説明

マラリア増殖阻害に関与するタンパク質

【課題】 赤血球に寄生(感染)したマラリア原虫(Plasmodium sp.)の増殖を阻害する薬物であるロダシアニンと親和性の高いタンパク質(即ちマラリア増殖阻害に関与するタンパク質)とその単離方法、前記マラリア増殖阻害に関与するタンパク質をコードする遺伝子、及び、前記マラリア増殖阻害に関与するタンパク質を標的とする抗マラリア治療剤及び予防剤のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】ロダシアニン色素をリガンドとするアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させ、アフィニティゲルと各タンパクの親和性の差を利用して抗マラリア活性の発現に密接に関係する標的タンパク質を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球に寄生(感染)したマラリア原虫(Plasmodium sp.)の増殖を阻害する薬物であるロダシアニンと親和性の高いタンパク質(即ちマラリア増殖阻害に関与するタンパク質)とその単離方法、前記マラリア増殖阻害に関与するタンパク質をコードする遺伝子、及び、前記マラリア増殖阻害に関与するタンパク質を標的とする抗マラリア治療剤及び予防剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハマダラ蚊により媒介されるマラリアは古代から甚大な被害を及ぼし続けている。2002年のWHOの報告によると現在マラリアの感染者は約3億人であり、うち死亡者は毎年小児を中心に110万人いると推定されている。しかしながら、マラリアによる苦しみは世界に均等に分布しているわけではない。例えば、日本では終戦直後の1946年には幅広く蔓延していたが、媒介蚊の駆除のためのDDT散布などの撲滅プロジェクトによりほぼ制圧できた。この制圧には、日本には冬があるということがかなり密接に影響している。なぜなら、蚊体内でのマラリア原虫の増殖(有性生殖)は16℃以下では起こらず、ライフサイクルがほぼ停止すると考えられるからである。一方、冬を持たない熱帯・亜熱帯地域では、同様の撲滅運動もむなしく現在でもマラリアは猛威をふるっている。実際、死亡者の9割はアフリカの人である。このような現状に、温帯に住んでいる人々は安易に安心してはいけない。最近の森林破壊、エルニーニョ現象や地球温暖化による長期的な天候の変化は蚊の棲息地の北上をもたらしている。また邦人渡航者や来日外国人により国内に持ち込まれる輸入マラリアの増加を考えると、我が国を含む温帯地域においてもマラリアは決して軽視することができない疾病である。
【0003】
マラリア原虫には霊長類、鳥類、爬虫類などに寄生するものが約200種類ほど知られているが、ヒト寄生性の種は熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種が代表的である。中でも熱帯熱マラリアは、重症の脳性マラリアの危険もあることから死亡率が高く、抗熱帯熱マラリア原虫薬の開発が最も必要となっている。
【0004】
マラリアのライフサイクルを以下に説明する(例えば、非特許文献1参照)。まず、ハマダラ蚊が吸血する際に、蚊の唾液腺に集まっている感染型虫体(スポロゾイト)が人の血液内に侵入する。血液中に入った原虫は速やかに肝臓へ移行し、1〜2週間潜伏して肝細胞で増殖を繰り返し、娘虫体であるメロゾイトを形成する。やがてこれが肝細胞を破壊して、赤血球内に侵入する。赤血球内での増殖サイクルを数回繰り替えしているうちに一部が雌雄の生殖母体(ガメトサイト)に分化する。このガメトサイトがハマダラ蚊に吸血されることで、ライフサイクルが繰り返される。なお、原虫は蚊の体内では有性生殖をおこなうが,ヒト体内では多数分裂的な無性生殖を繰り返す。
【0005】
従来、マラリアの治療薬または予防薬としてはキニーネ、クロロキン、アルテミシニン、ピリメサミンおよびアトバコンなどが用いられているが、いかなる予防剤をもってしても感染からの保護を保証することはできない。本発明者らは、新規の抗マラリア剤の開発を目指し、その過程でロダシアニン骨格をもつ化合物MKT-077 が in vitro でクロロキンに匹敵する抗マラリア活性を示すことを見出した (EC50 = 70 nM, selectivity = 210)。MKT-077 は、ロダニン環を母核としてシアニン構造とメロシアニン構造を合わせ持つことからロダシアニン色素に分類される化合物である。誘導体合成の結果、さらに有効なMKH−57を見出した(EC50 = 12 nM, selectivity = 1000) (以上、例えば、特許文献1〜4参照)。また、コンビナトリアル合成によるロダシアニンの合成及び合成された化合物の抗マラリア活性についても報告している(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
また、本発明者らは、蛍光顕微鏡を用いた観察により、MKT-077が熱帯熱マラリア原虫内の特定の部位に集積していることを明らかにしている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2000−191531号公報
【特許文献2】特開2003−034640号公報
【特許文献3】特開2003−034641号公報
【特許文献4】特開2003−034642号公報
【特許文献5】特開2004−137271号公報
【特許文献6】特開2004−144526号公報
【非特許文献1】Nature 2002, 419, 495-496
