説明

マルチアンテナ装置および通信機器

【課題】配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることが可能で、かつ、より小型化を図ることが可能なマルチアンテナ装置を提供する
【解決手段】このマルチアンテナ装置10は、第1アンテナ素子11と、第2アンテナ素子12とを備え、第1アンテナ素子11は、第1部分11aと、第1部分11aに対して第2アンテナ素子12とは反対側に配置された第1折返部11jとを含み、第2アンテナ素子12は、第1部分11aと対向した状態で第1部分11aと略直交する方向に延びる第2部分12aと、第2部分12aに対して第1アンテナ素子11とは反対側に配置された第2折返部12jとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチアンテナ装置および通信機器に関し、特に、複数のアンテナ素子を備えたマルチアンテナ装置および通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナ素子を備えたマルチアンテナ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置されるアイソレーション素子(無給電素子)とを備えるMIMOアレーアンテナ(マルチアンテナ装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−97167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のMIMOアレーアンテナでは、アイソレーション素子(無給電素子)を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を抑制可能である一方、アイソレーション素子を設ける必要があるので、配線パターン設計の自由度が低下するという問題点がある。また、従来では、マルチアンテナ装置が携帯機器に搭載されることから、マルチアンテナ装置のさらなる小型化の要求がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることが可能で、かつ、より小型化を図ることが可能なマルチアンテナ装置および通信機器を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の第1の局面によるマルチアンテナ装置は、第1アンテナ素子と、第2アンテナ素子とを備え、第1アンテナ素子は、第1部分と、第1部分に対して第2アンテナ素子とは反対側に配置された第1折返部とを含み、第2アンテナ素子は、第1部分と対向した状態で第1部分と略直交する方向に延びる第2部分と、第2部分に対して第1アンテナ素子とは反対側に配置された第2折返部とを含む。
【0008】
この発明の第1の局面によるマルチアンテナ装置では、上記のように、対向した状態の第1アンテナ素子の第1部分および第2アンテナ素子の第2部分を、互いに略直交させることによって、偏波面を互いに略直交させることができるので、第1部分と第2部分との相互結合を小さくすることができる。その結果、アンテナ素子間全体の相互結合を小さくすることができる。この効果は、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1アンテナ素子に第1折返部を設けるとともに、第2アンテナ素子に第2折返部を設けることによって、小さい配置領域で、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子に必要な長さを確保することができるので、マルチアンテナ装置をより小型化することができる。また、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の間に無給電素子のような相互結合を小さくするための部材を別途設ける必要がないので、マルチアンテナ装置の配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、より小型化を図ることができる。
【0009】
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1部分および第1折返部を含む第1アンテナ素子は、全体として、第2アンテナ素子とは反対側に向かう第1の方向に沿って延びるように配置されており、第2部分および第2折返部を含む第2アンテナ素子は、全体として、第1アンテナ素子とは反対側に向かう第2の方向に沿って延びるように配置されている。このように構成すれば、第1アンテナ素子の第1の方向と直交する方向(高さ方向)の長さが大きくなることを抑制することができるとともに、第2アンテナ素子の第2の方向と直交する方向(高さ方向)の長さが大きくなることを抑制することができるので、アンテナ素子の配置領域の高さ方向を小さくすることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、第1折返部は、第1部分に対して略平行に第1の方向に沿って配置される複数の第1平行部を有し、第2折返部は、第2部分に対して略平行に第2の方向に沿って配置されて第1平行部と略直交する方向に延びる複数の第2平行部を有する。このように構成すれば、第1部分と第2部分との相互結合を小さくすることに加えて、互いに略直交する複数の第1平行部と複数の第2平行部との相互結合も小さくすることができるので、アンテナ素子間全体の相互結合をより小さくすることができる。
【0011】
上記第1折返部および第2折返部が、それぞれ、第1平行部および第2平行部を有する構成において、好ましくは、第1折返部は、第1部分または第1平行部と、第1平行部とを折り返すように連結する第1連結部をさらに有し、第2折返部は、第2部分または第2平行部と、第2平行部とを折り返すように連結する第2連結部をさらに有し、第1連結部および第2連結部は、互いに略直交する方向に延びるように形成されている。このように構成すれば、第1部分と第2部分との相互結合および第1平行部と第2平行部との相互結合を小さくすることに加えて、互いに略直交する第1連結部と第2連結部との相互結合も小さくすることができるので、アンテナ素子間全体の相互結合をさらに小さくすることができる。
【0012】
上記第1折返部および第2折返部が、それぞれ、第1平行部および第2平行部を有する構成において、好ましくは、第1折返部は、第1部分または第1平行部と、第1平行部とを折り返すように連結する第1連結部をさらに有し、第2折返部は、第2部分または第2平行部と、第2平行部とを折り返すように連結する第2連結部をさらに有し、第1連結部は、第1の方向に延びるように形成されているとともに、第2連結部は、第2の方向に延びるように形成されている。このように構成すれば、第1連結部(第2連結部)の両端の位置を、第1の方向(第2の方向)と直交する方向(高さ方向)において、そろえることができるので、第1連結部(第2連結部)を第1の方向(第2の方向)と交差する方向に延びるように形成する場合に比べて、第1の方向(第2の方向)と直交する方向(高さ方向)のデッドスペース(図15参照)を小さくすることができる。
【0013】
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、同一の平面に形成されているとともに、第1アンテナ素子の主な偏波面と第2アンテナ素子の主な偏波面とが略直交するように配置されている。このように構成すれば、同一の平面に形成された第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との相互結合を効果的に小さくすることができる。
【0014】
