説明

マルチレイヤ画像処理装置及びレーダ装置

【課題】レイヤ毎にメモリバスを用意したり、また一時保存用のメモリを用意したりすることなく、これにより基板製造コストや部品コストの増加を防ぎ、マルチレイヤ画像のメモリアクセス処理を簡略化し得るマルチレイヤ画像処理装置を提供する。
【解決手段】VRAM160に対する複数のレイヤ画像データの書き込み実行に先立ち、メモリコントローラ150にてVRAM160のアドレスラインの一部をデータマスクラインにして、アドレス変換処理を実行することで、CPU120から見たVRAM160のメモリマップを、画像処理部170から見たVRAM160のメモリマップに変換するようにして、CPU120及び画像処理部170の両方から見てメモリ空間が連続になるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のレイヤ画像データから合成画像を生成するためのマルチレイヤ画像処理装置と、このマルチレイヤ画像処理装置を使用したレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飛翔体等の目標対象物の検出・追尾処理を行うレーダ装置は、送出したレーダ波の反射波から目標画像を生成する。このとき、複数のレイヤ画像データから合成画像を生成するためのマルチレイヤ画像処理装置が使用される(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−189663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記マルチレイヤ画像処理装置では、レイヤ毎にメモリバスを用意するか、一時保存用のメモリを用意してバッファ処理を行ってマルチレイヤ画像の合成や演算などの処理を行っていた。
【0004】
そこで、この発明の目的は、レイヤ毎にメモリバスを用意したり、また一時保存用のメモリを用意したりすることなく、これにより基板製造コストや部品コストの増加を防ぎ、マルチレイヤ画像のメモリアクセス処理を簡略化し得るマルチレイヤ画像処理装置及びレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、この発明に係るマルチレイヤ画像処理装置は、第1のバスに接続される画像生成部にて生成される第1のレイヤ画像データを、第1のバスに比して広帯域の第2のバスに接続されるメモリに対し書き込むと共に、第1のレイヤ画像データとは異なる第2のレイヤ画像データをメモリ中の第1のレイヤ画像データとは異なるアドレス空間に連続させて書き込み、第2のバスに接続される画像処理部にてメモリから第1及び第2のレイヤ画像データを読み出して合成出力するマルチレイヤ画像処理装置を対象にしている。
【0006】
メモリに対する第1及び第2のレイヤ画像データの書き込み時に、画像生成部から見て第1及び第2のレイヤ画像データがメモリの別々のアドレス空間に連続で格納された状態を示す第1のメモリマップを、画像処理部から見て第1及び第2のレイヤ画像データがメモリの同一のアドレス空間に連続で格納された状態を示す第2のメモリマップに変換してメモリにアクセスする制御手段を備えるようにしたものである。
【0007】
なお、制御手段は、メモリのアドレスラインの一部をデータマスクラインにし、アドレス変換処理を実行することで、第1のメモリマップから第2のメモリマップに変換することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、メモリに対する第1及び第2のレイヤ画像データの書き込み実行に先立ち、メモリのアドレスラインの一部をデータマスクラインにして、アドレス変換処理を実行することで、画像生成部から見た第1のメモリマップを、画像処理部から見た第2のメモリマップに変換するようにして、画像生成部及び画像処理部の両方から見てメモリ空間が連続になるようにしている。
【0009】
従って、レイヤ毎にメモリバスを用意したり、一時保存用のメモリを用意したりすることなく、メモリのアクセス帯域を最大限に生かすことができ、これにより基板製造コストや部品コストの増加を防ぎ、マルチレイヤ画像のメモリアクセス処理を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したようにこの発明によれば、レイヤ毎にメモリバスを用意したり、また一時保存用のメモリを用意したりすることなく、これにより基板製造コストや部品コストの増加を防ぎ、マルチレイヤ画像のメモリアクセス処理を簡略化し得るマルチレイヤ画像処理装置及びレーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明に係わるマルチレイヤ画像処理装置が使用されるレーダシステムの概略構成図で、100はレーダ装置を示す。
【0013】
レーダ装置100は、空間にレーダ波を送出し、目標Tに当たって反射される波を受信し画像処理する。
【0014】
図2は、この発明の一実施形態とするマルチレイヤ画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図2において、システムバス(32bit)110上には、画像生成部としてのCPU120、システムバスコントローラ130が接続される。また、システムバス110より広帯域なメモリバス(128bit)141,142,143には、システムバスコントローラ130、メモリコントローラ150、VRAM160、画像処理部170が接続される。さらに画像処理部170にはディスプレイ180が接続される。
【0016】
CPU120は、レーダ反射波から得られる目標Tに関する受信信号から複数のレイヤ画像データを生成する。
【0017】
システムバスコントローラ130は、CPU120で生成された複数のレイヤ画像データを取り込み、メモリバス141、メモリコントローラ150、メモリバス142を介してVRAM160の然るべきアドレス空間に転送する。
【0018】
メモリコントローラ150は、VRAM160にデータを格納する際、図3に示す画像処理部170側から見た場合のVRAMメモリマップに変換してアクセスするとともに、VRAM160上のレイヤ画像データの存在空間を画像処理部170に通知する。
【0019】
画像処理部170は、メモリコントローラ150からの通知に基づいて、VRAM160に格納されたレイヤ画像データを読み出して、画像処理により合成や演算を行う。画像処理したデータはディスプレイ180に出力される。
【0020】
図4は、上記メモリコントローラ150の具体的構成を示すブロック図である。
【0021】
