説明

ミクロ細孔性及びメソ細孔性炭素粒子の混合物を含有する水用フィルター材料、及び前記フィルター材料を用いる水用フィルター

飲料水を供給又は処理するためのフィルター及びフィルター材料を提供する。本フィルターは、流入口及び流出口を有するハウジング、並びにハウジング内に配置され、複数のメソ細孔性、ミクロ細孔性活性炭粒子類の混合物から少なくとも一部形成されるフィルター材料を含んでなる。好ましくは、少なくともメソ細孔性活性炭フィルター粒子類の一部はカチオン性ポリマーでコーティングされ、更により好ましくは、少なくとも粒子類の一部はカチオン性ポリマー及び銀又は銀含有材料でコーティングされる。同様に、フィルターと、バクテリア、ウイルス、細菌、及びTTHMの減少、死滅又は除去に関する情報とを含んでなるキットも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水用フィルター材料類及び水用フィルター類、及びそれを使用する方法の分野に関し、より詳細には、ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子類を含有する水用フィルター類の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
水は、例えば、微粒子類、有害な化学物質類、並びに、細菌類、寄生生物類、原生動物類及びウイルス類などの微生物学的有機体類を含む、多くの異なる種類の汚染物質類を含有する場合がある。様々な状況で、水を使用できるようになる前に、これらの汚染物質を除去しなければならない。例えば、多くの医療用途及び特定の電子部品の製造では、極めて純粋な水が必要である。更に一般的な例として、水を飲料に適する、即ち摂取に適合させる前に、水中の有害な汚染物質を除去、無害レベルにまで減少、若しくは不活性化(「死滅」と言われることもある)する必要がある。近代的な浄水手段にも関わらず、一般集団は危険に曝されており、特に、乳幼児や免疫不全の人はかなりの危険に曝されている。
【0003】
米国及び他の先進国では、地方自治体で処理された水には、典型的には、次の不純物、即ち、浮遊物質、細菌、寄生生物、ウイルス、有機物、重金属及び塩素のうち1種類以上が含まれる。水処理システムの故障や他の問題によって、細菌やウイルスの除去が不完全になることがある。他の国々では、人口密度の増大、水資源の更なる不足、及び水処理施設がないために、汚染した水に曝されることに伴う致命的な結果が生じている。飲料水の水源はヒトや動物の排泄物の付近に存在することが一般的であるため、微生物学的汚染が主な健康上の懸念事項となる。水系の微生物学的汚染の結果、毎年推定六百万人が死亡し、その半分は5歳未満の子供である。
【0004】
飲料水道のもう1つの汚染源は、例えば塩素、味、臭い、鉛、ヒ素、揮発性有機化合物(VOC)、トリハロメタン類(THM)、クロムなどの化学的汚染物質である。一例として、水処理プロセスで残留する塩素が水中で有機物質と反応する際に生じる副生成物であるトリハロメタン類(THM)が、世界中の多くの水源で見いだされる。有機化合物、例えば産業廃棄物がその後に塩素で処理される水域内に滲出する場合、これらの物質の自然発生が可能となり、知らず知らずに水道内で形成され得る。水処理及び濾過産業では、THMとは幅広い化合物の部類を指し、一般には「総トリハロメタン」(TTHM)と呼ばれる。TTHMは発癌の可能性と、発疹やその他皮膚の炎症など、より即時型の健康問題を引き起こす可能性がある。更にTTHMは、飲料水の味に著しく悪影響を及ぼす可能性があり、また及ぼすことが多い。従って、水からのTTHMの除去が非常に望ましい。
【0005】
水からTTHM及びその他有機化合物を除去する方法とフィルターについては既知である。しかしその方法とフィルターは、細菌及びウイルスなどの小粒子を除去するものとは異なり、一貫性のないことが多い。そのため、濾過要件を全て満たすために、水の消費者はしばしば2つ又はそれ以上のフィルター、若しくは1種の多段階式フィルターを持つ必要がある。多段階式フィルター及び複合式フィルターは、単一のフィルターと比較して、多くの場合より広い場所を必要とし、より高価になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、様々な性状を有する異なる汚染物質を除去可能な、単段階フィルターに対する必要性が存在する。すなわち、単一材料(異なる構成成分の混合物の可能性はあるが)から1工程プロセスで製造することができ、多様な除去能力を有する単段階フィルターである。より詳細には、ウイルス及び細菌などの小粒子、並びにTTHMなどの有機化合物を同時に除去できる単段階フィルターに対する必要性がある。この効果及び他の効果が、本発明により提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
飲料水を供給又は処理するためのフィルターを提供する。前記フィルターは、流入口及び流出口を有するハウジングを含み、フィルター材料は、ハウジング内に配置される。フィルター材料は、約25重量%〜約75重量%の複数のミクロ細孔性活性炭粒子類、及び約25重量%〜約75重量%の複数のメソ細孔性活性炭フィルター粒子類から形成される。本発明の1つの態様では、ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子類、メソ細孔性活性炭フィルター粒子類、又はその両方が、少なくとも部分的に若しくは全体的に、カチオン性ポリマーでコーティングされる。そして本発明の別の態様では、ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子類、メソ細孔性活性炭フィルター粒子類、又はその両方の少なくとも一部が、銀又は銀含有材料でコーティングされる。
【0008】
本発明のフィルター材料にその他の材料、例えば、活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、カーボンナノチューブ、活性炭ナノチューブ、単壁カーボンナノチューブ(SWNT)、多壁カーボンナノチューブ(MWNT)、ゼオライト、活性アルミナ、マグネシア、活性マグネシア、珪藻土、活性シリカ、ハイドロタルサイト、有機金属骨格物質(MOF)、ガラス粒子又は繊維、合成ポリマーナノ繊維、天然ポリマーナノ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン無水マレイン酸コポリマー繊維、砂、粘土、及びこれらの混合物を添加してもよい。これらのその他材料は、直前に述べた活性炭粒子と同様に、少なくとも部分的に若しくは全体的に、カチオン性ポリマー、銀、銀含有材料、及びこれらの混合物でコーティングすることができる。
【0009】
本発明の別の態様では、飲料水を供給するフィルターを含むキットが提供される。フィルターは、流入口及び流出口を有するハウジングを含み、フィルター材料は、複数のミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭フィルター粒子類から少なくとも一部形成されてハウジング内に配置され、少なくとも一部のこれら粒子類は、カチオン性材料でコーティングされる。キットは、フィルターを含むための包装を更に含み、その包装又はフィルターハウジングのどちらかに、フィルター又はフィルター材料が、細菌を減少する、ウイルスを減少する、微生物を減少する、TTHMを減少する、化学物質を減少する、若しくはこれらの任意の組合せであるという情報を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
引用される文献は、全て関連部分において本明細書に参考として組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であることを承認するものとして解釈されるべきでない。
【0011】
I.定義
本明細書で使用する時、「フィルター類」及び「ろ過」の用語は、それぞれ、主に吸着及び/又はサイズ排除により、より少ない程度まで微生物を除去すること(及び/又は他の汚染物質を除去すること)に関する構造体及び機構を指す。
【0012】
本明細書で使用する時、「除去」、「減少する」、「減少」の用語及びその派生語は、汚染物質の数又は濃度が部分的に減少することを指す。
【0013】
本明細書で使用する時、語句「フィルター材料」は、フィルター粒子の凝集体を指すものとする。フィルター材料を形成するフィルター粒子の凝集体は、均質又は不均質なもののいずれかであり得る。フィルター粒子は、フィルター材料内に均一又は不均一(例えば、異なるフィルター粒子の層)に分布し得る。またフィルター材料を形成するフィルター粒子は、形状又は大きさが同一である必要はなく、緩い又は相互連結した形態のいずれかで提供されてもよい。例えば、フィルター材料は、ミクロ細孔性、メソ細孔性及び塩基性活性炭粒子を活性炭繊維と組合わせて含んでもよく、これらのフィルター粒子は、緩く会合した状態で提供されるか、あるいは、ポリマー結合剤若しくは他の手段で一部又は全部結合され、一体構造を形成してもよい。
【0014】
本明細書で使用する時、「フィルター粒子」の語句は、フィルター材料の少なくとも一部を形成するのに使用される個々の部材又は片を指すものとする。例えば、繊維、粒剤、ビーズなどは、それぞれ、本明細書ではフィルター粒子と考えられる。更に、フィルター粒子は、触知できないフィルター粒子(例えば、非常に微細な粉末)から触知できるフィルター粒子まで、様々な大きさであり得る。
【0015】
本明細書で使用する時、「フィルター材料細孔容積」の語句は、サイズが0.1μmより大きいフィルター材料中の粒子間細孔の総容積を指す。
【0016】
本明細書で使用する時、「フィルター材料総容積」の語句は、粒子間細孔容積とフィルター粒子が占める容積との合計を指す。
【0017】
本明細書で使用する時、「微生物」、「微生物有機体」、「微生物学的有機体」、及び「病原体」の用語は、互換的に使用される。これらの用語は、バクテリア、ウイルス、寄生生物、原生生物、及び病菌として特徴付けることができる様々な種類の微生物を指す。
【0018】
本明細書で使用する時、フィルター粒子の「細菌除去指数」(BRI)の語句は、次のように定義される:
【数1】

式中、「平衡時における浴中の大腸菌細菌濃度」は、以下に更に十分に検討されるように、外部総表面積が1400cmで、ザウタ平均粒径が55μm未満の一定質量のフィルター粒子類を含有する浴中の平衡時における細菌濃度を指す。2時間あけた2つの時点で測定して、大腸菌濃度が半桁以内までの変化しない状態を維持する時は、平衡に達している。「対照中の大腸菌細菌濃度」の語句は、対照浴中の大腸菌細菌濃度を指し、約3.7×10CFU/Lに等しい。ザウタ平均粒径は、表面対体積の比が全粒子分布の表面対体積の比に等しい、粒子の直径である。「CFU/L」の用語は、大腸菌の計数に使用される典型的な用語である、「1リットル当りのコロニー形成単位」を表すことに留意されたい。BRIは、殺菌効果を提供する化学剤の適用なしに測定される。フィルター粒子の除去能力を報告する同等の方法は、次のように定義される「細菌対数除去指数」(BLRI)を用いる:
BLRI=−log[1−(BRI/100)]
BLRIは、「log」(ここで、「log」は対数を表す)の単位を有する。例えば、BRIが99.99%に等しいフィルター粒子のBLRIは、4logに等しい。これらの値を求めるのに用いられる試験方法は、国際出願番号PCT/US03/05416(2003年2月21日)、また国際出願番号PCT/US03/05409(2003年2月21日出願)に見いだすことができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用する時、フィルター粒子の「ウイルス除去指数」(VRI)の語句は、次のように定義される:
【数2】

式中、「平衡時における浴中のMS−2ファージ濃度」は、以下に更に十分に検討されるように、外部総表面積が1400cmで、ザウタ平均粒径が55μm未満の一定質量のフィルター粒子を含有する浴中の平衡時におけるファージの濃度を指す。2時間あけた2つの時点で測定して、MS−2濃度が半桁以内までの変化しない状態を維持する時、平衡に達している。「対照中のMS−2ファージ濃度」の語句は、対照浴におけるMS−2ファージ濃度を指し、約6.7×10PFU/Lに等しい。「PFU/L」の用語は、MS−2の計数に使用される典型的な用語である、「1リットル当りのプラーク形成単位」を表すことに留意されたい。VRIは、殺ウイルス効果を提供する化学剤の適用なしに測定される。フィルター粒子の除去能力を報告する同等の方法は、次のように定義される「ウイルス対数除去指数」(VLRI)を用いる:
VLRI=−log[1−(VRI/100)]
VLRIは、「log」(ここで、「log」は対数である)の単位を有する。例えば、VRIが99.9%に等しいフィルター粒子のVLRIは、3logに等しい。これらの値を求めるのに用いられる試験方法は、国際出願番号PCT/US03/05416(2003年2月21日)、また国際出願番号PCT/US03/05409(2003年2月21日出願)に見いだすことができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0020】
本明細書で使用する時、「フィルター細菌対数除去(F−BLR)」の語句は、最初の2,000フィルター材料細孔容積が通流した後のフィルターの細菌除去能力を指す。F−BLRは、次のように定義及び計算される:
【数3】

式中、「大腸菌の流入濃度」は、試験中ずっと連続的に約1×10CFU/Lに設定され、「大腸菌の流出濃度」は、約2,000フィルター材料細孔容積がフィルターを貫流した後、測定される。フィルター細菌対数除去は、「log」(ここで、「log」は対数である)の単位を有する。流出濃度が分析に使用される技術の検出限界未満であるならば、F−BLRを計算するための流出濃度は、検出限界であると見なされることに留意されたい。また、F−BLRは、殺菌効果を提供する化学剤の適用なしに測定されることにも留意されたい。これらの値を求めるのに用いられる試験方法は、国際出願番号PCT/US03/05416(2003年2月21日)、また国際出願番号PCT/US03/05409(2003年2月21日出願)に見いだすことができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0021】
本明細書で使用する時、「フィルターウィルス対数除去(F−VLR)」の語句は、最初の2,000フィルター材料細孔容積が通流した後のフィルターのウイルス除去能力を指す。F−VLRは、次のように定義及び計算される:
【数4】

式中、「MS−2の流入濃度」は、試験中を通じて連続的に約1×10PFU/Lに設定され、「MS−2の流出濃度」は、約2,000フィルター材料細孔容積がフィルターを貫流した後、測定される。F−VLRは、「log」(ここで、「log」は対数である)の単位を有する。流出濃度が分析に使用される技術の検出限界未満であるならば、F−VLRを計算するための流出濃度は、検出限界であると見なされることに留意されたい。また、F−VLRは、殺ウイルス効果を備える化学剤の適用なしに測定されることにも留意されたい。この値を求めるのに用いられる試験方法は、国際出願番号PCT/US03/05416(2003年2月21日)、また国際出願番号PCT/US03/05409(2003年2月21日出願)に見いだすことができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0022】
本明細書で使用する時、「外部総表面積」の語句は、以下に更に十分に検討されるように、1以上のフィルター粒子の幾何学的な外部総表面積を指すものとする。
【0023】
本明細書で使用する時、「外部比表面積」の語句は、以下に更に十分に検討されるように、フィルター粒子の単位質量当りの外部総表面積を指すものとする。
【0024】
本明細書で使用する時、「ミクロ細孔」の用語は、幅又は直径が2nm(又は、同等には20Å)未満の粒子内細孔を指すものとする。
【0025】
本明細書で使用する時、「メソ細孔」の用語は、幅又は直径が2nm〜50nm(又は、同等には20Å〜500Å)の粒子内細孔を指すものとする。
【0026】
本明細書で使用する時、「マクロ細孔」の用語は、幅又は直径が50nm(又は、同等には500Å)より大きい粒子内細孔を指すものとする。
【0027】
本明細書で使用する時、語句「総細孔体積」及びその派生語は、粒子内細孔全て、即ち、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の体積を指すものとする。総細孔体積は、当該技術分野において周知の方法であるBET方法(ASTM D 4820−99標準)を使用して、相対応力0.9814にて吸収される窒素の体積として計算される。
【0028】
本明細書で使用する時、「ミクロ細孔容積」の語句及びその派生語は、全ミクロ細孔の容積を指すものとする。ミクロ細孔体積は、当該技術分野において周知の方法であるBET方法(ASTM D 4820−99標準)を使用して、相対応力0.15にて吸収される窒素の体積として計算される。
【0029】
本明細書で使用する時、「メソ細孔及びマクロ細孔の容積の合計」の語句及びその派生語は、メソ細孔及びマクロ細孔の全部の容積を指すものとする。メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計は、細孔体積の合計とミクロ細孔体積との差に等しく、あるいは同等に、当該技術分野で周知の方法であるBET法(ASTM D 4820−99標準)を用いて、相対応力0.9814及び0.15で吸着される窒素の体積の差から計算される。
【0030】
本明細書で使用する時、「メソ細孔範囲の細孔サイズ分布」の語句は、当該技術分野で周知の方法である、バーレット(Barrett)、ジョイナー(Joyner)及びハレンダ(Halenda)(BJH)法で計算される、細孔サイズの分布を指すものとする。
【0031】
本明細書で使用する時、用語「炭化」及びその派生語は、炭素質物質中の非炭素原子を低減させる方法を指すものとする。
【0032】
本明細書で使用する時、「活性化」の用語及びその派生語は、炭化された物質を更に多孔質にするプロセスを指すものとする。
【0033】
本明細書で使用する時、「活性炭粒子」又は「活性炭フィルター粒子」の用語及びその派生語は、活性化プロセスを経た炭素粒子を指すものとする。
【0034】
本明細書で使用する時、「零電荷点」の語句は、それを超えると炭素粒子の全表面が負の電荷を有するpHを指すものとする。この値を求めるのに用いられる試験方法は、国際出願番号PCT/US03/05416(2003年2月21日)、また国際出願番号PCT/US03/05409(2003年2月21日出願)に見いだすことができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0035】
本明細書で使用する時、「塩基性」の用語は、零電荷点が7より大きいフィルター粒子を指すものとする。
【0036】
本明細書で使用する時、「酸性」の用語は、零電荷点が7未満のフィルター粒子を指すものとする。
【0037】
本明細書で使用する時、語句「メソ細孔性活性炭フィルター粒子」は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/g超過を超えてもよい、活性炭フィルター粒子を指す。
【0038】
本明細書で使用する時、語句「ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子」は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/g未満であることも可能な、活性炭フィルター粒子を指す。
【0039】
本明細書で使用する時、「メソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子」の語句は、メソ細孔及びマクロ細孔の容積の合計が0.12mL/gより大きくてもよく、及び零電荷点が7より大きい活性炭フィルター粒子を指すものとする。
【0040】
本明細書で使用する時、「メソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭フィルター粒子」の語句は、メソ細孔及びマクロ細孔の容積の合計が0.12mL/gより大きくてもよく、零電荷点が7より大きく、及びバルク酸素重量割合が1.5%以下である活性炭フィルター粒子を指すものとする。
【0041】
本明細書で使用する時、「メソ細孔性及び酸性活性炭フィルター粒子」の語句は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/gより大きくてもよく、及び零電荷点が7未満である活性炭フィルター粒子を指すものとする。
【0042】
本明細書で使用する時、「出発原料」の語句は、メソ細孔及びマクロ細孔を含有するか、又は、炭化及び/若しくは活性化中にメソ細孔及びマクロ細孔をもたらすことができるいかなる前駆体をも指す。
【0043】
本明細書で使用する時、「軸流」の語句は、平面を貫流し、その表面に垂直である流れを指す。
【0044】
本明細書で使用する時、「半径流」の語句は、典型的には、本質的に円筒状又は本質的に円錐状の表面を貫流し、それらの表面に垂直である流れを指す。
【0045】
本明細書で使用する時、「正面面積」の語句は、流入水に最初に暴露されるフィルター材料の面積を指す。例えば、軸流フィルターの場合、表面積は、流体の入口におけるフィルター材料の断面積であり、半径流フィルターの場合、表面積はフィルター材料の外側面積である。
【0046】
本明細書で使用する時、「フィルター深さ」の語句は、流入水がフィルター材料の入口から出口まで移動する、直線距離を指す。例えば、軸流フィルターの場合、フィルター深さはフィルター材料の厚さであり、半径流フィルターの場合、フィルター深さはフィルター材料の外径と内径との差の半分である。
