説明

ミキシングヘッド装置

【課題】混合物を左右均等に安定して吐出可能なL形タイプのミキシングヘッド装置を提供する。
【解決手段】ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを合流させてこれらの混合物4を生成するミキシングヘッド本体1と、このミキシングヘッド本体1から混合物4を吐出するノズル2とを有していて、このノズル2とミキシングヘッド本体1とが略直交して配置されている。ノズルの先端2a側に混合物4を分割して吐出可能な分割ピン6が設けられていると共に、分割ピン6の角度位置を固定したまま、ミキシングヘッド本体1からの混合物4の吐出角度を変更可能な角度変更機構が設けられていることミキシングヘッド装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミキシングヘッド装置に関し、詳しくは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを合流させてこれら混合物を生成するミキシングヘッド本体と、このミキシングヘッド本体から前記混合物を吐出するノズルとを有していて、このノズルと前記ミキシングヘッド本体とが略直交して配置されているミキシングヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱ボードなどに多用される硬質ポリウレタンフォームパネルを製造する場合、液状ポリオール成分と液状ポリイソシアネート成分とを高圧あるいは低圧ミキシングヘッド装置の混合部に送給して合流させ、ここで混合・撹拌して反応させて、所定の型枠内あるいは面材上に吐出して行う2液混合方式が一般的である。
【0003】
高圧ミキシングヘッド装置としては、液状ポリオール成分と液状ポリイソシアネート成分とをミキシングヘッド装置の混合部に送給する方式に、ミキシングヘッド本体と吐出ノズルが直線状に配置されている直突タイプと、ミキシングヘッド本体と吐出ノズルが略直角に配置されているL形タイプとの2種類があり、この内、後者は混合性とスムースフローが要求されるシステムに多く採用されている。
【0004】
本発明者は、L形タイプのミキシングヘッドの機能を一層高めるため、吐出ノズルから吐出される混合物の均一な散布を行うべく、吐出ノズル先端に分割ピンを設けた装置を開発した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、L形タイプのミキシングヘッド装置の吐出ノズル先端に分割ピンを設けると、左右にわずかな吐出差が生じることがあり、均等な硬質ポリウレタンフォームパネルを製造するには、未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、混合物を左右均等に安定して吐出可能なL形タイプのミキシングヘッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係るミキシングヘッド装置の特徴構成は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを合流させてこれらの混合物を生成するミキシングヘッド本体と、このミキシングヘッド本体から前記混合物を吐出するノズルとを有していて、このノズルと前記ミキシングヘッド本体とが略直交して配置されている装置において、前記ノズルの先端側に前記混合物を分割して吐出可能な分割供給装置が設けられていると共に、前記分割供給装置の角度位置を固定したまま、前記ミキシングヘッド本体からの混合物の吐出角度を変更可能な角度変更機構が設けられていることにある。
【0008】
この構成によれば、ミキシングヘッド本体から混合物がノズルを通って吐出される際、ノズルの先端側に混合物を分割して吐出可能な分割供給装置の存在により、パネル構成材上のできる限り広い面積にわたって混合物を吐出・散布でき、あるいは、パネル構成材を左右に2室配置して、それぞれに均一に分割し、吐出・散布できる。しかも、ノズル先端から吐出される混合物を左右均等に吐出すべく最適な角度位置を選択することができる角度変更機構により、可能な限り正確に左右に二分割されるように位置を決定することができる。しかも、分割供給装置をノズルの先端側に設けると共に、ミキシングヘッド本体に角度変更機構を設けるのみであるため、特別高価な装置を必要とすることがない。
【0009】
その結果、安価な装置で混合物を左右均等に安定して吐出可能なL形タイプのミキシングヘッド装置を提供することができた。
【0010】
前記分割供給装置は、前記ノズル先端に装着された分割ピンであることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ノズルから混合物を広い面積にわたって効率よく分散・吐出でき、しかも安価な装置で、早い流速で吐出される混合物の流れを確実に部分的に抑制して混合物の乱流を調整することができる。
【0012】
