説明

マスト細胞安定化剤

【課題】マスト細胞(肥満細胞)は炎症誘発性物質に富んだ顆粒を持ち、活性化されてその顆粒が放出され、一連の生体防御反応が惹起されるが、その無秩序な活性化は、喘息、アレルギーなど様々な疾患の一因と考えられている。炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つマスト細胞を制御する技術の開発が求められている。
【解決手段】ガレクチン-9や-8、特には安定化ガレクチン-9や-8、又はガレクチン-9誘導因子は、マスト細胞の顆粒放出を強力に抑制する。ガレクチン-8や-9及びその改変体(安定化ガレクチン-8や-9)、並びにガレクチン-9誘導因子から選択されたものを有効成分とするマスト細胞安定化剤、並びに該安定化作用を利用した病気又は疾患の治療・予防用剤並びに治療・予防法が提供される。制癌技術、顆粒放出抑制アッセイ系も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレクチン-8及びその改変体(安定化ガレクチン-8)、そしてガレクチン-9及びその改変体(安定化ガレクチン-9)並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分とするマスト細胞(肥満細胞)安定化剤、並びに該マスト細胞安定化作用を利用した病気又は疾患の治療及び/又は予防用剤並びにその活性利用の治療及び/又は予防法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガレクチンはβ-ガラクトシドに親和性を持ち、一次配列上に保存された領域を持つレクチンファミリーである。現在までに、10種類以上の哺乳類ガレクチンが発見され、細胞-細胞接着又は細胞-細胞外基質接着、細胞活性化、細胞増殖、アポトーシスなど多彩な生物活性が報告されている。
【0003】
マスト細胞(mast cell; 肥満細胞)は粘膜下組織や結合組織などに存在する免疫細胞で、細胞内にヒスタミンやセロトニンなどの炎症誘発性物質に富んだ顆粒を持つ。これらの顆粒が免疫グロブリンE (IgE)とそれに対する抗原刺激で放出されると、血管透過性の亢進、局所への免疫細胞の集積と活性化、発熱などの一連の生体防御反応が惹起され、寄生虫などの体内に侵入した異物が排除される。一方、その無秩序な活性化は、喘息、アレルギーをはじめとする様々な疾患の一因と考えられている。
このようにマスト細胞は、造血幹細胞由来の細胞と考えられており、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ細胞である。
非特許文献1及び2を参照。
【0004】
ガレクチン-8 (galectin-8: Gal-8)は、インシュリン受容体基質に対する抗体を使用するλZAPの発現ライブラリーのスクリーニングの過程で偶然に発見され、クローン化して得られたもの(非特許文献3)で、ラット肝臓のcDNAライブラリーからクローン化されたが、ヒトGal-8をコードするcDNAは、ヒト脳海馬のcDNAライブラリーからラット全長cDNAをプローブとして単離されている(非特許文献4: GenBank/EMBL accession no. X91790)。その後の研究により、Gal-8は、ガレクチン-4, -6, -9及び-12などの他のタンデムリピート型ガレクチン類よりは、より広い範囲の哺乳動物の組織(例えば、肝臓、心臓、筋肉、腎臓、脳など)に分布していることが見出されている。Gal-8は、強力な血球凝集活性を示し、ラクトシルアガロースに結合する。Gal-8のN-末端側CRD及びC-末端側CRDはおおよそ40%のアミノ酸の同一性を有している。その生物学的な機能に関しては、Gal-8はヒトカルシノーマ細胞がインテグリン被覆したプレートに接着するのを阻害し、該細胞のアポトーシス誘導することが示されている(非特許文献5)。Gal-8は結腸癌の移動に影響を及ぼすことも示されている(非特許文献6)。Gal-8 mRNAは、肺で高く発現しているとの報告や、その発現量は減るが、肝、腎、脾、後脚、心筋等の各組織でも発現しているとの報告もある。さらに、ヒト前立腺癌抗原であるPCTA-1とタンパク質レベルで高い相同性を示すとの報告もある。
【0005】
最近、本発明者等のグループは、ヒトGal-8が、強力な好中球接着誘導能を有すること、Gal-8のC末端CRDがインテグリンαMに結合し、一方Gal-8のN末端CRDがproMMP-9に結合し、さらにproMMP-9を活性化し、活性型MMP-9産生を促進すること、またGal-8のC末端CRDは例えば好中球などにおけるスーパーオキシド産生を促進する活性を有し、それはラクトースなどの糖アナログにより阻害することができることなどを見出し、例えばGal-8と好中球との相互作用(Gal-8とインテグリンαMとの相互作用やGal-8とproMMP-9との相互作用、proMMP-9の活性化を含む)に関連する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で様々な試薬、方法などに係わる技術の提供を行っている(特許文献1)。さらに、安定化Gal-8(Gal-8改変体)及びその用途についてPCT/JP2005/009211 (2005.05.13) 〔特許文献2〕に開示を行っている。
【0006】
本発明者等のグループはヒトT細胞由来好酸球遊走因子のクローニングに成功し、それによりそれが Tureci 等が報告したヒトガレクチン-9 (human galectin-9: hGal-9、非特許文献7)のバリアント、エカレクチンであることを見出した(非特許文献8)。さらに、本発明者等のグループはエカレクチンとGal-9は同一の物質であることを明らかにし、ヒトのGal-9はそのリンクペプチドの長さの違いにより、ショートタイプ、メディアムタイプ、ロングタイプの3 種類があることをも明らかにした(非特許文献9)。Gal-9含有医薬が、抗腫瘍剤(抗ガン剤)、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤、抗炎症剤及び副腎皮質ステロイドホルモン代替用剤として有望であることは、WO 2004/064857 (2004.08.05) 〔特許文献3〕に開示してある。Gal-9は、活性化T細胞にアポトーシスを誘導することも報告されている。さらに、安定化Gal-9(Gal-9改変体)及びその用途についてPCT/JP2005/006580 (2005.03.29) 〔特許文献4〕に開示を行っている。
【0007】
【特許文献1】特開2003-246749
【特許文献2】PCT/JP2005/009211 (2005.05.13)
【特許文献3】WO 2004/064857 (2004.08.05)
【特許文献4】PCT/JP2005/006580 (2005.03.29)
【非特許文献1】Molecular Medicine, Vol.42 (No.10), 「(特集)マスト細胞とアレルギー」(プランナー 斎藤博久)、中山書店
【非特許文献2】アレルギー科、第17巻第3号、科学評論社
【非特許文献3】Hadari et al., J. Biol. Chem., 270: 3447-3453 (1995)
【非特許文献4】Hadari et al., Trends in Glycoscience and Glycotechnology, Vol.9, No.45, pp.103-112 (1997)
【非特許文献5】Hadari et al., J. Cell Sci., 113: 2385-2397 (2000)
【非特許文献6】N.Nagym et al., Gut, 50: 392-401 (2002)
【非特許文献7】Tureci O. et al., J Biol Chem., Mar. 7, 1997, 272(10):6416-22
【非特許文献8】Matsumoto R. et al., J Biol Chem., 1998, 273:16976-84
【非特許文献9】Matsushita N. et al., J Biol Chem., 2000, 275:8355-60
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マスト細胞(肥満細胞)は、その細胞内に多くの顆粒を持っており、該顆粒の中にはヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエン、ヘパリンなどの様々な化学伝達物質(chemical mediators)と呼ばれる物質が含まれており、それは刺激によりマスト細胞が活性化されると細胞外へ放出される(脱顆粒)。放出された化学伝達物質は、細胞や組織の受容体に結合するなどして様々な生物活性を誘導する。また、活性化されたマスト細胞は、TNFα、IL-8などのサイトカインを産生して、それを放出する。そして放出されたサイトカインは、免疫細胞などを誘引したり、活性化せしめて、様々な生理反応を誘導する。例えば、顆粒の中に含まれる化学伝達物質は、協調して、毛細血管を拡張させて血液中から水分や細胞成分が漏れ出やすくするとか、感覚神経を敏感にするとか、平滑筋(例えば、気管や消化管にある筋肉)を収縮させたり、粘液腺に作用して粘液の産生や分泌を促進する。こうしたことから異常なマスト細胞の活性化は、アレルギーの典型的な症状である、毛細血管の拡張による結膜の充血、血管から水分が漏れ出て組織に入っていくことで粘膜がはれて鼻の空気の通路が狭まって鼻づまりを生じたり、粘液の過剰な分泌で鼻水がでたりとか、また、神経が過敏になると、かゆみがでたり、止まらない、くしゃみが出たり、止まらないなど、平滑筋の急激な収縮で喘息の発作となったり、下痢となることにつながっている。サイトカインは、局所に白血球を呼び込んで炎症を起こしたり、ヘルパーT細胞を活性化したり、特定の細胞(例えば、Th2細胞)を優位にしたり、IgE産生に関わるB細胞に作用するなどの連鎖を誘導する。
したがって、無秩序なマスト細胞活性化を抑制するなどコントロールして、マスト細胞を安定化することは、喘息、アレルギーをはじめとする様々な疾患の予防や治療に役立つと考えられている。
本発明は、マスト細胞(又は肥満細胞)安定化剤、該マスト細胞安定化作用を利用してマスト細胞の無秩序な活性化に起因する病気又は疾患治療及び/又は予防剤並びにその治療及び/又は予防法、さらにはアレルギー疾患などの異常なマスト細胞活性化に関連する疾患を治療及び/又は予防するための薬剤並びに治療及び/又は予防法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))が、マスト細胞(肥満細胞)におけるこの顆粒放出を強力に抑制することを見出すことに成功した。当該マスト細胞に対する顆粒放出抑制効果は濃度依存的であることが認められ、さらに当該Gal-9及びGal-8(特には安定化ガレクチン-9 及び安定化ガレクチン-8)は強力なマスト細胞安定化剤(スタビライザー)であることが確認された。さらに、それらは、細胞にIgEを加えた後で作用させても当該抑制効果は保持され、このことから、花粉症などで想定される「プライミング」された状態のマスト細胞にも効果を有することが暗示されている。
ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、又はガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))をマスト細胞に作用させると、細胞内に一過的なカルシウムイオンの上昇を起こすが、これは顆粒放出を刺激しない。一方、この刺激後にIgEとそれに対する抗原を加えると、本来起こるはずの細胞内カルシウムイオンの上昇は見られない。これらの結果より、ガレクチン-9または-8の効果は顆粒放出に必要な細胞内カルシウムシグナルを途断することに起因していると考えられる。
【0010】
また、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))はIgEと抗原刺激で起こる浮腫の抑制に有用であり、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))はIgEと抗原刺激で起こる浮腫の抑制に有用と考えられる。
またガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))を喘息モデルのモルモットなどの動物に投与した場合、抗原感作によって惹起される即時性の気道抵抗上昇が抑制されるという活性を示す。そして、ガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))を喘息モデルのモルモットなどの動物に投与して、抗原感作によって惹起される即時性の気道抵抗上昇を抑制せしめる活性を得ることもできると思われる。