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロダシアニン化合物が抗マラリア活性を有することが知られているが、それらがマラリア原虫のどの構成単位と相互作用することで抗マラリア活性を発現するかは未知であった。医薬品の開発をするに当たり、疾病の原因となるタンパク質などの生体分子を明らかにすることは重要とされている。そのタンパクの三次元構造の情報をもとにコンピュータ支援により、医薬品となる有機化合物をデザインすることが可能である。また、該当するタンパク質をコードする遺伝子を突き止めることにより、遺伝子レベルでの治療剤や予防ワクチンを開発することが可能となる。本発明の課題は、ロダシニアン化合物と親和性を有するマラリア原虫由来のタンパク質の単離方法や、かかる単離方法により得られる抗マラリア活性を発現するタンパク質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のように、ロダシアニンの特異的集積現象と高い抗マラリア活性にはよい相関がみられたことから、色素集積部位にロダシアニン色素の抗マラリア活性の発現に密接に関係する標的タンパクが存在すると推定した。そこで、ロダシアニン色素をリガンドとするアフィニティゲルを作製しアフィニティクロマトグラフィを行い、標的タンパクの単離を目指すことにした。アフィニティクロマトグラフィとは、種々のリガンドが固定化されたクロマトグラフィ担体を充填したカラムにタンパク溶液を連続的に流し、目的タンパクをリガンドに結合させ、結合親和力に応じて結合タンパクをリガンドから解離、回収するものである。この手法により、アフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク混合物を吸着させ、各タンパクの親和性の差を利用してフラクションに分画し、分画したフラクションをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、およそ27,29,31,33及び37キロダルトンの抗マラリア活性を発現するタンパク質を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、赤血球に寄生したマラリア原虫(Plasmodium sp.)に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現する単離されたタンパク質
【0010】
【化2】


(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子、非置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基、又は複素環基を表し、同一又は異なっていてもよい。A及びBは窒素含有複素環を表し、nは0、1又は2の整数を表し、X−は薬学的に許容しうるアニオンを表す。)(請求項1)に関する。
【0011】
また、本発明は、TIDNNNIDEKの部分アミノ酸配列を有する請求項1記載の単離されたタンパク質(請求項2)や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ33キロダルトンである請求項2記載の単離されたタンパク質(請求項3)や、請求項2又は3記載の単離されたタンパク質をコードする遺伝子(請求項4)や、CNNNNNNNEKの部分アミノ酸配列を有する請求項1記載の単離されたタンパク質(請求項5)や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ27キロダルトンである請求項5記載の単離されたタンパク質(請求項6)や、請求項5又は6記載の単離されたタンパク質をコードする遺伝子(請求項7)や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ29キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質(請求項8)や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ31キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質(請求項9)や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ37キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質(請求項10)に関する。
【0012】
さらに、本発明は、赤血球に寄生したマラリア原虫(Plasmodium sp.)に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法であって、ロダシアニン骨格をリガンド部位とし、アガロースゲルと共有結合でつないだアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させ、アフィニティゲルと各タンパクの親和性の差を利用してフラクションに分画し、そのフラクションをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、抗マラリア活性を発現するタンパク質を分離することを特徴とする抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項11)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、TIDNNNIDEKの部分アミノ酸配列を有する請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項12)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ33キロダルトンである請求項12記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項13)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、CNNNNNNNEKの部分アミノ酸配列を有する請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