ミシンの気体搬送糸通し装置
【課題】ルーパ糸を搬送する為の加圧気体を縫目形成装置を駆動するモータを切換えて動作する供給ポンプで生成し、ワンタッチでルーパに糸通しする。
【解決手段】ルーパ7〜9に導かれるルーパ糸を差入るルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸入口7a〜9aまで延在しルーパ糸案内出口7d〜9dを有する中空ルーパ糸案内130と、ルーパ糸をルーパ糸導入領域から中空ルーパ糸案内を通りルーパ糸剣先出口7b〜9bへ搬送によりルーパ糸通しする供給ポンプ41と、モータMからの動力を縫目形成時にルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸5又はルーパ糸通し時に供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチ60と、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し縫目形成切換機構90を備える。
【解決手段】ルーパ7〜9に導かれるルーパ糸を差入るルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸入口7a〜9aまで延在しルーパ糸案内出口7d〜9dを有する中空ルーパ糸案内130と、ルーパ糸をルーパ糸導入領域から中空ルーパ糸案内を通りルーパ糸剣先出口7b〜9bへ搬送によりルーパ糸通しする供給ポンプ41と、モータMからの動力を縫目形成時にルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸5又はルーパ糸通し時に供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチ60と、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し縫目形成切換機構90を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンの気体搬送糸通し装置に係わり、特に縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等のルーパに加圧気体を利用して自動的に糸を通すためのミシンの気体搬送糸通し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等において、ルーパ糸を差し入れる糸導入部からルーパの剣先のルーパ糸案内出口までを連通する中空のルーパ糸案内で連結し、中空のルーパ糸案内に供給される加圧気体の流れを利用してルーパ糸を送る気体搬送糸通し装置が知られている。これにより、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、このため糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出し、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなく、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2865470号公報
【特許文献2】特許第3355214号公報
【特許文献3】特許第4088504号公報(図15〜図19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような気体搬送糸通し構造においては糸通しのための経路がかなり単純となり糸通し作業が容易となり、糸絡みや糸切れの発生をなくすことができる。
【0005】
しかしながら、このような気体搬送糸通し構造では、糸の挿通作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、気体搬送糸通しに慣れていないオペレータにとってルーパ糸の糸導入を確実に行なうには不十分である。
【0006】
また、このような気体搬送糸通し構造では、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体を生成する手段が手動で行なうため、その糸挿通の手作業はひ弱な女性のようなオペレータにとっては煩わしく、難儀を強いられる。
【0007】
さらに、このような気体搬送糸通し構造では、一方の手でストッパ(位置決めピン)を停止位置決め板に対して押圧させながら、他方の手でプーリを手動回転させることにより縫目形成装置をロックさせるとともに糸通し連結装置を連結させなければならないので、ミシンに精通していない未熟練オペレータにとって、この糸通し装置の使い方がオペレータに理解されにくく、両手を同時に使って行なう糸の挿通作業はかなり面倒であって、そのためのトレーニングを要する。
【0008】
本発明は、これらの難点を解決するためになされたもので、糸の挿通作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸の糸導入を確実に行なうルーパ糸導入機構を備えたミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体を縫目形成装置を駆動するミシンモータを切換えて動作する気体供給ポンプで生成し、ワンタッチでルーパに糸通しができるミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパ糸通し切換操作ができるミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するため、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入機構から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源とを備え、ルーパ糸導入機構は、ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口及び広口ルーパ糸差入口に連通するルーパ糸吸入領域と、気体供給源から加圧気体が供給される気体バッファ領域と、ルーパ糸吸入領域に一端部で嵌合し、他端部で中空ルーパ糸案内に接続されるルーパ糸導入パイプとを有し、ルーパ糸吸入領域とルーパ糸導入パイプとは、気体バッファ領域に連通しルーパ糸吸入領域の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域を形成している。
【0012】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸吸入領域のルーパ糸案内出口端を傾斜して形成して通気狭隘領域の下流側に渦流が発生するのを防止する。
【0013】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、狭隘領域の下流でルーパ糸吸入領域に隣接するルーパ糸導入パイプ内に絞り部を形成して絞り部の下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域における気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプに吸い込ませ中空ルーパ糸案内を通ってルーパのルーパ糸剣先出口へ気体搬送する。
【0014】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設される。
【0015】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入機構から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時にはルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸に、ルーパ糸通し時には気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備えている。
【0016】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチは、気体供給ポンプへ動力伝達するポンプ駆動体と、駆動軸の一端に固着されて縫目形成装置へ動力伝達する縫目形成駆動体との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じてクラッチ切換バネを介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されてミシンモータからの動力が伝達されているクラッチ摺動子を有するピンクラッチで構成される。
【0017】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を備えている。
【0018】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が水平方向に整致したとき中空ルーパ糸案内のルーパ糸案内出口とルーパのルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置を備えている。
【0019】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプに動力を伝達するようにクラッチを切換える手段と、中空ルーパ糸案内のルーパ糸案内出口とルーパのルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置の連結を準備して、駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、位置決め装置が作動して縫目形成装置への動力伝達を遮断され、糸通し連結装置が作動してルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が連結される手段とを有し、縫目形成時に、縫目形成装置へ動力伝達するようにクラッチを切換える手段と、位置決め装置の位置決めを解除し、糸通し連結装置の連結を解除し、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が離間される手段とを有する。
【0020】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、位置決め装置は、駆動軸に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口、ルーパ天秤に形成された天秤孔及びルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、プーリを手動回転させて切り欠きに嵌合する位置決めピンとを有する。
【0021】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入領域から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時にルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸又はルーパ糸通し時に気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備え、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプに動力を伝達するようにクラッチを切換えるクラッチ切換伝達子と、駆動軸に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口及びルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板、ルーパ糸通し時に、プーリを手動回転させて切り欠きに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を連結させる位置決めピンを有する位置決め装置と、位置決めピンを停止位置決め板に対して進退させるとともに糸通し連結装置を連結させるためのピン進退カムと、糸通し連結装置を解除させてルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口を離間させるための解除カムとを有する。
【0022】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、気体供給ポンプの気体供給動作中は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構がルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構を備えている。
【0023】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチ切換制限機構は、気体供給ポンプの気体供給動作中に、気体供給ポンプから気体供給される空圧アクチュエータと、空圧アクチュエータが気体供給されてルーパ糸通し/縫目形成切換機構をルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置とを有する。
【0024】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータは、気体供給ポンプの気体供給によってピストンが伸長動作するピストン・シリンダと、気体供給ポンプからの気体供給が無給となってから空圧アクチュエータ内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダとを有する。
【0025】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータは、空圧アクチュエータを退行した原位置に偏倚させてリターダの排気を促進するバネを有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸をルーパに挿通する作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構によってルーパ糸の糸導入を確実に行なうことができる。
【0027】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体をミシンモータで動作する気体供給ポンプで生成し、ワンタッチでルーパに糸通しができる。
【0028】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパ糸通し切換操作ができる。
【0029】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパの剣先の糸出口から糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内で連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0030】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、クラッチ切換制限機構によりルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口とルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)の斜視図である。
【図2】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)のブロックダイアグラムである。
【図3】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す部分斜視図で、(a)は糸通し準備状態、(b)は糸通し状態を示す。
【図4】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す斜視図で、(a)は縫目形成状態、(b)は糸通し状態を示す。
【図5(A)】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す分解斜視図である。
【図5(B)】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される位置決め装置を示す分解斜視図である。
【図6】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸導入機構を示す説明図である。
【図7】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される気体供給ポンプ及びそれにより気体供給されるルーパ糸導入機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチと、クラッチを介して駆動される気体供給ポンプと、気体供給ポンプにより気体供給されるルーパ糸導入機構とを示す分解斜視図、(b)は気体供給ポンプで使用される逆流止バルブの説明図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチ及び位置決め装置を示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す斜視図である。
【図11】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構及びクラッチ切換伝達子を示す分解斜視図、(b)はルーパ糸通し/縫目形成切換機構で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換カムを示す斜視図である。
【図12】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチ及び位置決め装置を示す分解斜視図である。
【図13】(a)、(b)、(c)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し準備状態時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構及び位置決め装置を示す斜視図である。
【図14】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に、クラッチ切換制限機構を組み込んだ斜視図である。
【図15】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に、クラッチ切換制限機構を組み込んだブロックダイアグラムである。
【図16】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される気体供給ポンプ及びそれにより気体供給されるルーパ糸導入機構に、クラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータを組み込んだ斜視図である。
【図17】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータを組み込むのに適した気体供給ポンプを示す分解斜視図、(b)は気体供給ポンプで使用される逆流止バルブの説明図である。
【図18】(a)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが原位置に退行した状態を示す斜視図、(b)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが伸長した状態を示す斜視図である。
【図19】(a)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが退行した原位置に退行した状態を示す断面図、(b)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが伸長した状態を示す断面図である。
【図20】図14〜図19に示すクラッチ切換制限機構を示す分解斜視図である。
【図21】図14〜図20に示すクラッチ切換制限機構の動作説明図であり、(a)は縫目形成時に切換られた状態、(b)はルーパ糸通し時に切換られた状態、(c)はルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避する状態を示す。
【図22】ルーパ糸通し/縫目形成切換機構に、図14〜19図に示すクラッチ切換制限機構を組み込んだ分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の気体搬送糸通し装置を3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に適用した好ましい実施の形態例について図面を参照して詳述する。
【0033】
図1に示すように、このオーバーロックミシン1は、ベッドとアームを形成するメインフレーム2で構成されている。メインフレーム2は、サブフレーム2aとサブフレーム2bを有する。
【0034】
ミシンモータMはサブフレーム2bに装着され、駆動軸5はフレーム2に沿って水平方向に延びている(図2、図7〜図9、図12〜図13)。駆動軸5は、後述するように、ミシンモータMによってタイミングベルトMBによりクラッチ60を介して回転駆動される。
【0035】
図1、図2に示すように、駆動軸5と同期して上下運動する針留11に固定され針板3を貫通して上下運動する針11a、11b、11c、これらの針11a、11b、11cを駆動する針駆動機構12、針板3上で布25を押える布押え機構19、針板3の下側で針11a、11b、11cの軌跡と交叉するように円弧状の軌跡を描いて往復運動する下ルーパ8、針板3の側方で下ルーパ8の軌跡と交叉するとともに針板3の上側で針11a、11b、11cの軌跡と交叉するように楕円弧状の軌跡を描いて往復運動する上ルーパ7、二重環ルーパ9、布25を1目毎に歩進させる布送り機構4で縫目形成装置30を形成している。
【0036】
上ルーパ7、下ルーパ8及び二重環ルーパ9はそれぞれルーパ駆動機構10によって駆動される。
