブレイク部B(図1参照)でX方向に分断することによって、最初の短冊状基板Waが完全分断されて切り出される。
切り出された短冊状基板Waは、縦方向(Y方向)のスクライブラインS2、S3によって区分けされた4個の単位製品W1が長手方向に沿って一列に配列された長方形の形状を備え、その長手方向をX方向に向けた姿勢で切り出される。
【0030】
切り出された短冊状基板Waは、その長手方向をX方向に向けた姿勢のままで、搬送部DのY方向搬送ローラにより、基板長手方向と直交する方向(−Y方向)に搬送部Dの所定の定位置まで搬送される。搬送部Dの定位置に移送された短冊状基板Waは、続いて、その長手方向をX方向に向けた姿勢を維持したままX方向に搬送され、第2スクライブ部Cまで搬送されて単位製品W1に順次分断される。
【0031】
また、最初の短冊状基板Waが切り出されたあと、上述した手順と同様の手順を経て、マザー基板Wから次の短冊状基板Waが分断される。すなわち、最初の短冊状基板Waが切り出されたあと、図11に示すように、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールを、第3横スクライブ予定ラインL3上(図1参照)に沿ってスクライブすることによって横方向の第5スクライブラインS5を加工する。このあと、図12に示すように、第5スクライブラインS5から端材領域14を分断して外部に破棄する。
なお、第3横スクライブ予定ラインL3と、1つ前に加工した短冊状基板Waにおける第2横スクライブ予定ラインL2とを一致させることで端材領域14を設けないようにしてもよい。その場合、第5スクライブラインS5は既に形成されていることになる。
【0032】
次いで、図13並びに図14に示すように、4個全てのスクライブヘッド4を使用して、マザー基板Wの既に分断された下辺から第4横スクライブ予定ラインL4まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品W1の実質的な右辺を形成する縦方向の第6スクライブラインS6を形成する。
【0033】
次いで、図15並びに図16に示すように、4個のスクライブヘッド4でマザー基板Wの既に分断された下辺から第4横スクライブ予定ラインL4まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な左辺を形成する第7スクライブラインS7を加工する。
この場合も、第6スクライブラインS6と第7スクライブラインS7とは逆順に形成してもよい。
【0034】
このあと、図17に示すように、第4横スクライブ予定ラインL4(図1参照)に沿って、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールでスクライブすることによって横方向の第8スクライブラインS8を形成する。
【0035】
次いで、図18に示すように、上記第8スクライブラインからマザー基板Wを第1ブレイク部B(図1参照)で分断することによって次の短冊状基板Waが完全分断され、切り出される。
【0036】
上記の手順を経て得られた短冊状基板Waでは、各単位製品W1を区分けする縦方向の第2、第3スクライブラインS2、S3(または第6、第7スクライブラインS6、S7)が、横方向の第1および第4スクライブラインS1、S4(または第5、第8スクライブラインS5、S8)の間で形成されているので、横方向のスクライブラインを乗り越えて交差することにより形成される交点が存在しなくなる。これにより、上述した交点での「カケ」や「ソゲ」の発生を著しく抑制できるとともに、「交点飛び」の現象もなくすことができる。
【0037】
また、マザー基板Wから切り出された短冊状基板Waが向きを変えることなく、その姿勢を維持したまま−Y方向に搬送され、続いて搬送部Dにより第2ブレイク部Cに向けX方向に搬送されて単位製品W1に順次分断されるので、直線運動だけの搬送が行われる。従来のように短冊状基板を90度回転させるための回転機構(ターンテーブル)を省略することができ、これにより設備コストの低減を図ることができるとともに、製造ラインのコンパクト化を図ることができる。さらに短冊状基板の回転に伴う角度の微調整作業も必要なくなる。
【0038】
上記実施例において、マザー基板WをY方向に移動させて縦方向のスクライブラインを加工したが、反対にスクライブヘッド4を支持する横梁3や支柱2を移動できるようにしてスクライブするようにしてもよい。また、横方向のスクライブラインは右端の1個のカッターホイールで加工したが、他のカッターホイールを使用して加工するようにしてもよい。
