説明

ミキサーとスパージャーを備えたバイオリアクター

流体を受容し、外部原動デバイスによって駆動される内部流体撹拌素子を用いて流体を撹拌するバイオプロセス処理に使用するためのバイオリアクター、及びそれに関連する方法が提供される。一実施形態では、このバイオリアクターは、ミキサーと可動スパージャーを有する。ミキサーは、回転自在の杖型ミキサーとすることができ、更に、磁気インペラを備えたものとすることができる。別の実施形態では、このバイオリアクターは、回転自在の杖型ミキサーと、それと一体のスパージャーを備えたものとすることができる。更に別の実施形態では、このバイオリアクターは、剛性ブレードを取り付けられた回転自在の杖型ミキサーを備えた袋から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はアメリカ仮特許出願第60/730,489(出願日:2005年10月26日)及び同第60/841,012(出願日:2006年8月30日)の利益を主張し、これらの開示をここに組み入れるものである。
本発明は、一般に、流体を保持するための容器に関し、特に、ミキサー(混合器)とスパージャー(多孔分散管)を備えたバイオリアクター(生物反応器)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイオリアクターは、細胞培養のための最適な成長条件を提供するように設計された無菌容器からなる。そのような最適条件を創生するために、バイオリアクター内の細胞培養基を細胞の増殖中頻繁に混合しなければならない。又、細胞代謝のための適正な条件を維持するために酸素等のガスを細胞培養基に送給する必要がある。諸々のパラメータを制御し最適レベルに維持するために、通常、pH及び溶存酸素プローブ(探針、検知器)が使用される。
【0003】
通常、混合インペラが、バイオリアクターの容積全体に亘って例えば気泡の形でガスを分散させる。そのようなガス気泡は、入来ガスを微小気泡に破砕する小さな穴又は孔を有するスパージャー又はスパージャー素子を通して加圧ガスを流体内へ導入することによって形成することができる。小気泡は表面積対容積比が大きいので、ガスの流体内への分散が大きく促進される。
【0004】
在来のバイオリアクターは、ステンレス鋼又はガラス製の容器を有している。しかしながら、生物薬剤製造における最近の傾向は、そのような容器からより簡単に使い捨てできる容器、特に、可撓性のプラスチック袋へ切り替わる方向にある。使い捨て袋は、滅菌処理すれば、手間のかかる洗浄や妥当性確認作業を省くことができ、その結果、容器間汚染の危険性を小さくすることができる。又、保管及び輸送のコストも低減することができる。
【0005】
本出願人の米国特許第6,494,613号には、スリーブと、スリーブ内に導入される回転自在の剛性ロッドを有する混合用袋が開示されている。スリーブ又はチューブ内に導入される剛性ロッドが、外部モータにより回転されて、袋内に混合作用を創出する。しかしながら、バイオリアクターの分野では、この混合作用だけでは、バイオリアクターの袋を作動させるには不十分である。
【特許文献1】米国特許第6,494,613号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、バイオプロセス用途に使用するための改善されたバイオリアクターを求める要望がある。望ましいバイオリアクターは、安価な態様で容易に製造することができ、簡単に使い捨てにすることができ、あるいは、使用方法が簡単でなければならない。本発明の装置は、その構造が簡素であるにもかかわらず、無菌状態の下でも、前例のないレベルの混合能力を発揮するとともに、溶存ガスの濃度を向上させるために任意のタイプのスパージャーからの気泡を流体全体に亘って完全に分配することによって細胞の生長を促進する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、流体でもってバイオプロセス処理するのに使用するための装置である。この装置は、流体を保持することができる内部画室を有する容器から成る。回転軸線の周りに回転自在のミキサーが、流体を撹拌し、スパージャーが流体内に気泡を発生させる。スパージャーをその回転軸線の周りに回転させるために原動デバイスが設けられる。ミキサーによって創出される流体の混合作用と、回転軸線の周りに回転するスパージャーの回転運動とが相俟って、スパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成し、もって、流体中の溶存ガスの濃度を改善する。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記ミキサーは、スパージャーに連結される。別の実施形態においては、前記原動デバイスは、スパージャーをその回転軸線の周りに回転させるためのモータとすることができる。更に別の実施形態においては、前記原動デバイスは、ミキサーを回転させるものとすることができる。
としてもよい。
【0009】
