説明

マーカー

本発明は、ロスコビチンとして知られる候補物質2,6,9−三置換プリンを含むCDKIに対する薬力学的マーカーに関する。これらのマーカーの同定によって、インビトロ 及びインビボの両方において、ロスコビチン様活性の簡便な検出が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤用の薬力学的マーカー(pharmacodynamic markers)に関する。特に、本発明は、ロスコビチン(CYC202)として知られる候補物質2,6,9−三置換プリン用及びロスコビチン様化合物用の薬力学的マーカーに関する。これらのマーカーの同定によって、インビトロ 及びインビボの両方において、ロスコビチン様活性の簡便な検出が容易となる。
【背景技術】
【0002】
サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(CDKI)のファミリーの増加が確認されている。これらの阻害剤は多様なCDKファミリーメンバーに対して様々な活性を有する。通常、これらの阻害剤はCDKのATP結合ポケットに結合する。
【0003】
2,6,9−三置換プリンは、癌、白血病及び糸球体腎炎などの増殖性疾患の治療に使用されるCDKIとして有望な化合物の、よく研究されたクラスとなりつつある。Fischer P & Lane D (Curr Med Chem (2000), vol 7, page 1213)は、CDKIの起源及びその発見された活性の検討を詳細に示している。特に、ロスコビチンは、CDK1、CDK2、CDK5、CDK7及びCDK9を阻害し、G1後期/S期初期及びM期に細胞サイクルの進行を阻止することが証明されてきた。R−ロスコビチンとして知られる化合物(R)−2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンは、国際公開番号第WO97/20842号(Meijer L et al)に初めて記載されてから、有望な抗癌剤候補として開発されてきた。
【0004】
このような薬剤の開発においては、投与における実際の作用機序を理解し、毒性及び投与に関する監督機関の要件を満たすために、薬物動態学的調査及び薬力学的調査を広範囲に実施しなくてはならない。これらの分析は、候補薬剤の活性の特定の機序を確認するために、細胞サイクル制御系に関する複雑な生化学や、薬剤の臨床開発期間前に実施される詳細な研究に基づいて行われる。
【0005】
薬物動態学的及び薬力学的な調査における特に有利な点は、その候補薬剤に対する特異的な活性のマーカーの同定である。
【0006】
本発明は、表1〜12のいずれかに記載した多くの遺伝子が、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、ロスコビチンの活性に対して、特異的薬力学的(PD)マーカー、又は「バイオマーカー」として作用するという知見に関する。特に、同定された遺伝子の発現は、ロスコビチン処理後に、アップレギュレート又はダウンレギュレートされる。
【0007】
さらに、本発明は、多くの遺伝子はタンパク質として発現し、ロスコビチン活性に対する薬力学的マーカーであるタンパク質マーカーとして作用できるという知見に関する。よって、本発明は、ロスコビチン活性に対する特異的薬力学的マーカーとしてのタンパク質マーカーの同定、及び特に28kDa及び14kDaマーカーの同定に関する。これらのマーカーは、各々アポリポタンパク質A1及びトランスサイレチンが適当である。これらのタンパク質マーカーは、ロスコビチン処理後、アップレギュレート又はダウンレギュレートする発現を有するタンパク質となるか、或いは、ロスコビチン処理前の、翻訳後修飾された形、つまり、より広い範囲若しくはより狭い範囲で、検出不可能又は検出可能の形に変化する。
【特許文献1】国際公開番号第WO97/20842号
【非特許文献1】Fischer P & Lane D (Curr Med Chem (2000), vol 7, page 1213)
【発明の開示】
【0008】
よって、最初の態様では、
a)細胞、細胞群、モデル動物又はヒトがCDKIで処理されている当該細胞、細胞群、モデル動物又はヒトからサンプルつまり、「処理サンプル」を単離するステップ、及び
b)未処理コントロールサンプルと比較して、処理したサンプルにおけるi)表1〜12のいずれかに記載した遺伝子ii)28kDaのタンパク質、若しくはiii)14kDaのタンパク質のうち、少なくとも1つの発現の変化をCDKI活性の指標として、決定するステップ
を含む、CDKI活性のモニタリング方法を示している。
【0009】
遺伝子発現を含む発現の変化の検出は、当業界で公知の方法、特に本明細書に記載したようなマイクロアレイ分析、ウェスタンブロット法又はQPCRなどのPCR法により行なうことができる。発現の変化はまた、本明細書に記載したSELDI−TOF−MSなどの方法を用いて、さらに二次元ゲル電気泳動法などの分析手法を用いて、サンプルのタンパク質含有量を分析することにより検出できる。これらの手法は、タンパク質の別の翻訳後修飾された形において発現の変化を検出するのに特に有用である。
【0010】
ある実施態様では、「発現の変化(altered expression)」とは、表1〜12のいずれかに記載した遺伝子の遺伝子発現の増加又は減少のことである。表1〜12に記載した遺伝子は、ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、20585、FUT4、E2F6、18747、22147、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc及びmcl−1から選択するのが適当である。
【0011】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の変化は、未処理サンプルと比較して発現の減少となることが適当である。或いは、発現の変化は、未処理サンプルと比較して増加している。
【0012】
例えば発明がエキソビボで行われた場合、ロスコビチンなどのCDKIの薬力学的調査は、好ましくは細胞群さらに好ましくは細胞培養物で行われる。好ましい細胞の型を、HT29などの結腸腫瘍細胞株、A549などの肺腫瘍細胞株、A498などの腎腫瘍細胞株、HT13などの膀胱腫瘍細胞株、MCF7などの乳房腫瘍細胞株、AN3CAなどの子宮内膜腫瘍細胞株、MESSA DH6などの子宮腫瘍細胞株、子宮肉腫細胞、Hep2Gなどの肝腫瘍細胞株、DU145などの前立腺腫瘍細胞株、Cem T細胞などのT細胞腫瘍細胞株、MiaPaCa2などの膵腫瘍細胞株から選択する。或いは、細胞は、腫瘍生検の組織学的サンプルの形であってもよい。別にまた、細胞はPBMCなどの血液細胞培養物であってもよい。
【0013】
遺伝子発現の変化を含む発現の変化を、哺乳動物又はヒトから得たサンプルにおいてモニタリングすることが適当である。適当なサンプルには、生検、血液、尿、口腔擦過などの組織サンプルが含まれる。ある実施態様では、遺伝子発現を腫瘍細胞、特に、乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜腺癌及び前立腺癌などの腫瘍由来の細胞、並びに白血病、又はリンパ球及び好ましくはPBMCのような末梢リンパ球などの血液細胞から検出することが好ましい。他の実施態様では、タンパク質発現の変化を、哺乳動物若しくはヒトの血清又は血漿サンプルで検出する。
【0014】
これらの好ましい実施態様では、ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、20585、FUT4、E2F6、18747、22147、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc及びmcl−1のいずれか1つの存在を、腫瘍細胞で、特に結腸若しくは肺腫瘍由来の細胞で、又はリンパ球及び好ましくはPBMCのような末梢リンパ球などの血液細胞から検出することが好ましい。
【0015】
好ましい実施態様では、細胞群は細胞培養物であり、好ましくはPBMC、HT29及びA549の細胞から選択される。
【0016】
他の実施態様では、細胞群は、腫瘍細胞、PBMC又はリンパ球である。
【0017】
サンプルは血液であることが適当である。或いは、サンプルは、レーザー・キャプチャー・マイクロ手術で得られるサンプルなどの腫瘍生検であってもよい。
【0018】
該方法には、前記サンプルからのRNAの抽出、及びQPCR法による遺伝子発現の検出がさらに含まれることが好ましい。
【0019】
他の実施態様では、例えばウエスタンブロット法でタンパク質生成物を検出することにより遺伝子発現を検出する。
【0020】
他の実施態様では、「発現の変化」とは、たんぱく質発現の変化パターンである。発現の変化とは、28kDaタンパク質の減少となることが適当である。また、タンパク質発現の変化は、未処理コントロールサンプルと比較して、処理したサンプルの28kDaタンパク質若しくは14kDaタンパク質の1以上の翻訳後修飾の存在又は不在であってもよい。28kDaタンパク質はアポリポタンパク質A1であり、14kDaタンパク質はトランスサイレチンであることが好ましい。
【0021】
タンパク質発現の変化を検出する場合、サンプルは血清、血漿又は組織培養上清であることが適当である。或いは、サンプルは、レーザー・キャプチャー・顕微鏡法で得られるサンプルなどの腫瘍生検であってもよい。
【0022】
血清、特に患者の血漿サンプルにおけるタンパク質の検出では、サンプルを切り取り、本明細書に記載のSELDI−TOF−MSなどのタンパク質分析法の対象とする。
【0023】
上記に列挙したいずれかの実施態様に従った好ましい実施態様の方法では、CDKIはロスコビチン活性を有する化合物であり、ロスコビチン又はロスコビチン類似体若しくは誘導体であることが好ましい。最も好ましいロスコビチンはR−ロスコビチンである。ロスコビチンを哺乳動物及び好ましくはヒトに投与することが適当である。
【0024】
本発明の他の態様では、ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現変化をモニタリングすることを含む、ロスコビチンの適切な投与量を決定する方法を示している。
【0025】
さらなる態様では、ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、28kDa又は14kDaタンパク質の発現変化をモニタリングすることを含む、ロスコビチンの適切な投与量を決定する方法を示している。
【0026】
他の態様では、候補薬剤を細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、及び未処理コントロールサンプルと比較して、処理したサンプルにおけるi)表1〜12のいずれかに記載した遺伝子、ii)28kDaのタンパク質、若しくはiii)14kDaのタンパク質のうち、少なくとも1つの発現の変化を、CDKI活性の指標として、検出するステップを含む、CDKI様活性を有する候補薬剤の同定方法を示す。この態様では、候補薬剤は、そのバイオマーカーの発現の変化において、周知のCDKIを使用して得られたパターンと類似のパターンを示すであろう。
【0027】
CDKI好ましくはロスコビチンの活性のモニタリングにおける、表1〜12に記載した少なくとも1つ遺伝子、又はアポリポタンパク質A1若しくはトランスサイレチンをコードする遺伝子の使用。ロスコビチンなどのCDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子、又は28kDa若しくは14kDaのタンパク質の存在をモニタリングすることが適当である。
【0028】
ロスコビチンなどのCDKIの活性を評価するキットには、核酸プライマー又は本明細書に記載した少なくとも1つの遺伝子若しくはタンパク質に対する抗体が含まれて作製されることもある。該キットを、上述の、ロスコビチン活性のモニタリング方法、ロスコビチン投与量の決定方法又は候補薬剤のロスコビチン様活性の評価方法のいずれの方法に従って使用してもよい。
【0029】
さらなる態様では、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子によりコードされたタンパク質、又は28kDa若しくは14kDaのタンパク質に対する抗体を含む、ロスコビチンなどのCDKI活性評価用キットを示している。そのようなキットには、本明細書に記載した遺伝子のタンパク質生成物を、単独で又は本明細書に記載した他の遺伝子に対する抗体と組み合わせて認識する抗体を含むことが適当である。
【0030】
本明細書に記載した遺伝子又はタンパク質に対する抗体は、商業的供給源から、又は当業者にとって周知の手法により得ることができる。ある実施態様では、発現の変化をタンパク質バイオマーカーの翻訳後修飾された形の発現の変化によりそれ自体を明示する場合、それらの異なる形に対する特異的な抗体を使用することもある。
【0031】
さらに他の態様では、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子に対する核酸プローブなどの遺伝子発現を検出するためのプローブを含む、ロスコビチンなどのCDKI活性評価用キットを示している。例えば、適当なキットとは、本明細書に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現を検出するためのプライマーを含むQPCR分析法のキットである。適当なプラーマーの例を、表13及び14に記載する。QPCR分析法のキットは、少なくとも1つの遺伝子を検出することもあり、また、本明細書に記載した他の遺伝子に対するプライマーを含むこともあるというのが適当である。タンパク質サンプルの分析により検出した発現の変化に対して、キットには、28kDa又は14kDaのタンパク質検出のために、緩衝液、チップ及び品質管理用のコントロール(すなわち、周知のpositives又はnegatives)が含まれることもある。適当な緩衝液及びチップを本明細書に記載する。
【0032】
他の態様では、
(i)CDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、
(ii)処理した及び未処理の細胞、動物又はヒト由来のサンプルにおいて、遺伝子発現を測定するステップ、及び
(iii)未処理サンプルと比較して、処理したサンプルにおいて、表1〜12のいずれかに記載した少なくとも1つの遺伝子、又は28kDa若しくは14kDaタンパク質の遺伝子発現の増加又は減少を、CDKI活性の指標として、検出するステップ
を含む、CDKI活性のモニタリング方法を示している。
【0033】
さらなる態様では、
(i)ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、
(ii)処理した及び未処理の細胞、動物又はヒト由来のサンプルにおいて、遺伝子発現を測定するステップ、及び
(iii)未処理サンプルと比較して、処理したサンプルにおける表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現の増加又は減少を、ロスコビチン活性の指標として、検出するステップ
を含む、ロスコビチン活性のモニタリング方法を示している。
【0034】
他の態様では、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子のレベルが、ロスコビチン投与前に検出されたレベルよりも低いことを特徴とする上記クレームに記載の方法を示している。
