ミシンのボタン供給装置
【課題】ボタン格納部の奥行きの調節を一括的に行う。
【解決手段】ボタン供給装置2の水平送り機構10は、半径方向外側が開口したボタン格納部23,24,25を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体20と、回転体を回転させて複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カム50とを備え、外周カムは、複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部55を複数備えている。
【解決手段】ボタン供給装置2の水平送り機構10は、半径方向外側が開口したボタン格納部23,24,25を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体20と、回転体を回転させて複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カム50とを備え、外周カムは、複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部55を複数備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンにボタンを供給するボタン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示す従来のボタン供給装置1000は、図示の右側にボタンフィーダが配置され、左側にボタン付けミシンが配置される。
ボタン供給装置1000は、二つのボタンガイド1001、1002の間をボタン搬送経路とし、当該搬送経路を上方から覆い、ボタン搬送経路の高さを規制する上側ガイド1003の下側において、図示しないベルトコンベアにより右端から左方にボタンを順次搬送し、ボタンガイド1001,1002の左側に設けられた回動式のアーム1004の回動端部のボタンホルダ1005によりボタンを下側から保持して、回動によりミシンに供給を行う。上記ボタン搬送経路を形成する二つのボタンガイド1001,1002は、種々のボタンサイズに対応するためにその間隔が調節可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12に示す他の形式のボタン供給装置2000は、フィーダーボウルに入れられたボタンを一列に並べて搬送する供給機構2100と、供給機構2100から第二の水平搬送機構側にボタンを受け渡す第一の水平搬送機構2200と、第一の水平搬送機構2200からボタン狭持腕2400へボタンを受け渡す第二の水平搬送機構2300とを備えている。
【0004】
図13に示すように、前記第一の水平搬送機構2200は、主に上から選択リング2210と、蓋体2220と、規制板2230と、回転板2240と、第一の支持体2250で構成されている。
回転板2240は、ボタンの外径に合せた大中小の三種類の切欠部2241,2242,2243を円周に沿って四組備えており、ボタンは、切欠部2241,2242,2243のいずれか一つに挿入され、第一の支持体2250の底板の上を摺動して外周側壁に沿って案内されて、回転搬送される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
規制板2230は、回転板2240の切欠部2241,2242,2243に対して選択的に配置することが可能な調整部材2231と、四組の切欠部2241,2242,2243に対応して四本のアームを備えると共に各アームの先端部で個別に調整部材2231を支持する装着部材2232とを備え、調整部材2231は、装着部材2232に対してネジ止めにより位置調節が可能となっている。
規制板2230は回転板2240と同心で配置されると共に、回転板2240に設けられた位置決めピン2244が挿入可能な位置決め穴2233が三つ形成されており、いずれの位置決め穴2233に位置決めピン2244を挿入するかによって、調整部材2231がいずれの切欠部2241,2242,2243に対して配置されるかが決定されるようになっている。
そして、調整部材2231は、切欠部2241,2242,2243のいずれかの内側に配置されると、切欠部の内部にボタンが複数入り込まないように防止すると共に、装着部材2232に対する調整部材2231の位置調節を行うことにより、切欠部2241,2242,2243に収まるボタン外径を調整する機能を有している。
【0006】
蓋体2220は、ボタンが回転板2240の切欠部2241,2242,2243にボタンが複数個挿入されないように、ボタン厚みに対する調整機能を有している。
選択リング2210は、ボタンが回転板2240のどの切欠部2241,2242,2243に挿入されるかを選択するための機能を有している。
【0007】
規制板2230の調整部材2231を切欠部2241内において位置調整する場合を図14において説明する。
調整部材2231は、前述のように、ねじ2231aを緩めて、調整部材2231を長孔2231bに沿って移動させることによって、調整部材2231の先端部の位置を調整し、切欠部2241に挿入されるボタンB1が、奥側へ入り込み過ぎないよう調整する。
このとき、調整部材2231の位置調整が適切でなく、ボタンB1が奥側へ入り込み過ぎた場合には、次に供給される順番のボタンB2も一部分が切欠部2241に入り込み、回転板2240が回転した際に、切欠部2241の回転方向側の縁部にボタンB2が接触して弾き飛ばされる不具合が発生する。
また、調整部材2231の位置調整が適切でなく、ボタンB1が切欠部2241に入りきらない場合には、回転板2240が回転した際に、ボタン供給部2100のボタン送出口2101に接触して、ボタンB1が挟まれて、ボタンB1が破損してしまったり、回転板2240が停止してしまう不具合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3265505号公報
【特許文献2】特許第2512629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のボタン供給装置1000では、ミシンのボタン狭持腕へアーム1004で供給するが、ボタン搬送路に沿って連続して搬送されたボタンをアームへの受け渡し位置で一時停止させる必要があるために、ボタンが詰まる問題があった。
図15に示すように、特に、ボタンの表裏の面の形状が湾曲しているような場合に、ボタンの詰まりが発生しやすく、ボタン詰まりを発生すると、ボタンを全く供給できなくなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2のボタン供給装置では、ボタンを1個ずつ個別に搬送しているので、上記のようなボタン詰まりの問題は発生しないが、ボタン段取り変えで、ボタン仕様(外径や厚み)が変わると、外径については、規制板2230に設けられた4箇所の調整部材2231を個別に調整する必要があり、調整に時間がかかり、生産性が低下するという問題があった。
また、ボタンの厚みについては、蓋体2220を固定しているねじ2221を緩めて行うこととなるが、この高さ調整作業は、ボタン厚さが2[mm]前後の物が多いことから0.1[mm]の微細な単位での調整が必要となり、作業が繁雑で時間を要するものとなっていた。
【0011】
また、上記従来のボタン供給装置は、調整時及びボタン供給時において、視認性を確保するために、蓋体2220や回転板2240が透明な樹脂材で形成されているため、形成時の抜き勾配があり外径精度も低いので、回転板2240に形成された蓋体2220の支軸2245と蓋体2220における支軸2245の挿通穴2222の穴径の隙間が大きく、蓋体2220を回転板2240にねじ締めした際に蓋体2220が傾きを生じて、蓋体2220の四組の切欠部2241,2242,2243の高さにばらつきがでるので、このばらつきも考慮して高さを調整する必要があり、蓋体2220の高さ調整が難しく、このような理由からも、調整に時間を要するものとなっていた。
また、回転板2240が樹脂であることから、その支軸2245は、蓋体2220のねじ締めによって跡が付き、高さを微調整する際に、ねじ2221を狙い通りの位置に固定することを妨げて、微調整が困難となるという問題も生じていた。
また、ボタンを回転供給する回転板2240の切欠部2241,2242,2243は、ボタン外径によって適正な切欠部2241,2242,2243をいずれか一つ選択する必要があるが、ボタン外径に対する切欠部の選択ゲージが無く、選択に迷うことがあった。
【0012】
本発明は、搬送するボタンの厚さ、外径に応じた調整を容易且つ適切に行うことが可能なボタン供給装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、順次ボタンを繰り出すボタン供給機構と、前記ボタン供給機構からボタンを受け取り、一枚ずつボタンをボタン付けミシン側に搬送する水平送り機構とを備えるミシンのボタン供給装置であって、前記水平送り機構は、半径方向外側が開口したボタン格納部を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体と、前記回転体を回転させて前記複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、前記回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、前記複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カムとを備え、前記外周カムは、前記複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記水平送り機構は、前記回転体の周囲を囲繞するガイド壁を備え、前記外周カムの複数のカム部は、前記回転体の回転方向側に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記水平送り機構は、底板と当該底板に対して前記回転体を上下動可能に支持する上下動軸と当該上下動軸に対して前記回転体を任意の高さで固定する調節手段とを備え、前記上下動軸の上に形成された水平面との対向面を有する高さ調節部材を前記回転体に固定装備し、前記高さ調節部材の対向面と前記水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、前記回転体の複数のボタン格納部の内部天井面と前記底板上面との隙間距離とが前記ボタンの挿入高さとなるように前記高さ調節部材が前記回転体に調節装備されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記上下動軸を金属で形成し、前記調節手段は、前記上下動軸に対する締結操作により前記回転体を固定する位置固定ネジを有することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記回転体は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を一定の角度間隔で複数備え、前記外周カムは、前記複数のボタン格納部の組と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを前記回転体の上面に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に回転体に装備された外周カムが複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を備えるので、外周カムを回転体に対して回転させることで、各ボタン格納部の奥行きを同時に同じ寸法に調節することが可能となり、調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