項14)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ27キロダルトンである請求項14記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項15)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ29キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項16)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ31キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項17)や、抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ37キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法(請求項18)や、請求項1〜3、5、6、8〜10のいずれか記載の単離されたタンパク質と被検物質を接触せしめ、単離されたタンパク質と被検物質との親和性の程度を測定・評価することを特徴とする抗マラリア作用を有する物質のスクリーニング方法(請求項19)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロダシアニン化合物と親和性の高いタンパク質、もしくはそれをコードする遺伝子を標的とする医薬品の開発が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の単離されたタンパク質としては、赤血球に寄生したマラリア原虫に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現するものであれば特に制限されず、TIDNNNIDEK(配列番号1)の部分アミノ酸配列を有するタンパク質、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ33キロダルトンであるタンパク質や、CNNNNNNNEK(配列番号2)の部分アミノ酸配列を有するタンパク質、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ27キロダルトンであるタンパク質の他、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ29キロダルトンであるタンパク質や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ31キロダルトンであるタンパク質や、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ37キロダルトンであるタンパク質を具体的に例示することができる。これら本発明のタンパク質は、後述する本発明の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法により得ることができる。
【0015】
【化3】

【0016】
本発明はまた、上記本発明の単離されたタンパク質をコードする遺伝子に関する。本発明の遺伝子の取得方法や調製方法は特に限定されるものでなく、単離した本発明のタンパク質について、二次元マススペクトル(MS−MS)を測定すること等により決定したアミノ酸配列情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いて当該遺伝子が存在することが予測されるcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより目的の遺伝子を単離することができる。
【0017】
また、本発明の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法としては、赤血球に寄生したマラリア原虫に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法であって、ロダシアニン骨格をリガント部位とし、アガロースゲルと共有結合でつないだアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させ、アフィニティゲルと各タンパクの親和性の差を利用してフラクションに分画し、そのフラクションをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、抗マラリア活性を発現するタンパク質を分離する方法であれば特に制限されるものではなく、アフィニティゲルは、例えばKawakamiらの方法(Kawakami, M.; Suzuki, N.; Sudo, Y.; Shishido, T.; Maeda, M. Analytica Chimica Acta 1998, 362, 177-186)により調製することができる。
【0018】
また、本発明の式(1)中、R、R及びRは水素原子、非置換若しくは置換基を有していてもよいC1〜C8のアルキル基、非置換若しくは置換基を有していてもよいC2〜C6のアルケニル基、非置換若しくは置換基を有していてもよいC6〜C10のアリール基、非置換若しくは置換基を有していてもよい複素環基を表し、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。