【0035】
さらなる態様では、ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の範囲や程度をモニタリングすることを含む、ロスコビチンの適切な投与量を決定する方法を示している。
【0036】
その上さらなる態様では、候補薬剤を細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、及び表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の存在又は不在をモニタリングするステップを含む、ロスコビチン様活性を有する候補薬剤の同定方法を示している。
【0037】
多くのロスコビチン活性のバイオマーカー(すなわち、表1〜12のいずれかに記載した遺伝子、又はアポリポタンパク質A1若しくはトランスサイレチンを含むタンパク質マーカーとして発現した遺伝子)を、組み合わせて観察することが適当である。
【0038】
ロスコビチンをヒトに投与する場合、細胞に投与するロスコビチンの有効濃度を、好ましくは5μMより高濃度とし、より好ましくは10μMより高濃度とする。
【0039】
ロスコビチンをヒトに投与する場合、遺伝子発現分析用の血液サンプルを採取する前の2、4又は8時間、薬剤で処理を行なうことが適当である。血清又は血漿サンプルをタンパク質発現変化の分析用に採取する場合は、ロスコビチンを一定期間にわたって投与する。
【0040】
ある実施態様において、ロスコビチンを細胞に投与する場合、ロスコビチンの有効濃度を75マイクロモルまでとすることが好ましい。
【0041】
ある好ましい実施態様では、遺伝子発現を検出するための分析前に、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトを、7.5、15又は30μMのロスコビチンで1.5時間処理する。この実施態様では、ロスコビチン活性の指標として、表3又は表7に記載した少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現の減少を検出する。また、細胞での遺伝子発現を、PBMC、又はHT29に類似するフェノタイプを有する細胞で検出することが好ましい。
【0042】
他の実施態様では、遺伝子発現を検出するための分析前に、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトを、7.5、15又は30μMのロスコビチンで3時間処理する。この実施態様では、ロスコビチン活性の指標として、表4又は表8に記載した少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現の減少を検出する。また、細胞での遺伝子発現を、PBMC、又はHT29に類似するフェノタイプを有する細胞で検出することが好ましい。
【0043】
他の実施態様では、遺伝子発現を検出するための分析前に、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトを、15、45又は75μMのロスコビチンで2時間処理する。この実施態様では、ロスコビチン活性の指標として、表11に記載した少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現の減少を検出する。また、細胞での遺伝子発現を、A549に類似するフェノタイプを有する細胞で検出することが好ましい。
【0044】
他の実施態様では、遺伝子発現を検出するための分析前に、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトを、15、45又は75μMのロスコビチンで4時間処理する。この実施態様では、ロスコビチン活性の指標として、表12に記載した少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現の減少を検出する。また、細胞での遺伝子発現を、A549に類似するフェノタイプを有する細胞で検出することが好ましい。
【0045】
他の実施態様では、遺伝子発現を検出するための分析前に、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトを、50μMのロスコビチンで4、12、24又は48時間処理する。
【0046】
さらに他の実施態様では、ヒトを処理する場合、ロスコビチンを1日あたり0.8〜3.6g、好ましくは1日あたり1.6〜2.4gを、1〜10日間投与する。
【0047】
本明細書で使用するように、「PBMC」なる用語は、末梢血単核細胞に言及しており、PBL(末梢血液リンパ球)を含む。
【0048】
ある実施態様では、遺伝子発現が検出される遺伝子を、ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、NM_017665(本明細書ではNM_017665ヒト仮想的タンパク質(Homo sapiens hypothetical protein)FLJ20094に対する「20585」として言及する)、FUT4、E2F6、NM_018316(本明細書ではNM_018316ヒト仮想的タンパク質FLJ11078に対する「18747」として言及する)、NM_033410(本明細書ではNM_033410ヒト仮想的タンパク質MGC13138に対する「22147」として言及する)、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc及びmcl−1から選択する。
【0049】
本明細書で使用するように、「ロスコビチン」及び「R−ロスコビチン」なる用語を使用して、化合物2−(R)−(1−エチル−2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンに言及し、CYC202としても言及する。特に条件のない場合では、「ロスコビチン」なる用語は、R−ロスコビチン、そのS鏡像異性体及びラセミ混合物を含んで使用される。該化合物及びその製造法は、米国特許第6,316,456号に記載されている。ロスコビチンの類似体は、例えば国際公開公報第03/002565号に記載されている。
【0050】
本発明の好ましい実施態様では、ロスコビチンを哺乳動物又はヒトに投与するが、より好ましくはヒトに投与する。モデル動物において実施する場合、本発明は、HT29又はA549の異種移植マウスモデルなどの腫瘍モデルで実施することが好ましい。
【0051】
本明細書に記載したいずれかの遺伝子の発現レベルをモニタリングする本発明の方法に、ロスコビチン投与前の、また好ましくは投与1.5、2、3、4、5、8、12、24又は48時間後のレベルのモニタリングを含むことは好ましいであろう。好ましい実施態様では、そのレベルを、ロスコビチン投与後早ければ1.5時間で再度モニタリングする。さらなる実施態様では、タンパク質発現の変化を、投与後1〜10日間測定する。
【0052】
ある好ましい実施態様では、ロスコビチン投与後に検出される遺伝子のレベルは、ロスコビチン投与前に検出されたレベルよりも低いことが好ましい。
【0053】
本発明のさらなる態様は、遺伝子発現レベルのモニタリングを含む発現の変化のモニタリングによるロスコビチン活性の独立したモニタリングに関している。ある実施態様では、ロスコビチン投与後に検出される遺伝子発現のレベルは、ロスコビチン投与前に検出されたレベルよりも高いことが好ましい。他の実施態様では、ロスコビチン投与後に検出される遺伝子発現のレベルは、ロスコビチン投与前に検出されたレベルよりも低いことが好ましい。
【0054】
本発明の方法は、
(a)ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、遺伝子発現の範囲や程度モニタリングするステップを含む、ロスコビチンの適切な投与量を決定する方法、
(b)候補薬剤を細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、及び遺伝子の存在若しくは不在又はタンパク質の発現変化をモニタリングするステップを含む、ロスコビチン様活性を有する候補薬剤を同定する方法
に、さらに利用されることもある。
【0055】
(a)に記載したような方法は、遺伝子発現の範囲や程度を、同じ期間で同じ投与量のロスコビチンによりその発現が調節される既知の遺伝子の既知の阻害率と関連付けるステップを、さらに含むこともある。ある実施態様では、RBのリン酸化状態を、本明細書に記載したいずれかの遺伝子の発現パターンと比較することもある。ロスコビチン活性のマーカーとしてのRBは、国際公開公報第02/061386号に記載されている。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、上記に記載したいずれかの方法を利用するロスコビチン活性のモニタリングにおける遺伝子又はタンパク質の使用に関する。
【0057】
一般的に、細胞株の調査では、ロスコビチンのCDK2阻害(IC50)投与量を投与し、例えば、投与から2、4、12、24、及び48時間後に、サンプルを24時間又は48時間かけて抽出する。タンパク質サンプルを単離し、SDS−PAGEに添加して分離し、ブロットし、適当なマーカーを探す。モデル動物又はヒトで調査を実施する場合、ロスコビチン活性を評価するために、動物又はヒトから抽出可能な細胞源として、適当な増殖性組織を同定しなければならない。適当な組織にはあらゆる増殖性の組織が含まれる。特に腫瘍生検が含まれるが、循環リンパ球及び頬粘膜の細胞もまた使用できるということが今や確認されている。一旦抽出されると、これらの細胞は、細胞株について記載した方法と同一の方法で処理できる。ほとんどの場合、本明細書に記載した遺伝子を含むマーカーのプールを確認する。
【0058】
生検サンプルにおける遺伝子発現検出用の適当な方法には、FISH法、又はサンプルのタンパク質化合物を分析する方法と同様に、本明細書に記載した遺伝子を認識する抗体を使用する免疫組織化学法を使用することが含まれる。
【0059】
本発明の実施態様をさらに開発して、用量漸増の手段として、遺伝子発現におけるロスコビチンの効果を使用することもある。すなわち、遺伝子発現の範囲及び割合をモニタリングすることによって、ロスコビチンの適切な投与量を決定する。そのような分析には、例えば、同じ投与量のロスコビチンによるCDK2活性又はRBリン酸化の既知の阻害率と遺伝子発現変化の関連がさらに含まれる。このように、遺伝子発現の範囲及び割合のある測定を、さらなるロスコビチン活性を示すとして用いてもよい。
【0060】
さらなる本発明の実施態様では、候補薬剤によって遺伝子発現レベルの変化を含む発現の変化を、ロスコビチン様として分類される活性の機序の指標として用いることもある。
【0061】
特定の治療単位の治療に対する癌患者の反応は、極めて多種多様である。例えば、特定の療法の治療に対して感受性を示し、腫瘍の苦しみの軽減や症状の改善を呈する患者もいれば、治療に対して耐性があり、特定の療法に対する改善を全く又はほとんど示さない患者もいる。ロスコビチンなどのCDKIによって修飾された発現を有する遺伝子を検出することは、CDKIを用いた処理に対する反応を予測するためのマーカーの同定方法においても有用である。
【0062】
したがって、別の態様では、腫瘍における遺伝子発現が、ロスコビチンなどのCDKIを用いた処理に対する反応を予測可能とする遺伝子の同定方法を示し、かかる方法は、
a)ロスコビチンなどのCDKIを用いた治療に感受性を示す患者からサンプルを採取し、本明細書に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現を検出するステップ、
b)ロスコビチンなどのCDKIを用いた治療に耐性を示す患者からサンプルを採取し、本明細書に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現を検出するステップ、及び
c)a)の遺伝子発現パターンとb)の遺伝子発現のパターンを比較し、その結果、感受性と関連する遺伝子及び耐性と関連する遺伝子を同定するステップ
を含む。
【0063】
その後、腫瘍の遺伝子発現のパターンを決定し、上述の方法に従って同定されたマーカー遺伝子の発現に従って、特定の腫瘍を、処理に対して「感受性あり」又は「耐性あり」と分類する。
【発明の詳細な説明】
【0064】
他に記載がない限り、本発明の実施には、通常の当業者の能力の範囲内である、化学、分子生物学、細胞生物学、微生物学、DNA組換え及び免疫学の従来の手法を用いる。これらの手法は、文献に記載されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition, Books 1-3、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubel, F. M. et al. (1995 and periodic supplements; Current Protocols in Molecular Biology, ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, N.Y.) 、B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons、J. M. Polak and James O’D. McGee, 1990, In Situ Hybridization、Principles and Practice; Oxford University Press、M. J. Gait (Editor), 1984, Oligonucleotide Synthesis、A Practical Approach, IRL Press; 及び D. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Pressを参照のこと。これらの全体の内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
「CDKI」は、CDK活性の阻害剤を意味する。ロスコビチンはCDK活性の阻害剤であるとして周知である多くの化合物の1つにすぎない。
【0065】
「ロスコビチン活性」又は「ロスコビチン様活性」は、ロスコビチンによって発現する活性を意味する。例えば、ロスコビチン様とは、G1後期/S期初期又はM期において、細胞サイクルの進行を阻害可能であることを意味する。該細胞サイクルの進行の阻害は、CDK1、CDK2、CDK5、CDK7及びCDK9を含むCDKを阻害することによって行われることが好ましい。ロスコビチン活性の研究結果は、McClue et al. Int. J. Cancer, 2002, 102, 463-468に報告されている。
【0066】
ロスコビチン活性の「マーカー」又は「バイオマーカー」なる用語は、細胞又は哺乳動物に由来するサンプルにおける発現が、ロスコビチンを用いた処理に応じて変化するか或いは調節される、例えば、アップレギュレート又はダウンレギュレートされる遺伝子又はタンパク質を表わす。バイオマーカーがタンパク質の場合、発現の調節又は変化には、異なる翻訳後修飾による調節が含まれる。
【0067】
また、本明細書で使用される「バイオマーカークラスター(biomarker cluster)」なる用語は、SELDI−TOF−MSで分離される場合、類似の質量を有するタンパク質の形を特徴とするグループを意味する。バイオマーカークラスターを、本明細書の実施例に記載する。
