説明

マレイミジル基含有材料

【課題】 診断薬および医薬品担体、抗原/抗体固定化用担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤、並びに化粧品添加剤に有用な、水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料の提供。
【解決手段】 少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有し、該マレイミジル基と水酸基の含有比率A(モル比)が0.0001<A≦0.01であることを特徴とするマレイミジル基含有材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマレイミジル基含有材料に関し、特に、診断薬及び医薬品担体、抗原/抗体固定化用担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤、並びに化粧品添加剤として使用可能なマレイミジル基含有材料に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂やキレート樹脂のような機能性材料は、種々の化学物質の担体として従来から広く用いられている。このような機能性材料は、材料の表面に種々の反応性基を有する。従来からカルボキシル基、1級または2級アミノ基及び水酸基のような種々の活性水素含有基が導入された機能性材料が種々の用途に用いられてきた。特に近年では、核酸やペプチド、抗体のような生体分子あるいは生体分子類似の合成分子を、活性を保持したまま材料に固定し、アフィニティクロマトグラフィや診断薬、検査薬などに用いられるようになった。
【0003】
このような用途では、担体としては、生体分子あるいは生体分子類似の合成分子中のSH基との間に温和な反応条件で選択的にかつ安定な結合の形成が可能なマレイミジル基(マレイミド基、以下「マレイミド基」という場合がある)を有するものが望まれていた。また、選択性の高い担体として用いる場合は、所望量のマレイミド基を均一かつ確実に担持する必要があり、さらに親生体分子材料で、生体分子の可溶な水性媒体に対する良好な分散性を有する必要がある。
【0004】
マレイミド基含有化合物として、Fulka社2001/2002製品カタログ(第909頁)には、マレイミド基を含有するポリスチレン粒子が掲載されている。しかしながらこの材料は、疎水性が高いため、水性媒体中での分散性が非常に悪いものであった。
【0005】
このような中、生体分子の生理活性を低下させないためにマレイミド基を含有するリン脂質膜を表面に存在させた微粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この材料は、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミドのような一分子中にサクシンイミド基とマレイミド基とを含有する二価性試薬をリン脂質と反応させ、カラムクロマトグラフィなどの方法で精製してマレイミド基含有リン脂質をあらかじめ作製し、さらに多段の処理を経てマレイミド基を含有するリン脂質膜を作製し、これを磁性粒子のごとき核粒子表面に形成するというものである。この材料は、核粒子とマレイミド基を含有するリン脂質膜とが化学結合していないため、耐溶剤性が低いなど物理的に弱いという欠点がある。また製造工程がきわめて複雑であり、原料である二価性試薬は高価な試薬であるためコストが高くなるという欠点もある。
【0006】
また、他の製造方法としては、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサンなどのように、一分子中にマレイミド基を二分子含有する化合物とSH基を含有する材料との反応によりマレイミジル基含有材料を製造する方法がある。
【0007】
この方法によると、一分子のマレイミド基導入時にさらにもう一分子マレイミド基が導入されるため、水性媒体への分散性が悪い材料となる。また、一分子中にマレイミド基を二分子含有する化合物は高価な試薬であるため、コストが高くなり、加えて、化学的に不安定なSH基を含有する材料を予め作製しなければならないという欠点がある。
【0008】
さらに、ポリスチレンとN−クロロメチルマレイミドとの反応によりマレイミジル基含有材料を作製する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法によると、一段階の反応によりマレイミド基の導入を行うことができるが、母材がポリスチレンであるため疎水性が高くなる。また、N−クロロメチルマレイミドは有毒な三塩化リンを使用して合成するため、製造上良い方法ではない。
【0009】
このように、今までのマレイミジル基含有材料は、水性媒体に対する分散性が不十分であった。また、簡易な工程で、低コストのマレイミジル基含有材料を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平11−106391号公報
【非特許文献1】J.Polym.Sci.,Polymer Chemistry Edition,Vol.17,3675−3685(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記本発明により達成することができる。すなわち本発明は、