上記C1〜C8のアルキル基としては、直鎖のみならず分枝鎖を有するものであってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチル−n−ペンチル基、n−ヘプチル基、2−メチル−n−ヘキシル基、n−オクチル基等を例示することができ、上記C2〜C6のアルケニル基としては、直鎖のみならず分岐鎖を有するものであってもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等を例示することができ、上記C6〜C10のアリール基としては、フェニル、ナフチル基等を例示することができ、上記複素環基としては、ピロリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾリジン、チアゾール、イソチアゾール、2−チアゾリン、イソオキサゾール、オキサゾール、1,2,5−オキサジアゾール等や、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2H−1,4−チアジン、4H−1,4−チアジン、モルホリン、4H−1,4−オキサジン、インドリン、イソインドリン、インドール、イソインドール、インダゾール、2H−インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン等の複素環から一つの水素を除いたもの等を例示することができる。
【0019】
前記C1〜C8のアルキル基及びC2〜C6のアルケニル基における置換基としては、同一又は異なって置換数1〜5の、例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換又は非置換カルバモイル基、置換若しくは非置換のアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アロイルオキシ基、アロイル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、複素環基置換オキシ基、複素環基置換カルボニルオキシ基、複素環基置換カルボニル基、複素環基置換オキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、チオ基、カルボキシル基、スルホン酸基等を表し、ここで、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基におけるアルキル基は前記アルキル基の定義と同義であり、アリールオキシ基、アロイルオキシ基、アロイル基、アリールオキシカルボニル基におけるアリール基は前記、アリールの定義と同義であり、複素環基置換オキシ基、複素環基置換カルボニルオキシ基、複素環基置換カルボニル基、複素環基置換オキシカルボニル基における複素環基は前記、複素環基の定義と同義である。また、置換カルバモイル基における置換基は、同一又は異なって1〜2の置換数を表し、置換基としては前記と同義のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表し、置換アミノ基における置換基は、同一又は異なって1〜2の置換数を表し、置換基としては前記と同義のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を表す。
【0020】
また、C6〜C10のアリール基及び複素環基における置換基としては同一又は異なって置換数1〜5の、例えば、前記アルキル基等で定義した置換基の他に、アルキル基、アルケニル基を例示することができ、ここで、アルキル基、アルケニル基は前記、アルキル基、アルケニル基の定義と同義である。
【0021】
また、本発明の式(1)中、Aはロダニン環に結合する炭素原子に対してα位に窒素原子が結合される窒素含有複素環であり、Bで表される窒素含有複素環と同一又は異なっていてもよい5員又は6員環の窒素含有複素環であることが好ましく、更に、ロダニン環に結合する炭素原子に対してα位に硫黄、酸素、セレン等の酸素族原子が結合される窒素含有複素環であることが好ましく、このうち特に硫黄原子、酸素原子が結合される窒素含有複素環であることが好ましい。かかる式(1)におけるAで表される窒素含有複素環としては、上述したものと同様に、ピロリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾリジン、チアゾール、イソチアゾール、2−チアゾリン、イソオキサゾール、オキサゾール、1,2,5−オキサジアゾール等や、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2H−1,4−チアジン、4H−1,4−チアジン、モルホリン、4H−1,4−オキサジン等を例示することができる。5員又は6員環の窒素含有複素環を構成する炭素原子に結合する置換基としては、前記複素環基の置換基と同義の置換基を例示でき、かかる窒素含有複素環の置換基は窒素含有複素環とオルト縮合環を形成してもよい。かかる置換基が窒素含有複素環とオルト縮合環を形成した場合の式(1)におけるAで表される窒素含有複素環としては、具体的には、インドリン、イソインドリン、インドール、イソインドール、インダゾール、2H−インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン等を例示することができる。
【0022】
また、本発明の式(1)中、Bで表される窒素含有複素環としては、Aで表される窒素含有複素環と同一又は異なっていてもよい5員又は6員の窒素含有複素環であることが好ましい。nは0、1又は2のいずれかの整数を表す共役系であることが好ましい。かかる式(1)におけるBで表される窒素含有複素環としては、具体的には、上記、式(1)におけるAで表される窒素含有複素環と同様の窒素含有複素環を挙げることができる。5員又は6員環の窒素含有複素環を構成する炭素原子に結合する置換基としては、具体的には、上述のAで表される窒素含有複素環における置換基と同様のものを挙げることができ、かかる窒素含有複素環の置換基は窒素含有複素環とオルト縮合環を形成してもよい。かかる置換基が窒素含有複素環とオルト縮合環を形成した場合の式(1)におけるBで表される窒素含有複素環としては、具体的には、上記、式(1)におけるAで表される窒素含有複素環を例示することができる。
【0023】
