説明

マンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法

【課題】マンホール蓋、マンホール蓋枠取替作業において、撤去物を杠上させるため吊上手段を軽快かつ効率良くしかも廉価に行えるようにした工法の提供。
【解決手段】マンホール蓋枠2周囲の道路面3を、マンホール蓋枠2の中心軸上を中心として360°回動させて平面円形でかつ断面円弧状ないし傾斜状の椀型状に切断する椀型撤去物8a,8bを地上より杠上して撤去する工法において、切断された椀型撤去物8a,8bの中心より離れた偏心位置より吊上手段で傾斜させ乍ら持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既設のマンホール蓋及びマンホール蓋枠の取替交換の際のマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アスファルト等で舗装された道路面に設けたマンホール蓋及び蓋枠は、経時年月と共に損傷、損耗を生じ、単独に又は舗装路面と共に修復、取替交換を必要とする。
【0003】
そして、上記路面の修復やマンホール蓋及び蓋枠の取替交換には、マンホール蓋及び蓋枠の周辺の路面を平面長方形に切断する場合(図4(a),(b)参照)とか、平面円形に切断する場合(図5(a),(b)参照)では、いずれも垂直方向への吊上手段aを用いていた(特許文献1,特許文献2参照)。
【0004】
又、同様に平面円形、断面円弧状に切断する場合(図6(a),(b),(c)参照)とか、平面円形、断面傾斜状に切断する場合(図7(a),(b),(c)参照)(特許文献3参照)とか、切削オーバーレイ工法において2回のマンホール蓋枠の周辺切断工程のうち、2回目の支持蓋(養生蓋)を用いて仮舗装する場合の平面円形、断面円弧状または平面円形、断面傾斜状に切断する場合(図8(a),(b),(c)参照)等においても垂直方向への吊上手段aを用いていた(特許文献4参照)。
【0005】
ところで、図4及び図5の撤去物P,Pは路面に対する切断面Q,Qが垂直状であるため、吊上手段aは切断面Q,Qに対して平行、すなわち垂直方向へ持ち上げないで傾斜させて持ち上げることは、切断面Q,Qと撤去物P,Pの側面が食い込み、摩擦力が生じて持ち上げの際の阻止力となって持ち上げ難いという不都合があった。
【0006】
さらに、図6,図7及び図8では撤去物P,P,Pの周囲は円弧状の切断面Qないしは傾斜状の切断面Qであるが、吊上手段aは前記図4及び図5に示す通り、同様の垂直方向へ行っていた。
【特許文献1】特許第3522268号公報(図5(b))
【特許文献2】特許第2623491号公報
【特許文献3】特公平3−55615号公報
【特許文献4】特許第3644949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図6,図7及び図8の場合、撤去物P,P及びPの外周面は、円弧状の切断面Qないし傾斜状の切断面Qで切截されているが、下面の中央の周縁部分、即ち、マンホール基礎の下部周面部分は未切断部分Mとなっているので、土砂との密着が強固であり、したがって吊上手段aには、撤去物P,PまたはPの重量だけでなく、土砂との密着を剥離するための力を必要とし、可成りの引張力を必要とするという問題点があった。
【0008】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、外周面の形状が円弧状の切断面Qないしは傾斜状の切断面Qの撤去物P,PまたはPに対しては、吊上手段を中心軸上ではなく外周に偏心して離れた箇所に設け、撤去物P,PまたはPを傾斜させ乍らまず始めに土砂との密着性を横方向に引張りつつ剥離させ、かつ円弧状の切断Qないし傾斜状の切断面Qの周囲に沿って滑らせ乍ら引上げることができるようにしたマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0010】
(1)マンホール蓋枠周囲の道路面を、マンホール蓋枠の中心軸上を中心として360°回動させて平面円形でかつ断面円弧状ないし傾斜状の椀型状に切断する椀型撤去物を地上より杠上して撤去する工法において、切断された椀型撤去物の中心より離れた偏心位置より吊上手段で傾斜させ乍ら持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。
【0011】