上記実施例において、短冊状基板Wa中の単位製品W1と同数のスクライブヘッド4を用意したが、生産速度を問題にしなければ、スクライブヘッドを1つだけにして、縦方向のスクライブラインを一つ一つ形成するようにしてもよい。
【0039】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の分断方法は、ガラス基板等の脆性材料からなるマザー基板から、短冊状基板を形成し、さらに単位製品に分断するスクライブ方法に利用される。
【符号の説明】
【0041】
A スクライブ部
B 第1ブレイク部
C 第2ブレイク部
D 搬送部
L1 第1横スクライブ予定ライン
L2 第2横スクライブ予定ライン
L3 第3横スクライブ予定ライン
L4 第4横スクライブ予定ライン
S1 第1スクライブライン
S2 第2スクライブライン
S3 第3スクライブライン
S4 第4スクライブライン
W マザー基板
Wa 短冊状基板
W1 単位製品
1 分断装置
4 スクライブヘッド
6 カッターホイール
7 テーブル
13、14 端材領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の脆性材料からなるマザー基板のスクライブ方法に関する。
さらに詳細には、大面積のマザー基板上に形成したスクライブラインから短冊状基板を切り出し、この短冊状基板から単位製品を分断する分断方法において使用されるスクライブ方法に関する。ここで、短冊状基板とは、複数の単位基板(単位製品)が一列に配列された状態の基板をいう。短冊状基板では単位基板が並ぶ方向が長手方向となる。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等のマザー基板から短冊状基板を切り出す場合、図19に示すように、マザー基板Wに対し、互いに直交する方向に配置したカッターホイール20、21を押しつけながら転動させることにより、互いに交差する縦、横の複数条のスクライブラインSa、Sb(図19では1条のみを示している)を形成し、続いて縦方向のスクライブラインSbからブレイクバー22で基板Wをブレイクすることにより短冊状基板Waを形成し、この短冊状基板Waを90度回転させ、ブレイクバー23でスクライブラインSaに沿ってブレイクして単位製品W1を取り出す方法が知られている(例えば特許文献1等)。
【0003】
上記手順による分断方法では、マザー基板Wに縦、横に交差するスクライブラインSa、Sbをカッターホイール20、21でクロススクライブするときに、スクライブラインSa、Sbの交点で「カケ」や「ソゲ」と呼ばれる加工不良が発生することがあった。
【0004】
「カケ」とは、図20に示すように、最初に横方向のスクライブラインSaを形成したあと、カッターホイール21を圧接転動して縦方向のスクライブラインを形成するときに、カッターホイール21の圧接力が負荷されている側の基板(図の左側の基板)が矢印に示すように沈み込み、既設のスクライブラインSaを越えるところで、半分断状態にある右側の基板に乗り上がるときに発生する微細なカケ(図中αで示す)をいう。
【0005】
また、「ソゲ」とは、図21に示すように、最初に横方向のスクライブラインSaを形成したあと、縦方向のスクライブラインを形成するときに、カッターホイール21が既設のスクライブラインSaを越えるところで、スクライブラインSaの垂直方向のクラックKが基板の裏面近傍で斜め方向に伸展されることをいう。この「ソゲ」を図中βで示す。
【0006】
このような「カケ」や「ソゲ」は、当然ながら分断後の製品の品質を損なうものであり、製造歩留まりを低下させる大きな原因となる。
【0007】
そこで、マザー基板をクロススクライブするときに、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を一時的に下げるように押圧力を制御して、「カケ」や「ソゲ」の発生を防ぐようにした方法が特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−315901号公報
【特許文献2】特開2009−132614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の分断方法ではクロススクライブが行われるため、「カケ」や「ソゲ」が生じるおそれがあり、これを防ぐ目的で、特許文献2に記載のように、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を一時的に下げるように押圧力を制御する方法が採用されることがあるが、そのためには押圧力を複雑に変化させる専用の制御プログラムや機械的な動作システムが必要となって手間とコストがかかることになる。また、厚みのある基板や材料組成によってはスクライブ圧をあまり下げることができないものがあり、「カケ」や「ソゲ」を完全に防ぐことができなかった。
