説明

マスクブランク及び転写用マスクの製造方法

【課題】チャージアップを生じさせず、かつ、アライメントマークの欠けを生じさせないマスクブランクの製造方法及びマスクブランクを提供する。
【解決手段】電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクであり、マスクブランクは、基板1上に、転写パターン形成用薄膜2と、転写パターン形成用薄膜2のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク膜3とがこの順に形成され、転写パターン形成用薄膜2は、電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度に導電性を有する材料とし、基板の主表面から、基板の側面又は面取り面までに亘って形成され、エッチングマスク膜3は、基板の少なくとも側面に存在せず、転写パターン形成用薄膜2が露出するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや表示デバイス(表示パネル)等の製造において使用される
マスクブランク及び転写用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の微細化は、性能、機能の向上(高速動作や低消費電力化等)や低コ
スト化をもたらす利点があり、微細化はますます加速されている。この微細化を支えてい
るのがリソグラフィー技術であり、転写用マスクは、露光装置、レジスト材料とともにキ
ー技術となっている。
近年、位相シフト技術などの超解像技術(Resolution Enhancement Technology:RET)
を適用したフォトマスクが使用されている。位相シフトマスクは、位相シフターによる光
の干渉作用を利用して転写パターンの解像度を向上できるようにしたフォトマスクである

また、通常、半導体基板を微細加工する際のフォトリソグラフィーは縮小投影露光で行
われるため、転写用マスクに形成されるパターンサイズは、半導体基板上に形成されるパ
ターンサイズの4倍程度の大きさとされている。しかし、半導体デザインルールにおける
DRAMハーフピッチ(hp)45nm以降でのフォトリソグラフィーにおいては、マス
ク上の回路パターンのサイズは露光光の波長よりも小さくなってきているため、回路パタ
ーンをデザイン通りに転写パターンが形成された転写用マスクを使用して縮小投影露光す
ると、露光光の干渉などの影響で、転写パターン通りの形状を半導体基板上のレジスト膜
に転写することができなくなる。
そこで、超解像技術を使用したマスクとして、光近接効果補正(Optical Proximity Ef
fect Correction:OPC)を行うことで、転写特性を劣化させる光近接効果の補正技術
を適用したOPCマスク等が用いれられている(特許文献1)。例えば、OPCマスクに
は回路パターンの1/2以下サイズのOPCパターン(例えば、100nm未満の線幅の
アシストバーやハンマーヘッド等)を形成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体デザインルールにおけるDRAMハーフピッチ(hp)45nm以降の微細パタ
ーンの形成には、開口数がNA>1の高NA(Hyper-NA)露光方法、例えば液浸露光を利
用する必要がある。
液浸露光は、ウエハと露光装置の最下レンズとの間を液体で満たすことで、屈折率が1
の空気の場合に比べて、液体の屈折率倍にNAを高められるため、解像度を向上できる露
光方法である。開口数(NA:Numerical Aperture)は、NA=n×sinθで表される
。θは露光装置の最下レンズの最も外側に入る光線と光軸とがなす角度、nはウエハと露
光装置の最下レンズとの間の媒質の屈折率である。
しかし、開口数がNA>1の液浸露光方法を適用し、半導体デザインルールにおけるD
RAMハーフピッチ(hp)45nm(以下hp45nmと記す)以降の微細なパターン
の形成を行おうとした場合、期待したCD精度が得られない、という課題があることが判
明した。
【0004】
その原因としては、以下で説明するマスクブランクスのチャージアップの影響がある。
マスクパターンの微細化に伴い、マスクの加工精度の要求も厳しくなっている。
特にhp45nm以降の場合においては、さらなるマスクパターンの微細化に伴い、マ
スクの加工精度の要求も厳しくなり、マスク加工は困難なものとなり得る。マスクの加工
精度を担う要因の1つとして、レジストの解像性が挙げられる。hp45nm以降のマス
ク加工におけるレジストパターンの形成においては、パターンが微細化し、複雑化するこ
とから、高精度の描画が可能なEBで行われる。EB描画を用いたレジストパターンの形
成において、チャージアップの問題が挙げられる(特許文献1参照)。これは、レジスト
のEB描画時、レジストの下地膜がチャージアップし、レジストの解像性に影響を及ぼす
。EB描画においては、チャージアップの防止として、ブランクスの表面抵抗を低くする
ことなどの工夫が必要である。
一般的なブランクスの層構造は基板/遮光膜/レジストとなっており、EB描画機のス
テージにセットされたブランクスからの接地は、通常、基板の側面又は面取り面でなされ
る(いずれの面で接地するかは描画装置のタイプによる)。基板端面(基板の側面及び面