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第1給電点および第2アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第2給電点をさらに備え、第1アンテナ素子は、第2アンテナ素子側の端部が接地されているとともに、両端部以外の場所が第1給電点に接続されており、第2アンテナ素子は、第1アンテナ素子側の端部が接地されているとともに、両端部以外の場所が第2給電点に接続されている。このように構成すれば、アンテナ素子を給電点とは異なる場所で接地することで、所定の周波数において、インピーダンス整合を容易に図ることができる。
【0015】
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、それぞれ、モノポールアンテナであり、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子が出力する電波の波長の略1/4の電気長を有する。このように構成すれば、モノポールアンテナ間の相互結合を小さくしてモノポールアンテナを用いたマルチアンテナ装置を小型化することができる。
【0016】
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第1給電点および第2アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第2給電点と、第1アンテナ素子と第1給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第1整合回路と、第2アンテナ素子と第2給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第2整合回路とをさらに備える。このように構成すれば、第1整合回路(第2整合回路)により、所定の周波数において、インピーダンス整合が図られるので、アンテナ素子を介して伝達されるエネルギーの伝達損失を容易に軽減させることができる。
【0017】
この発明の第2の局面による通信機器は、マルチアンテナ装置と、マルチアンテナ装置により送受信した電波を用いて通信する通信部とを備え、マルチアンテナ装置は、第1アンテナ素子と、第2アンテナ素子とを含み、第1アンテナ素子は、第1部分と、第1部分に対して第2アンテナ素子側と反対側に配置された第1折返部とを有し、第2アンテナ素子は、第1部分と対向した状態で第1部分と略直交する方向に延びる第2部分と、第2部分に対して第1アンテナ素子側と反対側に配置された第2折返部とを有する。
【0018】
この発明の第2の局面による通信機器では、上記のように、対向した状態の第1アンテナ素子の第1部分および第2アンテナ素子の第2部分を、互いに略直交させることによって、偏波面を互いに略直交させることができるので、第1部分と第2部分との相互結合を小さくすることができる。その結果、アンテナ素子間全体の相互結合を小さくすることができる。また、第1アンテナ素子に第1折返部を設けるとともに、第2アンテナ素子に第2折返部を設けることによって、小さい配置領域で、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子に必要な長さを確保することができるので、マルチアンテナ装置をより小型化することができる。このような効果は、特に、小型化が望まれる携帯通信機器において有効である。また、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の間に無給電素子のような相互結合を小さくするための部材を別途設ける必要がないので、マルチアンテナ装置の配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、より小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態による携帯機器の全体構成を示した平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置のシミュレーションにおけるSパラメータの特性を示した図である。
【図4】比較例によるマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図5】図4に示した比較例によるマルチアンテナ装置のシミュレーションにおけるSパラメータの特性を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による携帯機器のマルチアンテナ装置のπ型の整合回路を示した図である。
【図8】本発明の第3実施形態による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図9】本発明の第1〜第3実施形態の第1変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図10】本発明の第1〜第3実施形態の第2変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図11】本発明の第1〜第3実施形態の第3変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図12】本発明の第1〜第3実施形態の第4変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置を示した平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置のT型の整合回路を示した図である。
【図14】本発明の第2実施形態の変形例による携帯機器のマルチアンテナ装置のL型の整合回路を示した図である。
【図15】本発明の第3実施形態による携帯機器のマルチアンテナ装置のデッドスペースを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による携帯機器100の構成について説明する。なお、携帯機器100は、本発明の「通信機器」の一例である。
【0022】
本発明の第1実施形態による携帯機器100は、図1に示すように、正面から見て、略長方形形状を有している。また、携帯機器100は、表示画面部1と、操作部2とを備えている。また、携帯機器100の筐体内部には、通信部3と、マルチアンテナ装置10とが設けられている。
【0023】
表示画面部1は、液晶ディスプレイからなり、画像を表示可能に構成されている。操作部2は、複数のボタンからなり、ユーザの操作を受付可能に構成されている。通信部3は、マルチアンテナ装置10により送受信された電波を用いて通信を行うように構成されている。
【0024】
マルチアンテナ装置10は、複数のアンテナ素子を用いて所定の周波数において多重の入出力が可能なMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)通信用に構成されている。
【0025】
マルチアンテナ装置10は、図2に示すように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12と、接地部13と、第1アンテナ素子11に高周波電力を供給するための第1給電点14および第2アンテナ素子12に高周波電力を供給するための第2給電点15とを含んでいる。
【0026】