<1> 少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有し、該マレイミジル基と水酸基との含有比率A(マレイミジル基/水酸基、モル比)が0.0001<A≦0.01であるマレイミジル基含有材料である。
【0012】
<2> マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料を、少なくとも表面に有する粒子である<1>に記載のマレイミジル基含有材料である。
【0013】
<3> 前記ポリマー材料が、架橋体である<2>に記載のマレイミジル基含有材料である。
【0014】
<4> 前記粒子の体積平均粒径が、0.01〜500μmの範囲である<2>に記載のマレイミジル基含有材料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマレイミジル基含有材料は、少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有し、該マレイミジル基と水酸基との含有比率A(マレイミジル基/水酸基、モル比)が0.0001<A≦0.01であることを特徴とする。
【0017】
マレイミジル基含有材料の構成を上記のようにすることにより、水性媒体(例えば、純水、緩衝液)に対する分散性を良好なものとすることができる。特に、親生体分子の母材を元に前記構成のマレイミジル基含有材料を作製すれば、生体分子と生体分子の可溶な水系媒体とに良好な分散性を有する材料を提供することができる。そして、診断薬及び医薬品担体、抗原/抗体固定化用担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤、並びに化粧品添加剤等のような用途に好適に使用することができる。
【0018】
本発明のマレイミジル基含有材料は、少なくとも表面にマレイミジル基及び水酸基を有していればよく、その態様としては、分子鎖中にマレイミジル基と水酸基とを有するポリマーであってもよいし、分子鎖中にマレイミジル基を有するポリマーと分子鎖中に水酸基を有するポリマーとのブレンドポリマーであってもよい。
【0019】
また、あるポリマー中にマレイミジル基及び/または水酸基を有する低分子化合物を混合させたものであってもよい。さらに、本発明のマレイミジル基含有材料としては、母材となる材料表面にこれらのポリマー材料をコーティングしたものであってもよい。
【0020】
本発明のマレイミジル基含有材料においては、前記マレイミジル基と水酸基との含有比率A(マレイミジル基/水酸基、モル比)が、0.0001<A≦0.01であることが必要である。また、含有比率Aは、0.001<A<0.01であることが好ましい。
【0021】
前記含有比率Aが0.0001以下であると、後述するようなポリマー材料へのマレイミジル基の導入に際して、ほとんど反応が進行しなくなってしまう。また、反応したとしても材料表面におけるマレイミジル基の量が十分でなく、前述の担体としての機能を発揮することができない。一方、含有比率Aが0.01を超えると、担体としての機能を発揮しうるマレイミジル基の量は充分であるが、材料作製時に高価であるマレイミジル基含有化合物を多量に使用しなければならないため、製造コストが高くなり好ましくない。
【0022】
また、本発明のマレイミジル基含有材料は、マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料を、少なくとも表面に有する粒子であることが、製造の容易性(官能基の導入のしやすさなど)や担体としての取り扱いやすさ等の点から好ましい。
【0023】
ここで、上記マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料とは、ポリマーを構成する単位(モノマー由来単位)がマレイミジル基及び/または水酸基を有している場合、あるいは、ポリマー中にマレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物がブレンドされている場合の双方を意味する。なお、ポリマー材料全体としては、必ずマレイミジル基と水酸基とが含まれる。
また、前記「少なくとも表面に有する」とは、マレイミジル基含有材料が前記ポリマー材料単独で形成されていてもよく、母材粒子の表面に前記ポリマー材料がコートされたものであってもよいことを意味する。
【0024】
なお、前記マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料は、架橋構造を有していなくてもかまわないが、架橋体であることが材料の耐溶剤性を上げることができる点で好ましい。なお、架橋体とは、分子鎖間を1箇所以上で化学結合させて結びつけ、網目構造を構成している重合体をいう。
【0025】
前記粒子である本発明のマレイミジル基含有材料の形状は、球状、板状、針状、紡錘状、無定形のいずれでもよいが、表面積が大きい方が良い場合は、球状、板状、無定形であることが好ましい。また、粒子の大きさも特に制限されないが、実用性を考慮すると、体積平均粒径で0.01μm〜500μmの範囲が好ましく、10μm〜200μmの範囲がより好ましい。