取り面をいう、以下同様)の構造は、効率良く接地するために、基板側面までCr膜を成
膜させ(図1参照)、かつ、基板の側面及び面取り面の近傍のレジストを除去した構造と
なっている(特許文献2)。
一方、エッチングマスク(ハードマスクともいう)膜付きブランクスの層構造は、例え
ば、基板/ハーフトーン膜/Cr膜/エッチングマスク膜/レジストの構造となっている
。基板の側面又は面取り面の近傍において、エッチングマスク膜がCr膜を被覆すると、
エッチングマスク膜の表面抵抗(シート抵抗)はCr膜の表面抵抗率よりも高いため、E
B描画時、エッチングマスク膜表面がチャージアップし、レジストの解像性への影響が増
し、微細なパターンニングの妨げとなる。このため、パターンの加工制御性が低下するこ
とから、hp45nmマスクなどの微細なパターンを有するマスクに使用するエッチング
マスク膜において、EB描画によるチャージアップを抑制するには、EB描画機のステー
ジにおいて、ブランクスから効率良く接地する対策が求められる。
EB描画機のステージにおいて、ブランクスから効率的に接地するためには、接地する
エリア(基板の側面又は面取り面)ヘエッチングマスク膜の成膜を行うことなく、つまり
、基板の端面部(側面又は面取り面)へ成膜させることなく、Cr膜の露出面積を増やす
ことである。
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献3の図2に記載の遮蔽板を用いた場合、基板端面(側
面又は面取り面)へ成膜させないようにするためには、被成膜物質の回り込みを避けるた
め、遮蔽板で主表面をある程度覆う必要があり、このためエッチングマスク膜の成膜範囲
が狭くなる。そして、主表面の周縁部にエッチングマスク膜が成膜されない範囲があるた
め、エッチングマスク膜のない部分では、パターンが形成できないという別の問題が生ず
る。詳しくは、図2に示すように、基板1の主表面の周縁部付近には、マスクをウエハー
露光機(ステッパー)に搭載する際に使用するアライメントマーク5があり、基板の主表
面の周縁部付近にエッチングマスク膜3が成膜されていないと、遮光膜2で形成されるア
ライメントマークに欠けを生じ、このアライメントマークパターンの欠けが著しい場合は
露光機にマスクが搭載できなくなる問題がある。このアライメントマークに欠けを生じさ
せないためには、エッチングマスク膜の成膜範囲をさらに広げる必要があるが、特許文献
3の図2に記載の遮蔽板を用いる場合であって、マスク上のアライメントマークの位置を
考慮してエッチングマスク膜の成膜範囲を広げようとした場合には、エッチングマスク膜
が基板端面付近などに成膜されてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平8−137089号公報
【特許文献2】特開2006−184353号公報
【特許文献3】特開2002−90977号公報
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、チャージアップを生じ
させないようエッチングマスク膜を基板端面へ成膜させることなく、かつ、アライメント
マークの欠けを生じさせないようエッチングマスク膜の成膜範囲を広げることができるマ
スクブランクの製造方法及びマスクブランクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランク
であって、透明基板上に、遮光膜と、前記遮光膜のエッチングに対して耐性を有する無機
系材料からなるエッチングマスク膜がこの順に形成されたマスクブランクの製造方法であ
って、
前記エッチングマスク膜を成膜する際に、前記基板の少なくとも側面には成膜されない
ように遮蔽板にて遮蔽することを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【0008】
上記構成1に係る発明によれば、エッチングマスク膜を成膜する際に、基板の少なくと
も側面には成膜されないように遮蔽板にて遮蔽することによって、基板の少なくとも側面
にエッチングマスク膜が存在しないマスクブランクが得られる。このマスクブランクでは
、基板の側面で遮光膜を露出することで、EB描画の際、基板の側面で接地を効率良く行
うことができ、ブランクスのチャージアップを防止することが可能となりレジストの解像
性への影響を小さくすることが可能となる。
【0009】
(構成4)電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランク
であり、該マスクブランクは、透明基板上に、遮光膜と、前記遮光膜のエッチングに対し
て耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク膜がこの順に形成されたマスクブラ
ンクあって、
前記遮光膜は、電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度に導電性
を有する材料とし、かつ前記基板の少なくとも側面に前記エッチングマスク膜が存在しな
いことを特徴とするマスクブランクである。
上記構成4に係るマスクブランクによれば、基板の少なくとも側面にエッチングマスク
膜が存在しないマスクブランクが得られ、このマスクブランクでは、基板の側面で遮光膜
