説明

ミシンの生産数量カウント装置

【課題】ミシンの生産数量をより精度良くカウントする。
【解決手段】ミシン10が被縫製物に対して行う一つの作業工程の実行数を生産数量としてカウントするミシンの生産数量カウント装置において、作業工程中のイベントを検出するイベント検出手段41と、イベントの予定回数を設定入力するイベント回数設定手段20と、イベントの発生を検出してその発生回数を記録するイベント計数手段41と、イベントの発生回数が設定された予定回数に達すると生産数量を一つカウントする生産数量計数手段41と、イベントを実行させるエラーの発生を検出するエラー検出手段14とを備え、イベント計数手段は、エラーの発生が検出された場合にイベント発生回数の記録値を一つ減じる処理又はエラー検出時のイベントについて発生回数として記録しない処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製作業における一つの作業工程の実行数を生産数量としてカウントするミシンの生産数量カウント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンの縫製作業は複数の工程からなり、多数のミシンを用いて大量の衣類の縫製を行う縫製工場などでは、工程ごとに実行された縫製枚数を生産数量として集計し、各工程の進行を管理することで計画的な生産を実現している。
そして、このような現場では、各ミシンついて縫製の一つの工程が行われるたびに生産数量をカウントする生産数量カウント装置がミシンに搭載されており、各ミシンごとの生産数量の記録が行われていた。
かかる従来の生産数量カウント装置は、ミシンの糸切りの操作指示を検出すると、当該糸取りを一つの工程の終了と見なしてカウントアップを行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムでは、糸切り動作を一つのイベントとした場合に、一回の縫製工程において予め定められた回数だけイベントが発生した場合に一つの縫製工程が終了したものと判断し、生産数量を自動的にカウントしていた。例えば、1工程につき3回の糸切りの実行が予定されている場合には、糸切りの検出が3回行われると生産数量1カウントと判断している。この場合には、途中で予定しない糸切れ(糸の切断)などが発生すると、一旦、糸切りを実行してから作業の復旧を行う必要があるため、糸切り回数が増えてしまい、その結果、生産数量のカウント値に誤差が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、生産数量をより適切にカウントすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ミシンが被縫製物に対して行う一つの作業工程の実行数を生産数量としてカウントするミシンの生産数量カウント装置において、前記作業工程中に発生する所定のイベントを検出するイベント検出手段と、前記作業工程中に発生する前記イベントの予定回数を設定入力するイベント回数設定手段と、前記イベントの発生を検出してその発生回数を記録するイベント計数手段と、前記イベントの発生回数が前記設定入力された予定回数に達すると前記生産数量を一つカウントする生産数量計数手段と、前記イベントを実行させるエラーの発生を検出するエラー検出手段とを備え、前記イベント計数手段は、前記エラーの発生が検出された場合に、前記イベント発生回数の記録値を一つ減じる処理又は前記エラー検出時のイベントについて発生回数として記録しない処理を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記作業工程の一工程の完了を手動で入力する生産数量手動入力手段を設け、前記生産数量計数手段は、前記生産数量手動入力手段からの入力の場合にも前記作業工程の実行数を一つカウントする処理を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記生産数量計数手段は、前記イベント計数手段のイベント発生回数の記録値に基づく生産数量のカウントを行う自動処理と、前記生産数量手動入力手段の入力に基づく生産数量のカウントを行う手動処理のいずれかを実行すると共に、前記自動処理と手動処理のいずれを実行するかの選択を設定入力するカウント選択手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記所定のイベントは縫い糸の切断動作であり、前記エラー検出手段は、前記エラーとして糸切れの検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、毎回の作業工程の実行ごとに、工程中で検出されるイベントの記録回数が予め設定された予定回数に達するか否かを判定し、達成すると一つの作業工程が終わったものとして生産数量を一つカウントする。