【0026】
体積平均粒径が0.01μmに満たないと、溶液からの材料の回収が困難となる場合がある。500μmを超えると、粒径の小さいものより表面積が小さいため所望の反応性を満たさない場合がある。
なお、前記粒子が針状、あるいは紡錘状のものの場合は、長軸長が0.01μm〜500μmの範囲で、軸比(アスペクト比)が3〜20の範囲であるものが好ましい。また、形状が球形であると製造しやすいため好ましい。
【0027】
なお、上記体積平均粒径は、マレイミジル基含有材料についてコールターカウンター、あるいは、光学顕微鏡や電子顕微鏡を使用して観察し、その写真から測定することができる。具体的には、顕微鏡写真により400個の粒子の直径を測定後、得られた半径より体積換算することにより求めることができる。
【0028】
本発明のマレイミジル基含有材料は、少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有している必要がある。ここで、上記「少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有している」とは、マレイミジル基及び水酸基が材料の「表面」または「表面及び内部」に存在することを意味する。
【0029】
前記のように、本発明のマレイミジル基含有材料としては、マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料を用いることが好ましい。上記ポリマー材料の製法は、特に制限されないが、水酸基を有する重合体を中間原料として、これの水酸基の一部分をマレイミジル基とすることで作製することができる。
【0030】
上記中間原料(水酸基を有する重合体)としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、ポリスチレン重合体、アクリルアミド重合体、(メタ)アクリレート−スチレン−アクリルアミド共重合体及びこれらの架橋体;コア・シェル型有機ポリマー;シリカゲル;シリコーン樹脂;アガロース;セルロースまたはデキストラン;KLHあるいはBSA、OVAなどのタンパク及びそれらの変性タンパク;等を挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」等の記載は、「メタアクリレート」または「アクリレート」等を意味するものとする。
【0031】
これらの中でも、水酸基を有する架橋(メタ)アクリレート重合体、架橋スチレン重合体、架橋アクリルアミド重合体、架橋(メタ)アクリレート−スチレン共重合体は、材料組成の制御が容易なのでより好ましい。
また、前記ポリマー材料そのもので前記粒子が形成されたもの(以下、「ポリマー粒子」、「架橋ポリマー粒子」という場合がある)の場合は、(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
なお、重合体中に水酸基を含有させる方法としては、例えば、(1)水酸基を有するラジカル重合性単量体(a−1)とそれ以外の重合性単量体(a−2)とを共重合させることにより重合体を得る方法と、(2)下記一般式(A)または一般式(B)で示される(メタ)アクリレート重合体を加水分解させて得られたカルボキシル基とジオール化合物とを反応させることにより得る方法と、(3)下記一般式(A)または一般式(B)で示される(メタ)アクリレート重合体を、含金属エステル交換反応用触媒の存在下で、ジオール化合物と直接エステル交換反応させて得る方法と、などが挙げられる。
【0033】
【化1】

【0034】
上記一般式(A)及び一般式(B)において、R1は水素原子またはメチル基、R2〜R4は炭素数が1から12のアルキル基もしくはアリール基、R5及びR6は水素原子またはメチル基、R7及びR8は水素原子またはハロゲン原子もしくは炭素数1から12のアルキル基またはアルコキシ基を各々表す。また、pは1以上の整数を表す。
【0035】
前記(1)の方法における水酸基を有するラジカル重合性単量体(a−1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。また、例えば、アリルアルコール、4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−ヒドロキシエチルスチレン、1,4−ジヒドロキシ−2ブテン等の一級水酸基を含有するビニルモノマーなども使用できる。
【0036】
前記(1)の方法における水酸基を有するラジカル重合性単量体以外の重合性単量体(a−2)としては、分子中にカルボキシル基、アミド基、その他の重合性ビニル単量体及び架橋性を有する単量体が含まれる。
【0037】
前記分子中にカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル;フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステルなどの芳香族ジカルボン酸モノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル;アクリル酸;メタクリル酸;クロトン酸;けい皮酸;などを挙げることができる。
【0038】