また、スクライブラインの交点近傍でカッターホイールのスクライブ圧を下げると「交点飛び」と呼ばれる不都合な現象が発生するおそれがある。この現象は、最初に形成されたスクライブラインと、これと交差する第2のスクライブラインをカッターホイールにより形成するときに、あとから形成されるべきスクライブラインが交点付近で形成されないことをいう。これは、最初に形成されたスクライブラインの溝両側に応力が残存し、この応力の残存している箇所をカッターホイールが横切るときに、カッターホイールの押圧力が削がれてしまうことが原因であると考えられている。このような「交点飛び」の現象が発生すると、当然ながらスクライブラインから基板を分断したときにきれいな分断面を得ることができず、高品質の製品を作ることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、短冊状基板を分断するときの「カケ」「ソゲ」「交点飛び」のようなクロススクライブに起因する不具合を抑制したマザー基板のスクライブ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明方法では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明に係るマザー基板のスクライブ方法は、カッターホイールによるマザー基板のスクライブ方法であって、(a)マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、(b)次いで、前記第1スクライブラインと平行であって前記短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な右辺をそれぞれ形成する縦方向の第2スクライブライン、および、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な左辺をそれぞれ形成する縦方向の第3スクライブラインを形成する工程、(c)次いで、前記第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、前記短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程、とからなるようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクライブ方法によれば、短冊状基板上で、各単位製品を区分けする縦方向のスクライブライン(第2スクライブライン、第3スクライブライン)が、横方向のスクライブライン(第1スクライブライン、第4スクライブライン)の間で形成されるので、横方向のスクライブラインを乗り越えて交差することにより形成される交点が存在しなくなり、これにより、上述した交点での「カケ」や「ソゲ」の発生を著しく減少することができるとともに、「交点飛び」の現象もなくすことができ、分断面のきれいな高品質の短冊状基板を得ることができる。
【0013】
ここで、縦方向の第2スクライブライン、および、縦方向の第3スクライブラインは、短冊状基板中の単位製品の数と同数のカッターホイールを使用して、第2スクライブラインどうし、第3スクライブラインどうしを同時にスクライブするようにしてもよい。
形成される短冊状基板の各単位製品を区分けする縦方向のスクライブラインは、短冊状基板の単位製品の数と同じ数のカッターホイールを使用して行われるので、スクライブ作業を短時間で効率的に行うことができる効果がある。
【0014】
また、横方向の第1スクライブラインを形成する工程と第4スクライブラインを形成する工程とでは、マザー基板を固定してカッターホイールを横方向に移動することにより加工し、縦方向の第2スクライブラインと第3スクライブラインとを形成する工程では、カッターホイールを固定し、マザー基板を移動することにより加工するようにしてもよい。
これにより、基板を90度回転させることなく、縦方向と横方向とのスクライブラインを効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のスクライブ方法を実施する際に使用される分断装置の一例を概略的に示す平面図。
【図2】本発明の分断装置におけるスクライブ部を概略的に示す正面図。
【図3】本発明の分断装置におけるブレイク部の概略図。
【図4】本発明の分断装置による第1手順を示す図1同様の説明図。
【図5】本発明の分断装置による第2手順を示す説明図。