【0020】
請求項2記載の発明は、ボタン格納部にボタンを格納した状態で回転体が回転を行ってボタン搬送を行うと、周壁はボタン格納部の開口からのボタンの流出を防止する。その際、ボタンは、周壁に摺接して、回転体の回転方向とは逆側に引っ張られるように摩擦力を受ける。この場合に、仮に、外周カムのカム部が回転方向に向かうにつれて奥行きが深くなるカム形状であると、周壁とカム部とにボタンが挟まれて回転体の回転を阻害したり、ボタンが破損したりすることとなるが、本発明の場合は、外周カムのカム部が回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることから、ボタンが挟まれることがなく、円滑に回転体が回転を行い、ボタンの破損も回避することが可能となる。
【0021】
請求項3記載の発明は、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、回転体が連動して上下動を行い、各ボタン格納部の内部天井面と底板上面との隙間距離とがボタンの挿入高さとなるようになっていることから、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間にボタンを挿入する作業を行うことで、複数のボタン格納部の高さを適切に調節することができ、高さ調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
【0022】
なお、「ボタンの挿入高さ」は、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間距離と略一致することが好ましく、略一致とは、「ボタンの挿入高さ」がボタンの厚み+一定のマージンと一致することを意味するものとする。
【0023】
請求項4記載の発明は、上下動軸を金属で形成し、調節手段が上下動軸に対する締結を行う位置固定ネジを有する構成であることから、回転体の高さ調節作業の際に、位置固定ネジを締結して適正な高さで固定した場合でも、傷などが発生しにくく、当該傷により微調整位置がずれてしまうことがなく、より好適に高さの微調整を行うことが可能となる。
また、上下動軸が金属である場合には、樹脂のような抜き勾配を生じないので、回転体が傾斜して各ボタン格納部の高さが不均一になることが回避され、複数のボタン格納部を均一に同時に高さ調節を行うことが可能となると共に、当該高さ調節作業をより容易に且つ迅速に行うことが可能となる。
【0024】
請求項5記載の発明は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を有するので、外径についてより広い範囲のボタンを搬送することが可能となる。
また、外周カムのカム部はボタン格納部の組ごとに設けられていることから、カム部は同じ組となる複数種の開口幅で形成されたボタン格納部で共用することができ、外周カムのカム形状の簡易化を図ることができ、製造簡略化による生産性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
請求項6記載の発明は、複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを有するので、複数種の開口幅のボタン格納部のいずれを使用するべきかを即座に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ボタン付けミシン及び当該ボタン付けミシンにボタン供給を行うボタン供給装置の斜視図である。
【図2】第一の水平送り機構の主要部の分解斜視図である。
【図3】図2に対して第一の水平送り機構の回転中心線回りに180°視点を変えて見た分解斜視図である。
【図4】回転体及び外周カムの回転中心線に沿った断面視による高さ調節動作を示す断面動作説明図であり、図4(A)は厚さの薄いボタンに合わせた高さ調節動作を示し、図4(B)は厚さの厚いボタンに合わせた高さ調節動作を示す。
【図5】図4におけるX−X線に沿った断面視によるボタン格納部の奥行き調節作業を示す断面動作説明図であり、図5(A)は調節前の状態を示し、図5(B)は調節後の状態を示している。
【図6】第一の水平送り機構の平面図である。
【図7】図7(A)は最も小さい小サイズのボタン選択ゲージの平面図、図7(B)は図7(A)のZ−Z線に沿った断面図である。
【図8】一つのカム部の回転角度と外径との関係を示すカム曲線である。
【図9】図9(A)はボタン搬送時の回転体の回転方向に向かって奥行きが浅くなるカム形状のカム部によるボタンの搬送状態を示す説明図であり、図9(B)ボタン搬送時の回転体の回転方向に向かって奥行きが深くなるカム形状のカム部によるボタンの搬送状態を示す説明図である。
【図10】図10(A)は図9(A)のカム部のボタン周りを拡大した説明図、図10(B)は図9(B)のカム部のボタン周りを拡大した説明図である。
【図11】ミシンにボタン供給をおこなう従来のボタン供給装置の平面図である。
【図12】ミシンにボタン供給をおこなう他のボタン供給装置の斜視図である。
【図13】他のボタン供給装置の第一の水平搬送機構の詳細を示す分解図である。
【図14】規制板の調整部材を切欠部内において位置調整している様子を示す平面図である。
【図15】図11のボタン供給装置のボタン詰まりの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の全体構成]
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1はボタン付けミシン1及び当該ボタン付けミシン1にボタン供給を行うボタン供給装置2の斜視図である。
ボタン付けミシン1は、ボタンBをミシンベッド1a上で水平に保持するボタン挟持腕1bを備えている。
ボタン供給装置2は、複数のボタンBを保持すると共にボタンBを一列に並べて供給するボタン供給機構3と、ボタン供給機構3からボタンBを受け取り、水平な回転面に沿って一枚ずつボタンBの搬送を行う第一の水平送り機構10と、第一の水平送り機構10から受け取ったボタンBを一枚ずつ水平な回転面に沿ってミシン側に搬送する第二の水平送り機構4と、第二の水平送り機構4のボタン排出口からミシン1のボタン挟持腕へのボタンBの受け渡しを行うアーム機構5とを備えている。
なお、ボタン付けミシン1、ボタン供給装置2のボタン供給機構3、第二の水平送り機構4及びアーム機構5については、従来周知の構成(特許第2512629号公報参照)と概ね同様なので、これらについては、簡略な説明のみを行い、詳細な説明は省略する。
【0028】
ボタン供給機構3は、内壁面に螺旋状通路が形成されたフィーダーボウル3aと、下側からフィーダーボウルに微振動を与える振動機構3bとを備え、微振動によりボタンを螺旋状通路に沿って一列に並んで移動させると共にその送出口3cから順次一枚ずつ水平方向に沿ってボタンBを繰り出すようになっている。
【0029】
第二の水平搬送機構4は、後述する第一の水平送り機構10の皿40の下面に一部重合するよう水平に保持され、第一の水平送り機構10に間欠的なボタン送り動作に同期して1/8回転毎に間欠回転する第二の回転板4aと、第二の回転板4aを回転させる駆動機構4bと、第二の回転板4aの下面に重合するよう保持された円板状の底板4cとを備えている。
第二の回転板4aには、ボタンを格納する8個の貫通孔が等間隔に形成されており、それらが、底板4cに形成された搬出口に間欠停止することで、貫通孔に格納されたボタンを搬出口から下方に排出することが可能となっている。
【0030】
アーム機構5は、第二の水平搬送機構4のボタンの排出口の真下からボタン付けミシン1のボタン挟持腕1bの挟持位置まで回動によりボタンBを搬送する回動アーム5aと、第二の回転板4aによりボタンの排出口まで搬送されたボタンBを微少な回転角度で往復回動させて回動アーム5aが有する係止ピンにボタンBの縫着孔を嵌合させるボタン位置修正部材5bとを備えている。
【0031】
[第一の水平送り機構]
図2は第一の水平送り機構10の主要部の分解斜視図、図3は図2に対して第一の水平送り機構10の回転中心線回りに180°視点を変えて見た分解斜視図である。
この第一の水平送り機構10は、半径方向外側が開口した複数サイズのボタン格納部の組を円周方向に沿って90°の角度間隔で四つ備える回転体20と、図示しない基台に固定されて回転体20の周囲を囲繞するガイド壁42,43を備えた皿40と、回転体20を回転させて格納部内のボタンの搬送を行う図示しない駆動手段と、回転体20の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体20に装備され、ボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カム50と、複数サイズのボタン格納部の組の中から一つのみを開口させる選択リング70と、皿40に対する回転体20の高さを調節する調節手段としての高さ調節機構80とを備えている。
【0032】
[皿]
皿40は、基台に対して水平に装備された底板41と、底板41の外周から立ち上げられた二つのガイド壁42,43とを備えている。
図2及び図3に示すように、底板41は、平面視で中央部が広く開口したリング状であって、その円周の一部が切り欠かれている。皿40と回転体20とは同心で配置され、回転体20は皿40の底板41の上面においてボタンBを摺動させながら円周に沿って搬送を行う。そして、底板41の円周における一部切り欠かれた部位は、搬送したボタンBを下方に排出する排出口44となっている。また、皿40における排出口44に対して180
°反対となる位置は、ボタン供給機構3から繰り出されるボタンTが供給される受取口45となっている。
ガイド壁42は、底板41の外縁部における、受取口45からボタン搬送回転方向(図2における反時計回り)に向かって排出口44に至るまでの範囲で立ち上げられており、ガイド壁43は、底板41の外縁部における、排出口44からボタン搬送回転方向に向かって受取口45に至るまでの範囲で立ち上げられている。
そして、各ガイド壁42,43は、回転体20の外周面に近接するよう形成されており、当該外周面に形成されたボタン格納部23,24,25の開口部から内部のボタンTが搬送時にこぼれ落ちないように阻止する機能を有するものである。
かかる構造により、皿40は、ボタン供給機構3から供給口45にボタンTが供給され、回転体20により底板41上を水平な円周に沿ってボタンTが搬送され、排出口44から第二の水平送り機構4に対してボタンBの受け渡しが行われる。
【0033】
[回転体:全体概略]
回転体20は、円板状の回転板21と、回転板21の上面中心位置を貫通する略円筒状の筒状体22とから主に構成されている。この回転体20は、回転板21が水平となり、筒状体22が鉛直上下方向を向くように、駆動手段に支持されている。また、駆動手段により、皿40の上面で外周カム50と一体となって90°ごとの間欠的な回転が行われる。
【0034】
[回転体:ボタン格納部]
図4は回転体20及び外周カム50の回転中心線に沿った断面視による高さ調節動作を示す断面動作説明図であり、図5は図4におけるX−X線に沿った断面視によるボタン格納部23,24,25の奥行き調節作業を示す断面動作説明図である。なお、図5では皿40の図示は省略している。
