説明

マリンホースとその製造方法

【課題】マリンホースに曲げあるいは外圧が加えられたとしても、簡単に圧縮永久ひずみが発生したりすることがなく、そのため、マリンホースとしての機能を長期にわたり良好に維持することができ、かつ、浮力層として、所望の形状・浮力層厚み等に成型することが容易な、新規な構造を有するマリンホースとその製造方法を提供すること。
【解決手段】ベースホースと浮力層とを少なくとも有するマリンホースであり、少なくとも該浮力層が、発泡ゴムの未加硫シートが巻付られ、しかる後、加硫されて形成された発泡ゴム層を有してなるマリンホースであり、また、ベースホースとカバーゴム層との間に浮力層を有するマリンホースを製造するに際して、該ベースホースの外周側において、発泡ゴムの未加硫シートを螺旋状に巻き、しかる後、該発泡ゴムの未加硫シートを加硫することを特徴とするマリンホースの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースホースと浮力層とを少なくとも有するマリンホースに関し、フローティングマリンホースあるいは浮沈式マリンホースとして良好に使用することのできるマリンホースとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮力層を有するマリンホース(フローティングマリンホースや浮沈方式のマリンホース)において、浮力層としては、NR(天然)スポンジ、PE(ポリエチレン)スポンジ等の独立気泡を有するスポンジがベースホースの外周側に巻き付けられて加硫されることにより形成されるものが一般的である。
【0003】
しかし、NR(天然)スポンジ、PE(ポリエチレン)スポンジ等の独立気泡を有するスポンジからなる浮力層は、マリンホースに加えられる曲げあるいは外圧によって比較的簡単に圧縮永久ひずみが発生し、浮力が低減しマリンホースとしての機能を維持することができない状態になることがあった。
【0004】
また、マリンホースの製造に際してもスポンジ層は所望の形状のものに成型することが難しいという問題があった。
【0005】
また、一般に、該マリンホースが有する浮力の調整は、15mm厚さのスポンジ層の積層数で調整をしているが微調整は難しい。
【0006】
先行技術として、沈下防止に効果のあるフローティングホースを提供することを目的に、ホース外皮に損傷を受けても沈下を引き起こすことのないという沈下防止機構を有するフローティングマリンホースが提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、特許文献1に記載されているフローティングマリンホースは、具体的には、 浮力材として独立気泡の帯状スポンジがベースホース上に隙間なく複数層巻回され、該帯状スポンジの最外層上面を外面ゴムで被覆した構造のもとで、特に、帯状スポンジを全ての層で同方向に巻回させて、かつ、各層における帯状スポンジ同士の接合部が隣接する層における帯状スポンジ同士の接合部と重なり合わないようにしたというものであって、成型がより難しくなるという問題を招くほか、マリンホースに加えられる曲げあるいは外圧によって比較的簡単に圧縮永久ひずみが発生し、浮力が低減しマリンホースとしての機能を維持することができなくなるという上述した問題に対しては、解決されていないのが実状であった。
【特許文献1】特開2000−257765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、マリンホースに曲げあるいは外圧が加えられたとしても、簡単に圧縮永久ひずみが発生したりすることがなく、そのため、マリンホースとしての機能を長期にわたり良好に維持することができ、かつ、浮力層として、所望の形状・浮力層厚み等に成型することが容易な、新規な構造を有するマリンホースとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明のマリンホースは、以下の(1) の構成からなる。
(1)ベースホースと浮力層とを少なくとも有するマリンホースであり、少なくとも該浮力層が、発泡ゴムの未加硫シートが巻付られ、しかる後、加硫されて形成された発泡ゴム層を有していることを特徴とするマリンホース。
【0010】
また、かかる本発明のマリンホースにおいて、好ましくは、以下の(2) の構成からなるものである。
(2)加硫されて形成された発泡ゴム層が複数層存在し、その層間にスポンジ層が存在していて、該発泡ゴム層とスポンジ層とで浮力層が構成されてなることを特徴とする上記(1) 記載のマリンホース。