前記混合物の吐出角度を変更可能な角度変更機構が、前記ミキシングヘッド本体を軸心周りに回転する機構であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、安価な装置で、早い流速で吐出される混合物の流れを吐出直前で調整可能なため、ノズル先端から吐出される混合物の吐出を、最適な角度位置を選択して、可能な限り正確に左右に二分割されるように位置を容易に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るミキシングヘッド装置の要部を説明する断面図であり、図2はノズル内部の構成を説明する断面図であり、図3は図1のミキシングヘッド装置を備えた硬質ポリウレタンフォームパネルの製造装置の一例を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態に係る硬質ポリウレタンフォームパネル製造において使用するミキシングヘッド装置は、図1に示すように、注入ロッドP1を備えたピストンPを内部に有するミキシングヘッド本体1と、ミキシングヘッド本体1に導入されるポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合物(以下、単に「混合物」ということがある)を合流させ、これを吐出する円筒状のノズル2を略直交する方向に接続している。つまり、ミキシングヘッド本体1とノズル2とがL形を形成している。図1で、Gはポリオール成分とポリイソシアネート成分との合流点であり、左右(図1では紙面に対して垂直方向)からこの合流点Gに向けて前記各成分が導入され混合される。ノズル2の内径は、ミキシングヘッド本体1の合流点Gでの内径よりも約10〜20%程度拡径されていて、幾分減速されつつ、混合物4が勢い良く吐出されるようになっている。なお、図番3はノズル内をクリーニングするためのクリーニングロッド3aを備えたクリーニング装置である。
【0016】
ミキシングヘッド本体1に導入された各成分は、混合され撹拌されて混合物4となり、ノズル2内を下流側に送り出され、型枠内に配置された下面材上などに対して、ノズル先端の拡径部2aより勢い良く吐出される。このノズル先端の拡径部2a内には、分割ピン6が取り付けられていて、パネル構成材上のできる限り広い面積にわたって混合物を吐出・散布させるようになっており、あるいは、パネル構成材を左右に2室配置して、それぞれに均一に分割し、吐出・散布できるようになっている。このようにすることにより、バッチ式のパネル製造装置においても、効果的で安価に硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができる。
【0017】
ミキシングヘッド本体は、型枠の位置に対する、ノズル先端の拡径部2aの角度位置を固定したまま、ミキシングヘッド本体を軸心周りに回転する機構が設けられている。すなわち、ノズル先端2aの角度位置を固定しておき、ミキシングヘッド本体1を軸心周りに回転させて、混合物4が左右に均等に吐出されるように、可能な限り正確に二分割されるように角度位置を決定する。この場合、ミキシングヘッド本体1を回転させた後、ノズル先端2aを、位置固定可能な締め付けボルトなどのストッパー機構で固定すると都合がよい。
【0018】
ミキシングヘッド本体1から吐出される混合物は、ノズル内でその方向を約90°変更させられた後は、図2に拡大して示すように、吐出される距離が遠いほど早く流れる傾向を維持しつつ、ノズル内で不規則に変化しながら乱流を生起して、混合物の均等な吐出を阻害するが、ノズル先端の拡径部2a内の分割ピン6により、流量(単位面積当たり)が修正される。つまり、ミキシングヘッド本体1を、その軸心周りに回転することによってノズル2から吐出される混合物の流量の乱れを修正して、可能な限り左右に均等に吐出させる角度位置を選ぶことができ、混合物の吐出時の流量を左右に均等化し、吐出初期においても乱れの少ない混合物をパネル構成材上に安定して吐出させることができる。
【0019】
上記ミキシングヘッド装置を備えた硬質ポリウレタンフォームパネルの製造装置の一例として、図3に硬質ポリウレタンフォームパネルのバッチ式製造装置を示す。下面基板5上を、図外の下面材供給装置から下面材7が配置されると共に、下面材7の上には、型枠8が配設され、成形空間が形成される。その型枠内の一端側略中央上部に、ミキシングヘッド本体1が配置され、そのノズル先端2aから、混合物4が分岐されつつ吐出される。そして、一端側から、他端側へミキシングヘッド本体1を移動させ、型枠全体に混合物4を行き渡らせる。図3において破線部は、混合物4の吐出されるおよその範囲を示す。もっとも、ミキシングヘッド本体1を移動させずに、型枠8を移動させるようにしてもよい。最終的に、上面材(図示略)が更に発泡樹脂の上面に配置されて、サンドイッチパネル構造とされ、型枠から取り外すことによってサンドイッチ状の硬質ポリウレタンフォームパネルが順次形成される。
【0020】