特に好ましい実施形態においては、前記容器は、内部画室内に突入する可撓性スリーブを備えた袋から成る。更に、前記ミキサーは、該スリーブ内に挿入するための混合ロッドから成る。この混合ロッドは、スリーブの回転を誘起し、流体に露呈されることなく流体を撹拌する。上述したどの実施形態においても、スパージャーは、多孔材を介して容器内の流体にガスを送給するための細長可撓性チューブから成るものとすることができ、ミキサーは、剛性のブレードを含むものとすることができる。
【0010】
本発明の別の側面によれば、流体を受容するためのバイオリアクターが提供される。このバイオリアクターは、流体を受容し、保持することができる内部画室を有する容器から成る。容器は、その内部画室内に突入し、静止シールを介して該容器に結合された細長可撓性スリーブを含む。スリーブ内に挿入するためのミキサーが設けられる。このミキサーは、該スリーブ全体をその長手軸線の周りに回転させることなく該スリーブの回転を誘起し、流体に露呈されることなく流体を撹拌する。容器内の流体に供給されるガスから気泡を発生させるためのスパージャーも設けられる。この構成により、ミキサーによって創出される流体の混合作用が、スパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成し、もって、流体中の溶存ガスの濃度を改善する。
【0011】
好ましくは、前記スパージャーは、前記静止シールを形成する溶接によって前記容器に結合され、容器のフロア(底壁)に近接したところに配置される。特に好ましくは、スパージャーは、前記可撓性スリーブに結合され、多孔材を介して容器内の流体にガスを送給するための細長可撓性チューブから成るものとする。又、容器は、又、細長可撓性チューブに連通する少なくとも1つのポートを有するものとすることが好ましく、ポートは、容器の内部画室の外部に設けることができる。
【0012】
一実施形態においては、このバイオリアクターは、更に、流体を撹拌するための第2ミキサーを有する。好ましくは、第2ミキサーは、容器のフロア(底壁)に近接したところに位置するインペラから成るものとすることが好ましい。混合作用を高めるために、スリーブに剛性のブレードを担持させることができる。更に、容器は、使い捨て性を高めるために可撓性袋とすることができる。
【0013】
本発明の更に別の側面によれば、細胞を培養するのに有用な流体を受容するためのバイオリアクターが提供される。このバイオリアクターは、流体を受容し、保持することができる内部画室を有する容器と、内部画室内に突入しており、剛性のブレードを担持することができる可撓性スリーブから成る。スリーブ内に挿入されたミキサーが、流体に接触することなくスリーブに回転を誘起し、流体を撹拌する。例えば可撓性チューブ又は可撓性導管に連通する外部ポートを通して袋内の流体に供給されるガスから気泡を発生させるためのスパージャーが、ミキサーに連結される。上記他の実施形態の場合と同様に、ミキサーによって創出される流体内の混合作用が、ミキサーに連結されたスパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成し、もって、流体中の溶存ガスの濃度を改善する。
【0014】
本発明の更に別の側面によれば、流体を受容し撹拌するための装置が提供される。この装置は、流体を受容し、保持することができる内部画室を有する可撓性袋のような容器から成る。互いに離隔され独立して作動することができる第1及び第2流体撹拌素子が、容器又は袋内の流体を撹拌する。
【0015】
一実施形態においては、第1及び第2モータが、それぞれ独立して第1及び第2流体撹拌素子を回転させる。好ましくは、第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方は、容器の内部画室内に配置され、磁気結合を介して回転されるインペラから成る。あるいは別法として、第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方は、超伝導素子によって浮上される磁気インペラから成る。更に別の変形例として、容器の内部画室内に突入する可撓性スリーブを設けることができる。その場合、流体撹拌素子は、該スリーブ内に挿入され、モータによって回転される剛性ロッドによって構成する。いずれにしても、第1流体撹拌素子と第2流体撹拌素子とは、対向して配置することが好ましい。
【0016】
本発明の更に別の側面によれば、容器内に保持された流体を用いてバイオプロセス処理する方法が提供される。この方法は、流体を撹拌するためにミキサーを容器内で回転させるのと併行して、ガスを流体全体に亘って分配するのを助成し、流体中の溶存ガスの濃度を改善するためにスパージャーを容器内でその周りに運動させる(例えば、回転させる)工程から成る。好ましくは、この方法は、更に、ミキサーとスパージャーを結合する工程と、スリーブを容器の内部画室内に設け、該スリーブに混合ロッドを挿入する工程を含む。
【0017】
本発明の更に別の側面は、バイオリアクターを製造する方法である。この方法は、流体を受容し、保持することができる内部画室を有することができる容器を設け、容器の内部画室内に細長可撓性スリーブを突入させ、静止シールを介して該容器に結合する工程を含む。この方法は、更に、流体に供給されるガスから気泡を発生させるためのスパージャーを該容器に取り付ける工程と、気泡を流体全体に亘って分配するために該スリーブ全体をその長手軸線の周りに回転させることなく該スリーブを内部画室内で運動させる工程を含む。