回転板21は、その下面において下方に凸となる複数のブロックを外周に沿って並べて形成しており、当該ブロック同士の間がボタン格納部23,24,25となっている。また、このように複数のブロックを形成した構造により、回転板21の外周面には、ボタン格納部23,24,25ごとの矩形の開口部が形成され、当該各開口部から回転板21の中心に向かってボタンBが挿入されることにより格納されるようになっている。
さらに、ボタン格納部23,24,25は、それぞれ、円周方向における幅がそれぞれ、大、中、小の三段階のサイズに設定されており、これらスリーサイズのボタン格納部23,24,25が一組となって集合配置され、このボタン格納部の組は回転板21に90°間隔で四組形成されている。
【0035】
[回転体:回転板上面]
図6は第一の水平送り機構10の平面図である。図示のように、回転板21の上面には、ボタン選択ゲージ26,27,28が形成されている。各ボタン選択ゲージ26,27,28は、いずれも、回転板21の上面においてU字状の凸条から形成されており、U字における開口部が外側に向けられている。そして、各ボタン選択ゲージ26,27,28の開口部の幅は、前述したボタン格納部23,24,25の開口部の幅と一致している。これにより、ボタン選択ゲージ26,27,28の開口部に実際にボタンTをはめ込むことで各ボタン格納部23,24,25にボタンTが格納可能かを確認することが可能となっている。
【0036】
これらのボタン選択ゲージ26,27,28の使用方法を説明する。図7(A)は最も小さい小サイズのボタン選択ゲージ28の平面図、図7(B)は図7(A)のZ−Z線に沿った断面図である。この小サイズのボタン選択ゲージ28に限っては、U字における底部が欠損した形状となっている。
ボタン選択ゲージ26,27,28の使用の際には、この小サイズのボタン選択ゲージ28から順番にサイズ確認を行う。ボタン選択ゲージ28の開口幅Wは前述したように小サイズのボタン格納部25の開口部の幅と一致しており、欠損部の幅Wminは第一の水平送り機構10において適正に搬送可能なボタン幅の最小値を示している。つまり、ボタンTをこの小サイズのボタン選択ゲージ28に当てたときに、欠損部の幅Wminよりも小さく、通過可能であったときには、このボタン供給装置2では搬送できないサイズということとなる。また、ボタンTが通過せず、開口幅Wの範囲に収まったときには、小サイズのボタン格納部25を使用する。
【0037】
また、ボタンBがボタン選択ゲージ28に入らない場合には、隣の中サイズのボタン選択ゲージ27にボタンBを当てて、収まる場合には、中サイズのボタン格納部24を使用する。
さらに、ボタンBがボタン選択ゲージ27に入らない場合には、隣の大サイズのボタン選択ゲージ26にボタンBを当てて、収まる場合には、大サイズのボタン格納部23を使用する。この大サイズのボタン選択ゲージ26の開口幅は第一の水平送り機構10において適正に搬送可能なボタン幅の最大値を示している。従って、ボタンBをこの大サイズのボタン選択ゲージ26に当てたときに、収まらない場合には、このボタン供給装置2では搬送できないサイズということとなる。
【0038】
なお、搬送に使用するボタン格納部23,24,25のサイズ選択の切り替えは、図示しない駆動手段の回転部に対する回転体20の取り付け角度の変更によって行う。駆動手段は、DCモータとゼネバ機構による駆動源又はステッピングモータを駆動源とし、この駆動源により回転部を90°ごとに間欠的に回転駆動するよう制御が行われる。また、回転部の原点は予め一定の位置に決められており、原点から90°,180°,270°,360°の位置ごとに回転部を停止させる制御が行われる。
そして、駆動手段の回転部には、回転体20を取り付ける際の位置決めピン11が併設されている。一方、回転体20には、図6に示すように、三つの位置決め穴29a,29b,29cが円周に沿って並んで形成されている。これら三つの位置決め穴29a,29b,29cの並び順と対応するボタン格納部23,24,25の並び順とが一致しており、上述したボタン選択ゲージ26,27,28によって適正なサイズを特定した場合に、同じ並び位置となる位置決め穴29a,29b又は29cのいずれかに位置決めピン11が嵌合するように回転体20の取り付けを行うことにより、回転部が90°,180°,270°,360°の間欠停止を行った場合に、該当するサイズのボタン格納部23,24又は25
が、皿40の供給口45及び排出口44で停止するように位置決めが行われるようになっている。
例えば、ボタン選択ゲージ26によってボタンBが大サイズであると特定された場合には、同じ並び位置となる位置決め穴29aに位置決めピン11が嵌合するように回転体20を回転部に対して取り付ける。これにより、回転部が90°,180°,270°,360°の間欠停止を行った場合に、四つの組の中で大サイズのボタン格納部23が、皿40の供給口45及び排出口44で常に停止するように位置決めが行われる。
【0039】
[選択リング]
選択リング70は、回転板21の外周面を覆う周壁を有する環状体であり、当該周壁には90°間隔で矩形の切り欠き72が形成されている。この切り欠き72は最も大きなボタン格納部23の開口部よりも幾分大きく設定されており、ボタン格納部23,24,25の四つの組のいずれか一サイズのボタン格納部の開口部だけを選択的に開放することが可能となっている。この選択リング70は、回転板21の上面における直径方向両端部の二カ所においてネジ71により固定可能であり、これらのネジ71を緩めることで回転板21に対して回転可能となり、使用するボタン格納部23,24,25のサイズを適宜選択することが可能となっている。
【0040】
[外周カム:全体概略]
外周カム50は、カム板51と、カム板51の上面中心位置を貫通する円筒状の筒状体52とから主に構成されている。この外周カム50は、カム板51が水平となり、筒状体52が鉛直上下方向を向くように、駆動手段に支持されている。
外周カム50の筒状体52は、回転体20の筒状体22と同心であって、当該筒状体22の内側に挿入されている。
また、この外周カム50は、段部がネジ部に比べて長い段ネジ53,53により、回転板21に対角配置された二つの円弧状の長穴30,30を介して連結されている。また、各段ネジ53,53にはコイルバネ54,54が装備されており、外周カム50が回転体20側に圧接する方向に弾性力を付与している。
前述した回転板21に形成された二つの長穴30,30は、回転板21の回転中心を中心とする円弧状であり、回転体20に対して外周カム50を回動させて角度調節を行うことが可能となっている。なお、回転体20の筒状体22には後述する手動操作可能な位置固定ネジ82が装備されており、当該位置固定ネジ82の先端部は外周カム50の筒状体52の外周面に押し当てられ、回転体20に対して外周カム50が回動しないように固定することも可能となっている。
なお、外周カム50の少なくとも筒状体52は金属、より望ましくはネジより高度の高い鋼鉄等の金属で形成されており、位置固定ネジ82の締結によりへこみや傷の発生を抑えている。これにより、微調整を行った場合に、以前のへこみなどが調整位置をずらしてしまうような問題を解消することが可能である。
なお、外周カム50は、筒状体52だけでなく、カム板51も金属で形成しても良い。
【0041】
[外周カム:カム形状]
前述したように、回転板21の下面には、各ボタン格納部23,24,25を構成する下方に凸となる複数のブロックが外周に沿って並んで形成されている。
そして、外周カム50が回転体20に装備された状態において、カム板51は、外周に沿って並んだ複数のブロックの丁度内側に配設される。その結果、カム板51の外周面は、各ボタン格納部23,24,25の開口部から挿入されたボタンBが当接し、それ以上の侵入を阻止するようになっている。つまり、カム板51の外周面は、各ボタン格納部23,24,25の奥行きを決定する機能を果たすこととなる。
そして、このカム板51はその外周が回転方向の角度変化に応じてその回転中心からの距離が所定の変化を生じる形状に形成されている。つまり、カム板51の外周面は、カム部55となっている。このカム部55は、均一の形状で四つが90°の間隔で形成されている。このように、90°の間隔で四つの均一形状のカム部55を形成することで、前述したボタン格納部23,24,25の四つの組ごとに一つのカム部55が対応することとなる。
【0042】
前述したように、外周カム50は、回転体20に対して段ネジ53により長穴30によって規定される範囲内で角度を変更することができ、各ボタン格納部23,24,25の奥行きを調節する際には、図5に示すように、外周カム50を回転体20に対して回転させる。図5(A)では、外周カム50のカム部55がボタン格納部23内に格納されたボタンBに届かず、ボタン格納部23の奥行きが深すぎる状態である。これに対して、図5(B)では、外周カム50を回転させてボタン格納部23の奥行きを適正に調節している。
【0043】
図8は一つのカム部55の回転角度と外径との関係を示すカム曲線である。このカム部55は、ボタン搬送の正回転方向にカム角度が増加すると、カム外径が大きくなる形状とし、調整範囲角度は90°未満となる。カム外径が大きくなると、各ボタン格納部23,24,25の奥行きが浅くなり、格納対象となるボタン外径は小さくなり、カム外径が小さくなると、各ボタン格納部23,24,25の奥行きが深くなり、格納対象となるボタン外径は大きくなる。
カム部55のカム形状は、ボタンBの外径が小さくなると調整に要求される寸法も小さくなるので、小さなボタン外径の場合は、調整する角度に対するボタン外径の精度が向上されるようカム外周形状を構成しており、最小のボタンに対応する奥行きとなる最小区間K0と最大のボタンに対応する奥行きとなる最大区間K4との間において、外径の小さいボタンに対応する区間K1ではカム角度当りのカム外径変化量が小さく設定され、外径の中位のボタンに対応する区間K2ではカム角度当りのカム外径変化量が中間の程度に設定され、外径の大きなボタンに対応する区間K3ではカム角度当りのカム外径変化量が大きく設定されている。
そして、各区間及びその切り替わり区間では、滑らかな曲線となるようにカム曲線を形成している。
【0044】
また、上記カム部55は、図9(A)に示すように、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に対して、当該回転方向側に向かうにつれて奥行きが浅くなる(外径が大きくなる)カム形状となっている。また、比較説明のために、図9(B)には、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に対して、当該回転方向側に向かうにつれて奥行きが深くなる(外径が小さくなる)カム形状とした外周カム50Aのカム部55Aを示す。
図9(A)と図9(B)のボタン搬送状態の拡大図を図10(A)と図10(B)とに示す。
回転体20がボタン搬送のために回転すると、ボタン格納部23内部のボタンBは遠心力により外周へ移動し、開口部から皿40のガイド壁42に摺接し、摩擦により回転体20の回転方向の反対方向に押し戻される。そして、その摩擦力によってボタンBは、ボタン格納部23のボタン搬送方向側の内壁に接触する。
このとき、カム部55では、図10(A)に示すように、カム形状が回転板の回転方向に向かうにつれて外径が大きくなっているので、カム部55とボタンBとの接触角度θ1(回転体20の中心とボタンBの中心を結ぶ直線LとボタンBとカム部55の接点又は最近接点での接線方向との交角)は鈍角となり、ボタンBとカム部55とに隙間Sが発生し、ボタンBがカム部55と皿40のガイド壁42の間で挟み込まれることはない。