この場合、ノズル先端2aから分岐され吐出され混合物4は、ノズル先端2aの分割ピン6により左右に分割・吐出されるが、吐出する直前の左右の混合物の流量を流量計で測定すると共に、左右の流量の差を出来るだけ少なくする位置となるように、ミキシングヘッド本体1を軸心周りに回転させ、角度位置を選択・決定する。おおよその目安としては、左右の流量の差異が±1%以内程度になるように、ミキシングヘッド本体1を軸心周りに回転(ミキシングヘッド本体1の移動方向に対して、左右15°程度以内)させ、位置固定する。
【0021】
本実施形態では、以上のように構成されていることから、ミキシングヘッド本体1内の導入された混合物は、ややもすればノズル内で流速の偏りが生じ易くなりがちであるところ、ミキシングヘッド本体1を回転させることにより、ノズル先端から吐出される左右の混合物の流れが均等化され、ノズル先端2aからの吐出パターンを安定できると共に、吐出初期の流れの乱れを生じ難くできる。
【0022】
混合物の吐出が終わると、ミキシングヘッド本体1およびノズル2内をクリーニングするため、混合液および発泡したフォームを押し出す。
【0023】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態において、型枠を構成する部材は、硬質ポリウレタンフォームの発泡硬化時の発泡圧によって変形しなければよく、特に限定されるものではないが、アルミニウムや鉄などの金属製にて構成されていることが好ましい。型枠は、少なくとも成形キャビティーを形成する面とガス抜き溝を設けることが好ましい。そして、ノズルと型枠とを相対移動可能に構成してもよい。
(2)上記実施形態では、バッチ式装置において、型枠内に1枚のパネルを製造する例を挙げて説明したが、型枠内の幅方向の中央を二分割し、幅方向の左右にそれぞれ1枚づつ、合計2枚のパネルを製造するようにしてもよい。この場合も、本実施形態のミキシングヘッド装置を用いると均等性に優れているので、均質なパネルが同時に2枚製造できるようになる。
(3)本実施形態に係る硬質ポリウレタンフォームパネル製造において使用する原料は、公知のポリウレタンフォームを広く使用することができ、いわゆるイソシアヌレートフォームを使用することもできる。パネルを構成する硬質ポリウレタンフォームの密度は、20〜50kg/m、より好ましくは25〜45kg/mである。本実施形態により製造する硬質ポリウレタンフォームパネルの大きさは特に限定されないが、幅が1500mm以下であることが好ましい。厚さについては、特に限定されないが、フォームの充填性が困難である薄物(10〜30mm)に特にその効果を発揮する。とりわけ長いパネルの製造において、厚みの薄いパネルを製造することが有利である。
(4)本実施形態の硬質ポリウレタンフォームパネルを構成する面材としては、クラフト紙等の紙、樹脂フィルム、アルミフォイル等が使用可能であり、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムやアルミ箔をラミネートした積層面材も使用できる。
(5)上記実施形態では、ミキシングヘッド装置として高圧用を例として挙げたが、本発明はギアポンプなどを用いた低圧用のミキシングヘッド装置にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るミキシングヘッド装置を説明する要部断面模式図
【図2】図1のミキシングヘッド装置を構成するノズルの断面模式図
【図3】図1のミキシングヘッド装置を備えた硬質ポリウレタンフォームパネルの製造装置の要部斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 ミキシングヘッド本体
2 ノズル
2a ノズル先端
4 混合物
6 分割ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを合流させてこれらの混合物を生成するミキシングヘッド本体と、このミキシングヘッド本体から前記混合物を吐出するノズルとを有していて、このノズルと前記ミキシングヘッド本体とが略直交して配置されているミキシングヘッド装置において、
前記ノズルの先端側に前記混合物を分割して吐出可能な分割供給装置が設けられていると共に、前記分割供給装置の角度位置を固定したまま、前記ミキシングヘッド本体からの混合物の吐出角度を変更可能な角度変更機構が設けられていることを特徴とするミキシングヘッド装置。
【請求項2】
前記分割供給装置は、前記ノズル先端に装着された分割ピンである請求項1のミキシングヘッド装置。
【請求項3】
前記混合物の吐出角度を変更可能な角度変更機構が、前記ミキシングヘッド本体を軸心周りに回転する機構である請求項1又は2のミキシングヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−1244(P2007−1244A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186504(P2005−186504)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】