【0037】
縫目形成装置30の針駆動機構12、布送り機構4及びルーパ駆動機構10は駆動軸5によって駆動されるが、その具体的構造及び動作は公知又は周知であるので、その詳細は説明を省略する。
【0038】
3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン1によれば、針11a、11bに挿通される針糸17a、17bと、下ルーパ8に挿通された下ルーパ糸16bと、上ルーパ7に挿通された上ルーパ糸16aとを交叉して布25にオーバーロック縫いを形成するものである。なお、二重環ルーパ9はそれに挿通された二重環ルーパ糸16cと針11cに挿通される針糸17cとを交叉して布25に二重環縫いを形成し、所謂インターロック縫いを行なうものである。
【0039】
このオーバーロックミシン1において、各ルーパ糸16a、16b、16cを、糸調子器18を介して上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に気体搬送によりルーパ糸通しするにあたり、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9は、ルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にされている(図4(a)、(b)、図5(A))。ここで、「中空構造」とは、ルーパ自体をルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にしてもよく、ルーパにルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで溝を形成し、そこに中空パイプを埋め込む構造にしてもよい。この場合、その構造の断面は円、多角形であってもよく、その一部が欠ける、例えば断面C字形であってもよい。
【0040】
この目的のため、オーバーロックミシン1は、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に導かれる各ルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸導入機構110からルーパ糸入口7a、8a、9aまで延在しルーパ糸案内出口7d、8d、9dを有する中空ルーパ糸案内7e、8e、9eと、各ルーパ糸をルーパ糸導入機構110から中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通ってルーパ糸案内出口7d、8d、9dへ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源40とを備えている(図1、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図6、図7、図8)。
【0041】
図6に示すように、ルーパ糸導入機構110は、各ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c及び広口ルーパ糸差入口113a、113b、113cに連通するルーパ糸吸入領域114と、気体供給源40から加圧気体が供給される気体バッファ領域115と、ルーパ糸吸入領域114に一端部116aで嵌合し、他端部116bで中空ルーパ糸案内7e、8e、9eに接続されるルーパ糸導入パイプ116とを有している。
【0042】
ルーパ糸吸入領域114とルーパ糸導入パイプ116とは、気体バッファ領域115に連通しルーパ糸吸入領域114の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域114aを形成している。
【0043】
ルーパ糸吸入領域114のルーパ糸案内出口端114bは傾斜して形成されており、これにより通気狭隘領域114aの下流側に渦流が発生するのを防止している。
【0044】
通気狭隘領域114aの下流でルーパ糸吸入領域114に隣接するルーパ糸導入パイプ116内に絞り部116cが形成されており、このため絞り部116cの下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域114aにおける気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域114に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませ中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通って上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸剣先出口7b、8b、9bへ気体搬送することができる。
【0045】
図7、図8に示すように、ルーパ糸導入機構110はルーパ糸導入台112上に形成されている。また、ルーパ糸導入台112には糸通し釦117が形成されている。糸差込板111には広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c及び糸通し釦117が臨むルーパ糸差込み口111a、111b、111c及び糸通し釦穴111dが設けられ、フレーム2に固定され、その上面には糸差込板シール111’が貼着されている。
【0046】
糸通し釦117の押下で動作する糸通しスイッチ119bが後述するルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部91の操作で動作するルーパ糸通し/縫目形成切換スイッチ119aとともにルーパ糸導入台112上に設けられている(図7)。
【0047】
後述するように、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aは、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設される。
【0048】
次に、本発明の気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)における他の形態例について説明する。
【0049】
この形態例において縁かがりオーバーロックミシン1は、上記のルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にされた上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9と、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸導入機構110からルーパ糸入口7a、8a、9aまで延在しルーパ糸案内出口7d、8d、9dを有する中空ルーパ糸案内7e、8e、9eとを利用して以下に説明するようにルーパ糸通し及びミシン縫製を行なうものである。
【0050】
図1、図2に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、各ルーパ糸をルーパ糸導入機構110から中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通ってルーパ糸案内出口7d、8d、9dへ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源40である気体供給ポンプ41と、ミシンモータMからの動力を縫目形成時に上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9を含む縫目形成装置30を駆動する駆動軸5又はルーパ糸通し時に気体供給ポンプ41にそれぞれ伝達するためのクラッチ60と、ルーパ糸通し時に縫目形成装置30への動力伝達を遮断して気体供給ポンプ41に動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置30に動力を伝達して気体供給ポンプ41への動力伝達を遮断するようにクラッチ60を切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構90とを備えている。
【0051】
図8に示すように、気体供給ポンプ41は、ルーパ糸通し時に、クラッチ60(図7、図12)のポンプ駆動体61で回転されるポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43が往復運動し、スラストカラー45で担持されたポンプ駆動腕44で往復動するピストン48、ピストンキャップ49と、これが気密摺動するポンプシリンダ50と、その逆流止バルブ51とから成る。シリンダ取付部50aはシリンダ取付ピン52で揺動を許容するようにポンプ取付台53でサブフレーム2bに取付られている。
【0052】
ポンプ駆動バネ46をポンプ駆動腕44のバネ掛け47とクラッチ切換台73のバネ掛け73d(図10(a)、(b)、図11)に張設することにより、気体供給ポンプ41への動力伝達を遮断したとき、ポンプ駆動(偏芯)カム42が常時回転している回転駆動体23との摩擦で空転するのを防止するとともに、ピストン48を加圧(フォワード)工程時に補助する機能を果たす。
【0053】
ピストン48はピストン軸48aに取付られ、吐出し方向に向かって末広がり状に形成されたシール材であるピストンキャップ49はピストン頭頂部48bに固定されている。
【0054】
逆流止バルブ51はポンプシリンダ50と送出口50bに接続されるバルブハウジング50cに、バネ51bと、バネ51bで押圧される逆流止ボール51aと、バルブハウジング50cに螺着され、リターン(吸入)工程時にバネ51bで押圧されて逆流止ボール51aが着座してバルブが閉成し、加圧(フォワード)工程時に送出加圧空気で逆流止ボール51aが浮いてバルブが開成するバルブシート51cとを備えている。
【0055】
気体供給ポンプ41の作動において、ピストン48のフォワード工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合され、空気は圧縮されて送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8)に圧縮空気として加圧注入され、一方ピストン48のリターン(吸入)工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合されることがなくなるので、空気はピストン48及びピストンキャップ49の外周を経由して吸入され、また送出口50bから送出された空気は逆流止バルブ51の逆流止ボール51aで逆流阻止される。
【0056】
図1、図2、図12に示すように、クラッチ60は、気体供給ポンプ41へ動力伝達するポンプ駆動体61と、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じてクラッチ切換バネ67を介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されてミシンモータMからの動力が伝達されているクラッチ摺動子62を有する。
【0057】
詳述すれば、クラッチ60は、所謂ピンクラッチで構成され、駆動軸5の軸線上に、ミシンモータMからの動力がタイミングベルトMBにより伝達される駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、ポンプ駆動(偏芯)カム42、ポンプ駆動体61、回転駆動体23、クラッチ連結ピン63が同軸に摺動自在に内蔵したクラッチ摺動子62、縫目形成駆動体64、プーリ6が順に設けられる。
【0058】
このように構成されたクラッチ60の作動において、ルーパ糸通し時には、クラッチ摺動子62はポンプ駆動体61側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結し、ポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43により気体供給ポンプ41を駆動可能とする(図9(b))。
【0059】
縫目形成時には、クラッチ摺動子62はプーリ6側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結し、駆動軸5を回転可能とする図9(a))。
【0060】
縁かがりオーバーロックミシン1において、図10(a)、(b)、図11に示すように、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプ41に動力を伝達するようにクラッチ60を切換えるクラッチ切換伝達子70、即ち、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91により回動するルーパ糸通し/縫目形成切換カム94、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94のクラッチ切換連結腕94bに枢着されて揺動するクラッチ切換リンク72、クラッチ切換リンク72により揺動するクラッチ切換レバー69、クラッチ切換レバー69にカシメ段ピン69aで蝶着されて駆動軸5の軸方向に揺動するクラッチ切換腕65、クラッチ切換腕65に固定され、クラッチ摺動子62の摺動子制御溝62cに嵌合して、クラッチ切換腕65の揺動によりクラッチ摺動子62を駆動軸5の軸方向に摺動させてクラッチ60を切換えるクラッチ切換ピン65aを有する。
【0061】
ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91はサブフレーム2aと切換カム軸受板93に枢着された切換カム軸92の一端部で回転平坦部92bに回転止めされビスでネジ穴92cに螺着されている。ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92のピン穴92aにピン95を嵌合することにより固定されている。
【0062】
クラッチ切換レバー69はクラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー取付腕71aに跨がってクラッチ切換レバー軸68で枢着されている。クラッチ切換バネ67がクラッチ切換レバー69のクラッチ切換レバーバネ掛け69cとクラッチ切換腕65のクラッチ切換腕バネ掛け65c間に張架されている。
【0063】
クラッチ切換腕65にはクラッチ60を切換えるクラッチ切換ピン65aが植設されている。
【0064】
クラッチ切換レバー支台71はクラッチ切換台73を介してフレーム2に固着されたクラッチ切換台73の一端に固定されている。
【0065】
クラッチ切換腕65はそのクラッチ切換腕取付穴65bがクラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aのクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換レバー軸66で枢着されている。クラッチ切換台73にはクラッチ切換腕65の揺動に応じてクラッチ切換ピン65aが揺動するのを許容して遊動する貫通穴73cが穿設されている。
【0066】
ここで、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば、クラッチ切換リンク72に駆動されてクラッチ切換レバー69が反時計方向に回動し、クラッチ切換腕65がクラッチ切換バネ67で弾撥(引張)され、時計方向に回動して1つの安定状態を保持し、このためクラッチ切換ピン65aにより、クラッチ摺動子62がポンプ駆動体61側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結し、気体供給ポンプ41を作動可能とし、ルーパ糸通し可能となる(図9(b)、図10(b))。また、このクラッチのルーパ糸通準備状態が保持される。
【0067】
一方、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻すならば、クラッチ切換リンク72に駆動されてクラッチ切換レバー69が時計方向に回動し、クラッチ切換腕65がクラッチ切換バネ67で弾撥(引張)され、反時計方向に回動して他の安定状態を保持し、クラッチ切換バネ67でクラッチ切換ピン65aにより、クラッチ摺動子62が縫目形成駆動体64側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結し、駆動軸5を回転可能とし、縫目形成可能となる(図9(a)、図10(a))。また、このクラッチの縫目形成準備状態が保持される。即ち、クラッチ切換バネ67は、気体供給ポンプ41へ動力伝達するポンプ駆動体61と、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64との一方に、クラッチ摺動子62をルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じて接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持される機能を果たす。
【0068】
また、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は、後で説明する位置決めピンを停止位置決め板81に対して進退させるとともに糸通し連結装置120を連結させるためのピン進退カム94dと、糸通し連結装置120を解除させてルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aを離間させるための解除カム94cとを有する。
【0069】
また、図3(a)、(b)、図5(A)、図11に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aがルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部91の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120を備えている。
【0070】
糸通し連結装置120において、ルーパ糸案内連結板121、136と、ルーパ糸案内出口支え131、139と、ルーパ天秤糸案内133、139bとが設けられている。これらはサブフレーム2aに固着されている。
【0071】
ルーパ糸導入機構110(図6)から延びている中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9eはそれぞれ支持穴131b、135a、支持穴121i、136c、バネ受け溝121j、136d、支持穴131a、139a、天秤糸案内133a、139bを経由して中空ルーパ糸案内7f、8f、9fに入れ子式に挿入されてルーパ糸道を形成している。支持穴121i、136cとバネ受け溝121j、136d間には拡圧バネ137が設けられ、留めリングでバネ受け溝121j、136dに係止されて中空ルーパ糸案内7f、8f、9fをルーパ側に弾撥している。したがって、中空ルーパ糸案内7f、8f、9fはそれぞれバネ受け溝121j、136d、支持穴131a、139aで摺動自在に保持されてルーパ糸案内出口7d、8d、9dが上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aに接離可能とされている。
【0072】
なお、ルーパ糸案内連結板121、136を支持する連結板案内棒132、138が設けられている。
【0073】
ルーパ糸案内連結板121のバネ掛け121kとルーパ糸案内出口支え131のバネ掛け131c間にはバネ134が張設され、これによってルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動することで解除カム94cがルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gを介してルーパ糸道離隔状態を解除して糸通し連結装置120を連結させたとき、中空ルーパ糸案内7f、8f、9fをルーパ側に弾撥してルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aを糸道連結させる。
【0074】
また、図2、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図9(a)、(b)、図12、図13(a)、(b)、(c)に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、安全装置として機能する位置決め装置80を備えている。
【0075】
位置決め装置80は、駆動軸5に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口7d、8d、9d及びルーパ糸入り口7a、8a、9aが図3(a)、(b)、図4(a)、(b)に示すように水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠き81aを有する停止位置決め板81と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、プーリ6を手動回転させて切り欠き81aに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120を連結させる位置決めピン82(図5(A)、図5(B))とを有する。
【0076】
位置決めピン82は、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94のピン進退カム94dに係合するフォロアピン端84aを有するフォロアピン84と、フォロアピン84がフォロアピンバネ83を介在して嵌合する位置決めピン82とを備えている。フォロアピン84はフォロアピンバネ83を介在してガイドピン85により長穴82b内で摺動自在とされている。位置決めピン82は位置決めピン戻しバネ86がガイドピン85とサブフレーム2a間に設けられ、位置決めピン82をルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に向かって弾撥している。
