説明

マット

【課題】 ほつれを十分に防止できると共に、外観美に優れたマットを提供する。
【解決手段】 この発明に係るマット1は、基布2の上面にパイル3が植設され、該基布2の下面に不織布層4が積層一体化され、該不織布層4の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部10が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用フロアーマットとして好適に用いられるマットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用フロアーマットとしては、従来より、表面側にパイルが植設された基布の裏面側に不織布をラテックスエマルジョンで貼り合わせた構成のもの(特許文献1参照)が多く用いられるようになってきている。しかして、従来の自動車用フロアーマットでは、端縁からの糸のほつれ等を防止すべく、マットの周縁部が、オーバーロック糸によって縫製(かがり縫い)されている。
【特許文献1】特開2004−17882号公報(請求項1、段落0021〜0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようにマットの周縁部をオーバーロック加工した構成では、このオーバーロック縫製糸自体がほつれてしまうことがあり、縁部における糸のほつれを十分に防止することはできなかった。
【0004】
例えば、近年特にミニバンタイプの自動車では、運転席側(フロント側)は床置き式が用いられ、後部座席側(リアー側)は装着式(例えばマットの周縁部を断面形状がコの字状の固定レール内に差し込み、マジックテープで固定する等の装着式)のものが用いられることが多いが、このような装着式を採用した場合には特にオーバーロック縫製糸のほつれ発生が非常に生じやすく問題となっていた。即ち、マットを固定レール内に差し込む操作を行う際及びマットを固定レールから取り外す操作を行う際にオーバーロック縫製糸のほつれ発生を非常に生じやすかった。また、オーバーロック加工で装着式の構成を採用した場合、差し込み部の厚さの制御が非常に難しかった。
【0005】
また、マット周縁部がオーバーロック縫製されたものは縫製糸によるかがり縫い状態が外観されるので、外観美に劣るという問題もあった。特に2枚以上のマットを突き合わせ状態で隣接配置する配置形態では、突き合わせ位置でオーバーロック縫製糸によるかがり縫い状態が外観されて外観美が顕著に低下する。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ほつれを十分に防止できると共に、外観美に優れたマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]基布の上面にパイルが植設され、該基布の下面に不織布層が積層一体化され、該不織布層の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されていることを特徴とするマット。
【0009】
[2]前記不織布層の周縁部の下面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている前項1に記載のマット。
【0010】
[3]マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている前項1に記載のマット。
【0011】
[4]マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成され、前記不織布層の周縁部の下面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている前項1に記載のマット。
【0012】
[5]マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に樹脂製の縁部材が接着一体化されていることを特徴とする前項1または2に記載のマット。
【0013】
[6]前記樹脂コート部は、塗布された光硬化性樹脂に光が照射されることによって硬化したものである前項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【0014】
[7]前記樹脂コート部は、塗布されたホットメルト樹脂が固化したものである前項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【0015】
[8]前記樹脂コート部は、合成樹脂系水性エマルジョンが塗布されて乾燥硬化したものである前項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【0016】
[9]自動車用フロアーマットとして用いられる前項1〜8のいずれか1項に記載のマット。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、不織布層の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されているので、ほつれ発生を効果的に防止することができる。また、縁処理としては、樹脂コート部を形成するだけで良いので、生産性を向上できる。また、オーバーロック縫製のかがり縫い状態は外観されないので、外観美が向上して十分な高級感が得られるものとなる。更に、不織布層を有するので、良好な吸音性能を確保できる。
【0018】
[2]の発明では、不織布層の周縁部の下面にも、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されているので、ほつれ発生をより効果的に防止することができる。
【0019】
[3]の発明では、マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されているから、マットの周縁部のパイルを刈り取って縁取りした構成においてもほつれ発生を効果的に防止することができる。
【0020】
[4]の発明では、マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されているから、マットの周縁部のパイルを刈り取って縁取りした構成においてもほつれ発生を効果的に防止できると共に、不織布層の周縁部の下面にも、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されているので、ほつれ発生を十分に防止できる。
【0021】
[5]の発明では、マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、基布の上面におけるパイル刈り取り領域に樹脂製の縁部材が接着一体化されているので、マットの周縁部のパイルを刈り取って縁取りした構成においてもほつれ発生を効果的に防止することができると共に、周縁部の強度、形態安定性を向上できる。