【0018】
一実施形態においては、前記取り付け工程は、前記スリーブを前記スパージャーに取り付ける工程から成り、前記運動行程は、前記スパージャーを運動させることから成る。別の実施形態においては、前記取り付け工程は、前記スパージャーを前記容器に溶接する工程から成る。更に別の実施形態においては、前記取り付け工程は、前記スパージャーの一部を構成する可撓性チューブを前記容器に設けられたポートに接続する工程から成る。
【0019】
本発明の更に別の側面は、流体を撹拌する方法が提供される。この方法は、可撓性袋から成る容器を設ける工程と、該袋内の流体を撹拌するための互いに離隔され独立して作動することができる第1及び第2流体撹拌素子を設ける工程から成る流体撹拌方法である。この方法は、更に、それぞれ独立して第1及び第2流体撹拌素子を回転させるための第1及び第2モータを設ける工程を含む。第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方が容器の内部画室内に配置されたインペラから成る場合は、該インペラを磁気結合を介して回転させる工程を含む。あるいは、容器の内部画室内へスリーブを突入させる構成とした場合は、前記流体撹拌素子は、該スリーブ内に挿入された剛性ロッドから成るものとする。その場合、この方法は、容器の内部画室内においてスリーブの回転を誘起するために該剛性ロッドを用いる工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照すると、バイオリアクターとして使用するための本発明の容器10の一実施形態が示されている。この実施形態では、容器10は、撹拌又は混合すべき流体を受容し保持するための内部画室Cを有する可撓性の、又は折り畳み可能な、又は圧潰可能な袋11から成る。(ここで、「流体」とは、液体、ガス、固形懸濁物等を含む流動可能な任意の物質を意味する。)上述した米国特許第6,494,613号に記載されているように、折り畳み可能な袋11の場合は、外側の剛性コンテナ(容器)(図示せず)によって支持することができ、それによって袋内の流体をも支持する。ただし、容器10自体を剛性プラスチック、ガラス、金属等の適当な材料で形成された剛性コンテナとすることも本発明の範囲内である。
【0021】
図1に示される実施形態では、流体を攪拌するための容器10又は袋11の内部画室Cに可撓性スリーブ12が突入されている。スリーブ12は、容器10又は袋11内でキャビティを形成するように画室C内に位置する閉鎖端と、少なくともなにがしかの曲がりを有する剛性の混合ロッド14のようなミキサーを受容するための開口端を有する。スリーブ12は、その開口端のところで容器10又は袋11に結合され、シール16を介して容器10又は袋11内に突入されている。シール16は、好ましくは気密シールであり、スリーブ12の開口端と容器10又は袋11の開口又は穴との間に環形状に形成された周溶接によって固定的に(静止シールとして)形成することができる。この取り付け態様の結果として、スリーブ12は、それ自体の長手軸線の周りに全体として回転することはできないが、流体を撹拌し、所望の混合作用を得るために内部画室C内でその周りに運動することができる(動作矢印B参照)。
【0022】
剛性の混合ロッド14の遠位端は、スリーブ12内へ該スリーブの遠位端即ち閉鎖端に係合するように挿入することができ、上記米国特許第6,494,613号に開示されているような随意選択のスペーサによってスリーブ内に支持することができる。ロッド14の他端即ち近位端は、回転モータのような原動デバイスに結合又は連結することができる。このモータが駆動されると、ロッド14を全体としてその長手軸線の周りに回転させる(動作矢印A参照)。この運動の結果として、スリーブ12は、それ自体の長手軸線の周りに全体として回転することなく、内部画室C内で画室の周りに回転して流体を撹拌する。更に、スリーブ12は内部画室C内では閉鎖されているので、混合ロッド14は、流体に直接接触することは決してなく、従って、混合作業終了後、スリーブ12から抜き取り、洗浄する必要なしに、この同じ容器10又は他の同様なタイプの容器による別の混合用途に再使用することができる。
【0023】
本発明の一側面によれば、バイオリアクター容器10に可動スパージャー20が設けられる。図1の実施形態では、スパージャー20は、スリーブ12の遠位端(閉鎖端)に結合された多孔材22から成る。この結合は、バンド24、結束紐、ファスナー又はそれに類する他の結合手段によって行うことができ、あるいは、溶接やそれに類する結合手段(例えば、接着剤)によって行ってもよい。
【0024】
この多孔材22は、内部導管(剛性のパイプであってもよいが、図示の例では可撓性チューブ26からなるものとして示されている)によって容器10又は袋11に形成されたポート28に接続される。このチューブ26は、別のバンド24、結束紐、又はその他の結合部材を用いることなどによりスリーブ12の他の部位にも結合することができる。ポート28は、気密にシールすることができ、遠隔供給源(図示せず)からチューブ26へ、従って多孔材22へガスを供給するための導管30のような外部供給管に接続される。ただし、可撓性チューブ26を受容するためのポート28としては、容器10又は袋11に形成された任意の開口を用いることも本発明の範囲内であり、その場合、チューブ26は、単に供給管30の延長管とすることもできる。
