説明

マッサージ化粧料

【課題】 従来のマッサージ化粧料のような欠点のない、優れたマッサージ感を与えることのできるマッサージ化粧料を開発すること。
【解決手段】
次の成分(a)ないし(c)を含有することを特徴とするマッサージ化粧料。
(a)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合した分子量10万以上のブロック共重合体
またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い
温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)水溶性高分子
(c)繊維

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ化粧料に関し、更に詳細には、所定の温度でその水溶液がゾル状態からゲル状態に転移を起こす高分子化合物を利用した、粘性による厚み感があり、ソフトで良好なマッサージ効果が得られ、優れた使用性を有するマッサージ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マッサージ化粧料として、オイルを多量に含んだ化粧料が開発、使用されている。このようなオイルリッチなマッサージ化粧料に使用されるオイルとしては、スクワラン、オリーブ油、トリグリセライド系オイルやエステル系オイルなどのような、液状から半固形状のものが知られている。
【0003】
しかしながら、このようなタイプのマッサージ化粧料は、その多量に配合したオイル分による使用感触の重さや、マッサージ後皮膚に残留する油分によるべたつき感やぎらつき感、閉塞感が残り、不愉快に感じられるという問題があった(特許文献1)。
【0004】
また近年は、皮膚上で塗擦しやすく、さらにみずみずしい感触が得られることから、水性ゲルタイプのマッサージ化粧料も使用されている。しかしながら、水性ゲルとして汎用性の高いカルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子を利用する場合は、皮膚上に存在する電解質成分で粘度低下を起こすため、マッサージ中の厚みが確保できず、マッサージ効果も不十分であった(特許文献2)。
【0005】
更に、マッサージ効果を高める工夫として、スクラブ剤の配合も行われている。このようなスクラブ剤としては、より高い清浄、角質除去効果を目的として、非水溶性結合剤により造粒された顆粒や、多孔性球状セルロース、塩化ナトリウムを主成分とする粒体等を利用することが開示されている(特許文献3、4)。更に他の方法として、老化した皮膚の角層を取り除くために、皮膚に一定組成のクリーム状又は乳液状化粧料を塗布し、マッサージを行うことで、化粧料をぼろぼろとした消しゴムのカス状とし、角層等の皮膚の汚れと共に除去する、いわゆるゴマージュ化粧料が用いられている(特許文献5)
【0006】
しかし、スクラブやゴマージュを用いたマッサージ効果の付与は、皮膚に対する摩擦が強すぎるために、皮膚への物理刺激が強く、時には傷つけてしまう等の課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−82481
【特許文献2】特開2004−339110
【特許文献3】特開平3−123732
【特許文献4】特開昭60−152407
【特許文献5】特許第3558248号
【特許文献6】特許第3585309号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、上記したような欠点のない、優れたマッサージ感を与えることのできるマッサージ化粧料の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者は鋭意研究を行った結果、0〜37℃の温度範囲で水溶液がゾル状態からゲル状態に転移を起こす高分子化合物と、水溶性高分子および繊維とを組み合わせ配合することで、肌上でマッサージ行為を行うに伴い、繊維を核とした高分子のソフトスクラブが形成され、粘性による厚み感と合わさってソフトで良好なマッサージ効果が得られ、優れた使用性を有するマッサージ化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明は、次の成分(a)ないし(c)
(a)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合した分子量10万以上のブロック共重合体
またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い
温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)水溶性高分子
(c)繊維
を含有することを特徴とするマッサージ化粧料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマッサージ化粧料は、肌上でマッサージ行為を行うに伴い、繊維を核とした高分子のソフトスクラブが形成され、粘性による厚み感が合わさり、ソフトで良好なマッサージ効果が得られ、優れた使用性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の成分(a)における、下限臨界溶液温度(LCST;Lower Critical Solution Temperature)とは、この温度よりも低い温度では高分子が水に溶解して透明の溶液となるが、この温度よりも高い温度では不溶化して白濁するか沈殿が生じ、相分離する温度である。