前記分子中にアミド基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのモノアルキロール(メタ)アクリルアミド;N,N−ジ(メチロール)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのジアルキロール(メタ)アクリルアミド;等を挙げることができる。
【0039】
前記その他の重合性ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基、フェノキシ基を含む(メタ)アクリレート;などを挙げることができる。
【0040】
前記架橋性を有する単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸 2−([1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルなどを挙げることができる。
【0041】
前記(2)、(3)の方法における上記一般式(A)及び一般式(B)で示される(メタ)アクリレート重合体を形成するためのラジカル重合性単量体としては、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシベンジル(メタ)アクリレート、ジメトキシベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルベンジル(メタ)アクリレート、エチルベンジル(メタ)アクリレート、4−フルオロベンジル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの中でも、特にt−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが、単量体の入手性、価格、反応性の点で好ましい。
また、一般式(A)及び一般式(B)で示される(メタ)アクリレート重合体は、前記(1)の方法における重合性単量体(a−2)との共重合体であってもよい。
【0042】
前記各種単量体の重合法としては、公知の方法を用いることができるが、前述のように、本発明のマレイミジル基含有材料をポリマー粒子あるいは架橋ポリマー粒子として得る場合には、造粒重合法が好ましく用いられる。
上記造粒重合法としては、公知の方法が利用できる。すなわち、順相あるいは逆相懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法及びシード重合法などが好適に用いられる。さらに、膜乳化法と知られる乳化方法を使って懸濁重合することもできる。
【0043】
重合には、必要に応じて、当業者には周知の重合開始触媒を用い得る。具体的には、ジアシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド及びアルキルハイドロパーオキサイドのような有機過酸化物;過酸化水素及びオゾンのような無機過酸化物;アゾビスバレロニトリル(AIBN、和光純薬社より商品名V−60として入手可能)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬社より商品名V−59として入手可能)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社より商品名V−65として入手可能)のような油溶性アゾ系有機化合物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二酸塩(和光純薬社より商品名V−50として入手可能)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬社より商品名VA−086として入手可能)及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二酸塩(和光純薬社より商品名VA−044として入手可能)のような水溶性アゾ系有機化合物;等が挙げられる。
【0044】
上記重合開始剤を用いる場合は、それらは重合が良好に開始されるのに充分な量で用いられる。このような量は当業者に周知である。一般には、反応系全体の0.1〜5.0質量%の範囲の量で用いることが好ましい。
【0045】
さらに前記重合体には、粒子の着色を目的に公知の染料、顔料、カーボンブラック、磁性粉などを添加することも可能である。また、単量体とともにトルエン、オクタン、シクロヘキサノン、ジブチルフタレート、ラウリルアルコール等の非重合性の添加剤を入れ、重合後に抽出除去して粒子を多孔質とすることも可能である。
【0046】
このようにして得られた粒子の体積平均粒径の好ましい範囲は、前記粒子である本発明のマレイミジル基含有材料について説明した好適範囲と同様である。また、未架橋の重合体として得られる場合には、重合体の重量平均分子量は5000〜1000000の範囲であることが好ましい。
【0047】
前記(2)の方法では、上記のようにして重合した重合体のうち、(メタ)アクリレート重合体について酸もしくはアルカリで加水分解し、エステル部を一旦カルボキシル基に変換し、さらにこのカルボキシル基とジオール化合物の水酸基とをエステル反応させることにより水酸基を有する重合体を得ることができる。