第1アンテナ素子11は、第2アンテナ素子12のX1方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12は、薄板形状を有し、図示しない基板の同一の表面に設けられている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、マルチアンテナ装置10が対応する中心周波数2.55GHzの波長(118mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12は、第1アンテナ素子11の主な偏波面と第2アンテナ素子12の主な偏波面とが略直交するように配置されている。具体的には、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、折り返し形状を有している。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、全体として、X1方向(X2方向)に沿って延びるように配置されている。つまり、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12とは、互いに反対向きでかつ平行な方向(X1方向およびX2方向)に沿って延びるように配置されている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、第1部分11a(第2部分12a)と、第1平行部11b〜11e(第2平行部12b〜12e)と、第1連結部11f〜11i(第2連結部12f〜12i)とを含む。なお、電気長とは、アンテナを構成する導体上を進む信号の1波長を基準とした長さである。また、X1方向およびX2方向は、それぞれ、本発明の「第1の方向」および「第2の方向」の一例である。
【0027】
ここで、第1実施形態では、第1部分11aおよび第2部分12aは、X方向(第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が全体として延びる方向)において、互いに対向するように配置されている。また、第1部分11a(第2部分12a)は、X2方向側(X1方向側)の端部が接地部13に接地されている。つまり、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)の第2アンテナ素子側(X2方向側)(第1アンテナ素子側(X1方向側))の端部は、接地部13に接地されている。また、第1部分11a(第2部分12a)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている。つまり、第1部分11aおよび第2部分12aは、互いに対向し、かつ、互いに直交する方向に延びるように形成されている。
【0028】
第1平行部11b〜11e(第2平行部12b〜12e)および第1連結部11f〜11i(第2連結部12f〜12i)により、第1折返部11j(第2折返部12j)が形成されている。また、第1折返部11j(第2折返部12j)は、第1部分11a(第2部分12a)に対してX1方向側(X2方向側)に配置されている。詳しくは、第1平行部11b〜11e(第2平行部12b〜12e)は、第1部分11a(第2部分12a)に対して平行にX1方向(X2方向)に沿って配置されている。言い換えると、第1平行部11b〜11eおよび第2平行部12b〜12eは、互いに直交する方向に延びるように形成されている。また、第1平行部11e(第2平行部12e)のX1方向側(X2方向側)の端部は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)の開放された端部である。
【0029】
第1連結部11f〜11i(第2連結部12f〜12i)は、第1部分11a(第2部分12a)または第1平行部11b〜11d(第2平行部12b〜12d)と、第1平行部11b〜11e(第2平行部12b〜12e)とを折り返すように連結している。具体的には、第1連結部11f(第2連結部12f)は、第1部分11a(第2部分12a)および第1平行部11b(第2平行部12b)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部11g(第2連結部12g)は、隣接する第1平行部11bおよび11c(第2平行部12bおよび12c)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部11h(第2連結部12h)は、隣接する第1平行部11cおよび11d(第2平行部12cおよび12d)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部11i(第2連結部12i)は、隣接する第1平行部11dおよび11e(第2平行部12dおよび12e)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。
【0030】
また、第1実施形態では、第1連結部11f〜11i(第2連結部12f〜12i)は、第1部分11aおよび第1平行部11b〜11e(第2部分12aおよび第2平行部12b〜12e)に対して直交する方向に延びるように形成されている。つまり、複数の第1連結部11f〜11iおよび複数の第2連結部12f〜12iは、互いに直交する方向に延びるように形成されている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、第1平行部11c(第2平行部12c)と第1連結部11g(第2連結部12g)とが接続されている部分の近傍で第1給電点14(第2給電点15)に接続されている。
【0031】
第1給電点14および第2給電点15は、X方向に所定の間隔を隔てて、接地部13に配置されている。第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)のY2方向側で接続されている。また、第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)と図示しない給電線とを接続している。
【0032】
第1実施形態では、上記のように、対向した状態の第1アンテナ素子11の第1部分11aおよび第2アンテナ素子12の第2部分12aを、互いに直交させることによって、偏波面を互いに略直交させることができるので、第1部分11aと第2部分12aとの相互結合を小さくすることができる。その結果、アンテナ素子間全体の相互結合を小さくすることができる。この効果は、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1アンテナ素子11に第1折返部11jを設けるとともに、第2アンテナ素子12に第2折返部12jを設けることによって、小さい配置領域で、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12に必要な長さを確保することができるので、マルチアンテナ装置10をより小型化することができる。このような効果は、特に、小型化が望まれる携帯機器100において有効である。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12の間に無給電素子のような相互結合を小さくするための部材を別途設ける必要がないので、マルチアンテナ装置10の配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、より小型化を図ることができる。
【0033】
また、第1実施形態では、第1部分11aおよび第1折返部11jを含む第1アンテナ素子11を、全体として、第2アンテナ素子12とは反対側に向かうX1方向に沿って延びるように配置するとともに、第2部分12aおよび第2折返部12jを含む第2アンテナ素子12を、全体として、第1アンテナ素子11とは反対側に向かうX2方向に沿って延びるように配置することによって、第1アンテナ素子11のY方向(高さ方向)の長さが大きくなることを抑制することができるとともに、第2アンテナ素子12のY方向(高さ方向)の長さが大きくなることを抑制することができるので、アンテナ素子の配置領域のY方向(高さ方向)を小さくすることができる。
【0034】