を露出することで、EB描画の際、基板の側面で接地を効率良く行うことができ、ブラン
クスのチャージアップを防止することが可能となりレジストの解像性への影響を小さくす
ることが可能となる。
【0010】
(構成2)前記エッチングマスク膜の成膜範囲は、前記基板の少なくとも側面よりも内側
であって、アライメントマークの欠けを生じさせないようアライメントマークの外側まで
成膜されることを特徴とするものである。
このように構成すれば、上記構成1又は4記載の作用効果に加え、エッチングマスク膜
を基板端面(基板の側面又は面取り面)へ成膜させることなく、エッチングマスク膜の成
膜範囲を広げることができる。このため、エッチングマスク膜のチャージアップを防止す
ることが可能となることに加え、成膜範囲を広げることができるためアライメントマーク
を確実に形成することができる。
【0011】
本発明において、EB描画機のステージにおいてブランクスの接地を行う箇所が基板の
面取り面である場合にあっては、基板1の主表面の最も外側の辺Bと平行に一定距離内側
の線B’の位置、までエッチングマスク膜の成膜範囲を広げることが好ましい(図1参照
)。前記B−B’間の一定距離は2mm以内であることが、アライメントマークを確実に
形成するために好ましい。
本発明において、EB描画機のステージにおいてブランクスの接地を行う箇所が基板の
側面である場合にあっては、基板1の側面Aと平行に一定距離内側の線A’の位置、まで
エッチングマスク膜の成膜範囲を広げることができる(図1参照)。前記A−A’間の一
定距離は1mm以内であることが、アライメントマークを確実に形成するために好ましい

本発明においては、エッチングマスク膜の成膜範囲は、最も好ましくは、図1に示すよ
うに、基板1の主表面の最も外側の辺B(主表面の端B、主表面と面取り面との交線B)
まで広げることが好ましい。この態様によると、この態様より成膜範囲が狭い場合に比べ
、アライメントマークを更に確実に形成できるため好ましい。また、この態様によると、
基板の側面及び面取り面にエッチングマスク膜が成膜されていないので、基板の側面又は
面取り面のいずれかで接地を行うことができ、描画機の接地のタイプによらずいずれの描
画機についても適用できるマスクを提供できる。
【0012】
(構成3)前記遮蔽板は、弾力性のある材料で形成され、前記基板に接触又は近接させて
遮蔽することを特徴とするものである。
このように構成すれば、エッチングマスク膜を基板端面(基板の側面又は面取り面)へ
成膜させることなく、エッチングマスク膜の成膜範囲を広げることができる。
本発明において、 弾力性のある材料としては、ゴム材料の他、フッ素系樹脂(例えば
テフロン(登録商標))などが好適に使用できる。
本発明において、遮蔽板の形態としては、例えば、主表面の面積と同じ開口を有するゴ
ム材料からなるシート(板状体)を、基板に押し当てて接触又は密着させて遮蔽する。遮
蔽板の開口は拡大・縮小や変形が可能である。また、基板に遮蔽板を僅かな間隙で近接さ
せて遮蔽することが可能である。
本発明において、遮蔽板は、例えば、基板の外周に亘って、基板の側面及び面取り面、
と接触又は僅かな間隙で近接し、これらの部分を遮蔽すると共に、主表面はその端Bまで
遮蔽しない構造とすることができる(図3参照)。
【0013】
(構成5)上述した本発明に係るマスクブランクにおけるエッチングマスク膜の上に、電
子線描画用のレジスト層を形成する工程と、
前記電子線描画用のレジスト層に、電子線描画を施し、現像して、レジストパターンを
形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記エッチングマスク膜をエッチングして、レ
ジストパターンを前記エッチングマスク膜に転写して、エッチングマスク膜のパターンを
形成する工程と、
前記レジストパターン及び前記エッチングマスク膜のパターンをマスクとして、あるい
は、前記エッチングマスク膜のパターンをマスクとして、前記遮光膜をエッチングして、
前記パターンを前記遮光膜に転写して、遮光膜のパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
上記構成5に係る発明によれば、基板の側面や面取り面にエッチングマスク膜が存在し
ないマスクブランク、即ち、基板の側面や面取り面で遮光膜が露出したマスクブランクを
用いているので、EB描画の際、基板の側面や面取り面で接地を効率良く行うことができ
、ブランクスのチャージアップを防止することが可能となりレジストの解像性への影響を
小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エッチングマスク膜が前記基板の側面又は面取り面に成膜されないよ
うに遮蔽することにより、遮光膜を露出することで、EB描画の際、接地を効率良く行う
ことができ、ブランクスのチャージアップを防止することが可能となりレジストの解像性
への影響を小さくすることが可能となる。これに加え、エッチングマスク膜を基板端面へ
成膜させることなく、エッチングマスク膜の成膜範囲を広げることができる。このため、
エッチングマスク膜のチャージアップを防止することが可能となることに加え、成膜範囲
を広げることができるためアライメントマークを確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクの一例を示す。本例において、