【0013】
本発明のマッサージ化粧料は、0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度を有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物(成分(a))を必須成分として用いる。
【0014】
この成分(a)の高分子化合物は、その水溶液が固有のゾル−ゲル転移温度を有するものであり、ゾル−ゲル転移温度より低い温度では流動性を有するゾル状であるが、ゾル−ゲル転移温度よりも高い温度では流動性を失ってゲル化する性質を持つものである。
【0015】
このような高分子化合物は公知の化合物であり、例えば、特許文献6にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物として記載されているものである。またこの高分子化合物の製造も、この特許文献6の実施例1ないし6等の記載に従って行うことができる。
【0016】
上記成分(a)の高分子化合物は、複数の0℃よりも高く37℃よりも低いLCSTを有する高分子部分(以下、「LCST高分子部分」ということがある)を含むものである。このLCST高分子部分には、LCST挙動を示す温度応答性高分子が含まれる。LCST挙動を示す温度応答性高分子としては、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタクリルアミド誘導体及びこれらの共重合体、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。より具体的には、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミドなどが挙げられ、特にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0017】
上記LCST高分子部分は、前記LCST挙動を示す温度応答性高分子のみから構成されるホモポリマーであってもよいが、さらに他のモノマーと共重合させたコポリマーであってもよい。このようなコポリマーを構成する他のモノマーとして、親水性モノマー及び疎水性モノマーのいずれも用いることができる。
【0018】
親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等、並びに塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩等が例示できる。
【0019】
一方、上記疎水性モノマーとしては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレート誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミド等のN−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いる成分(a)の高分子化合物を構成する上記LCST高分子部分は、LCSTが0℃より高く37℃よりも低い範囲にあるものである。このLCST高分子部分をホモポリマーとする場合は、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミドやポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミドなど、固有のLCSTが0〜37℃の範囲にあるものを適宜選択することができる。一方、LCST高分子部分をコポリマーとする場合には、一般的にLCSTを有する高分子に親水性モノマーを共重合することにより、コポリマーのLCSTを上昇させることが可能となり、また疎水性モノマーを共重合することにより、LCSTを下降させることが可能となるため、LCST挙動を示す温度応答性高分子と共重合させるモノマーの組み合わせを選択し、組成比等を調整することによって、0〜37℃の範囲で高分子部分のLCSTを調整することができる。
【0021】
また、本発明に用いる成分(a)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分の他に、親水性高分子部分を含有するものである。この親水性高分子部分を構成する高分子としては、例えば、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる成分(a)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト重合体である。グラフト重合体の場合は、主鎖であるLCST高分子部分に親水性高分子部分が側鎖として結合したものであっても、主鎖である親水性高分子部分に、側鎖としてLCST高分子部分が結合したものであってもよい。
【0023】