また、本発明の式(1)で示される化合物中、X−は薬学的に許容しうるアニオンを示し、ハロゲンイオン、スルホン酸イオン、スルファミン酸イオン、水酸化物イオン等を挙げることができ、具体的には、ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等を例示することができ、スルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、2−ヒドロキシエタンスルホン酸イオン等の脂肪族及び芳香族スルホン酸イオン等を例示することができ、スルファミン酸イオンとしては、シクロヘキサンスルファミン酸イオンを例示することができ、その他、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の硫酸イオン、硫酸水素イオン、ホウ酸イオン、アルキル及びジアルキルりん酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオン等を挙げることができる。薬学的に許容し得るアニオンの好ましい具体例としては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、吉草酸イオン、クエン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、乳酸イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、安息香酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられ、これらのうち特に、p−トルエンスルホン酸イオン、塩素イオン、水酸化イオンのいずれかが好ましい。
【0024】
上記のような式(1)で表される化合物としては、次のような具体例を挙げることができる。すなわち、2−[{5−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−チアゾリジニリデン}メチル]−1−メチルピリジニウム=p−トルエンスルホナート(MKH−57)、2−[{5−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−4−オキソ−3−エチル−2−チアゾリジニリデン}メチル]−1−エチルピリジニウム=クロリド(MKT−077)、4−[{5−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)−4−オキソ−3−エチル)−2−チアゾリジニリデン}メチル]−1−メチルキノリウム=p−トルエンスルホナート等を挙げることができる。
【0025】
このような一般式(1)で表されるロダシアニン系色素化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。例えば、式(2)に示すように5工程で行なわれ、一般式(1)中、Aで表される窒素含有複素環化合物にメチルチオ基等の脱離基が導入された誘導体、例えば、2−(メチルチオ)ベンゾチアゾリン(2−(methylthio)benzothiazole)(a)をアニソール溶媒下、p−トルエンスルホン酸メチルを用いてN−メチル化した誘導体(b)とした後に、トリエチルアミン等の存在下、ロダニン環化合物、例えば、3−エチルロダニン(c)と反応させロダニン環が導入されたメロシアニン化合物(d)に変換する。さらにメロシアニン化合物(d)をp−トルエンスルホン酸メチル等を用いてチオメチル化して誘導体(e)へと変換した後に、一般式(I)中、Bで表される共役化合物である窒素含有複素環、例えば、N−メチルピコリニウムp−トルエンスルホネート(N−methylpicolinium p−toluenesulfonate)(f)等と縮合させ、最後にイオン交換することでロダシアニン系化合物(g)を総収率38%で得ることができる。
【0026】
【化4】

【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
式(3)〜(6)で示されるアフィニティゲルはKawakamiらの方法(Kawakami, M.; Suzuki, N.; Sudo, Y.; Shishido, T.; Maeda, M. Analytica Chimica Acta 1998, 362, 177-186)を参考に合成した。なお、ロダシアニンがアガロースゲルに担持されたことは色素由来のUV吸収(490nm)により確認した。なお、式(3)で示されるアフィニティゲルは公知の化合物であるが、式(4)〜(6)で示されるアフィニティゲルは合成法も含めて非公知である。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
式(4)で表されるアフィニティゲルの合成法を式(7)に示す。文献記載の方法(Satzinger, G. Liebigs Ann. Chem. 1978, 473-511) を参考にして合成した(A−1)に対してヨウ化メチルを作用させN-メチル化をおこない(A−2)を得た。続いて、(A−2)に化合物(A−3)とトリエチルアミンを添加することによりロダシアニン色素(A−4)を90%の収率で得た。得られたロダシアニン色素(A−4)の加水分解をおこない(A−5)とした後に、ω−アミノブチルアガロースゲルと縮合させて式(4)で表されるアフィニティゲル(A−6)に変換した。
【0034】
【化9】

【0035】
式(5)及び式(6)で表されるアフィニティゲルは、式(4)のアフィニティゲルの合成法と同様の方法で調製した。
【0036】
実施例1により得られた式(3)〜(6)で表されるアフィニティゲルを、ロダシアニンと親和性の高い原虫タンパクの単離実験に供した。
【実施例2】
【0037】
実施例1で作製した式(3)で表されるアフィニティゲルを用いて、アフィニティクロマトグラフィの検討をおこなった。すなわち、リガンドであるロダシアニン色素に対して親和性が強いタンパクを抽出することにより、標的タンパクを探索することにした。マラリア原虫には、ローデントマラリア原虫 (Plasmodium berghei) を用いた。