かくして、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))並びにガレクチン-9誘導因子、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))は生体内においてもマスト細胞の顆粒放出反応を抑制する活性を発揮するものと考えられ、マスト細胞の活性化が一因である疾患の治療薬として有用であることが示唆されるのである。本発明の該対象疾患は喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎などを含むマスト細胞の活性化が発症に関与すると考えられている疾患などが挙げられる。また制癌などにおいてはマスト細胞の活性化状態が良好な予後に相関していると言われている。ガレクチン-9(または-8)あるいはガレクチン-9誘導因子による顆粒放出抑制アッセイ系は、その抑制を阻害してマスト細胞を活性化させる物質の探索目的に使用可能である。
【0011】
本発明では、次なる態様が提供される。
〔1〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞安定化剤。
〔2〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸を有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞安定化剤。
〔3〕マスト細胞に、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを接触せしめ、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞安定化法。
〔4〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸をマスト細胞に遺伝子導入することを特徴とする安定化マスト細胞調製法。
〔5〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞の脱顆粒抑制剤。
〔6〕マスト細胞に、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを接触せしめ、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞の脱顆粒抑制法。
〔7〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞を安定化することを特徴とするマスト細胞の活性化が発症に関与する病気又は疾患の治療及び/又は予防剤。
〔8〕病気又は疾患が、アレルギー疾患、免疫性疾患及び炎症性疾患からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔7〕記載の治療及び/又は予防剤。
〔9〕病気又は疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎及びその他のマスト細胞の無秩序な活性化が発症に関与する病気又は疾患からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔7〕記載の治療及び/又は予防剤。
〔10〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞の活性化が発症に関与する病気又は疾患の治療及び/又は予防剤。
〔11〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞を安定化することを特徴とする制癌剤。
〔12〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下にマスト細胞と試験物質とを接触せしめ、マスト細胞からの顆粒放出抑制が阻害されるか否かを指標とすることを特徴とするマスト細胞活性化物質のアッセイ法。
〔13〕ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下にマスト細胞と試験物質とを接触せしめ、マスト細胞の活性化が抑制されるか否かを指標とすることを特徴とするマスト細胞活性化物質のアッセイ法。
【発明の効果】
【0012】
本発明で、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒の放出(脱顆粒)を抑制する技術が、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、並びにガレクチン-9誘導因子、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))からなる群から選択されたものを使用することで可能となった。かくして、マスト細胞安定化技術が提供され、マスト細胞の活性化が一因である疾患の治療及び/又は予防技術が開発できる。無秩序なマスト細胞活性化は、アレルギー疾患の原因とも考えられており、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎などを含むマスト細胞の活性化が発症に関与する病気又は疾患を効果的に治療及び/又は予防し得る薬剤を提供できるし、その治療法の開発が可能となる。制癌などにおいてはマスト細胞の活性化状態が良好な予後に相関していると言われているので、制癌技術の開発に有用であり、また、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、並びにガレクチン-9誘導因子、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))からなる群から選択されたものを使用する顆粒放出抑制アッセイ系は、その抑制を阻害してマスト細胞を活性化させる物質の探索目的に使用可能である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき説明するに、本発明のマスト細胞(mast cell; 肥満細胞)安定化剤、並びに該マスト細胞安定化作用を利用した病気又は疾患の治療及び/又は予防用剤並びにマスト細胞の制御されない活性化に起因した病的症状及び/又は疾患(異常)の治療剤及び/又は予防剤が有効成分として含有するガレクチン-8 (galectin-8: Gal-8)とは、例えば、Gal-8産生能を有するヒトの白血球や培養株化細胞(例えば、ヒト類表皮癌細胞系細胞(A431)など)から産生される天然型ガレクチン-8 (native Gal-8 or naturally-occurring Gal-8)、及び、前記細胞由来のGal-8をコードする遺伝子を遺伝子組換え技術により動物細胞や大腸菌などの微生物に組み込んで得られる組換え型ガレクチン-8 (recombinant galectin-8: rGal-8)などを意味し、その何れも有利に用いることができる。本発明に於いては、高度に精製した高純度Gal-8は言うに及ばず、所期の目的を達成し得る限り、医薬として許容し得る程度の不純物を含む粗な状態のGal-8も好適に使用できる。又、本発明の薬剤は非経口的又は経口的に投与されてよく、比較的高純度のものが好ましい筋肉内注射や静脈内注射ばかりでなく、必ずしも最高純度の高純度Gal-8を用いる必要性のない、比較的低純度のGal-8であっても不都合なく使用することができる経口であることも好ましい。このようなGal-8を用いる場合には、より低コストで本発明の薬剤を製造できることとなる。また、当該Gal-8として、2種以上のGal-8混合物を用いることも可能である。尚、当該Gal-8は、抗原性の面から見て、ヒトGal-8 (hGal-8)が有利に使用できる。
【0014】
同様に、本発明のマスト細胞(mast cell; 肥満細胞)安定化剤、並びに該マスト細胞安定化作用を利用した病気又は疾患の治療及び/又は予防用剤並びにマスト細胞の制御されない活性化に起因した病的症状及び/又は疾患(異常)の治療剤及び/又は予防剤で、有効成分として含有するガレクチン-9 (galectin-9: Gal-9)とは、例えば、Gal-9産生能を有するヒトの白血球や培養株化細胞から産生される天然型ガレクチン-9 (native Gal-9 or naturally-occurring Gal-9)、及び、前記白血球や特定の培養株化細胞由来のGal-9をコードする遺伝子を遺伝子組換え技術により動物細胞や大腸菌などの微生物に組み込んで得られる組換え型ガレクチン-9 (recombinant galectin-9: rGal-9)などを意味し、その何れも有利に用いることができる。本発明に於いては、高度に精製した高純度Gal-9は言うに及ばず、所期の目的を達成し得る限り、医薬として許容し得る程度の不純物を含む粗な状態のGal-9も好適に使用できる。又、本発明の薬剤は非経口的又は経口的に投与されてよく、比較的高純度のものが好ましい筋肉内注射や静脈内注射ばかりでなく、必ずしも最高純度の高純度Gal-9を用いる必要性のない、比較的低純度のGal-9であっても不都合なく使用することができる経口であることも好ましい。このようなGal-9を用いる場合には、より低コストで本発明の薬剤を製造できることとなる。また、当該Gal-9として、2種以上のガレクチン 9混合物を用いることも可能である。尚、当該Gal-9は、抗原性の面から見て、ヒトGal-9 (hGal-9)が有利に使用できる。
【0015】
本明細書中、「ガレクチン-9」(galectin-9: Gal-9)としては典型的には天然型Gal-9が挙げられる。天然型Gal-9としては、現在、ロングタイプ(L 型)ガレクチン-9(galectin-9 long isoform or long type galectin-9: Gal-9L)、ミディアムタイプ(M 型)ガレクチン-9(galectin-9 medium isoform or medium type galectin-9: Gal-9M)及びショートタイプ(S 型)ガレクチン-9(galectin-9 short isoform or short type galectin-9: Gal-9S)が報告されているが、Gal-9LはWO 02/37114 A1に開示の配列番号4 の推定リンクペプチド領域によりN端ドメイン(N末端側糖鎖認識部位、N-terminal carbohydrate recognition domain: NCRD)とC端ドメイン(C末端側糖鎖認識部位、C-terminal carbohydrate recognition domain: CCRD)とが連結されたもの、Gal-9Mは該WO 02/37114 A1の配列番号5の推定リンクペプチド領域によりNCRDとCCRDとが連結されたもの、そしてGal-9Sは該WO 02/37114 A1の配列番号6 の推定リンクペプチド領域によりNCRDとCCRDとが連結されたものであると考えられており、Gal-9MではGal-9Lの当該リンクペプチド領域より該WO 02/37114 A1の配列番号7の配列のアミノ酸残基が欠失している点でGal-9Lと異なること、そしてGal-9SではGal-9Mの当該リンクペプチド領域より該WO 02/37114 A1の配列番号8の配列のアミノ酸残基が欠失している点でGal-9Mと異なること、すなわちGal-9SではGal-9L推定リンクペプチド領域より該WO 02/37114 A1の配列番号9 のアミノ酸残基が欠失している点でL 型ガレクチン-9と異なる。ところで、Gal-9Lのアミノ酸配列は、WO 02/37114 A1に開示の配列番号1に、Gal-9Mのアミノ酸配列は、WO 02/37114 A1に開示の配列番号2に、そしてGal-9Sのアミノ酸配列は、WO 02/37114 A1に開示の配列番号3に、それぞれその典型的な配列のものが示されている。
【0016】