上記LCST高分子部分と、親水性高分子部分とのブロック共重合体は、例えば予め両者に反応活性な官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等)を複数導入し、両者を化学反応により結合させることによって得ることができる。例えば、親水性高分子であるポリエチレンオキサイドの両末端に重合性官能基であるメタクリロイル基を導入し、LCSTを有する高分子を構成するモノマーであるN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0024】
また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−アクリロキシスクシンイミドを共重合させて1級アミンと反応する基を導入した高分子を合成し、これと末端に1級アミノ基を導入したポリエチレンオキサイドを反応させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0025】
一方、上記LCSTを有する高分子部分と親水性高分子部分とのグラフト共重合体は、通常のグラフト重合法を用いることができ、重合体の連鎖移動反応を利用する方法、幹重合体に遊離基に分裂し得る官能基を導入し、該官能基から重合を開始する方法、幹重合体からイオン重合を開始せしめる方法等を用いることができるが、側鎖の重合度を制御するという観点からは、LCST高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、親水性高分子部分を与えるモノマーと共重合させる方法や、親水性高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、LCST高分子部分を構成するモノマーと共重合させる方法などが好ましく用いられる。
【0026】
本発明に用いられる成分(a)の高分子化合物の分子量は10万以上であり、この条件を満たしたものであると、ゾル−ゲル転移温度より高い場合に良好にゲルが形成されるので好ましい。このような分子量のものは、上記のようにして得られたブロック共重合体やグラフト共重合体から、限外ろ過などの通常の分離精製手段を用いて得ることができる。また分子量の測定は、前記特許文献6に記載の方法に従って行うことができる。
【0027】
以上のようにして、LCST高分子部分と親水性高分子部分の組成や、両高分子部分の疎水度および親水度、分子量等によって、成分(a)の高分子化合物の水溶液のゾルーゲル転移温度を0℃よりも高く37℃よりも低い範囲に調整し、好ましくは20℃以上37℃未満、特に好ましくは30℃以上37℃未満の範囲である。成分(a)のゾルーゲル転移温度が20℃未満であると、使用時のゾル−ゲル転移が極端すぎて、なめらかでスムーズなマッサージ行為を行うことができなくなるとともに、保存時の化粧料自体の経時安定性も悪化してしまうことがある。
【0028】
上記の成分(a)の高分子化合物としては、市販されているメビジェル−32(ゾル−ゲル転移温度32℃)やメビジェル−20(ゾル−ゲル転移温度20℃;いずれも一丸ファルコス社製)を用いることもでき、メビジェル−32が好ましく用いられる。このメビジェル−32および20は、N−イソプロピルアクリルアミド・メタクリル酸n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C)グリコールジメタアクリレート共重合体の15w/w%水溶液である。
【0029】
本発明のマッサージ化粧料に用いられる成分(a)の水溶液のゾル−ゲル転移温度は、マッサージ化粧料を肌に塗布し展延する動作の間、流動性が保てるように、使用する環境の温度に合わせて適宜設定すればよく、例えば、上記市販品を利用して温度応答性高分子化合物の水溶液のゾル−ゲル転移温度を20℃より高く32℃より低い温度に調整したものを用いることができる。
【0030】
本発明のマッサージ化粧料における成分(a)の高分子化合物の配合量は特に限定されるものではないが、固形物換算で0.45〜10.5質量%(以下単に「%」と略す)であり、更に好ましくは0.75〜7.5%である。
【0031】
また、本発明の成分(b)である水溶性高分子としては、耐塩性水溶性高分子が好ましく、具体的には、カラヤガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、トラガント、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、キサンタンガム等が挙げられ、その1種又は2種以上を利用することができる。
【0032】
本発明のマッサージ化粧料において、成分(b)の水溶性高分子の含有量は、固形分換算で0.01〜1.0%であり、更に好ましくは0.02〜0.6%である。配合量が、0.01%以下であると、なめらかでスムーズなマッサージ行為を行うことができなくなり、1.0%以上であると使用時のずるつき、べたつきが生じ、使用性が悪化する。
【0033】
なお、耐塩性水溶性高分子とは、当該水溶性高分子を1%と、塩化ナトリウムを0.5%含む粘稠性水溶液の25℃における粘度と、塩化ナトリウムを含まない粘稠性水溶液の25℃における粘度の比(粘度変化率)が0.5:1以上である水溶性高分子を意味する。
【0034】