そして、作業工程中において、エラーの発生が検出された場合には、イベントを一回分記録しないか或いは記録回数を一つ減じる処理を行うので、予定されていない不正規なイベントについて発生回数として記録されることにより生産数量のカウントを誤るという事態を解消することが可能となり、より適切な生産数量のカウントが可能となる。
なお、エラーとは、イベントの実行を余儀なくさせるような不正規の要因のことを示すものとする。
【0011】
なお、上記「イベント」としては、後述する縫い糸の切断(糸切り)動作などの他、一回の縫製工程で決まった予定回数だけ実行させる他の処理や動作であっても良い。例えば、角のある多角形状に沿って縫いを行う作業工程の場合、角ごとに縫い針を下降位置のまま一時的に停止させて、布押さえを上昇させてから突き刺さったままの縫い針を中心にして被縫製物の回転作業を行い、被縫製物の向きを整えてから縫いを再開する。このような縫製工程の場合には、角ごとの布押さえの上昇動作が予定回数実行されるので、押さえ足の上昇動作を「イベント」とすることができる。そして、「イベント検出手段」は押さえ足の上昇動作を検出する手段であればよい。
また、縫い糸の切断動作や布押さえの上昇動作を「イベント」とする場合の「エラー検出手段」が検出を行う「エラー」としては、縫い糸の切断や布押さえの上昇を余儀なくさせる事態がこれに該当し、例えば、不慮の糸切れ(上糸下糸いずれでも良い、以下、「糸」又は「縫い糸」という場合、いずれも同様とする)、縫い糸の使い果たし又は縫い糸の補充等が挙げられる。そして、「エラー検出手段」は、糸切れや縫い糸の使い果たしの発生を検出する検出手段などを用いることができる。なお、「糸切り」は縫い糸を必要により切断することを示し、「糸切れ」は予定せずに不慮の要因により縫い糸がちぎれることを示すものとする。
【0012】
請求項2記載の発明は、生産数量手動入力手段により作業工程の一工程の完了を手動で入力することができるので、エラーの発生にかかわらず手動で生産数量をカウントさせるようにすることもでき、より適切な生産数量のカウントが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、生産数量計数手段が、イベント計数手段のイベント発生回数の記録値に基づく生産数量のカウントを行う自動処理と、生産数量手動入力手段の入力に基づくカウントを行う手動処理のいずれを実行するか設定することを可能としているので、選択に従っていずれか一方のみを実行させることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明は、所定のイベントを縫い糸の切断動作とし、エラーを糸切れとしているので、いずれも容易に検出ができ、容易且つ確実な生産数量のカウントが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】発明の実施形態である生産管理ミシンの構成を示す正面図である。
【図2】生産管理ミシンの制御系を示すブロック図である。
【図3】糸切れ検出装置の斜視図である。
【図4】糸切れ検出装置の他の例の斜視図である。
【図5】操作パネルの表示例である。
【図6】操作パネルの他の表示例である。
【図7】操作パネルのさらに他の表示例である。
【図8】縫製動作中の処理を示すフローチャートである。
【図9】手動カウントモードにおける処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の実施形態の全体構成)
以下、図面を参照して、本発明に係る生産数量カウント装置を搭載した生産管理ミシン10について図1乃至図9に基づいて説明する。図1は生産管理ミシン10の概略構成を示す正面図、図2は制御系を示すブロック図である。
生産管理ミシン10は、図1に示すように、ミシンを起動させる電源スイッチ4と、縫製の駆動源となる主軸モータであるミシンモータ5と、ミシンモータ5の回転駆動がベルトなどの駆動伝達手段6を介して伝達されて回転するミシン主軸1と、その主軸1の回転に伴い上下動する針棒2と、針棒2下端部に保持された縫い針3と、縫い針3の針落ち位置において被縫製物を上方から押さえる布押さえ17と、針棒2(縫い針3)の下方において被縫製物を布送りする布送り機構8と、ミシン10を操作するためのペダル7と、ミシンの各部を制御する制御装置11(図2参照)が内部に収容されている制御ボックス9と、オペレータにより設定や操作の入力を行う入力部21と所定情報の表示を行う表示部22とを備える操作パネル20等を備えている。