【0022】
[6]の発明では、樹脂コート部は、塗布された光硬化性樹脂に光が照射されることによって硬化したものであり、この光による硬化が瞬時であることから、生産性をより向上できる利点がある。
【0023】
[7]の発明では、樹脂コート部は、塗布されたホットメルト樹脂が固化したものであり、不織布内に含浸された樹脂も十分に硬化させることができることから、ほつれ発生を確実に防止できるものとなる。
【0024】
[8]の発明では、樹脂コート部は、合成樹脂系水性エマルジョンが塗布されて乾燥硬化したものであり、不織布の表層の構成繊維間に樹脂が十分に入り込むので、十分な接着力が得られ、これによりほつれ発生を確実に防止できる。また、加熱設備や光照射設備を要しないから、設備コストが小さくて済み、低コストである。
【0025】
[9]の発明では、生産性が高く、ほつれを十分に防止できると共に、十分な高級感の得られる自動車用フロアーマットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明に係るマット(1)は、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化され、前記不織布層(4)の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されていることを特徴とする。
【0027】
上記構成のマット(1)では、不織布層(4)の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されており、塗布された樹脂の少なくとも一部は不織布層(4)内に含浸された状態で硬化するので、アンカー効果によって樹脂コート部(10)は不織布層(4)の周側面に強固に一体化され、このような樹脂コート部(10)によりほつれ発生を効果的に防止することができる。また、縁処理としては、樹脂コート部(10)を形成するだけで良いので、生産性を向上することができる。更に、オーバーロック縫製のかがり縫い状態は外観されないことから、良好な外観を呈し、十分な高級感が得られるものとなる。
【0028】
この発明のマット(1)の一実施形態を図1、2に示す。基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化され、前記不織布層(4)の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されている。また、マット(1)の周縁部においてパイル(3)が根元で刈り取られ、基布(2)の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成され、さらに不織布層(4)の周縁部の下面にも、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されている。なお、基布(2)と不織布層(4)とはラテックスエマルジョンによって接着一体化されている。
【0029】
前記実施形態では、パイル刈り取り領域に樹脂コート部(10)が形成されているので、このようなマットの周縁部のパイルを刈り取って縁取りした構成においてもほつれ発生を効果的に防止できると共に、不織布層(4)の周縁部の下面にも樹脂コート部(10)が形成されているので、ほつれ発生を十分に防止できる。
【0030】
なお、前記実施形態では、図2に示すように、不織布層(4)の周側面の上を樹脂コート部(10)で十分に被覆した状態に形成されているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、不織布層(4)の周側面と樹脂コート部(10)の表面とが面一になる状態に形成されていても良い。即ち、樹脂コート部(10)の全体が不織布層(4)内に含浸された状態に形成されても良い。この点は、後述する各実施形態においても同様である。
【0031】
また、前記実施形態では、図2に示すように、不織布層(4)の周縁部の上面、側面及び下面の三方の面にかけて断面コの字状の樹脂コート部(10)が設けられているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば図4に示すように、不織布層(4)の周縁部の上面及び側面に樹脂コート部(10)が設けられた構成を採用しても良い。勿論、不織布層(4)の周側面だけに樹脂コート部(10)が設けられた構成を採用することもできる。
【0032】
この発明のマット(1)の他の実施形態を図5に示す。基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化され、前記不織布層(4)の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されている。また、マット(1)の周縁部においてパイル(3)が根元で刈り取られ、基布(2)の上面におけるパイル刈り取り領域に樹脂製の縁部材(20)が接着剤(20)で接着一体化されている。
【0033】
前記図5の実施形態では、パイル刈り取り領域に樹脂製の縁部材(20)が接着一体化されているので、このようなマットの周縁部のパイルを刈り取って縁取りした構成においてもほつれ発生を効果的に防止することができる。また、縁部材(20)が接着一体化されているので、マット(1)の周縁部の強度を向上できると共に、形態安定性も向上できる。
【0034】
この発明のマット(1)のさらに他の実施形態を図6に示す。基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化され、前記不織布層(4)の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部(10)が形成されている点は、前記実施形態と同様であるが、この実施形態ではマット周縁部でのパイルの刈り取りは行わないものとし、不織布層(4)の周縁部の下面及び側面に樹脂コート部(10)が設けられている。この構成によれば、縁取りしない構成においてもほつれ発生を十分に防止することができる。
【0035】
この発明において、前記樹脂コート部(10)は、樹脂が塗布されて硬化したコート部であるが、その形成方法等は特に限定されない。
【0036】
中でも、前記樹脂コート部(10)は、塗布された光硬化性樹脂に光(紫外線、可視光等)が照射されることによって硬化形成されるのが好ましい。光による硬化は瞬時であるので、生産性をより向上させることができる。前記光硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、接着性に優れる点でアクリルウレタン系光硬化性樹脂を用いるのが好ましい。塗布方法としては、特に限定されないが、例えばスプレー法、ビート法、ロールコーター法等が挙げられる。