【0077】
位置決めピン82は位置決めピン摺動穴2aaを貫通して位置決め板81に向かって延在している。フォロアピン84と、これが嵌合している位置決めピン82はルーパ糸道離隔状態でルーパ糸案内連結板121の長穴121bに続く軸穴121aに嵌合している。
【0078】
このように、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、1つの観点ではその形態として、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプ41に動力を伝達するようにクラッチ60を切換える手段(クラッチ切換レバー69、ピン進退カム94d、クラッチ切換腕65、クラッチ切換バネ67、クラッチ切換ピン65a)と、中空ルーパ糸案内130のルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパのルーパ糸入り口7a、8a、9aとを接続する位置決め装置80の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120の連結を準備して、駆動軸5の一端に固着されているプーリ6を手動回転させることにより、それぞれ異なって運動するルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔が
ルーパ糸案内出口に水平方向に整致した時点で位置決め装置80が作動して縫目形成装置30への動力伝達を遮断され、糸通し連結装置120が作動してルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される手段(ルーパ糸案内連結板121、中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、中空ルーパ糸案内7f、8f、9f、バネ134、フォロアピン84と、位置決めピン82、フォロアピンバネ83、フォロアピン84、位置決めピン戻しバネ86)とを有するものと表現できる。
【0079】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、1つの観点ではその形態として、縫目形成時に、縫目形成装置30へ動力伝達するようにクラッチ60を切換える手段(クラッチ切換レバー69、クラッチ切換腕65、クラッチ切換バネ67、クラッチ切換ピン65a)と、位置決め装置80の位置決めを解除し、糸通し連結装置120の連結を解除し、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが離間される手段(ルーパ糸案内連結板121、中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、中空ルーパ糸案内7f、8f、9f、解除カム94c)とを有するものと表現できる。
【0080】
このように構成されたミシンの気体搬送糸通し装置の作動において、いま、ルーパ糸通しを行なうときには、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば(13図(b))、クラッチ切換伝達子70におけるルーパ糸通し/縫目形成切換カム94の回動角がレバー右回転ストッパ94fで抑止され、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92を回転軸として回動し、クラッチ切換連結腕94bに枢着されたクラッチ切換リンク72を時計方向に揺動する(図10(b))。
【0081】
クラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー支え腕71aに設けたクラッチ切換レバー取付穴71bにクラッチ切換レバー軸68で取付られたクラッチ切換レバー69は、クラッチ切換リンク72の揺動でカシメ段ピン69aの枢着点により反時計方向に揺動される。
【0082】
クラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aに設けたクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換腕軸66でクラッチ切換腕取付穴65bとで取付られているクラッチ切換腕65は、クラッチ切換バネ67を介して、時計方向に揺動される。この場合、クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換腕支台73aに設けた貫通穴73c内を摺動して左端に位置する(図9(b))。
【0083】
この結果、クラッチ切換ピン65aはクラッチ60のクラッチ摺動子62がポンプ駆動体61側に摺動し、縫目形成装置30への動力伝達を遮断し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結される。ポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43、ポンプ駆動腕44により気体供給ポンプ41のピストン48を往復動駆動可能とする(図7、図8(a)、図9(b))。
【0084】
クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換バネ67により、クラッチ摺動子62がポンプ駆動体61に摺動して接触し、その接触状態が保持されてルーパ糸通しための気体供給ポンプ41を駆動可能としてポンプ駆動準備状態となる。即ち、クラッチ60はクラッチ切換バネ67の弾性により1つのクラッチ安定状態を保持する。
【0085】
この場合、クラッチ60はピンクラッチであって、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23を介してポンプ駆動体61の連結ピン穴に容易に嵌合するので、弱い側圧力で、かつスリッピングなしにクラッチ切換ができる。
【0086】
ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば、上記のクラッチ60の切換と同時に、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けた解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gとの係合が解除され、この状態でフォロアピン84とこれが嵌合している位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aに嵌合しており(図3(a))、ルーパ糸案内連結板121をルーパ側に弾撥しているとともに、ピン進退カム94dでフォロアピン84のフォロアピン端84aを押圧するので、位置決めピン摺動穴2aaを貫通して延在している位置決め装置80の位置決めピン82は進行してフォロアピンバネ83、位置決めピン戻しバネ86により位置決め板81の外周面に圧接される(図13(b))。
【0087】
以上の動作によりルーパ糸通し時に接続自在に配設される糸通し連結装置120の連結及び位置決め装置80の位置決めが準備される。
【0088】
このようなクラッチ60の切換及び糸通し連結装置120の連結及び位置決め装置80の位置決めが準備された状態で、駆動軸5の一端に固着されているプーリ6を手動回転させれば、位置決めピン82はルーパ糸案内出口7d、8d、9d及びルーパ糸入り口7a、8a、9a、ルーパ天秤14、13、15の天秤孔14a、13a、15aが水平方向に整致する周方向停止位置(図3(b)、図4(b))で位置決め装置80の位置決め板81の切り欠き81aに嵌入し、この整致位置で駆動軸5はその回転が位置決めピン82でロックされる(図13(c)、図9(b))。
【0089】
位置決め装置80は位置決め板81の作動により駆動軸5はその回転がロックされるので、ルーパ糸通し時に安全装置として機能する。
【0090】
また、位置決めピン82が位置決め板81の切り欠き81aに嵌入することにより、糸通し連結装置120が作動して位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aから離脱し、バネ134の弾性によりルーパ糸案内連結板121がルーパ側に弾撥されルーパ糸案内連結板121の長穴121bはフォロアピン84を摺動する。この場合、位置決めピン戻しバネ83によりフォロアピン84は長穴121bに嵌合する。
【0091】
同時に、バネ134の弾性によりルーパ糸案内連結板121、136、したがって中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9eと入れ子式に連結されている中空ルーパ糸案内7f、8f、9fは支持穴131a、139a、天秤糸案内133a、139bを経由して上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9側に移動し、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される。この場合、バネ137は中空ルーパ糸案内7f、8f、9fのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される際の衝撃を緩衝する。
【0092】
これによって糸通し連結装置120の中空ルーパ糸案内130は連結準備から連結状態となる(図3(b)、図4(b))。
【0093】
糸通し連結装置120の連結状態において、必要なそれぞれのルーパ糸を5〜6mm(1/4inch)程度、ルーパ糸導入機構110の広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c(図1、図6、図8)に差し込むと共に、ルーパ糸導入台112の糸通し釦117を押下すると、糸通しスイッチ119bがONとなり、ミシンモータMが定速回転制御され、タイミングベルトMBで駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、クラッチ60の回転駆動体23からポンプ駆動体61、ポンプ駆動カム42、ポンプ駆動ロッド43、ポンプ駆動腕44により気体供給ポンプ41のピストン48を往復動駆動可能とする(図7、図8、図9(b))。気体供給ポンプ41の作動において、ピストン48のフォワード工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合され、空気は圧縮されて送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8)に圧縮空気として加圧注入され、一方ピストン48のリターン(吸入)工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合されることがなく開状態となるので、空気はピストン48及びピストンキャップ49の外周を経由して吸入され、また送出口50bから送出された空気は逆流止バルブ51の逆流止ボール51aで逆流阻止される。
【0094】
気体供給ポンプ41からの圧縮空気は送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8(a))に加圧注入され、気体バッファ領域115から通気狭隘領域114aを通ってジェット気流を生成する。
【0095】
各ルーパ糸は、このジェット気流に引っ張られてルーパ糸吸入領域114からルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませ、中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、糸通し連結装置120の中空ルーパ糸案内7f、8f、9fのルーパ糸案内出口7d、8d、9dを通って上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸剣先出口7b、8b、9bへ気体搬送することができる。
【0096】
ルーパ糸吸入領域114のルーパ糸案内出口端114bは傾斜して形成されており、これにより通気狭隘領域114aの下流側に渦流が発生するのを防止している。
【0097】
通気狭隘領域114aの下流でルーパ糸吸入領域114に隣接するルーパ糸導入パイプ116内に絞り部116cが形成されており、このため絞り部116cの下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域114aにおける気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域114に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませる。
【0098】
このような気体搬送糸通し装置のルーパ糸導入機構110によれば、ルーパ糸を上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に挿通する作業にあたり、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cを糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構110によって上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cの糸導入を強力に、かつ確実に行なうことができる。
【0099】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cを気体搬送するための加圧気体をミシンモータMで動作する気体供給ポンプ41で生成し、ワンタッチで上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cに糸通しができる。
【0100】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90によって片手のみで上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cに糸通しができる。
【0101】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cの剣先の糸出口7b、8b、9bから糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内7e、8e、9e、7f、8f、9fで連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通された上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cが他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0102】
次に、縫目形成を行なうときには、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻せば(13図(a))、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94の回動角がレバー左回転ストッパ94eで抑止され、クラッチ切換伝達子70が上記とは逆に作動し、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92を回転軸として回動し、クラッチ切換連結腕94bに枢着されたクラッチ切換リンク72を反時計方向に揺動する(図10(a))。
【0103】
クラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー支え腕71aに設けたクラッチ切換レバー取付穴71bにクラッチ切換レバー軸68で取付られたクラッチ切換レバー69は、クラッチ切換リンク72の揺動でカシメ段ピン69aの枢着点により時計方向に揺動される。
【0104】
クラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aに設けたクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換腕軸66でクラッチ切換腕取付穴65bとで取付られているクラッチ切換腕65は、クラッチ切換バネ67を介して、反時計方向に揺動される。この場合、クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換腕支台73aに設けた貫通穴73c内を摺動して右端に位置する(図9(a))。
【0105】
この結果、クラッチ切換ピン65aはクラッチ60のクラッチ摺動子62が縫目形成駆動体64側に摺動し、ポンプ駆動体61への動力伝達を遮断され、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結される。したがって、駆動軸5へ動力伝達され縫目形成装置30を駆動可能とする(図9(a)、図10(a))。
この場合、クラッチ60はクラッチ切換バネ67の弾性で他のクラッチ安定状態を保持する。即ち、クラッチ切換バネ67は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じて、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64に、クラッチ摺動子62を接離自在に移動されるとともにその接触状態が保持される機能を果たす。
【0106】
よって、ミシンモータMからタイミングベルトMBで駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、クラッチ60の回転駆動体23から縫目形成駆動体64により駆動軸5を回転駆動可能とする。
【0107】
ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻せば、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けた解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gと係合してルーパ側と反対方向(図5(A)では右方向)へ偏倚させるので、ルーパ糸案内連結板121のスイッチ作動部121hでルーパ糸通/縫目形成切換スイッチ119aがONとなり、モータコントローラ(フットコントローラ)MCを介してミシンモータMは可変回転制御される。
【0108】
駆動軸5の回転により、縫目形成装置30の針駆動機構12、布送り機構4及びルーパ駆動機構10が駆動され、針板3上で布押え機構19で布押えされた布25上に、針11a、11b、11c、上記のようにルーパ糸通しされている上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9によって縁かがり縫及び(又は)二重環縫を実行することができる。
【0109】
また、位置決め装置80は、上記とは逆に作動し、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けたピン進退カム94dでフォロアピン84のフォロアピン端84aを押圧することが解除されるので、位置決めピン82は位置決め板81の切り欠き81aから離反するとともに、解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gと係合してルーパ側と反対方向(図5(A)では右方向)へ偏倚させるので、フォロアピン84と、これが嵌合している長穴121bから位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aに嵌合する。このため糸通し連結装置120は、中空の糸案内7e、8e、9eのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが離反される。中空の糸案内7e、8e、9eのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが離反されているので、その間にルーパ天秤14、13、15の天秤孔14a、13a、15aがルーパ糸道として介在することで、ルーパ糸入り口7a、8a、9aと天秤糸案内133a、139b間でルーパ天秤機能が実行され、このルーパ糸道離隔状態で縫目形成装置30により縁かがり縫及び(又は)二重環縫が実行される。
【0110】
以上の実施例において、ユーザーが実施例記載のミシンで、通常使用では、ルーパ糸通し時(図21(b))に糸通し釦117を押し、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放し、所定の短時間、例えば2〜3秒後に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻すならばミシンは正常に作動する(図21(a))。
【0111】
しかしながら、以下のような特殊の操作を実行した場合には、ルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起する可能性がある。
【0112】
1.両手を同時に使い、片方の手で糸通し釦117を押しながら、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放さないで、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91をもう一方の手で操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻す操作をした場合
2.ルーパ糸通し時に糸通し釦117を押し、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放し、瞬時に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻した場合