【図6】本発明の分断装置による第3手順を示す説明図。
【図7】本発明の分断装置による第4手順を示す説明図。
【図8】本発明の分断装置による第5手順を示す説明図。
【図9】本発明の分断装置による第6手順を示す説明図。
【図10】本発明の分断装置による第7手順を示す説明図。
【図11】本発明の分断装置による第8手順を示す説明図。
【図12】本発明の分断装置による第9手順を示す説明図。
【図13】本発明の分断装置による第10手順を示す説明図。
【図14】本発明の分断装置による第11手順を示す説明図。
【図15】本発明の分断装置による第12手順を示す説明図。
【図16】本発明の分断装置による第13手順を示す説明図。
【図17】本発明の分断装置による第14手順を示す説明図。
【図18】本発明の分断装置による第15手順を示す説明図。
【図19】従来の短冊状基板の切り出し手段を示す説明図。
【図20】従来のクロススクライブ時に生じる「カケ」の現象を説明する図。
【図21】従来のクロススクライブ時に生じる「ソゲ」の現象を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスクライブ方法の詳細を、図1〜図18に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のスクライブ方法を実施する際に使用される分断装置1の一例を概略的に示す平面図である。この分断装置1は、マザー基板Wにスクライブラインを加工するためのスクライブ部Aと、スクライブラインからマザー基板Wを短冊状に分断する第1ブレイク部Bと、分断された短冊状基板Wa(図11参照)を単位製品W1に分断する第2ブレイク部Cと、前記第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを受け取って基板長手方向に沿って第2ブレイク部Cに搬送する搬送部Dとからなる。
【0017】
スクライブ部A(図2参照)は、左右一対の支柱2、2と、これら支柱2、2に橋架された横梁(ビームともいう)3とを備え、横梁3はX方向に沿って配置されている。横梁3には複数の、本実施例では4個のスクライブヘッド4がガイド5に沿ってX方向に移動可能に設けられている。このスクライブヘッド4の個数は、後述する短冊状基板Waに形成される単位製品W1の数に合わせて設定される。スクライブヘッド4の下端にはマザー基板Wに縦、横のスクライブラインを加工するためのカッターホイール6が取り付けられている。カッターホイール6は、スクライブヘッド4に内蔵する切替機構(不図示)により、その転動方向がX方向、並びにX方向と平面上で直交するY方向の両方に切り替えることができるように取り付けられている。
【0018】
スクライブヘッド4の下方には、載置されたマザー基板Wを支持するとともに、載置された基板Wをテーブル7上からY方向に搬送するY方向搬送ローラ付きのテーブル7が配置されている。なお、正確に直線搬送を行うために、テーブル7の片側(基板を搬出する第1ブレイク部B側とは反対側)に、マザー基板Wの上端辺を把持するとともにテーブル7のY方向搬送ローラの搬送運動と連動して、マザー基板WをY方向に搬送するチャック機構(不図示)を設けるようにしてもよい。これらの搬送機構によりマザー基板WをY方向に前後移動できるようにしてある。
【0019】
第1ブレイク部B並びに第2ブレイク部C(図3参照)は、スクライブラインに沿って外力を印加して基板を撓ませることにより基板を分断する一般的なブレイク機構が利用される。詳細な機構の説明は省略するが、基板WのスクライブラインSを設けた面とは反対の面(本実施例では下面)の下方に、スクライブラインSに沿って長く延びる板状のブレイクバー10を設け、基板Wの上面側にはスクライブラインSの左右両脇部分に一対の押えバーまたはローラ11を設けてある。そしてブレイクバー10を上昇させて基板Wを僅かに逆V字状に撓ませることにより、スクライブライン(クラック)を深さ方向に浸透させて分断するように形成されている。
【0020】
第1ブレイク部Bのブレイクバーは、後述する横方向(X方向)のスクライブラインからマザー基板Wを分断できるようにX方向に沿って延設され、スクライブ部Aと搬送部Dとの間に設置されている。
第2ブレイク部Cのブレイクバーは、分断された短冊状基板Waを縦方向(Y方向)のスクライブラインから分断できるようにY方向に延設され、搬送部Dの搬出側に設置されている。
【0021】