前記ジオール化合物としては、キシリレンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。
【0048】
また、前記(3)の方法では、前記(メタ)アクリレート重合体と上記ジオール化合物とを、適当なエステル交換触媒で直接エステル交換反応させることにより水酸基を有する重合体を作製する。
【0049】
上記エステル交換触媒としては、例えば、酸鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛、酢酸カドニウム、酢酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、酢酸チタン、テトラブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、チタニウムオキシアセチルアセトネート、酢酸鉄、アセチルアセトネート鉄、酢酸ニオブなどの遷移金属化合物、ジブチルスズオキシド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、炭酸ビスマスオキシド、酢酸ビスマスオキシドなどの典型金属化合物があげられる。また、酢酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム,炭酸セシウムなどのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物、さらに、酢酸ランタン、酢酸サマリウム、酢酸ユウロピウム、酢酸エルビウム、酢酸イッテルビウムなどの希土類化合物も用いることができる。
【0050】
これらの触媒は、単独で用いても、2種以上組合せて用いてもよい。この中でも、チタニウムテトラアルコキシドが溶媒への溶解性、反応性の点でより好ましい。チタニウムテトラアルコキシドとしては、例えばテトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−第二−ブトキシチタン、テトラ−n−アミルオキシチタン、トリイソアミルオキシイソプロポキシチタンなどが挙げられる。
【0051】
触媒の添加量(含有量)は、重合体(粒子)100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲が好ましく、0.1〜20質量部の範囲がより好ましく、さらに好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。
触媒が0.01質量部未満であると、水酸基を導入するのが難しい場合があり、逆に50質量部を超えて添加されると、反応後の触媒の除去することが困難になる場合がある。
【0052】
ジオール化合物との反応割合(反応系への添加量)は、重合体のエステル部の構造との組み合わせ及び前記各種の官能基の導入量等により異なるが、基本的には重合体の質量に対し約2〜10倍量の前記ジオール化合物を用いることが好ましい。反応は、必要に応じて用いられる不活性溶媒中、120℃から200℃の反応条件で、5〜24時間程度加熱して反応させることにより、水酸基を有する重合体を得ることができる。
【0053】
ここで、水酸基導入量の再現性の面で、あらかじめ反応前に粒子を分級処理し、粒径をそろえてから反応させることが望ましい。こうして得られた水酸基を有する重合体は、メタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗及び/または溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
【0054】
本発明においては、例えば前記一般式(A)及び一般式(B)で示される重合体におけるエステル基をすべて水酸基に変換してもよいし、部分的に変換してもよい。
【0055】
次に、水酸基を有する重合体中にマレイミジル基を導入する方法について説明する。
導入方法としては、例えば上記水酸基を有する重合体中の水酸基とヒドロキシマレイミド化合物とを、触媒の存在下でエーテル化反応を行う方法が挙げられる。本発明においては、例えば上記ヒドロキシルマレイミド化合物の反応系への添加量を変化させることにより、前記本発明におけるマレイミジル基と水酸基との含有比率Aをコントロールすることができる。
【0056】
前記ヒドロキシルマレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基と水酸基とを含有しておればよく、具体的にはヒドロキシアルキルマレイミド類が挙げられる。中でも安価に得られるという点で、ヒドロキシメチルマレイミドが好ましい。
【0057】
前記エーテル化反応の触媒としては、酸性あるいは塩基性の公知のエーテル化触媒が使用できる。例えば、塩基性の触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が使用でき、単独または2種類以上混合して使用できる。酸性の触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸やp−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、酢酸等の有機酸が使用できる。また、ハイドロタルサイト類の固体触媒も使用が可能である。
【0058】