以上の難点を解消するために、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、気体供給ポンプ41の気体供給動作中は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90がルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構160を備えている(図14〜図16)。
【0113】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチ切換制限機構160は、気体供給ポンプ41の気体供給動作中に、気体供給ポンプ41から気体供給される空圧アクチュエータ177と、空圧アクチュエータ177が気体供給されてルーパ糸通し/縫目形成切換機構90をルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置(切換制限板161、クラッチ制限腕176)とを有する(図16、図18、図20、図22)。
【0114】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータ177は、気体供給ポンプ41の気体供給によってピストン164が伸長動作するピストン・シリンダ164、165と、気体供給ポンプ41からの気体供給が無給となってから空圧アクチュエータ177内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダ164eとを有する(図19、図20)。
【0115】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータ177は、空圧アクチュエータ177を退行した原位置に偏倚させてリターダ164eの排気を促進するバネ174を有する。
【0116】
以下、クラッチ切換制限機構160についてさらに詳しく説明する。
【0117】
基本的に、図14〜図16に示すように、切換制限機構160をクラッチ60に併設して、気体供給源40のポンプシリンダ50にシリンダ用送出口50dを設け、圧縮された空気を送出口50dからパイプ175を経由して切換制限機構160の空圧アクチュエータ177としての制限シリンダ165へ供給するものである。
【0118】
また、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のクラッチ切換腕65には、クラッチ切換レバー69が時計方向に回動し、張設されたクラッチ切換バネ67の弾撥によりクラッチ切換腕65が反時計方向へ揺動する場合に後述する切換制限板161が突出して先端部に設けられた切換制限端161aに当接し、クラッチ切換腕65の反時計方向へ揺動を制限するクラッチ制限腕176を固着している。
【0119】
即ち、図16、図17、図18、図20、図22に示すように、切換制限機構160は、制限機構取付台162の一端部へ固着される制限シリンダ取付板172に制限シリンダ165を固着して、制限機構取付台162の他端に切換制限板取付腕162aを形成して、切換制限板取付腕162aの基部に切換制限板161の枢着穴161cをカシメ段ピン162eにて揺動自在に枢着し、先端部にピストンストッパ162bを設けている。切換制限板161は先端部に切換制限端161aとバネ掛け161bとを有し、中央部に制限ピストン164の制限ピストン連結部164bに設けられた制限ピストン連結溝164cに嵌合して制限ピストン連結穴164dを貫通する連結ピン163によって摺動自在に連結する連結長穴161d有する。
【0120】
切換制限板161は先端部に切換制限端161aとバネ掛け161bを設け、バネ掛け161bと制限シリンダ取付板172の一端に設けられたバネ掛け172cとの間には切換制限板バネ174が張架されている。
【0121】
ポンプシリンダ50のシリンダ用送出口50dからパイプ175を制限シリンダ165の一端に固着された逆流止バルブ166に形成される吸入口166aへ圧縮された空気を供給する。
【0122】
逆流止バルブ166はフランジ166bとバブルハウジング166cを設け、バブルハウジング166cにはプッシュナットで固定されるバルブパイプ169を内装し、バネ170と、バネ170で押圧される逆流止ボール168と、伸長(加圧、フォワード)工程時に送出加圧空気で逆流止ボール168が浮いてバルブが開成し、退行(排気、リターン)工程時にバネ170で押圧されて逆流止ボール168が着座してバルブが閉成するOリングとを備えている。
【0123】
空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は、制限シリンダ165の他端から遊嵌して伸長(加圧、フォワード)工程時に送出加圧空気で、制限ピストン連結部164bの先端部が切換制限板取付腕162aのピストンストッパ162bに当接するまで突出し、制限ピストン連結部164bに連結ピン163で連結される切換制限板161を揺動させる。
【0124】
また、退行(排気、リターン)工程時には空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は、バネ170で押圧される逆流止ボール168が着座してバルブが閉成し、突出を保とうとするが、加圧空気は、制限ピストン164の外周に設けられたリターダ(排気隘路)164eから時間をかけて少量ずつ排気されて、切換制限板161のバネ掛け161bと制限シリンダ取付板172のバネ掛け172cとの間に張架されている切換制限板バネ174の弾撥によって切換制限板161が引き戻される。したがって、制限ピストン164も徐々に引き戻される。
【0125】
それにより、ミシンモータMにおける糸通しスイッチ119bの回路がOFFとなってもミシンモータMは回転慣性によって数秒間回転を続けている場合には、気体供給源40のポンプシリンダ50のシリンダ用送出口50dより加圧空気をパイプ175を経由して切換制限機構160の制限シリンダ165へ供給し、空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は制限ピストン連結部164bの先端部が切換制限板取付腕162aのピストンストッパ162bに当接した状態を保ち、制限ピストン連結部164bに連結ピン163で連結される切換制限板161も突出して先端部に設けられた切換制限端161aにクラッチ制限腕176の上部が当接し、クラッチ切換腕65の反時計方向へ揺動を阻止制限する(図21(c))。
【0126】
ミシンモータMの回転が停止すると、気体供給源40から空圧アクチュエータ177の制限シリンダ165への加圧空気の送出が無くなり、切換制限板161のバネ掛け161bと制限シリンダ取付板172のバネ掛け172cとの間に張架されている切換制限板バネ174の弾撥によって切換制限板161と共に空圧アクチュエータ177の制限ピストン164が制限ピストン164の外周に設けられたリターダ(排気隘路)164eから制限シリンダ165内の加圧空気が極少量ずつ排気されることにより徐々に引き戻される。その間にルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91が反時計方向Aの最上位置に達して(図21(a))、長穴121bに嵌合しているフォロアピン84の中心点にルーパ糸案内連結板121の軸穴121aが一致して、位置決めピン82の突出維持が無くなり、位置決めピン戻しバネ86の弾発によって位置決めピン82が押し戻されて駆動軸5の位置決め固定を解除した後、突出していた切換制限板161の切換制限端161aが退行してクラッチ制限腕176のクラッチ切換腕65の揺動阻止が解除されるとクラッチ切換腕65は反時計方向へ揺動しクラッチ切換ピン65aがプーリ6側へ揺動しクラッチ摺動子62を縫目形成駆動体64側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結する(図9(a))。
【0127】
これにより、上記のようなルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【0128】
以上の説明から明らかなように本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸をルーパに挿通する作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構によってルーパ糸の糸導入と気体搬送を確実に行なうことができる。
【0129】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体をミシンモータで動作する気体供給ポンプで生成し、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91によるワンタッチでルーパに糸通しができる。
【0130】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパに糸通しができる。
【0131】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパの剣先の糸出口から糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内で連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0132】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、クラッチ切換制限機構によりルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口とルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明におけるミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパに加圧気体を利用して自動的に糸を通す縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等の環縫いミシンに好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
M・・・ミシンモータ
5・・・駆動軸
6・・・プーリ
7、8、9・・・ルーパ
7a、8a、9a・・・ルーパ糸入口
7b、8b、9b・・・ルーパ剣先糸出口
7d、8d、9d・・・ルーパ糸案内出口
7e、8e、9e、7f、8f、9f・・・中空ルーパ糸案内
14、13、15・・・ルーパ天秤
14a、13a、15a・・・天秤孔
16a、16b、16c・・・ルーパ糸
23、61、64、65、65a、69、91、94・・・クラッチ切換手段
30・・・縫目形成装置
40・・・気体供給源
(41・・・気体供給ポンプ)
60・・・クラッチ
61・・・ポンプ駆動体
62・・・クラッチ摺動子
64・・・縫目形成駆動体
67・・・クラッチ切換バネ
70・・・クラッチ切換伝達子(65、65a、94、69、・・・クラッチ切換伝達子)
80・・・位置決め装置
81・・・停止位置決め板
81a・・・切り欠き
81、82、84、94d、121、134・・・位置決め準備・連結準備・遮断・連結
手段
82・・・位置決めピン
82、84、94c、121、134・・・位置決めを解除・連結解除・離間手段
90・・・ルーパ糸通し/縫目形成切換機構
91・・・ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部
(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)
94d・・・ピン進退カム
94c・・・解除カム
110・・・ルーパ糸導入機構
113a、113b、113c・・・広口ルーパ糸差入口
114・・・ルーパ糸吸入領域
114a・・・通気狭隘領域
114b・・・ルーパ糸案内出口端
115・・・気体バッファ領域
116・・・ルーパ糸導入パイプ
116a・・・一端部
116b・・・他端部
116c・・・絞り部
120・・・糸通し連結装置
130・・・中空ルーパ糸案内
160・・・クラッチ切換制限機構
連結装置(161・・・切換制限板、176・・・クラッチ制限腕)
164、165・・・ピストン・シリンダ
164e・・・リターダ
174・・・バネ
177・・・空圧アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンの気体搬送糸通し装置に係わり、特に縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等のルーパに加圧気体を利用して自動的に糸を通すためのミシンの気体搬送糸通し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等において、ルーパ糸を差し入れる糸導入部からルーパの剣先のルーパ糸案内出口までを連通する中空のルーパ糸案内で連結し、中空のルーパ糸案内に供給される加圧気体の流れを利用してルーパ糸を送る気体搬送糸通し装置が知られている。これにより、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、このため糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出し、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなく、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2865470号公報
【特許文献2】特許第3355214号公報
【特許文献3】特許第4088504号公報(図15〜図19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような気体搬送糸通し構造においては糸通しのための経路がかなり単純となり糸通し作業が容易となり、糸絡みや糸切れの発生をなくすことができる。
【0005】
しかしながら、このような気体搬送糸通し構造では、糸の挿通作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、気体搬送糸通しに慣れていないオペレータにとってルーパ糸の糸導入を確実に行なうには不十分である。
【0006】
また、このような気体搬送糸通し構造では、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体を生成する手段が手動で行なうため、その糸挿通の手作業はひ弱な女性のようなオペレータにとっては煩わしく、難儀を強いられる。
【0007】
さらに、このような気体搬送糸通し構造では、一方の手でストッパ(位置決めピン)を停止位置決め板に対して押圧させながら、他方の手でプーリを手動回転させることにより縫目形成装置をロックさせるとともに糸通し連結装置を連結させなければならないので、ミシンに精通していない未熟練オペレータにとって、この糸通し装置の使い方がオペレータに理解されにくく、両手を同時に使って行なう糸の挿通作業はかなり面倒であって、そのためのトレーニングを要する。
【0008】
本発明は、これらの難点を解決するためになされたもので、糸の挿通作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸の糸導入を確実に行なうルーパ糸導入機構を備えたミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体を縫目形成装置を駆動するミシンモータを切換えて動作する気体供給ポンプで生成し、ワンタッチでルーパに糸通しができるミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパ糸通し切換操作ができるミシンの気体搬送糸通し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するため、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入機構から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源とを備え、ルーパ糸導入機構は、ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口及び広口ルーパ糸差入口に連通するルーパ糸吸入領域と、気体供給源から加圧気体が供給される気体バッファ領域と、ルーパ糸吸入領域に一端部で嵌合し、他端部で中空ルーパ糸案内に接続されるルーパ糸導入パイプとを有し、ルーパ糸吸入領域とルーパ糸導入パイプとは、気体バッファ領域に連通しルーパ糸吸入領域の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域を形成している。
【0012】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸吸入領域のルーパ糸案内出口端を傾斜して形成して通気狭隘領域の下流側に渦流が発生するのを防止する。
【0013】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、狭隘領域の下流でルーパ糸吸入領域に隣接するルーパ糸導入パイプ内に絞り部を形成して絞り部の下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域における気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプに吸い込ませ中空ルーパ糸案内を通ってルーパのルーパ糸剣先出口へ気体搬送する。
【0014】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設される。
【0015】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入機構から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時にはルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸に、ルーパ糸通し時には気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備えている。
【0016】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチは、気体供給ポンプへ動力伝達するポンプ駆動体と、駆動軸の一端に固着されて縫目形成装置へ動力伝達する縫目形成駆動体との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じてクラッチ切換バネを介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されてミシンモータからの動力が伝達されているクラッチ摺動子を有するピンクラッチで構成される。
【0017】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を備えている。
【0018】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が水平方向に整致したとき中空ルーパ糸案内のルーパ糸案内出口とルーパのルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置を備えている。
【0019】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプに動力を伝達するようにクラッチを切換える手段と、中空ルーパ糸案内のルーパ糸案内出口とルーパのルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置の連結を準備して、駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、位置決め装置が作動して縫目形成装置への動力伝達を遮断され、糸通し連結装置が作動してルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が連結される手段とを有し、縫目形成時に、縫目形成装置へ動力伝達するようにクラッチを切換える手段と、位置決め装置の位置決めを解除し、糸通し連結装置の連結を解除し、ルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口が離間される手段とを有する。
【0020】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、位置決め装置は、駆動軸に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口、ルーパ天秤に形成された天秤孔及びルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、プーリを手動回転させて切り欠きに嵌合する位置決めピンとを有する。
【0021】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、ルーパ糸導入機構からルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、ルーパ糸をルーパ糸導入領域から中空ルーパ糸案内を通ってルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時にルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸又はルーパ糸通し時に気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に縫目形成装置への動力伝達を遮断して気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置に動力を伝達して気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するようにクラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備え、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプに動力を伝達するようにクラッチを切換えるクラッチ切換伝達子と、駆動軸に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口及びルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板、ルーパ糸通し時に、プーリを手動回転させて切り欠きに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を連結させる位置決めピンを有する位置決め装置と、位置決めピンを停止位置決め板に対して進退させるとともに糸通し連結装置を連結させるためのピン進退カムと、糸通し連結装置を解除させてルーパ糸案内出口とルーパ糸入り口を離間させるための解除カムとを有する。