【0047】
本明細書で使用する時、「平均流体滞留時間」及び/又は「平均流体接触時間」の語句は、流体がフィルター材料を通って移動する時に、流体がフィルターの内側でフィルター粒子と接触する平均時間を指し、フィルター材料細孔容積と流量との比として計算される。
【0048】
本明細書で使用する時、「フィルター空隙率」及び/又は「ろ床空隙率」の語句は、フィルター材料細孔容積とフィルター材料総容積との比を指す。
【0049】
本明細書で使用する時、「流入口」の語句は、流体がフィルター又はフィルター材料に入ることができる手段を指す。例えば、流入口は、フィルター又はフィルター材料正面面積の一部である構造体とすることができる。
【0050】
本明細書で使用する時、「流出口」の語句は、流体がフィルター又はフィルター材料から出ることができる手段を指す。例えば、流出口は、フィルター又は流体の出口におけるフィルター材料の断面積の一部である構造体とすることができる。
【0051】
本明細書で使用する時、「粒子の通流特性」の用語及びその派生語は、水がこれら粒子間を流れる際の、これらの粒子が原因となる圧力低下を指す。例えば、同一の粒径及び分布を有する二種の粒子を比較した場合、その圧力低下が小さい場合、その粒子はもう一方より良好な通流特性を有する。
【0052】
II.ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭フィルター粒子類
本発明のフィルター材料は、ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子類の混合物を含む。本明細書に記載するメソ細孔性活性炭材料は、細菌及びナノサイズのウイルスなどの小粒子に対する優れた除去能力を有し、一方ミクロ細孔性活性炭粒子類は、総トリハロメタン(TTHM)などの化学物質の除去に優れている。また、メソ細孔性活性炭粒子類は、ミクロ細孔性活性炭粒子類よりもはるかに優れた通流特性をも有し、従ってメソ細孔性活性炭粒子類は、同一粒径のミクロ細孔性活性炭粒子類よりも圧力低下を引き起こしにくい。1つの実施形態において、フィルター材料は、約25重量%〜約75重量%の複数のミクロ細孔性活性炭粒子類、及び約25重量%〜約75重量%の複数のメソ細孔性活性炭フィルター粒子類を含む。以下により詳細に論じるように、活性炭フィルター粒子類は、好ましくは、少なくとも部分的に若しくは全体的にカチオン性ポリマーでコーティングされ、より好ましくは、メソ細孔性活性炭粒子類は少なくとも部分的にカチオン性ポリマーでコーティングされる。
【0053】
フィルター粒子は、様々な形状及びサイズで提供することができる。例えば、フィルター粒子は、粉末、顆粒、繊維、及びビーズなどの単純な形態で提供することができる。フィルター粒子は、球体、多面体、円筒の形状、並びに、他の対称な形状、非対称な形状、及び不規則な形状で提供することができる。更に、フィルター粒子は、ウェブ、スクリーン、メッシュ、不織布、織布及び結合ブロックなどの複雑な形態に形成することもでき、これらは、前述の単純な形態から形成されても又はそれらから形成されなくてもよい。
【0054】
形状と同様に、フィルター粒子のサイズも様々であってよく、単一のフィルターで使用されるフィルター粒子の間でサイズが均一である必要はない。実際、単一のフィルター中にサイズが異なるフィルター粒子を提供することが望ましい可能性がある。一般に、フィルター粒子類のサイズは、約0.1μm〜約10mm、好ましくは約0.2μm〜約5mm、より好ましくは約0.4μm〜約1mm、最も好ましくは約1μm〜約500μmであってよい。球状及び円筒状の粒子類(例えば、繊維類、ビーズ類など)では、前述の寸法は、フィルター粒子類の直径を指す。形状が実質的に異なるフィルター粒子では、前述の寸法は、最大寸法(例えば、長さ、幅、又は高さ)を指す。
【0055】
ミクロ細孔性活性炭粒子類
この発明の好ましい実施形態において、複数のミクロ細孔性活性炭粒子類は、約30重量%〜約55重量%、より好ましくは約30重量%〜約50重量%の濃度で存在する。ミクロ細孔性活性炭の典型的な例は、ココナッツ活性炭、瀝青炭活性炭、物理的に活性化された木質系活性炭、物理的に活性化されたピッチ系活性炭などである。好ましくは、ミクロ細孔性活性炭粒子類は、ココナッツ活性炭粒子である。
【0056】
メソ細孔性活性炭粒子類
本発明のミクロ細孔性炭素粒子類は、TTHMなどの化学物質に対する良好な除去特性を有する。しかし、メソ細孔性活性炭フィルター粒子類は、ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子類と比較して、より多くの微生物を吸着する。また、メソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子は、メソ細孔性及び酸性活性炭フィルター粒子により吸着されるものと比較して、より多くの微生物を吸着することが、意外にも判明している。更に、メソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭フィルター粒子は、バルク酸素重量割合の低下していないメソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子により吸着されるものと比較して、より多くの微生物を吸着することが、予期せずして見出されている。
【0057】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、出願者らは、空隙率に関して、多数のメソ細孔及び/又はマクロ細孔が、病原体、それらの線毛、並びに病原体の外膜、キャプシド、及びエンベロープを構成する表面ポリマー(例えば、蛋白質、リポ多糖類、オリゴ糖類、及び多糖類)に、より好都合な吸着部位(メソ細孔/マクロ細孔の開口部又は入口)を提供するという仮説を立てており、それは、これらの典型的なサイズがメソ細孔及びマクロ細孔の入口のサイズに類似しているからである。また、メソ細孔空隙率及びマクロ細孔空隙率は、表面粗さなどの、炭素の1つ以上の表面特性と相関する場合がある。
【0058】
また、理論に束縛されることを望まないが、出願者らは、塩基性活性炭表面は、酸性炭素表面によって引き付けられるものと比較して、より多くの微生物を引き付けるのに必要な種類の官能性を含有するという仮説を立てている。この塩基性炭素表面への吸着の向上は、塩基性炭素表面が、典型的には負の電荷を有する微生物やそれらの表面の官能基を引き付けることに起因する場合がある。出願者らは、更に、塩基性炭素は水中に入れると、酸素分子を還元することにより消毒剤を生成できるという仮説を立てている。還元の最終生成物は水酸化物であるが、出願者らは、反応性酸素中間体(超酸化物、ヒドロペルオキシド、及び/又はヒドロキシルラジカルなど)が形成され、それらは炭素からバルク溶液中に拡散するほど十分寿命が長い可能性があると考える。
【0059】
更に、出願者らは、バルク酸素重量割合が低減するにつれ、炭素はより塩基性になると考える。バルク酸素重量割合が低いと、細菌/ウイルスの吸着の改善につながる場合があるが、それは、(1)カルボン酸がより少ない、従って細菌/ウイルスを寄せ付けない負の表面がより少ない、及び(2)水和した表面がより少なく、そのため、細菌/ウイルスが表面に吸着しようとする時、細菌/ウイルスによって水が更に容易に置換される(即ち、細菌/ウイルスが、既に表面の部位を占有している他の種を置換するためのエネルギー損失がより少ない)からである。また、この後者の理由(即ち、水和した表面がより少ないこと)は、以下に検討される理想的な表面が、幾分疎水性でなければならない(即ち、それは縁部の炭素原子上に、濡れることを可能にするのにちょうど十分であるが、過度に親水性にするほど多くない酸素置換を有していなければならない)という考えと結びつく。
【0060】
メソ細孔性フィルター粒子は、メソ細孔及びマクロ細孔を含有するか、又は炭化及び/若しくは活性化中にメソ細孔及びマクロ細孔をもたらすいかなる前駆体の生成物であってもよい。例えば、限定的ではないが、メソ細孔性フィルター粒子は、木材系活性炭粒子、石炭系活性炭粒子、泥炭系活性炭粒子、ピッチ系活性炭粒子、タール系活性炭粒子、マメ系活性炭粒子、他のリグノセルロース系活性炭粒子、及びこれらの混合物とすることができる。
【0061】
活性炭は、酸性、中性、又は塩基性を示すことができる。酸性は、限定的ではないが、フェノール類、カルボキシル類、ラクトン類、ヒドロキノン類、酸無水物類、及びケトン類などの酸素含有官能性又は官能基と関連する。塩基性は、これまで、ピロン類、クロメン類、エーテル類、カルボニル類、並びに底面π電子などの官能性と関連付けられてきている。π活性炭粒子の酸性又は塩基性は、「零電荷点」技術(G.ニューカムら、コロイド類及び表面A:物理化学的及び工学的観点、78、65〜71頁(1993年)(Newcombe,G., et al., Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects, 78,65-71 (1993)))で決定され、その内容は参考として本明細書に組み込まれる。その技術を以下のVII項に更に記載する。本発明のメソ細孔性フィルター粒子の零電荷点は1〜14、好ましくは約4より大きく、好ましくは約6より大きく、好ましくは約7より大きく、好ましくは約8より大きく、より好ましくは約9より大きく、最も好ましくは約9〜約12であってよい。
【0062】
活性炭の零電荷点は、バルク酸素重量割合と逆相関する。本発明のメソ細孔性活性炭粒子のバルク酸素重量割合は、約5%未満、好ましくは約2.5%未満、好ましくは約2.3%未満、好ましくは約2%未満、より好ましくは約1.2%未満、最も好ましくは約1%未満であり、且つ/又は、約0.1%より大きく、好ましくは約0.2%より大きく、より好ましくは約0.25%より大きく、最も好ましくは約0.3%より大きくてもよい。また、(少なくとも塩基性炭素では)零電荷点は炭素の酸素低減能力の尺度であるため、活性炭粒子の零電荷点は、粒子を含有する水の酸化−還元電位(ORP)と相関する。本発明のフィルター粒子のORPは、約570mV未満、好ましくは約465mV未満、好ましくは約400mV未満、好ましくは約360mV未満、好ましくは約325mV未満、最も好ましくは約290mV〜175mVであってよい。
【0063】
粒子の活性化
活性炭フィルター粒子又はフィルター材料の電気抵抗は、フィルターブロックを形成するそれらの能力と関連するため、それらの重要な特性の1つである。例えば、抵抗加熱法を使用してフィルターブロックを形成することができ、ここで、フィルター材料はフィルター材料の2つの端部間に電気を通すことによって加熱される。フィルター材料の電気抵抗は、短時間で加熱する能力を制御する。電気抵抗は、フィルターブロックを形成し、電圧計の2本の電極を接触させることによりブロックの2つの面間の電気抵抗を測定し、求められる。
【0064】