メモリコントローラ150において、CPU120側からのアクセスがあった際に、アドレスデコード部151によりアドレス変換を行い、データマスク生成部152によりVRAM160に格納するデータの一部をマスクした後、アクセス選択部153を介してVRAM160にデータを書き込む。書き込み終了後、データ並べ替え部153によりVRAM160の各レイヤ画像データが連続するように並べ替えを行う。
【0022】
また、画像処理部170からのアクセス時に、アドレス生成部154及びデータマスク生成部155によりCPU120から見たVRAMメモリマップを画像処理部170から見たVRAMメモリマップに変換して、アクセス選択部153に対してVRAM160の読み出し開始アドレス及び読み出しバイト数を指定する。すると、アクセス選択部153は指定されたアドレスから指定されたバイト数だけ、VRAM160のデータを読み出しデータ読み出し部156を介して画像処理部170に転送する。
【0023】
次に、上記構成における動作について説明する。
【0024】
すなわち、画像処理部170では、図5に示すように、各レイヤ画像データの合成を行う。この画像合成を行うためにはVRAM160から各レイヤ画像を同じタイミングで読み出さなければならない。しかし、VRAM160上の別々の空間にレイヤ画像が保存されていると、読み出したデータを一時保存し、読み出し帯域を上げることで対応しなければならない。
【0025】
多くの場合、VRAM160にはDRAM(DDRDRAM、RLDRAMなど)が使用される。このメモリは連続空間をアクセスする場合はメモリアクセス帯域を上げることができるが、不連続空間の場合はアクセスにオーバヘッドが生じる。
【0026】
そこで、本発明では、このオーバヘッドを削減してアクセス帯域を上げるとともに、CPU120、画像処理部170の両方からのアクセス方法が最適になるように、図3に示すメモリマップの変換を行うメモリコントローラ150を構築するようにしている。
【0027】
メモリコントローラ150は、CPU120側からのアクセスに使用されるシステムバス110をデコードしメモリアクセスを行う。この際、アドレスラインの一部をデータマスクラインにすることと、アドレス変換を行うことで、CPU120側から見たメモリマップを画像処理部170から見たメモリマップに変換する。
【0028】
これにより、CPU120から見ても、画像処理部170から見てもVRAM160は連続空間になり制御が容易になる。また、実際のメモリ空間も連続になっているのでVRAM160のアクセス帯域も最大限生かすことができる。
【0029】
このメモリコントロールが行える前提条件は、システムバス110の帯域がVRAM160のメモリバス141,142、143の帯域よりも狭い(1/レイヤ数以下)ことである。
【0030】
以上のように、上記実施形態では、VRAM160に対する複数のレイヤ画像データ(1〜4)の書き込み実行に先立ち、メモリコントローラ150にてVRAM160のアドレスラインの一部をデータマスクラインにして、アドレス変換処理を実行することで、CPU120から見たVRAM160のメモリマップを、画像処理部170から見たVRAM160のメモリマップに変換するようにして、CPU120及び画像処理部170の両方から見てメモリ空間が連続になるようにしている。
【0031】
従って、レイヤ毎にメモリバスを用意したり、一時保存用のメモリを用意したりすることなく、メモリのアクセス帯域を最大限に生かすことができ、これにより基板製造コストや部品コストの増加を防ぎ、マルチレイヤ画像のメモリアクセス処理を簡略化することができる。
【0032】
また、上記実施形態では、レーダ装置100に用いる例について説明したが、レーダ装置100以外にも、複数のレイヤ画像の合成を行う装置に適用できることはもちろんのことである。
【0033】
なお、本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上記実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係わるマルチレイヤ画像処理装置が使用されるレーダシステムの概略構成図。
【図2】この発明の一実施形態としてのマルチレイヤ画像処理装置のブロック図。
【図3】VRAMメモリマップを示す図。
【図4】上記図2に示したメモリコントローラの具体的構成を示すブロック図。
【図5】マルチレイヤ画像処理のイメージを示す図。
【符号の説明】
【0035】
100…レーダ装置、110…システムバス、120…CPU、130…システムバスコントローラ、141〜143…メモリバス、150…メモリコントローラ、160…VRAM、170…画像処理部、180…ディスプレイ、T…目標。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバスに接続される画像生成部にて生成される第1のレイヤ画像データを、前記第1のバスに比して広帯域の第2のバスに接続されるメモリに対し書き込むと共に、前記第1のレイヤ画像データとは異なる第2のレイヤ画像データを前記メモリ中の前記第1のレイヤ画像データとは異なるアドレス空間に連続させて書き込み、前記第2のバスに接続される画像処理部にて前記メモリから前記第1及び第2のレイヤ画像データを読み出して合成出力するマルチレイヤ画像処理装置において、
前記メモリに対する前記第1及び第2のレイヤ画像データの書き込み時に、前記画像生成部から見て前記第1及び第2のレイヤ画像データが前記メモリの別々のアドレス空間に連続して格納された状態を示す第1のメモリマップを、前記画像処理部から見て前記第1及び第2のレイヤ画像データが前記メモリの同一のアドレス空間に連続して格納された状態を示す第2のメモリマップに変換して前記メモリにアクセスする制御手段を備えたことを特徴とするマルチレイヤ画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記メモリのアドレスラインの一部をデータマスクラインにし、アドレス変換処理を実行することで、前記第1のメモリマップから前記第2のメモリマップに変換することを特徴とする請求項1記載のマルチレイヤ画像処理装置。
【請求項3】
前記請求項1記載のマルチレイヤ画像処理装置を備え、空間にレーダ波を送信し、このレーダ波の反射波を受信してこの受信信号をマルチレイヤ画像処理装置の画像生成部に供給するレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−165438(P2008−165438A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353369(P2006−353369)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】