本明細書において、ガレクチン-9としては、上記Gal-9L、Gal-9M及びGal-9S、その他、それらガレクチン-9ファミリーの天然に生ずる変異体、さらにそれらに人工的な変異(すなわち、一個以上のアミノ酸残基において、欠失、付加、修飾、挿入など)を施したものあるいはそれらの一部のドメインや一部のペプチドフラグメントを含むものを意味してよい。WO 2004/064857 (2004.08.05)、J. Biol. Chem., 275 (12): pp. 8355-8360 (2000)に開示のものはすべて含まれてよい。例えば、GST、FLAG (registered trademark, Sigma-Aldrich)、ポリヒスチジンなどのタグ、オワンクラゲ (Aequorea victorea)などの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント) 、例えば、EGFP (Enhanced-humanized GFP), rsGFP (red-shift GFP), 黄色螢光タンパク質 (yellow fluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質 (green fluorescent protein: GFP),藍色螢光タンパク質 (cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質 (blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ (Renilla reniformis) 由来のGFP などとの融合rGal-9などが含まれてよく、例えば、poly-His-hGal-9などが挙げられる。当該ガレクチン-9には、天然のガレクチン-9バリアント、さらにPCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)に開示の「ガレクチン-9改変体」、「ガレクチン-9改変体ポリペプチド」、さらには「ガレクチン-9改変体治療剤」はすべて含まれてよい。特に好ましいものとしては、PCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)の実施例1で製造取得されているG9NC(null)〔PCT/JP 2005/006580(出願日2005.03.29)の配列番号1で示される塩基配列によりコードされ、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〕が挙げられる。「ガレクチン-9改変体」又は「ガレクチン-9改変体ポリペプチド」のうちには、天然型ガレクチン-9に比して、より安定化された性状を示すものが得られることが認識されており、そうしたものは本明細書において、「安定化ガレクチン-9」と称されてもいる。該安定化ガレクチン-9の代表的なものとしては、上記したG9NC(null)が挙げられるが、これに限定されるものではなく、同様な性状を示すものはそれに含まれてよい。
本発明の治療及び/又は予防剤並びにその治療及び/又は予防法は、WO 2004/064857 (2004.08.05)や、PCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)の開示に準じてそれを実施でき、それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる。
【0017】
本明細書中、「ガレクチン-8」(galectin-8: Gal-8)としては典型的には天然型Gal-8が挙げられる。Gal-8の塩基配列並びにアミノ酸配列は、例えば、データベースNCBI上、NP 963837. galectin 8 isofor...[gi:42544187] NM 201543. Homo sapiens lect...[gi:42544186]; NP 963838. galectin 8 isofor...[gi:42544191], NM 201544. Homo sapiens lect...[gi:42544190]; NP 963839. galectin 8 isofor...[gi:42544193], NM 201545. Homo sapiens lect...[gi:42544192]に示されている。Gal-8では、コード領域の塩基配列上に変異がある場合が見出されており、8箇所に変異が生ずることが報告され、このうちアミノ酸に変異が生じている箇所として4箇所あることが知られている(C. Maier et al., European Urology, 42, pp301-307 (2002))。
例えば、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の配列番号5を参照すると、DNA配列の56位(a→t), 72位(c→t), 106位(t→c), 165位(t→c), 166位(g→a), 330位(a→g), 552位(c→g), 816位(c→t)において変異が生ずる場合があることが、そしてアミノ酸配列では19位(Tyr→Phe), 36位(Cys→Arg), 56位(Val→Met), 184位(Ser→Arg)において変異となっていることが報告されている。
天然型Gal-8としては、現在、ロングタイプ(L 型)ガレクチン-8 (galectin-8 long isoform or long type galectin-8: Gal-8L)及びミディアムタイプ(M 型)ガレクチン-8 (galectin-8 medium isoform or medium type galectin-8: Gal-8M)が報告されている。
Gal-8LはPCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の配列番号10の推定リンクペプチド領域によりN端ドメイン(NCRD)とC端ドメイン(CCRD)とが連結されたもの、そしてGal-8Mは該PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)の配列番号9の推定リンクペプチド領域によりNCRDとCCRDとが連結されたものであると考えられており、Gal-8MではGal-8Lの当該リンクペプチド領域より該PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の配列番号10の配列の29〜70位のアミノ酸残基が欠失している点でGal-8Lと異なる。ところで、Gal-8のNCRDのアミノ酸配列は、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の配列番号3に、Gal-8のCCRDのアミノ酸配列は、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の配列番号4にそれぞれその典型的な配列のものが示されている。
【0018】
本明細書において、Gal-8としては、上記Gal-8L、Gal-8M、その他、それらガレクチン-8ファミリーの天然に生ずる変異体、さらにそれらに人工的な変異(すなわち、一個以上のアミノ酸残基において、欠失、付加、修飾、挿入など)を施したものあるいはそれらの一部のドメインや一部のペプチドフラグメントを含むものを意味してよい。特開2003-246749号公報、特開2004-215612号公報に開示のものはすべて含まれてよい。例えば、GST、FLAG (registered trademark, Sigma-Aldrich)、ポリヒスチジンなどのタグ、GFP、GFPバリアント、例えば、EGFP, rsGFP, YFP, CFP, BFP, ウミシイタケ由来のGFPなどとの融合rGal-8などが含まれてよく、例えば、GST-hGal-8などが挙げられる。当該ガレクチン-8には、さらにPCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)に開示の「ガレクチン-8改変体」、「ガレクチン-8改変体ポリペプチド」、さらには「ガレクチン-8改変体治療剤」はすべて含まれてよい。特に好ましいものとしては、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)の実施例1で製造取得されているG8NC(null)〔PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)の配列番号1で示される塩基配列によりコードされ、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〕が挙げられる。「ガレクチン-8改変体」又は「ガレクチン-8改変体ポリペプチド」のうちには、天然型ガレクチン-8に比して、より安定化された性状を示すものが得られることが認識されており、そうしたものは本明細書において、「安定化ガレクチン-8」と称されてもいる。該安定化ガレクチン-8の代表的なものとしては、上記したG8NC(null)が挙げられるが、これに限定されるものではなく、同様な性状を示すものはそれに含まれてよい。
本発明の治療及び/又は予防剤並びにその治療及び/又は予防法は、特開2003-246749号公報、特開2004-215612号公報や、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)の開示に準じてそれを実施でき、それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる。
本明細書に記載の発明は、これまでに公表された研究および特許出願、例えば、特開2003-246749号公報、特開2004-215612号公報、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13)、WO 2004/064857 (2004.08.05)、PCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)を参考にしており、その内容は本明細書の開示の中に含められる。
【0019】
本明細書において、ガレクチン-9誘導因子は、ガレクチン-9の発現を誘導する活性を有することによって特徴付けられる。該因子は、その存在あるいはその発現により、有意にガレクチン-9の発現を誘導することによって特徴付けられ、例えば、国際公開第2004/096852号パンフレット(2004)〔WO2004/096851, A1 (2004)〕や特願2004-312771に開示のものが挙げられる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
代表的なガレクチン-9誘導因子として、放射線処理されたB細胞リンパ腫由来細胞株、例えば、BALL-1細胞より得られるもの、例えば、分離精製処理された画分など、その構成タンパク質などが挙げられる。該ガレクチン-9誘導因子を含むものとしては、B細胞株由来の細胞膜可溶化分画(membrane fraction: mf、例えば、human acute lymphoblastoid leukemia (ALL) から樹立されたhuman cell line: BALL-1 などのmf (BALL-1 mf))、そのコンカナバリンA吸着分画に溶出されるmf、Resource QTMイオン交換カラムから溶出されるmf、ハイドロキシアパタイトカラムから溶出される分画などが挙げられる。該ガレクチン-9誘導因子は、その有する生物活性、例えばガレクチン-9誘導活性をインビトロあるいはインビボにて検知・測定することにより、確認することが可能である。例えば、インビトロでのガレクチン-9誘導活性は、上記したようなGal-9産生・遊離細胞をmfで刺激した後、RT-PCR、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法、免疫組織染色法、ELISA 法、ELISPOT 法、RIA 法などにより、Gal-9 mRNAやGal-9 タンパク質を定量的あるいは定性的に解析して測定される。当該細胞の細胞培養液を使用し、RT-PCR、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法、免疫組織染色法、ELISA 法、ELISPOT 法、RIA 法などにより、Gal-9 タンパク質を定量的あるいは定性的に解析して測定することもできる。また、インビボにおけるガレクチン-9誘導活性は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、サルなどの動物に、mfを投与した後、ガレクチン-9産生細胞の浸潤やGal-9遊離の増強を指標に測定できる。また、腫瘍細胞におけるGal-9 の直接的ないし間接的な増強を指標にそれを測定することもできる。該動物としては、代表的には実験動物が挙げられ、投与法としては、皮内、皮下、筋肉内、静脈又は動脈、腹腔内注射したり、飲食させるなどが挙げられる。ヒト由来のガレクチン-9誘導因子にはタンパク質80K-H、GRP94、GRP78、GRP58、及びS100 calcium-binding protein、並びにそれらの分解物から成る群から選ばれたものが含まれてよい。
【0020】