【0022】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、気体供給ポンプの気体供給動作中は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構がルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構を備えている。
【0023】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチ切換制限機構は、気体供給ポンプの気体供給動作中に、気体供給ポンプから気体供給される空圧アクチュエータと、空圧アクチュエータが気体供給されてルーパ糸通し/縫目形成切換機構をルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置とを有する。
【0024】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータは、気体供給ポンプの気体供給によってピストンが伸長動作するピストン・シリンダと、気体供給ポンプからの気体供給が無給となってから空圧アクチュエータ内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダとを有する。
【0025】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータは、空圧アクチュエータを退行した原位置に偏倚させてリターダの排気を促進するバネを有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸をルーパに挿通する作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構によってルーパ糸の糸導入を確実に行なうことができる。
【0027】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体をミシンモータで動作する気体供給ポンプで生成し、ワンタッチでルーパに糸通しができる。
【0028】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパ糸通し切換操作ができる。
【0029】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパの剣先の糸出口から糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内で連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0030】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、クラッチ切換制限機構によりルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口とルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)の斜視図である。
【図2】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)のブロックダイアグラムである。
【図3】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す部分斜視図で、(a)は糸通し準備状態、(b)は糸通し状態を示す。
【図4】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す斜視図で、(a)は縫目形成状態、(b)は糸通し状態を示す。
【図5(A)】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される糸通し連結装置、中空ルーパ糸案内、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す分解斜視図である。
【図5(B)】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される位置決め装置を示す分解斜視図である。
【図6】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸導入機構を示す説明図である。
【図7】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される気体供給ポンプ及びそれにより気体供給されるルーパ糸導入機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチと、クラッチを介して駆動される気体供給ポンプと、気体供給ポンプにより気体供給されるルーパ糸導入機構とを示す分解斜視図、(b)は気体供給ポンプで使用される逆流止バルブの説明図である。
【図9】(a)、(b)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチ及び位置決め装置を示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構を示す斜視図である。
【図11】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構及びクラッチ切換伝達子を示す分解斜視図、(b)はルーパ糸通し/縫目形成切換機構で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換カムを示す斜視図である。
【図12】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるクラッチ及び位置決め装置を示す分解斜視図である。
【図13】(a)、(b)、(c)はそれぞれ縫目形成時、ルーパ糸通し準備状態時、ルーパ糸通し時における本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されるルーパ糸通し/縫目形成切換機構及び位置決め装置を示す斜視図である。
【図14】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に、クラッチ切換制限機構を組み込んだ斜視図である。
【図15】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に、クラッチ切換制限機構を組み込んだブロックダイアグラムである。
【図16】本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用される気体供給ポンプ及びそれにより気体供給されるルーパ糸導入機構に、クラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータを組み込んだ斜視図である。
【図17】(a)は本発明によるミシンの気体搬送糸通し装置で使用されクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータを組み込むのに適した気体供給ポンプを示す分解斜視図、(b)は気体供給ポンプで使用される逆流止バルブの説明図である。
【図18】(a)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが原位置に退行した状態を示す斜視図、(b)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが伸長した状態を示す斜視図である。
【図19】(a)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが退行した原位置に退行した状態を示す断面図、(b)はクラッチ切換制限機構の空圧アクチュエータが伸長した状態を示す断面図である。
【図20】図14〜図19に示すクラッチ切換制限機構を示す分解斜視図である。
【図21】図14〜図20に示すクラッチ切換制限機構の動作説明図であり、(a)は縫目形成時に切換られた状態、(b)はルーパ糸通し時に切換られた状態、(c)はルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避する状態を示す。
【図22】ルーパ糸通し/縫目形成切換機構に、図14〜19図に示すクラッチ切換制限機構を組み込んだ分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の気体搬送糸通し装置を3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)に適用した好ましい実施の形態例について図面を参照して詳述する。
【0033】
図1に示すように、このオーバーロックミシン1は、ベッドとアームを形成するメインフレーム2で構成されている。メインフレーム2は、サブフレーム2aとサブフレーム2bを有する。
【0034】
ミシンモータMはサブフレーム2bに装着され、駆動軸5はフレーム2に沿って水平方向に延びている(図2、図7〜図9、図12〜図13)。駆動軸5は、後述するように、ミシンモータMによってタイミングベルトMBによりクラッチ60を介して回転駆動される。
【0035】
図1、図2に示すように、駆動軸5と同期して上下運動する針留11に固定され針板3を貫通して上下運動する針11a、11b、11c、これらの針11a、11b、11cを駆動する針駆動機構12、針板3上で布25を押える布押え機構19、針板3の下側で針11a、11b、11cの軌跡と交叉するように円弧状の軌跡を描いて往復運動する下ルーパ8、針板3の側方で下ルーパ8の軌跡と交叉するとともに針板3の上側で針11a、11b、11cの軌跡と交叉するように楕円弧状の軌跡を描いて往復運動する上ルーパ7、二重環ルーパ9、布25を1目毎に歩進させる布送り機構4で縫目形成装置30を形成している。
【0036】
上ルーパ7、下ルーパ8及び二重環ルーパ9はそれぞれルーパ駆動機構10によって駆動される。
【0037】
縫目形成装置30の針駆動機構12、布送り機構4及びルーパ駆動機構10は駆動軸5によって駆動されるが、その具体的構造及び動作は公知又は周知であるので、その詳細は説明を省略する。
【0038】
3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン1によれば、針11a、11bに挿通される針糸17a、17bと、下ルーパ8に挿通された下ルーパ糸16bと、上ルーパ7に挿通された上ルーパ糸16aとを交叉して布25にオーバーロック縫いを形成するものである。なお、二重環ルーパ9はそれに挿通された二重環ルーパ糸16cと針11cに挿通される針糸17cとを交叉して布25に二重環縫いを形成し、所謂インターロック縫いを行なうものである。
【0039】
このオーバーロックミシン1において、各ルーパ糸16a、16b、16cを、糸調子器18を介して上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に気体搬送によりルーパ糸通しするにあたり、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9は、ルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にされている(図4(a)、(b)、図5(A))。ここで、「中空構造」とは、ルーパ自体をルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にしてもよく、ルーパにルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで溝を形成し、そこに中空パイプを埋め込む構造にしてもよい。この場合、その構造の断面は円、多角形であってもよく、その一部が欠ける、例えば断面C字形であってもよい。
【0040】
この目的のため、オーバーロックミシン1は、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に導かれる各ルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸導入機構110からルーパ糸入口7a、8a、9aまで延在しルーパ糸案内出口7d、8d、9dを有する中空ルーパ糸案内7e、8e、9eと、各ルーパ糸をルーパ糸導入機構110から中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通ってルーパ糸案内出口7d、8d、9dへ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源40とを備えている(図1、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図6、図7、図8)。
【0041】
図6に示すように、ルーパ糸導入機構110は、各ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c及び広口ルーパ糸差入口113a、113b、113cに連通するルーパ糸吸入領域114と、気体供給源40から加圧気体が供給される気体バッファ領域115と、ルーパ糸吸入領域114に一端部116aで嵌合し、他端部116bで中空ルーパ糸案内7e、8e、9eに接続されるルーパ糸導入パイプ116とを有している。
【0042】
ルーパ糸吸入領域114とルーパ糸導入パイプ116とは、気体バッファ領域115に連通しルーパ糸吸入領域114の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域114aを形成している。
【0043】
ルーパ糸吸入領域114のルーパ糸案内出口端114bは傾斜して形成されており、これにより通気狭隘領域114aの下流側に渦流が発生するのを防止している。
【0044】
通気狭隘領域114aの下流でルーパ糸吸入領域114に隣接するルーパ糸導入パイプ116内に絞り部116cが形成されており、このため絞り部116cの下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域114aにおける気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域114に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませ中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通って上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸剣先出口7b、8b、9bへ気体搬送することができる。
【0045】
図7、図8に示すように、ルーパ糸導入機構110はルーパ糸導入台112上に形成されている。また、ルーパ糸導入台112には糸通し釦117が形成されている。糸差込板111には広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c及び糸通し釦117が臨むルーパ糸差込み口111a、111b、111c及び糸通し釦穴111dが設けられ、フレーム2に固定され、その上面には糸差込板シール111’が貼着されている。
【0046】
糸通し釦117の押下で動作する糸通しスイッチ119bが後述するルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部91の操作で動作するルーパ糸通し/縫目形成切換スイッチ119aとともにルーパ糸導入台112上に設けられている(図7)。
【0047】
後述するように、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aは、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設される。
【0048】
次に、本発明の気体搬送糸通し装置を適用した3本針6本糸縁かがりオーバーロックミシン(二重環縫いミシン)における他の形態例について説明する。
【0049】
この形態例において縁かがりオーバーロックミシン1は、上記のルーパ糸入口7a、8a、9aからルーパ剣先糸出口7b、8b、9bまで中空構造にされた上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9と、上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構110と、ルーパ糸導入機構110からルーパ糸入口7a、8a、9aまで延在しルーパ糸案内出口7d、8d、9dを有する中空ルーパ糸案内7e、8e、9eとを利用して以下に説明するようにルーパ糸通し及びミシン縫製を行なうものである。
【0050】
図1、図2に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、各ルーパ糸をルーパ糸導入機構110から中空ルーパ糸案内7e、8e、9eを通ってルーパ糸案内出口7d、8d、9dへ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源40である気体供給ポンプ41と、ミシンモータMからの動力を縫目形成時に上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9を含む縫目形成装置30を駆動する駆動軸5又はルーパ糸通し時に気体供給ポンプ41にそれぞれ伝達するためのクラッチ60と、ルーパ糸通し時に縫目形成装置30への動力伝達を遮断して気体供給ポンプ41に動力を伝達し、縫目形成時に縫目形成装置30に動力を伝達して気体供給ポンプ41への動力伝達を遮断するようにクラッチ60を切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構90とを備えている。
【0051】
図8に示すように、気体供給ポンプ41は、ルーパ糸通し時に、クラッチ60(図7、図12)のポンプ駆動体61で回転されるポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43が往復運動し、スラストカラー45で担持されたポンプ駆動腕44で往復動するピストン48、ピストンキャップ49と、これが気密摺動するポンプシリンダ50と、その逆流止バルブ51とから成る。シリンダ取付部50aはシリンダ取付ピン52で揺動を許容するようにポンプ取付台53でサブフレーム2bに取付られている。
【0052】
ポンプ駆動バネ46をポンプ駆動腕44のバネ掛け47とクラッチ切換台73のバネ掛け73d(図10(a)、(b)、図11)に張設することにより、気体供給ポンプ41への動力伝達を遮断したとき、ポンプ駆動(偏芯)カム42が常時回転している回転駆動体23との摩擦で空転するのを防止するとともに、ピストン48を加圧(フォワード)工程時に補助する機能を果たす。
【0053】
ピストン48はピストン軸48aに取付られ、吐出し方向に向かって末広がり状に形成されたシール材であるピストンキャップ49はピストン頭頂部48bに固定されている。
【0054】
逆流止バルブ51はポンプシリンダ50と送出口50bに接続されるバルブハウジング50cに、バネ51bと、バネ51bで押圧される逆流止ボール51aと、バルブハウジング50cに螺着され、リターン(吸入)工程時にバネ51bで押圧されて逆流止ボール51aが着座してバルブが閉成し、加圧(フォワード)工程時に送出加圧空気で逆流止ボール51aが浮いてバルブが開成するバルブシート51cとを備えている。
【0055】
気体供給ポンプ41の作動において、ピストン48のフォワード工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合され、空気は圧縮されて送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8)に圧縮空気として加圧注入され、一方ピストン48のリターン(吸入)工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合されることがなくなるので、空気はピストン48及びピストンキャップ49の外周を経由して吸入され、また送出口50bから送出された空気は逆流止バルブ51の逆流止ボール51aで逆流阻止される。
【0056】
図1、図2、図12に示すように、クラッチ60は、気体供給ポンプ41へ動力伝達するポンプ駆動体61と、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じてクラッチ切換バネ67を介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されてミシンモータMからの動力が伝達されているクラッチ摺動子62を有する。
【0057】