フィルター粒子は、後述の出発原料を処理することによって得ることができる。処理条件は、雰囲気組成、圧力、温度、及び/又は時間を含んでもよい。本発明の雰囲気は、還元性であっても不活性であってもよい。還元性雰囲気、蒸気、又は不活性雰囲気の存在下でフィルター粒子を加熱することにより、表面酸素官能性が低減したフィルター材料が得られる。好適な還元性雰囲気の例には、水素、窒素、解離アンモニア、一酸化炭素及び/又は混合物を挙げることができる。好適な不活性雰囲気の例には、アルゴン、ヘリウム及び/又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0065】
活性炭粒子類が貴金属触媒類(例えば、白金、金、パラジウム)を含有しない時、処理温度は、約600℃〜約1,200℃、好ましくは約700℃〜約1,100℃、より好ましくは約800℃〜約1,050℃、最も好ましくは約900℃〜約1,000℃であってよい。活性炭粒子類が貴金属触媒類を含有する場合、処理温度は、約100℃〜約800℃、好ましくは約200℃〜約700℃、より好ましくは約300℃〜約600℃、最も好ましくは約350℃〜約550℃であってよい。
【0066】
処理時間は、約2分〜約10時間、好ましくは約5分〜約8時間、より好ましくは約10分〜約7時間、最も好ましくは約20分〜約6時間であってよい。気体流量は、約0.25標準L/h.g(即ち、1時間及び炭素1グラム当りの標準リットル;0.009標準ft/h.g)〜約60標準L/h.g(2.1標準ft/h.g)、好ましくは約0.5標準L/h.g(0.018標準ft/h.g)〜約30標準L/h.g(1.06標準ft/h.g)、より好ましくは約1.0標準L/h.g(0.035標準ft/h.g)〜約20標準L/h.g(0.7標準ft/h.g)、最も好ましくは約5標準L/h.g(0.18標準ft/h.g)〜約10標準L/h.g(0.35標準ft/h.g)であってよい。圧力は、処理時間中、大気圧より高く、大気圧に等しく、又は大気圧未満に維持できる。理解されるように、メソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭フィルター材料を生成する他の方法を使用することもできる。また、フィルター材料を得るため、出発原料に応じて、前述の出発原料にこのような処理を複数回繰り返してもよい。
【0067】
出発原料は市販品を入手でき、あるいは、例えば、ジャグトイエン(Jagtoyen, M.)及びダービーシャー(F. Derbyshire)による「炭素(Carbon)」、36(7〜8)、1085〜1097(1998)、及びエバンス(Evans)らによる「炭素(Carbon)」、37、269〜274(1999)、及びリュウ(Ryoo)らによる「物理化学ジャーナルB(J. Phys. Chem. B)、103(37)、7743〜7746(1999)に記載されるような、当該技術分野において周知の方法により製造することができ、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。活性化/炭化に使用される典型的な化学物質には、リン酸、塩化亜鉛、リン酸アンモニウムなどが挙げられ、これらをすぐ前に引用されている2つの雑誌に記載される方法と組合わせて使用してもよい。
【0068】
粒子空隙率サイズ及び体積
ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)及びテラー(Teller)(BET)の比表面積、及びバーレット(Barrett)、ジョイナー(Joyner)及びハレンダ(Halenda)(BJH)の細孔サイズ分布は、ミクロ細孔性及びメソ細孔性の両活性炭粒子類の細孔構造の特性を示すために用いることができる。好ましくは、メソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子のBET比表面積は、約500m/g〜約3,000m/g、好ましくは約600m/g〜約2,800m/g、より好ましくは約800m/g〜約2,500m/g、最も好ましくは約1,000m/g〜約2,000m/gであってよい。
【0069】
メソ細孔性及び塩基性活性炭粒子の総細孔体積は、BET窒素吸着中に測定され、相対圧力P/P0.9814で吸着される窒素の体積として計算される。より具体的には、また、当該技術分野で周知のように、総細孔体積は、相対圧力0.9814で「吸着される窒素の体積(mL(STP)/g)」に、STP(標準温度及び圧力)における窒素の体積を液体に変換する換算率0.00156を乗ずることによって計算される。メソ細孔性活性炭フィルター粒子類の総細孔体積は、約0.4mL/gより大きいか、若しくは約0.7mL/gより大きいか、若しくは約1.3mL/gより大きいか、若しくは約2mL/gより大きく、且つ/又は約3mL/g未満であるか、若しくは約2.6mL/g未満であるか、若しくは約2mL/g未満であるか、若しくは約1.5mL/g未満であってもよい。
【0070】
メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計は、BET窒素吸着中に測定され、総細孔体積と、P/P0.15で吸着される窒素の体積との差として計算される。メソ細孔性活性炭フィルター粒子類のメソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計は、約0.12mL/gより大きいか、若しくは約0.2mL/gより大きいか、若しくは約0.4mL/gより大きいか、若しくは約0.6mL/gより大きいか、若しくは約0.75mL/gより大きく、且つ/又は約2.2mL/g未満であるか、若しくは約2mL/g未満であるか、若しくは約1.5mL/g未満であるか、若しくは約1.2mL/g未満であるか、若しくは約1mL/g未満であってもよい。
【0071】
BJH細孔サイズ分布は、バーレット(Barrett)、ジョイナー(Joyner)及びハレンダ(Halenda)(BJH)法を用いて測定することが可能であり、この方法は「米国化学会誌(J. Amer.Chem. Soc.)」、73、373〜80(1951)及び、グレッグ(Gregg)及びシング(Sing)による「吸着・表面積・空隙率」第二版、アカデミックプレス社(Academic Press)、ニューヨーク(1982)に開示され、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。1つの実施形態では、メソ細孔性活性炭粒子の細孔体積は、約4ナノメートル〜約6ナノメートルの任意の孔径に対し、少なくとも約0.01mL/gであってよい。他の実施形態では、メソ細孔性活性炭粒子の細孔体積は、約4ナノメートル〜約6ナノメートルの任意の孔径に対し、約0.01mL/g〜約0.04mL/gであってよい。更に他の実施形態では、メソ細孔性活性炭粒子の細孔体積は、約4ナノメートル〜約6ナノメートルの任意の孔径に対し、少なくとも約0.03mL/gであってよく、若しくは約0.03mL/g〜約0.06mL/gである。好ましい実施形態では、メソ細孔性活性炭粒子の細孔体積は、約4ナノメートル〜約6ナノメートルの任意の孔径に対し、約0.015mL/g〜約0.06mL/gであってよい。
【0072】
メソ細孔性活性炭フィルター粒子類における、メソ細孔及びマクロ細孔体積の合計の総細孔体積に対する比は、約0.3より大きく、好ましくは約0.4より大きく、好ましくは約0.6より大きく、及び最も好ましくは約0.7〜約1であってよい。
【0073】
外部総表面積は、外部比表面積にフィルター粒子の質量を乗ずることによって計算され、フィルター粒子の寸法に基づいている。例えば、単分散(即ち、均一な直径を有する)繊維の外部比表面積は、繊維の面積(繊維の端部の2つの断面積は無視する)と繊維の重量との比として計算される。そのため、繊維類の外部比表面積は、4/Dρに等しく、式中、Dは繊維径であり、ρは繊維密度である。単分散球状粒子類では、類似の計算によって6/Dρに等しい外部比表面積が得られ、式中、Dは粒径であり、ρは粒子密度である。多分散繊維、球状粒子又は不規則な粒子では、Dに
【数5】

を置換した後、前記と同じ各式を使用して外部比表面積を計算するが、式中、
【数6】

はザウタ平均粒径であり、これは表面対体積の比が全粒子分布の表面対体積の比と等しい粒子の直径である。ザウタ平均粒径を測定する当該技術分野で周知の方法は、例えば、マルバーン(Malvern)装置(英国マルバーン、マルバーン・インスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd. ,Malvern, U.K.))を使用したレーザー回折による。ミクロ細孔性若しくはメソ細孔性どちらのフィルター粒子類の外部比表面積も、約10cm/g〜約100,000cm/g、好ましくは約50cm/g〜約50,000cm/g、より好ましくは約100cm/g〜約10,000cm/g、最も好ましくは約500cm/g〜約7,000cm/gであってよい。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態では、フィルター粒子は、木材系活性炭粒子であるメソ細孔性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、BET比表面積が約1,000m/g〜約2,000m/g、総細孔体積が約0.8mL/g〜約2mL/g、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が約0.4mL/g〜約1.5mL/gである。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態では、フィルター粒子は、木材系活性炭粒子であるメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、BET比表面積が約1,000m/g〜約2,000m/g、総細孔体積が約0.8mL/g〜約2mL/g、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が約0.4mL/g〜約1.5mL/gである。
【0076】
除去指数
メソ細孔性活性炭粒子類、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子類、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子類のBRIは、本明細書に記載の試験手順に従って測定する時、約99%より大きく、好ましくは約99.9%より大きく、より好ましくは約99.99%より大きく、最も好ましくは約99.999%より大きくてもよい。同等に、メソ細孔性活性炭粒子類、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子類、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子類のBLRIは、約2logより大きく、好ましくは約3logより大きく、より好ましくは約4logより大きく、最も好ましくは約5logより大きくてもよい。メソ細孔性活性炭粒子、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子のVRIは、本明細書に記載の試験手順に従って測定する時、約90%より大きく、好ましくは約95%より大きく、より好ましくは約99%より大きく、最も好ましくは約99.9%より大きくてもよい。同等に、メソ細孔性活性炭粒子、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子のVLRIは、約1logより大きく、好ましくは約1.3logより大きく、より好ましくは約2logより大きく、最も好ましくは約3logより大きくてもよい。