本発明では、「遺伝子組換え技術」を利用して所定の核酸(ポリヌクレオチド)や所定のペプチド(ポリペプチド)を構築したり取得すること、また単離・配列決定したり、組換え体を作製したりできる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術(組換えDNA技術を含む)としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えば J. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition (1989) & 3rd edition (2001) ", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); M. J. Gait (Ed), Oligonucleotide Synthesis, IRL Press (1984); B. D. Hames and S. J. Higgins (Ed), Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press Ltd., Oxford, UK (1985); B. D.Hames and S. J. Higgins (Ed), Transcription and Translation: A Practical Approach (Practical Approach Series), IRL Press Ltd., Oxford, UK (1984); B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (2nd Edition), John Wiley & Sons, New York (1988); J. H. Miller and M. P. Calos (Ed), Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (1987); R. J. Mayer and J. H. Walker (Ed), Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology, Academic Press, (1987); R. K. Scopes et al. (Ed), Protein Purification: Principles and Practice (2nd Edition, 1987 & 3rd Edition, 1993), Springer-Verlag、N.Y.; D. M. Weir and C. C. Blackwell (Ed), Handbook of Experimental Immunology, Vol.1, 2, 3 and 4, Blackwell Scientific Publications, Oxford, (1986); L. A. Herzenberg et al. (Ed), Weir's Handbook of Experimental Immunology, Vol. 1, 2, 3 and 4, Blackwell Science Ltd. (1997); R. W. Ellis (Ed), Vaccines new approaches to immunological problems, Butterworth-Heinemann, London (1992); R. Wu ed., "Methods in Enzymology", Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 100 (Recombinant DNA, Part B) & 101(Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987); J. H. Miller ed., "Methods in Enzymology", Vol. 204, Academic Press, New York (1991); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 218, Academic Press, New York (1993); S. Weissman (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 303, Academic Press, New York (1999); J. C. Glorioso et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 306, Academic Press, New York (1999); Jeremy Thorner et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 326 to 328, Academic Press, New York (2000); David R. Engelke et al. (ed.), "Methods in Enzymology", Vol. 392, Academic Press, New York (2005)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 〔以下、これら全てを「遺伝子組換え技術」という)。
【0021】
本発明のガレクチン-8ポリペプチド、ガレクチン-9ポリペプチド、あるいはガレクチン-9誘導因子ポリペプチドを製造するためには広範な単細胞および多細胞発現系(すなわち宿主−発現ベクターの組み合わせ)を使用しうる。可能なタイプの宿主細胞には細菌、酵母、昆虫、哺乳動物、植物などが含まれるが、これらに限定されない。大腸菌の場合、例えば大腸菌K12株あるいはB株に由来するものなどを挙げることができ、例えば、NM533, XL1-Blue, C600, DH1, DH5, DH11S, DH12S, DH5α, DH10B, HB101, MC1061, JM109, STBL2, B834株由来としては、BL21(DE3)pLysSなどが挙げられ、それに適した発現ベクターを選択して使用できる。酵母菌として、パン酵母、分裂酵母などが含まれてよく、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属菌などである。より具体的には、サッカロミセス・セレビッシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などを挙げることができ、それに適した発現ベクターを選択して使用できる。代表的な発現ベクターとしては、例えば、pBR322、pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pSP64, pSP65, pTZ-18R/-18U, pTZ-19R/-19U, pGEM-3, pGEM-4, pGEM-3Z, pGEM-4Z, pGEM-5Zf(-), pGEMEX-1(Promega), pBC KS (Stratagene), pBC SK (Stratagene), pBluescriptTM SK (Stratagene), pBluescriptTM II SK (Stratagene社), pBluescriptTM II KS (Stratagene), pBS (Stratagene), pAS, pKK223-3(Amersham Pharmacia Biotech), pMC1403, pMC931, pKC30, pRSET-B (Invitrogen), pSE280(Invitrogen), pBTrp2(Boehringer Mannheim), pBTac1(Boehringer Mannheim), pBTac2(Roche社), pGEX(Amersham Biosciences), pQE series(QIAGEN), pET Expression System (Novagen), YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15、さらには、invitrogen vectors for Mammalian Expression (例えば、BsdCassetteTM Vectors, Epitope-Tagged pcDNATM Vectors, Eukaryotic TA Expression Kit, Flp-InTM Expression Vectors and Kits, Flp-InTM T-RExTM Expression Vectors, FreeStyleTM 293 Expression System, GeneSwitchTM System, pBC1 Milk Expression Vector Kit, pBudCE4.1, pcDNATM GatewayTM Vectors, pcDNATM3.1 Directional TOPOTM Expression Kit, pcDNATM3.1-E EchoTM Expression Vector Kit, pcDNATM3.1/V5-His TOPOTM Expression Kit, pcDNATM4/HisMax and pcDNATM4/HisMax TOPOTM TA Expression Kit, pcDNATM4/TO-E EchoTM Vector Expression Kit, pcDNATM6 BioEaseTM GatewayTM Biotinylation System, pcDNA/V5-GW/D-TOPOTM Vectors, pCEP4 and pREP4, pDisplayTM Vector, pEF6/V5-His TOPOTM TA Expression Kit, pFRT/lacZeo and pFRT/lacZeo2, pSecTag2 and pSecTag2/Hygro, pShooterTM Vectors, pVAXTM200-DEST Vector System, pVAX1, pZeoSV2, T-RExTM GatewayTM Vectors, T-RExTM System, Tag-On-DemandTM Technology, Untagged pcDNATM Vectors, Vivid ColorsTM pcDNATM 6.2 Fluorescent Protein GatewayTM Destination Vectors, ZeoCassetteTM Vectorsなど), Clontech vectors (例えば、Adenoviral Expression Vectors, CreatorTM System Vectors, IRES Bicistronic Expression Vectors, Living ColorsTM Fluorescent Protein Vectors, MATCHMARJER Vectors, Retroviral Expression Vectors, Signal Transduction Vectors, Tet Expression System Vectors, BacPak Baculovirus Expression Vectors, HAT Protein Expression System Vectorsなど), HaloTagTM pHT2 Vector, pACT Vectors, pBIND Vectors, pCATTM3 Vectors, pCI Vectors, phRG Vectors, phRL Vectors (Promega Corp.), Novagen vectors for protein expression (例えば、pTriEXTM Multisystem Expression Vectors, pBiEXTM Multisystem Expression Vectors, pTandemTM-1 Vector, pTK-neo DNAなど)などが挙げられるが、その他当該分野で知られていたり、市販されているものも適宜選択して使用できる。
【0022】
細胞(培養細胞を含む)、培養上清、あるいは抽出液中に含まれる目的生成物は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせてその精製を行なうことができ、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などを持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、リガンドなどを固定化したアフィニティー・クロマトグラフィーなどで処理し精製分離処理できる。該リガンドとしては、特異的認識をするモノクローナル抗体を含めた抗体又はそのフラグメント、レクチン、糖、結合ペアーの一方などが挙げられる。例えば、イムノ・アフィニティー・クロマトグラフィー、ゼラチン−アガロース・アフィニティー・クロマトグラフィー、ヘパリン−アガロース・クロマトグラフィーなどが挙げられる。特には遺伝子組換え技術を利用し、融合タンパク質あるいは融合ポリペプチドとして産生せしめ、融合部(タグ)を利用して、それに対する抗体などの特異的結合リガンドを利用して、アフィニティー・クロマトグラフィーなどで簡便に精製できる。