また、第1実施形態では、第1折返部11jに、第1部分11aに対して平行にX1方向に沿って配置される第1平行部11b〜11eを設けるとともに、第2折返部12jに、第2部分12aに対して平行にX2方向に沿って配置されて第1平行部11b〜11eと直交する方向に延びる第2平行部12b〜12eを設けることによって、第1部分11aと第2部分12aとの相互結合を小さくすることに加えて、互いに直交する第1平行部11b〜11eと第2平行部12b〜12eとの相互結合も小さくすることができるので、アンテナ素子間全体の相互結合をより小さくすることができる。
【0035】
また、第1実施形態では、第1折返部11jに、第1部分11aまたは第1平行部11b〜11dと、第1平行部11b〜11eとを折り返すように連結する第1連結部11f〜11iを設けるとともに、第2折返部12jに、第2部分12aまたは第2平行部12b〜12dと、第2平行部12b〜12eとを折り返すように連結する第2連結部12f〜12iを設け、第1連結部11f〜11iおよび第2連結部12f〜12iを、互いに直交する方向に延びるように形成する。このように構成すれば、第1部分11aと第2部分12aとの相互結合および第1平行部11b〜11eと第2平行部12b〜12eとの相互結合を小さくすることに加えて、互いに直交する第1連結部11f〜11iと第2連結部12f〜12iとの相互結合も小さくすることができるので、アンテナ素子間全体の相互結合をさらに小さくすることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を、同一の基板の表面に形成するとともに、第1アンテナ素子11の主な偏波面と第2アンテナ素子12の主な偏波面とが略直交するように配置することによって、同一の基板の表面に形成された第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との相互結合を効果的に小さくすることができる。
【0037】
また、第1実施形態では、第1アンテナ素子11に対して高周波電力を供給する第1給電点14および第2アンテナ素子12に対して高周波電力を供給する第2給電点15を設け、第1アンテナ素子11の第2アンテナ素子12側(X2方向側)の端部を接地して、第1アンテナ素子11の両端部以外の場所を第1給電点14に接続するとともに、第2アンテナ素子12の第1アンテナ素子11側(X1方向側)の端部を接地して、第2アンテナ素子12の両端部以外の場所を第2給電点に接続することによって、アンテナ素子を給電点とは異なる場所で接地することで、中心周波数2.55GHzにおいて、インピーダンス整合を容易に図ることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を、それぞれ、モノポールアンテナにするとともに、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が出力する電波の波長(118mm)の略1/4の電気長を有するように構成することによって、モノポールアンテナ間の相互結合を小さくしてモノポールアンテナを用いたマルチアンテナ装置10を小型化することができる。
【0039】
次に、上記した第1実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図2に示した第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と、図4に示した比較例によるマルチアンテナ装置20とを比較した。
【0040】
図2に示すように、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12は、X方向がL1(40mm)、Y方向がH1(10mm)の矩形領域(400mm)内に配置されている。
【0041】
図4に示すように、比較例によるマルチアンテナ装置20では、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が、それぞれ、折り返し形状を有する第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10とは異なり、2つのアンテナ素子21および22が、それぞれ、直線形状に形成されている構成にした。アンテナ素子21(22)は、X2方向側(X1方向側)の端部が接地部13に設けられた給電点14(15)に接続されている。また、アンテナ素子21(22)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている。つまり、アンテナ素子21およびアンテナ素子22は、互いに直交する方向に延びるように形成されている。また、マルチアンテナ装置20のアンテナ素子21およびアンテナ素子22は、X方向がL2(33mm)、Y方向がH2(14mm)の矩形領域(462mm)内に配置されている。つまり、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10は、比較例によるマルチアンテナ装置が配置される領域よりもY方向の長さが短くて面積が小さな矩形領域内に配置されている。比較例によるマルチアンテナ装置20の他の構成は、上記第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様である。
【0042】
次に、図3および図5を参照して、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10および比較例によるマルチアンテナ装置20のSパラメータの特性について説明する。ここで、図3および図5に示すSパラメータのうちのS11は、アンテナ素子の反射係数を意味し、SパラメータのうちのS21は、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味する。また、図3および図5では、横軸に周波数をとり、縦軸にS11およびS21の大きさ(単位:dB)をとっている。
【0043】
まず、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、図3に示すように、マルチアンテナ装置10が対応する中心周波数2.55GHzにおいて、S11が約−14dBであり、S21が約−20dBであった。また、約2.45GHz以上約2.68GHz以下の周波数帯でS11が−10dB以下であり、S21が−19dB以下であった。これに対して、比較例によるマルチアンテナ装置20では、図5に示すように、マルチアンテナ装置20が対応する中心周波数2.55GHzにおいて、S11が約−12dBであり、S21が約−14dBであった。また、約2.44GHz以上約2.74GHz以下の周波数帯でS11が−10dB以下であり、S21が−13dB以下であった。なお、S11の値が−10dB以下であれば、電気的に良好であると考えられ、S21の値が−10dB以下であれば、アンテナ素子間の相互結合は微小であると考えられる。
【0044】
この結果、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10も比較例によるマルチアンテナ装置20と同様に、中心周波数2.55GHzにおいて、S21の値を−10dB以下にすることができた。よって、第1アンテナ素子11に、第1部分11aと、第1部分11aに対して第2アンテナ素子12とは反対側に配置された第1折返部11jとを設けるとともに、第2アンテナ素子12に、第1部分11aと対向した状態で第1部分11aと直交する方向に延びる第2部分12aと、第2部分12aに対して第1アンテナ素子11とは反対側に配置された第2折返部12jとを設けることによって、アンテナ素子間の相互結合を小さくしながら、マルチアンテナ装置10の配置領域を小さくすることができることが判明した。また、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10も比較例によるマルチアンテナ装置20と同様に、中心周波数を含む約230MHzの帯域(約2.45GHz以上約2.68GHz以下)でS11を−10dB以下にするとともに、S21を−10dB以下にすることができた。よって、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を折り返して、マルチアンテナ装置10の配置領域を小さくした場合でもマルチアンテナ装置10を約230MHzの広い帯域(約2.45GHz以上約2.68GHz以下)に対応させることができることが判明した。