【0077】
メソ細孔性活性炭粒子、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子が入っている本発明のフィルターのF−BLRは、本明細書に記載の試験手順に従って測定する時、約2logより大きく、好ましくは約3logより大きく、より好ましくは約4logより大きく、最も好ましくは約6logより大きくてもよい。メソ細孔性活性炭粒子、又はメソ細孔性及び塩基性活性炭粒子、又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子が入っている本発明のフィルターのF−VLRは、本明細書に記載の試験手順に従って測定する時、約1logより大きく、好ましくは約2logより大きく、より好ましくは約3logより大きく、最も好ましくは約4logより大きくてもよい。
【0078】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、フィルター粒子はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子を含み、これは最初酸性であったが、解離アンモニア雰囲気中で処理することにより塩基性で低酸素にされたものである。これらの粒子は、木材系活性炭粒子である。処理温度は約925℃〜約1,000℃であり、アンモニア流量は約1標準L/h.g〜約20標準L/h.gであり、処理時間は約10分〜約7時間である。これらの粒子類は、BET比表面積が約800m/g〜約2,500m/gであり、総細孔体積が約0.7mL/g〜約2.5mL/gであり、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が約0.21mL/g〜約1.7mL/gである。塩基性及び低酸素活性炭に転換される酸性活性炭の非限定例を後述する。
【0079】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、フィルター粒子はメソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭粒子を含み、これは、最初はメソ細孔性及び塩基性であったが、不活性(即ち、ヘリウム)雰囲気中で処理されたものである。これらの粒子は、木材系活性炭粒子である。処理温度は約800℃〜約1,000℃であり、ヘリウム流量は約1標準L/h.g〜約20標準L/h.gであり、処理時間は約10分〜約7時間である。これらの粒子類は、BET比表面積が約800m/g〜約2,500m/gであり、総細孔体積が約0.7mL/g〜約2.5mL/gであり、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が約0.21mL/g〜約1.7mL/gである。塩基性及び低酸素活性炭に転換される塩基性活性炭の非限定例を後述する。
【0080】
オリオン・リサーチ社(Orion Research, Inc.)(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly))製の白金酸化還元電極モデル96−78−00を使用し、ASTM標準D 1498−93にしたがって酸化−還元電位(ORP)を測定する。この手順では、水道水約80mL中に炭素約0.2gを懸濁させ、約5分間穏やかに攪拌した後、電極の読みをmVで読み取ることを伴う。理解され、当該技術分野で既知のように、この試験手順の代わりに他の計測を代用できる。
【0081】
III.銀及び銀含有材料
ろ過分野に用いられる場合、活性炭中に存在する金属により、活性炭の効率や選択性を大いに増強できることは周知である。特に、銀の存在により、炭素系水用フィルターの微生物除去能を改善することができる。より詳細には、銀の混合により、細菌除去指数(BRI)及びウイルス除去指数(VRI)の両方を高めることができる。
【0082】
しかし、コーティング材料、及びその他のフィルター添加物が、フィルター粒子自体よりも、フィルターに対するコストを増大させることを当業者は理解するであろう。更に、コーティング材料は飲料水中に粒子から流出し、場合によっては悪影響を伴う可能性があり得る。従って、本明細書に記載するコーティング材料及びその他添加物がある程度の効果をもたらす一方で、本発明の活性炭粒子に添加物を追加しない状態での同様の効果の実現が非常に望まれる。
【0083】
従って1つの好ましい態様では、本発明は、飲料水を供給するフィルターを対象とする。フィルターは、流入口及び流出口を有するハウジングを含み、フィルター材料は、複数の活性炭フィルター粒子類、及び銀又は銀含有材料で完全にコーティングされる、ミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類から成る群から選択される粒子類から少なくとも一部形成されて前記ハウジング内に配置され、ミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類は、銀又は銀含有材料、銀粒子、及びこれらの混合物で部分的にコーティングされる。
【0084】
より詳細には、本発明のフィルター材料は特に、銀とミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭フィルター粒子類の混合物、銀及び/又は銀含有材料で部分的に又は完全にコーティングされるミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類、銀又は銀含有材料で部分的に又は完全にコーティングされるミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類、又はミクロ細孔性活性炭粒子類、メソ細孔性活性炭フィルター粒子類、銀及び/又は銀含有材料で部分的に又は完全にコーティングされるミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類の混合物を含むことができる。好ましくは、銀又は銀含有材料のミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭フィルター粒子類に対する重量比は、銀又は銀含有材料の重量に基づきそれぞれ約1:10,000〜約1:1であり、BET表面積は少なくとも800m/g、及びバルク密度は少なくとも0.1g/mLである。
【0085】
炭素系マトリックスへ銀を添加する方法は周知であり、これらの方法のうち任意のものが、本発明のフィルター材料の製造に好適である。例えば、ウェナーバーグ(Wennerberg)に対し1984年11月13日に、ミツモリ(Mitsumori)らに対し1977年8月30日にそれぞれ発行された米国特許番号第4,482,641号及び同第4,045,553号を参照のこと。また、均一に分配された活性金属部位を有する活性炭とそのような活性炭の製造方法を開示するディミトリ(Dimitry)による米国特許番号第3,886,093号も参照のこと。ディミトリ(Dimitry)の方法には、遷移金属及びリグニン金属(metal lignate)を沈殿させるための、リグニン塩(lignin salt)水溶液と遷移金属塩水溶液の混合方法が含まれる。遷移金属は、リグニンと化学結合形成できなければならず、その際、溶液からリグニンをリグニン金属(metal lignate)として沈殿する。ディミトリ(Dimitry)は、沈殿を完了するために必要な時間は1時間未満であり、この目的であれば通常は30分間で十分であると開示している。ディミトリ(Dimitry)によると、好適には湿潤したリグニン金属(metal lignate)沈殿物は、続いてスプレー乾燥機中で乾燥させることができる。沈殿物は、続いて371℃〜983℃の温度で炭化され、最終的に760℃〜1065℃の温度で活性化される。ディミトリ(Dimitry)は、リグニン金属(metal lignate)沈殿物の乾燥は、活性炭生成物の生成に重要ではないが、乾燥工程は、表面積の大きい最終製品を生成するために必要であると述べている。ディミトリ(Dimitry)、ミツモリ(Mitsumori)ら、及びウェナーバーグ(Wennerberg)の特許は、その全体が本明細書に参考文献として組み込まれる。
【0086】
本発明を制限する意図ではないが、多孔質炭素マトリックス上に銀又は銀含有材料の実質的に均一な分散を作り出す1つの方法には、銀又は銀含有材料の前駆体及び上で定義した炭素前駆体の、均一な共微結晶を生成する工程;共微結晶の均一な粉末混合物、及び水酸化アルカリ金属を含む有機固体を生成する工程;約400℃〜約980℃の範囲の温度の不活性雰囲気中で粉末混合物の熱分解を行い、物質中で銀又は銀含有材料が実質的に均一に分散する炭素マトリックスを生成する工程;及び、多孔質炭素マトリックス中の分散した銀又は銀含有材料以外の、未反応の無機物質及び無機反応生成物を分離する工程を含む。
【0087】
炭素前駆体及び銀又は銀含有材料前駆体の均一な共結晶化、即ち同時結晶化、及びその実質的に均一な共微結晶生成を提供する本発明の方法において、様々な任意の既知の手法を共微結晶生成に用いることができる。共微結晶混合物の均一性は、表面積が大きい活性炭中で、銀又は銀含有材料の均一な分散を根本的に形成するために必須である。本発明の方法における、炭素前駆体及び銀又は銀含有材料前駆体の均一な共微結晶を生成する好ましい手法は、好適な溶媒中のそのような前駆体両方の安定溶液を生成する工程、及びそのような溶液をスプレー乾燥して乾燥する工程を含む。そのような手法において、高速、同時かつ均質な溶液からの両前駆体共結晶化を最大限にするために十分に、溶媒除去を素早く実施しなくてはならない。スプレー乾燥により望ましい速度で蒸発ができ、高速、同時かつ均一な共結晶化、及び両前駆体の均質共微結晶の生成が確実となる。本発明のフィルター材料を製造するスプレー乾燥工程の実施に用いるのに好適なスプレー乾燥システムでは、炭素前駆体及び銀又は銀含有材料前駆体溶液は、ノズルを通って乾燥室内に投入される。窒素などの高温の不活性ガスが、ノズルを取り巻く配管を通って乾燥室内に吹き込まれ、ノズルを通って乾燥室に入る溶液の噴霧をサポートする働きをし、噴霧された溶液の液滴温度を上昇、及び促進し、それにより実質的に瞬間的な溶媒の蒸発を促し、そこから均質な共微結晶粉末が提供される。共微結晶粉末と窒素を乾燥室内で下向きに押し流すために空気が乾燥室内に吹き込まれ、共微結晶粉末バルクが乾燥室の底部に落ち、回収され、後に本発明の方法における後続工程で用いるために取り除かれる。乾燥室から次いでサイクロンシステムまでガスが通り、前記システムでガス流と同時に運ばれる共微結晶粉末がガスから分離され、回収目的で配管を通って下方へ通過する。分散金属又は金属含有材料の活性炭マトリックスに対する本発明の組成物中の重量比は、金属又は金属含有材料の重量に基づき、それぞれ好ましくは1:10,000〜1:1である。