【0038】
試薬は以下に示すものを用いた。
PBS(-):137 mM NaCl (Nacalai Tesque), 2.7 mM KCl (Nacalai Tesque), 8.1 mM NaHPO・12 HO (Nacalai Tesque), 1.5 mM KHPO (Wako Chemicals)
サポニン添加PBS(-):PBS(-), 0.15% saponine (Nacalai Tesque)
protease inhibitor: DTT (Nacalai Tesque), PMSF (Nacalai Tesque), aprotinin (Sigma), leupeptin (Sigma), pepstatin A (Sigma) それぞれ最終濃度は1mM, 0.5 mM, 2μg/mL, 2μg/mL, 2μg/mL
【0039】
図1に示す操作手順に従い、マラリア原虫粗タンパクの分離を行った。
1)マラリア感染マウス(ICR, ♂, 5 weeks, Infected with P. berghei (40%〜70%))から心臓採血にて血液を0.6〜1.2 mL採取した。
2)800xgで10分間遠心して血清を除去し、赤血球を取り出した。
3)その後に、サポニン添加PBS(-)を血液と当量加えて赤血球を溶解し、600xgで10分間遠心して上清を除去した。同様の操作を3回繰り返した後、先程と同量のPBS(-)を加えて600xgで10分間遠心することにより洗浄をおこない、マラリア原虫を赤血球からとりだした。
4)3回洗浄した原虫に対して採血量の3分の1量のPBS(-) を加え、プロテアーゼ阻害剤を添加してから超音波粉砕(10amp, 5 min,0 ℃)した。そして、13000xgで10分間遠心して上清のタンパク(粗タンパク)を採取した。
5)得られた上清タンパクの定量を行った。粗タンパクはそのままアフィニティクロマトグラフィの実験に用いた。タンパクの定量はProtein assay kit (Bio-Rad) を用い、BSAを標準蛋白としてBradford法により行った。
【0040】
SDS-ポリアクリルアミド電気泳動は以下に示す試薬を用いて行った。
1x Running Buffer :25mM Tris (Nacalai Tesque), 250mM glycine (Nacalai Tesque), 0.1% SDS (Nacalai Tesque)
【0041】
0.1%SDSを含む12.5% SDS-ポリアクリルアミドゲル(acrylamide (Nacalai Tesque) : bis-acrylamide (Nacalai Tesque) = 30:0.4)または15% SDS-ポリアクリルアミドゲル (29:1) を作製し、1晩4 ℃で放置した。翌日、各サンプルをゲルのサンプルウェル内に添加して1x Running Buffer中で最初は60Vで、途中分離ゲルに入ってからは160Vにて泳動を行った。
【0042】
アフィニティクロマトグラフィの実験には以下の試薬を用いた。
アフィニティゲル:式(3)で表されるアフィニティゲル
ω-アミノブチルアガロース (Sigma)
マラリア原虫由来タンパク:(0039)で分離したマラリア原虫粗タンパク
赤血球由来タンパク:(0039)で、マラリア感染マウスの代わりに非感染マウスを用いることにより得られたタンパク抽出液
sample buffer (x5):0.3 M Tris/HCl(Nacalai Tesque)pH6.8, 40 % glycerol (Nacalai Tesque), 3.8 % DTT, 10% SDS
洗浄用カラム: 1000μL Diamond Precision Tip (Gilson) にQuartz Wool (Tosoh)を適度に詰めたものを使用
elution buffer: PBS(-), 50 mM MKT-077
【0043】
【化10】

【0044】
図2に示すような操作手順に従い、式(1)で示される化合物と親和性のあるマラリア原虫タンパクの単離を行った。
1)式(3)で示されるアフィニティゲル (100μL) に対して、タンパク濃度を5.0mg/mLに調節したマラリア原虫由来タンパクを100μL添加し、4 ℃で30分間震盪させた。(対照実験としてアフィニティゲルとしてω-アミノブチルアガロースを、また、原虫由来のタンパクの代わりにマウス赤血球由来タンパクを用いて実験をおこなった)。
2)直後、カラムを組んでPBS(-)で洗浄し遊離タンパクを除去した。
3)洗浄後アフィニティゲルを1.5 mLチューブに回収し、elution bufferを100 μL加えた。4℃で30分間震盪した後に10000 x gで10分間遠心し、上清のタンパクを回収した。
4)得られたサンプル100μLにsample buffer (x5) を25μL加えて5分間煮沸し、上清を適量採取した。
5)それらをSDS-PAGE(12.5%)にて電気泳動(60V 45minand 160V 60min)した。終了後、ゲルを切り取り銀染色(Silver StainII Kit Wako : Wako Chemicals)した。
【0045】
アフィニティクロマトグラフィ後のSDS-PAGEの結果を図3に示す。
ロダシアニン色素を担持した式(3)で示されるアフィニティゲルを用い、マラリア原虫由来の粗タンパクを吸着させたものをSDS-PAGEで分離したところ、10〜20数本のバンドが観測された (line 1)。マラリア非感染赤血球を用いた実験(line 2)及びロダシアニンを有さないゲルを用いた実験(line 3)では、タンパクが観察されなかったことから、line 1で得られたタンパクは、マラリア原虫由来かつロダシアニンに親和性のあるタンパクであると結論付けられる。この数10本のタンパクの中から、よりロダシアニンに対して親和性の高いタンパクに絞り込む実験は以下の実施例で述べる。