搬送部Dは、第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを、Y方向(短冊状基板の長手方向と直交する方向)に移動させるY方向搬送ローラ(不図示)と、X方向(短冊状基板の長手方向と同じ方向)に移動させるX方向搬送ローラ(不図示)を備えたテーブルで構成されており、まずY方向搬送ローラを作動させて第1ブレイク部Bで分断された短冊状基板Waを受け取り、所定の定位置に停止させたあと、続いてX方向搬送ローラを作動させて第2ブレイク部C側に搬出するようにしてある。
したがって、図1に示されるように、スクライブ部Aと、第1ブレイク部Bと、搬送部Dの短冊状基板Waを受け取る部分とはこの順に基板が搬送されるようにY方向に並び、搬送部Dと第2ブレイク部Cとはこの順に基板が搬送されるようにX方向に並ぶように配置されている。
【0022】
また、第1ブレイク部B並びにテーブル7は、図面の複雑化を避けるため図4〜図18では省略してある。
【0023】
次に上記分断装置1を使用した本発明のスクライブ方法およびその後の分断方法について説明する。
あらかじめ、図1並びに図2に示すように、スクライブ部Aのテーブル7上にマザー基板Wが配置される。テーブル7に載置されるまでの前工程については特に限定されないが、例えばテーブル7自体にX方向、Y方向に移動するための駆動機構(図2のボールネジ9、レール8など)を設けておき、テーブル7をX方向やY方向に移動させることでマザー基板Wを本発明によるスクライブ加工や分断加工を始めるための原点位置に移動させてもよい。
図1において、マザー基板Wに2点鎖線で描かれている仮想線は、これから切り出そうとする短冊状基板およびそれに含まれる単位製品のスクライブ予定ラインを示すものであり、W1は最終的にスクライブ予定ラインから分断して取り出される単位製品の領域を示す。
【0024】
図4に示すように、マザー基板Wをスクライブヘッド4の下方まで移動させ、右端にある1個のスクライブヘッド4のカッターホイールをマザー基板Wの下辺(図2におけるマザー基板Wの手前側の辺)の近傍で横方向(X方向)に延びる第1スクライブ予定ラインL1上(図1参照)に沿って押しつけながら転動させてスクライブする。これにより、マザー基板Wの下辺部分の端材領域13を区分けする横方向の第1スクライブラインS1を加工する。
【0025】
このあと、図5に示すように、この端材領域13を第1スクライブラインS1から第1ブレイク部B(図5では省略のため図1参照)で分断し、端材領域13を外部に破棄する。このときロボットアームなどで掴んで破棄してもよいし、圧縮エアによるブローで除去してもよい。
【0026】
次いで、全てのスクライブヘッド4のカッターホイールの転動方向をY方向に切り替えたあと、図6並びに図7に示すように、4個全てのスクライブヘッド4を使用して、マザー基板Wの既に分断された下辺から、分断後には短冊状基板Waの長手方向に沿った一方の辺(上辺)を形成することになる横方向の第2スクライブ予定ラインL2まで、縦方向(Y方向)に同時にスクライブする。このときカッターホイール4は停止し、テーブル7のY方向搬送ローラによりマザー基板WをY方向に移動することによりスクライブが行われる。これにより、単位製品の実質的な右辺を形成する縦方向の第2スクライブラインS2を加工する。
【0027】
次いで、図8並びに図9に示すように、同様の方法で、4個のスクライブヘッド4でマザー基板Wの下辺から第2横スクライブ予定ラインL2まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な左辺を形成する縦方向の第3スクライブラインS3を加工する。なお、第2スクライブラインS2と第3スクライブラインS3とは逆順で加工してもよい。
【0028】
次いで、図10に示すように、第2横スクライブ予定ラインL2上(図9参照)に沿って、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールをX方向に移動させてスクライブすることによって横方向の第4スクライブラインS4を形成する。
【0029】
このあと、図11に示すように、テーブル7のY方向搬送ローラおよび搬送部DのY方向搬送ローラによりマザー基板WをY方向に移動し、第4スクライブラインSの裏面側からマザー基板Wを第1ブレイク部B(図1参照)でX方向に分断することによって、最初の短冊状基板Waが完全分断されて切り出される。
切り出された短冊状基板Waは、縦方向(Y方向)のスクライブラインS2、S3によって区分けされた4個の単位製品W1が長手方向に沿って一列に配列された長方形の形状を備え、その長手方向をX方向に向けた姿勢で切り出される。
【0030】