マスクブランクは、バイナリ用のマスクブランクであり、透明基板1、遮光性膜2、エッ
チングマスク膜3、レジスト膜4をこの順で備える。
【0016】
遮光性膜2としては、金属を含む金属膜を用いることができる。金属を含む金属膜とし
ては、クロム、タンタル、モリブデン、チタン、ハフニウム、タングステンや、これらの
元素を含む合金、又は上記元素や上記合金を含む材料(例えば、上記元素や上記合金を含
む材料に加え、酸素、窒素、珪素、炭素の少なくとも一つを含む膜)からなる膜が挙げら
れる。
遮光性膜2としては、例えば、クロム単体や、クロムに酸素、窒素、炭素、水素からな
る元素を少なくとも1種を含むもの(Crを含む材料)、などの材料を用いることができ
る。遮光性膜の膜構造としては、上記膜材料からなる単層、複数層構造とすることができ
る。また、異なる組成においては、段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化
した膜構造とすることができる。
具体的な遮光性膜2は、窒化クロム膜(CrN膜)及び炭化窒化クロム膜(CrCN膜
)からなる遮光層と、クロムに酸素及び窒素が含有されている膜(CrON膜)からなる
反射防止層との積層膜である。窒化クロム膜は、窒化クロム(CrN)を主成分とする層
であり、例えば10〜20nmの膜厚を有する。炭化窒化クロム膜は、炭化窒化クロム(
CrCN)を主成分とする層であり、例えば25〜60nmの膜厚を有する。クロムに酸
素及び窒素が含有されている膜(CrON膜)は、例えば15〜30nmの膜厚を有する

【0017】
本発明において、遮光性膜2としては、電子線描画しパターニングする際にチャージア
ップしない程度に導電性を有する材料が好ましい。
本発明において、遮光性膜2は、図1に示すように、基板の主表面から、基板の側面、
又は、基板の面取り面までに亘って、形成する。
【0018】
エッチングマスク膜3としては、例えば、珪素を含む珪素含有膜を用いることができる
。珪素含有膜としては、珪素膜や、珪素とクロム、タンタル、モリブデン、チタン、ハフ
ニウム、タングステンの金属を含む金属シリサイド膜、さらに、珪素膜や金属シリサイド
膜に、酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含む膜が挙げられる。エッチングマスク膜3
としては、例えば、遷移金属シリサイド酸化物、遷移金属シリサイド窒化物、遷移金属シ
リサイド酸窒化物、遷移金属シリサイド酸化炭化物、遷移金属シリサイド窒化炭化物又は
遷移金属シリサイド酸窒化炭化物を主成分とする膜を用いることができる。エッチングマ
スク膜3としては、例えば、モリブデン系(MoSiON、MoSiN、MoSiO等)
、タングステン系(WSiON、WSiN、WSiO等)、シリコン系(SiN、SiO
N等)、クロム系(CrO、CrF等)、などの膜を用いることができる。例えば、エッ
チングマスク膜3は、MoSiN、SiONであることが好ましい。
【0019】
本発明においては、エッチングマスク膜3の成膜範囲は、最も好ましくは、図1に示す
ように、基板1の主表面の最も外側の辺B(主表面の端B、主表面と面取り面との交線B
)まで広げることが好ましい。
【0020】
本発明において、マスクブランクには、フォトマスクブランク、位相シフトマスクブラ
ンク、反射型マスクブランク、インプリント用転写プレート基板も含まれる。また、マス
クブランクには、レジスト膜付きマスクブランク、レジスト膜形成前のマスクブランクが
含まれる。位相シフトマスクブランクには、ハーフトーン膜上にクロム系材料等の遮光性
膜が形成される場合を含む。また、反射型マスクブランクの場合は、多層反射膜上、又は
多層反射膜上に設けられたバッファ層上に、転写パターンとなるタンタル系材料やクロム
系材料の吸収体膜が形成される構成、インプリント用転写プレートの場合には、転写プレ
ートとなる基材上にクロム系材料等の転写パターン形成用薄膜が形成される構成を含む。
本発明において、マスクブランクには、透明基板上に、転写パターン形成用薄膜と、前記
転写パターン形成用薄膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチン
グマスク膜がこの順に形成されたマスクブランクが含まれる。この場合、前記転写パター
ン形成用薄膜は、電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度に導電性
を有する材料とする。また、上記で説明した内容は、「遮光膜」を「転写パターン形成用
薄膜」に置き換えて適用できる。
本発明において、マスクには、フォトマスク、位相シフトマスク、反射型マスク、イン
プリント用転写プレートが含まれる。マスクにはレチクルが含まれる。位相シフトマスク
には、位相シフタが基板の彫り込みによって形成される場合を含む。
【0021】
本発明において、基板としては、合成石英基板、ソーダライムガラス基板、無アルカリ
ガラス基板、低熱膨張ガラス基板などが挙げられる。
【0022】
本発明において、クロム系薄膜のドライエッチングには、塩素系ガス、又は、塩素系ガ
スと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いることが好ましい。