【0068】
処理した及び未処理の細胞に由来するサンプルは、組織培養物又は動物若しくはヒトの細胞群に由来する溶菌液、抽出物或いは核酸のサンプルである。タンパク質分析のためには、サンプルは組織培養上清を用いる。細胞は、個体(例えば、血液、血清又は血漿のサンプル)から単離でき、生検などの組織サンプルの一部のこともある。
【0069】
「発現の変化(altered expression)」とは、未処理のコントロールサンプルと比較した場合の、増加、減少又は他に、処理した細胞に由来するサンプルにおける、発現の修飾レベル若しくは発現パターンを意味する。
【0070】
「発現(expression)」なる用語は、対応するmRNAを産生するための遺伝子のDNA鋳型の転写、及び対応する遺伝子産物(すなわち、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)を産生するためのmRNAの翻訳、さらに1以上の翻訳後修飾されたタンパク質の「発現」を表わす。
【0071】
翻訳後修飾とは、タンパク質分解的切断により、又は1以上のアミノ酸への修飾基の付加により、タンパク質の特性を変化させる共有結合のプロセッシング現象である。通常の翻訳後修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、アシル化、グリコシル化、GPIアンカー化、ユビキチン化などが含まれる。そのような修飾の概説及び検出の方法は、Mann et al. Nature Biotechnology March 2003, Vol. 21, pages 255-261で見出すことができる。
【0072】
「ポリヌクレオチド」又は「ポリペプチド」は、ロスコビチンに応じてその発現が修飾される、本明細書に記載したDNA配列及びタンパク質配列を意味する。かかる用語には、これらの配列に近似の変異体も含まれ、かかる変異体はその参照配列と同じ生物活性を有する。該変異体が、本明細書に記載したかかる参照配列と同じ生物活性を保持する限り、これらの変異配列には、「対立遺伝子」(同一又は近似に関連した種において同じ遺伝子座に見られる変異配列)、「相同体」(共通の先祖DNA配列から受け継がれた第二の遺伝子に関連し、種分化(「オルソログ」又は遺伝子複製(「パラログ」)のいずれかによって分離される遺伝子)が含まれる。
【0073】
本発明はまた、前記変異体が、本明細書に記載したかかる参照配列と同じ生物活性を保持する限り、本明細書に記載したポリヌクレオチド及びポリペプチドにおいて、サイレント置換、多型性置換及び同類置換を有する遺伝子の検出を含むことを目的としている。
CDKI活性の遺伝子マーカー及びタンパク質マーカーの発現変化の測定
遺伝子及びタンパク質発現のレベルは、多くの異なる手法を用いて測定することができる。
a)RNAレベル
RNAレベルで遺伝子発現を検出することができる。例えば、フェノール酸/グアニジンイソチオシアン酸塩抽出法(acid phenol/guanidine isothiocyanate extraction)(RNAzolB:Biogenesis社製)、RNeasy RNA調製キット(Quiagen社製) 又はPAXgene (PreAnalytix社製, スイス)を含むRNA抽出法を用いて、RNAを細胞から抽出する。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用した典型的なアッセイの型式には、核Run−Onアッセイ、RT−PCR、RNase Protection Assays (Melton et al., Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザンブロット法及びインシツゥハイブリダイゼーションが含まれる。遺伝子発現はまた、以下に述べるように、マイクロアレイ分析により検出できる。
【0074】
ノーザンブロット法を行なうためには、先ず、RNAサンプルを変性条件下アガロースゲルで電気泳動法によって大きさで分類する。次にRNAを膜に転移させ、架橋し、標識プローブでハイブリダイズする。非同位体プローブ又は高比活性の放射標識プローブ(high specific activity radiolabeled probes)には、ランダムプライミングされたDNAプローブ、ニックトランスレーションされたDNAプローブ、又はPCR作製DNAプローブ、インビトロ転写RNAプローブ、及びオリゴヌクレオチドなどを用いることができる。さらに、一部にのみ相同性を有する配列(例えば、異なる種のcDNA又はエキソンを含む可能性のあるゲノムDNAフラグメント)をプローブとして用いてもよい。
【0075】
NucleaseProtection Assays(NPA)(リボヌクレアーゼタンパク質アッセイとS1ヌクレアーゼアッセイとの両方を含む)は、特定のmRNAの検出及び定量のための極めて高感度な方法を示している。NPAは、アンチセンスプローブ(放射標識された、又は非同位体の)のRNAサンプルへの溶液ハイブリダイゼーションに基づいている。ハイブリダイゼーション後に、一本鎖のハイブリダイズされていないプローブ及びRNAをヌクレアーゼによって分解する。残りの保護されているフラグメントをアクリルアミドゲル上で分離する。NPAによって、数種のRNAを同時に検出することが可能となる。
【0076】
インシツゥハイブリダイゼーション(ISH)は、細胞又は組織で、特定のmRNAを見つけ出すための強力で汎用な手段である。プローブのハイブリダイゼーションは、細胞又は組織で行われる。細胞の構造がかかる処理を通して維持されるため、ISHによって組織サンプルにおけるmRNAの位置に関する情報が示される。
【0077】
処理は、サンプルを中性緩衝ホルマリン液に固定し、組織をパラフィンに埋め込むことから始める。次にサンプルを切片に薄切し、顕微鏡のスライドに載せる。(或いは、組織を凍らせて薄片に切り、パラホルムアルデヒドで後固定する)。かかる切片を何回か洗浄して、ワックスを除去し、加水して元の状態に戻した後、プローブの利便性を向上させるためにプロテインキナーゼKの消化を行ない、次に標識プローブをサンプルの切片にハイブリダイズする。放射標識プローブを、スライド上で乾燥させたリキッドフィルムで可視化し、非同位体標識プローブは比色試薬又は蛍光試薬で簡便に検出する。この後者の検出方法は蛍光インシツゥハイブリダイゼーション(FISH)の基礎である。
【0078】
用いることのできる検出法には、放射標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識及び他の適する標識が含まれる。
【0079】
一般的には、RT−PCRはターゲットRNAを増幅するために用いられる。このプロセスにおいて、逆転写酵素を使用して、RNAを、その後増幅して検出を容易にすることができる相補DNA(cDNA)に変換する。相対的定量RT−PCRには、対象とする遺伝子と同時に内部標準を増幅することが含まれる。内部標準は、サンプルをノーマライズするために用いられる。一度ノーマライズされれば、特定のmRMAの相対存在量をサンプル全体で直接比較することが可能となる。通常用いられる内部標準には、例えばGAPDH、HPRT、アクチン及びサイクロフィリンが含まれる。
【0080】
多くのDNA増幅方法が知られているが、そのほとんどは酵素連鎖反応(ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応又は3SR法(self-sustained sequence replication)に基づくものであるか、或いはクローンされたベクターの全部又は一部の複製に由来するものである。
【0081】
多くのターゲット増幅法及びシグナル増幅(TAS)法については、例えば、Landegren, U. et al., Science 242:229-237 (1988) and Lewis, R., Genetic Engineering News 10:1, 54-55 (1990)の文献において、これらの方法の総論に記載されている。
【0082】
PCR法は核酸増幅法であり、とりわけ米国特許第4,683,195号及び4,683,202号に記載されている。診断に関しては、PCR法を用いて、あらゆる既知の核酸を増幅することができる(Mok et al., 1994, Gynaecologic Oncology 52:247-252)。3SR法(3SR)はTASの変形であり、酵素カクテル及び適当なオリゴヌクレオチドプライマーによってもたらされる逆転写酵素(RT)、ポリメラーゼ及びヌクレアーゼ活性の一連の作用(via sequential round)による、核酸テンプレートの等温増幅を含む(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)。連結増幅反応又は連結増幅システムでは、DNAリガーゼ及びターゲット鎖1本あたり2つ用いる4つのオリゴヌクレオチドを使用する。かかる手法は、Wu, D. Y. and Wallace, R. B., 1989, Genomics 4:560に記載されている。Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197に記載されているように、Qβレプリカーゼ法において、一本鎖RNAを複製するバクテリオファージQβのRNAレプリカーゼを使用して、ターゲットDNAを増幅する。
【0083】
定量PCR法(Q−PCR法)は、サンプル中のトランスクリプトの相対量を測定する手法である。Q−PCR法の適当な実施方法を本明細書に記載する。
【0084】
本発明には、別の増幅手法を使用する。例えば、ローリングサークル増幅(Lizardi et al., 1998, Nat Genet 19:225)は、DNAポリメラーゼによって行われ、等温条件下で直線的又は幾何学的に運動する環状オリゴヌクレオチドプローブを複製することができる市販(RCATTM)の増幅手法である。さらなる手法であるSDA法(strand displacement amplification) (SDA; Walker et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:392) は、特定のターゲットに1つしかない特異的に限定された配列を用いて開始する。
【0085】
本明細書に記載したロスコビチン活性のマーカーを検出する適当なプローブは、テストキットの形で適当な容器に都合良くに入れられている。それらのキットにおいて、かかるプローブは固体支持体(a solid support)に結合することもある。その固体支持体ではアッセイフォーマット用にキットが作成されており、そのアッセイフォーマットにはこの結合が必要である。キットには、サンプルを処理してプローブし、そのプローブをサンプルの核酸にハイブリダイズする適切な試薬、対照薬、説明書などが含まれることもある。適切なキットは、例えばQPCR反応のためのプライマーやFISHを実施するための標識プローブを含んでいることもある。
a)ポリペプチドレベル
遺伝子又はタンパク質の発現の変化は、ロスコビチン活性の遺伝子マーカーがコードするポリペプチドを測定することによっても検出できる。これは、ロスコビチン活性のマーカーとして、本明細書に記載したいずれかの遺伝子をコードするポリペプチドに結合する分子を使用することによって、達成される。タンパク質の存在を検出するために直接的に又は間接的にポリペプチドに結合する適当な分子/試薬には、ペプチドやタンパク質などの自然発生する分子、例えば抗体が含まれる。或いは、これらは合成分子であってもよい。
【0086】
抗体の作製方法は当業者に公知である。ポリクローナル抗体が望ましい場合は、選択した哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、ポリペプチドのエピトープを有する免疫原性ポリペプチドで免疫する。免疫下動物の血清を回収し、既知の手順で処理する。ポリペプチドのエピトープに対するポリクローナル抗体を含む血清に他の抗原に対する抗体が含まれる場合、ポリクローナル抗体を免疫親和性クロマトグラフィーで精製することができる。ポリクローナル抗血清を作製し加工する手法は、当業界で公知である。より大きな免疫原性反応を惹起させるには、動物又はヒトにおいて免疫源として使用するために、ポリペプチド又はそのフラグメントを他のポリペプチドにハプテン化してもよい。
【0087】
当業者であれば、ポリペプチド中のエピトープに対するモノクローナル抗体も、容易に作製することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製する一般的な方法は公知である。細胞融合により、また、発癌性のDNAを有するBリンパ球の形質転換や、エブスタイン・バー(EB)ウイルスによる形質移入などの方法によっても、不死抗体産生細胞株を作製することができる。本発明のポリペプチド中のエピトープに対して生成されたモノクローナル抗体のパネルを、様々な特性、すなわちアイソタイプ及びエピトープ親和性についてスクリーニングすることができる。
【0088】
別の手法には、例えば、ファージが様々な相補性決定領域(CDR)と共にその被膜の表面でscFvフラグメントを発現している、ファージディスプレイライブラリのスクリーニングが含まれる。かかる手法は当業界では公知である。
【0089】
本発明の目的のためには、他に異なる記載のない限り、「抗体」なる用語は、ターゲット抗原に対する結合活性を保持する抗体全体のフラグメントを含む。これらのフラグメントには、一本鎖抗体(scFv)だけでなく、Fvフラグメント、F(ab')フラグメント及びF(ab')フラグメントが含まれる。さらに、例えば欧州特許第239400号に記載されるように、抗体とそのフラグメントをヒト化抗体としてもよい。
【0090】
上述のイムノブロットなどの標準的な実験の手法を用いて、同じ細胞集団中の未処理細胞と比較して、ロスコビチン活性のマーカーのレベル変化を検出することができる。
【0091】
ポリペプチドの翻訳後の処理、又は核酸の転写後の修飾における変化を検出することによって、遺伝子発現を測定する。例えば、ポリペプチドのリン酸化の差異、ポリペプチドの切断又はRNAの別のスプライシングなどを測定する。ポリペプチドなどの遺伝子産物の発現レベルや、それらの翻訳後の修飾を、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの市販のタンパク質アッセイ又は手法を用いて検出する。
【0092】
(a)本発明の抗体を示すステップ、
(b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、前記抗体で生物サンプルを培養するステップ、及び
(c)前記抗体を含む抗原抗体複合体が形成されたかどうかを判断するステップを備える方法
によって、本明細書に記載したロスコビチン活性のマーカーを生体サンプルにおいて検出する際には、抗体を使用する。
【0093】
適当なサンプルには、脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉や骨組織などの抽出組織、又はこれらの組織に由来する腫瘍性成長が含まれる。適当な例には、他に血液及び尿のサンプルを含む。
【0094】