塩基性触媒や酸性触媒を使用する場合、その使用量は、対応する塩基または酸として、ヒドロキシマレイミド化合物に対して、0.01〜40質量%の範囲、好ましくは0.1〜15質量%の範囲がよい。固体触媒の場合は、ヒドロキシマレイミド化合物に対して、0.001〜100質量%の範囲、好ましくは0.1〜50質量%の範囲がよい。前記触媒等は、反応液に均一に溶解した状態で使用しても不溶の状態で使用しても良いが、均一溶解状態では、使用量を少なくすることができる。一方、不溶の状態では、反応後に反応液から常法により容易に触媒を分離回収することができる。
【0059】
なお、本発明のマレイミジル基含有材料がポリマー粒子あるいは架橋ポリマー粒子である場合には、マレイミジル基は下記一般式(1)に示されるように、スペーサーとしてのエチレンオキシド鎖を介してポリマー粒子を構成する重合体に結合していることが好ましい。このように親水性のスペーサーを介することで、ポリマー粒子の水系媒体中での分散性をより高められるだけでなく、実際に担体として用いる場合に、生体分子との吸脱着の際に立体障害の影響を少なくすることができる。
【0060】
【化2】

【0061】
一般式(1)中、マレイミジル基はエチレンオキシド鎖を介してポリマー粒子、架橋ポリマー粒子に「*」で化学結合しており、該エチレンオキシド鎖のnは、1以上の整数を表す。また、前記エチレンオキシド鎖は、例えば(ポリ)エチレングリコールと前記一般式(A)及び一般式(B)で示される重合体等とを反応させて化学的に結合することにより得ることができる。
【0062】
以上説明したような製法により、マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料を得ることができ、これを用いてポリマー粒子等の本発明のマレイミジル基含有材料を得ることができる。なお、前述のように、本発明のマレイミジル基含有材料は上記ポリマー粒子に限られるわけではなく、母材表面にマレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料をコーティングしたもの等であってもよい。
【0063】
このような本発明のマレイミジル基含有材料は、診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤並びに化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能である。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を示す。
【0065】
<実施例1>
(水酸基を有する重合体の作製)
エチレングリコールメタクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートを用いて逆相懸濁重合を行った。具体的には、主モノマーとしてエチレングリコールメタクリレート(和光純薬(株)製)100部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート5部を用い、これに蒸留水200部、過硫酸アンモニウム2部を添加し、攪拌混合した水溶液を調製した。上記作業は窒素下にて行った。
【0066】
ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)5部をシクロヘキサン1500部に溶解した溶液を窒素置換された容器に加え、これに先に調製した水溶液を添加し、回転式攪拌装置を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応系の温度を20℃に調節し、さらに溶液を攪拌しながらこれにテトラメチルエチレンジアミンの50%水溶液を添加し、重合を行った。
【0067】
得られた懸濁重合粒子について分級操作を施し、体積平均粒子径を前記の方法により求めたところ15μmであった。さらに、得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して水酸基を有する重合体である架橋重合粒子を得た。
また、得られた架橋重合粒子の水酸基量を、JIS K0070に従って水酸基価を測定し、それから換算して求めたところ5.046mmol/gであった。
【0068】
(ヒドロキシメチルマレイミドの合成)
24部のマレイミド(アルドリッチ(株)製)及び21部の35%HCOH(和光純薬(株)製)の混合物に、5%NaOH水溶液0.7部を加え、40℃で2時間反応させたところ、ヒドロキシメチルマレイミドの白色結晶が析出した。この反応液を減圧濾過後、常温で真空乾燥し、得られたヒドロキシメチルマレイミドの粗結晶を酢酸エチルで再結晶し、22部のヒドロキシメチルマレイミドを得た。
【0069】
(マレイミジル基含有材料の作製(マレイミド化反応))
前記で得られた水酸基を有する重合体10部に、上記ヒドロキシメチルマレイミド0.1部、トルエン500部を加え、60〜70℃に加熱撹拌し、これに触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物0.05部を入れ、温度を上げて10時間還流下反応させた。得られた微粒子をメタノールに分散して洗浄し、さらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥してマレイミジル基含有材料(1)を得た。