切り出された短冊状基板Waは、その長手方向をX方向に向けた姿勢のままで、搬送部DのY方向搬送ローラにより、基板長手方向と直交する方向(−Y方向)に搬送部Dの所定の定位置まで搬送される。搬送部Dの定位置に移送された短冊状基板Waは、続いて、その長手方向をX方向に向けた姿勢を維持したままX方向に搬送され、第2スクライブ部Cまで搬送されて単位製品W1に順次分断される。
【0031】
また、最初の短冊状基板Waが切り出されたあと、上述した手順と同様の手順を経て、マザー基板Wから次の短冊状基板Waが分断される。すなわち、最初の短冊状基板Waが切り出されたあと、図11に示すように、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールを、第3横スクライブ予定ラインL3上(図1参照)に沿ってスクライブすることによって横方向の第5スクライブラインS5を加工する。このあと、図12に示すように、第5スクライブラインS5から端材領域14を分断して外部に破棄する。
なお、第3横スクライブ予定ラインL3と、1つ前に加工した短冊状基板Waにおける第2横スクライブ予定ラインL2とを一致させることで端材領域14を設けないようにしてもよい。その場合、第5スクライブラインS5は既に形成されていることになる。
【0032】
次いで、図13並びに図14に示すように、4個全てのスクライブヘッド4を使用して、マザー基板Wの既に分断された下辺から第4横スクライブ予定ラインL4まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品W1の実質的な右辺を形成する縦方向の第6スクライブラインS6を形成する。
【0033】
次いで、図15並びに図16に示すように、4個のスクライブヘッド4でマザー基板Wの既に分断された下辺から第4横スクライブ予定ラインL4まで縦方向にスクライブすることによって、単位製品の実質的な左辺を形成する第7スクライブラインS7を加工する。
この場合も、第6スクライブラインS6と第7スクライブラインS7とは逆順に形成してもよい。
【0034】
このあと、図17に示すように、第4横スクライブ予定ラインL4(図1参照)に沿って、右端にあるスクライブヘッド4のカッターホイールでスクライブすることによって横方向の第8スクライブラインS8を形成する。
【0035】
次いで、図18に示すように、上記第8スクライブラインからマザー基板Wを第1ブレイク部B(図1参照)で分断することによって次の短冊状基板Waが完全分断され、切り出される。
【0036】
上記の手順を経て得られた短冊状基板Waでは、各単位製品W1を区分けする縦方向の第2、第3スクライブラインS2、S3(または第6、第7スクライブラインS6、S7)が、横方向の第1および第4スクライブラインS1、S4(または第5、第8スクライブラインS5、S8)の間で形成されているので、横方向のスクライブラインを乗り越えて交差することにより形成される交点が存在しなくなる。これにより、上述した交点での「カケ」や「ソゲ」の発生を著しく抑制できるとともに、「交点飛び」の現象もなくすことができる。
【0037】
また、マザー基板Wから切り出された短冊状基板Waが向きを変えることなく、その姿勢を維持したまま−Y方向に搬送され、続いて搬送部Dにより第2ブレイク部Cに向けX方向に搬送されて単位製品W1に順次分断されるので、直線運動だけの搬送が行われる。従来のように短冊状基板を90度回転させるための回転機構(ターンテーブル)を省略することができ、これにより設備コストの低減を図ることができるとともに、製造ラインのコンパクト化を図ることができる。さらに短冊状基板の回転に伴う角度の微調整作業も必要なくなる。
【0038】
上記実施例において、マザー基板WをY方向に移動させて縦方向のスクライブラインを加工したが、反対にスクライブヘッド4を支持する横梁3や支柱2を移動できるようにしてスクライブするようにしてもよい。また、横方向のスクライブラインは右端の1個のカッターホイールで加工したが、他のカッターホイールを使用して加工するようにしてもよい。
上記実施例において、短冊状基板Wa中の単位製品W1と同数のスクライブヘッド4を用意したが、生産速度を問題にしなければ、スクライブヘッドを1つだけにして、縦方向のスクライブラインを一つ一つ形成するようにしてもよい。
【0039】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の分断方法は、ガラス基板等の脆性材料からなるマザー基板から、短冊状基板を形成し、さらに単位製品に分断するスクライブ方法に利用される。
【符号の説明】
【0041】
A スクライブ部
B 第1ブレイク部
C 第2ブレイク部
D 搬送部
L1 第1横スクライブ予定ライン
L2 第2横スクライブ予定ライン
L3 第3横スクライブ予定ライン