【0045】
(第2実施形態)
次に、図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置30について説明する。この第2実施形態では、給電点をアンテナ素子の端部以外の場所に接続した上記第1実施形態と異なり、給電点をアンテナ素子の端部にインピーダンス整合を図るための整合回路を介して接続したマルチアンテナ装置30について説明する。なお、携帯機器100は、本発明の「通信機器」の一例である。
【0046】
第2実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置30は、図6に示すように、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32と、接地部13と、第1アンテナ素子31に高周波電力を供給するための第1給電点14および第2アンテナ素子32に高周波電力を供給するための第2給電点15と、インピーダンス整合を図るための第1整合回路16および第2整合回路17とを含んでいる。
【0047】
第1アンテナ素子31は、第2アンテナ素子32のX1方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32は、薄板形状を有し、図示しない基板の同一の表面に設けられている。また、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)は、マルチアンテナ装置30が対応する中心周波数2.55GHzの波長(118mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。また、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32は、第1アンテナ素子31の主な偏波面と第2アンテナ素子32の主な偏波面とが略直交するように配置されている。具体的には、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)は、折り返し形状を有している。また、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)は、全体として、X1方向(X2方向)に沿って延びるように配置されている。つまり、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32とは、互いに反対向きでかつ平行な方向(X1方向およびX2方向)に沿って延びるように配置されている。また、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)は、第1部分31a(第2部分32a)と、第1平行部31b〜31e(第2平行部32b〜32e)と、第1連結部31f〜31i(第2連結部32f〜32i)とを含む。なお、電気長とは、アンテナを構成する導体上を進む信号の1波長を基準とした長さである。また、X1方向およびX2方向は、それぞれ、本発明の「第1の方向」および「第2の方向」の一例である。
【0048】
ここで、第2実施形態では、第1部分31aおよび第2部分32aは、X方向(第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32が全体として延びる方向)において、互いに対向するように配置されている。また、第1部分31a(第2部分32a)は、X2方向側(X1方向側)の端部が第1整合回路16(第2整合回路17)を介して第1給電点14(第2給電点15)に接続されている。また、第1部分31a(第2部分32a)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている。つまり、第1部分31aおよび第2部分32aは、互いに対向し、かつ、互いに直交する方向に延びるように形成されている。
【0049】
第1平行部31b〜31e(第2平行部32b〜32e)および第1連結部31f〜31i(第2連結部32f〜32i)により、第1折返部31j(第2折返部32j)が形成されている。また、第1折返部31j(第2折返部32j)は、第1部分31a(第2部分32a)に対してX1方向側(X2方向側)に配置されている。詳しくは、第1平行部31b〜31e(第2平行部32b〜32e)は、第1部分31a(第2部分32a)に対して平行にX1方向(X2方向)に沿って配置されている。言い換えると、第1平行部31b〜31eおよび第2平行部32b〜32eは、互いに直交する方向に延びるように形成されている。また、第1平行部31e(第2平行部32e)のX1方向側(X2方向側)の端部は、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)の開放された端部である。
【0050】
第1連結部31f〜31i(第2連結部32f〜32i)は、第1部分31a(第2部分32a)または第1平行部31b〜31d(第2平行部32b〜32d)と、第1平行部31b〜31e(第2平行部32b〜32e)とを折り返すように連結している。具体的には、第1連結部31f(第2連結部32f)は、第1部分31a(第2部分32a)および第1平行部31b(第2平行部32b)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部31g(第2連結部32g)は、隣接する第1平行部31bおよび31c(第2平行部32bおよび32c)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部31h(第2連結部32h)は、隣接する第1平行部31cおよび31d(第2平行部32cおよび32d)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部31i(第2連結部32i)は、隣接する第1平行部31dおよび31e(第2平行部32dおよび32e)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。
【0051】
第1連結部31f〜31i(第2連結部32f〜32i)は、第1部分31aおよび第1平行部31b〜31e(第2部分32aおよび第2平行部32b〜32e)に対して直交する方向に延びるように形成されている。つまり、複数の第1連結部31f〜31iおよび複数の第2連結部32f〜32iは、互いに直交する方向に延びるように形成されている。
【0052】
第1給電点14および第2給電点15は、X方向に所定の間隔を隔てて、接地部13に配置されている。第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)のY2方向側で接続されている。また、第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)と図示しない給電線とを接続している。
【0053】