ロスコビチン活性タンパク質のマーカーに特異的に結合する抗体を、体液中又は組織中のロスコビチン活性タンパク質のマーカーを検出又は定量するために、通常の技術を有する当業者には公知の診断方法やキットを使用することができる。これらのテストの結果を使用して、癌及び他の細胞サイクルの進行性疾患の発生又は再発を診断又は予測することができる。或いは、薬剤の投与量及び治療の有効性を査定することができる。
【0095】
当業界で公知の方法により、免疫特異的な結合に対して、抗体をアッセイすることができる。使用可能なイムノアッセイには、ウエスタンブロット法、免疫組織化学、ラジオイムノアッセイ、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル内沈降反応、免疫拡散法、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法及びプロティンAイムノアッセイなどの手法を用いた競合アッセイ系及び非競合アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。これらのアッセイは当業界では決まりきった方法である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと。これらの内容はそっくりそのまま、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0096】
本発明で用いる抗体は、固体支持体に結合し、及び/又は適切な試薬、対照薬、説明書などと共にキットの形で適当な容器に入れられている。
【0097】
他の方法には、大規模のスクリーニングには適当ではないが二次元PAGEが含まれる。最新の手法にはMALDI−TOF−MS(matrix-assisted laser desorption ionization time of flight mass spectrometry)が含まれる。MALDI−TOF分析法では、複合混合物のタンパク質を、固体金属マトリックスに添付し、パルスレーザービームで脱離し、フィールドフリーフライトチューブ(field-free flight tube)を横切る気相イオンを産生する。次に質量依存性の速度で分離する。個別のタンパク質及びペプチドは、タンパク質及びペプチドの配列データベースを検索するインフォマティックスツールを使用して同定される。SELDI−TOF−MS(Surface-enhanced laser desorption/ionisation time of flight MS)は、タンパク質を化学的に修飾した固体表面に選択的に吸着する親和性に基づくMS方法であり、不純物を洗浄して除去し、エネルギー吸収のマトリックスを使用し、該タンパク質をレーザー脱離質量分析(laser desorption mass analysis)により同定する。
【0098】
タンパク質のバイオマーカーを同定するために、SELDI−TOF−MSを使用して、インタクトなタンパク質又は特定のタンパク質のフラグメントのどちらかの出現/喪失を検出する。さらにまたSELDI−TOF−MSを使用して、化学基の付加/除去で引き起こされる質量の差異により、タンパク質の翻訳後修飾を検出する。よって、ある残基のリン酸化は、そのリン酸基により80Daの質量シフトを引き起こすであろう。翻訳後修飾に起因する分子量のデータベースは、インターネット上(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.home?avgmass=all)で自由にアクセスできる。さらに特異的なポリペプチドは、翻訳後修飾されたタンパク質の形を特異的に認識する、又はタンパク質のすべての形を一様に認識する抗体を用いてSELDI−TOF−MSを使用する親和性に基づくアプローチによって捕獲される。
アレイ(Array)
配列技術並びにそれに関連した様々な手法及び応用は、一般的に多くの教科書や文献に記載されている。これらには、Lemieux et al., 1998, Molecular Breeding 4:277-289、Schena and Davis. Parallel Analysis with Biological Chips. in PCR Methods Manual (eds. M. Innis, D. Gelfand, J. Sninsky)、Schena and Davis, 1999, Genes, Genomes and Chips. In DNA Microarrays: A Practical Approach (ed. M. Schena), Oxford University Press, Oxford, UK, 1999)、The Chipping Forecast (Nature Genetics special issue; January 1999 Supplement)、Mark Schena (Ed.), Microarray Biochip Technology, (Eaton Publishing Company)、Cortes, 2000, The Scientist 14(17):25、Gwynne and Page, Microarray analysis: the next revolution in molecular biology, Science, 1999, August 6、Eakins and Chu, 1999, Trends in Biotechnology, 17:217-218、及び多くのワールドワイドウェブサイトで得られる文献が含まれる。
【0099】
配列技術は、通常では「一実験一遺伝子(one gene in one experiment)」に基づき実施するために、処理量が少なく、遺伝子機能の「全体像」を理解することができないという、分子生物学における従来の方法の欠点を克服している。現在、配列技術の主な応用には、配列の同定(遺伝子/遺伝子変異)及び遺伝子の発現レベル(存在量)の測定が含まれる。遺伝子発現プロファイリングには、選択的にプロテオミクス技術と組み合わせて配列技術を用いる(Celis et al., 2000, FEBS Lett, 480(1):2-16; Lockhart and Winzeler, 2000, Nature 405(6788):827-836; Khan et al., 1999, 20(2):223-9)。 配列技術の他の応用も当業界で公知であり、遺伝子の発見、癌調査(Marx, 2000, Science 289: 1670-1672; Scherf et alet al., 2000, Nat Genet 24(3):236-44; Ross et al., 2000, Nat Genet 2000, 24(3):227-35)、SNP分析(Wang et al., 1998, Science 280(5366):1077-82)、薬剤の発見、ファーマコジェノミックス、疾患の診断(例えばマイクロ流体工学装置を用いたChemical & Engineering News, February 22, 1999, 77(8):27-36、毒物学を用いたRockett and Dix (2000), Xenobiotica 30(2):155-77; Afshari et al., 1999, Cancer Res 59(19):4759-60、及びトキシコゲノミクス(toxicogenomics)を用いた(機能性ゲノムのハイブリッド及び分子毒物学)を例示することができる。トキシコゲノミクスの目的は、毒物の毒性反応と、毒物と接触した対象の遺伝子特性における変化との相互関係を見出すことである(Nuwaysir et al., 1999, Molecular Carcinogenesis 24:153-159)。
【0100】
本発明においては、例えば、本明細書に記載した1以上のロスコビチン活性タンパク質マーカーの発現の分析において、配列技術を使用することができる。ある実施態様においては、配列技術を使用して、同時に本明細書に記載した多くのロスコビチン活性のマーカーに対する候補化合物の作用を評価する。したがって、本発明の別の態様では、表1〜12のいずれかに記載した核酸の少なくとも1つ、少なくとも2つ、若しくは少なくとも複数、又はそのフラグメントを含むマイクロアレイ、或いはタンパク質アレイ又は抗体アレイを示している。
【0101】
一般的に、ライブラリ又は群の構成要素を空間的に隔てることによって、サンプルのライブラリ又は群を規則的にアレイに配置してよい。配列に適当なライブラリの例には、核酸ライブラリ(DNAライブラリ、cDNAライブラリ、オリゴヌクレオチドライブラリなど)、ペプチドライブラリ、ポリペプチドライブラリ及びタンパク質ライブラリだけでなく、特にリガンドライブラリなどのあらゆる分子を含むライブラリが含まれる。したがって、本明細書中で「ライブラリ」に言及する場合は、他に記載がない限り、その言及はアレイの形のライブラリへの言及を含むものであると解釈される。本発明の内容において、「ライブラリ」には、本明細書に記載したロスコビチン活性のマーカーのサンプルが含まれる。
【0102】
通常、サンプル(例えばライブラリの構成要素)を固相、好ましくは固体基板に固定化又は不動化し、サンプルの拡散や混合を制限する。好ましい実施態様においては、DNA結合リガンドのライブラリを作製する。特に、ライブラリを、プラスチックやガラスなどの膜基板及び非多孔性基板を含むほぼ平面状の固相に不動化する。さらに、好ましくはサンプルを、索引付け(すなわち、ある特定のサンプルへの参照やアクセス)が容易になるように配置する。典型的には、サンプルを升目の中の点(spots in a grid formation)として用いる。一般的なアッセイ系をこの目的に合うように使用する。例えば、ウェル中の様々なサンプル又は各ウェル中の1つのサンプルで、アレイをマイクロプレートの表面に不動化する。さらに、固体基板はニトロセルロース膜又はナイロン膜(例えばブロット法の実験で使用される膜)などの膜である。代替の基板にはガラス基板又はシリカ基板が含まれる。このように、例えば電荷相互作用により、或いはウェルの壁面若しくは底面、又は膜表面への化学的結合により、当業界で公知の適切な方法でサンプルを不動化する。例えば、ピペッティング、drop-touch、圧電手段、インクジェット技術及びバブルジェット技術、静電気の応用などの、他の配置手段及び固定手段を使用してもよい。シリコンチップの場合は、フォトリソグラフィを使用して、チップ上のサンプルを配置し、固定してもよい。
【0103】
固体基板上に「スポット」することによってサンプルを配置してもよい。これは手動で行ってもよいし、ロボットを用いてサンプルを配置してもよい。一般的に、アレイは、サンプルスポットの大きさの違いによりマクロアレイ又はマイクロアレイと表現される。マクロアレイは典型的には約300マイクロン以上の大きさのサンプルスポットを含み、既存のゲルスキャナー及びブロットスキャナー(blot scanner)によって容易に画像化される。マイクロアレイのサンプルスポットの大きさは、典型的には直径200マイクロン未満であり、これらのアレイは通常数千個のスポットを有する。したがって、マイクロアレイは専門のロボット技術や画像装置を必要とし、これらの技術や装置はオーダーメイドである必要がある。器具の使用については、Cortese, 2000, The Scientist 14(11):26に概ね記載されている。
【0104】
不動化したDNA分子のライブラリの作製手法は、当技術に記載されている。通常、ほとんどの先行技術の方法には、例えば、マスキング技術を用いて、固体基板上の様々な不連続な位置に、多様な配列の並べ替え(permutation of sequence)を構築する、一本鎖核酸分子ライブラリの合成方法が記載されていた。
米国特許第5,837,832号は、大規模集積回路技術に基づく、シリコン基板に不動化されたDNAアレイの改良された作製法について記載している。かかる内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。特に、米国特許第5,837,832号には、本発明の不動化DNAライブラリを作製するために使用されることもある、基板上の空間的に画定された位置でプローブの特定の集合を合成する「タイリング」と称される方法を記載されている。米国特許第5,837,832号は、初期の技術に関する参照資料も示しており、これもまた使用されることがある。
【0105】
それぞれ個別のライブラリの構成要素(例えば、独特のペプチド配列)を、アレイ中の予め画定した不連続な位置に配列するように、ペプチド(又はペプチドミメティック)のアレイを表面に合成する。アレイでの空間的位置によって、各ライブラリの構成要素の同一性を判断する。所定の分子(例えばターゲット又はプローブ)と反応ライブラリ構成要素との結合相互作用が生じる場合、アレイにおける位置を判断し、それによって空間的な位置に基づき、反応ライブラリの構成要素の配列を同定する。これらの方法は米国特許第5,143,854号、国際公開公報第90/15070号及び国際公開公報第92/10092号、Fodor et al., 1991, Science 251:767、Dower and Fodor, 1991, Ann. Rep. Med. Chem. 26:271に記載されている。
【0106】
検出を促進させるために、例えば蛍光レポーター、生物発光レポーター、リン光レポーター、放射性レポーターなどの容易に検出可能なレポーターでターゲット及びプローブを標識する。これらのレポーター、その検出、ターゲット/プローブへの結合などは本明細書全体に記載している。プローブ及びターゲットの標識化については、Shalon et al., 1996, Genome Res 6(7):639-45にも開示されている。
【0107】
DNAアレイの具体例には以下が含まれる。
【0108】
フォーマットI:プローブcDNA(〜500から〜5,000塩基長)を、ガラスなどの固体表面にロボットスポッティング(robot spotting)を用いて不動化し、個別に又は混合してターゲットに接触させる。この方法はスタンフォード大学(Stanford University)で開発されたと広く考えられている(Ekins and Chu, 1999, Trends in Biotechnology, 17:217-218)。
【0109】
フォーマットII:オリゴヌクレオチドのアレイ(〜20から〜25merオリゴ)又はペプチド核酸(PNA)プローブをインシツゥ(チップ上)又は従来の合成によって合成し、その後チップ上に不動化する。かかるアレイを標識したサンプルDNAに接触させ、ハイブリダイズし、相補配列の同一性/存在量を測定する。このようなDNAチップはGeneChip(R)の商標が付され、Affymetrix, Inc.から販売されている。
【0110】
市販のマイクロアレイフォーマットの例は、例えばMarshall and Hodgson, 1998, Nature Biotechnology 16(1):27-31に示されている。
【0111】
データ分析もアレイに関する実験の重要な部分である。マイクロアレイ実験の生データは、一般的には画像であり、その画像は、行が例えば遺伝子を表し、列が例えば組織又は実験条件等の様々なサンプルを表し、各セルの数字が例えば特定のサンプルにおける特定の遺伝子の発現レベルを特徴付ける遺伝子発現行列−表に変換する必要がある。根本的な生物過程の知見を推論するのであれば、これらの行列をさらに分析しなくてはならない。データ分析の方法(バイオインフォマティクスアプローチだけでなく、スーパーバイズされた及びスーパーバイズされないデータ分析を含む)は、Brazma and Vilo J, 2000, FEBS Lett 480(1):17-24に記載されている。