【0088】
IV.カチオン性コーティング材料
炭素は過剰な酸性官能基を表面に有するため、その等電点は一般的に6未満である。従って炭素は、6を超えるpHでは多くの場合負の表面電荷を持つことから、飲料水のpH(通常は6〜9に収まる)では陰性であろう。場合によっては、炭素が正の表面電荷を有することが望ましい。炭素の表面電荷は、特定のカチオン性ポリマーをその表面に吸着させることにより反転可能であることがわかっている。より詳細には、本フィルター材料のミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類を、少なくとも部分的に、以下に挙げる1種以上のカチオン性ポリマー類を用いてコーティングすることが望ましい。本フィルター材料のミクロ細孔性又はメソ細孔性活性炭フィルター粒子類を、少なくとも部分的に、以下に挙げる1種以上のカチオン性ポリマー類、及び銀又は銀含有材料でコーティングすることが更により望ましい。
【0089】
しかし、コーティング材料、及びその他のフィルター添加物が、フィルター粒子自体よりも、フィルターに対するコストを増大させることを当業者は理解するであろう。その上、コーティング材料は飲料水中に粒子から流出し、場合によっては悪影響を伴う可能性があり得る。従って、本明細書に記載するコーティング材料及びその他添加物がある程度の効果をもたらす一方で、本発明の活性炭粒子に添加物を追加しない状態での同様の効果の実現が非常に望ましい。
【0090】
使用するポリマーは、アミン又は四級窒素、又は両者の混合物を含む必要があり、連鎖成長又はステップ成長重合手順により、対応するモノマーを用いて調製することができる。これらのモノマーはまた、必要に応じて、他のモノマーと共重合が可能である。ポリマーはまた、合成又は自然に存在するバイオポリマーとすることができる。これらの任意のポリマーが、原料源には関係なくアミン又は四級窒素類を含まない場合、適当なグラフト反応により、これらの官能基を付加することができる。ポリマーが四級窒素を持たずアミン窒素を含む場合、アミン官能基は、水中でプロトン化するために十分に塩基性で、炭素によるあらゆる陰性電荷を圧倒するために、ポリマーを十分に陽性にしなくてはならない。窒素類が十分に塩基性でない場合、塩化メチル、硫酸ジメチル、又はその他一般的なアルキル化剤による反応により、アミン窒素類を含むポリマーを四級化することができる。本明細書で使用する時、語句「カチオン性コーティング材料」は、フィルター粒子をコーティングするのに用いるカチオン性ポリマーを意味する。
【0091】
本発明で用いるのに好適なカチオン性ポリマーの例で、連鎖成長重合により調製されるものには、ポリビニルアミン、ポリ(N−メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ポリビニルピリジニウム、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、及びポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
本発明で用いるのに好適なカチオン性ポリマーの例で、ステップ成長重合により調製されるものには、ポリエチレンイミン、ポリリシン、DAB−Am及びPAMAMデンドリマー(又はアミン又は四級窒素官能基を含むハイパーブランチポリマー類)、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、及びアミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンなどのモノマーから構築可能な任意の多くのポリアミノシロキサン類が挙げられるがこれらに限定されない。
【0093】
本発明で用いるのに好適なカチオン性ポリマーの例で、バイオポリマーであるものには、キトサン、及びデンプンが挙げられ、後者は塩化ジエチルアミノエチルなどの試薬類を用いて付加される。
【0094】
本発明で用いるのに好適なカチオン性ポリマーの例で、アミン窒素を含むが四級化により更に塩基性になるものには、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化、及びエピクロロヒドリンとのポリアミノアミド類のアルキル化が挙げられる。
【0095】
本発明で用いるのに好適なその他のカチオン性ポリマーは、一般に凝固剤及び凝集剤である。また、カチオン性モノマー類を有するカチオン性ポリアクリルアミドである、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(AETAC)、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、さらには、イオネン類及びシラン類も、本明細書に用いることが可能である。
【0096】
本発明に用いるのに好ましいカチオン性ポリマーには、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリ−[2−(2−エトキシ)−エトキシエチル−グアニジニウム]クロライドが挙げられる。
【0097】
本発明のカチオン性ポリマーを、物理吸着若しくは化学架橋により、炭素表面に付着させることができる。物理吸着は、ポリマー溶液を炭素表面上に噴霧することにより、又はポリマー溶液を水中で炭素懸濁液に添加することにより達成することができる。この利用方法は、本発明の全てのポリマー類に適用可能である。化学架橋は、一般には、架橋反応を起こすことができるポリマー類にのみ適用可能である。これにより、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドのホモポリマー、及び反応性の官能基を持たないその他任意のポリマーが除外されるであろう。反応性ポリマーが熱硬化性(例えば、エピクロロヒドリンでグラフト化されたポリアミノアミド)の場合、前述の二法の内1つを用いて炭素表面に簡単に付加、加熱することができる。反応性ポリマーが熱硬化性でない場合であれば、炭素表面へ適用する前に、ポリマー溶液中に好適な架橋分子を導入する必要がある。本発明のポリマー(全てが反応性求核官能基を含む)において、架橋分子は、求電子性でなくてはならず、クエン酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル、3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシランなどを含むことができる。架橋反応中、ポリマーは炭素と共有結合を形成することができるが、これは本発明の要件ではない。好ましくは、カチオン性コーティング材料と活性炭フィルター粒子類の重量比は、重量で、約1:10,000〜約1:1である。
【0098】
V.本発明のフィルター
図1を参照するとき、本発明に従って製造される例示的なフィルターを説明する。フィルター20は、流入口24及び流出口26を有する円筒の形態のハウジング22を備える。ハウジング22は、当該技術分野で既知のように、フィルター20の意図される用途及び所望の性能に応じて、様々な形態、形状、サイズ及び配置で提供することができる。例えば、フィルター20は、液体がハウジング22の軸に沿って流れるように流入口24と流出口26が配置されている、軸流フィルターであってよい。あるいは、フィルター20は、流体(例えば、液体、気体、又はこれらの混合物のいずれか)がハウジング22の半径に沿って流れるように流入口24と流出口26が配置されている、半径流フィルターとすることができる。軸又は半径流形状のどちらの場合でも、フィルター20は好ましくは、少なくとも約3.2cm(0.5in.)、より好ましくは少なくとも約19.4cm(3in.)、及び最も好ましくは少なくとも約32.2cm(5in.)の正面面積に、及び好ましくは、少なくとも約0.32cm(0.125in.)、少なくとも約0.64cm(0.25in.)、より好ましくは少なくとも約1.27cm(0.5in.)、及び最も好ましくは少なくとも約3.81cm(1.5in.)のフィルター深さに適応するように構成されてもよい。半径流フィルターでは、フィルター長さは、少なくとも約0.64cm(0.25in.)、より好ましくは少なくとも約1.27cm(0.5in.)、最も好ましくは少なくとも約3.81cm(1.5in.)であってよい。更には、フィルター20は、軸流部分と半径流部分の両方を含むことができる。
【0099】
ハウジングは、また、本発明の範囲から逸脱することなく、別の構造の一部として形成されてもよい。本発明のフィルターは、水に使用するのに特に適しているが、他の流体(例えば、空気、気体、及び空気と液体との混合物など)を使用できることがわかる。そのため、フィルター20は総称的な液体フィルター又は気体フィルターを意味することが意図されている。流入口24及び流出口26のサイズ、形状、間隔、配列及び位置決めは、当該技術分野で既知のように、フィルター20の流量及び意図される用途に適応するように選択することができる。好ましくは、フィルター20は、以下に限定されないが、家全体用のフィルター、冷蔵庫フィルター、飲料水装置(例えば、水を入れるボトルなどのキャンプ用品)、蛇口に取り付けるフィルター、シンク下フィルター、医療機器フィルター、産業用フィルター、空気フィルターを含む、住居用又は商業用の飲料水用途に使用するように構成される。本発明で使用するのに好適なフィルター構成、飲料水装置、消費者用機器、及び他の水ろ過装置の例は、米国特許番号第5,527,451号、同第5,536,394号、同第5,709,794号、同第5,882,507号、同第6,103,114号、同第4,969,996号、同第5,431,813号、同第6,214,224号、同第5,957,034号、同第6,145,670号、同第6,120,685号及び同第6,241,899号に開示されており、それらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。飲料水用途では、フィルター20は、好ましくは、約8L/分未満、又は約6L/分未満、又は約2L/分〜約4L/分の流量に適応するように構成されてもよく、フィルターには、フィルター材料が約2kg未満、又はフィルター材料が約1kg未満、又はフィルター材料が約0.5kg未満入っていてもよい。更に、飲料水用途では、フィルター20は、好ましくは、少なくとも約1秒、好ましくは少なくとも約3秒、好ましくは少なくとも約5秒、より好ましくは少なくとも約10秒、最も好ましくは少なくとも約15秒の平均流体滞留時間に適応するように構成されてもよい。更に、飲料水用途では、フィルター20は、好ましくは、少なくとも約0.4cm、好ましくは少なくとも約4cm、より好ましくは少なくとも約14cm、最も好ましくは少なくとも約25cmのフィルター材料細孔体積に適応するように構成されてもよい。