また、図2に示すように、生産管理ミシン10は、ミシン主軸の角度を検出する検出手段としてのエンコーダ15と、後述する各種の処理を行う制御装置11と、縫い糸の切断を行う図示しない糸切り装置の駆動源となる糸切断ソレノイド16と、縫製の糸切れを検出する糸切れ検出装置14と、作業工程の一工程の完了を手動で入力する生産数量手動入力手段としてのカウントスイッチ45と、生産管理ミシン10により取得した生産数量のデータをミシンの外部の集計装置に移すための外部メモリ19に対する読み取り書き込み装置18とを備えている。
【0017】
ペダル7は、作業者による足踏み操作が可能であり、ペダルの前端部側を踏み込む前踏みと後端部側を踏み込む後踏みによる入力が可能である。即ち、前踏みにより、ミシンモータ5を起動し縫製を開始させる指令を制御装置11に入力し、さらに踏み込むことで踏量に応じたミシンモータ5の加減速の指令を入力することができるようになっている。
また、後踏みにより、縫い針が所定の上位置となるようにミシンモータ5を停止させると共に、糸切り装置による縫い糸の切断を指示する信号を制御装置11に入力する。
【0018】
糸切り装置は、針板の下側において移動動作可能に設けられた動メスと、固定装備された固定メスと、動メスに移動動作を付与する糸切断ソレノイド16とから主に構成されている。動メスの駆動源としては、ソレノイドに限らず、モータやエアシリンダなどでも良い。
【0019】
外部メモリ19はいわゆる不揮発性のフラッシュメモリであり、データの書き込み消去読み取りを任意に行うことができる。読み取り書き込み装置18はフラッシュメモリである外部メモリ19のリード/ライトを行うためのインターフェイスである。
なお、これらに替えて、磁気ディスクや光学ディスクとそのリード/ライトを行うドライブ装置とを用いても良い。
【0020】
布押さえ17は、被縫製物を解放する上位置と被縫製物を押さえる下位置とに切り替え可能にミシンフレームに支持されており、その切り替えは、図示しない手動の押さえ解除レバーにより行われる。そして、下位置にあるときには押圧バネにより下方の押圧力が付与されるようになっており、布押さえ17の下側にセットされた被縫製物が布送り機構8の送り歯と挟持され、送り歯により送り動作が被縫製物に付与されるようになっている。
【0021】
(糸切れ検出装置)
糸切れ検出装置14は、図3に示すように、縫い糸の供給源から縫い針3に至るまでの糸経路の途中に設けられ、縫い糸を挿通させる挿通部31を備えた板バネなどからなる弾性体32と、弾性体32に貼着されてその撓みを検出する素子33(ピエゾ素子や歪みゲージ等)とを主として備えている。
かかる弾性体32は、挿通部31に縫い糸を挿通させた状態で縫い糸に縫製時の通常の張力が生じている状態で撓みを生じるように設けられている。例えば、二つの糸案内34,34の間でこれらを結ぶ直線から逸脱するように挿通部31が配置され、縫い糸の張力により挿通部31が二つの糸案内34,34を結ぶ直線側に引っ張られることにより弾性体32が撓むように配置されている。そして、糸切れが発生すると、張力が無くなることで弾性体32の撓みが無くなり、かかる状態を検出素子33の出力から検出することにより糸切れの検出を行っている。また、これと同様の構成を縫い糸に糸張力を付与する糸調子に設けられた糸取りバネに施しても良い。つまり、糸取りバネは通常の縫い糸の張力を受けることで一定方向に常時撓んだ状態となり、縫い糸の張力が無くなると、逆方向に自然位置に復帰するように設けられている。かかる糸取りバネに撓みの検出素子を設けることで上記と同じ原理で糸切れを検出することが可能である。
詳細は後述するが、制御装置11は、生産数量のカウントを行う機能を備えており、当該生産数量のカウントのために縫い糸の切断動作の実行回数を記録する。一方、糸切れが発生した場合にもその復旧時に縫い糸の切断動作が実行される(上糸と下糸のいずれか一方に糸切れが発生した場合、他方も切断する必要がある等)。しかし、糸切れの発生による縫い糸の切断動作は縫製工程中で予定された切断動作の回数に含まれていないため、糸切れにより縫い糸の切断動作が行われた場合には、エラーによる縫い糸の切断動作であるものとして、切断動作の回数の記録から除く処理を行っている。つまり、糸切れ発生手段は、エラーの発生を検出する「エラー検出手段」として機能する。
【0022】
また、この生産管理ミシン10は、縫製の中断を生じる事由行う