詳述すれば、クラッチ60は、所謂ピンクラッチで構成され、駆動軸5の軸線上に、ミシンモータMからの動力がタイミングベルトMBにより伝達される駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、ポンプ駆動(偏芯)カム42、ポンプ駆動体61、回転駆動体23、クラッチ連結ピン63が同軸に摺動自在に内蔵したクラッチ摺動子62、縫目形成駆動体64、プーリ6が順に設けられる。
【0058】
このように構成されたクラッチ60の作動において、ルーパ糸通し時には、クラッチ摺動子62はポンプ駆動体61側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結し、ポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43により気体供給ポンプ41を駆動可能とする(図9(b))。
【0059】
縫目形成時には、クラッチ摺動子62はプーリ6側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結し、駆動軸5を回転可能とする図9(a))。
【0060】
縁かがりオーバーロックミシン1において、図10(a)、(b)、図11に示すように、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプ41に動力を伝達するようにクラッチ60を切換えるクラッチ切換伝達子70、即ち、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91により回動するルーパ糸通し/縫目形成切換カム94、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94のクラッチ切換連結腕94bに枢着されて揺動するクラッチ切換リンク72、クラッチ切換リンク72により揺動するクラッチ切換レバー69、クラッチ切換レバー69にカシメ段ピン69aで蝶着されて駆動軸5の軸方向に揺動するクラッチ切換腕65、クラッチ切換腕65に固定され、クラッチ摺動子62の摺動子制御溝62cに嵌合して、クラッチ切換腕65の揺動によりクラッチ摺動子62を駆動軸5の軸方向に摺動させてクラッチ60を切換えるクラッチ切換ピン65aを有する。
【0061】
ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91はサブフレーム2aと切換カム軸受板93に枢着された切換カム軸92の一端部で回転平坦部92bに回転止めされビスでネジ穴92cに螺着されている。ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92のピン穴92aにピン95を嵌合することにより固定されている。
【0062】
クラッチ切換レバー69はクラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー取付腕71aに跨がってクラッチ切換レバー軸68で枢着されている。クラッチ切換バネ67がクラッチ切換レバー69のクラッチ切換レバーバネ掛け69cとクラッチ切換腕65のクラッチ切換腕バネ掛け65c間に張架されている。
【0063】
クラッチ切換腕65にはクラッチ60を切換えるクラッチ切換ピン65aが植設されている。
【0064】
クラッチ切換レバー支台71はクラッチ切換台73を介してフレーム2に固着されたクラッチ切換台73の一端に固定されている。
【0065】
クラッチ切換腕65はそのクラッチ切換腕取付穴65bがクラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aのクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換レバー軸66で枢着されている。クラッチ切換台73にはクラッチ切換腕65の揺動に応じてクラッチ切換ピン65aが揺動するのを許容して遊動する貫通穴73cが穿設されている。
【0066】
ここで、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば、クラッチ切換リンク72に駆動されてクラッチ切換レバー69が反時計方向に回動し、クラッチ切換腕65がクラッチ切換バネ67で弾撥(引張)され、時計方向に回動して1つの安定状態を保持し、このためクラッチ切換ピン65aにより、クラッチ摺動子62がポンプ駆動体61側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結し、気体供給ポンプ41を作動可能とし、ルーパ糸通し可能となる(図9(b)、図10(b))。また、このクラッチのルーパ糸通準備状態が保持される。
【0067】
一方、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻すならば、クラッチ切換リンク72に駆動されてクラッチ切換レバー69が時計方向に回動し、クラッチ切換腕65がクラッチ切換バネ67で弾撥(引張)され、反時計方向に回動して他の安定状態を保持し、クラッチ切換バネ67でクラッチ切換ピン65aにより、クラッチ摺動子62が縫目形成駆動体64側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結し、駆動軸5を回転可能とし、縫目形成可能となる(図9(a)、図10(a))。また、このクラッチの縫目形成準備状態が保持される。即ち、クラッチ切換バネ67は、気体供給ポンプ41へ動力伝達するポンプ駆動体61と、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64との一方に、クラッチ摺動子62をルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じて接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持される機能を果たす。
【0068】
また、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は、後で説明する位置決めピンを停止位置決め板81に対して進退させるとともに糸通し連結装置120を連結させるためのピン進退カム94dと、糸通し連結装置120を解除させてルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aを離間させるための解除カム94cとを有する。
【0069】
また、図3(a)、(b)、図5(A)、図11に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aがルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部91の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120を備えている。
【0070】
糸通し連結装置120において、ルーパ糸案内連結板121、136と、ルーパ糸案内出口支え131、139と、ルーパ天秤糸案内133、139bとが設けられている。これらはサブフレーム2aに固着されている。
【0071】
ルーパ糸導入機構110(図6)から延びている中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9eはそれぞれ支持穴131b、135a、支持穴121i、136c、バネ受け溝121j、136d、支持穴131a、139a、天秤糸案内133a、139bを経由して中空ルーパ糸案内7f、8f、9fに入れ子式に挿入されてルーパ糸道を形成している。支持穴121i、136cとバネ受け溝121j、136d間には拡圧バネ137が設けられ、留めリングでバネ受け溝121j、136dに係止されて中空ルーパ糸案内7f、8f、9fをルーパ側に弾撥している。したがって、中空ルーパ糸案内7f、8f、9fはそれぞれバネ受け溝121j、136d、支持穴131a、139aで摺動自在に保持されてルーパ糸案内出口7d、8d、9dが上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aに接離可能とされている。
【0072】
なお、ルーパ糸案内連結板121、136を支持する連結板案内棒132、138が設けられている。
【0073】
ルーパ糸案内連結板121のバネ掛け121kとルーパ糸案内出口支え131のバネ掛け131c間にはバネ134が張設され、これによってルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動することで解除カム94cがルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gを介してルーパ糸道離隔状態を解除して糸通し連結装置120を連結させたとき、中空ルーパ糸案内7f、8f、9fをルーパ側に弾撥してルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aを糸道連結させる。
【0074】
また、図2、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図9(a)、(b)、図12、図13(a)、(b)、(c)に示すように、縁かがりオーバーロックミシン1は、安全装置として機能する位置決め装置80を備えている。
【0075】
位置決め装置80は、駆動軸5に同軸に取付けられ、ルーパ糸案内出口7d、8d、9d及びルーパ糸入り口7a、8a、9aが図3(a)、(b)、図4(a)、(b)に示すように水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠き81aを有する停止位置決め板81と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、プーリ6を手動回転させて切り欠き81aに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120を連結させる位置決めピン82(図5(A)、図5(B))とを有する。
【0076】
位置決めピン82は、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94のピン進退カム94dに係合するフォロアピン端84aを有するフォロアピン84と、フォロアピン84がフォロアピンバネ83を介在して嵌合する位置決めピン82とを備えている。フォロアピン84はフォロアピンバネ83を介在してガイドピン85により長穴82b内で摺動自在とされている。位置決めピン82は位置決めピン戻しバネ86がガイドピン85とサブフレーム2a間に設けられ、位置決めピン82をルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に向かって弾撥している。
【0077】
位置決めピン82は位置決めピン摺動穴2aaを貫通して位置決め板81に向かって延在している。フォロアピン84と、これが嵌合している位置決めピン82はルーパ糸道離隔状態でルーパ糸案内連結板121の長穴121bに続く軸穴121aに嵌合している。
【0078】
このように、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、1つの観点ではその形態として、ルーパ糸通し時に、気体供給ポンプ41に動力を伝達するようにクラッチ60を切換える手段(クラッチ切換レバー69、ピン進退カム94d、クラッチ切換腕65、クラッチ切換バネ67、クラッチ切換ピン65a)と、中空ルーパ糸案内130のルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパのルーパ糸入り口7a、8a、9aとを接続する位置決め装置80の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置120の連結を準備して、駆動軸5の一端に固着されているプーリ6を手動回転させることにより、それぞれ異なって運動するルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔が
ルーパ糸案内出口に水平方向に整致した時点で位置決め装置80が作動して縫目形成装置30への動力伝達を遮断され、糸通し連結装置120が作動してルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される手段(ルーパ糸案内連結板121、中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、中空ルーパ糸案内7f、8f、9f、バネ134、フォロアピン84と、位置決めピン82、フォロアピンバネ83、フォロアピン84、位置決めピン戻しバネ86)とを有するものと表現できる。
【0079】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90は、1つの観点ではその形態として、縫目形成時に、縫目形成装置30へ動力伝達するようにクラッチ60を切換える手段(クラッチ切換レバー69、クラッチ切換腕65、クラッチ切換バネ67、クラッチ切換ピン65a)と、位置決め装置80の位置決めを解除し、糸通し連結装置120の連結を解除し、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが離間される手段(ルーパ糸案内連結板121、中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、中空ルーパ糸案内7f、8f、9f、解除カム94c)とを有するものと表現できる。
【0080】
このように構成されたミシンの気体搬送糸通し装置の作動において、いま、ルーパ糸通しを行なうときには、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば(13図(b))、クラッチ切換伝達子70におけるルーパ糸通し/縫目形成切換カム94の回動角がレバー右回転ストッパ94fで抑止され、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92を回転軸として回動し、クラッチ切換連結腕94bに枢着されたクラッチ切換リンク72を時計方向に揺動する(図10(b))。
【0081】
クラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー支え腕71aに設けたクラッチ切換レバー取付穴71bにクラッチ切換レバー軸68で取付られたクラッチ切換レバー69は、クラッチ切換リンク72の揺動でカシメ段ピン69aの枢着点により反時計方向に揺動される。
【0082】
クラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aに設けたクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換腕軸66でクラッチ切換腕取付穴65bとで取付られているクラッチ切換腕65は、クラッチ切換バネ67を介して、時計方向に揺動される。この場合、クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換腕支台73aに設けた貫通穴73c内を摺動して左端に位置する(図9(b))。
【0083】
この結果、クラッチ切換ピン65aはクラッチ60のクラッチ摺動子62がポンプ駆動体61側に摺動し、縫目形成装置30への動力伝達を遮断し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23でポンプ駆動体61の連結ピン穴に連結される。ポンプ駆動(偏芯)カム42でポンプ駆動ロッド43、ポンプ駆動腕44により気体供給ポンプ41のピストン48を往復動駆動可能とする(図7、図8(a)、図9(b))。
【0084】
クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換バネ67により、クラッチ摺動子62がポンプ駆動体61に摺動して接触し、その接触状態が保持されてルーパ糸通しための気体供給ポンプ41を駆動可能としてポンプ駆動準備状態となる。即ち、クラッチ60はクラッチ切換バネ67の弾性により1つのクラッチ安定状態を保持する。
【0085】
この場合、クラッチ60はピンクラッチであって、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23を介してポンプ駆動体61の連結ピン穴に容易に嵌合するので、弱い側圧力で、かつスリッピングなしにクラッチ切換ができる。
【0086】
ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を時計方向B(ルーパ糸通し側)に回動すれば、上記のクラッチ60の切換と同時に、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けた解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gとの係合が解除され、この状態でフォロアピン84とこれが嵌合している位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aに嵌合しており(図3(a))、ルーパ糸案内連結板121をルーパ側に弾撥しているとともに、ピン進退カム94dでフォロアピン84のフォロアピン端84aを押圧するので、位置決めピン摺動穴2aaを貫通して延在している位置決め装置80の位置決めピン82は進行してフォロアピンバネ83、位置決めピン戻しバネ86により位置決め板81の外周面に圧接される(図13(b))。
【0087】
以上の動作によりルーパ糸通し時に接続自在に配設される糸通し連結装置120の連結及び位置決め装置80の位置決めが準備される。
【0088】
このようなクラッチ60の切換及び糸通し連結装置120の連結及び位置決め装置80の位置決めが準備された状態で、駆動軸5の一端に固着されているプーリ6を手動回転させれば、位置決めピン82はルーパ糸案内出口7d、8d、9d及びルーパ糸入り口7a、8a、9a、ルーパ天秤14、13、15の天秤孔14a、13a、15aが水平方向に整致する周方向停止位置(図3(b)、図4(b))で位置決め装置80の位置決め板81の切り欠き81aに嵌入し、この整致位置で駆動軸5はその回転が位置決めピン82でロックされる(図13(c)、図9(b))。
【0089】
位置決め装置80は位置決め板81の作動により駆動軸5はその回転がロックされるので、ルーパ糸通し時に安全装置として機能する。
【0090】
また、位置決めピン82が位置決め板81の切り欠き81aに嵌入することにより、糸通し連結装置120が作動して位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aから離脱し、バネ134の弾性によりルーパ糸案内連結板121がルーパ側に弾撥されルーパ糸案内連結板121の長穴121bはフォロアピン84を摺動する。この場合、位置決めピン戻しバネ83によりフォロアピン84は長穴121bに嵌合する。
【0091】
同時に、バネ134の弾性によりルーパ糸案内連結板121、136、したがって中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9eと入れ子式に連結されている中空ルーパ糸案内7f、8f、9fは支持穴131a、139a、天秤糸案内133a、139bを経由して上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9側に移動し、ルーパ糸案内出口7d、8d、9dとルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される。この場合、バネ137は中空ルーパ糸案内7f、8f、9fのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが連結される際の衝撃を緩衝する。
【0092】
これによって糸通し連結装置120の中空ルーパ糸案内130は連結準備から連結状態となる(図3(b)、図4(b))。
【0093】
糸通し連結装置120の連結状態において、必要なそれぞれのルーパ糸を5〜6mm(1/4inch)程度、ルーパ糸導入機構110の広口ルーパ糸差入口113a、113b、113c(図1、図6、図8)に差し込むと共に、ルーパ糸導入台112の糸通し釦117を押下すると、糸通しスイッチ119bがONとなり、ミシンモータMが定速回転制御され、タイミングベルトMBで駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、クラッチ60の回転駆動体23からポンプ駆動体61、ポンプ駆動カム42、ポンプ駆動ロッド43、ポンプ駆動腕44により気体供給ポンプ41のピストン48を往復動駆動可能とする(図7、図8、図9(b))。気体供給ポンプ41の作動において、ピストン48のフォワード工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合され、空気は圧縮されて送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8)に圧縮空気として加圧注入され、一方ピストン48のリターン(吸入)工程ではピストンキャップ49がポンプシリンダ50の内壁面に気密に接合されることがなく開状態となるので、空気はピストン48及びピストンキャップ49の外周を経由して吸入され、また送出口50bから送出された空気は逆流止バルブ51の逆流止ボール51aで逆流阻止される。
【0094】
気体供給ポンプ41からの圧縮空気は送出口50bからパイプ54を経由してルーパ糸導入機構110の吸入口112a(図6、図8(a))に加圧注入され、気体バッファ領域115から通気狭隘領域114aを通ってジェット気流を生成する。
【0095】