【0112】
上述のように、タンパク質、ポリペプチドなどをアレイにおいて不動化してもよい。例えば、プロテインチップを用いたプロテオームのマイクロアレイ分析では、抗体が使用されている(Borrebaeck CA, 2000, Immunol Today 21(8):379-82)。ポリペプチドアレイは、例えばMacBeath and Schreiber, 2000, Science, 289(5485):1760-1763で概説されている。
診断及び予後診断
本発明はまた、ロスコビチン活性のマーカー、これらのタンパク質に対する抗体、及びこれらのタンパク質及び/又はその抗体を含む組成物の、特にロスコビチンで治療を施した個々人における、増殖活性によって特徴付けられる疾患の診断及び予後診断での使用を含む。本明細書に使用されるように、「予後診断方法」なる用語は、疾患、特に癌と診断されたヒト又は動物の該疾患の進行に関する予測を可能にする方法を意味する。特にロスコビチン治療の対象となる癌には、乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜腺癌、前立腺癌及び白血病が含まれる。
【0113】
本明細書に使用される「診断方法」なる用語は、ヒト若しくは動物に関して又はヒト若しくは動物において、癌の有無又は癌のタイプを判断可能にする方法を意味する。マーカーによってロスコビチン治療の成功を評価できることが適切である。上述の通り、適切な診断には、例えばQPCRプライマー、FISHプローブなどの本明細書に記載したいずれかの遺伝子に関するプローブが含まれる。
【0114】
次に本発明を以下の実施例を参考に説明する。
【実施例1】
【0115】
CYC202処理細胞で発現した遺伝子の同定
方法
細胞培養
末梢血単核細胞(PBMC)を、使用説明書に従いバキュテイナーCPTチューブ(Becton Dickinson社製、N.J.、米国)の遠心分離により精製した。細胞を、10%のウシ胎仔血清及びペニシリンストレプトマイシンを含むRPMI培地40ml中に約2×10細胞の密度で播種した。
【0116】
HT29及びA549の細胞は、それぞれヒトの大腸及び肺の腫瘍に由来しており、10%のFCSを含むDMEMにおいて10cmプレートあたり1.5×10細胞と同等である約20%の密集度で播種した。その結果、化合物で処理すると翌日には活発に増殖していた。
【0117】
CYC202又は溶媒コントロールであるDMSOによる処理前、すべての細胞培養物を、5%CO存在下、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした。PBMC及びHT29の細胞を、7.5μM、15μM又は30μMのCYC202で処理し、1.5時間、3時間、5時間、8時間及び24時間後にサンプルを採取した。A549細胞は、15μM、45μM及び75μMのCYC202で処理し、2時間、4時間、8時間及び24時間後にサンプルを採取した。
RNA抽出
RNAを、使用説明書に従いTRIZOL試薬(インビトロゲン社製)を用いて、マイクロアレイ実験で使用したA549細胞から抽出した。他のすべての細胞株に対しては、全RNAを、使用説明書に従いRneasy Midi Kit(Qiagen社製、Hilden、ドイツ)により培養物から抽出した。細胞をRLT緩衝液に溶解し、次にRNA抽出前に、Qiashredderカラムを通過させた。サンプルは、カラムに結合すると同時にRnase-free Dnase(Qiagen社製)により処理した。RNAをRnase-free水で溶出し、RiboGreen(Molecular Probes社製、Leiden、オランダ)を使用して定量した。サンプルのアリコートをアガロースゲルに流して、RNAの完全性及び品質をチェックした。
二本鎖cDNAの合成
10μgの全RNAをcDNA作製用の出発物質として使用した。第1鎖及び第2鎖のcDNA合成を、T7RNAポリメラーゼプロモータ部位を含むoligo-dTプライマーを使用することを除いては、使用説明書に従いSuperScript II System(インビトロゲン社製、Carlsbad、カリフォルニア州)を使用して行なった。標識cRNAをBioArray High Yield RNA Transcript Labelling Kit(Enzo社製)を使用して作製した。ビオチン標識したCTP及びUTP(Enzo社製)を、未標識のNTP´sと一緒に反応中で使用した。IVT反応に続き、非取り込み型のヌクレオチドを、RNeasyカラム(Qiagen社製、Hilden、ドイツ)を使用して除去した。
マイクロアレイ・ハイブリダイゼイション及びスキャンニング
cRNAを、Affymetrix Technical Manualに従い、metal-induced加水分解により断片化し、35〜200塩基のフラグメントを得た。15μgのcRNAを、94℃で35分間、pH8.1のTris-acetate40mM、KOAc100mM及びMgOAc30mMを含むフラグメンテーション緩衝液中で断片化した。ハイブリダイゼイションに先立って、アフィメトリクスプローブアレイカートリッジに載せる前に、6xSSPE-Tハイブリダイゼーション緩衝液(1MのNaCl、pH 7.6のトリス10mM、0.005% のトリトン)中の断片化したcRNAを、95℃で5分間、続いて45℃で5分間加熱した。
【0118】
HT−29細胞及びPBMCからのRNAをHu Gene U133A Cartridgesに載せる一方で、A549細胞から抽出したRNAを、Hu Gene FL Cartridgeと一緒に使用した。次に、プローブアレイを、45℃で16時間、一定の回転数(60rpm)でインキュベートした。洗浄及び染色の処置はAffymetrix Fluidics Stationを用いて行った。プローブアレイを接触して、25℃で6xSSPE−Tにおいて10回洗浄後、50℃で0.5xSSPE−Tにおいて4回洗浄した。ビオチン標識したcRNAを、阻害剤として正常なヤギのIgGを最終濃度0.1mg/ml(Sigma社製)で、及びビオチン標識した抗ストレプトアビジン抗体(ヤギ)を最終濃度3mg/ml(Vector Laboratories社製)で使用する抗体増幅ステップ(antibody amplification step)により検出した。この後、ストレプトアビジン・フィコエリトリン複合物、最終濃度2mg/ml(Molecular Probes社製、Eugene、OR)で、25℃で6xSSPE−Tにおいて30分間染色を行なって、25℃で6xSSPE−Tにおいて10回洗浄した。プローブアレイを、共焦点レーザー顕微鏡(Hewlett Packard社製、 GeneArray Scanner G2500A)を使用して560nmでスキャンした。定量的スキャニングからの測定値は、Affymetrix Gene Expression Analysis Softwareを使用して分析した。
マイクロアレイ・データの分析
データの分析は、Affymetrix Software PackagesのMAS ver. 5.0、MicroDB ver. 3.0及びDMT ver. 3.0を使用して行った。すべての未加工の分析は150 unitsへの Global Scaledであり、その後Pairwise Comparison分析により比較した。
対象の遺伝子の選択
Affymetrix Chipsのデータを、CYC202処理後に個々の時点で分析した。CYC202処理のマーカーとして同定された遺伝子は、DMSOで処理した細胞から単離されたRNAに存在していた遺伝子であるが、その発現は、CYC202の全濃度で処理した細胞から単離されたRNAにおいてはダウン・レギュレートすると判断した。
【0119】
7.5、15及び30μMで1.5、3、5、8及び24時間、CYC202で処理したPBMC由来のサンプルを使用してマイクロアレイから得た発現データにより、以下の表を得た。
【0120】
表1は、PBMCのCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、1.5時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0121】
表2は、PBMCのCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、3時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0122】
表3は、1.5時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表1に記載したプローブ)。
【0123】
表4は、3時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表2に記載したプローブ)。
【0124】
7.5、15及び30μMで1.5、3、5、8及び24時間、CYC202で処理したHT29細胞由来のサンプルを使用してマイクロアレイから得た発現データにより、以下の表を得た。
【0125】
表5は、HT29細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、1.5時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0126】
表6は、HT29細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、3時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0127】
表7は、1.5時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表5に記載したプローブ)。
【0128】
表8は、3時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表6に記載したプローブ)。
【0129】
15、45及び75μMで2、4、8及び24時間、CYC202で処理したA549細胞由来のサンプルを使用してマイクロアレイから得た発現データにより、以下の表を得た。
【0130】
表9は、A549細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、2時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0131】
表10は、A549細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、4時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【0132】
表11は、2時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表9に記載したプローブ)。
【0133】
表12は、4時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表10に記載したプローブ)。
【実施例2】
【0134】
リアルタイム定量PCR(Real time quantitative PCR)を使用するマイクロアレイ・データの確認
リアルタイム定量PCR(QPCR)
同じ3つの細胞株から得られた全RNAサンプルを、マイクロアレイで観察した遺伝子発現レベルの検証のために使用した。リアルタイム定量PCRをRoche LightCycler machine(ロシュ社製、英国)で行った。プライマーを選択して、ゲノムDNAで微量汚染されたRNAサンプル生成物を得ることのないように、その可能性を排除した。
【0135】
さらに、全血液サンプルのRNAをQPCR法により分析した。ボランティアの血液をVacutainer Heparin CPT tubeに採取した。次に血液を、様々な濃度のCYC202又はDMSOで処理し、30分毎にチューブを反転して、5%COの存在下37℃で1.5時間、インキュベーターでインキュベートした。血液をその後、PAXgene tube(PreAnalytiX社製)に移動し、数回反転し、室温で2時間の最初のインキュベーションにより細胞を溶解させた後、−20℃の場所に置いた。分析用に準備する場合には、血液を室温で約2時間放置して解凍し、使用説明書にしたがって処理した。デオキシリボヌクレアーゼ分解ステップを任意で含んだ。RNAサンプルは、定量後にQPCRアッセイで直接に使用した。
【0136】
プライマーを表13に記載する。
【0137】
ワンステップ逆転写では、RNA Master SYBR Green I kit (ロシュ社製、英国)を使用した。20μl反応体積において、100ng又は1μgの全RNAを、7.5μlのRNA Master SYBR Green I、3.25mM のMn(OAc)2、及び0.3μMの各プライマーに添加した。反応条件は以下のようであった。RTステップを61℃で20分間、次に変性ステップを95℃で2分間、45サイクルからなる増幅ステップを95℃で5秒間、55℃で5秒間、及び72℃で13秒間、次に、融解曲線分析ステップをプライマーダイマーと生成物を識別するために95℃で5秒間、65℃で15秒間、及び0.1℃/秒で95℃に上昇して行なった。最後に冷却ステップを40℃で30秒間行なって終了した。
QPCRデータの分析
全サンプルを1μg/μlにノーマライズし、等価なRNA全量をアッセイで使用した(対象のターゲット遺伝子により、100ng又は1μg)。サンプルを複製し、PCR反応を繰り返した。DMSO溶媒コントロールと比較した化合物の存在下、発現レベルにおけるfold changeを算出するための式を、以下のように計算した。
ΔCt
ここで2は、各PCR反応の最大の効率であり、ΔCtはcrossing point valuesにおける変化である(サンプルCt - DMSOコントロールCt)。
【0138】
さらに、ハウスキーパー遺伝子の発現レベルをこれらのサンプルで測定し、データを次式の導関数を使用してノーマライズした。
【0139】
ΔCt target / 2ΔCt housekeeper
結果
図1〜17は、表1〜12のマイクロアレイ・データで示される遺伝子発現データを有する16遺伝子(ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、20585、FUT4、E2F6、18747、22147、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc 及び mcl−1)のグラフ表示を示す。PBMC並びに/又は、HT29及び/若しくはA549の細胞における16遺伝子の各々に対して得られたマイクロアレイ・データを、QPCR分析の結果と比較する。
【0140】
これらの結果をマイクロアレイ・データで確認する。
【実施例3】
【0141】
CYC202で治療した患者における遺伝子発現の分析
患者サンプルの分析では、採血中及び採血直後におけるRNAの発現特性を保存する方法は、QPCR法などの手法によりヒト全血の遺伝子発現の正確な分析をするためには重要である。室温での保存又は移動の間に、全血液中における個々のmRNA種のコピー数は、1000倍よりも大きく変化するということを、PreAnalytixは示している。これは、採血後、ある遺伝子の誘導性発現だけではなく、RNAの急速な分解により引き起こされる。