【実施例3】
【0046】
式(4)〜(6)で示されるアフィニティゲルを用いて実施例(2)と同様のクロマトグラフィを行った。比較対照として式(3)で示されるアフィニティゲルを用いた。
【0047】
アフィニティクロマトグラフィ後のSDS-PAGEの結果を図4に示す。まず0.5 mMの溶出液で、4種のアフィニティゲルにそれぞれ吸着したタンパクの回収を試みたところ、どのアフィニティゲルからも原虫タンパクは溶出されなかった(line 1, 4, 7, 10)。次に5 mMの溶出液で溶出操作をおこなったところ、今度はどのアフィニティゲルからも同じタンパクがほぼ同じ割合で溶出されてきた(line 2, 5, 8, 11)。最後に50 mMの濃溶出液でアフィニティゲルに残ったタンパクの回収をおこなったところ、この場合も同じタンパクがほぼ同じ割合で溶出されてきた(line 3, 6, 9, 12)。即ち、式(3)〜(6)で示されるどのアフィニティゲルを用いても、ロダシアニンと親和性の高いタンパクが得られることが明らかとなった。ただし、分離されたタンパクのバンドの濃さを比較した結果、ある種のタンパク(例えば約27キロダルトンのタンパク)は式(3)で示されるアフィニティゲルを用いた場合に、より多くの量が単離できることがわかる。
【実施例4】
【0048】
アフィニティゲルに吸着したタンパクの溶出方法を検討することで、高親和性タンパクを絞り込むこととした。溶出の過程では、理想的にはアフィニティゲルに対して解離定数の大きなものから順に溶出できる。それにより、解離定数の最も小さいタンパクを選別することで、標的タンパクの単離を行った。即ち、吸着したタンパクを溶出する際に、溶出液の濃度に勾配をかけるグラジエントカラム法を行った。
【0049】
実験材料には、以下のものを使用した。
アフィニティゲル:式(3)で示されるアフィニティゲル
elution buffer A: PBS (-),1mM MKT-077
elution buffer B: PBS (-),50mM MKT-077
【0050】
実験手順は以下の通りに行った。
1)アフィニティゲル100μLに対して、タンパク濃度5.0 mg/mLのマラリア原虫由来タンパクを100μL添加して、4 ℃で30分間震盪させた。
2)吸着後、カラムを組んでPBS (-) で洗浄し遊離タンパクを除去した。
3)洗浄後、カラムに低濃度溶出液 (elution buffer A) 80μLをそっと注ぎカラムからの溶出液を1.5mLチューブにとるという操作を33回行った。続いて高濃度溶出液(elution buffer B)80μLで6回溶出を行った。
4)得られた各フラクションにsample buffer (x5) を加えた後、5分間煮沸し、上清を適量採取した。
5)最後に、SDS-PAGE(12.5% or 15%)にて電気泳動し、終了後ゲルを切り取り銀染色した。
【0051】
グラジエントカラムで溶出された各フラクションのSDS-PAGEの結果を図5に示す。いくつかのタンパクが高濃度溶出液(フラクション34から40)により回収された。回収されたタンパクのうち再現良く得られた特異性の高いと思われるタンパクは27, 29, 31, 33, 37 kDaの5つのタンパクであった。特に33, 31, 27 kDaのタンパクはこの実験で常に得られてくるタンパクで、ロダシアニン色素に対して特に特異性が高いことがわかった。
【実施例5】
【0052】
(解析用蛋白の単離)
実施例4(0051)で得られたロダシアニン色素と最も親和性が高いタンパクバンドを、SDS-PAGEの分離ゲルより切り出しシークエンス解析を行った。
【0053】
実施例4に従い、SDS-PAGEを行った。銀染色方法では、増感液の代わりに0.2g/mLのチオ硫酸ナトリウム(Wako Chemicals)を用いた。
【0054】
銀染色により染色された目的のタンパクバンド(37, 33, 31, 29, 27k
Da)を切り取り、アセトニトリルで3回洗ったエッペンチューブにそれぞれサンプリングした。
【0055】
単離した5つのタンパクのうち、27, 33 kDaのタンパクについて、一部アミノ酸配列を決定した。方法としてはCID-MS/MSでおこなった。その結果、27kDaのタンパクからはCNNNNNNNEKが、33kDaのタンパクではTIDNNNIDEKという部分配列をもつことが明らかとなった。これらのタンパクにはそれぞれアルギニンが多く含まれており、マラリアのタンパクであることを証拠づけている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ロダシアニン骨格をリガンド部位とし、アガロースゲルと共有結合でつないだアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させる、本発明のマラリア原虫タンパク分離法の概略を示すフロー図である。
【図2】ロダシアニン骨格をリガンド部位とし、アガロースゲルと共有結合でつないだアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させる、アフィニティクロマトグラフィの実験操作の概略を示すフロー図である。
【図3】式(3)で示されるアフィニティゲルで単離したマラリア原虫由来のタンパク質のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【図4】式(4)〜(6)で示されるアフィニティゲルで単離したマラリア原虫由来のタンパク質のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【図5】式(3)で示されるアフィニティゲルを用いてアフィニティクロマトグラフィ(グラジエントカラム法)により得られたマラリア原虫由来のタンパク質のSDS-PAGEの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球に寄生したマラリア原虫(Plasmodium sp.)に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現する単離されたタンパク質。