(2)吊上手段は、止金具を打ち込み、この止金具に牽引手段の先端を係止させて上方に杠上させるようにしたことを特徴とする前記(1)記載のマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。
【0012】
(3)吊上手段は、支持板に相当する養生板の中心より離れた箇所に係止孔を設け、この係止孔と係止するロープ等を挿通係止させて牽引手段の先端で係止させて上方に杠上させるようにしたことを特徴とする前記(1)記載のマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。
【発明の効果】
【0013】
撤去物は、その外周面が円弧状ないしは傾斜状であるため、吊上手段はマンホール蓋枠の中心軸上でなく、偏心した外周位置で吊上げて撤去物は傾斜させることができ、さらに、この傾斜面に沿って摺動させ乍ら杠上でき、特に、撤去物の中央下面近くの土砂との密着性が強い箇所を、その儘上方に杠上させることなく撤去物の重量より小さい力、すなわち横方向に引き剥がす力のみでまず偏心可動させ、ついで撤去物自体の重量に対抗する杠上力を用いて引上げることができる。したがって、従来の垂直方向に杠上させる吊上手段、即ち、撤去物の重量と、撤去物の下面の土砂との未切断箇所を剥離するための力を同時に必要とする牽引力よりも格段と小さい杠上力で作業が可能となり、機械装置の小型化が図れると共に、作業時間を著しく短縮でき、総体的にコスト高と認識されている従来の土木工事費用を画期的に安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施例を説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、マンホール蓋1及びこの蓋1を支持するマンホール蓋枠2を路面3上に配設した一般道路のマンホール蓋1を含むマンホール蓋枠2周辺部分、即ち、マンホール基礎4及び高さ調節機構4a等を備えた構成の断面図であり、図2は切削オーバーレイ工法によってマンホール蓋1及びマンホール蓋枠2を取り除いてマンホール基礎4上に支持板(養生板)5を介して仮設舗装を施した状態の断面図を示す。
【0016】
そして、図1及び図2にもマンホール蓋枠2の外周の舗装面即ち路面3を回転カッター6等により切断する過程を示している。そして、図3(a),(b)に示すように回転カッター6は断面円弧状の曲面を有し、マンホール蓋1の中心軸C上を中心として半径Lの球面を有しており、この回転カッター6の軸回転及び中心軸C上を中心として路面3上を360°回動することにより、路面3に対しては切断面7が平面円形を示し、かつ断面が円弧状を呈し、全体として椀型形状の撤去物8a,8bが得られる。
【0017】
即ち、回転カッター6は図示しない回転軸により必要回転数の下に回転すると共に、路面3に対し360°回動させた後、図1及び図3(a)にあってはマンホール蓋枠2の外周に一体的に固着されているドーナッツ状の切断舗装部(撤去物)8aが、また図2及び図3(b)にあっては仮設舗装箇所に無垢の椀型形状物(撤去物)8bが切断状態で得られる。
【0018】
そして、回転カッター6による路面3の切断には、舗装面層の切断処理は完全に行われるが、舗装面3の下層の土砂9まで完全に切断されることは殆どないので、撤去物8a,8bの下面周辺部分は未切断箇所Mを生ずる。
【0019】
そこで、実施例では図3(a)では撤去物8aの中心Cより離れた路面3の偏心位置に引上げ用のボルト10を打ち込み、撤去物8aを傾斜して持ち上げるようにする。即ち、吊上手段Aとしてクレーンとかリフター等の引上げ用ロープ(図示せず)等を前記ボルト10に固着し、撤去物8aを引上げる。
【0020】
ボルト10は中心より偏心した位置に設けてあるので、撤去物8aは未切断箇所Mが主として横方向に引張されて剥離され、しかも撤去物8aの一部は円弧状の切断面7に沿って摺動し乍ら持ち上げられる。
【0021】
したがってクレーンやリフター等の吊上手段Aでの杠上作用力は、撤去物8aの重力と剥離作用の力が同時に働く従来の中央箇所で垂直に引上げるよりも早めに剥離作用がすみ、剥離作用の後で撤去物8aの重力のみで吊上げるため、吊上力が分散でき、したがって、牽引力が小さくできるという利点がある。しかも撤去物8aは切断面7の斜面の案内摺動が利用できるので作業性も向上できる。
【0022】