この理由は、クロムと酸素、窒素等の元素とを含む材料からなるクロム系薄膜に対しては
、上記のドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、ドライエッ
チング速度を高めることができ、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができ、断面
形状の良好な遮光性膜パターンを形成することができるからである。ドライエッチングガ
スに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl2、SiCl4、HCl、CCl、CH
Cl等が挙げられる。
【0023】
本発明において、珪素を含む珪素含有膜や、金属シリサイド系薄膜、のドライエッチン
グには、例えば、SF、CF、C、CHF等の弗素系ガス、これらとHe、
、N、Ar、C、O等の混合ガス、或いはCl、CHCl等の塩素
系のガス又は、これらとHe、H、N、Ar、C等の混合ガスを用いることが
できる。
【0024】
本発明において、位相シフト膜としては、例えば、珪素を含む珪素含有膜を用いること
ができる。珪素含有膜としては、珪素膜や、珪素とクロム、タンタル、モリブデン、チタ
ン、ハフニウム、タングステンの金属を含む金属シリサイド膜、さらに、珪素膜や金属シ
リサイド膜に、酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含む膜が挙げられる。位相シフト膜
としては、例えば、遷移金属シリサイド酸化物、遷移金属シリサイド窒化物、遷移金属シ
リサイド酸窒化物、遷移金属シリサイド酸化炭化物、遷移金属シリサイド窒化炭化物又は
遷移金属シリサイド酸窒化炭化物を主成分とする膜を用いることができる。位相シフト膜
5としては、例えば、モリブデン系(MoSiON、MoSiN、MoSiO等)、タン
グステン系(WSiON、WSiN、WSiO等)、シリコン系(SiN、SiON等)
、クロム系(CrO、CrF等)、などのハーフトーン膜を用いることができる。
位相シフト膜としては、例えば、主に露光光の位相を制御する位相調整層と、主に露光
光の透過率を制御する機能を有すると透過率調整層との2層からなるハーフトーン膜を用
いることができる
【0025】
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
(実施例1及び比較例1、2)
(マスクブランクの作製)
図2を参照して、本発明の第1実施例によるフォトマスクの製造方法について説明する

まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6イン
チ×0.25インチの透光性基板1を得た。
次いで、透光性基板1の上に、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが
配置されたインラインスパッタ装置を用いて、CrN膜、CrC膜、及びCrON膜から
なる遮光性クロム膜2を成膜した。具体的には、まず、アルゴン(Ar)と窒素(N
の混合ガス雰囲気(Ar:N=72:28[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反
応性スパッタリングを行うことにより、膜厚15[nm]のCrN膜を成膜した。続けて
、アルゴン(Ar)とメタン(CH)の混合ガス雰囲気(Ar:CH=96.5:3
.5[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、
CrN膜の上に、膜厚20[nm]のCrC膜を成膜した。続けて、アルゴン(Ar)と
一酸化窒素(NO)の混合ガス雰囲気(Ar:NO=87.5:12.5[体積%]、圧
力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、CrC膜の上に、膜
厚が20[nm]のCrON膜を成膜した。以上のCrN膜、CrC膜、及びCrON膜
は、インラインスパッタ装置を用いて連続的に成膜されたものであり、これらCrN、C
rC、及びCrONを含んでなる遮光性クロム膜2は、その厚み方向に向かって当該成分
が連続的に変化して構成されている。
次いで、遮光性クロム膜2の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の混合ター
ゲット(Mo:Si=1:9[原子%])を用いて、アルゴン(Ar)と窒素(N)の
混合ガス雰囲気(Ar:N=10:90[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応
性スパッタリングを行うことにより、膜厚が20[nm]のMoSiN系の無機系エッチ
ングマスク用膜3を成膜した。
この際、実施例1においては、主表面の面積と同じ開口を有するシリコンゴム材料から
なるシート(板状体)を、基板に押し当てて密着させて、基板の側面及び面取り面を遮蔽
して、エッチングマスク用膜3を成膜した。これにより、エッチングマスク膜3の成膜範
囲は、図1に示すように、基板1の主表面の最も外側の辺Bまで広げることができた。
また、比較例においては、特許文献3の図2に記載の遮蔽板を用いて、エッチングマス