【化1】



(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子、非置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基、又は複素環基を表し、同一又は異なっていてもよい。A及びBは窒素含有複素環を表し、nは0、1又は2の整数を表し、X−は薬学的に許容しうるアニオンを表す。)
【請求項2】
TIDNNNIDEKの部分アミノ酸配列を有する請求項1記載の単離されたタンパク質。
【請求項3】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ33キロダルトンである請求項2記載の単離されたタンパク質。
【請求項4】
請求項2又は3記載の単離されたタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項5】
CNNNNNNNEKの部分アミノ酸配列を有する請求項1記載の単離されたタンパク質。
【請求項6】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ27キロダルトンである請求項5記載の単離されたタンパク質。
【請求項7】
請求項5又は6記載の単離されたタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項8】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ29キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質。
【請求項9】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ31キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質。
【請求項10】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ37キロダルトンである請求項1記載の単離されたタンパク質。
【請求項11】
赤血球に寄生したマラリア原虫(Plasmodium sp.)に由来し、式(1)で示される化合物と親和することで抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法であって、ロダシアニン骨格をリガンド部位とし、アガロースゲルと共有結合でつないだアフィニティゲルを作製し、かかるアフィニティゲルにマラリア原虫由来のタンパク質混合物を吸着させ、アフィニティゲルと各タンパクの親和性の差を利用してフラクションに分画し、そのフラクションをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、抗マラリア活性を発現するタンパク質を分離することを特徴とする抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項12】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、TIDNNNIDEKの部分アミノ酸配列を有する請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項13】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ33キロダルトンである請求項12記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項14】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、CNNNNNNNEKの部分アミノ酸配列を有する請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項15】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ27キロダルトンである請求項14記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項16】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ29キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項17】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ31キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項18】
抗マラリア活性を発現するタンパク質が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるサイズがおよそ37キロダルトンである請求項11記載の抗マラリア活性を発現するタンパク質の単離方法。
【請求項19】
請求項1〜3、5、6、8〜10のいずれか記載の単離されたタンパク質と被検物質を接触せしめ、単離されたタンパク質と被検物質との親和性の程度を測定・評価することを特徴とする抗マラリア作用を有する物質のスクリーニング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−67867(P2006−67867A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253824(P2004−253824)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】