【0142】
よって、PAXgene(PreAnalytix社製、スイス)法を、細胞性RNAの単離のための迅速で効率的なプロトコルと一緒に使用して、全血検体を採取し、安定化及び運搬手段とした。このシステムの使用では、遺伝子発現における誤変動に関る問題に対して効果があり、わずか2.5mlの全血から高品質のRNAを数マイクログラム産生する。
方法論
ボランティアからの血液を、英国DundeeにあるHawkhill Medical CentreでVacutainer Heparin CPT tubeに採取し、実施例2に記載したように処理した。PAXgene tubeへ移動後、室温で2時間、最初のインキュベーションで細胞を溶解させた後、そのチューブを室温、4℃又は−20℃の場所に置いた。
【0143】
様々な長さの時間、様々な保存条件で保存されている血液を、室温で約2時間放置してから、使用説明書にしたがって処理した。デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)分解ステップを任意で含んだ。RNAサンプルは定量化して、QPCRアッセイで直接使用した。
結果
RNAは、その収率は血液2.5mlあたり3〜5μgの間で様々であるが、許容できる品質を有している。ターゲット遺伝子(PNUTS)及びハウスキーピング遺伝子(HPRT)の発現をこれらの全サンプルにおいて測定した。
【0144】
図18は、PNUTSの発現におけるCYC202の効果(下部パネル)、及びあるドナーの遺伝子発現のCYC202性変化における保存の効果(上部パネル)を示す。PNUTSの発現をハウスキーパーの発現にノーマライズし、グラフのデータを、インビトロの血液を30μMのCYC202に1.5時間接触後、PNUTSの発現におけるノーマライズしたfold decreaseとして表わした。
【0145】
これらの遺伝子発現は、すべてのサンプル中で検出され、CYC202に血液を接触ことにより再現性よくダウンレギュレートされた(図18の下部パネル)。最適条件は、−20℃で保存することであるとされ、発現は、最初の1ヶ月間は−20℃で安定しているように思われる(図18の上部パネル)。これは4℃又は室温での保存よりも好ましく、製造者の勧告と一致する。
QPCRアッセイの最適化
QPCRアッセイの最適化を行なって、ポジティブシグナルとネガティブシグナルの相違を最大化し、遺伝子発現におけるfold changeについての的確な予測を可能にした。
【0146】
最適化はRNA増幅キットを使用して行なった。プライマー濃度、アニーリング温度及びMgCl濃度をすべて変更して、シグナルとノイズの最良の分離を得た。
【0147】
プライマーを最適化し、最終プライマーセットリストを表14に示す。
【0148】
さらに、すべてのPCR産物をクローン化し、RNAが正確に増幅されたことを検証するために配列決定した。
CYC202で治療した乳癌患者における遺伝子発現の分析
患者02-2-01 (08)を、1日目から5日目までは600mgのCYC202を1日2回、2日目から15日目まではカペシタビン投与を経口で1日2回、併用して治療した。この患者に対して薬物動態解析を行なった。その結果、患者は有効なCYC202の値を数時間にわたり維持していたことが明らかになった。
【0149】
図19は、患者02-2-01 (08)の薬物動態学的なデータを示し、1日目の完全な経時的データ及び5日目の投与前のある時点におけるデータを示す。CYC202の血漿濃度をμMで得る。インビトロのPNUTS及び他のターゲット遺伝子の影響を、ここで表わされる範囲内である、7.5〜15μMの濃度で1.5〜3時間観察した。
【0150】
この理由のため、治療1日目の複数の時点で、かかる患者の全血から抽出したRNAの遺伝子発現に対する化合物の影響を分析することは有益であると思われた。PNUTSの発現をすべてのサンプルで検査し、このデータを安定的である28SrRNAの発現レベルに対してノーマライズした。
【0151】
図20は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のPNUTSの発現におけるfold decreaseを示すグラフである。PNUTS発現は、最初のCYC202投薬後には約2〜3倍の減少となり、その後、5日目の投薬前に測定したときには正常のレベルに戻った。
【0152】
図21は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のC/EBPαの発現におけるfold decreaseを示すグラフである。C/EBPα発現における減少は、最初のCYC202投薬から8時間後には約4.5倍となって、頂点に達し、その後、5日目の投薬前に測定したときには正常のレベルに戻った。
【0153】
図22は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のFUT4の発現におけるfold decreaseを示すグラフである。FUT4発現における減少は、最初のCYC202投薬から3時間後には約2倍となって、頂点に達し、その後、最初の投薬後8時間までには、5日目の投薬前に測定したときには正常のレベルに戻った。
【0154】
図23は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のNM_033410の発現におけるfold decreaseを示すグラフである。NM 033410発現における減少は、最初のCYC202投薬から2時間後には約2倍となって、頂点に達し、その後、5日目の投薬前に測定したときには正常のレベルに戻った。
結論
遺伝子発現への影響の動態(kinetics)は、異なる遺伝子に対してCYC202を投薬後、異なる時間に起こる遺伝子発現の最大の影響をともなって、相当に変化する。PNUTSの場合、遺伝子発現の変化は、PKデータに酷似する。すべてのRNAサンプルを、1mg/mlにノーマライズして希釈し、濃度を再度測定し、すべてのサンプルが同じ濃度であったことを確認した。さらにまた、28SrRNAの発現を分析することで確認した。すべての遺伝子発現を28SrRNAにノーマライズしたので、28SrRNAにおけるあらゆる小さな変動には、サンプル間のRNA濃度のあらゆる小さな変化が取り入れることであろう。
【0155】
かかるデータでは次のことを確認する。本発明に見られる遺伝子発現の差動効果は、RNA濃度の差異によるものではなく、末梢血単核細胞及び腫瘍細胞のインビトロのマクロアレイ実験及びQPCR実験により浮き彫りにされたいくつかの遺伝子発現における、CYC202で治療した患者に起こる本当の変化である。
【実施例4】
【0156】
SELDI−TOF−MSを使用した血漿プロテオミクス特性の分析及びバイオマーカーの同定
SELDI
CYC202治療の初日及び最終日に、患者から血漿サンプルを得た。異なる腫瘍タイプを有し、異なる投薬を受け、CYC202の投与計画を予定している患者からなる全16名の患者を、本調査において分析した。10名の患者には、3週間毎に1日あたり1.6g〜3.2gのCYC202を5日間続けて投与し、4名の患者には、3週間毎に1日あたり1.6g〜2gのCYC202を10日間続けて投与した、2名の患者には、3週間毎に1日あたり2.4gのCYC202を3日間投与した。全サンプルをアリコートで、−80℃で保存した。
【0157】
サンプルを、4つの異なるProteinChip(R) Array表面で、Q Ceramic HyperD(R)F96 well plate(Ciphergen社製)におけるNeat又は分画のどちらかを分析した。かかる手法は、複雑な生物源からタンパク質を分離し、電荷に基づいて分画する。陰イオン交換吸着剤を、タンパク質の分画用にデザインし、イオン交換体と同様のpI又は結合親和力を有するタンパク質を一緒に溶出する。これはまた、サンプルにおける極めて大量のタンパク質を、限定した数の画分に分離するという便益を提供し、ProteinChip(R) Array表面の容量を超えてはいないということを確実にするだけでなく、低存在量のタンパク質におけるシグナル抑制効果を減少させる。
【0158】
分画のために、20μlの各血漿サンプルを30μlのU9緩衝液(尿素9M、2%CHAPS、pH9のTris−HClを50mM)で、30分間室温で混合した。その後、Q HyperD(R) F plateに添加する前に、同量のU1緩衝液(尿素1M、0.2%CHAPS、50mMのpH9Tris−HCl)で希釈した。分画は、pHを連続的に低下させることによる溶離を基本的に含むExpression Difference MappingTM kitの使用説明書にしたがって完成させ、6画分を調製した。
【0159】
すべてのチップ表面を、以下に記載するような適当な結合緩衝液と平衡にした。分画したサンプルをその後、適当な結合緩衝液と1:10の割合で希釈して様々な表面に使用した。NeatサンプルをU9緩衝液で1:6の割合に希釈し、室温で30分間混合し、その後にまた、適当な緩衝液で1:10の割合で希釈し、ProteinChip(R) Array表面に結合した。SAX−2 又は Q10 ProteinChip(R) Arraysは強陰イオン交換表面であり、サンプルを、pH9緩衝液(100mMのpH9Tris−HCl、0.1%のTriton X−100)中でこれらのProteinChip(R) Arraysに使用した。WCX2及びCM10チップは弱陽イオン交換表面であり、使用した緩衝液は100mMのpH3.5NaOAc、0.1%Triton X−100であった。10% ACN + 0.1% TFA 及びIMAC チップを利用した疎水性のチップ表面(H50)を、使用説明書にしたがって0.1Mの硫酸銅で活性化した。全サンプルを、プラットフォームシェーカーを用いて室温で1時間結合させた。アレイを結合緩衝液で1回洗浄し、続いて界面活性剤非存在下において結合緩衝液で2回洗浄した。各々を、プラットフォームシェーカーを用いて5分間行なった。その後10mMのpH7Hepesで簡単にすすぎ、空気乾燥させた。0.8μlの50%飽和シナピン酸(50%のアセトニトリル、0.05%TFAで調製)を、各スポットに対して2回使用した。次にタンパク質をProteinChip(R) Readerで検出した。データは、0〜50,000(低)、0〜100,000(中)、及び0〜200,000(高)、の3つの異なる質量範囲を使用して、190〜210の強度を有する平均値が約150のレーザーショットにより、収集した。
【0160】
Biomarker Wizard Softwareを使用して、全スペクトルを集め、2000〜200,000の質量対電荷比(m/z)を有する適格な質量ピーク(信号対雑音比>5)を、自動検出した。ピーククラスターは、second-passのピーク選択(信号対雑音比>2、0.3%未満のmass window)を使用して完成し、推定のピークを加えた。ピーク強度を、該データが、質量範囲の低、中又は高のいずれから得られたかにより、2000〜50,000、2000〜100,000又は2000〜200,000のm/zの全イオン電流にノーマライズした。これらのすべてを、ProteinChip(R) Software 3.1(Ciphergen社製)を使用して行なった。付加的な前処理段階では、ピーク強度データの対数変換のみを行なった。Biomarker Wizardにより、スペクトルの全サンプル群から類似の分子量のピークを分類し、サンプル群間の発現レベルの差異を統計的に及び視覚的に表示した。各サンプルの平均及び標準偏差を記録し、適当な統計学を使用した。非常に大きなデータセットに対してはパラメトリック検定を使用するが、この調査に対しては、データが小さすぎるので正規分布を有していないと判断し、ノンパラメトリック検定を行なった。ここでは、Mann-Whitney U testを使用してデータを分析し、0.05未満のp値を、処理前又は処理後を表示し、2群の間において統計的に有意な差異と思われる各クラスター群に指定した。
二次元ゲル(2D gels)
一次元の等電点電気泳動に対しては、二次元ゲル電気泳動を、IPGPhor(Amersham Pharmacia Biotech社製)システムを使用して行ない、二次元SDS−PAGEに対しては、Novex MiniCell(Invitrogen社製)システムを使用して行なった。
【0161】
使用説明書にしたがい、IPGphorにおいて、再水和緩衝液(8Mの尿素、2%CHAPS、ブロモフェノール・ブルー、及びpHに対して適当な0.5% IPG 緩衝液)と、5μlの血漿サンプルと、20mMのDTTを、20℃で16時間使用してin−gel再水和により、等電点電気泳動に対するサンプルを、Immobiline DryStrips(7cm、pH3〜10(linear)又はpH4〜7)に添加した。1ストリップ当り50mAの定電流で8時間を超えて総量約40000Vを使用して、タンパク質を一次元に集束させた。等電点電気泳動後、Immobiline DryStripsを、50mMのpH8.8Tris−HCl、6Mの尿素、30%グリセロール、2%SDS、0.01%ブロモフェノール・ブルー及び10mg/mlのDTTを含む平衡緩衝液で、30分間室温で平衡化した。さらに15分間、DTTを含まないが、25mg/mlのヨードアセトアミドを含む平衡緩衝液で平衡化した。
【0162】
二次元電気泳動を、4〜12%勾配のSDS−PAGEゲルを使用して行なった。集束した/平衡したImmobiline DryStripsをSDS−PAG Eゲルと直接に接触して置き、タンパク質を150Vの定電圧でブロモフェノール・ブルーがゲルの底部に達するまで電気泳動を使用して分離した。
【0163】
Colloidal Blue staining (Invitrogen社製)を、使用説明書にしたがって行ない、対象のスポットを複製ゲルから切り取って、受動溶出(passive elution)によりタンパク質の同定及びタンパク質の抽出のために平行して処理した。
タンパク質の同定
タンパク質同定のために、ゲル片を100mMの炭酸水素アンモニウム/50%アセトニトリル中で連続してインキュベートし、10分間の洗浄を3回行ない、過剰の染色及びSDSを除去し、その後100%アセトニトリルで5分間行なった。この溶液を除去し、ゲル片をヒートブロックで簡単にインキュベートし、ゲル片を脱水した。トリプシン(25mMの炭酸水素アンモニウム中に10ng/ulのPromega porcine trypsin)を添加して、ゲル片を37℃で一晩インキュベートしてタンパク質を消化した。トリプシン消化が成功したかどうかを確認するために、サンプルをSELDI−TOF−MSで分析した。この分析を行なうために、0.5μlのトリプシン消化物を0.5μlの20%α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)基質溶液と、50%のACN、0.5%のTFA中で混合し、NP20チップに添加した。タンパク質を同定するために、ペプチド消化物をUniversity of Dundee 'FingerPrints' Proteomics Facilityに提出した。消化物はABI 4700 Proteomics Analyzer with Tof/Tof OpticsのMS及びMS−MSによって分析された。消化した各ゲルスポットのペプチド質量指紋で組み合わせたMS及びMS−MSデータを、Matrix Science社製のMascot検索エンジンを用いてCDSデータベースを検索するために使用した。