第1整合回路16(第2整合回路17)は、マルチアンテナ装置30が対応する高周波電力の2.55GHzの周波数において、インピーダンス整合をとるように構成されている。具体的には、図7に示すように、第1整合回路16(第2整合回路17)は、インダクタ(コイル)およびキャパシタ(コンデンサ)により構成されたπ型回路(πマッチ)により構成されている。
【0054】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
上記のように、第2実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1アンテナ素子31に、第1部分31aと、第1部分31aに対して第2アンテナ素子32とは反対側に配置された第1折返部31jとを設けるとともに、第2アンテナ素子32に、第1部分31aと対向した状態で第1部分31aと直交する方向に延びる第2部分32aと、第2部分32aに対して第1アンテナ素子31とは反対側に配置された第2折返部32jとを設けることによって、配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができ、かつ、マルチアンテナ装置30をより小型化することができる。
【0056】
さらに、第2実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子31に対して高周波電力を供給する第1給電点14および第2アンテナ素子32に対して高周波電力を供給する第2給電点15と、第1アンテナ素子31と第1給電点14との間に配置され、高周波電力の2.55GHzの周波数において、インピーダンス整合を図るための第1整合回路16と、第2アンテナ素子32と第2給電点15との間に配置され、高周波電力の2.55GHzの周波数において、インピーダンス整合を図るための第2整合回路17とを設けることによって、第1整合回路16(第2整合回路17)により、2.55GHzの周波数において、インピーダンス整合が図られるので、アンテナ素子を介して伝達されるエネルギーの伝達損失を容易に軽減させることができる。
【0057】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0058】
(第3実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置40について説明する。この第3実施形態では、第1アンテナ素子11(31)の第1連結部11f〜11i(31f〜31i)と第2アンテナ素子12(32)の第2連結部12f〜12i(32f〜32i)とを互いに直交する方向に延びるように形成した上記第1および第2実施形態と異なり、第1アンテナ素子41の第1連結部41f〜41iと第2アンテナ素子42の第2連結部42f〜42iとを互いに平行な方向に延びるように形成したマルチアンテナ装置40について説明する。なお、携帯機器100は、本発明の「通信機器」の一例である。
【0059】
第3実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置40は、図8に示すように、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42と、接地部13と、第1アンテナ素子41に高周波電力を供給するための第1給電点14および第2アンテナ素子42に高周波電力を供給するための第2給電点15とを含んでいる。
【0060】
第1アンテナ素子41は、第2アンテナ素子42のX1方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42は、薄板形状を有し、図示しない基板の同一の表面に設けられている。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、マルチアンテナ装置40が対応する中心周波数2.55GHzの波長(118mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。また、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42は、第1アンテナ素子41の主な偏波面と第2アンテナ素子42の主な偏波面とが略直交するように配置されている。具体的には、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、折り返し形状を有している。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、全体として、X1方向(X2方向)に沿って延びるように配置されている。つまり、第1アンテナ素子41と第2アンテナ素子42とは、互いに反対向きでかつ平行な方向(X1方向およびX2方向)に沿って延びるように配置されている。また、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42は、Y方向(高さ方向)にH3の長さを有する。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、第1部分41a(第2部分42a)と、第1平行部41b〜41e(第2平行部42b〜42e)と、第1連結部41f〜41i(第2連結部42f〜42i)とを含む。なお、電気長とは、アンテナを構成する導体上を進む信号の1波長を基準とした長さである。また、X1方向およびX2方向は、それぞれ、本発明の「第1の方向」および「第2の方向」の一例である。
【0061】
第1部分41aおよび第2部分42aは、X方向(第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42が全体として延びる方向)において、互いに対向するように配置されている。また、第1部分41a(第2部分42a)は、X2方向側(X1方向側)の端部が第1給電点14(第2給電点15)に接続されている。また、第1部分41a(第2部分42a)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている。つまり、第1部分41aおよび第2部分42aは、互いに対向し、かつ、互いに直交する方向に延びるように形成されている。
【0062】
第1平行部41b〜41e(第2平行部42b〜42e)および第1連結部41f〜41i(第2連結部42f〜42i)により、第1折返部41j(第2折返部42j)が形成されている。また、第1折返部41j(第2折返部42j)は、第1部分41a(第2部分42a)に対してX1方向側(X2方向側)に配置されている。詳しくは、第1平行部41b〜41e(第2平行部42b〜42e)は、第1部分41a(第2部分42a)に対して平行にX1方向(X2方向)に沿って配置されている。言い換えると、第1平行部41b〜41eおよび第2平行部42b〜42eは、互いに直交する方向に延びるように形成されている。また、第1平行部41e(第2平行部42e)のX1方向側(X2方向側)の端部は、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)の開放された端部である。
【0063】
第1連結部41f〜41i(第2連結部42f〜42i)は、第1部分41a(第2部分42a)または第1平行部41b〜41d(第2平行部42b〜42d)と、第1平行部41b〜41e(第2平行部42b〜42e)とを折り返すように連結している。具体的には、第1連結部41f(第2連結部42f)は、第1部分41a(第2部分42a)および第1平行部41b(第2平行部42b)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部41g(第2連結部42g)は、隣接する第1平行部41bおよび41c(第2平行部42bおよび42c)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部41h(第2連結部42h)は、隣接する第1平行部41cおよび41d(第2平行部42cおよび42d)のX1方向側(X2方向側)の端部を互いに連結している。また、第1連結部41i(第2連結部42i)は、隣接する第1平行部41dおよび41e(第2平行部42dおよび42e)のX2方向側(X1方向側)の端部を互いに連結している。