つぎに図3(b)の撤去物8bでは偏心位置を支持蓋(養生板)5の外周箇所に係止孔8として設けたので、この係止孔8に前記(a)と同様に吊上手段Aとしてリフター等(図示せず)の先端を係止させて吊上げ操作を行わせれば、同様に未切断箇所M部分が最初の引き上げ作用の働きによって剥離され、傾斜した状態を呈し乍ら円弧状の切断面7に沿って摺動案内されて上方へ引上げられる。
【0023】
吊上手段Aは、図3(a)と同様に剥離するための力が最初大きく働き、ついで撤去物8bの重力のみの力のみで済むので全体として牽引力が分散できる。したがって軽快かつ能率が良く安価に作業ができる。
【0024】
以上本発明について一実施例を説明したが、回転カッター6については本発明者が先に発明した特許第3371254号に示す路面カッターを用いることができる他の好みの回転カッターを用いることができる。
【0025】
上述の実施例においては、従来知られている未舗装道路を舗装する舗装工法、非切削でオーバーレイ施工するオーバーレイ工法或は二回の撤去作業を行う切削オーバーレイ工法等、マンホール蓋,蓋枠を含むすべての道路工法に適用できる。
【0026】
さらに図示していないが支持板(養生板)の中心箇所、偏心した係止箇所等の位置合わせは、従来と同様に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】マンホール蓋及びマンホール蓋枠を路面上に配設した一般の道路のマンホールを含むマンホール蓋枠周辺の部分の断面道路説明図
【図2】切削オーバーレイ工法によってマンホール蓋及びマンホール蓋枠を取り除いてマンホール基礎上に支持板(養生板)を介して仮設舗装を施した状態の断面説明図
【図3】(a),(b)は同上図1及び図2のそれぞれの偏心位置での撤去物の吊上手段による杠上状態を示す断面説明図
【図4】(a),(b)は、従来道路工法の一例を示す工程断面説明図
【図5】(a),(b)は、さらに他の従来道路工法の例を示す工程断面説明図
【図6】(a),(b),(c)は、断面円弧状に傾斜面を切断する従来工法の工程断面説明図
【図7】(a),(b),(c)は、断面傾斜状の傾斜面を切断する従来工法の工程断面説明図
【図8】(a),(b),(c)は、切削オーバーレイ工法における撤去物の切断撤去工程を示す断面説明図
【符号の説明】
【0028】
,P,P,P,P 撤去物
C 中心軸
a,A 吊上手段
M 未切断部分
,Q,Q,Q 切断面
1 マンホール蓋
2 マンホール蓋枠
3 路面、道路面
4 マンホール基礎
4a 高さ調節機構
5 支持板(養生板)
6 回転カッター
7 切断面
8 係止孔
8a,8b 椀型形状の撤去物
9 土砂
10 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール蓋枠周囲の道路面を、マンホール蓋枠の中心軸上を中心として360°回動させて平面円形でかつ断面円弧状ないし傾斜状の椀型状に切断する椀型撤去物を地上より杠上して撤去する工法において、切断された椀型撤去物の中心より離れた偏心位置より吊上手段で傾斜させ乍ら持ち上げるようにしたことを特徴とするマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。
【請求項2】
吊上手段は、止金具を打ち込み、この止金具に牽引手段の先端を係止させて上方に杠上させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。
【請求項3】
吊上手段は、支持板に相当する養生板の中心より離れた箇所に係止孔を設け、この係止孔と係止するロープ等を挿通係止させて牽引手段の先端で係止させて上方に杠上させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のマンホール蓋枠又はマンホール蓋枠位置箇所周辺の椀型撤去物の偏心吊上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−150789(P2008−150789A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336908(P2006−336908)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(503140539)セーブマシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】