一方、カム部55Aでは、図10(B)に示すように、カム形状が回転板の回転方向に向かうにつれて外径が小さくなっているので、カム部55AとボタンBとの接触角度θ2(回転体20の中心とボタンBの中心を結ぶ直線LとボタンBとカム部55Aの接点又は最近接点での接線方向との交角)は鋭角となり、ボタンBとカム部55Aとに隙間は発生せず、ボタンBがカム部55Aと皿40のガイド壁42の間で挟み込まれ、ボタンBが損傷したり、回転体20が停止してしまう問題が発生してしまう。
このように、外周カム50のカム部55を、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなる(外径が大きくなる)カム形状としたことにより、回転体20を円滑に回転させると共にボタンBの破損を防止するととができるようになっている。
【0045】
[高さ調節機構]
図4に示すように、外周カム50の筒状体52の内側下部には回転支持する軸13が挿入されており、筒状体52の上端から挿入された段ネジ12が軸13に締結されて、筒状体52を軸13に連結している。
そして、外周カム50の筒状体52は、回転体20の筒状体22の内側に挿入されており、外周カム50に対して回転体20は筒状体52を中心に回動可能であって、筒状体52に沿って上下動が可能となっている。即ち、外周カム50の筒状体52は、回転体20の上下動軸として機能する。なお、外周カム50の筒状体52の上部には、前述した段ネジ12の頭部が位置し、当該段ネジ12の頭部はその外径が筒状体52よりも大きいことから、回転体20を上方にある程度移動させると、その筒状体22の上端部が段ネジ12の頭部に当接し、それ以上の上方移動を規制するようになっている。
【0046】
高さ調節機構80は、回転体20の筒状体22に設けられ、外周カム50の筒状体52に対する回転と上下動とを固定する位置固定ネジ82と、回転体20の筒状体22に固定装備され高さ調節部材81と、当該高さ調節部材81を筒状体22の外周面に固定する止めネジ83とを備えている。
【0047】
高さ調節部材81はL字状に屈曲形成された板状体であり、その上端部は水平方向を向くと共に当該上端部の下面が外周カム50の筒状体52の上端部に位置する段ネジ12の上端の水平面と対向する対向面となっている。
そして、高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間隔が、各ボタン格納部23,24,25の天井面から皿40の底板41の上面間での間隔とほぼ一致するように、高さ調節部材81は筒状体22に取り付けられている。
【0048】
これにより、各ボタン格納部23,24,25内の高さをボタンBの厚みに合わせるために、回転体20の高さ調節を行う際には、高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に格納するボタンBを挟むことにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離をボタンBの厚みにほぼ一致させることが可能となる。
なお、実際には、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、ボタンBの厚みに対してある程度のマージンがないと、各格納部23,24,25に対するボタンBの出し入れを円滑に行うことができないことから、高さ調節部材83の対向面と段ネジ12の上端水平面との間隔に対して、各ボタン格納部23,24,25の天井面から皿40の底板41の上面間での間隔はボタンの厚み+一定のマージン分(=ボタンの挿入高さ)だけ大きくなるように調整されている。
【0049】
なお、高さ調節部材81には、上下方向に沿って長穴81aが形成されており、当該長穴81aを介して止めネジ83により筒状体22に固定されていることから、当該止めネジ83を緩めることで、高さ調節部材81を上下に位置調節することで、前述したマージン幅を調節することが可能である。
【0050】
例えば、厚みがd11である薄いボタンB1を搬送する場合には、位置固定ネジ82を緩めた状態で、図4(A)に示すように、当該ボタンB1を高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に挟み込む。これにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、d11に一定のマージンを加算したd12の幅に調整することができる。
また、厚みがd21である厚いボタンB2を搬送する場合には、位置固定ネジ82を緩めた状態で、図4(B)に示すように、当該ボタンB2を高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に挟み込む。これにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、d21に一定のマージンを加算したd22の幅に調整することができる。
【0051】
なお、位置固定ネジ82は、ネジ部に比べて頭部の径が大きなネジを使用していることから、工具無しの手動操作で締結することができ、作業性の向上を図っている。
また、前述したように、外周カム50の筒状体52は金属製であることから、樹脂製の場合のように抜き勾配を生じないため、垂直な軸に沿って回転体20を上下動させることができ、各組のボタン格納部23,24,25について内部の高さにおけるバラツキを低減し、迅速且つ容易にボタン格納部の高さ調節を行うことが可能となる。
【0052】
[ボタン供給装置の動作説明]
上記ボタン供給装置2では、ボタン供給機構3、第一と第二の水平送り機構10,4、アーム機構5は図示しない制御装置により集中制御されて、ボタン付けミシン1にボタン供給が行われる。
即ち、ボタン供給機構3の振動機構3bが駆動を行うと、フィーダーボウル3a内のボタンBが螺旋状通路に沿って並んで移動し、送出口3cから順次一枚ずつ水平方向に沿って繰り出される。
第一の水平送り機構10は、繰り出されたボタンBは、皿40の供給口45において、ボタン格納部23(予め23が選択されているものとする)の開口部から挿入され、回転体20は90°ごとに間欠回転が行われる。
そして、皿40の排出口44に到達したボタン格納部23内のボタンBは下方に排出され、第二の水平送り機構4の第二の回転板4aの貫通孔に格納される。第二の水平送り機構4では、第一の水平送り機構10の回転体20の90°ごとの間欠送りに同期して、第二の回転板4aが45°ずつの間欠送りが行われ、第一の水平送り機構10から第二の回転板4aの八つの貫通孔に一つずつボタンBが供給される。
そして、搬出口に到達した貫通孔内のボタンは、アーム機構5のボタン位置修正部材5bにより回動動作が付与され、回動アーム5aの係止ピンに縫着孔が嵌合し、回動アーム5aの回動によりボタン付けミシン1のボタン挟持腕1bに搬送され、ボタンの縫着縫製が行われる。
【0053】
[効果]
以上のように、ボタン供給装置2の第一の水平送り機構10は、回転体に同心で装備された外周カム50がボタン格納部23,24,25の組ごとにカム部55を備え、各カム部55は同一形状であるため、各組のボタン格納部23,24,25の奥行きを調節する作業を外周カム50の回転動作で同時に行うことができ、調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
また、回転体20に高さ調節部材81を装備し、段ネジ12の上部水平面とでボタンBを挟むことにより、各組のボタン格納部23,24,25内の高さ調節を同時に行うことができ、当該高さ調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
さらに、その際、外周カム50の筒状体52が金属で形成されているため、傾きを抑制し、各組のボタン格納部23,24,25内の高さのバラツキを解消するので、当該高さ調節作業をさらに簡易且つ迅速に行うことが可能となる。さらに、筒状体52が金属であることにより、位置固定ネジ82の締結時に傷やへこみを生じにくく、傷やへこみによる調節位置のずれの発生を抑制するので、正確に各ボタン格納部23,24,25内の高さを微調整することが可能となる。
【0054】
また、ボタン格納部23,24,25は、三段階のサイズでの組を構成するので、外径についてより広い範囲のボタンBを搬送することが可能となる。なお、サイズはより多数用意しても良い。
また、回転体20の上面に、ボタン格納部23,24,25のそれぞれの開口幅のボタン選択ゲージ26,27,28を有するので、ボタン格納部23,24,25のいずれを使用するべきかを即座に判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボタン付けミシン
2 ボタン供給装置
3 ボタン供給機構
4 第二の水平送り機構
5 アーム機構
10 第一の水平送り機構
20 回転体
21 回転板
23,24,25 ボタン格納部
26,27,28 ボタン選択ゲージ
40 皿
41 底板
42,43 ガイド壁
44 排出口
45 供給口
50 外周カム
52 筒状体(上下動軸)
55 カム部
70 選択リング
80 高さ調節機構(調節手段)
81 高さ調節部材
82 位置固定ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンにボタンを供給するボタン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示す従来のボタン供給装置1000は、図示の右側にボタンフィーダが配置され、左側にボタン付けミシンが配置される。
ボタン供給装置1000は、二つのボタンガイド1001、1002の間をボタン搬送経路とし、当該搬送経路を上方から覆い、ボタン搬送経路の高さを規制する上側ガイド1003の下側において、図示しないベルトコンベアにより右端から左方にボタンを順次搬送し、ボタンガイド1001,1002の左側に設けられた回動式のアーム1004の回動端部のボタンホルダ1005によりボタンを下側から保持して、回動によりミシンに供給を行う。上記ボタン搬送経路を形成する二つのボタンガイド1001,1002は、種々のボタンサイズに対応するためにその間隔が調節可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12に示す他の形式のボタン供給装置2000は、フィーダーボウルに入れられたボタンを一列に並べて搬送する供給機構2100と、供給機構2100から第二の水平搬送機構側にボタンを受け渡す第一の水平搬送機構2200と、第一の水平搬送機構2200からボタン狭持腕2400へボタンを受け渡す第二の水平搬送機構2300とを備えている。
【0004】
図13に示すように、前記第一の水平搬送機構2200は、主に上から選択リング2210と、蓋体2220と、規制板2230と、回転板2240と、第一の支持体2250で構成されている。
回転板2240は、ボタンの外径に合せた大中小の三種類の切欠部2241,2242,2243を円周に沿って四組備えており、ボタンは、切欠部2241,2242,2243のいずれか一つに挿入され、第一の支持体2250の底板の上を摺動して外周側壁に沿って案内されて、回転搬送される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
規制板2230は、回転板2240の切欠部2241,2242,2243に対して選択的に配置することが可能な調整部材2231と、四組の切欠部2241,2242,2243に対応して四本のアームを備えると共に各アームの先端部で個別に調整部材2231を支持する装着部材2232とを備え、調整部材2231は、装着部材2232に対してネジ止めにより位置調節が可能となっている。