各ルーパ糸は、このジェット気流に引っ張られてルーパ糸吸入領域114からルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませ、中空ルーパ糸案内130の中空ルーパ糸案内7e、8e、9e、糸通し連結装置120の中空ルーパ糸案内7f、8f、9fのルーパ糸案内出口7d、8d、9dを通って上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸剣先出口7b、8b、9bへ気体搬送することができる。
【0096】
ルーパ糸吸入領域114のルーパ糸案内出口端114bは傾斜して形成されており、これにより通気狭隘領域114aの下流側に渦流が発生するのを防止している。
【0097】
通気狭隘領域114aの下流でルーパ糸吸入領域114に隣接するルーパ糸導入パイプ116内に絞り部116cが形成されており、このため絞り部116cの下流側の圧力を低下させることにより通気狭隘領域114aにおける気体の流れを促進するとともにルーパ糸導入領域114に負圧を発生させルーパ糸をルーパ糸導入パイプ116に吸い込ませる。
【0098】
このような気体搬送糸通し装置のルーパ糸導入機構110によれば、ルーパ糸を上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9に挿通する作業にあたり、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cを糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構110によって上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cの糸導入を強力に、かつ確実に行なうことができる。
【0099】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cを気体搬送するための加圧気体をミシンモータMで動作する気体供給ポンプ41で生成し、ワンタッチで上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cに糸通しができる。
【0100】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90によって片手のみで上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cに糸通しができる。
【0101】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cの剣先の糸出口7b、8b、9bから糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内7e、8e、9e、7f、8f、9fで連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通された上ルーパ糸16a、下ルーパ糸16b、二重環ルーパ糸16cが他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0102】
次に、縫目形成を行なうときには、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻せば(13図(a))、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94の回動角がレバー左回転ストッパ94eで抑止され、クラッチ切換伝達子70が上記とは逆に作動し、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94は切換カム軸92を回転軸として回動し、クラッチ切換連結腕94bに枢着されたクラッチ切換リンク72を反時計方向に揺動する(図10(a))。
【0103】
クラッチ切換レバー支台71のクラッチ切換レバー支え腕71aに設けたクラッチ切換レバー取付穴71bにクラッチ切換レバー軸68で取付られたクラッチ切換レバー69は、クラッチ切換リンク72の揺動でカシメ段ピン69aの枢着点により時計方向に揺動される。
【0104】
クラッチ切換台73のクラッチ切換腕支台73aに設けたクラッチ切換腕取付穴73bにクラッチ切換腕軸66でクラッチ切換腕取付穴65bとで取付られているクラッチ切換腕65は、クラッチ切換バネ67を介して、反時計方向に揺動される。この場合、クラッチ切換ピン65aはクラッチ切換腕支台73aに設けた貫通穴73c内を摺動して右端に位置する(図9(a))。
【0105】
この結果、クラッチ切換ピン65aはクラッチ60のクラッチ摺動子62が縫目形成駆動体64側に摺動し、ポンプ駆動体61への動力伝達を遮断され、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結される。したがって、駆動軸5へ動力伝達され縫目形成装置30を駆動可能とする(図9(a)、図10(a))。
この場合、クラッチ60はクラッチ切換バネ67の弾性で他のクラッチ安定状態を保持する。即ち、クラッチ切換バネ67は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91の手動操作に応じて、駆動軸5の一端に固着されて縫目形成装置30へ動力伝達する縫目形成駆動体64に、クラッチ摺動子62を接離自在に移動されるとともにその接触状態が保持される機能を果たす。
【0106】
よって、ミシンモータMからタイミングベルトMBで駆動軸プーリ21、駆動軸プーリボス22、クラッチ60の回転駆動体23から縫目形成駆動体64により駆動軸5を回転駆動可能とする。
【0107】
ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻せば、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けた解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gと係合してルーパ側と反対方向(図5(A)では右方向)へ偏倚させるので、ルーパ糸案内連結板121のスイッチ作動部121hでルーパ糸通/縫目形成切換スイッチ119aがONとなり、モータコントローラ(フットコントローラ)MCを介してミシンモータMは可変回転制御される。
【0108】
駆動軸5の回転により、縫目形成装置30の針駆動機構12、布送り機構4及びルーパ駆動機構10が駆動され、針板3上で布押え機構19で布押えされた布25上に、針11a、11b、11c、上記のようにルーパ糸通しされている上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9によって縁かがり縫及び(又は)二重環縫を実行することができる。
【0109】
また、位置決め装置80は、上記とは逆に作動し、ルーパ糸通し/縫目形成切換カム94に設けたピン進退カム94dでフォロアピン84のフォロアピン端84aを押圧することが解除されるので、位置決めピン82は位置決め板81の切り欠き81aから離反するとともに、解除カム94c(図11(b))がルーパ糸案内連結板121のカムホロワ121gと係合してルーパ側と反対方向(図5(A)では右方向)へ偏倚させるので、フォロアピン84と、これが嵌合している長穴121bから位置決めピン82はルーパ糸案内連結板121の軸穴121aに嵌合する。このため糸通し連結装置120は、中空の糸案内7e、8e、9eのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが離反される。中空の糸案内7e、8e、9eのルーパ糸案内出口7d、8d、9dと上ルーパ7、下ルーパ8、二重環ルーパ9のルーパ糸入り口7a、8a、9aが離反されているので、その間にルーパ天秤14、13、15の天秤孔14a、13a、15aがルーパ糸道として介在することで、ルーパ糸入り口7a、8a、9aと天秤糸案内133a、139b間でルーパ天秤機能が実行され、このルーパ糸道離隔状態で縫目形成装置30により縁かがり縫及び(又は)二重環縫が実行される。
【0110】
以上の実施例において、ユーザーが実施例記載のミシンで、通常使用では、ルーパ糸通し時(図21(b))に糸通し釦117を押し、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放し、所定の短時間、例えば2〜3秒後に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻すならばミシンは正常に作動する(図21(a))。
【0111】
しかしながら、以下のような特殊の操作を実行した場合には、ルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起する可能性がある。
【0112】
1.両手を同時に使い、片方の手で糸通し釦117を押しながら、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放さないで、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91をもう一方の手で操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻す操作をした場合
2.ルーパ糸通し時に糸通し釦117を押し、ルーパ糸通し完了にて糸通し釦117から指を放し、瞬時に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91を操作して最下位置より反時計方向A(縫目形成側)に回動して戻した場合
以上の難点を解消するために、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、気体供給ポンプ41の気体供給動作中は、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90がルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構160を備えている(図14〜図16)。
【0113】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、クラッチ切換制限機構160は、気体供給ポンプ41の気体供給動作中に、気体供給ポンプ41から気体供給される空圧アクチュエータ177と、空圧アクチュエータ177が気体供給されてルーパ糸通し/縫目形成切換機構90をルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置(切換制限板161、クラッチ制限腕176)とを有する(図16、図18、図20、図22)。
【0114】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータ177は、気体供給ポンプ41の気体供給によってピストン164が伸長動作するピストン・シリンダ164、165と、気体供給ポンプ41からの気体供給が無給となってから空圧アクチュエータ177内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダ164eとを有する(図19、図20)。
【0115】
本発明のミシンの気体搬送糸通し装置において、空圧アクチュエータ177は、空圧アクチュエータ177を退行した原位置に偏倚させてリターダ164eの排気を促進するバネ174を有する。
【0116】
以下、クラッチ切換制限機構160についてさらに詳しく説明する。
【0117】
基本的に、図14〜図16に示すように、切換制限機構160をクラッチ60に併設して、気体供給源40のポンプシリンダ50にシリンダ用送出口50dを設け、圧縮された空気を送出口50dからパイプ175を経由して切換制限機構160の空圧アクチュエータ177としての制限シリンダ165へ供給するものである。
【0118】
また、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構90のクラッチ切換腕65には、クラッチ切換レバー69が時計方向に回動し、張設されたクラッチ切換バネ67の弾撥によりクラッチ切換腕65が反時計方向へ揺動する場合に後述する切換制限板161が突出して先端部に設けられた切換制限端161aに当接し、クラッチ切換腕65の反時計方向へ揺動を制限するクラッチ制限腕176を固着している。
【0119】
即ち、図16、図17、図18、図20、図22に示すように、切換制限機構160は、制限機構取付台162の一端部へ固着される制限シリンダ取付板172に制限シリンダ165を固着して、制限機構取付台162の他端に切換制限板取付腕162aを形成して、切換制限板取付腕162aの基部に切換制限板161の枢着穴161cをカシメ段ピン162eにて揺動自在に枢着し、先端部にピストンストッパ162bを設けている。切換制限板161は先端部に切換制限端161aとバネ掛け161bとを有し、中央部に制限ピストン164の制限ピストン連結部164bに設けられた制限ピストン連結溝164cに嵌合して制限ピストン連結穴164dを貫通する連結ピン163によって摺動自在に連結する連結長穴161d有する。
【0120】
切換制限板161は先端部に切換制限端161aとバネ掛け161bを設け、バネ掛け161bと制限シリンダ取付板172の一端に設けられたバネ掛け172cとの間には切換制限板バネ174が張架されている。
【0121】
ポンプシリンダ50のシリンダ用送出口50dからパイプ175を制限シリンダ165の一端に固着された逆流止バルブ166に形成される吸入口166aへ圧縮された空気を供給する。
【0122】
逆流止バルブ166はフランジ166bとバブルハウジング166cを設け、バブルハウジング166cにはプッシュナットで固定されるバルブパイプ169を内装し、バネ170と、バネ170で押圧される逆流止ボール168と、伸長(加圧、フォワード)工程時に送出加圧空気で逆流止ボール168が浮いてバルブが開成し、退行(排気、リターン)工程時にバネ170で押圧されて逆流止ボール168が着座してバルブが閉成するOリングとを備えている。
【0123】
空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は、制限シリンダ165の他端から遊嵌して伸長(加圧、フォワード)工程時に送出加圧空気で、制限ピストン連結部164bの先端部が切換制限板取付腕162aのピストンストッパ162bに当接するまで突出し、制限ピストン連結部164bに連結ピン163で連結される切換制限板161を揺動させる。
【0124】
また、退行(排気、リターン)工程時には空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は、バネ170で押圧される逆流止ボール168が着座してバルブが閉成し、突出を保とうとするが、加圧空気は、制限ピストン164の外周に設けられたリターダ(排気隘路)164eから時間をかけて少量ずつ排気されて、切換制限板161のバネ掛け161bと制限シリンダ取付板172のバネ掛け172cとの間に張架されている切換制限板バネ174の弾撥によって切換制限板161が引き戻される。したがって、制限ピストン164も徐々に引き戻される。
【0125】
それにより、ミシンモータMにおける糸通しスイッチ119bの回路がOFFとなってもミシンモータMは回転慣性によって数秒間回転を続けている場合には、気体供給源40のポンプシリンダ50のシリンダ用送出口50dより加圧空気をパイプ175を経由して切換制限機構160の制限シリンダ165へ供給し、空圧アクチュエータ177の制限ピストン164は制限ピストン連結部164bの先端部が切換制限板取付腕162aのピストンストッパ162bに当接した状態を保ち、制限ピストン連結部164bに連結ピン163で連結される切換制限板161も突出して先端部に設けられた切換制限端161aにクラッチ制限腕176の上部が当接し、クラッチ切換腕65の反時計方向へ揺動を阻止制限する(図21(c))。
【0126】
ミシンモータMの回転が停止すると、気体供給源40から空圧アクチュエータ177の制限シリンダ165への加圧空気の送出が無くなり、切換制限板161のバネ掛け161bと制限シリンダ取付板172のバネ掛け172cとの間に張架されている切換制限板バネ174の弾撥によって切換制限板161と共に空圧アクチュエータ177の制限ピストン164が制限ピストン164の外周に設けられたリターダ(排気隘路)164eから制限シリンダ165内の加圧空気が極少量ずつ排気されることにより徐々に引き戻される。その間にルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91が反時計方向Aの最上位置に達して(図21(a))、長穴121bに嵌合しているフォロアピン84の中心点にルーパ糸案内連結板121の軸穴121aが一致して、位置決めピン82の突出維持が無くなり、位置決めピン戻しバネ86の弾発によって位置決めピン82が押し戻されて駆動軸5の位置決め固定を解除した後、突出していた切換制限板161の切換制限端161aが退行してクラッチ制限腕176のクラッチ切換腕65の揺動阻止が解除されるとクラッチ切換腕65は反時計方向へ揺動しクラッチ切換ピン65aがプーリ6側へ揺動しクラッチ摺動子62を縫目形成駆動体64側に摺動し、クラッチ連結ピン63が回転駆動体23で縫目形成駆動体64の連結ピン穴に連結する(図9(a))。
【0127】
これにより、上記のようなルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口7a、8a、9aとルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【0128】
以上の説明から明らかなように本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸をルーパに挿通する作業にあたり、ルーパ糸を糸導入部から差し入れる際に、ルーパ糸導入機構によってルーパ糸の糸導入と気体搬送を確実に行なうことができる。
【0129】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸を気体搬送するための加圧気体をミシンモータで動作する気体供給ポンプで生成し、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91によるワンタッチでルーパに糸通しができる。
【0130】
さらに、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)91、ルーパ糸通し/縫目形成切換機構によって片手でルーパに糸通しができる。
【0131】
したがって、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、ルーパの剣先の糸出口から糸を差し入れる糸導入部までを連通する中空の糸案内で連結したので、複雑な糸掛けを不要とし、操作性よく糸通しを行なうことができ、糸通しを間違えたり、途中で糸がはみ出したり、挿通されたルーパ糸が他の糸と絡んだりすることがなくなるとともに、中空の糸案内手段に供給される加圧気体の流れを利用して糸を送るようにしたので、極めて簡単な操作で一気に糸通しをすることができる。
【0132】
また、本発明のミシンの気体搬送糸通し装置によれば、クラッチ切換制限機構によりルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ特殊の切換操作は実行されないのでルーパ糸入り口とルーパ天秤に形成された天秤孔がルーパ糸案内出口に水平方向に整致しなくなるという難点が惹起することなくルーパ糸通し状態から縫目形成状態へ正常に切換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明におけるミシンの気体搬送糸通し装置は、ルーパに加圧気体を利用して自動的に糸を通す縁かがりミシン、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等の環縫いミシンに好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
M・・・ミシンモータ
5・・・駆動軸
6・・・プーリ
7、8、9・・・ルーパ
7a、8a、9a・・・ルーパ糸入口
7b、8b、9b・・・ルーパ剣先糸出口
7d、8d、9d・・・ルーパ糸案内出口
7e、8e、9e、7f、8f、9f・・・中空ルーパ糸案内
14、13、15・・・ルーパ天秤
14a、13a、15a・・・天秤孔
16a、16b、16c・・・ルーパ糸
23、61、64、65、65a、69、91、94・・・クラッチ切換手段
30・・・縫目形成装置
40・・・気体供給源
(41・・・気体供給ポンプ)
60・・・クラッチ
61・・・ポンプ駆動体
62・・・クラッチ摺動子
64・・・縫目形成駆動体
67・・・クラッチ切換バネ
70・・・クラッチ切換伝達子(65、65a、94、69、・・・クラッチ切換伝達子)
80・・・位置決め装置
81・・・停止位置決め板
81a・・・切り欠き
81、82、84、94d、121、134・・・位置決め準備・連結準備・遮断・連結
手段
82・・・位置決めピン
82、84、94c、121、134・・・位置決めを解除・連結解除・離間手段
90・・・ルーパ糸通し/縫目形成切換機構
91・・・ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部
(ルーパ糸通し/縫目形成切換手動レバー)
94d・・・ピン進退カム
94c・・・解除カム
110・・・ルーパ糸導入機構
113a、113b、113c・・・広口ルーパ糸差入口
114・・・ルーパ糸吸入領域
114a・・・通気狭隘領域
114b・・・ルーパ糸案内出口端
115・・・気体バッファ領域
116・・・ルーパ糸導入パイプ
116a・・・一端部
116b・・・他端部
116c・・・絞り部
120・・・糸通し連結装置
130・・・中空ルーパ糸案内
160・・・クラッチ切換制限機構
連結装置(161・・・切換制限板、176・・・クラッチ制限腕)
164、165・・・ピストン・シリンダ
164e・・・リターダ
174・・・バネ