【0100】
また、フィルター20は、逆浸透システム、紫外線システム、イオン交換システム、電気分解水システム、及び当業者に既知の他の水処理システムを含む、他のフィルターシステムと組合わせて使用してもよいフィルター材料28を含む。
【0101】
また、フィルター20は、1種類以上のフィルター粒子類(例えば、繊維、顆粒など)を含むフィルター材料28を含む。本発明のフィルター材料であるミクロ細孔性粒子類に加え、1以上のフィルター粒子類が、メソ細孔性、より好ましくはメソ細孔性及び塩基性、及び最も好ましくはメソ細孔性、塩基性及び低酸素であることができ、前述の特性を有することができる。ミクロ細孔性;メソ細孔性;又はメソ細孔性及び塩基性;又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素である活性炭フィルター材料28を、銀、銀含有材料、上記で定義した任意のカチオン性ポリマーコーティング材料、又はこれらの組合せを用いて、部分的に又は全体的にコーティングすることができる。ミクロ細孔性;メソ細孔性;又はメソ細孔性及び塩基性;又はメソ細孔性、塩基性及び低酸素である活性炭フィルター材料28は、活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、カーボンナノチューブ、活性炭ナノチューブ、単壁カーボンナノチューブ(SWNT)、多壁カーボンナノチューブ(MWNT)、ゼオライト、活性アルミナ、マグネシア、活性マグネシア、珪藻土、銀粒子、活性シリカ、ハイドロタルサイト、ガラス、有機金属骨格物質(MOF)、ガラス粒子又は繊維、合成ポリマーナノ繊維、天然ポリマーナノ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン無水マレイン酸コポリマー繊維、砂、粘土、及びこれらの組合せから成る群から選択される他の材料と組合わせることができる。
【0102】
その他材料は、銀、銀含有材料、上記で定義した任意のカチオン性コーティング材料、又はこれらの組合せを用いて、部分的に又は全体的にコーティングすることができる。ミクロ細孔性及びメソ細孔性及び塩基性活性炭が組合されてもよいフィルター材料並びにフィルター材料の組合せの例は、本明細書に参考として組み込まれる米国特許番号第6,274,041号、同第5,679,248号、及び本明細書に参考として組み込まれる米国特許出願09/628,632に開示されている。前述のように、フィルター材料は、緩い形態又は相互連結された(例えば、ポリマー結合剤又は他の手段で一部又は全部結合され、一体化構造を形成している)形態のいずれかで提供することができる。
【0103】
前述のように、フィルター粒子の大きさ、形状、複合構成、電荷、多孔率、表面構造、官能基などを変えることにより、フィルター材料を異なる用途(例えば、プレ・フィルター又はポスト・フィルターとしての用途)に使用してもよい。また、直前に記載したように、フィルター材料を他の材料と混合して特定の用途に適合させてもよい。フィルター材料は、他の材料と混合されるか否かに関わらず、緩いろ床、ブロック(本明細書に参考として組み込まれる米国特許番号第5,679,248号に記載の共押出しブロックを包含する)及びこれらの混合物として使用されてもよい。フィルター材料と共に使用してもよい好ましい方法には、セラミック−炭素混合物(結合はセラミックの焼成により生じる)によって製造されるブロックフィルターの形成、本明細書に参考として組み込まれる米国特許番号第6,077,588号に記載の不織布中での粉末の使用、本明細書に参考として組み込まれる米国特許番号第5,928,588号に記載のグリーン強度法の使用、本明細書に参考として組み込まれるブロックを形成する樹脂バインダの活性化、又はPCT国際公開特許WO98/43796に記載の抵抗加熱法の使用が挙げられる。
【0104】
VI.フィルター実施例
(実施例1)
ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子が入っているフィルター
バーナビー・サトクリフ社(Barnebey Sutcliffe)製のミクロ細孔性ココナッツ炭素約5.5gを、バージニア州コビントン(Covington, VA)のミード・ウエストベイコウ社(MeadWestvaco Corp.)製の、メソ細孔性及び塩基性活性炭粉末であるニューチャー(Nuchar)(登録商標)RGC(Dv,0.5は約45μmに等しい)13.0gと混合し、次いでオハイオ州シンシナチ(Cincinnati, OH)のエクイスター・ケミカルズ社(Equistar Chemicals, Inc.)のミクロセン(Microthene)(登録商標)低密度ポリエチレン(LDPE)FN510−00バインダ約7g、及びジョージア州ノークロス(Norcross,GA)のセレクト社(Selecto, Inc.)製のアルシル(Alusil)(登録商標)70アルミノシリケート粉末約2gと混合する。混合前に、メソ細孔性活性炭粒子類をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)でコーティングし、それを乾燥する。その後混合粉末を、内径約7.62cm(約3in.)、及び深さ約1.27cm(約0.5in.)の円形アルミニウム金型内に注ぐ。金型を閉じ、加熱したプレス機に入れ、圧盤を約204℃で1時間保持する。次いで、金型を室温まで冷却して開き、軸流フィルターを取り出す。フィルターの特性は、正面面積:約45.6cm;フィルター深さ:約1.27cm;フィルター総体積:約58mL;フィルター空隙率(約0.1μmより大きい細孔について):約0.43;及びフィルター材料細孔体積(約0.1μmより大きい細孔について):約25mL(水銀ポロシメータで測定した場合)である。フィルターを下記の試験手順に記載のテフロン(Teflon)(登録商標)ハウジングに入れる。流量が約200mL/分の時、本フィルターの圧力低下は、最初の約2,000フィルター細孔体積では、約17psi(約1.2バール、約0.12MPa)である。
【0105】
(実施例2)
ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子が入っているフィルター
バーネビー・サトクリフ社(Barnebey Sutcliffe)製のミクロ細孔性ココナッツ炭素約13.0gを、メソ細孔性塩基性活性炭粉末(Dv,0.5は約92μmに等しい)13.0gと混合し、オハイオ州シンシナチ(Cincinnati, OH)のエクイスター・ケミカルズ社(Equistar Chemicals, Inc.)のミクロセン(Microthene)(登録商標)低密度ポリエチレン(LDPE)FN510−00バインダ約7g、及びジョージア州ノークロス(Norcross, GA)のセレクト社(Selecto, Inc.)製のアルシル(Alusil)(登録商標)70アルミノシリケート粉末約2gと混合する。混合前に、メソ細孔性活性炭粒子類をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)でコーティングし、それを乾燥する。その後混合粉末を、内径約7.62cm(約3in.)、及び深さ約1.27cm(約0.5in.)の円形アルミニウム金型内に注ぐ。金型を閉じ、加熱したプレス機に入れ、圧盤を約204℃で1時間保持する。次いで、金型を室温まで冷却して開き、軸流フィルターを取り出す。フィルターの特性は、正面面積:約45.6cm;フィルター深さ:約1.27cm;フィルター総容積:約58mL;フィルター空隙率(約0.1μm超過の細孔について):約0.44;及びフィルター材料細孔容積(約0.1μm超過の細孔について):約25.5mL(水銀ポロシメータで測定した場合)である。フィルターを下記の試験手順に記載のテフロン(Teflon)(登録商標)ハウジングに入れる。流量が約200mL/分の時、本フィルターの圧力低下は、最初の約2,000フィルター細孔体積では、約17psi(約1.2バール、約0.12MPa)である。
【0106】
(実施例3)
ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子を含むフィルターにおける、TTHM、ウイルス、及び細菌除去
上記実施例1及び2に従って製造したフィルター、及び異なるミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子類混合物を用いて同様の方法で製造したフィルターを用い、TTHM、MS−2バクテリオファージ、及びラオウルテラ菌(Raoultella terrigena)(R.t.)の除去能を検査する。0.65μmの開口部を有する単プライの非荷電ナイロン(コネチカット州メリデン(Meriden CT)のキュノ社(Cuno, Inc.)製のBLA065)を用いて、フィルターを巻いた。メソ細孔性活性炭のみを含むフィルター、及びミクロ細孔性活性炭粒子類のみを含むフィルターについても検査を行う。これらの検査結果を以下の表3に示す。水用フィルター製造の当業者であれば、このような検査の条件が、フィルター容量、流れの種類(例えば軸流、半径流、その他)、及び使用した炭素の種類によって決まることを理解するであろう。このようなプロトコルの1つは、1987年に米国環境保護局(EPA)が提供した「微生物学的浄水器の試験に関する指針基準及びプロトコル(Guide Standard and Protocol for Testing Microbiological Water Purifiers)」である。該プロトコルは、公共上水道又は私設上水道における、健康に関わる特定の汚染物質を低減するように設計された飲料水処理システムの性能に関する最小限の要件を確立している。MS−2バクテリオファージ(又は、単にMS−2ファージ)は、その大きさ及び形状(即ち、約26nm及び20面体)が多くのウイルスと類似しているため、一般にウイルス除去のための代表的な微生物として使用される。そのため、MS−2バクテリオファージを除去するフィルターの能力は、他のウイルスを除去する能力を実証する。同様に、TTHMを除去するフィルターの能力は、水中の一般的な化学物質を除去する能力を表す。
【0107】
表3では、メソ細孔性活性炭粒子類は、ミード・ウエストベイコウ社(MeadWestvaco Corp.)から入手できる様々な種類のRGC炭素である。nPSD炭素は、複数の粒径分布が狭い(narrow particle size distribution:nPSD)粒子を製造するため、特定の大きな及び小さな粒子を除く処理を受けたニューチャー(Nuchar)(登録商標)RGC活性炭である。ミクロ細孔性炭素は、バーネビー・サトクリフ社(Barnebey Sutcliffe)から市販されるココナッツ系の炭素である。フィルターに、クロロホルム(即ち、ANSI(米国規格協会)規格53−2002で推奨されるTTHMの代替物質)、R.t.菌、及びMS−2バクテリオファージを注入し、除去効率を様々な時点で測定し、一部を以下に示す。