規制板2230は回転板2240と同心で配置されると共に、回転板2240に設けられた位置決めピン2244が挿入可能な位置決め穴2233が三つ形成されており、いずれの位置決め穴2233に位置決めピン2244を挿入するかによって、調整部材2231がいずれの切欠部2241,2242,2243に対して配置されるかが決定されるようになっている。
そして、調整部材2231は、切欠部2241,2242,2243のいずれかの内側に配置されると、切欠部の内部にボタンが複数入り込まないように防止すると共に、装着部材2232に対する調整部材2231の位置調節を行うことにより、切欠部2241,2242,2243に収まるボタン外径を調整する機能を有している。
【0006】
蓋体2220は、ボタンが回転板2240の切欠部2241,2242,2243にボタンが複数個挿入されないように、ボタン厚みに対する調整機能を有している。
選択リング2210は、ボタンが回転板2240のどの切欠部2241,2242,2243に挿入されるかを選択するための機能を有している。
【0007】
規制板2230の調整部材2231を切欠部2241内において位置調整する場合を図14において説明する。
調整部材2231は、前述のように、ねじ2231aを緩めて、調整部材2231を長孔2231bに沿って移動させることによって、調整部材2231の先端部の位置を調整し、切欠部2241に挿入されるボタンB1が、奥側へ入り込み過ぎないよう調整する。
このとき、調整部材2231の位置調整が適切でなく、ボタンB1が奥側へ入り込み過ぎた場合には、次に供給される順番のボタンB2も一部分が切欠部2241に入り込み、回転板2240が回転した際に、切欠部2241の回転方向側の縁部にボタンB2が接触して弾き飛ばされる不具合が発生する。
また、調整部材2231の位置調整が適切でなく、ボタンB1が切欠部2241に入りきらない場合には、回転板2240が回転した際に、ボタン供給部2100のボタン送出口2101に接触して、ボタンB1が挟まれて、ボタンB1が破損してしまったり、回転板2240が停止してしまう不具合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3265505号公報
【特許文献2】特許第2512629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のボタン供給装置1000では、ミシンのボタン狭持腕へアーム1004で供給するが、ボタン搬送路に沿って連続して搬送されたボタンをアームへの受け渡し位置で一時停止させる必要があるために、ボタンが詰まる問題があった。
図15に示すように、特に、ボタンの表裏の面の形状が湾曲しているような場合に、ボタンの詰まりが発生しやすく、ボタン詰まりを発生すると、ボタンを全く供給できなくなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2のボタン供給装置では、ボタンを1個ずつ個別に搬送しているので、上記のようなボタン詰まりの問題は発生しないが、ボタン段取り変えで、ボタン仕様(外径や厚み)が変わると、外径については、規制板2230に設けられた4箇所の調整部材2231を個別に調整する必要があり、調整に時間がかかり、生産性が低下するという問題があった。
また、ボタンの厚みについては、蓋体2220を固定しているねじ2221を緩めて行うこととなるが、この高さ調整作業は、ボタン厚さが2[mm]前後の物が多いことから0.1[mm]の微細な単位での調整が必要となり、作業が繁雑で時間を要するものとなっていた。
【0011】
また、上記従来のボタン供給装置は、調整時及びボタン供給時において、視認性を確保するために、蓋体2220や回転板2240が透明な樹脂材で形成されているため、形成時の抜き勾配があり外径精度も低いので、回転板2240に形成された蓋体2220の支軸2245と蓋体2220における支軸2245の挿通穴2222の穴径の隙間が大きく、蓋体2220を回転板2240にねじ締めした際に蓋体2220が傾きを生じて、蓋体2220の四組の切欠部2241,2242,2243の高さにばらつきがでるので、このばらつきも考慮して高さを調整する必要があり、蓋体2220の高さ調整が難しく、このような理由からも、調整に時間を要するものとなっていた。
また、回転板2240が樹脂であることから、その支軸2245は、蓋体2220のねじ締めによって跡が付き、高さを微調整する際に、ねじ2221を狙い通りの位置に固定することを妨げて、微調整が困難となるという問題も生じていた。
また、ボタンを回転供給する回転板2240の切欠部2241,2242,2243は、ボタン外径によって適正な切欠部2241,2242,2243をいずれか一つ選択する必要があるが、ボタン外径に対する切欠部の選択ゲージが無く、選択に迷うことがあった。
【0012】
本発明は、搬送するボタンの厚さ、外径に応じた調整を容易且つ適切に行うことが可能なボタン供給装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、順次ボタンを繰り出すボタン供給機構と、前記ボタン供給機構からボタンを受け取り、一枚ずつボタンをボタン付けミシン側に搬送する水平送り機構とを備えるミシンのボタン供給装置であって、前記水平送り機構は、半径方向外側が開口したボタン格納部を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体と、前記回転体を回転させて前記複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、前記回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、前記複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カムとを備え、前記外周カムは、前記複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記水平送り機構は、前記回転体の周囲を囲繞するガイド壁を備え、前記外周カムの複数のカム部は、前記回転体の回転方向側に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記水平送り機構は、底板と当該底板に対して前記回転体を上下動可能に支持する上下動軸と当該上下動軸に対して前記回転体を任意の高さで固定する調節手段とを備え、前記上下動軸の上に形成された水平面との対向面を有する高さ調節部材を前記回転体に固定装備し、前記高さ調節部材の対向面と前記水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、前記回転体の複数のボタン格納部の内部天井面と前記底板上面との隙間距離とが前記ボタンの挿入高さとなるように前記高さ調節部材が前記回転体に調節装備されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記上下動軸を金属で形成し、前記調節手段は、前記上下動軸に対する締結操作により前記回転体を固定する位置固定ネジを有することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記回転体は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を一定の角度間隔で複数備え、前記外周カムは、前記複数のボタン格納部の組と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを前記回転体の上面に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に回転体に装備された外周カムが複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を備えるので、外周カムを回転体に対して回転させることで、各ボタン格納部の奥行きを同時に同じ寸法に調節することが可能となり、調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
【0020】
請求項2記載の発明は、ボタン格納部にボタンを格納した状態で回転体が回転を行ってボタン搬送を行うと、周壁はボタン格納部の開口からのボタンの流出を防止する。その際、ボタンは、周壁に摺接して、回転体の回転方向とは逆側に引っ張られるように摩擦力を受ける。この場合に、仮に、外周カムのカム部が回転方向に向かうにつれて奥行きが深くなるカム形状であると、周壁とカム部とにボタンが挟まれて回転体の回転を阻害したり、ボタンが破損したりすることとなるが、本発明の場合は、外周カムのカム部が回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることから、ボタンが挟まれることがなく、円滑に回転体が回転を行い、ボタンの破損も回避することが可能となる。
【0021】
請求項3記載の発明は、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、回転体が連動して上下動を行い、各ボタン格納部の内部天井面と底板上面との隙間距離とがボタンの挿入高さとなるようになっていることから、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間にボタンを挿入する作業を行うことで、複数のボタン格納部の高さを適切に調節することができ、高さ調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
【0022】
なお、「ボタンの挿入高さ」は、高さ調節部材の対向面と水平面との隙間距離と略一致することが好ましく、略一致とは、「ボタンの挿入高さ」がボタンの厚み+一定のマージンと一致することを意味するものとする。
【0023】
請求項4記載の発明は、上下動軸を金属で形成し、調節手段が上下動軸に対する締結を行う位置固定ネジを有する構成であることから、回転体の高さ調節作業の際に、位置固定ネジを締結して適正な高さで固定した場合でも、傷などが発生しにくく、当該傷により微調整位置がずれてしまうことがなく、より好適に高さの微調整を行うことが可能となる。
また、上下動軸が金属である場合には、樹脂のような抜き勾配を生じないので、回転体が傾斜して各ボタン格納部の高さが不均一になることが回避され、複数のボタン格納部を均一に同時に高さ調節を行うことが可能となると共に、当該高さ調節作業をより容易に且つ迅速に行うことが可能となる。
【0024】
請求項5記載の発明は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を有するので、外径についてより広い範囲のボタンを搬送することが可能となる。
また、外周カムのカム部はボタン格納部の組ごとに設けられていることから、カム部は同じ組となる複数種の開口幅で形成されたボタン格納部で共用することができ、外周カムのカム形状の簡易化を図ることができ、製造簡略化による生産性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
請求項6記載の発明は、複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを有するので、複数種の開口幅のボタン格納部のいずれを使用するべきかを即座に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ボタン付けミシン及び当該ボタン付けミシンにボタン供給を行うボタン供給装置の斜視図である。