【0025】
多孔材22は、流体の「一方向」のみの通過を許すものであることが好ましい。換言すれば、ガスが多孔材を通して近接する流体(容器10又は袋11内の流体)内へ流れることができるが、流体もガスも多孔材を通ってチューブ26内へは流入することができないものであることが好ましい。従って、容器10又は袋11が気密にシールされている場合、通気孔、通気ポート又は排気ポート32を設けることができる。好ましくは、微生物等の望ましくない汚染物の侵入を防止するためにポート32には、フィルター(図示せず)又はそれに類する手段を設ける。
【0026】
作動において、ミキサーのロッド14を回転させ、スリーブ12の運動を誘起する。先に述べたように、スリーブ12はそれ自体の長手軸線の周りには回転しない。スリーブ12のこの運動は、それに結合されているスパージャー20の多孔材22を内部画室C内でスリーブ12と一緒に画室の周りに、好ましくは容器10のフロアに近接して回動させる。この運動は、スパージャー20からの気泡を内部画室C全体に分配するのを助成し、それによって流体内の溶存ガスの濃度を改善する。(溶存ガスの濃度は、単に供給管30へのガスの供給量を調節することによって制御することができる。)
【0027】
図2は、本発明の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、多くの点で図1に示されたものと類似しているが、「杖」様ミキサー14による流体の撹拌作用に加えて、容器10内に配置される第2ミキサーにより追加の撹拌能力が得られる。即ち、図2の実施形態では、第2ミキサーは、好ましくは、回転自在のスターラー(攪拌器)から成り、より好ましくは、1枚又は1枚以上の剛性ブレード40aを有する図示のインペラのような全体として回転自在のインペラ40から成る。好ましくは、このインペラ40は、容器10(剛性容器であっても、可撓性袋であってもよい)のフロアに近接したところに配置する。最も好ましい配置は、図示の実施形態において「杖」様ミキサー14にほぼ対向する位置に設置することであり、それによって、内部画室Cの上方部分においても、下方部分においても撹拌作用が得られるようにする。
【0028】
第2ミキサーを第2の「杖」様(型)ミキサー(図示せず)によって構成することも本発明の範囲内であるが、全体が回転するインペラ40を用いることが好ましい。その場合、インペラ40は、1つ又は1つ以上の磁石40bを単独で具備するか、マトリックス材と組み合わせた1つ又は1つ以上の磁石40bを具備するものとすることができる。これらの磁石40bは、容器10の壁を貫通して外部原動デバイス(デバイスDと駆動磁石M)に磁気結合を介して接続することができ、この磁気結合を用いて流体を撹拌するための回転を誘起することができる。容器10は、更に、インペラ40を受容するための支柱Pを備え、好ましくは、インペラを少なくともその休止位置において支持するための軸受を有するものとすることができる。この軸受は、例えば、支柱Pを支持する剛性のディスク状構造体の一部分として示された周縁受け座表面、又は、インペラ40を支持する別個のころ軸受素子から成るものとすることができる。又、インペラ40は、支柱Pには直接連結せず、駆動磁石Mに代わる、又は駆動磁石Mに加えて設けられる熱的に遮蔽された超伝導素子によって浮上、及び、又は回転される構成としてもよい。いずれにしても、この実施形態は、流体を受容し保持することができる内部画室を有する折り畳み可能な気密シールされた容器10と、流体を全体的に完全に混合し、及び、又は、溶存ガスの濃度を改善するためにスパージャー20からの気泡の流体全体に亘っての分配を向上させるための互いに独立して回転することができる第1及び第2流体撹拌素子を有することを特徴とする。
【0029】
図3は、混合容器10内に回転自在スリーブ12を設けた更に別の実施形態を示す。この実施形態のガス拡散は、図1及び2の実施形態の場合とは異なり、例えば容器10のフロアに連結することによって容器10と一体に形成されたスパージャー20によって行われる。このスパージャー20は、外部供給源からガスを送給するための外部導管30に接続された多孔材22から成る。他の実施形態の場合と同様に、この多孔材22は、ガス状散布気泡を容器10の内部画室C内へ導入するためのガス透過性又は多孔フィルム22a(図3A参照)によって構成することができる。フィルム22aは、溶接等によって容器10に直接結合してもよく、あるいは、導管30に接続するための剛性のポート22bに結合してもよい。
【0030】
図4は、図1に示されたものと基本的な構造が類似した回転自在の杖型ミキサーを有する容器10の更に別の変型実施形態を示す。この実施形態では、少なくとも1枚の、好ましくは対向した1対の剛性ブレード60が、溶接、ファスナー、又はその他の結合手段によって可撓性スリーブ12に直接結合される。かくして、これらのブレード60は、スリーブ12が容器10(単に図示の目的で円筒形として示されているが、例えば袋11)の内部画室C内をその周りに回転するにつれて、流体内を回動し、撹拌を助成する。スリーブ12は、やはりそれ自体の長手軸線の周りには回転せず、(従って、動的シールを設ける必要がない。)好ましくは、ブレード60は、半径方向に延設し、最も好ましくは、1対のブレードを対向して配置し、スリーブ12の長手軸線に沿って離隔させる。スパージ(散布)機能は、随意選択として設けることができるスパージャー(図4には示されていない)によって得ることができる。スパージャーは、図1及び2に示されるようにスリーブ12に結合してもよく、あるいは、図3に示されるように容器10と一体に形成することもできる。