上記で説明した成分(a)と成分(b)は、それらの比(成分(a)/(b))として1/1〜10/0.01とすることが好ましい。それらの比が1/1より小さいと、使用時における(a)のゾル−ゲル転移に起因するソフトスクラブ効果が不十分で、更に(b)の水溶性高分子の使用感が強く出てしまい、従来技術に近い、一般的な効果にとどまってしまうことがある。また逆に、それらの比が10/0.01より大きいと、(a)のゾル−ゲル転移に伴う粘性が高くなりすぎることで、なめらかでスムーズなマッサージ行為を行うことができなくなる場合がある。
【0035】
更に、本発明のマッサージ化粧料に配合する成分(c)の繊維としては、その長さが0.01mm〜5.0mm、太さが0.01〜5テックスの範囲のものであることが好ましく、特に、長さが0.1mm〜2.5mm、太さが0.1〜5テックスであることがより好ましい。この範囲の長さ、太さであると、マッサージ行為中に、それ自体が核となり、成分(a)の高分子および成分(b)の水溶性高分子と絡み合うことで、柔らかくそれでいて厚みのあるソフトスクラブを形成し、マッサージ効果を高めることができる。逆に、成分(c)の繊維が0.01mmより短いと、ソフトスクラブ形成の核になりにくく、5.0mmより長いとマッサージ時の使用感が悪化する。更に、0.01テックスより細いとソフトスクラブの核になりにくく、5テックスより太いと使用時に、その物理的刺激が生じ、肌をいためる可能性がある。
【0036】
また、成分(c)の繊維の配合量は、0.1〜10.0%の範囲とすることが好ましい。繊維の配合量が0.1%以下であるとソフトスクラブ形成の核になりにくく、また、10%以上であるとマッサージ時のなめらかさが損なわれてしまうことがある。
【0037】
本発明のマッサージ化粧料は、上記必須成分(a)〜(c)を常法に従って混合することにより調整されるが、必要により更に成分(d)として油性成分を配合することもできる。この場合は、乳化型のマッサージ化粧料とされ、油中水型および水中油型や油中水中油型や水中油中水型などとすることができる。中でも、水中油型であると、使用時のみずみずしさとマッサージ効果の両方が満たされるため、より好ましい。
【0038】
また、配合される成分(d)の油性成分としては、合成エステル油や天然エステル油等の極性油が好ましい。より具体的には、例えばミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等の合成エステル油や、例えばメドゥーフォーム油、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の天然エステル油が挙げられる。
【0039】
特に、そのIOBが0.1〜0.7である極性油分がより好ましい。ここで、IOB値とは、化合物の官能基の無機性値(IV)及び有機性値(OV)から求められる数値(IOB値=IV/OV)であり、その数値が大きいほど極性が高いことを意味する。この範囲である極性油を用いることで、よりマッサージ効果を高め、使用後の肌を柔らかく、潤すことができる。
【0040】
成分(d)の油性成分を本発明のマッサージ化粧料を配合する場合、その配合量は、0.1〜20.0%の範囲とすることが好ましい。成分(d)の配合量が0.1%以下であると、マッサージ行為により、肌を柔らかくする効果が弱い場合があり、20.0%以上であると、後肌にべたつき、ぬるつきが生じてしまう場合がある。
【0041】
本発明マッサージ化粧料には、上記した各成分の他、任意成分として、成分(b)以外の水溶性高分子、pH調整剤、水性成分、紫外線吸収剤、トリメチルシロキシケイ酸等の油溶性被膜形成剤、エタノール等の溶剤、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミン類、美容成分、保湿剤、香料、殺菌剤、酸化防止剤等を適宜配合することも可能である。
【0042】
また、本発明のマッサージ化粧料の剤型としては、液剤、乳剤の他、霧状または泡状で噴射するエアゾール剤等とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げ本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0044】
実 施 例 1
マッサージ化粧料:
表1に示す組成および下記製造法により、液状または水中油型乳化状のマッサージ化粧料を得た。得られた各マッサージ化粧料について、下記評価方法によりその性能を評価した。この結果も表1中に示す。
【0045】
[ 組 成 ]
【表1】

【0046】
[ 製造法 ]
A: 2〜7を80℃まで加熱し、均一に混合分散する。
B: 8〜12を80℃まで加熱し、均一に混合溶解する。
C: BにAを加え、攪拌しながら乳化する。その後、30℃まで冷却する。
D: Cに1及び13、14を加え、均一に攪拌混合することで、目的であるマッサージ化粧料を得る。
【0047】
[ 評価法 ]
得られた本発明品および比較品のマッサージ化粧料について、専門パネル20名が頬部にピンポン球程度の量を塗布し、被験者自身がマッサージ行為を行い、以下の6項目について評価を行った。評価項目は、(1)使用時におけるマッサージ化粧料の肌上での厚み、(2)マッサージ開始から5分後における化粧料の肌上での厚み、(3)マッサージ時のなめらかさ、(4)後肌のやわらかさ、(5)後肌の潤いおよび(6)後肌のべたつき・ぬるつきであり、その評価基準は、下の通りである。