【図2】第一の水平送り機構の主要部の分解斜視図である。
【図3】図2に対して第一の水平送り機構の回転中心線回りに180°視点を変えて見た分解斜視図である。
【図4】回転体及び外周カムの回転中心線に沿った断面視による高さ調節動作を示す断面動作説明図であり、図4(A)は厚さの薄いボタンに合わせた高さ調節動作を示し、図4(B)は厚さの厚いボタンに合わせた高さ調節動作を示す。
【図5】図4におけるX−X線に沿った断面視によるボタン格納部の奥行き調節作業を示す断面動作説明図であり、図5(A)は調節前の状態を示し、図5(B)は調節後の状態を示している。
【図6】第一の水平送り機構の平面図である。
【図7】図7(A)は最も小さい小サイズのボタン選択ゲージの平面図、図7(B)は図7(A)のZ−Z線に沿った断面図である。
【図8】一つのカム部の回転角度と外径との関係を示すカム曲線である。
【図9】図9(A)はボタン搬送時の回転体の回転方向に向かって奥行きが浅くなるカム形状のカム部によるボタンの搬送状態を示す説明図であり、図9(B)ボタン搬送時の回転体の回転方向に向かって奥行きが深くなるカム形状のカム部によるボタンの搬送状態を示す説明図である。
【図10】図10(A)は図9(A)のカム部のボタン周りを拡大した説明図、図10(B)は図9(B)のカム部のボタン周りを拡大した説明図である。
【図11】ミシンにボタン供給をおこなう従来のボタン供給装置の平面図である。
【図12】ミシンにボタン供給をおこなう他のボタン供給装置の斜視図である。
【図13】他のボタン供給装置の第一の水平搬送機構の詳細を示す分解図である。
【図14】規制板の調整部材を切欠部内において位置調整している様子を示す平面図である。
【図15】図11のボタン供給装置のボタン詰まりの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の全体構成]
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1はボタン付けミシン1及び当該ボタン付けミシン1にボタン供給を行うボタン供給装置2の斜視図である。
ボタン付けミシン1は、ボタンBをミシンベッド1a上で水平に保持するボタン挟持腕1bを備えている。
ボタン供給装置2は、複数のボタンBを保持すると共にボタンBを一列に並べて供給するボタン供給機構3と、ボタン供給機構3からボタンBを受け取り、水平な回転面に沿って一枚ずつボタンBの搬送を行う第一の水平送り機構10と、第一の水平送り機構10から受け取ったボタンBを一枚ずつ水平な回転面に沿ってミシン側に搬送する第二の水平送り機構4と、第二の水平送り機構4のボタン排出口からミシン1のボタン挟持腕へのボタンBの受け渡しを行うアーム機構5とを備えている。
なお、ボタン付けミシン1、ボタン供給装置2のボタン供給機構3、第二の水平送り機構4及びアーム機構5については、従来周知の構成(特許第2512629号公報参照)と概ね同様なので、これらについては、簡略な説明のみを行い、詳細な説明は省略する。
【0028】
ボタン供給機構3は、内壁面に螺旋状通路が形成されたフィーダーボウル3aと、下側からフィーダーボウルに微振動を与える振動機構3bとを備え、微振動によりボタンを螺旋状通路に沿って一列に並んで移動させると共にその送出口3cから順次一枚ずつ水平方向に沿ってボタンBを繰り出すようになっている。
【0029】
第二の水平搬送機構4は、後述する第一の水平送り機構10の皿40の下面に一部重合するよう水平に保持され、第一の水平送り機構10に間欠的なボタン送り動作に同期して1/8回転毎に間欠回転する第二の回転板4aと、第二の回転板4aを回転させる駆動機構4bと、第二の回転板4aの下面に重合するよう保持された円板状の底板4cとを備えている。
第二の回転板4aには、ボタンを格納する8個の貫通孔が等間隔に形成されており、それらが、底板4cに形成された搬出口に間欠停止することで、貫通孔に格納されたボタンを搬出口から下方に排出することが可能となっている。
【0030】
アーム機構5は、第二の水平搬送機構4のボタンの排出口の真下からボタン付けミシン1のボタン挟持腕1bの挟持位置まで回動によりボタンBを搬送する回動アーム5aと、第二の回転板4aによりボタンの排出口まで搬送されたボタンBを微少な回転角度で往復回動させて回動アーム5aが有する係止ピンにボタンBの縫着孔を嵌合させるボタン位置修正部材5bとを備えている。
【0031】
[第一の水平送り機構]
図2は第一の水平送り機構10の主要部の分解斜視図、図3は図2に対して第一の水平送り機構10の回転中心線回りに180°視点を変えて見た分解斜視図である。
この第一の水平送り機構10は、半径方向外側が開口した複数サイズのボタン格納部の組を円周方向に沿って90°の角度間隔で四つ備える回転体20と、図示しない基台に固定されて回転体20の周囲を囲繞するガイド壁42,43を備えた皿40と、回転体20を回転させて格納部内のボタンの搬送を行う図示しない駆動手段と、回転体20の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体20に装備され、ボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カム50と、複数サイズのボタン格納部の組の中から一つのみを開口させる選択リング70と、皿40に対する回転体20の高さを調節する調節手段としての高さ調節機構80とを備えている。
【0032】
[皿]
皿40は、基台に対して水平に装備された底板41と、底板41の外周から立ち上げられた二つのガイド壁42,43とを備えている。
図2及び図3に示すように、底板41は、平面視で中央部が広く開口したリング状であって、その円周の一部が切り欠かれている。皿40と回転体20とは同心で配置され、回転体20は皿40の底板41の上面においてボタンBを摺動させながら円周に沿って搬送を行う。そして、底板41の円周における一部切り欠かれた部位は、搬送したボタンBを下方に排出する排出口44となっている。また、皿40における排出口44に対して180
°反対となる位置は、ボタン供給機構3から繰り出されるボタンTが供給される受取口45となっている。
ガイド壁42は、底板41の外縁部における、受取口45からボタン搬送回転方向(図2における反時計回り)に向かって排出口44に至るまでの範囲で立ち上げられており、ガイド壁43は、底板41の外縁部における、排出口44からボタン搬送回転方向に向かって受取口45に至るまでの範囲で立ち上げられている。
そして、各ガイド壁42,43は、回転体20の外周面に近接するよう形成されており、当該外周面に形成されたボタン格納部23,24,25の開口部から内部のボタンTが搬送時にこぼれ落ちないように阻止する機能を有するものである。
かかる構造により、皿40は、ボタン供給機構3から供給口45にボタンTが供給され、回転体20により底板41上を水平な円周に沿ってボタンTが搬送され、排出口44から第二の水平送り機構4に対してボタンBの受け渡しが行われる。
【0033】
[回転体:全体概略]
回転体20は、円板状の回転板21と、回転板21の上面中心位置を貫通する略円筒状の筒状体22とから主に構成されている。この回転体20は、回転板21が水平となり、筒状体22が鉛直上下方向を向くように、駆動手段に支持されている。また、駆動手段により、皿40の上面で外周カム50と一体となって90°ごとの間欠的な回転が行われる。
【0034】
[回転体:ボタン格納部]
図4は回転体20及び外周カム50の回転中心線に沿った断面視による高さ調節動作を示す断面動作説明図であり、図5は図4におけるX−X線に沿った断面視によるボタン格納部23,24,25の奥行き調節作業を示す断面動作説明図である。なお、図5では皿40の図示は省略している。
回転板21は、その下面において下方に凸となる複数のブロックを外周に沿って並べて形成しており、当該ブロック同士の間がボタン格納部23,24,25となっている。また、このように複数のブロックを形成した構造により、回転板21の外周面には、ボタン格納部23,24,25ごとの矩形の開口部が形成され、当該各開口部から回転板21の中心に向かってボタンBが挿入されることにより格納されるようになっている。
さらに、ボタン格納部23,24,25は、それぞれ、円周方向における幅がそれぞれ、大、中、小の三段階のサイズに設定されており、これらスリーサイズのボタン格納部23,24,25が一組となって集合配置され、このボタン格納部の組は回転板21に90°間隔で四組形成されている。
【0035】
[回転体:回転板上面]
図6は第一の水平送り機構10の平面図である。図示のように、回転板21の上面には、ボタン選択ゲージ26,27,28が形成されている。各ボタン選択ゲージ26,27,28は、いずれも、回転板21の上面においてU字状の凸条から形成されており、U字における開口部が外側に向けられている。そして、各ボタン選択ゲージ26,27,28の開口部の幅は、前述したボタン格納部23,24,25の開口部の幅と一致している。これにより、ボタン選択ゲージ26,27,28の開口部に実際にボタンTをはめ込むことで各ボタン格納部23,24,25にボタンTが格納可能かを確認することが可能となっている。
【0036】
これらのボタン選択ゲージ26,27,28の使用方法を説明する。図7(A)は最も小さい小サイズのボタン選択ゲージ28の平面図、図7(B)は図7(A)のZ−Z線に沿った断面図である。この小サイズのボタン選択ゲージ28に限っては、U字における底部が欠損した形状となっている。
ボタン選択ゲージ26,27,28の使用の際には、この小サイズのボタン選択ゲージ28から順番にサイズ確認を行う。ボタン選択ゲージ28の開口幅Wは前述したように小サイズのボタン格納部25の開口部の幅と一致しており、欠損部の幅Wminは第一の水平送り機構10において適正に搬送可能なボタン幅の最小値を示している。つまり、ボタンTをこの小サイズのボタン選択ゲージ28に当てたときに、欠損部の幅Wminよりも小さく、通過可能であったときには、このボタン供給装置2では搬送できないサイズということとなる。また、ボタンTが通過せず、開口幅Wの範囲に収まったときには、小サイズのボタン格納部25を使用する。
【0037】
また、ボタンBがボタン選択ゲージ28に入らない場合には、隣の中サイズのボタン選択ゲージ27にボタンBを当てて、収まる場合には、中サイズのボタン格納部24を使用する。
さらに、ボタンBがボタン選択ゲージ27に入らない場合には、隣の大サイズのボタン選択ゲージ26にボタンBを当てて、収まる場合には、大サイズのボタン格納部23を使用する。この大サイズのボタン選択ゲージ26の開口幅は第一の水平送り機構10において適正に搬送可能なボタン幅の最大値を示している。従って、ボタンBをこの大サイズのボタン選択ゲージ26に当てたときに、収まらない場合には、このボタン供給装置2では搬送できないサイズということとなる。
【0038】
なお、搬送に使用するボタン格納部23,24,25のサイズ選択の切り替えは、図示しない駆動手段の回転部に対する回転体20の取り付け角度の変更によって行う。駆動手段は、DCモータとゼネバ機構による駆動源又はステッピングモータを駆動源とし、この駆動源により回転部を90°ごとに間欠的に回転駆動するよう制御が行われる。また、回転部の原点は予め一定の位置に決められており、原点から90°,180°,270°,360°の位置ごとに回転部を停止させる制御が行われる。