【0031】
本発明の上記の教示に照らして、いろいろな改変及び変更が可能である。例えば、流体のpH、酸素含有量、温度等の特性を検出するのを容易にするために容器10内に用いる部品として使い捨て手段を設けることが望ましい場合もある。先に略述したように、多孔材22は、スリーブ12と一体に形成してもよく、剛性ブレード60も同様にスリーブ12と一体に形成してもよい。本発明のいろいろな実施形態の上記の記載は、例示及び説明の目的でなされたものであり、この記載は、本発明をそこに開示された形態に厳密に限定することを企図したものではない。ここに説明された実施形態は、本発明の原理とその実用的用途の好適な例示であり、それによって、当業者が本発明をいろいろな実施形態及びその変形形態で利用することができ、企図した特定の用途に適用することができるようにする。そのようなすべての改変及び変形は、本出願の請求項によって規定される本発明の範囲内であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるバイオリアクター容器の一部を破除した透視図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態によるバイオリアクター容器の一部を破除した透視図である。
【図2A】図2Aは、図2の容器の一部分を破除した拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の更に別の実施形態によるバイオリアクター容器の一部を破除した透視図である。
【図3A】図3Aは、図3の容器の一部分を破除した拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の更に別の実施形態によるバイオリアクター容器の一部を破除した透視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 バイオリアクター容器、混合容器、
11 可撓性袋、折り畳み可能な袋、袋
12 可撓性スリーブ、スリーブ
12 回転自在スリーブ
14 杖様ミキサー、混合ロッド、剛性ロッド
16 静止シール
20 可動スパージャー、スパージャー
22 多孔材
22a ガス透過性フィルム、多孔フィルム
22b ポート
24 バンド
26 可撓性チューブ
28 ポート
30 供給管、外部導管、導管
32 通気孔、排気ポート
40 インペラ
40a 剛性ブレード
40b 磁石
60 剛性ブレード
A 動作矢印
B 動作矢印
C 内部画室
D デバイス
M 駆動磁石
P 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体でもってバイオプロセス処理するのに使用するための装置であって、
流体を保持することができる内部画室を有する容器と、
流体を撹拌するために回転軸線の周りに回転自在のミキサーと、
流体にガスを供給するためのスパージャーと、
前記スパージャーをその回転軸線の周りに回転させるための原動デバイスと、
から成り、前記ミキサーによって創出される流体の混合作用と、回転軸線の周りに回転する前記スパージャーの回転運動とが相俟って、流体中の溶存ガスの濃度を改善するために該スパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ミキサーは、前記スパージャーに結合されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記原動デバイスは、前記スパージャーをその回転軸線の周りに回転させるためのモータから成る請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記原動デバイスは、前記ミキサーを回転させる請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記容器は、前記内部画室内に突入する可撓性スリーブを備えた袋から成る請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ミキサーは、前記スリーブの回転を誘起し、前記流体に露呈されることなく流体を撹拌するために該スリーブ内に挿入するための混合ロッドから成る請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記スパージャーは、多孔材を介して前記容器内の流体にガスを送給するための細長可撓性チューブから成る請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ミキサーは、剛性のブレードを含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