ク用膜3を成膜した。しかし、マスク上のアライメントマークの位置を考慮してエッチン
グマスク膜の成膜範囲を広げようとした場合には、エッチングマスク膜が基板の側面又は
面取り面に成膜されてしまった(比較例1)。また、エッチングマスク膜が基板の側面又
は面取り面に成膜されないようにした場合には、エッチングマスク膜の成膜範囲は狭く(
例えばB’より内側)なってしまった(比較例2)。
次いで、無機系エッチングマスク用膜3の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジ
レジスト4(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピン
コート法により膜厚が200[nm]となるように塗布した(図2(d)参照)。
以上により、透光性基板1上に、Cr系材料からなる遮光性クロム膜2と、MoSiN
系材料からなる無機系エッチングマスク用膜3と、レジスト4が順次形成されたマスクブ
ランクを準備した。
尚、遮光性クロム膜2を形成した段階における試料についてシート抵抗を測定したとこ
ろ、120Ω/□であった。
また、エッチングマスク用膜3まで形成した段階における試料についてシート抵抗を測
定したところ、170Ω/□であった。
【0026】
(マスクの作製)
次いで、レジスト4に対し、日本電子社製のJBX9000によって電子線描画し、現
像して、レジストパターンを形成した。この際、実施例1及び比較例1、2においては、
EB描画機のステージにおいて、ブランクスの側面又は面取り面から接地した。
次いで、レジストパターンをマスクにして、無機系エッチングマスク用膜3を、SF
とHeの混合ガスを用い、圧力:5[mmTorr]の条件にてイオン性主体のドライエ
ッチングを行い、無機系エッチングマスクパターンを形成した。
次いで、レジストパターンを除去した後、無機系エッチングマスクパターンのみをマス
クにして、遮光性クロム膜2を、ClとOの混合ガスを用い、圧力:3mmTorr
の条件にて、イオン性を限りなく高めた(=イオンとラジカルがほぼ同等となる程度まで
イオン性を高めた)ラジカル主体のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターンを形
成した。
次いで、無機系エッチングマスクパターンを剥離し、所定の洗浄を施してフォトマスク
10を得た。
【0027】
(評価)
上記で得られたマスクを評価した。
その結果、実施例1に係るマスクでは、マスクの作製工程で、チャージアップは見られ
ず、チャージアップが原因と考えられるCD精度の低下は認められなかった。これにより
、hp45nmマスクに見られる微細なパターンを高精度に加工することが可能となるこ
とを確認した。また、アライメントマーク(図2参照)は欠けることなく、アライメント
マークを確実に形成することができた。
比較例1に係るマスクでは、マスクの作製工程で、チャージアップが認められ、チャー
ジアップが原因と考えられるCD精度の低下は認められた。
比較例2に係るマスクでは、アライメントマーク(図2参照)の欠けがあり、アライメ
ントに支障をきたした。
【0028】
(実施例2)
実施例1おいて無機系エッチングマスク用膜3としてMoSiNの替わりにSiONを
成膜したこと以外は実施例1と同様とした。
同様の評価の結果は、実施例1と同様であった。
【0029】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に
記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能
であることは、当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技
術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るマスクブランクの一例を示す部分断面である。
【図2】アライメントマークの欠けの問題を説明するための部分平面図である。
【図3】本発明に係る遮蔽板に一態様を説明するための部分断面である。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 遮光性膜
3 エッチングマスク膜
4 レジスト膜
5 アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクであり、該マスクブランクは、基板上に、転写パターン形成用薄膜と、前記転写パターン形成用薄膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク膜とがこの順に形成されたマスクブランクあって、
前記転写パターン形成用薄膜は、電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度に導電性を有する材料とし、前記基板の主表面から、基板の側面又は面取り面までに亘って形成され、