【0023】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子は、化学合成されたものであってよい。例えば、タンパク質及びその一部のペプチドの合成には、当該ペプチド合成分野で知られた方法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。こうした方法では、例えばタンパク質あるいはペプチド合成用樹脂を用い、適当に保護したアミノ酸を、それ自体公知の各種縮合方法により所望のアミノ酸配列に順次該樹脂上で結合させていく。縮合反応には、好ましくはそれ自体公知の各種活性化試薬を用いるが、そうした試薬としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどカルボジイミド類を好ましく使用できる。生成物が保護基を有する場合には、適宜保護基を除去することにより目的のものを得ることができる。同様に、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸は、化学合成されたものであってよい。例えば、フォスフォトリエステル法、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法、フォスフォネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されている。ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸の配列内には、例えば、選択した宿主細胞で好適に発現するに適した修飾されたコドン(例えば、コドンの置換)を含むようにしてあってよいし、制限酵素部位が設けられていても良いし、目的とする遺伝子の発現を容易にするための発現制御配列、調節配列など、目的とする遺伝子を操作するのに適した、リンカー、アダプターなど、さらには抗生物質耐性などを制御したり、栄養要求性・代謝を制御したり、選別・検知などに有用な配列などを含む、便利又は有用な修飾が施されていても良い。
【0024】
本発明の活性成分を医薬として用いる場合、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与等の使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。本発明の活性成分はそれぞれを混合物として、例えば、ガレクチン-9とガレクチン-9誘導因子との混合物、ガレクチン-8改変体とガレクチン-9改変体との混合物などにして、それを使用してもよい。
また、本発明の活性成分は、各種医薬、例えば抗腫瘍剤(抗ガン剤)、抗生物質、腫瘍移転阻害剤、血栓形成阻害剤、関節破壊治療剤、鎮痛剤、消炎剤、抗アレルギー剤、免疫調節剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもでき、それらは、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。
そして、非経口的な投与形態としては、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内投与を包含し得るが、患部への直接投与も可能であり、またある場合には好適でもある。好ましくはヒトを含む哺乳動物に経口的に、あるいは非経口的(例、細胞内、組織内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸腔内、脊髄腔内、点滴法、注腸、経直腸、点耳、点眼や点鼻、歯、皮膚や粘膜への塗布など)に投与することができる。具体的な製剤調製物の形態としては、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤などが挙げられ、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤などのための粉末剤、凍結乾燥製剤、ゲル調製品等が挙げられる。
【0025】
医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤、無痛化剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明のタンパク質等を混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
非経口的使用に適した製剤としては、活性成分と、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る媒体との無菌性溶液、または懸濁液剤など、例えば注射剤等が挙げられる。一般的には、水、食塩水、デキストロース水溶液、その他関連した糖の溶液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい注射剤用液体担体として挙げられる。注射剤を調製する際は、蒸留水、リンゲル液、生理食塩液のような担体、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤などを使用して当該分野で知られた方法で、溶液、懸濁液、エマルジョンのごとき注射しうる形に調製する。
【0026】
注射用の水性液としては、例えば生理食塩液、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液などが挙げられ、薬理的に許容される適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノールなど)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート 80TM, HCO-50など)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)又は浸透圧調節のための試薬、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、アスコルビン酸などの酸化防止剤、吸収促進剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0027】
非経口投与には、界面活性剤及びその他の薬学的に許容される助剤を加えるか、あるいは加えずに、水、エタノール又は油のような無菌の薬学的に許容される液体中の溶液あるいは懸濁液の形態に製剤化される。製剤に使用される油性ベヒクルあるいは溶剤としては、天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類、天然、半合成あるいは合成の油脂類あるいは脂肪酸類が挙げられ、例えばピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油などの植物油が挙げられる。例えば、この注射剤は、通常本発明化合物を0.1〜10重量%程度含有するように調製されることができる。
局所的、例えば口腔、又は直腸的使用に適した製剤としては、例えば洗口剤、歯磨き剤、口腔噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、歯科充填剤、歯科コーティング剤、歯科ペースト剤、坐剤等が挙げられる。洗口剤、その他歯科用剤としては、薬理的に許容される担体を用いて慣用の方法により調製される。口腔噴霧剤、吸入剤としては、本発明化合物自体又は薬理的に許容される不活性担体とともにエアゾール又はネブライザー用の溶液に溶解させるかあるいは、吸入用微粉末として歯などへ投与できる。軟膏剤は、通常使用される基剤、例えば、軟膏基剤(白色ワセリン、パラフィン、オリーブ油、マクロゴール400 、マクロゴール軟膏など)等を添加し、慣用の方法により調製される。
【0028】
歯、皮膚への局所塗布用の薬品は、適切に殺菌した水または非水賦形剤の溶液または懸濁液に調剤することができる。添加剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムのような緩衝剤;酢酸または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウムまたはクロロヘキシジンのような殺菌および抗真菌剤を含む防腐剤およびヒプロメルローズのような濃厚剤が挙げられる。
坐剤は、当該分野において周知の担体、好ましくは非刺激性の適当な補形剤、例えばポリエチレングリコール類、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等の、好ましくは常温では固体であるが腸管の温度では液体で直腸内で融解し薬物を放出するものなどを使用して、慣用の方法により調製されるが、通常本発明化合物を0.1 〜95重量%程度含有するように調製される。使用する賦形剤および濃度によって薬品は、賦形剤に懸濁させるかまたは溶解させることができる。局部麻酔剤、防腐剤および緩衝剤のような補助薬は、賦形剤に溶解可能である。 経口的使用に適した製剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物や、液剤、シロップ剤、懸濁剤のような液状組成物等が挙げられる。製剤調製する際は、当該分野で知られた製剤補助剤などを用いる。錠剤及び丸剤はさらにエンテリックコーティングされて製造されることもできる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。経口投与用製剤においては、好適には安定化剤を配合してある。当該安定化剤としては、ガレクチン 8及びその改変体、ガレクチン 9及びその改変体、あるいはガレクチン-9誘導因子を安定化し得る薬剤を意味し、例えば、グルコース、ガラクトース、キシロース、フラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ラクトスクロース、マルトオリゴ糖、及び多糖類などの糖類及び糖アルコール、シクロデキストリン、ヒドロキシエチル澱粉、デキストリン及びデキストラン、グルクロン酸ナトリウム、リン酸塩及び金属塩などの塩類、血清アルブミン、ゼラチン、アミノ酸及び非イオン界面活性剤などから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0029】
また、活性成分がタンパク質やポリペプチドである場合、ポリエチレングリコール(PEG)は、哺乳動物中で極めて毒性が低いことから、それを結合させることは特に有用である。また、PEG を結合せしめると、異種性化合物の免疫原性及び抗原性を効果的に減少せしめることができる場合がある。該化合物は、マイクロカプセル装置の中に入れて与えてもよい。PEG のようなポリマーは、アミノ末端のアミノ酸のα-アミノ基、リジン側鎖のε-アミノ基、アスパラギン酸又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のα-カルボキシル基、又はある種のアスパラギン、セリン又はトレオニン残基に付着したグリコシル鎖の活性化された誘導体に、簡便に付着させることができる。
タンパク質との直接的な反応に適した多くの活性化された形態のPEG が知られている。タンパク質のアミノ基と反応させるのに有用なPEG 試薬としては、カルボン酸、カルボネート誘導体の活性エステル、特に、脱離基がN-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェノール、イミダゾール、又は1-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼン-4-スルフォネートであるものが挙げられる。同様に、アミノヒドラジン又はヒドラジド基を含有するPEG 試薬は、タンパク質中の過ヨウ素酸酸化によって生成したアルデヒドとの反応に有用である。
【0030】
遺伝子治療用ビヒクルは、遺伝子組換え技術を利用して、簡便に得ることができ、哺乳動物における発現のために哺乳動物に送達されるべき本発明の治療薬たるコード配列(例えば、ガレクチン-8コード配列、ガレクチン-9コード配列、あるいはガレクチン-9誘導因子コード配列)を含んでいる構築物(コンストラクト、construct)を送達するためのもの、あるいは、ガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)の全てもしくは部分であって且つ送達のためのものである核酸配列をも含んでいる該構築物を送達するためのものであって、局所的または全身的のいずれかの方法で投与されることのできるものである。これらの構築物は、インビボまたはエキソビボの形で、ウイルスベクターによるアプローチまたは非ウイルスベクター形式でのアプローチを利用することのできるものである。このようなコード配列を発現するには、内因性の哺乳動物プローモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導することにより行うことができる。インビボでのコード配列の発現は、構成的になされるか、または調節されて行われるかのいずれかである。ガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)が哺乳動物において発現される場合、可溶性のガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)として発現されることができるし、ある場合には膜結合型ガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)として発現されることもできる。これらの両方においてまたはそのいずれかにおいて、それらは、例えば、全てのガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)、またはガレクチン-8(あるいはガレクチン-9、又はガレクチン-9誘導因子)の生物学的に活性な部分、バリアント、改変体、誘導体、もしくは融合体などであってよい。所要の遺伝子の共発現を目的としたものも含まれてよい。