受動溶出(Passive elution)
受動溶出手法を使用して、SELDI−TOFで再分析が可能となるように、ゲル片からタンパク質の抽出を行なう。ゲル片を、シェーカーを用いて100%アセトニトリルで5分間インキュベートし、溶液を除去し、ゲル片をヒートブロックにしばらく置いて乾燥させた。その後、FAPH溶液(50%ギ酸、25%アセトニトリル、15%イソプロパノール、10%水)をゲル片及び室温で30分間超音波処理したサンプルに添加した。さらに2〜3時間ボルテックスし、NP20チップに添加して、その受動溶出液の特性を、バイオマーカーを明らかにするオリジナルのサンプルスペクトルの特性と比較した。
4.1 14kDaバイオマーカーの同定及びトランスサイレチン(Transthyretin)であることの証拠
処理により増加した14kDaバイオマーカーを、IMAC−Cu2+及びSAXチップの両方で同定した。pH9におけるSAXチップの分画4の分析から得られた Biomarker Wizardデータを、患者の代表的な特性と同様に示す。
【0164】
図24:上部半分:pH9のSAXチップにおける1b期の患者16名の分画4の分析のBiomarker Wizardプロット。13.5kDa〜14.6kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを青(u)で示し、処理最終日のサンプルを赤(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準の強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらずサンプル群間の差異を表現する。
【0165】
下部半分:処理後の付加的ピークの出現を示している患者2名の代表的なスペクトル。統計的に有意に、より高度にノーマライズした強度を、M/Z14255(49.7+/-8.4 vs 20.4+/-3.9; p=0.0000031, Mann-Whitney U test)に対して、「処理後」グループを「処理前」グループと比較して観察した。
【0166】
SELDI−TOF−MSの分析後、患者4名のサンプルをpH4〜7に固定したpH勾配ストリップに添加して、等電点(電荷)にしたがってタンパク質を分離した。等電点電気泳動後、大きさにより二次元分離を行なった。処理の初日と最終日の差異を観察するために、ゲルをColloidal blue染色で染色した。その変化を四角で囲んで強調する。
【0167】
図25は患者の血漿の二次元ゲルを示す。Neat血漿サンプルをpH4〜7のIPGストリップに添加し、電荷により一次元においてタンパク質を分離し、次に、二次元においてSDS−PAGEにより大きさで分離した。分子量サイズマーカーは各ゲルの左にある。対象のスポットは、各ゲルの左に示される14kDa〜17kDaマーカーにちょうど存在する。下部のゲルは、変化が再現可能ということを示し、さらに2名の患者の拡大図を表わす。
【0168】
各サンプルの上部2つのゲルスポットを、トリプシン消化物及び受動溶出のために平行して切り取り処理し、ゲルからタンパク質を溶出し、SELDI−TOFにおける再分析を可能にした。受動溶出サンプルを、NP20チップに添加して、タンパク質ピークの大きさ及び特性を検査し、それらがバイオメーカーピークそのものに類似しているかどうかを判断した(図25)。平行サンプルを、トリプシン消化及びペプチド・マッピングのために処理し、これらのスポットは、University of Dundee Proteomics facilityで、MS及びMS−MSの両方により、トランスサイレチンとして同定された。
【0169】
図26は、オリジナルSELDI−TOF特性と二次元ゲルから抽出した受動溶出サンプルとの比較を示す。ゲルを複製し、各サンプル(1日目又は10日目)における約14kDaの2つのスポットを、受動溶出又はトリプシン消化のために平行して切り取り処理した。受動溶出により、ゲルスライスからタンパク質の抽出が可能となり、SELDI−TOF−MSの分析を行なうことができる。これは上部4つの特性に示し、サンプルのオリジナルSELDI特性と比較する(最下部の2つのスペクトルで示す)。1日目のスポット2の受動溶出では、このスポットは処理前にColloidal染色で極めて弱く染色されるという知見と一致して、いかなる特性も生じなかった。受動溶出特性はあまり分離されない傾向にあるが、それにもかかわらず、点線で示されるように、オリジナルSELDI特性の2つのピークで完璧に整列するように思われ、余分のスポットは、10日目に存在し、Biomarker Wizardにより同定された14255バイオマーカーで完璧に整列する。トリプシン消化物をUniversity of Dundeeで分析した。
【0170】
2つの下部スポットは、処理により変化するようには思えなかったが、トリプシン消化によっても分析され、ハプトグロビンとして同定された。
【0171】
そのサンプル前後における2つの上部スポットは、すべてトランスサイレチンとして同定された。これは、新規で異なったタンパク質の出現というよりも、タンパク質のさらなる酸性型をもたらす、処理後のユニークなスポットはトランスサイレチンの翻訳後修飾によるということを示唆した。受動溶出後のサンプルにおけるタンパク質の同定及び分析の平行判定では、Biomarker Wizardにより同定された14kDaバイオマーカーは事実上トランスサイレチンであるという明解な証拠を示す。
【0172】
二次元ゲルのスポットに対する2つのピークは、約332〜341Da隔てられていた。大きさの違いは、Delta Mass Reference Database for Protein Translational Modifications (http://www.abrf.org)で判断されたように、タンパク質のS−パルミトイルシステイニル修飾を示し、CYC202の処理後に認められたTTRの付加的な酸性型は、S−パルミトイルシステイニルが原因であるかもしれないということを示唆している。
4.2 28kDaバイオマーカークラスター、アポリポタンパク質A1の同定
統計的に有意な2つの28kDaバイオマーカーは、処理により減少した4チップすべての表面に存在していたということが同定された。これら2つのピークに隣接して付加的な2つのピークが認められたが、統計的に有意な程度ではなかった。それにもかかわらず、処理に対して再現性よく変化するように思われた。pH9のSAXチップにおける分画4の分析から得られたBiomarker Wizardデータを、患者の代表的な特性と同様に図26に示す。
【0173】
CYC202による処理は、27923及び28126における2つのピークで減少をもたらす。一方、統計的に有意な程度ではない28292及び28799におけるピークでは、それにもかかわらず、処理後に劇的に増加するように思われる。
【0174】
図27:上部半分:pH9のSAXチップにおける1b期の患者16名の分画4の分析のBiomarker Wizardプロット。26.5kDa〜30.5kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを青(u)で示し、処理最終日のサンプルを赤(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。
【0175】
下部半分:処理後の最初の2つのバイオマーカーに対する最初の2つのピークの減少、及び第3バイオマーカーに対する第3ピークにおける出現又は増加を示す患者2名の代表的なスペクトル。統計的に有意に、より低度にノーマライズした強度を、M/Z27923(31.8+/-13.7 vs 50.6+/-11.8; p = 0.00097, Mann-Whitney U test)及びM/Z28126(20.4+/-9.9 vs 32.0+/-9.6; p = 0.0058, Mann-Whitney U test)に対して、「処理後」グループを「処理前」グループと比較して観察した。M/Z28292及びM/Z28799における2つのマーカーは、統計的に有意(各々p = 0.95及び0.19)であるとは思えず、2名の患者の処理後における明らかな増加であると思われる程度である。
【0176】
SELDI−TOF−MSの分析後、患者4名のサンプルをpH4〜7に固定したpH勾配ストリップに添加して、等電点(電荷)にしたがってタンパク質を分離した。等電点電気泳動後、大きさにより二次元分離を行なった。処理の初日と最終日の差異を観察するために、ゲルをColloidal blue染色で染色した。その変化を四角で囲んで強調する。
【0177】
図28は患者の血漿の二次元ゲルを示す。Neat血漿サンプルをpH4〜7のIPGストリップに添加し、電荷により一次元においてタンパク質を分離し、次に、二次元においてSDS−PAGEにより大きさで分離した。分子量サイズマーカーは各ゲルの左にある。対象スポットは、28kDaマーカーの下にちょうど存在する。
【0178】
図28の画像は、さらに2名の患者の二次元ゲルの拡大図を表わし、処理後の付加的なさらなる酸性スポットの出現を示す。
【0179】
図29:処理後の第3のさらなる酸性スポットの出現、及びBiomarker Wizard プロットに一致する最初のスポットでの中程度の減少を示している209患者及び116患者に対する二次元ゲルの拡大図。
【0180】
その後、209患者1日目のサンプルを、広域範囲のpH(pH3〜10)のIPGストリップに添加して、ひとつの未分解スポットを得た。この物質を含むゲルスポットをゲルから切り取り、受動溶出を行なってゲル片からタンパク質を抽出した。その後、NP20チップに添加して、SELDI−TOF−MSによりタンパク質の大きさ及び特性を検査した(図30)。
【0181】
平行サンプルを、トリプシン消化及びペプチド・マッピングのために処理し、University of Dundee Proteomics facilityで、MS及びMS−MSの両方により、アポリポタンパク質A1であると同定した。
【0182】
同じ処理を、上記で示した分離したアポA1スポットにおいて行なった。すべてのスポットを、処理後のユニークスポットは新規で異なるタンパク質の出現というよりもアポA1の翻訳後修飾によるということを示唆するアポA1であると同定した。これは、全16名の患者にとっては統計的に有意な程度には達しない28.292における第3のバイオマーカーに最も応答したようであった。
【0183】
図30:pH3〜10のIPGストリップを用いた患者の血漿の二次元ゲル分析。ゲルを複製し、28kDaにおけるスポットを、受動溶出又はトリプシン消化のために平行して切り取り処理した。受動溶出により、ゲルスライスからタンパク質の抽出が可能となり、SELDI−TOF−MSの分析を行うことができる。これは下部の特性に示し、オリジナル209の1日目のサンプルと有利に比較する―上部特性。トリプシン消化物をUniversity of Dundeeで分析した。
【0184】
受動溶出後のサンプルのタンパク質同定及び分析の平行判定では、SELDIにより同定された28kDaバイオマーカーは事実上アポリポタンパク質A1であるという明確な証拠を示している。従って、CYC202処理によって変化しているとしてBiomarker Wizardにより同定された28kDaピークは、アポリポタンパク質A1(アポA1)である。アポA1は、グリコシル化、アシル化及びリン酸化などの翻訳後修飾の対象となる。アポA1の脱アミド化した型もまた同定されている。
4.3 7kDaバイオマーカー・クラスターの同定
処理後においてのみ現れる7kDaバイオマーカーのクラスターを、いくつかのチップ表面で同定した。pH9のH50チップにおける分画6、及びCM10チップにおけるNeat血漿の分析のBiomarker Wizardデータを、数名の患者の典型的な特性と同様に示す。
図31:上部半分:H50チップにおける1b期の患者16名の分画6の分析のBiomarker Wizardプロット。5kDa〜8.5kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを(u)で示し、処理最終日のサンプルを(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。
【0185】
下部半分:処理後の付加的な2つのピークの出現を示す患者3名の代表的なスペクトル。統計的に有意に、より高度にノーマライズした強度を、M/Z6799(2.9+/-1.2 vs 29.1+/-8.1; p=0.0000031, Mann-Whitney U test)及び M/Z6998(2.1+/-0.7 vs 42.0+/-9.1; p=0.0000031, Mann-Whitney Utest)に対して、「処理後」グループを「処理前」グループと比較して観察した。
【0186】
図32:上部半分:CM10チップにおける1b期の患者16名のNeat 血漿の分析のBiomarker Wizardプロット。6kDa〜8kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを青(u)で示し、処理最終日のサンプルを赤(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。
【0187】
下部半分:処理後の付加的な2つのピークの出現を示す患者3名の代表的なスペクトル。統計的に有意に、より高度にノーマライズした強度を、M/Z6787(5.6+/-1.9 vs 27.5+/-10.4; p=0.0000014, Mann-Whitney U test)及び M/Z6984(3.1+/-1.2 vs 42.2+/-11.8; p=0.0000014, Mann-Whitney Utest)に対して、「処理後」グループを「処理前」グループと比較して観察した。
【0188】
SELDI−TOF−MSの分析後、患者(209)のサンプルをCM10チップに添加して、タンパク質の結合特性を検査した。結合はpH3.5の8スポットすべてにおいて行なわれており、チップスポットをpHを上げながら、pH3.5、4.5、5.5、及び7で洗浄した。バイオマーカーは、pH4.5以下で洗浄した場合に、チップに存在するのみであり、タンパク質のpIは約4.5〜5であることを示唆している。
【0189】
本明細書の上述部分に例挙された出版物、それらの出版物に引用された文献は、参照することによって本明細書に組み込まれる。記載した本発明の方法やシステムの様々な改良や変形は、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、当業者に明らかとなるであろう。本発明は、具体的な好ましい実施例に関して説明してきたが、本発明が請求するように、これらの具体的な実施例に不当に限定されるべきではないことは、理解されるであろう。実際には、分子生物学及び関連する分野の当業者には自明であるところの、前述の態様についての本発明を実施する上での様々な改良も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0190】
(表の簡単な説明)
表1は、PBMCのCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、1.5時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表1】