また、糸切れ検出装置14は、上記の構成により、縫い糸が供給源から消費し尽くした状態も同様にして検出することができる。つまり、糸切れ検出装置14は、縫い糸の消尽検出手段としても機能する。そして、縫い糸の消尽を生じた場合にも縫い糸の切断動作により復旧させる場合があるので(上糸と下糸のいずれか一方を使い尽くした場合、使い切っていない方の糸を一回切断する必要がある等)、「縫い糸の消尽」も、予定されていない不正規な要因により縫い糸の切断動作を行わせる「エラー」と見なすことができる。つまり、このミシン10は、「エラー検出手段」としての縫い糸の消尽検出手段を備えているとみなすことができる。
【0023】
なお、糸切れ検出装置14については、上述の例に限定されず、図4に示すように、挿通部31が二つの糸案内34,34を結ぶ直線から逸脱するように配置され、縫い糸の張力により挿通部31に縫い糸が摺接することにより縫製中には絶えず弾性体32が振動するように配置され、弾性体に貼着された撓みの検出素子33で振動状態を検出してもよい。この構造の場合、糸切れが発生すると、張力が無くなることで弾性体32の振動が無くなり、かかる無振動状態を検出素子33の出力から検出することにより糸切れの発生を検出することができる。同様の原理で糸取りバネの振動と無振動の監視を行い、糸切れの検出を行っても良い。
【0024】
(操作パネル)
操作パネル20は、図5に示すように、液晶パネルからなる表示部22と、表示部22の周囲に設けられた複数の押下ボタンからなる入力部21とを備えている。
操作パネル20は表示画面の切り替えにより各画面ごとに各種の設定を行うことが可能となっている。各設定画面は、周囲の各押下ボタンから入力可能な設定項目の表示とその設定値の表示が行われ、画面が切り替わるごとに各押下ボタンの機能も切り替わるようになっている。
ここで、操作パネル20から設定される主要項目について図5〜図7により説明する。
操作パネル20は、図5の初期画面の表示状態において、入力部21の一つである設定画面呼び出しボタン211を押下すると、図6に示す第一の設定画面に切り替えることができる。この第一の設定画面は各種の設定内容を大項目で分類しており、当該画面の表示状態において、入力部21の一つであるボタン212を押下すると、図7に示す第二の設定画面に切り替えることができる。
【0025】
この第二の設定画面は、後述する縫製の生産数量のカウント処理に関する設定を行うための画面である。
制御装置11は、詳細は後述するが、縫製の生産数量のカウントを行う場合に、所定のイベントの発生回数を記録し、記録回数が予定回数に至ると1つの縫製が行われたものとして生産数量を1つカウントアップする。この生産管理ミシン10では、所定のイベントとして縫い糸の切断動作を対象としており、予定回数だけ縫い糸の切断動作が実行されると生産数量を1つカウントアップする。そして、第二の設定画面の表示状態におけるボタン213,214は、生産数量1をカウントアップさせる縫い糸の切断動作の予定回数を設定するためのボタンである。ボタン213により予定回数を増やし、ボタン214により予定回数を減らすことができる。この機能により、操作パネル20のボタン213は、作業工程中に発生するイベントの予定回数を設定入力する「イベント回数設定手段」として機能することとなる。
【0026】
また、制御装置11は、縫製の生産数量のカウントの方式として手動カウントモード(手動処理)と自動カウントモード(自動処理)とを選択的に実行する。そして、第二の設定画面の表示状態におけるボタン215は手動カウントモードの選択を設定し、ボタン216は自動カウントモードの選択を設定するボタンである。この機能により、操作パネル20のボタン215,216は、自動処理と手動処理のいずれを実行するかの選択を設定入力するカウント選択手段として機能することとなる。
【0027】
さらに、制御装置11は、縫い糸の切断動作の発生の回数の記録において、エラーにより縫い糸の切断を余儀なくされた場合には、当該エラーの発生を検出することにより、縫い糸の切断動作の記録回数を1つ減じる処理を行うことができる。そして、第二の設定画面の表示状態におけるボタン217は、上記エラーの発生による縫い糸切断動作記録回数減算処理を実行するか否かを設定するボタンである。ボタン217を押下するたびに設定と非設定とが切り替わるように入力される。
【0028】
(制御装置)
制御装置11は、図2に示すように、ミシンの動作を制御するCPU41と、各種機能や動作の実現に係る各種プログラムや制御データ等を記憶するROM42と、ROM42から読み出されたプログラムやデータ等の格納領域や作業領域等を構成するRAM43と、設定データや処理結果を保存する不揮発性メモリであるEEPROM44とを備えている。