前記エッチングマスク膜は、前記基板の少なくとも側面に存在せず、前記転写パターン形成用薄膜が露出するように形成されていることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記マスクブランクは、多層反射膜上又は多層反射膜上に設けられたバッファ層上に、前記転写パターン形成用薄膜が形成された反射型マスクブランクであることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記転写パターン形成用薄膜は、タンタル系材料又はクロム系材料からなる吸収体膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記エッチングマスク膜のシート抵抗は、前記転写パターン形成用薄膜のシート抵抗よりも高いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
電子線描画の際に、基板の側面又は面取り面で接地するように前記転写パターン形成用薄膜を露出させることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記エッチングマスク膜は、珪素膜、又は、珪素とクロム、タンタル、モリブデン、チタン、ハフニウム、タングステンの金属とを含む金属シリサイド膜、又は、前記珪素膜又は金属シリサイド膜に、酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含む膜であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記マスクブランクは、レジスト膜付きマスクブランクであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクであって、基板上に、転写パターン形成用薄膜と、前記転写パターン形成用薄膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク膜とがこの順に形成されたマスクブランクの製造方法であって、
前記転写パターン形成用薄膜は、基板の主表面から基板の側面又は面取り面までに亘って形成され、
前記エッチングマスク膜を成膜する際に、前記基板の少なくとも側面には成膜されず、前記転写パターン形成用薄膜が露出するように遮蔽板にて遮蔽することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
前記マスクブランクは、多層反射膜上又は多層反射膜上に設けられたバッファ層上に、前記転写パターン形成用薄膜が形成された反射型マスクブランクであることを特徴とする請求項8記載のマスクブランク。
【請求項10】
前記転写パターン形成用薄膜は、タンタル系材料又はクロム系材料からなる吸収体膜であることを特徴とする請求項8又は9記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記エッチングマスク膜の成膜範囲は、前記基板の少なくとも側面よりも内側であって、転写用マスクとしたときにエッチングマスク膜を利用して前記転写パターン形成用薄膜に形成されるアライメントマークの欠けを生じさせないようアライメントマークの外側まで成膜されることを特徴とする請求項8乃至10の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項12】
前記遮蔽板は、弾力性のある材料で形成され、前記基板に接触又は近接させて遮蔽することを特徴とする請求項8乃至11の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項13】
前記転写パターン形成用薄膜は、電子線描画しパターニングする際にチャージアップしない程度に導電性を有する材料とし、
前記エッチングマスク膜のシート抵抗は、前記転写パターン形成用薄膜のシート抵抗よりも高いことを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項14】
電子線描画の際に、前記転写パターン形成用薄膜が露出した基板の側面又は面取り面で接地することを特徴とする請求項8乃至13の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至7記載のマスクブランクにおけるエッチングマスク膜の上に、電子線描画用のレジスト層を形成する工程と、
前記電子線描画用のレジスト層に、電子線描画を施し、現像して、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記エッチングマスク膜をエッチングして、レジストパターンを前記エッチングマスク膜に転写して、エッチングマスク膜のパターンを形成する工程と、
前記レジストパターン及び前記エッチングマスク膜のパターンをマスクとして、あるいは、前記エッチングマスク膜のパターンをマスクとして、前記転写パターン形成用薄膜をエッチングして、前記パターンを前記転写パターン形成用薄膜に転写して、転写パターン形成用薄膜のパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238014(P2012−238014A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161205(P2012−161205)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2007−287272(P2007−287272)の分割
【原出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】