【0048】
(1)使用時におけるマッサージ化粧料の肌上での厚み
<評価基準>
4点…マッサージ時、化粧料は非常に厚みがあり、コク感に優れていた。
3点…マッサージ時、化粧料はかなり厚みがあり、コク感に優れていた。
2点…マッサージ時、化粧料はわずかに厚みがあり、コク感は普通であった。
1点…マッサージ時、化粧料はほとんど厚みがなく、コク感が劣っていた。
【0049】
(2)マッサージ開始から5分後における化粧料の肌上での厚み
<評価基準>
4点…5分後も、化粧料は非常に厚みがあり、コク感に優れていた。
3点…5分後も、化粧料はかなり厚みがあり、コク感に優れていた。
2点…5分後も、化粧料はわずかに厚みがあり、コク感は普通であった。
1点…5分後も、化粧料はほとんど厚みがあり、コク感が劣っていた。
【0050】
(3)マッサージ時のなめらかさ
<評価基準>
4点…マッサージ時、化粧料は非常になめらかに伸び広がった。
3点…マッサージ時、化粧料はかなりなめらかに伸び広がった。
2点…マッサージ時、化粧料はわずかに伸び広がった。
1点…マッサージ時、化粧料はほとんど伸び広がらなかった。
【0051】
(4)後肌のやわらかさ
<評価基準>
4点…後肌は非常にやわらかくなった。
3点…後肌はかなりやわらかくなった。
2点…後肌はわずかにやわらかくなった。
1点…後肌はほとんどやわらかくならなかった。
【0052】
(5)後肌の潤い
<評価基準>
4点…後肌は非常に潤った。
3点…後肌はかなり潤った。
2点…後肌はわずかに潤った。
1点…後肌はほとんど潤わなかった。
【0053】
(6)後肌のべたつき・ぬるつき
<評価基準>
4点…後肌はべたつき・ぬるつきが全くなかった。
3点…後肌はべたつき・ぬるつきがほとんどなかった。
2点…後肌はわずかにべたつき・ぬるつきがあった。
1点…後肌はべたつき・ぬるつきがあった。
【0054】
また、マッサージ化粧料の各項目での評価は、専門パネルの各項目の評価点数を合計し、以下のランクにより行った。
<総合評価>
点数の合計 : 評 価
70〜80点 : AA
60〜69点 : A
50〜59点 : B
40〜49点 : C
30〜39点 : D
20〜29点 : E
【0055】
実 施 例 2
ノニオンSAA系水中油型処方のマッサージ化粧料:
下記組成および調製方法により、ノニオンSAA系水中油型処方のマッサージ化粧料を得た。
【0056】
( 組 成 )
1.POE(20)セチルエーテル 2.0%
2.親油型モノステアリン酸グリセリル 4.0%
3.セトステアリルアルコール 2.0%
4.白色ワセリン 5.0%
5.スクワラン 5.0%
6.メビジェル−20(固形分15%水溶液)*1 50.0%
7.クエン酸 0.01%
8.リン酸一水素ナトリウム 0.1%
9.キサンタンガム 0.05%
10.ナイロン繊維*2 8.0%
11.防腐剤 適 量
12.精製水 合計100%となる量
*1 一丸ファルコス社製(成分(a)に該当)
*2 太さ:1.0テックス、長さ:0.5mm
【0057】
( 調製方法 )
成分1〜5および成分7〜12を、共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化する。続いて冷却し、10℃にて成分6を加えて均一に攪拌混合することで目的であるマッサージ化粧料を得る。
【0058】
得られたマッサージ化粧料は、滑らかに伸び広がるにもかかわらず、使用時に化粧料の厚みが持続することで従来にないコク感に優れるマッサージ行為を実現することができるものであった。その結果、後肌のやわらかさ、潤いを付与することができた。
【0059】
実 施 例 3
アニオンSAA系水中油型処方のマッサージ化粧料:
下記組成および調製方法により、アニオンSAA系水中油型処方のマッサージ化粧料を得た。
【0060】
( 組 成 )
1.メビジェル−32(固形分15%水溶液)*3 30.0%
2.N−ステアロイル−メチルタウリンナトリウム 1.0%
3.グリセリン 8.0%
4.1,3−ブチレングリコール 13.0%
5.メチルセルロース 0.3%
6.アスコルビン酸2−グルコシド 1.0%
7.クエン酸 0.01%
8.リン酸一水素ナトリウム 0.1%
9.水酸化ナトリウム 0.25%
10.セルロース繊維*4 10.0%
11.精製水 合計100%となる量
12.防腐剤 適 量
13.セトステアリルアルコール 3.0%
14.メドーフォーム油 10.0%
15.エタノール 5.0%
*3 一丸ファルコス社製(成分(a)に該当)
*4 太さ:2.0テックス、長さ:2.0mm
【0061】
( 調製方法 )
成分2〜12および成分13〜14を、共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化する。続いて冷却し、20℃にて成分1および15を加えて均一に攪拌混合することで目的であるマッサージ化粧料を得る。
【0062】
得られたマッサージ化粧料は、滑らかに伸び広がるにもかかわらず、使用時に化粧料の厚みが持続することで従来にないコク感に優れるマッサージ行為を実現することができるものであった。その結果、後肌のやわらかさ、潤いを付与することができた。