【0108】
TTHM除去効率は、ブレイクスルー法、即ち、溶出液中にTTHMが検出される前に、何ガロンの汚染水がフィルターを通過したか、を測定する。表3に示す様に、0〜20%のミクロ細孔性活性炭粒子類を含んでなるフィルターについては、TTHM検出前に、平均264.9L(70ガロン)の水がフィルターを通過する。しかし、30%ミクロ細孔性炭素粒子類では、TTHM検出前にフィルターを通過した水量は、1回の検査で二倍以上の605.7L(160ガロン)であり、その他のフィルターでは378.5L(100ガロン)以上であった。これら、特に約25%のミクロ細孔性活性炭含量においてTTHM除去能が急激に上昇する結果は、当業者にとって驚くべき予想外のものである。
【0109】
R.t.及びMS−2の除去率は、上記で定義した対数除去で測定する。示す様に、R.t.の対数除去は、100%ミクロ細孔性活性炭粒子類を含んでなるフィルター以外、全てのフィルターで1〜16日目まで約7logである。100%ミクロ細孔性活性炭粒子類を含んでなるフィルターにおいて、R.t.除去能は、1日目の約6logから、5日目の約3.7、9日目の約2.3、及び16日目の約1.5logまで減少する。同様に、MS−2の対数除去は、100%ミクロ細孔性活性炭粒子類を含んでなるフィルター以外、全てのフィルターで1〜16日目まで約4〜5logである。100%ミクロ細孔性活性炭粒子を含んでなるフィルターにおいて、MS−2除去は、約1logから始まり、検査期間中同程度で維持した。100%ミクロ細孔性活性炭フィルターにおけるMS−2及びR.t.の除去が比較的劣っていることは当業者にとって驚くべきことではなく、50%以上のミクロ細孔性炭素粒子類を有するフィルターが、これらウイルス及び細菌に対する優れた除去能を保持していることが、驚くべき予想外の結果である。即ち、ミクロ細孔性及びメソ細孔性活性炭粒子類が特定の比で混合される場合、それぞれの粒子の特性を保持できることが、実に驚くべき予想外の結果である。
【表1】

* 測定には、フィルターにナイロンを巻かずに用いた。
【0110】
VII.キット
本発明は、本発明の炭素フィルター粒子及び/又はフィルター材料の使用により、微生物の除去利益をもたらすという情報を言葉及び/又は絵により消費者に伝えること、及びこの情報が他のフィルター製品より優れているという主張を含むことも可能である。非常に望ましい変形では、本発明の使用によりナノサイズの微生物のレベルが低減することを、その情報が包含することも可能である。従って、本発明の使用により、本明細書で論じられるように、飲用に適した又はより飲用に適した水などの利益が得られるという、消費者への言葉及び/又は絵による情報を付随した包装を使用することが重要である。この情報は、消費者に知らせるために、例えば、通常のメディア全てにおける広告、並びに包装又はフィルター自体の上の説明及び図象を含み得る。より詳細には、フィルターの包装又はハウジングに、フィルター又はフィルター材料が、細菌の減少、ウイルスの減少、微生物の減少、細菌の除去、ウイルスの除去、微生物の除去、殺菌、殺ウイルス、殺微生物、TTHM除去、TTHM減少、又はこれらの任意の組合せをもたらすという情報を包含することができる。
【0111】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の原理及びその実際的な用途の最良の説明を提供し、それによって当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って利用できるように、選択され説明された。このような全ての修正及び変形は、適正に、合法的に、公正に権利を与えられる範囲に従って解釈される時、添付の請求項によって決定されるような本発明の範囲内にある。
【0112】
本明細書は、本発明を詳細に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、添付の図面と併せてなされる以下の説明から、より一層理解が深まると考える。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に従って製造される半径流フィルターの断面側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水を提供するためのフィルターであって、
(a)流入口及び流出口を有するハウジングと、
(b)前記ハウジング内に配置されるフィルター材料と
を特徴とし、前記フィルター材料が、25重量%〜75重量%の複数のミクロ細孔性活性炭粒子類、及び25重量%〜75重量%の複数のメソ細孔性活性炭フィルター粒子類を含んでなる、フィルター。
【請求項2】
30重量%〜55重量%の複数のミクロ細孔性活性炭粒子類を含んでなる、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記複数のミクロ細孔性活性炭粒子類が、ココナッツ系活性炭粒子類である、請求項1又は2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記複数の活性炭フィルター粒子類が、ポリビニルアミン、ポリ(N−メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ポリビニルピリジニウム、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、DAB−Am及びPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、グラフト化デンプン、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化生成物、ポリアミノアミドのエピクロロヒドリンとのアルキル化生成物、カチオン性モノマーを有するカチオン性ポリアクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(AETAC)、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、イオネン、シラン、及びこれらの混合物より成る群から選択されるカチオン性ポリマーで少なくとも部分的にコーティングされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項5】
前記カチオン性ポリマーが、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリ−[2−(2−エトキシ)−エトキシエチル−グアニジニウム]クロライドより成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項6】
前記ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子類、メソ細孔性活性炭フィルター粒子類、又はその両方の少なくとも一部が、銀又は銀含有材料でコーティングされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項7】
活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、ゼオライト、活性アルミナ、活性マグネシア、珪藻土、活性シリカ、ハイドロタルサイト、ガラス、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン無水マレイン酸コポリマー繊維、砂、粘土、及びこれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の他の材料を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項8】
前記他の材料の少なくとも一部が、銀、銀含有材料、カチオン性ポリマー、及びこれらの混合物より成る群から選択される材料でコーティングされる、請求項7に記載のフィルター。
【請求項9】
25重量%〜75重量%の複数のミクロ細孔性活性炭粒子類、及び25重量%〜75重量%の複数のメソ細孔性活性炭フィルター粒子類を特徴とする、フィルター材料。
【請求項10】
前記複数のミクロ細孔性活性炭粒子類がココナッツ系活性炭粒子類であり、前記複数の活性炭フィルター粒子類が、ポリビニルアミン、ポリ(N−メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ポリビニルピリジニウム、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、DAB−Am及びPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、グラフト化デンプン、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化生成物、ポリアミノアミドのエピクロロヒドリンとのアルキル化生成物、カチオン性モノマーを有するカチオン性ポリアクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(AETAC)、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、イオネン、シラン、及びこれらの混合物より成る群から選択されるカチオン性ポリマーで少なくとも部分的にコーティングされる、請求項9に記載のフィルター材料。

【図1】
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【公表番号】特表2008−534269(P2008−534269A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504544(P2008−504544)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/013262
【国際公開番号】WO2006/110632
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506361889)ピュール、ウォーター、ピューリフィケーション、プロダクツ、インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】PUR WATER PURIFICATION PRODUCTS, INC.
【出願人】(507290283)スリー、エム、イノベイティブ、プロパティーズ、カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY
【Fターム(参考)】