177・・・空圧アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入機構から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源とを備え、
前記ルーパ糸導入機構は、前記ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口及び前記広口ルーパ糸差入口に連通するルーパ糸吸入領域と、前記気体供給源から加圧気体が供給される気体バッファ領域と、前記ルーパ糸吸入領域に一端部で嵌合し、他端部で前記中空ルーパ糸案内に接続されるルーパ糸導入パイプとを有し、
前記ルーパ糸吸入領域と前記ルーパ糸導入パイプとは、前記気体バッファ領域に連通し前記ルーパ糸吸入領域の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域を形成することを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項2】
前記ルーパ糸吸入領域のルーパ糸案内出口端を傾斜して形成して前記通気狭隘領域の下流側に渦流が発生するのを防止することを特徴とする請求項1記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項3】
前記狭隘領域の下流で前記ルーパ糸吸入領域に隣接する前記ルーパ糸導入パイプ内に絞り部を形成して前記絞り部の下流側の圧力を低下させることにより前記通気狭隘領域における前記気体の流れを促進するとともに前記ルーパ糸導入領域に負圧を発生させ前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入パイプに吸い込ませ前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパの前記ルーパ糸剣先出口へ気体搬送することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項4】
前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項5】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入機構から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時には前記ルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸に、ルーパ糸通し時には前記気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に前記縫目形成装置への動力伝達を遮断して前記気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に前記縫目形成装置に動力を伝達して前記気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するように前記クラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備えることを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項6】
前記クラッチは、前記気体供給ポンプへ動力伝達するポンプ駆動体と、前記駆動軸の一端に固着されて前記縫目形成装置へ動力伝達する縫目形成駆動体との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じてクラッチ切換バネを介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されて前記ミシンモータからの動力が伝達されているクラッチ摺動子を有するピンクラッチで構成されることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項7】
前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を備えることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項8】
前記駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致したとき前記中空ルーパ糸案内の前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパの前記ルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置を備えることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項9】
前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、前記気体供給ポンプに動力を伝達するように前記クラッチを切換える手段と、前記中空ルーパ糸案内の前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパの前記ルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置の連結を準備して、前記駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、前記位置決め装置が作動して前記縫目形成装置への動力伝達を遮断され、前記糸通し連結装置が作動して前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が連結される手段とを有し、
縫目形成時に、前記縫目形成装置へ動力伝達するように前記クラッチを切換える手段と、前記位置決め装置の位置決めを解除し、前記糸通し連結装置の連結を解除し、前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が離間される手段とを有することを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項10】
前記位置決め装置は、駆動軸に同軸に取付けられ、前記ルーパ糸案内出口、ルーパ天秤に形成された天秤孔及び前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、前記プーリを手動回転させて前記切り欠きに嵌合する位置決めピンとを有することを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項11】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入領域から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時に前記ルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸又はルーパ糸通し時に前記気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に前記縫目形成装置への動力伝達を遮断して前記気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に前記縫目形成装置に動力を伝達して前記気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するように前記クラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備え、
前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、前記気体供給ポンプに動力を伝達するように前記クラッチを切換えるクラッチ切換伝達子と、前記駆動軸に同軸に取付けられ、前記ルーパ糸案内出口及び前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板、ルーパ糸通し時に、前記プーリを手動回転させて前記切り欠きに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を連結させる位置決めピンを有する位置決め装置と、前記位置決めピンを前記停止位置決め板に対して進退させるとともに前記糸通し連結装置を連結させるためのピン進退カムと、前記糸通し連結装置を解除させて前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口を離間させるための解除カムとを有することを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項12】
前記気体供給ポンプの気体供給動作中は、前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構が前記ルーパ糸通し状態から前記縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構を備えることを特徴とする請求項5乃至請求項11何れか1項記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項13】
前記クラッチ切換制限機構は、前記気体供給ポンプの気体供給動作中に、前記気体供給ポンプから気体供給される空圧アクチュエータと、前記空圧アクチュエータが気体供給されて前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を前記ルーパ糸通し状態から前記縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置とを有することを特徴とする請求項12記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項14】
前記空圧アクチュエータは、前記気体供給ポンプの気体供給によってピストンが伸長動作するピストン・シリンダと、前記気体供給ポンプからの気体供給が無給となってから前記空圧アクチュエータ内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダとを有することを特徴とする請求項13記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項15】
前記空圧アクチュエータは、前記空圧アクチュエータを退行した原位置に偏倚させて前記リターダの排気を促進するバネを有することを特徴とする請求項14記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項1】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入機構から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給源とを備え、
前記ルーパ糸導入機構は、前記ルーパ糸を差し入れる広口ルーパ糸差入口及び前記広口ルーパ糸差入口に連通するルーパ糸吸入領域と、前記気体供給源から加圧気体が供給される気体バッファ領域と、前記ルーパ糸吸入領域に一端部で嵌合し、他端部で前記中空ルーパ糸案内に接続されるルーパ糸導入パイプとを有し、
前記ルーパ糸吸入領域と前記ルーパ糸導入パイプとは、前記気体バッファ領域に連通し前記ルーパ糸吸入領域の下流部にジェット気流を生成する通気狭隘領域を形成することを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項2】
前記ルーパ糸吸入領域のルーパ糸案内出口端を傾斜して形成して前記通気狭隘領域の下流側に渦流が発生するのを防止することを特徴とする請求項1記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項3】
前記狭隘領域の下流で前記ルーパ糸吸入領域に隣接する前記ルーパ糸導入パイプ内に絞り部を形成して前記絞り部の下流側の圧力を低下させることにより前記通気狭隘領域における前記気体の流れを促進するとともに前記ルーパ糸導入領域に負圧を発生させ前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入パイプに吸い込ませ前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパの前記ルーパ糸剣先出口へ気体搬送することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項4】
前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し時及びミシン縫製時にそれぞれ接離自在に配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項5】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入機構から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時には前記ルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸に、ルーパ糸通し時には前記気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に前記縫目形成装置への動力伝達を遮断して前記気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に前記縫目形成装置に動力を伝達して前記気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するように前記クラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備えることを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項6】
前記クラッチは、前記気体供給ポンプへ動力伝達するポンプ駆動体と、前記駆動軸の一端に固着されて前記縫目形成装置へ動力伝達する縫目形成駆動体との一方に、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じてクラッチ切換バネを介して接離自在に移動されるとともにその接離状態が保持されて前記ミシンモータからの動力が伝達されているクラッチ摺動子を有するピンクラッチで構成されることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項7】
前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口は、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部の手動操作に応じて、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を備えることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項8】
前記駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致したとき前記中空ルーパ糸案内の前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパの前記ルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置を備えることを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項9】
前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、前記気体供給ポンプに動力を伝達するように前記クラッチを切換える手段と、前記中空ルーパ糸案内の前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパの前記ルーパ糸入り口とを接続する位置決め装置の位置決めを準備し、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置の連結を準備して、前記駆動軸の一端に固着されているプーリを手動回転させることにより、前記位置決め装置が作動して前記縫目形成装置への動力伝達を遮断され、前記糸通し連結装置が作動して前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が連結される手段とを有し、
縫目形成時に、前記縫目形成装置へ動力伝達するように前記クラッチを切換える手段と、前記位置決め装置の位置決めを解除し、前記糸通し連結装置の連結を解除し、前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口が離間される手段とを有することを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項10】
前記位置決め装置は、駆動軸に同軸に取付けられ、前記ルーパ糸案内出口、ルーパ天秤に形成された天秤孔及び前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板と、ルーパ糸通し/縫目形成切換手動操作部をルーパ糸通し側に切換手動操作したルーパ糸通し時に、前記プーリを手動回転させて前記切り欠きに嵌合する位置決めピンとを有することを特徴とする請求項5記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項11】
ルーパ糸入口からルーパ剣先糸出口まで中空構造にされた少なくとも1つのルーパと、前記ルーパに導かれるルーパ糸を差し入れるルーパ糸導入機構と、前記ルーパ糸導入機構から前記ルーパ糸入口まで延在しルーパ糸案内出口を有する中空ルーパ糸案内と、前記ルーパ糸を前記ルーパ糸導入領域から前記中空ルーパ糸案内を通って前記ルーパ糸案内出口へ気体搬送によりルーパ糸通しする気体供給ポンプと、ミシンモータからの動力を縫目形成時に前記ルーパを含む縫目形成装置を駆動する駆動軸又はルーパ糸通し時に前記気体供給ポンプにそれぞれ伝達するためのクラッチと、ルーパ糸通し時に前記縫目形成装置への動力伝達を遮断して前記気体供給ポンプに動力を伝達し、縫目形成時に前記縫目形成装置に動力を伝達して前記気体供給ポンプへの動力伝達を遮断するように前記クラッチを切換えるためのルーパ糸通し/縫目形成切換機構とを備え、
前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構は、ルーパ糸通し時に、前記気体供給ポンプに動力を伝達するように前記クラッチを切換えるクラッチ切換伝達子と、前記駆動軸に同軸に取付けられ、前記ルーパ糸案内出口及び前記ルーパ糸入り口が水平方向に整致する周方向停止位置に切り欠きを有する停止位置決め板、ルーパ糸通し時に、前記プーリを手動回転させて前記切り欠きに嵌合可能で、ルーパ糸通し時及び縫目形成時にそれぞれ接離自在に配設される糸通し連結装置を連結させる位置決めピンを有する位置決め装置と、前記位置決めピンを前記停止位置決め板に対して進退させるとともに前記糸通し連結装置を連結させるためのピン進退カムと、前記糸通し連結装置を解除させて前記ルーパ糸案内出口と前記ルーパ糸入り口を離間させるための解除カムとを有することを特徴とするミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項12】
前記気体供給ポンプの気体供給動作中は、前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構が前記ルーパ糸通し状態から前記縫目形成状態へ遷移するのを回避するためのクラッチ切換制限機構を備えることを特徴とする請求項5乃至請求項11何れか1項記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項13】
前記クラッチ切換制限機構は、前記気体供給ポンプの気体供給動作中に、前記気体供給ポンプから気体供給される空圧アクチュエータと、前記空圧アクチュエータが気体供給されて前記ルーパ糸通し/縫目形成切換機構を前記ルーパ糸通し状態から前記縫目形成状態へ遷移するのを回避するための連結装置とを有することを特徴とする請求項12記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項14】
前記空圧アクチュエータは、前記気体供給ポンプの気体供給によってピストンが伸長動作するピストン・シリンダと、前記気体供給ポンプからの気体供給が無給となってから前記空圧アクチュエータ内の気体を遅延して時間をかけて少量ずつ排気するリターダとを有することを特徴とする請求項13記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【請求項15】
前記空圧アクチュエータは、前記空圧アクチュエータを退行した原位置に偏倚させて前記リターダの排気を促進するバネを有することを特徴とする請求項14記載のミシンの気体搬送糸通し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−62501(P2011−62501A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256959(P2009−256959)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000156008)株式会社鈴木製作所 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000156008)株式会社鈴木製作所 (20)
【Fターム(参考)】
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