【0011】
また、本発明のマリンホースの製造方法は、以下の(3) の構成からなる。
(3)ベースホースとカバーゴム層との間に浮力層を有するマリンホースを製造するに際して、該ベースホースの外周側において、発泡ゴムの未加硫シートを螺旋状に巻き、しかる後、該発泡ゴムの未加硫シートを加硫することを特徴とするマリンホースの製造方法。
【0012】
また、かかる本発明のマリンホースの製造方法において、好ましくは、以下の(4) または(5) の構成からなるものである。
(4)発泡ゴムの未加硫シートの螺旋状の巻き付けと該巻き付け後の発泡ゴムの未加硫シートを加硫する工程を複数回数繰り返して、該繰り返し回数を調整することにより、所望の発泡ゴム層厚さにせしめることを特徴とする上記(3) 記載のマリンホースの製造方法。
(5)発泡ゴムの未加硫シートの螺旋状の巻き付けと該巻き付け後の発泡ゴムの未加硫シートを加硫する工程を複数回数繰り返して、該繰り返し回数と該発泡ゴムの未加硫シートの厚さを調整することにより、所望の発泡ゴム層厚さにせしめることを特徴とする上記(4) 記載のマリンホースの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる本発明によれば、マリンホースに曲げあるいは外圧が加えられたとしても、簡単に圧縮永久ひずみが発生したりすることがなく、そのため、マリンホースとしての機能を長期にわたり良好に維持することができるマリンホースが提供される。
【0014】
請求項2にかかる本発明によれば、上記請求項1による効果を維持した上で、更に、より強い曲げあるいは外圧が加えられたとしても、簡単に圧縮永久ひずみが発生したりすることがなく、そのため、マリンホースとしての機能をより長期にわたり良好に維持することができる耐久性が極めて良好なマリンホースが提供される。
【0015】
請求項3にかかる本発明によれば、マリンホースに曲げあるいは外圧が加えられたとしても、簡単に圧縮永久ひずみが発生したりすることがなく、そのため、マリンホースとしての機能を長期にわたり良好に維持することができるマリンホースの製造方法を提供することができたものである。
【0016】
請求項4または5にかかる本発明によれば、上記請求項3による効果を維持した上で、更に、浮力層として、より容易に所望の形状・浮力層厚み等に成型することが可能なマリンホースの製造方法を提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面などに基づいて、更に詳しく本発明のマリンホースとその製造方法について、説明する。
【0018】
本発明のマリンホースは、ベースホースと浮力層とを少なくとも有するマリンホースであり、少なくとも該浮力層は、発泡ゴムの未加硫シートが巻付られ、しかる後、加硫されて形成された発泡ゴム層を有してなることを特徴とするものである。
【0019】
図1は、本発明のマリンホースの構造の1実施態様例をモデル的に示したマリンホース本体の一部概略断面図である。
【0020】
同図において、マリンホース1は、ベースホース2と浮力層3とからなる。本発明において、特に特徴的なことは、浮力層3が、発泡ゴムの未加硫シートが巻付られ、しかる後、加硫されて形成された発泡ゴム層10、13を有してなることである。11と12はスポンジ層である。
【0021】
発泡ゴムの未加硫シートは、代表的には、ベースホース2の外周に巻き付けられて、内周側に位置する発泡ゴム層10を形成し、また、11と12のスポンジ層の外周に巻き付けられて、外周側に位置する発泡ゴム層13を形成しているものである。外周側に位置する発泡ゴム層13の外側にはカバーゴム層14を設けて、ホース外周面5を保護している。4はホース内周面である。
【0022】
ベースホース2は、特に限定されないが、代表的な構造例としては、チューブゴム層6、補強層7、ワイヤー8、補強層9とからなっている。
【0023】
本発明のマリンホースにおいては、加硫されて形成された発泡ゴム層を浮力層に有することにより、該発泡ゴム層はスポンジ層よりも強度が大きいので、該浮力層に容易に永久ひずみを発生するということが少ない。特に、スポンジ層をも浮力層に併用する場合には、該発泡ゴム層が存在することによりスポンジ層を外力、外圧から保護することとなり、該スポンジ層が永久歪みを発生することを良好に防止できるものである。
【0024】