【0031】
本発明は、所要のガレクチン-8の核酸配列、ガレクチン-9の核酸配列、又はガレクチン-9誘導因子の核酸配列を発現することのできる遺伝子導入ベクター(共遺伝子導入も包含される)を提供する。遺伝子導入ベクターとしては、好ましくは、ウイルスベクターが挙げられ、より好ましくは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、またはアルファウイルスなどのウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターとしては、さらに、アストロウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、トガウイルスなどのウイルスベクターも挙げられ、例えば、HVJ Envelope Vector(石原産業)なども挙げられる。当該遺伝子導入ベクターに関しては、一般には、D. Jolly, Cancer Gene Therapy, 1(1): 51-64 (1994); O. Kimura et al., Human Gene Therapy, 5: 845-852 (1994); S. Connelly et al., Human Gene Therapy, 6: 185-193 (1995); M.G. Kaplitt et al., Nature Genetics, 8: 148-153 (1994)などを参照することができる。
【0032】
本発明では、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下では、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒の放出(脱顆粒)が抑制されるので、このマスト細胞顆粒放出抑制系を利用したアッセイ系を構築できる。該顆粒放出抑制アッセイ系を使用してマスト細胞を活性化させる物質のスクリーニング系(試薬及び方法を含む)を提供できる。典型的な態様では、該アッセイ法は、マスト細胞と試験物質(又は試験試料)とを接触せしめ、マスト細胞からの顆粒放出抑制が阻害されるか否かを指標として利用し、マスト細胞活性化物質をスクリーニングできる。別の態様では、該アッセイ法は、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下にマスト細胞と試験物質(又は試験試料)とを接触せしめ、マスト細胞の活性化が抑制されるか否かを指標として利用し、マスト細胞活性化物質をスクリーニングできる。顆粒の放出は、当該顆粒に含まれている物質(特には特異的に含まれている物質)の細胞外での存否、あるいは濃度などを測定することにより検知、あるいは決定できる。当該顆粒に存在し細胞外に放出される測定対象物質としては、酵素、化学伝達物質、サイトカインなどが挙げられ、当該分野でその存在が知られているものの中から選択することもできるが、代表的なものとしてはβ-ヘキソサミニダーゼなどである。マスト細胞の活性化は、マスト細胞の遊走、当該分野でマスト細胞に関連して観察される現象の変化、状態の変化、生物活性の変化を含むものであってよく、マスト細胞での遺伝子発現(量)の変化、マスト細胞によるサイトカインの産生、産生増加又は低下、放出など、酵素、化学伝達物質などの産生、産生増加又は低下、放出なども含まれてよい。スクリーニングにおいては、測定結果などは、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの非存在下での結果と比較するなどして評価されてよい。当該アッセイ系で利用されるマスト細胞は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの動物から得たもの、あるいはヒト又は当該動物由来のセルラインなどを好適に使用できる。ヒトマスト細胞は、造血幹細胞より誘導したり、肺などの臓器又は組織から分離したりできるほか、ヒト臍帯血造血幹細胞由来培養マスト細胞、成人造血幹細胞由来培養マスト細胞などの培養株であってよい。代表的な場合、臍帯血造血幹細胞よりヒトマスト細胞を誘導する方法(Saito H. et al. J Immunol. 157:343-350, 1996)、ヒトの肺から高純度のマスト細胞を分離する方法(J Immunol Method. 1994, 169; 153)などにより取得できるし、そうして得られた細胞より樹立した株化ヒトマスト細胞(例えば、臍帯血造血幹細胞由来培養マスト細胞、成人造血幹細胞由来培養マスト細胞など)も包含される。当該分野では、上記動物由来のマスト細胞セルラインも知られており、それらは適宜選択使用でき、ラット好塩基球性白血病セルライン(rat basophilic leukemia cell line: RBL)、マウスの骨髄造血幹細胞からの分化の系(例えば、F. Levi-Schaffer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 83, pp.6485-6488 (1986); E. Razin et al., J Immunol., Vol. 132 No. 3, pp. 1479-1486 (1984)参照)などを好適に使用できる。当該セルラインの代表例としては、RBL-2H3細胞などが挙げられ、例えば、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (DSMZ, Braunschweig)などから入手できる。
【0033】
一つの態様では、該スクリーニングは、例えば(i)ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものとマスト細胞との両者の共存下(該タンパク質を発現する形質転換体を含んでいてもよい、以下同様)などに、必要なら適当な基質を接触させた場合と、(ii) ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものとマスト細胞との両者などの共存下に、必要なら適当な基質及び、試験試料を接触させた場合との比較を行うものであってもよい。具体的には、上記スクリーニングでは、当該生物学的活性(例えば、顆粒に見出される酵素活性など)を測定して、比較する。また、該スクリーニングは、細胞上清液中の当該活性を測定するものであってよい。基質としては、典型的には酵素等の基質となることのできるものであれば何れのものであってよい。例えば、マスト細胞からの顆粒の放出を測定する目的で使用されるもの中から選んで用いることができるが、好ましくは合成された基質などを使用できる。基質は、そのまま使用できるが、好ましくはフルオレッセインなどの蛍光、酵素や放射性物質で標識したものを使用できる。
【0034】
試験物質(試験試料)としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。試験試料に使用される試験化合物の例には、好ましくは抗ガレクチン-8抗体、抗ガレクチン-9抗体、抗ガレクチン-9誘導因子抗体、そして免疫抑制剤、免疫制御剤、酵素阻害剤、レセプターの結合阻害剤、抗アレルギー剤、抗腫瘍剤、抗炎症剤、代謝拮抗剤、生物活性を有する化合物、糖アナログ、特には合成化合物などを含んでいてよい。これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該スクリーニングは、通常の活性の測定法に準じて実施することができ、例えば当該分野で公知の方法などを参考にして行うことができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬等を使用したり、そこで説明した操作等に準じて行うことができる。測定は通常トリス塩酸緩衝液、リン酸塩緩衝液などの反応に悪影響を与えないような緩衝液等の中で、例えば、pH約4〜約10(好ましくは、pH約6〜約8)において行うことができる。これら個々のスクリーニングにあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の顆粒放出抑制アッセイ系あるいはそれと実質的に同等な活性を有する系に関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、Methods in Enzymology, Academic Press 社 (USA)発行) など参照〕。本発明のスクリーニング方法又はスクリーニングキットを用いて得られる化合物又はその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、糖アナログ、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などから選ばれた化合物であり、代表的なものとしては、マスト細胞を活性化する化合物である。該化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容される塩などが挙げられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
本明細書で「ガレクチン-9」について説明した内容は、「ガレクチン-9誘導因子」に置き換えてその内容を解釈するものであってよい。
【0035】
明細書及び図面において、用語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
FBS: 牛胎児血清(fetal bovine serum)
BSA: 牛血清アルブミン(bovine serum albumin)
ケトチフェン(ketotifen: 4-(1-メチル-4-ピペリジリデン)-4H-ベンゾ〔4,5〕シクロヘプタ〔1,2-b〕チオフェン-10(9H)-one (4-(1-methyl-4-piperidylidene)-4H-benzo〔4,5〕cyclohepta〔1,2-b〕thiophene-10(9H)-one))
DNP: ジニトロフェノール(dinitrophenol)
DNP-HSA: DNP-human serum albumin
PBS: phosphate-buffered saline
HEPES: 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid)
Triton X-100: ethoxylated p-tert-octylphenol; polyethyleneglycol 4-(tert-octyl)phenyl ether
probenecid: (dipropylaminosulfonyl)benzoic acid
DNFB: ジニトロフルオロベンゼン(dinitrofluorobenzene)
【0036】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
なお、以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNA クローニングではJ. Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition (1989) & 3rd edition (2001) ", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York及び D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); PCR 法を使用する場合には、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) 及び M. A. Innis et al. ed., "PCR Protocols", Academic Press, New York (1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している。