そして、駆動手段の回転部には、回転体20を取り付ける際の位置決めピン11が併設されている。一方、回転体20には、図6に示すように、三つの位置決め穴29a,29b,29cが円周に沿って並んで形成されている。これら三つの位置決め穴29a,29b,29cの並び順と対応するボタン格納部23,24,25の並び順とが一致しており、上述したボタン選択ゲージ26,27,28によって適正なサイズを特定した場合に、同じ並び位置となる位置決め穴29a,29b又は29cのいずれかに位置決めピン11が嵌合するように回転体20の取り付けを行うことにより、回転部が90°,180°,270°,360°の間欠停止を行った場合に、該当するサイズのボタン格納部23,24又は25
が、皿40の供給口45及び排出口44で停止するように位置決めが行われるようになっている。
例えば、ボタン選択ゲージ26によってボタンBが大サイズであると特定された場合には、同じ並び位置となる位置決め穴29aに位置決めピン11が嵌合するように回転体20を回転部に対して取り付ける。これにより、回転部が90°,180°,270°,360°の間欠停止を行った場合に、四つの組の中で大サイズのボタン格納部23が、皿40の供給口45及び排出口44で常に停止するように位置決めが行われる。
【0039】
[選択リング]
選択リング70は、回転板21の外周面を覆う周壁を有する環状体であり、当該周壁には90°間隔で矩形の切り欠き72が形成されている。この切り欠き72は最も大きなボタン格納部23の開口部よりも幾分大きく設定されており、ボタン格納部23,24,25の四つの組のいずれか一サイズのボタン格納部の開口部だけを選択的に開放することが可能となっている。この選択リング70は、回転板21の上面における直径方向両端部の二カ所においてネジ71により固定可能であり、これらのネジ71を緩めることで回転板21に対して回転可能となり、使用するボタン格納部23,24,25のサイズを適宜選択することが可能となっている。
【0040】
[外周カム:全体概略]
外周カム50は、カム板51と、カム板51の上面中心位置を貫通する円筒状の筒状体52とから主に構成されている。この外周カム50は、カム板51が水平となり、筒状体52が鉛直上下方向を向くように、駆動手段に支持されている。
外周カム50の筒状体52は、回転体20の筒状体22と同心であって、当該筒状体22の内側に挿入されている。
また、この外周カム50は、段部がネジ部に比べて長い段ネジ53,53により、回転板21に対角配置された二つの円弧状の長穴30,30を介して連結されている。また、各段ネジ53,53にはコイルバネ54,54が装備されており、外周カム50が回転体20側に圧接する方向に弾性力を付与している。
前述した回転板21に形成された二つの長穴30,30は、回転板21の回転中心を中心とする円弧状であり、回転体20に対して外周カム50を回動させて角度調節を行うことが可能となっている。なお、回転体20の筒状体22には後述する手動操作可能な位置固定ネジ82が装備されており、当該位置固定ネジ82の先端部は外周カム50の筒状体52の外周面に押し当てられ、回転体20に対して外周カム50が回動しないように固定することも可能となっている。
なお、外周カム50の少なくとも筒状体52は金属、より望ましくはネジより高度の高い鋼鉄等の金属で形成されており、位置固定ネジ82の締結によりへこみや傷の発生を抑えている。これにより、微調整を行った場合に、以前のへこみなどが調整位置をずらしてしまうような問題を解消することが可能である。
なお、外周カム50は、筒状体52だけでなく、カム板51も金属で形成しても良い。
【0041】
[外周カム:カム形状]
前述したように、回転板21の下面には、各ボタン格納部23,24,25を構成する下方に凸となる複数のブロックが外周に沿って並んで形成されている。
そして、外周カム50が回転体20に装備された状態において、カム板51は、外周に沿って並んだ複数のブロックの丁度内側に配設される。その結果、カム板51の外周面は、各ボタン格納部23,24,25の開口部から挿入されたボタンBが当接し、それ以上の侵入を阻止するようになっている。つまり、カム板51の外周面は、各ボタン格納部23,24,25の奥行きを決定する機能を果たすこととなる。
そして、このカム板51はその外周が回転方向の角度変化に応じてその回転中心からの距離が所定の変化を生じる形状に形成されている。つまり、カム板51の外周面は、カム部55となっている。このカム部55は、均一の形状で四つが90°の間隔で形成されている。このように、90°の間隔で四つの均一形状のカム部55を形成することで、前述したボタン格納部23,24,25の四つの組ごとに一つのカム部55が対応することとなる。
【0042】
前述したように、外周カム50は、回転体20に対して段ネジ53により長穴30によって規定される範囲内で角度を変更することができ、各ボタン格納部23,24,25の奥行きを調節する際には、図5に示すように、外周カム50を回転体20に対して回転させる。図5(A)では、外周カム50のカム部55がボタン格納部23内に格納されたボタンBに届かず、ボタン格納部23の奥行きが深すぎる状態である。これに対して、図5(B)では、外周カム50を回転させてボタン格納部23の奥行きを適正に調節している。
【0043】
図8は一つのカム部55の回転角度と外径との関係を示すカム曲線である。このカム部55は、ボタン搬送の正回転方向にカム角度が増加すると、カム外径が大きくなる形状とし、調整範囲角度は90°未満となる。カム外径が大きくなると、各ボタン格納部23,24,25の奥行きが浅くなり、格納対象となるボタン外径は小さくなり、カム外径が小さくなると、各ボタン格納部23,24,25の奥行きが深くなり、格納対象となるボタン外径は大きくなる。
カム部55のカム形状は、ボタンBの外径が小さくなると調整に要求される寸法も小さくなるので、小さなボタン外径の場合は、調整する角度に対するボタン外径の精度が向上されるようカム外周形状を構成しており、最小のボタンに対応する奥行きとなる最小区間K0と最大のボタンに対応する奥行きとなる最大区間K4との間において、外径の小さいボタンに対応する区間K1ではカム角度当りのカム外径変化量が小さく設定され、外径の中位のボタンに対応する区間K2ではカム角度当りのカム外径変化量が中間の程度に設定され、外径の大きなボタンに対応する区間K3ではカム角度当りのカム外径変化量が大きく設定されている。
そして、各区間及びその切り替わり区間では、滑らかな曲線となるようにカム曲線を形成している。
【0044】
また、上記カム部55は、図9(A)に示すように、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に対して、当該回転方向側に向かうにつれて奥行きが浅くなる(外径が大きくなる)カム形状となっている。また、比較説明のために、図9(B)には、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に対して、当該回転方向側に向かうにつれて奥行きが深くなる(外径が小さくなる)カム形状とした外周カム50Aのカム部55Aを示す。
図9(A)と図9(B)のボタン搬送状態の拡大図を図10(A)と図10(B)とに示す。
回転体20がボタン搬送のために回転すると、ボタン格納部23内部のボタンBは遠心力により外周へ移動し、開口部から皿40のガイド壁42に摺接し、摩擦により回転体20の回転方向の反対方向に押し戻される。そして、その摩擦力によってボタンBは、ボタン格納部23のボタン搬送方向側の内壁に接触する。
このとき、カム部55では、図10(A)に示すように、カム形状が回転板の回転方向に向かうにつれて外径が大きくなっているので、カム部55とボタンBとの接触角度θ1(回転体20の中心とボタンBの中心を結ぶ直線LとボタンBとカム部55の接点又は最近接点での接線方向との交角)は鈍角となり、ボタンBとカム部55とに隙間Sが発生し、ボタンBがカム部55と皿40のガイド壁42の間で挟み込まれることはない。
一方、カム部55Aでは、図10(B)に示すように、カム形状が回転板の回転方向に向かうにつれて外径が小さくなっているので、カム部55AとボタンBとの接触角度θ2(回転体20の中心とボタンBの中心を結ぶ直線LとボタンBとカム部55Aの接点又は最近接点での接線方向との交角)は鋭角となり、ボタンBとカム部55Aとに隙間は発生せず、ボタンBがカム部55Aと皿40のガイド壁42の間で挟み込まれ、ボタンBが損傷したり、回転体20が停止してしまう問題が発生してしまう。
このように、外周カム50のカム部55を、ボタン搬送時の回転体20の回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなる(外径が大きくなる)カム形状としたことにより、回転体20を円滑に回転させると共にボタンBの破損を防止するととができるようになっている。
【0045】
[高さ調節機構]
図4に示すように、外周カム50の筒状体52の内側下部には回転支持する軸13が挿入されており、筒状体52の上端から挿入された段ネジ12が軸13に締結されて、筒状体52を軸13に連結している。
そして、外周カム50の筒状体52は、回転体20の筒状体22の内側に挿入されており、外周カム50に対して回転体20は筒状体52を中心に回動可能であって、筒状体52に沿って上下動が可能となっている。即ち、外周カム50の筒状体52は、回転体20の上下動軸として機能する。なお、外周カム50の筒状体52の上部には、前述した段ネジ12の頭部が位置し、当該段ネジ12の頭部はその外径が筒状体52よりも大きいことから、回転体20を上方にある程度移動させると、その筒状体22の上端部が段ネジ12の頭部に当接し、それ以上の上方移動を規制するようになっている。
【0046】
高さ調節機構80は、回転体20の筒状体22に設けられ、外周カム50の筒状体52に対する回転と上下動とを固定する位置固定ネジ82と、回転体20の筒状体22に固定装備され高さ調節部材81と、当該高さ調節部材81を筒状体22の外周面に固定する止めネジ83とを備えている。
【0047】
高さ調節部材81はL字状に屈曲形成された板状体であり、その上端部は水平方向を向くと共に当該上端部の下面が外周カム50の筒状体52の上端部に位置する段ネジ12の上端の水平面と対向する対向面となっている。
そして、高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間隔が、各ボタン格納部23,24,25の天井面から皿40の底板41の上面間での間隔とほぼ一致するように、高さ調節部材81は筒状体22に取り付けられている。
【0048】
これにより、各ボタン格納部23,24,25内の高さをボタンBの厚みに合わせるために、回転体20の高さ調節を行う際には、高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に格納するボタンBを挟むことにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離をボタンBの厚みにほぼ一致させることが可能となる。
なお、実際には、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、ボタンBの厚みに対してある程度のマージンがないと、各格納部23,24,25に対するボタンBの出し入れを円滑に行うことができないことから、高さ調節部材83の対向面と段ネジ12の上端水平面との間隔に対して、各ボタン格納部23,24,25の天井面から皿40の底板41の上面間での間隔はボタンの厚み+一定のマージン分(=ボタンの挿入高さ)だけ大きくなるように調整されている。
【0049】
なお、高さ調節部材81には、上下方向に沿って長穴81aが形成されており、当該長穴81aを介して止めネジ83により筒状体22に固定されていることから、当該止めネジ83を緩めることで、高さ調節部材81を上下に位置調節することで、前述したマージン幅を調節することが可能である。