加硫されて形成された発泡ゴム層とスポンジ層とを併用する場合には、図1にモデル構造を示したように、スポンジ層11、12の内周側と外周側にそれぞれ発泡ゴム層10と13とを配置させて、スポンジ層11、12を挟んで、外力、外的衝撃などから保護するようにするのが効果的である。
【0025】
本発明のマリンホースを製造するに際しては、ベースホース2の外周側において、発泡ゴムの未加硫シートを螺旋状に巻き、しかる後、該発泡ゴムの未加硫シートを加硫缶に入れて加硫することにより、加硫発泡させて製造することができる。
【0026】
一般に、発泡ゴムの発泡倍率は、スポンジの発泡倍率よりも小さくてよい。
【0027】
すなわち、発泡ゴムの層は、浮力層として浮力に寄与する力は、スポンジよりも一般に小さいが、発泡ゴムの未加硫シートの螺旋状の巻き付けと該巻き付け後の発泡ゴムの未加硫シートを加硫する工程を、適宜の複数回数を繰り返して行うことにより、発泡ゴム層の厚さを調整して得ることができる。
【0028】
特に、該繰り返し回数に加えて、該発泡ゴムの未加硫シートの厚さを適宜に調整するようにすれば、より精度良く所望の発泡ゴム層厚さを得ること、ひいては所望の浮力層厚さ、所望の浮力レベルのマリンホースを得ることができる。
【0029】
従って、本発明によれば、スポンジだけで浮力層を形成してなるものに比較して、浮力層全体の成型も容易であり、また、浮力の調整も容易であり、よりコンパクトで大きな浮力を有するマリンホースを得ることなども容易となるものである。
【0030】
本発明者らの各種知見によれば、一般的なフローティングマリンホースや浮沈方式マリンホースを製造する場合には、発泡ゴムの未加硫シートの厚さは1〜10mmにして、ベースホースの外周側には通常1〜20回の螺旋状の巻き付けを行い、その段階で1回の加硫を行い、更に、該加硫後、同一の未加硫シート厚さ、未加硫シート巻き付け回数で、更に先に形成された発泡ゴム層上に巻き付けて加硫を行い、通常、その工程を1〜10回繰り返すのが一般的によいものである。
【0031】
カバーゴム層は、外力や外的衝撃からマリンホースを守るため、非発泡で強度も大きなゴム層で構成するのがよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明のマリンホースの構造の1実施態様例をモデル的に示したマリンホース本体の一部概略断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:マリンホース
2:ベースホース
3:浮力層
4:ホース内周面
5:ホース外周面
6:チューブゴム層
7:補強層
8:ワイヤー
9:補強層
10:発泡ゴム層
11:スポンジ層
12:スポンジ層
13:発泡ゴム層
14:カバーゴム層−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースホースと浮力層とを少なくとも有するマリンホースであり、少なくとも該浮力層が、発泡ゴムの未加硫シートが巻付られ、しかる後、加硫されて形成された発泡ゴム層を有してなることを特徴とするマリンホース。
【請求項2】
加硫されて形成された発泡ゴム層が複数層存在し、その層間にスポンジ層が存在していて、該発泡ゴム層とスポンジ層とで浮力層が構成されてなることを特徴とする請求項1記載のマリンホース。
【請求項3】
ベースホースとカバーゴム層との間に浮力層を有するマリンホースを製造するに際して、該ベースホースの外周側において、発泡ゴムの未加硫シートを螺旋状に巻き、しかる後、該発泡ゴムの未加硫シートを加硫することを特徴とするマリンホースの製造方法。
【請求項4】
発泡ゴムの未加硫シートの螺旋状の巻き付けと該巻き付け後の発泡ゴムの未加硫シートを加硫する工程を複数回数繰り返して、該繰り返し回数を調整することにより、所望の発泡ゴム層厚さにせしめることを特徴とする請求項3記載のマリンホースの製造方法。
【請求項5】
発泡ゴムの未加硫シートの螺旋状の巻き付けと該巻き付け後の発泡ゴムの未加硫シートを加硫する工程を複数回数繰り返して、該繰り返し回数と該発泡ゴムの未加硫シートの厚さを調整することにより、所望の発泡ゴム層厚さにせしめることを特徴とする請求項4記載のマリンホースの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−283788(P2006−283788A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100803(P2005−100803)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】