G9NC(null)は、PCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)に開示され、PCT/JP 2005/006580の実施例1で製造取得されている。また、G8NC(null)は、PCT/JP2005/009211 (出願日: 2005.05.13) に開示され、PCT/JP2005/009211の実施例1で製造取得されている。
【実施例1】
【0037】
マスト細胞からの顆粒放出に及ぼす安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8の作用効果を調べた。ラット好塩基球性白血病細胞RBL-2H3は、IgEと抗原刺激により顆粒を放出するので、マスト細胞に対する薬効評価のモデル系として広く使われている。
ラット好塩基球性白血病セルライン(rat basophilic leukemia cell line: RBL) RBL-2H3細胞を10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン及びグルタミンを添加した最小必須培地(MEM)中で培養した。アッセイの一日前に20×103個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、湿度を与えたCO2インキュベーター中で培養した。細胞層をアッセイ用緩衝液(20mM HEPES及び1 mg/mL BSA含有のハンクス平衡塩溶液(Hanks' balanced salt solution))で一回洗った後、同緩衝液(20μL/ウェル)を加えた。
下記する試薬(あるいは図1に示された試薬)をそれぞれ50μLの反応用混液中での最終濃度となるようにして調製した。G9NC(null)、G8NC(null)、あるいはケトチフェン(ketotifen)(各10μL)を図1で指定された濃度となるように添加し、10分間インキュベーションした。SPE7 (10μL: 抗DNP IgEモノクローナル抗体、Sigma)を0.1μg/mLの濃度となるように添加し、30分間インキュベーションした後、0.016μg/mLの濃度となるようにDNP-HSA(10μL、Sigma)を添加し顆粒放出(degranulation、脱顆粒又は脱顆粒反応)を刺激した。
【0038】
マスト細胞(肥満細胞: mast cell)の顆粒内にある酵素で、顆粒放出の検知に一般的に使用される酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(β-hexosaminidase)活性を測定した。
37℃で60分間インキュベーションした後、上清液(10μL)を放出されたβ-ヘキソサミニダーゼを測定するために採取した。次に、培養物の残りに0.1%のトリトン X-100 (Triton X-100)を添加し、全β-ヘキソサミニダーゼ活性を計算するため細胞ライゼート(10μL)を採取した。該上清液及び細胞ライゼートは、4-ニトロフェニル N-アセチル-β-グリコサミニド(4-nitrophenyl N-acetyl-β-glycosaminide: 10μL)と共に37℃で60分間インキュベーションした。0.2M グリシン(pH10.4: 160μL)を加えて反応を停止させて、405 nmの吸光度(optical density: OD)を測定した。得られた結果を図1に示す。
顆粒放出の程度は、培養物中の全β-ヘキソサミニダーゼ活性に対する上清中に放出されたβ-ヘキソサミニダーゼ活性のパーセントで示した。それぞれの値は、mean±SD (n=3)で示された。モル濃度を計算するにあたり分子量はそれぞれ次の値を使用した:G9NC(null)= 33.1 kDa、G8NC(null)= 33.1 kDa、あるいはケトチフェン=425.5 Da。
安定化ガレクチン-9 (G9NC(null))および安定化ガレクチン-8 (G8NC(null))がマスト細胞におけるこの顆粒放出を強力に抑制することがわかった。その抑制効果は濃度依存的(G9NC(null), IC50: 5.4μg/ml: 0.16μM; G8NC(null), IC50: 5.5μg/ml: 0.16μM)で、マスト細胞スタビライザーであるケトチフェン(Ketotifen, IC50: 89.6μg/ml: 210μM)より遥かに強力であった。
【実施例2】
【0039】
安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8がマスト細胞に対して細胞傷害活性を示すか否かについて調べた。
RBL-2H3細胞を3×103個/90μLづつ96ウェルプレートの各ウェルに播種し、37℃で20時間湿度を与えたCO2インキュベーター中で培養した。G9NC(null)、G8NC(null)、あるいはマイトマイシン(各10μL)を図2で指定された濃度となるように添加し、37℃で24時間インキュベーションした。培養物にWST-1 (10μL: Cell Proliferation Reagent, Roche Applied Science)を添加し、さらに2時間インキュベーションした。450 nmのODを測定した。生きている細胞の数が多いと大きなOD値を示す。得られた結果を図2に示す。安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8はRBL-2H3細胞に対しては何ら細胞傷害活性を示していないことから、実施例1に示された結果は、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))のマスト細胞安定化によることを示していると考えられる。
【実施例3】
【0040】
プライミングされた状態のマスト細胞からの顆粒放出に及ぼす安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8の作用効果を調べた。
RBL-2H3細胞の調製は図1におけると同様にして行った。アッセイは次のスキームで行った。
【0041】
【化1】

【0042】
G9NC(null)(1μM (33μg/mL))、又はG8NC(null)(1μM (33μg/mL))を添加するタイミングは上記スキームのようにして行った。
ガレクチン類の添加は、IgE 添加の10分前(A)、DNP-HSA 添加の10分前(B)またはDNP-HSA 添加後30分(C)に行った。得られた結果を図3に示す。図3の上段のグラフは、G9NC(null)についての結果を、図3の下段のグラフは、G8NC(null) についての結果を示す。それぞれの値は、mean±SD (n=3)で示されている。
マスト細胞にIgEを加えた後でG9NC(null)またはG8NC(null)を加えても抑制効果は保持された。これは花粉症などで想定される「プライミング」された状態のマスト細胞にも効果を有することを暗示している。かくして、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))は、マスト細胞がIgE刺激でプライミングされた状態でもその顆粒の放出に対して抑制効果を発揮すると考えられる。
【実施例4】
【0043】
G9NC(null)のマスト細胞に対する作用効果がラクトースなどの糖により影響されるか否かを調べた。
RBL-2H3細胞の調製は図1におけると同様にして行った。G9NC(null)は、それぞれPBS、シュクロース/PBS、又はラクトース/PBSの溶液とした。そして図4に示されているように刺激の前に添加した。最終濃度はそれぞれ次の通りとした: G9NC(null)= 1μM (33μg/mL)、シュクロース= 20mM、ラクトース= 20mM。刺激は、SPE7 (抗DNP IgEモノクローナル抗体、Sigma) + DNP-HSA(Sigma)、イオノマイシン(ionomycin)、そしてイオノマイシン+フォルボール 12-ミリステート 13-アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate: PMA)で行い、w/oは刺激なしである。得られた結果を図4に示す。
図4において、Spe + DNP: 1μg/mL SPE7 + 0.016μg/mL DNP-HSA、IM: 1μM イオノマイシン、IM + PMA: 1μM イオノマイシン+ 0.1μM PMA、w/o: 刺激なし。それぞれの値は、mean±SD (n=3)で示されている。G9NC(null)の作用効果がラクトースで打ち消される。
同様な結果はG9NC(null)の代わりにG8NC(null)を用いても得られた。これらの知見はガレクチン-8またはガレクチン-9がマスト細胞に存在するターゲット分子にβ-ガラクシド構造をもつ糖鎖を介して相互作用し、その相互作用がマスト細胞からの脱顆粒抑制作用発現に必須であることを示唆する。
【実施例5】
【0044】
マスト細胞においてIgE 及び抗原により起こされる細胞内カルシウムイオンの上昇がG9NC(null)により如何なる影響を受けるかを調べた。
RBL-2H3細胞を20×103個/ウェルづつオプティカルボトム黒色96ウェルプレート(optical bottomed black 96-well plate, Nunc)の各ウェルに播種し、37℃で湿度を与えたCO2インキュベーター中で20時間培養した。細胞層を洗った後、カルシウムアッセイ用緩衝液(20mM HEPES、1 mg/mL BSA及び1 mM プロベネシド(probenecid)含有のハンクス平衡塩溶液)に溶解したFluo-3 AM (1μM、Molecular Probes)を細胞に添加して、室温で1.5時間インキュベーションした。細胞層をカルシウムアッセイ用緩衝液で二回洗った後、その緩衝液(55μL)に置き換えた。
得られた結果を図5に示す。図5に示されているようにG9NC(null)、SPE7(Sigma)、そしてDNP-HSA(Sigma)を添加し(各15μL)、蛍光の変化(Ex: 485 nm, Em: 538 nm)をFluoroskan Ascent (Thermo Electron)を使用してモニターした。IgE 及び抗原により起こされる細胞内カルシウムイオンの上昇は、G9NC(null)により中和された。
G8NC(null)についても同様に測定した結果、G9NC(null)と同様な作用であった。
G9NC(null)またはG8NC(null)をRBL-2H3細胞に作用させると、細胞内に一過的なカルシウムイオンの上昇が見られるが、これは顆粒放出を刺激しない。一方、この刺激後にIgEとそれに対する抗原を加えると、本来起こるはずの細胞内カルシウムイオンの上昇は見られない。これらの結果より、ガレクチン-9または-8の効果は顆粒放出に必要な細胞内カルシウムシグナルを途断することに起因していると考えられる。
【実施例6】
【0045】
受身皮膚アナフラキシーによる耳介浮腫に対するG9NC(null)による作用を調べた。
ニ相性皮膚反応モデルを使用した。抗DNP IgE (5 μg/マウス)のPBS(-)液を前日(day -1)に静脈内(i.v.)注射してモデルマウスを感作処理した。翌日(day 0)に、30μLの0.15% DNFB(溶媒:アセトン/オリーブ油(4/1))を右耳の内側及び外側の表面に局所投与した。コントロールとしては、アセトン/オリーブ油(4/1)を左耳に塗布した。
DNFB塗布の30分前にG9NC(null)、ケトチフェン(ketotifen)、あるいは溶媒(vehicle)を腹腔内(i.p.)に投与した。耳の厚みを、DNFB塗布後の0、1、2、4、8、及び24時間の時点でそれぞれ厚みゲージ(calibrated thickness gauge, (株)ミツトヨ、東京)を用いてエーテル麻酔下に測定した。
耳介浮腫率は、(R-L)-(R0-L0)で示される。
ここで、Rはそれぞれの時点での右耳の厚さ、Lはそれぞれの時点での左耳の厚さで、R0は実験開始時(0 h)での右耳の厚さ、L0は実験開始時(0 h)での左耳の厚さである。
得られた結果を図6に示す。それぞれの値は、mean±SEで示されている。
データセットの統計的な有意差は、two-way ANOVAを使用して解析した。グループ間の違いは、市販の統計ソフトのBonferroni post-test(GraphPad Software, Inc., San Diego, USA)により評価した。P値<0.05は、統計的に有意と考えられる。
受身皮膚アナフラキシーによる耳介浮腫に対して、G9NC(null)は抑制作用を示した。
こうして、G9NC(null)を投与したマウスではIgEと抗原刺激で起こる浮腫が有意に抑制されたことから、ガレクチン-9、特には安定化ガレクチン-9 (例えば、G9NC(null))、そしてガレクチン-8、特には安定化ガレクチン-8 (例えば、G8NC(null))はアナフラキシーによる浮腫などのアレルギー反応の抑制剤として活性であることは明らかと考えられる。
【実施例7】
【0046】
喘息モデルモルモットでの気道抵抗増大に対するG9NC(null)による作用を調べた。