【0037】
或いは、前記樹脂コート部(10)は、塗布されたホットメルト樹脂が固化したものであるのが好ましく、この場合には不織布(4)内に含浸された樹脂も十分に硬化させることができることから、ほつれ発生を確実に防止することができる。前記ホットメルト樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、SBR、NBR等が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されないが、例えばスプレー法、ビート法、ロールコーター法等が挙げられる。
【0038】
また、前記樹脂コート部(10)は、合成樹脂系水性エマルジョンが塗布されて乾燥硬化したコート部であっても良い。前記合成樹脂系水性エマルジョンとしては、特に限定されないものの、ウレタン樹脂系水性エマルジョンを用いるのが好ましく、特に好ましいのはシリル化ウレタン樹脂系水性エマルジョンである。前記シリル化ウレタン樹脂系水性エマルジョンとしては、例えば、コニシ株式会社製の「C−SU500」(商品名)を例示できる。
【0039】
或いはまた、前記樹脂コート部(10)は、湿気硬化型の接着剤が塗布されて硬化したコート部であっても良い。
【0040】
この発明において、前記縁部材(20)は樹脂で構成されるが、その素材は特に限定されず、例えば例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、SBR、NBR等が挙げられる。
【0041】
また、前記基布(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば織基布、編基布、不織布等を例示できる。具体的には、例えばヘッシャン、キャップ、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。この基布(2)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばPET等のポリエステル繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維等が挙げられる。
【0042】
また、前記パイル(3)としては、特に限定されるものではなくどのような構成のものも採用でき、例えばカットパイル、ループパイル等が挙げられる。このパイル(3)を構成する糸の種類は特に限定されず、例えばBCF糸、スパン糸、モノフィラ糸等が挙げられ、またその繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、綿、羊毛等が挙げられる。
【0043】
また、前記不織布層(4)を構成する不織布としては、特に限定されるものではないが、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。また、この不織布(4)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、綿、麻等が挙げられる。なお、十分な吸音性能を確保するために、不織布層(4)の厚さは3〜30mmとし、かつ不織布(4)の目付を200〜1000g/m2 の範囲に設定するのが好ましい。
【0044】
この発明に係るマット(1)は、自動車用フロアーマットとして好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係るマットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線の断面図である。
【図3】他の実施形態に係るマットを示す断面図である。
【図4】さらに他の実施形態に係るマットを示す断面図である。
【図5】さらに他の実施形態に係るマットを示す断面図である。
【図6】さらに他の実施形態に係るマットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…マット
2…基布
3…パイル
4…不織布層
10…樹脂コート部
20…縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の上面にパイルが植設され、該基布の下面に不織布層が積層一体化され、該不織布層の周側面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されていることを特徴とするマット。
【請求項2】
前記不織布層の周縁部の下面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている請求項1に記載のマット。
【請求項3】
マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている請求項1に記載のマット。
【請求項4】
マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成され、前記不織布層の周縁部の下面に、樹脂が塗布されて硬化してなる樹脂コート部が形成されている請求項1に記載のマット。
【請求項5】
マットの周縁部においてパイルが刈り取られ、前記基布の上面におけるパイル刈り取り領域に樹脂製の縁部材が接着一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマット。
【請求項6】
前記樹脂コート部は、塗布された光硬化性樹脂に光が照射されることによって硬化したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【請求項7】
前記樹脂コート部は、塗布されたホットメルト樹脂が固化したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【請求項8】
前記樹脂コート部は、合成樹脂系水性エマルジョンが塗布されて乾燥硬化したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のマット。
【請求項9】
自動車用フロアーマットとして用いられる請求項1〜8のいずれか1項に記載のマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218090(P2006−218090A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34478(P2005−34478)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000120696)永大化工株式会社 (22)
【Fターム(参考)】