【0050】
例えば、厚みがd11である薄いボタンB1を搬送する場合には、位置固定ネジ82を緩めた状態で、図4(A)に示すように、当該ボタンB1を高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に挟み込む。これにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、d11に一定のマージンを加算したd12の幅に調整することができる。
また、厚みがd21である厚いボタンB2を搬送する場合には、位置固定ネジ82を緩めた状態で、図4(B)に示すように、当該ボタンB2を高さ調節部材81の対向面と段ネジ12の上端水平面との間に挟み込む。これにより、各格納部23,24,25の天井面から底板41の上面までの距離は、d21に一定のマージンを加算したd22の幅に調整することができる。
【0051】
なお、位置固定ネジ82は、ネジ部に比べて頭部の径が大きなネジを使用していることから、工具無しの手動操作で締結することができ、作業性の向上を図っている。
また、前述したように、外周カム50の筒状体52は金属製であることから、樹脂製の場合のように抜き勾配を生じないため、垂直な軸に沿って回転体20を上下動させることができ、各組のボタン格納部23,24,25について内部の高さにおけるバラツキを低減し、迅速且つ容易にボタン格納部の高さ調節を行うことが可能となる。
【0052】
[ボタン供給装置の動作説明]
上記ボタン供給装置2では、ボタン供給機構3、第一と第二の水平送り機構10,4、アーム機構5は図示しない制御装置により集中制御されて、ボタン付けミシン1にボタン供給が行われる。
即ち、ボタン供給機構3の振動機構3bが駆動を行うと、フィーダーボウル3a内のボタンBが螺旋状通路に沿って並んで移動し、送出口3cから順次一枚ずつ水平方向に沿って繰り出される。
第一の水平送り機構10は、繰り出されたボタンBは、皿40の供給口45において、ボタン格納部23(予め23が選択されているものとする)の開口部から挿入され、回転体20は90°ごとに間欠回転が行われる。
そして、皿40の排出口44に到達したボタン格納部23内のボタンBは下方に排出され、第二の水平送り機構4の第二の回転板4aの貫通孔に格納される。第二の水平送り機構4では、第一の水平送り機構10の回転体20の90°ごとの間欠送りに同期して、第二の回転板4aが45°ずつの間欠送りが行われ、第一の水平送り機構10から第二の回転板4aの八つの貫通孔に一つずつボタンBが供給される。
そして、搬出口に到達した貫通孔内のボタンは、アーム機構5のボタン位置修正部材5bにより回動動作が付与され、回動アーム5aの係止ピンに縫着孔が嵌合し、回動アーム5aの回動によりボタン付けミシン1のボタン挟持腕1bに搬送され、ボタンの縫着縫製が行われる。
【0053】
[効果]
以上のように、ボタン供給装置2の第一の水平送り機構10は、回転体に同心で装備された外周カム50がボタン格納部23,24,25の組ごとにカム部55を備え、各カム部55は同一形状であるため、各組のボタン格納部23,24,25の奥行きを調節する作業を外周カム50の回転動作で同時に行うことができ、調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
また、回転体20に高さ調節部材81を装備し、段ネジ12の上部水平面とでボタンBを挟むことにより、各組のボタン格納部23,24,25内の高さ調節を同時に行うことができ、当該高さ調節作業を簡易且つ迅速に行うことが可能となる。
さらに、その際、外周カム50の筒状体52が金属で形成されているため、傾きを抑制し、各組のボタン格納部23,24,25内の高さのバラツキを解消するので、当該高さ調節作業をさらに簡易且つ迅速に行うことが可能となる。さらに、筒状体52が金属であることにより、位置固定ネジ82の締結時に傷やへこみを生じにくく、傷やへこみによる調節位置のずれの発生を抑制するので、正確に各ボタン格納部23,24,25内の高さを微調整することが可能となる。
【0054】
また、ボタン格納部23,24,25は、三段階のサイズでの組を構成するので、外径についてより広い範囲のボタンBを搬送することが可能となる。なお、サイズはより多数用意しても良い。
また、回転体20の上面に、ボタン格納部23,24,25のそれぞれの開口幅のボタン選択ゲージ26,27,28を有するので、ボタン格納部23,24,25のいずれを使用するべきかを即座に判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボタン付けミシン
2 ボタン供給装置
3 ボタン供給機構
4 第二の水平送り機構
5 アーム機構
10 第一の水平送り機構
20 回転体
21 回転板
23,24,25 ボタン格納部
26,27,28 ボタン選択ゲージ
40 皿
41 底板
42,43 ガイド壁
44 排出口
45 供給口
50 外周カム
52 筒状体(上下動軸)
55 カム部
70 選択リング
80 高さ調節機構(調節手段)
81 高さ調節部材
82 位置固定ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次ボタンを繰り出すボタン供給機構と、前記ボタン供給機構からボタンを受け取り、一枚ずつボタンをボタン付けミシン側に搬送する水平送り機構とを備えるミシンのボタン供給装置であって、
前記水平送り機構は、
半径方向外側が開口したボタン格納部を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体と、
前記回転体を回転させて前記複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、
前記回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、前記複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カムとを備え、
前記外周カムは、前記複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とするミシンのボタン供給装置。
【請求項2】
前記水平送り機構は、前記回転体の周囲を囲繞するガイド壁を備え、
前記外周カムの複数のカム部は、前記回転体の回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることを特徴とする請求項1記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項3】
前記水平送り機構は、底板と当該底板に対して前記回転体を上下動可能に支持する上下動軸と当該上下動軸に対して前記回転体を任意の高さで固定する調節手段とを備え、
前記上下動軸の上に形成された水平面との対向面を有する高さ調節部材を前記回転体に固定装備し、
前記高さ調節部材の対向面と前記水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、前記回転体の複数のボタン格納部の内部天井面と前記底板上面との隙間距離とが前記ボタンの挿入高さとなるように前記高さ調節部材が前記回転体に調節装備されていることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項4】
前記上下動軸を金属で形成し、
前記調節手段は、前記上下動軸に対する締結操作により前記回転体を固定する位置固定ネジを有することを特徴とする請求項3記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項5】
前記回転体は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を一定の角度間隔で複数備え、
前記外周カムは、前記複数のボタン格納部の組と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項6】
前記複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを前記回転体の上面に設けたことを特徴とする請求項5記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項1】
順次ボタンを繰り出すボタン供給機構と、前記ボタン供給機構からボタンを受け取り、一枚ずつボタンをボタン付けミシン側に搬送する水平送り機構とを備えるミシンのボタン供給装置であって、
前記水平送り機構は、
半径方向外側が開口したボタン格納部を円周方向に沿って一定の角度間隔で複数備える回転体と、
前記回転体を回転させて前記複数の格納部内のボタンの搬送を行う駆動手段と、
前記回転体の回転中心を基準に回転角度調節可能に当該回転体に装備され、前記複数のボタン格納部に格納されるボタンの奥行きを決定する外周カムとを備え、
前記外周カムは、前記複数のボタン格納部と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とするミシンのボタン供給装置。
【請求項2】
前記水平送り機構は、前記回転体の周囲を囲繞するガイド壁を備え、
前記外周カムの複数のカム部は、前記回転体の回転方向に向かうにつれて奥行きが浅くなるカム形状であることを特徴とする請求項1記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項3】
前記水平送り機構は、底板と当該底板に対して前記回転体を上下動可能に支持する上下動軸と当該上下動軸に対して前記回転体を任意の高さで固定する調節手段とを備え、
前記上下動軸の上に形成された水平面との対向面を有する高さ調節部材を前記回転体に固定装備し、
前記高さ調節部材の対向面と前記水平面との隙間にボタンを挿入した場合に、前記回転体の複数のボタン格納部の内部天井面と前記底板上面との隙間距離とが前記ボタンの挿入高さとなるように前記高さ調節部材が前記回転体に調節装備されていることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項4】
前記上下動軸を金属で形成し、
前記調節手段は、前記上下動軸に対する締結操作により前記回転体を固定する位置固定ネジを有することを特徴とする請求項3記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項5】
前記回転体は、複数種の開口幅で形成されたボタン格納部の組を一定の角度間隔で複数備え、
前記外周カムは、前記複数のボタン格納部の組と同じ角度間隔で同一形状のカム部を複数備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシンのボタン供給装置。
【請求項6】
前記複数種の開口幅のボタン格納部の各々と同じ幅で形成した複数のゲージを前記回転体の上面に設けたことを特徴とする請求項5記載のミシンのボタン供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−254256(P2012−254256A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134841(P2011−134841)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
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