【0070】
得られたマレイミジル基含有材料(1)の水酸基量は、前記のようにJISK0070に記載の方法により測定、算出した。また、マレイミド基量は以下の方法で測定、算出した。
【0071】
−材料中のマレイミド基定量方法−
[操作]
(1)反応試薬の調製:100mlメスフラスコに、0.5mmol/lの2−メルカプトエチルアミン溶液20mlと、0.1mol/lのりん酸二水素ナトリウム水溶液5mlとを入れ、50mmol/lのEDTA/2Na水溶液で目盛りまで満たした。
(2)測定サンプルを0.05g量り取り、30mlサンプル管に入れた。
(3)上記サンプル管に反応試薬20mlを入れ、25℃でスターラーにて1時間攪拌した。
(4)反応後、サンプル管を遠心分離にかけて、粒子を遠枕沈殿させた。
(5)50mlメスフラスコに、遠心分離後の溶液の上澄み0.08mlを入れ、これに0.1mol/lのりん酸二水素ナトリウム水溶液2ml、5mmol/lの4−PDS(4,4'-Dithiodipyridine)エタノール溶液1mlを加え、メスフラスコの線まで水を入れた。
(6)50mlメスフラスコから、50mlサンプル管に上記溶液を移し、25℃で20分間攪拌した。
(7)この溶液について、吸光光度計にて324nmのピーク強度を計測し、この値を値1とした。また、測定サンプルを入れないで同様の操作、測定を行い、この値を値0とした。
【0072】
[計算]
(1) 値0から、値1を差し引いた値Aを算出した。
(2)(1)で算出した値Aを、B=(A−0.0198)/25800に代入し、値Bを求めた。
(3)(2)で求めた値Bを、C=B×(50×15/(0.08×1000))×1000に代入し、Cを算出した。
(4)Cを使用したサンプル量(g)で割った値を、材料中のマレイミド基量(mmol/g)とした。
【0073】
上記方法によりマレイミジル基含有材料(1)における水酸基量は5.046mmol/g、マレイミド基量は0.0420mmol/gであり、マレイミジル基と水酸基との含有比率Aは0.0083となった。
【0074】
(分散性の評価)
作製したマレイミジル基含有材料である架橋ポリマー粒子1部を10部の純水に入れ、30秒間超音波処理した。この分散液について顕微鏡観察を行い、以下の基準により純水中での分散性を判断した。
○:水中で粒子の凝集がみられず、分散が良好である。
×:水中で粒子が凝集し、分散が良好ではない。
結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2>
(カルボキシル基を有する重合体の作製)
t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)100部にジビニルベンゼン(純度:55%)5部を加え、混合した後、これに重合開始剤としてAIBNを2部混合した。一方、3Lフラスコ中で純水350質量部に燐酸カルシウム(和光純薬(株)製)20部を添加し、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)で25℃下、3分間分散したものに、前記混合物全量を添加し、5分間造粒した。その後、速やかに窒素置換を行いながら、反応系内を70℃に保ち、17時間懸濁重合反応を行なった。
【0076】
得られた懸濁重合粒子について分級操作を施し、体積平均粒子径を前記の方法により求めたところ15μmであった。さらに、得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋重合粒子を得た。
【0077】
上記架橋重合粒子10部を、ジオキサン(和光純薬(株)製)120部と塩酸(和光純薬(株)製)40部との混合液に分散させ、80℃で5時間反応させた。得られた粒子をイオン交換水に分散させ洗浄した後、単離乾燥してカルボキシル基を有する重合体の粒子を得た。次いで、得られたカルボキシル基を有する重合体粒子10部を、硫酸(和光純薬(株)製)50部及びエチレングリコール200(和光純薬(株)製)300部の混合液に分散し、120℃で6時間反応させた。得られた粒子をイオン交換水に分散/洗浄した後、単離乾燥して水酸基を有する重合体粒子を得た。
【0078】
この重合体粒子の水酸基量を、JIS K0070に従って水酸基価を測定し、それから換算して求めたところ4.102mmol/gであり、前記架橋重合粒子における有効なエステル基の約52モル%がヒドロキシル変性されたことが確認された。
【0079】
(マレイミジル基含有材料の作製(マレイミド化反応))
上記で得られた水酸基を有する重合体を用い、実施例1と同様にしてマレイミド化反応を行い、マレイミジル基含有材料(2)を得た。また、このマレイミジル基含有材料(2)について、実施例1と同様にして水酸基量及びマレイミド基量の測定を行ったところ、水酸基量は4.102mmol/g、マレイミド基量は0.0231mmol/gであり、マレイミジル基と水酸基との含有比率Aは0.0056となった。
【0080】
(分散性評価)
作製したマレイミジル基含有材料である架橋ポリマー粒子について、実施例1と同様にして分散性の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0081】