超音波式ネブライザーを使用して毎日10分間1%の卵白アルブミン(ovalbumin)で8日間処理しモルモットを感作した。5分間2%の卵白アルブミンで処理して気道抵抗の増大を刺激せしめ、刺激後1 min、2h、4h、5h、6h、7h、8h及び23hの時点で呼吸解析装置Plumos-I (M.I.P.S)を使用して比気道抵抗値(sRaw)をモニターした。各感作の30分前及び該刺激の30分前にG9NC(null)を投与した(1 mg/body, i.p.)。
得られた結果を図7に示す。
G9NC(null)は、喘息モデルモルモットでの気道抵抗増大に対して抑制作用を示した。
また喘息モデルのモルモットに投与した場合、抗原感作によって惹起される即時性の気道抵抗上昇が抑制された。これらの事実は生体においてもG9NC(null)がマスト細胞の顆粒放出反応を抑制したことを意味する。
これらの知見はG9NC(null)およびG8NC(null)がマスト細胞の活性化が一因である疾患の治療薬として有用であることを示唆する。考えられる対象疾患は喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎などを含むマスト細胞の活性化が発症に関与すると考えられている疾患などが挙げられる。また制癌などにおいては免疫系の活性化が良好な予後に相関していると言われ、マスト細胞の活性化状態は良好な予後に相関している可能性がある。ガレクチン-9(または-8)による顆粒放出抑制アッセイ系は、その抑制を阻害してマスト細胞を活性化させる物質の探索目的に使用可能である。
【実施例8】
【0047】
上記実施例1〜7で使用のガレクチン-9は、PCT/JP 2005/006580 (出願日2005.03.29)の実施例1で製造取得されているG9NC(null)〔PCT/JP 2005/006580(出願日2005.03.29)の配列番号1で示される塩基配列によりコードされ、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〕を使用した。
該安定型ガレクチン-9、すなわちG9NC(null)は次のようにしても調製できる。
安定型ガレクチン-9 (G9NC(null))の発現誘導は、pET-G9NC(null)でエレクトロポレーション法で形質転換した大腸菌(BL21(DE3))を2%(w/v)グルコース及び100 μg/mlアンピシリン含有2 x YT培地で培養し、600 nmの吸光度が0.7に達した時点でイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを最終濃度0.15 mMになるように添加して行った。20℃で 22.5時間培養した後、遠心により菌体を集め、これを-80℃で精製まで保存した。凍結保存した菌体を10 mM Tris-HCl (pH7.5), 0.5 M NaCl, 1 mM DTT, 1 mM PMSF, 10 mM MgCl2, 25 μg/ml DNase, 0.2 mg/ml 卵白リゾチーム中によく懸濁した後に、最終濃度1%になるようにTriton X-100を加えて18分間超音波処理した。18,800 x gで75分間遠心し、得られた上清中の組み換えタンパク質をラクトースアガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製した後に、透析によってバッファーをPBSに置換した。これを0.22 μmの滅菌フィルターを通して沈殿物を除去した後に、セルロファイン ET-Clean L処理でエンドトキシンを除去し、さらに0.22 μmの滅菌フィルターを通して雑菌及び沈殿物を除去して G9NC(null) の最終標品とした。
このようにして調製された G9NC(null) はタンパク質ポリアクリルアミド電気泳動で夾雑バンドを認めず、エンドトキシン量は 0.5 EU/ml 以下である。凍結・融解に安定で、4℃保存でも半年以上安定に生物活性を保持する。
【0048】
ガレクチン-9としては、ネイティブなL 型ガレクチン-9、M 型ガレクチン-9及びS 型ガレクチン-9を「遺伝子組換え技術」を用い、宿主細胞中で発現して得られたリコンビナント体を使用してもよい。
上記実施例1〜3で使用のガレクチン-8は、PCT/JP2005/009211 (出願日2005.05.13)の実施例1で製造取得されているG8NC(null)〔PCT/JP2005/009211 (出願日2005.05.13)の配列番号1で示される塩基配列によりコードされ、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〕を使用した。
該安定型ガレクチン-8、すなわちG8NC(null)は次のようにしても調製できる。
安定型ガレクチン-8 (G8NC(null))の発現誘導は、pET-G8NC(null)でエレクトロポレーション法で形質転換した大腸菌(BL21(DE3))を使用して、上記G9NC(null)調製と同様に行い、培養物からの調製処理も、上記G9NC(null)と同様に行った。このようにして調製された G8NC(null)は上記G9NC(null)と同様、タンパク質ポリアクリルアミド電気泳動で夾雑バンドを認めず、エンドトキシン量も 0.5 EU/ml 以下である。
ガレクチン-8としては、ネイティブなL 型ガレクチン-8及びM 型ガレクチン-8を「遺伝子組換え技術」を用い、宿主細胞中で発現して得られたリコンビナント体を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、有効成分としてガレクチン-8、ガレクチン-9及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを含有せしめてなるマスト細胞(肥満細胞)安定化剤、ガレクチン-8、ガレクチン-9及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものが発揮する生物活性を利用して無秩序なマスト細胞の活性化に起因する病気又は疾患に対する治療剤及び/又は予防剤、さらにはアレルギー疾患などの異常なマスト細胞活性化に関連する疾患に対する治療剤及び/又は予防剤とすることにより、治療が困難な対象に対して、効果的に優れた活性を得ている。例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎などを含むマスト細胞の活性化が発症に関与すると考えられている疾患の治療及び/又は予防技術が提供される。本発明では、ガレクチン-8、ガレクチン-9及びその改変体、並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの遺伝子を導入することによる無秩序なマスト細胞の活性化にに起因する病気又は疾患治療及び/又は予防技術、さらにはアレルギー疾患などの異常なマスト細胞活性化に関連する疾患治療及び/又は予防技術も提供する。ガレクチン-9(または-8)、さらには、ガレクチン-9誘導因子による顆粒放出抑制アッセイ系は、その抑制を阻害してマスト細胞を活性化させる物質の探索目的に使用可能である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】マスト細胞RBL-2H3細胞からの顆粒放出に及ぼす安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8の作用効果のアッセイ結果を示す。
【図2】安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8が、マスト細胞RBL-2H3細胞に対して細胞傷害活性を示すか否かをアッセイした結果を示す。RBL-2H3細胞に対して細胞傷害活性を示さなかった。
【図3】プライミングされた状態のRBL-2H3細胞からの顆粒放出に及ぼす安定化ガレクチン-9および安定化ガレクチン-8の作用効果のアッセイ結果を示す。
【図4】安定化ガレクチン-9, G9NC(null)のマスト細胞RBL-2H3細胞に対する作用効果がラクトースなどにより影響を受けるか否かをアッセイした結果を示す。ラクトースは、RBL-2H3細胞に対するG9NC(null)の作用効果を打ち消した。
【図5】IgE 及び抗原により起こされる細胞内カルシウムイオンの上昇に対する安定化ガレクチン-9, G9NC(null)の作用効果のアッセイ結果を示す。G9NC(null)は、該細胞内カルシウムイオンの上昇を中和した。
【図6】受身皮膚アナフラキシーによる耳介浮腫に対する安定化ガレクチン-9, G9NC(null)の作用効果を調べた結果を示す。G9NC(null)はアナフラキシーによる浮腫を抑制した。
【図7】喘息モデルモルモットでの気道抵抗増大に対する安定化ガレクチン-9, G9NC(null) の作用効果を調べた結果を示す。G9NC(null)は喘息症状を緩和する作用を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞安定化剤。
【請求項2】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸を有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞安定化剤。
【請求項3】
マスト細胞に、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを接触せしめ、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞安定化法。
【請求項4】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものをコードする核酸をマスト細胞に遺伝子導入することを特徴とする安定化マスト細胞調製法。
【請求項5】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有することを特徴とするマスト細胞の脱顆粒抑制剤。
【請求項6】
マスト細胞に、ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを接触せしめ、マスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞の脱顆粒抑制法。
【請求項7】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞を安定化することを特徴とするマスト細胞の活性化が発症に関与する病気又は疾患の治療及び/又は予防剤。
【請求項8】
病気又は疾患が、アレルギー疾患、免疫性疾患及び炎症性疾患からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項7記載の治療及び/又は予防剤。
【請求項9】
病気又は疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、接触性皮膚炎、リウマチなどを含む免疫性疾患、および炎症性腸疾患、間質性膀胱炎及びその他のマスト細胞の無秩序な活性化が発症に関与する病気又は疾患からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項7記載の治療及び/又は予防剤。
【請求項10】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞の活性化により生ずる顆粒放出を抑制することを特徴とするマスト細胞の活性化が発症に関与する病気又は疾患の治療及び/又は予防剤。
【請求項11】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものを有効成分として含有し且つマスト細胞を安定化することを特徴とする制癌剤。
【請求項12】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下にマスト細胞と試験物質とを接触せしめ、マスト細胞からの顆粒放出抑制が阻害されるか否かを指標とすることを特徴とするマスト細胞活性化物質のアッセイ法。
【請求項13】
ガレクチン-8、ガレクチン-9、及びその改変体並びにガレクチン-9誘導因子からなる群から選択されたものの存在下にマスト細胞と試験物質とを接触せしめ、マスト細胞の活性化が抑制されるか否かを指標とすることを特徴とするマスト細胞活性化物質のアッセイ法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−126388(P2007−126388A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319478(P2005−319478)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(500507630)株式会社ガルファーマ (7)
【Fターム(参考)】