【0191】
表2は、PBMCのCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、3時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表2】












【0192】
表3は、1.5時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表1に記載したプローブ)。
【表3】













【0193】
表4は、3時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表2に記載したプローブ)。
【表4】














【0194】
表5は、HT29細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、1.5時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表5】


【0195】
表6は、HT29細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、3時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表6】





【0196】
表7は、1.5時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表5に記載したプローブ)。
【表7】



【0197】
表8は、3時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表6に記載したプローブ)。
【表8】






【0198】
表9は、A549細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、2時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表9】

【0199】
表10は、A549細胞のCYC202処理の結果を示し、後の時点でのこれら遺伝子発現に対するデータとともに、4時間で有意にダウン・レギュレートする遺伝子発現を有する遺伝子を記載する。
【表10】





【0200】
表11は、2時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表9に記載したプローブ)。
【表11】

【0201】
表12は、4時間でダウン・レギュレートする発現を有するAffymetrix Chipsのプローブに対する遺伝子の同定を示す(すなわち、表10に記載したプローブ)。
【表12】





【0202】
表13は、QPCR分析で使用したプライマーの配列を示す。
【表13】

【0203】
表14は、QPCR分析で使用した最適化されたプライマーの配列を示す。
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】図1は、ADMに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図2】図2は、FADDに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図3】図3は、PAI1に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図4】図4は、PLAUに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図5】図5は、PNUTSに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図6】図6は、TNFSF14に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図7】図7は、C/EBPαに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図8】図8は、20585に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図9】図9は、FUT4に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図10】図10は、E2F6に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図11】図11は、18747に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図12】図12は、22147に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図13】図13は、ZK1に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図14】図14は、KIAA1698に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図15】図15は、CCRL2に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図16】図16は、mycに対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較を示す。
【図17】図17は、Mcl 1に対するマイクロアレイ・データ及びQPCRデータの比較示す。
【図18】図18は、PAX遺伝子システムを使用して数人のドナーから調製した血液中でのPNUTSの発現におけるCYC202の効果(下部パネル)、及びあるドナーの遺伝子発現のCYC202性変化における保存の効果(上部パネル)を示す。
【図19】図19は、患者02-2-01(08)の薬物動態学的なデータを示し、1日目の完全な経時的データ及び5日目の投与前のある時点におけるデータを示す。CYC202の血漿濃度をμMで得る。
【図20】図20は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のPNUTSの発現におけるfold decreaseを示すグラフである。
【図21】図21は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のCEBPの発現におけるfold decreaseを示すグラフである。
【図22】図22は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のFUT4の発現におけるfold decreaseを示すグラフである。
【図23】図23は、28SrRNAレベルでノーマライズ後のNM_033410の発現におけるfold decreaseを示すグラフである。
【図24】図24:上部半分:pH9のSAXチップにおける1b期の患者16名の分画4の分析のBiomarker Wizardプロット。13.5kDa〜14.6kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを(u)で示し、処理最終日のサンプルを(t)で示す。下部半分:処理後の付加的ピークの出現を示す患者2名の代表的なスペクトル。
【図25】図25は患者の血漿の二次元ゲルを示す。Neat血漿サンプルをpH4〜7のIPGストリップに添加し、電荷により一次元においてタンパク質を分離し、次に、二次元においてSDS−PAGEにより大きさで分離した。分子量サイズマーカーは各ゲルの左にある。対象のスポットは、各ゲルの左に示される14kDa〜17kDaマーカーにちょうど存在する。下部のゲルは、変化が再現可能ということを示し、さらに2名の患者の拡大図を表わす。
【図26】図26は、オリジナルSELDI−TOF−MS特性と二次元ゲルから抽出した受動溶出サンプルとの比較を示す。ゲルを複製し、各サンプル(1日目又は10日目)における約14kDaの2つのスポットを、受動溶出又はトリプシン消化のために平行して切り取り処理した。受動溶出により、ゲルスライスからタンパク質の抽出が可能となり、SELDI−TOF−MSの分析を行なうことができる。これは上部4つの特性に示し、サンプルのオリジナルSELDI特性と比較する(最下部の2つのスペクトルで示す)。
【図27】図27:上部半分:pH9のSAXチップにおける1b期の患者16名の分画4の分析のBiomarker Wizard プロット。26.5kDa〜30.5kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを(u)で示し、処理最終日のサンプルを(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。下部半分:処理後の最初の2つのバイオマーカーに対する最初の2つのピークの減少、及び第3バイオマーカーに対する第3ピークにおける出現又は増加を示す患者2名の代表的なスペクトル。
【図28】図28は患者の血漿の二次元ゲルを示す。Neat血漿サンプルをpH4〜7のIPGストリップに添加し、電荷により一次元においてタンパク質を分離し、次に、二次元においてSDS−PAGEにより大きさで分離した。分子量サイズマーカーは各ゲルの左にある。対象スポットは、28kDaマーカーの下にちょうど存在する。
【図29】図29は209患者及び116患者に対する二次元ゲルの拡大図を示す。
【図30】図30は、pH3〜10のIPGストリップを用いた患者の血漿の二次元ゲル分析を示す。ゲルを複製し、28kDaにおけるスポットを、受動溶出又はトリプシン消化のために平行して切り取り処理した。
【図31】図31:上部半分:H50チップにおける1b期の患者16名の分画6の分析のBiomarker Wizardプロット。5kDa〜8.5kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを(u)で示し、処理最終日のサンプルを(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。下部半分:処理後の付加的な2つのピークの出現を示す患者3名の代表的なスペクトル。
【図32】図32:上部半分:CM10チップにおける1b期の患者16名のNeat 血漿の分析のBiomarker Wizardプロット。6kDa〜8kDaの質量範囲のみをここに示す。処理開始前の1日目のサンプルを(u)で示し、処理最終日のサンプルを(t)で示す。強度をノーマライズしたログはピーク強度のログをプロットし、標準強度を0にノーマライズし、よって、絶対強度にもかかわらず、サンプル群間の差異を表現する。下部半分:処理後の付加的な2つのピークの出現を示す患者3名の代表的なスペクトル。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞、細胞群、モデル動物又はヒトがCDKIで処理されていることを特徴とする細胞、細胞群、モデル動物又はヒトからサンプルを分離するステップ、及び
b)未処理のコントロールサンプルと比較して、i)表1〜12のいずれかに記載した遺伝子、又は処理したサンプルにおけるii)28kDaのタンパク質、若しくはiii)14kDaのタンパク質のうち、少なくとも1つの発現の変化を、CDKI活性の指標として、決定するステップ
を含む、CDKI活性のモニタリング方法。
【請求項2】
発現の変化が、表1〜12のいずれかに記載した遺伝子の遺伝子発現の増加又は減少であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
表1〜12に記載した遺伝子が、ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、20585、FUT4、E2F6、18747、22147、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc 及び mcl−1から選択されることを特徴とする請求項2で請求した方法。
【請求項4】
細胞群が細胞培養物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
細胞をPBMC、HT29、及びA549の細胞から選択することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
細胞群が、腫瘍細胞、PBMC又はリンパ球であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
サンプルが、血液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項8】
サンプルからRNAを抽出するステップ、及びQPCR法により遺伝子発現を検出するステップ、をさらに含む請求項1〜7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の変化が、未処理サンプルと比較して、発現の減少であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
発現の変化が、28kDaのタンパク質の減少であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
発現の変化が、未処理コントロールサンプルと比較して処理したサンプルにおいて、28kDaのタンパク質又は14kDaのタンパク質の1以上の翻訳後修飾の存在又は不在であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
28kDaのタンパク質がアポリポタンパク質A1であることを特徴とする請求項1、10又は11記載の方法。
【請求項13】
14kDaのタンパク質がトランスサイレチンであることを特徴とする請求項1又は11記載の方法。
【請求項14】
サンプルが血清、血漿若しくは組織培養上清であることを特徴とする請求項1又は10〜13記載の方法。
【請求項15】
サンプルを、タンパク質分析法により分析することを特徴とする請求項1又は10〜14記載の方法。
【請求項16】
タンパク質分析法が、SELDI−TOF−MS又は二次元PAGEによることを特徴とする請求項1又は10〜15記載の方法。
【請求項17】
CDKIを哺乳動物に投与することを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の方法。
【請求項18】
CDKIをヒトに投与することを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の方法。
【請求項19】
CDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の変化をモニタリングすることを含む、CDKIの適切な投与量を決定する方法。
【請求項20】
CDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、28kDa又は14kDaのタンパク質の発現の変化をモニタリングすることを含む、CDKIの適切な投与量を決定する方法。
【請求項21】
28kDa又は14kDaのタンパク質が、翻訳後修飾された形であることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
候補薬剤を、細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、及び未処理のコントロールサンプルと比較してi)表1〜12のいずれかに記載した遺伝子、又は処理したサンプルにおけるii)28kDaのタンパク質、若しくはiii)14kDaのタンパク質のうち、少なくとも1つの発現の変化を、CDKI活性の指標として、検出するステップを含む、CDKI様活性を有する候補薬剤の同定方法。
【請求項23】
CDKIがロスコビチンであることを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の方法。
【請求項24】
ロスコビチンがR−ロスコビチンであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
CDKI活性のモニタリングにおける、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子、又はアポリポタンパク質A1若しくはトランスサイレチンをコードする遺伝子の使用。
【請求項26】
CDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子又は28kDa若しくは14kDaのタンパク質の存在をモニタリングすることを特徴とする請求項25記載の使用。
【請求項27】
CDKIがロスコビチンであることを特徴とする請求項26記載の使用。
【請求項28】
ロスコビチンがR−ロスコビチンであることを特徴とする請求項27記載の使用。
【請求項29】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子によりコードされたタンパク質、又は28kDa若しくは14kDaのタンパク質に対する抗体を含む、ロスコビチン活性評価用キット。
【請求項30】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子に対する核酸プローブを含む、ロスコビチン活性評価用キット。
【請求項31】
表13又は14に記載した配列を有するQPCRプライマーを含む、ロスコビチン活性評価用キット。
【請求項32】
請求項1〜24のいずれかで定義した方法における、請求項29〜31のいずれかで定義したキットの使用。
【請求項33】
(i)ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、
(ii)処理した又は未処理の細胞、動物又はヒト由来のサンプルにおいて、遺伝子発現を測定するステップ、及び
(iii)未処理サンプルと比較して、処理したサンプルにおいて、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の増加又は減少を、ロスコビチン活性の指標として、検出するステップ
を含む、ロスコビチン活性のモニタリング方法。
【請求項34】
表1〜12に記載した遺伝子が、ADM、FADD、PAI1、PLAU、PNUTS、TNFSF14、C/EBPα、20585、FUT4、E2F6、18747、22147、ZK1、KIAA1698、CCRL2、myc 及び mcl−1から選択されることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
ロスコビチンを哺乳動物に投与することを特徴とする請求項33又は34記載の方法。
【請求項36】
ロスコビチンをヒトに投与することを特徴とする請求項33〜35のいずれか記載の方法。
【請求項37】
細胞群が細胞培養物であることを特徴とする請求項33又は34記載の方法。
【請求項38】
細胞をPBMC、HT29及びA549の細胞から選択することを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の存在が、腫瘍細胞又はリンパ球で検出されることを特徴とする請求項1〜38のいずれか記載の方法。
【請求項40】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子のレベルが、ロスコビチンの投与前に検出されたレベルよりも低いことを特徴とする請求項1〜39のいずれか記載の方法。
【請求項41】
ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の範囲や程度をモニタリングすることを含む、ロスコビチンの適切な投与量を決定する方法。
【請求項42】
候補薬剤を細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、及び表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の存在又は不在をモニタリングするステップを含む、ロスコビチン様活性を有する候補薬剤の同定方法。
【請求項43】
ロスコビチンがR−ロスコビチンであることを特徴とする請求項1〜42のいずれか記載の方法。
【請求項44】
ロスコビチン活性のモニタリングにおける、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の使用。
【請求項45】
ロスコビチンを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与後、表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子の存在をモニタリングすることを特徴とする請求項44記載の使用。
【請求項46】
ロスコビチンがR−ロスコビチンであることを特徴とする請求項44又は45記載の使用。
【請求項47】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子に対する抗体を含むロスコビチン活性評価用キット。
【請求項48】
表1〜12に記載した少なくとも1つの遺伝子に対する核酸プローブを含むロスコビチン活性評価用キット。
【請求項49】
請求項1〜12のいずれかで定義した方法における、請求項47又は48で定義したキットの使用。
【請求項50】
(i)CDKIを細胞、細胞群、モデル動物又はヒトに投与するステップ、
(ii)処理した又は未処理の細胞、動物又はヒト由来のサンプルにおいて、遺伝子発現を測定するステップ、及び
(iii)未処理サンプルと比較して、処理したサンプルにおいて、表1〜12のいずれかに記載した少なくとも1つの遺伝子の発現の増加又は減少を、CDKI活性の指標として、検出するステップ、
を含む、CDKI活性のモニタリング方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公表番号】特表2006−521805(P2006−521805A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506036(P2006−506036)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001334
【国際公開番号】WO2004/087954
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
バブルジェット
【出願人】(505261380)サイクラセル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】