流体を受容するためのバイオリアクターであって、
流体を受容し、保持することができる内部画室を有する容器であって、該内部画室内に突入し、静止シールを介して該容器に結合された細長可撓性スリーブを含む容器と、
前記流体に露呈されることなく流体を撹拌するために前記スリーブ内に挿入するためのミキサーであって、該スリーブ全体をその長手軸線の周りに回転させることなく該スリーブの回転を誘起するミキサーと、
前記容器内の流体にガスを供給するためのスパージャーと、
から成り、前記ミキサーによって創出される流体の混合作用が、流体中の溶存ガスの濃度を改善するために前記スパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成することを特徴とするバイオリアクター。
【請求項10】
前記スパージャーは、静止シールを形成する溶接によって前記容器に結合されている請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項11】
前記スパージャーは、前記容器のフロアに近接したところに配置されている請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項12】
前記スパージャーは、前記可撓性スリーブに結合されている請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項13】
前記スパージャーは、前記容器内の流体にガスを送給するための細長可撓性チューブから成る請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項14】
前記容器は、前記細長可撓性チューブに連通する少なくとも1つのポートを有する請求項13に記載のバイオリアクター。
【請求項15】
前記スパージャーは、前記ガスから気泡を形成するための多孔材を含む請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項16】
前記流体を撹拌するための第2ミキサーを有する請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項17】
前記第2ミキサーは、インペラから成る請求項16に記載のバイオリアクター。
【請求項18】
前記第2ミキサーは、前記容器のフロアに近接したところに配置されている請求項16に記載のバイオリアクター。
【請求項19】
前記スリーブは、剛性のブレードを担持している請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項20】
前記容器は、可撓性袋から成る請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項21】
細胞を培養するのに有用な流体を受容するためのバイオリアクターであって、
流体を受容し、保持することができる内部画室を有する容器であって該内部画室内に突入した細長可撓性スリーブを含む容器と、
前記スリーブ内に挿入されており、前記流体に接触することなく該流体を撹拌するために該スリーブの回転を誘起するミキサーと、
前記容器内の流体にガスを供給するために前記ミキサーに結合されたスパージャーと、から成り、前記ミキサーによって創出される流体内の混合作用が、前記スパージャーからの気泡を流体全体に亘って分配するのを助成し、該流体中の溶存ガスの濃度を改善することを特徴とするバイオリアクター。
【請求項22】
前記容器は、可撓性袋から成る請求項21に記載のバイオリアクター。
【請求項23】
前記スパージャーは、チューブを有し、該チューブは、その一端において前記容器に設けられたポートに連通し、チューブの他端には、該可撓性チューブを通して供給されるガスから気泡を発生させるための多孔材が設けられている請求項21に記載のバイオリアクター。
【請求項24】
前記容器は、通気ポートを有している請求項21に記載のバイオリアクター。
【請求項25】
前記容器内にインペラが設けられている請求項21に記載のバイオリアクター。
【請求項26】
前記スリーブに剛性ブレードが取り付けられている請求項21に記載のバイオリアクター。
【請求項27】
流体を受容し撹拌するための装置であって、
流体を受容し、保持することができる内部画室を有する容器と、
該容器内の流体を撹拌するための、互いに離隔され独立して作動することができる第1及び第2流体撹拌素子とから成ることを特徴とする装置。
【請求項28】
前記第1及び第2流体撹拌素子をそれぞれ独立して回転させるための第1及び第2モータを含む請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方は、前記容器の内部画室内に配置され、磁気結合を介して回転されるインペラから成る請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方は、超伝導素子によって浮上される磁気インペラから成る請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記容器の内部画室内に突入した可撓性スリーブが設けられており、前記流体撹拌素子は、該スリーブ内に挿入され、モータによって回転される剛性ロッドから成る請求項27に記載の装置。