L4 第4横スクライブ予定ライン
S1 第1スクライブライン
S2 第2スクライブライン
S3 第3スクライブライン
S4 第4スクライブライン
W マザー基板
Wa 短冊状基板
W1 単位製品
1 分断装置
4 スクライブヘッド
6 カッターホイール
7 テーブル
13、14 端材領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターホイールによるマザー基板のスクライブ方法であって、
マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、
次いで、前記第1スクライブラインと平行であって前記短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な右辺をそれぞれ形成する縦方向の第2スクライブライン、および、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な左辺をそれぞれ形成する縦方向の第3スクライブラインを形成する工程、
次いで、前記第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、前記短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程、からなるマザー基板のスクライブ方法。
【請求項2】
前記縦方向の第2スクライブライン、および、前記縦方向の第3スクライブラインは、前記短冊状基板中の単位製品の数と同数のカッターホイールを使用して、第2スクライブラインどうし、第3スクライブラインどうしを同時にスクライブする請求項1に記載のマザー基板のスクライブ方法。
【請求項3】
前記横方向の第1スクライブラインを形成する工程と第4スクライブラインを形成する工程とでは、前記マザー基板を固定して前記カッターホイールを横方向に移動することにより加工し、
前記縦方向の第2スクライブラインと第3スクライブラインとを形成する工程では、前記カッターホイールを固定し、前記マザー基板を移動することにより加工する請求項1または請求項2に記載のマザー基板のスクライブ方法。
【請求項1】
カッターホイールによるマザー基板のスクライブ方法であって、
マザー基板の第1横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、これから切り出す短冊状基板の下辺を区分けする横方向の第1スクライブラインを形成する工程、
次いで、前記第1スクライブラインと平行であって前記短冊状基板の上辺をなす位置に設定される第2横スクライブ予定ラインまで、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な右辺をそれぞれ形成する縦方向の第2スクライブライン、および、前記短冊状基板中の単位製品の数と同じ数だけ縦方向にスクライブすることによって、前記単位製品の実質的な左辺をそれぞれ形成する縦方向の第3スクライブラインを形成する工程、
次いで、前記第2横スクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることによって、前記短冊状基板の上辺を区分けする横方向の第4スクライブラインを形成する工程、からなるマザー基板のスクライブ方法。
【請求項2】
前記縦方向の第2スクライブライン、および、前記縦方向の第3スクライブラインは、前記短冊状基板中の単位製品の数と同数のカッターホイールを使用して、第2スクライブラインどうし、第3スクライブラインどうしを同時にスクライブする請求項1に記載のマザー基板のスクライブ方法。
【請求項3】
前記横方向の第1スクライブラインを形成する工程と第4スクライブラインを形成する工程とでは、前記マザー基板を固定して前記カッターホイールを横方向に移動することにより加工し、
前記縦方向の第2スクライブラインと第3スクライブラインとを形成する工程では、前記カッターホイールを固定し、前記マザー基板を移動することにより加工する請求項1または請求項2に記載のマザー基板のスクライブ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−79169(P2013−79169A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220372(P2011−220372)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
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