【0063】
実 施 例 4
リン脂質系水中油型処方のマッサージ化粧料:
下記組成および調製方法により、リン脂質系水中油型処方のマッサージ化粧料を得た。
【0064】
( 組 成 )
1.メビジェル−20(固形分15%水溶液)*1 40.0%
2.水添レシチン 1.0%
3.グリセリン 5.0%
4.1,3−ブチレングリコール 15.0%
5.カラギーナン 0.15%
6.精製水 合計100%となる量
7.ナイロン繊維*5 3.0%
8.メチルポリシロキサン*6 3.0%
*1 一丸ファルコス社製(成分(a)に該当)
*5 太さ:0.5テックス、長さ:1.5mm
*6 信越化学工業社製 シリコンKF−96(100CS)
【0065】
( 調製方法 )
成分2〜7および成分8を、共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化する。続いて冷却し、10℃にて成分1を加えて均一に攪拌混合することで目的であるマッサージ化粧料を得る。
【0066】
得られたマッサージ化粧料は、滑らかに伸び広がるにもかかわらず、使用時に化粧料の厚みが持続することで従来にないコク感に優れるマッサージ行為を実現することができるものであった。その結果、後肌のやわらかさ、潤いを付与することができた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のマッサージ化粧料は、これに配合されている成分(a)と成分(b)がマッサージを行うに伴い、成分(c)である繊維を核として高分子のソフトスクラブを形成するものである。そして、体温により成分(a)が示す粘性による厚み感と合わさって、ソフトで良好なマッサージ効果が得られるものである。
【0068】
従って、本発明のマッサージ化粧料は、家庭でも、優れたマッサージ性を得ることができる化粧料として利用することができるものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)ないし(c)
(a)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高
分子部分と親水性高分子部分が結合した分子量10万以上のブロック共重合体
またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い
温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)水溶性高分子
(c)繊維
を含有することを特徴とするマッサージ化粧料。
【請求項2】
成分(a)の高分子化合物を、固形分換算で0.45〜10.5質量%含有する請求項1記載のマッサージ化粧料。
【請求項3】
成分(a)の高分子化合物のゾル−ゲル転移温度が20℃以上である請求項1または2記載のマッサージ化粧料。
【請求項4】
成分(b)の水溶性高分子が、耐塩性水溶性高分子である請求項1ないし3の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項5】
成分(b)の水溶性高分子が、カラヤガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、トラガント、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびキサンタンガムからなる群より選ばれた1種又は2種以上である請求項1ないし4の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項6】
成分(b)の水溶性高分子を、固形分換算で0.01〜1.0質量%含有する請求項1ないし5の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項7】
成分(a)の高分子化合物と成分(b)の水溶性高分子の配合比が、成分(a)/(b)として1/1〜10/0.01である請求項1ないし6の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項8】
成分(c)の繊維が、長さ0.01mm〜5.0mm、太さ0.01〜5テックスである請求項1ないし7の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項9】
成分(c)の繊維を0.1〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項1ないし7の何れかの項記載のマッサージ化粧料。
【請求項10】
更に成分(d)として、油性成分を含有し、乳化型が水中油型である請求項1ないし9の何れかの項記載のマッサージ化粧料
【請求項11】
成分(d)の油性成分が、極性油である請求項10記載のマッサージ化粧料。


【公開番号】特開2009−235022(P2009−235022A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85533(P2008−85533)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】