【請求項32】
前記剛性ロッドを回転するためのモータを含む請求項27に記載の装置。
【請求項33】
前記第1流体撹拌素子と第2流体撹拌素子とは、対向して配置されている請求項27に記載の装置。
【請求項34】
前記容器は、可撓性袋から成る請求項27に記載の装置。
【請求項35】
スパージャーを含む請求項27に記載の装置。
【請求項36】
容器内に保持された流体を用いてバイオプロセス処理する方法であって、
流体を撹拌するためにミキサーを容器内で回転させる工程と、
それと併行して、スパージャーからの気泡を前記流体全体に亘って分配するのを助成し、流体中の溶存ガスの濃度を改善するために該スパージャーを該容器内でその周りに運動させる工程とから成ることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記ミキサーとスパージャーを結合する工程を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記スリーブを前記容器の内部画室内に設け、該スリーブに混合ロッドを挿入する工程を含む請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記スパージャーを運動させる工程は、スパージャーを回転させることから成る請求項36に記載の心合方法。
【請求項40】
バイオリアクターを製造する方法であって、
流体を受容し、保持することができる内部画室を有することができる容器であって、該容器の内部画室内に突入させ、静止シールを介して該容器に結合された細長可撓性スリーブを含む容器を準備する工程と、
前記流体に供給されるガスから気泡を発生させるためのスパージャーを該容器に取り付ける工程と、
気泡を流体全体に亘って分配するために該スリーブ全体をその長手軸線の周りに回転させることなく該スリーブを前記内部画室内で運動させる工程と、
から成ることを特徴とする方法。
【請求項41】
スパージャーを容器に取り付ける前記取り付け工程は、前記スリーブを該スパージャーに取り付ける工程から成り、スリーブを運動させる前記運動工程は、前記スパージャーを運動させることから成る請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記取り付け工程は、前記スパージャーを前記容器に溶接する工程から成る請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記取り付け工程は、前記スパージャーの一部を構成する可撓性チューブを前記容器に設けられたポートに接続する工程から成る請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記容器内にインペラを設ける工程を含む請求項40に記載の方法。
【請求項45】
流体でもってバイオプロセス処理するのに使用するための容器を製造する方法であって、
流体を保持するための容器を準備する工程と、
該容器内の流体を撹拌するための互いに離隔され独立して作動することができる第1及び第2流体撹拌素子を設ける工程と、
から成ることを特徴とする方法。
【請求項46】
前記第1及び第2流体撹拌素子をそれぞれ独立して回転させるための第1及び第2モータを設ける工程を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1及び第2流体撹拌素子のうちの少なくとも一方は、前記容器の内部画室内に配置されたインペラから成り、該インペラを磁気結合を介して回転させる工程を含む請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記容器の内部画室内に突入するスリーブを設ける工程を含み、前記流体撹拌素子は、該スリーブ内に挿入された剛性ロッドから成り、該剛性ロッドを用いて該内部画室内で該スリーブの回転を誘起する工程を含む請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記容器を折り畳む工程を含む請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記流体にガスをスパージする工程を含む請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−513140(P2009−513140A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538044(P2008−538044)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/042161
【国際公開番号】WO2007/050971
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(503131526)リーブテック,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】LEVTECH,INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 300,1509 Bull Lea Road,Lexington,KY 40511 USA
【Fターム(参考)】