<実施例3>
(アミノ基を有する重合体の作製)
実施例1と同様にして、t−ブチルメタクリレート及びジビニルベンゼンを用いて懸濁重合を行い、体積平均粒径が15μmの架橋重合粒子を得た。
【0082】
上記架橋重合粒子10部を、エチレングリコール(和光純薬(株)製)50部に分散させ、メシチレン(和光純薬(株)製)15部を加え、窒素雰囲気下でテトラ−n−プロポキシチタンを0.2部滴下し、14時間還流下反応させた。得られた粒子をメタノールに分散して洗浄し、さらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して水酸基を有する重合体粒子を得た。
【0083】
この重合体粒子の水酸基量を、JIS K0070に従って水酸基価を測定し、それから換算して求めたところ4.021mmol/gであり、前記架橋重合粒子における有効なエステル基の約52モル%がヒドロキシル変性されたことが確認された。
【0084】
(マレイミジル基含有材料の作製(マレイミド化反応))
上記で得られた水酸基を有する重合体を用い、実施例1と同様にしてマレイミド化反応を行い、マレイミジル基含有材料(3)を得た。また、このマレイミジル基含有材料(3)について、実施例1と同様にして水酸基量及びマレイミド基量の測定を行ったところ、水酸基量は4.021mmol/g、マレイミド基量は0.0181mmol/gであり、マレイミジル基と水酸基との含有比率Aは0.0045となった。
【0085】
(分散性評価)
作製したマレイミジル基含有材料である架橋ポリマー粒子について、実施例1と同様にして分散性の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0086】
<比較例1>
(マレイミジル基を有する重合体の作製)
スチレン(和光純薬(株)製)95部にジビニルベンゼン(純度:55%)5部を加え、混合した後、これに重合開始剤としてAIBNを2部混合した。一方、3Lフラスコ中で純水350質量部に燐酸カルシウム(和光純薬(株)製)20部を添加し、ホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)で25℃下、3分間分散したものに、前記混合物全量を添加し、5分間造粒した。その後、速やかに窒素置換を行いながら、反応系内を70℃に保ち、17時間懸濁重合反応を行なった。
【0087】
得られた懸濁重合粒子について分級操作を施し、体積平均粒子径を前記の方法により求めたところ15μmであった。さらに、得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋重合粒子を得た。
【0088】
上記架橋重合粒子10部、N−クロロメチルマレイミド3部及び三塩化鉄1部を塩化メチレン100部中に混合し、室温で3日間反応させてマレイミド化を行なった。
この粒子の水酸基量及びマレイミド基量を実施例1と同じ方法で測定を行ったところ、水酸基量は0.0000mmol/g、マレイミド基量は0.2100mmol/gであった。
【0089】
(分散性評価)
上記マレイミジル基を有する重合体粒子について、実施例1と同様にして分散性の評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0090】
<比較例2>
実施例1のマレイミジル基含有材料の作製において、ヒドロキシメチルマレイミドを0.01部、p−トルエンスルホン酸−水和物の量を0.0005部とした以外は同様にしてマレイミジル基含有材料の作製を試みた。しかし、反応が十分に進行せず、目的とする材料が得られなかったため、以後の評価を行なわなかった。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のマレイミジル基含有材料は、水分散性が良好である。一方、水酸基を有していない比較例1の粒子では、所望の水分散性を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面にマレイミジル基と水酸基とを有し、該マレイミジル基と水酸基との含有比率A(マレイミジル基/水酸基、モル比)が0.0001<A≦0.01であることを特徴とするマレイミジル基含有材料。
【請求項2】
マレイミジル基及び/または水酸基を有する化合物を含有するポリマー材料を、少なくとも表面に有する粒子であることを特徴とする請求項1に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、架橋体であることを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項4】
前記粒子の体積平均粒径が、0.01〜500μmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。

【公開番号】特開2007−2042(P2007−2042A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181641(P2005−181641)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】