【0064】
ここで、第3実施形態では、第1連結部41f〜41i(第2連結部42f〜42i)は、X1方向(X2方向)に延びるように形成されている。
【0065】
第1給電点14および第2給電点15は、X方向に所定の間隔を隔てて、接地部13に配置されている。第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)のY2方向側で接続されている。また、第1給電点14(第2給電点15)は、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)と図示しない給電線とを接続している。
【0066】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
上記のように、第3実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1アンテナ素子41に、第1部分41aと、第1部分41aに対して第2アンテナ素子42とは反対側に配置された第1折返部41jとを設けるとともに、第2アンテナ素子42に、第1部分41aと対向した状態で第1部分41aと直交する方向に延びる第2部分42aと、第2部分42aに対して第1アンテナ素子41とは反対側に配置された第2折返部42jとを設けることによって、配線パターン設計の自由度が低下することを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、マルチアンテナ装置40をより小型化することができる。
【0068】
さらに、第3実施形態では、上記のように、第1折返部41jに、第1部分41aまたは第1平行部41b〜41dと、第1平行部41b〜41eとを折り返すように連結する第1連結部41f〜41iを設け、第2折返部42jに、第2部分42aまたは第2平行部42b〜42dと、第2平行部42b〜42eとを折り返すように連結する第2連結部42f〜42iを設け、第1連結部41f〜41iを、X1方向に延びるように形成するとともに、第2連結部42f〜42iを、X2方向に延びるように形成する。このように構成すれば、第1連結部41f〜41i(第2連結部42f〜42i)の両端の位置を、Y方向(高さ方向)において、そろえることができるので、図15に示すように、連結部をX方向と交差する方向に延びるように形成する場合に比べて、連結部のY1方向側またはY2方向側(高さ方向側)のデッドスペースを小さくすることができる。その結果、マルチアンテナ装置40を配置する領域を小さくすることができる。たとえば、マルチアンテナ装置40が配置される領域のY方向(高さ方向)の長さH3を第1実施形態のH1に比べて小さくすることができる。
【0069】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、携帯機器に本発明のマルチアンテナ装置を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。携帯機器以外の通信機器に本発明のマルチアンテナ装置を適用してもよい。
【0072】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の開放されている端部が、第1給電点(第2給電点)に対して第2アンテナ素子(第1アンテナ素子)とは反対側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図9に示す第1変形例のように、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の開放されている端部が、第1給電点(第2給電点)に対して第2アンテナ素子(第1アンテナ素子)側に配置されていてもよい。
【0073】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子の第1部分(第2アンテナ素子の第2部分)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図10に示す第2変形例のように、第1アンテナ素子の第1部分(第2アンテナ素子の第2部分)は、X1方向側(X2方向側)の端部から、X2方向(X1方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されていてもよい。
【0074】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子が全体として延びる方向である第1の方向(X1方向)は、第2アンテナ素子が全体として延びる方向である第2の方向(X2方向)に対して平行でかつ反対向きの方向である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1の方向は、第2の方向に対して平行ではない反対向きの方向であってもよい。たとえば、図11に示す第3変形例のように、第1アンテナ素子が全体として延びる方向である第1の方向がA方向であり、第2アンテナ素子が全体として延びる方向である第2の方向がB方向であってもよい。
【0075】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)は、全体として延びる方向である第1の方向(第2の方向)に対して略直交する方向に延びる部分を有していない例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、たとえば、図12に示すように、第1アンテナ素子51(第2アンテナ素子52)は、第1の方向(X1方向)(第2の方向(X2方向))側に、第1の方向(第2の方向)に対して略直行する方向に延びる部分51a〜51d(52a〜52d)を有していてもよい。この場合、第1アンテナ素子51の部分51a〜51dと第2アンテナ素子52の部分52a〜52dとは、互いに略平行に延びるように形成されていてもよい。これにより、相互結合の影響が少ない互いに離れている部分を、互いに直交する方向に延びるように形成しなくてもよいので、配線パターン設計の自由度が低下することをより抑制することが可能である。
【0076】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子の第1部分および第2アンテナ素子の第2部分は、互いに直交する方向に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、それぞれ互いに略直交する方向に延びていれば、90度でなくてもよい。
【0077】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子の第1平行部および第2アンテナ素子の第2平行部は、互いに直交する方向に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、それぞれ互いに略直交する方向に延びていれば、90度でなくてもよい。
【0078】
また、上記第1および第2実施形態では、第1アンテナ素子の第1連結部および第2アンテナ素子の第2連結部は、互いに直交する方向に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、それぞれ互いに略直交する方向に延びていれば、90度でなくてもよい。
【0079】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子の第1部分(第2アンテナ素子の第2部分)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度の方向に延びるように形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1部分と第2部分とが互いに略直交する方向に延びるように形成されていれば、第1アンテナ素子の第1部分(第2アンテナ素子の第2部分)は、X2方向側(X1方向側)の端部から、X1方向(X2方向)に対してY1方向側に45度以外の方向に延びるように形成されていてもよい。
【0080】
また、上記第2実施形態では、給電点とアンテナ素子の間にインピーダンス整合を図るためにπ型の整合回路を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、インピーダンス整合を図るためにT型の整合回路(図13参照)を設けてもよいし、L型の整合回路(図14参照)を設けてもよい。また、π型の整合回路やT型の整合回路、L型の整合回路などは、インダクタ(コイル)またはキャパシタ(コンデンサ)の一方のみにより構成してもよいし、インダクタおよびキャパシタの両方により構成してもよい。また、第1および第3実施形態のマルチアンテナ装置に整合回路を設けてもよい。
【0081】
また、上記第1〜第3実施形態では、マルチアンテナ装置の一例として、MIMO通信用のマルチアンテナ装置を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ダイバシティなどMIMO以外の形式に対応するマルチアンテナ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10、30、40 マルチアンテナ装置
11、31、41、51 第1アンテナ素子
11a、31a、41a 第1部分
11b〜11e、31b〜31e、41b〜41e 第1平行部
11f〜11i、31f〜31i、41f〜41i 第1連結部
11j、31j、41j 第1折返部
12、32、42、52 第2アンテナ素子
12a、32a、42a 第2部分
12b〜12e、32b〜32e、42b〜42e 第2平行部
12f〜12i、32f〜32i、42f〜42i 第2連結部
12j、32j、42j 第2折返部
14 第1給電点
15 第2給電点
16 第1整合回路
17 第2整合回路
100 携帯機器(通信機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナ素子と、
第2アンテナ素子とを備え、
前記第1アンテナ素子は、第1部分と、前記第1部分に対して前記第2アンテナ素子とは反対側に配置された第1折返部とを含み、
前記第2アンテナ素子は、前記第1部分と対向した状態で前記第1部分と略直交する方向に延びる第2部分と、前記第2部分に対して前記第1アンテナ素子とは反対側に配置された第2折返部とを含む、マルチアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1部分および前記第1折返部を含む前記第1アンテナ素子は、全体として、前記第2アンテナ素子とは反対側に向かう第1の方向に沿って延びるように配置されており、
前記第2部分および前記第2折返部を含む前記第2アンテナ素子は、全体として、前記第1アンテナ素子とは反対側に向かう第2の方向に沿って延びるように配置されている、請求項1に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1折返部は、前記第1部分に対して略平行に前記第1の方向に沿って配置される複数の第1平行部を有し、
前記第2折返部は、前記第2部分に対して略平行に前記第2の方向に沿って配置されて前記第1平行部と略直交する方向に延びる複数の第2平行部を有する、請求項2に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1折返部は、前記第1部分または前記第1平行部と、前記第1平行部とを折り返すように連結する第1連結部をさらに有し、
前記第2折返部は、前記第2部分または前記第2平行部と、前記第2平行部とを折り返すように連結する第2連結部をさらに有し、
前記第1連結部および前記第2連結部は、互いに略直交する方向に延びるように形成されている、請求項3に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1折返部は、前記第1部分または前記第1平行部と、前記第1平行部とを折り返すように連結する第1連結部をさらに有し、
前記第2折返部は、前記第2部分または前記第2平行部と、前記第2平行部とを折り返すように連結する第2連結部をさらに有し、
前記第1連結部は、前記第1の方向に延びるように形成されているとともに、前記第2連結部は、前記第2の方向に延びるように形成されている、請求項3に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、同一の平面に形成されているとともに、前記第1アンテナ素子の主な偏波面と前記第2アンテナ素子の主な偏波面とが略直交するように配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第1給電点および前記第2アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第2給電点をさらに備え、
前記第1アンテナ素子は、前記第2アンテナ素子側の端部が接地されているとともに、両端部以外の場所が前記第1給電点に接続されており、
前記第2アンテナ素子は、前記第1アンテナ素子側の端部が接地されているとともに、両端部以外の場所が前記第2給電点に接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、それぞれ、モノポールアンテナであり、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子が出力する電波の波長の略1/4の電気長を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第1給電点および前記第2アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第2給電点と、
前記第1アンテナ素子と前記第1給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第1整合回路と、
前記第2アンテナ素子と前記第2給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第2整合回路とをさらに備える、請求項1〜8いずれか1項に記載のマルチアンテナ装置。
【請求項10】
マルチアンテナ装置と、
前記マルチアンテナ装置により送受信した電波を用いて通信する通信部とを備え、
前記マルチアンテナ装置は、第1アンテナ素子と、第2アンテナ素子とを含み、前記第1アンテナ素子は、第1部分と、前記第1部分に対して前記第2アンテナ素子側と反対側に配置された第1折返部とを有し、前記第2アンテナ素子は、前記第1部分と対向した状態で前記第1部分と略直交する方向に延びる第2部分と、前記第2部分に対して前記第1アンテナ素子側と反対側に配置された第2折返部とを有する、通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−227579(P2012−227579A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90682(P2011−90682)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】