そして、ミシンモータ5及び糸切断ソレノイド16は、それぞれを駆動させるドライブ回路(図示略)を介して制御装置11に接続され、これらに対して任意に動作制御を可能としている。また、ペダル7、糸切れ検出装置14の検出素子は、インターフェイスを介して制御装置11に接続され、それらの検出信号はデジタル化されて入力されるようになっている。またさらに、制御装置11は、インターフェイスを介して操作パネル20と接続されており、操作パネル20と各種情報を送受信可能に構成されている。
【0029】
制御装置11は、ROM42に格納された各種のプログラムをCPU41が実行することにより、縫製動作における動作制御と、縫製作業に伴う生産数量カウントのための各種処理とを実行する。
即ち、CPU41は、縫製動作の動作制御として、ペダル7の前踏みによりミシンモータ5の駆動を開始すると共に踏み込み量に応じた回転速度でミシンモータ5の回転させる動作制御を行う。また、ペダル7の後踏みが行われると、エンコーダ15により針上位置となる主軸角度を検出してミシンモータ5の駆動停止をする動作制御を行う。さらに、糸切断ソレノイド16を駆動させて縫い糸の切断を実行する動作制御を行う。
【0030】
また、CPU41は、縫製作業に伴う生産数量カウントのために、以下に示す各種処理を実行する。
CPU41は、一枚の被縫製物に対して一つの作業工程が施されると、生産数量を一つカウントする。そして、一回の作業工程が施されたか否かは、当該作業工程中で予め操作パネル20により設定された予定回数だけ縫い糸の切断動作が行われたか否かにより判定する。つまり、縫製工程を一回実行するためには、当該縫製工程の中で予定されたイベント(ここでは縫い糸の切断動作)が予定された回数行われることが必須となるので、このイベント回数を検出することで縫製工程が完了したことを判定することとしている。
具体的には、CPU41は、縫製中において、ペダル7の後踏みにより縫い糸の切断動作指令が入力されることにより、作業工程中に発生する縫い糸の切断動作(所定のイベント)の発生を検出する。これにより、CPU41は、「イベント検出手段」として機能する。
そして、CPU41は、ペダル7の後踏みにより縫い糸の切断動作指令が入力されるたびに、指令の入力回数を積算的に記録する処理を行う。これにより、CPU41は、「イベント計数手段」として機能する。
そして、CPU41は、積算された縫い糸の切断動作の記録回数が操作パネル20で設定された予定回数に達すると、生産数量の積算的なカウント値を一つ加算する処理を行う。これにより、CPU41は、「生産数量計数手段」として機能する。なお、生産数量がカウントアップすると縫い糸の切断動作の記録回数はリセットされて0に戻される。また、生産数量のカウント値はEEPROM44と外部メモリ19とに記録される。
また、CPU41は、縫製動作に予定されていない不正規の要因(エラー、具体的には糸切れや糸の消尽)により行われた切断動作を記録回数に加えることにより生産数量を誤ってカウントすることを防止するために、糸切れ検出装置14の撓み検出素子33の出力を監視し、糸切れ(又は糸の消尽)を示す検出が得られた場合には、現在の縫い糸切断動作の記録回数から1回分を減じる処理を実行する。なお、糸切れを示す検出が得られてから記録回数を1減じる処理に限らず、糸切れを示す検出が得られた後に実行される最初の縫い糸切断動作について記録回数の加算を行わずに無視する処理を行っても良い。
【0031】
以上のように、生産管理ミシン10は、「イベント回数設定手段」、「カウント選択手段」としての操作パネル20と、「イベント検出手段」、「イベント計数手段」、「生産数量計数手段」としての制御装置11のCPU41と、「エラー検出手段」としての糸切れ検出装置14と、「生産数量手動入力手段」としてのカウントスイッチ45とからなる生産数量カウント装置をミシン内部で実現しており、実質的に生産数量カウント装置を搭載していることとなる。
【0032】
(生産管理ミシンの動作)
以上の構成からなる生産管理ミシン10における縫製における制御及び処理について、図8及び図9に示すフローチャートに基づき説明する。図8は縫製動作中の処理を示すフローチャート、図9は手動カウントモードにおける処理を示すフローチャートである。
まず、電源スイッチ4が入れられて縫製待機状態となると、CPU41は、生産数量のカウント値をリセットして0にすると共に縫い糸切断動作(イベント)の記録回数もリセットして0にする。そして、生産数量のカウント処理が自動カウントモードに設定されているか否かを判定する(ステップS1)。
そして、自動カウントモードに設定されていない場合には、手動カウントモードに処理が進められる(ステップS16:後述)。
【0033】
一方、自動カウントモードに設定されている場合には、CPU41は、ペダル7の前踏みによる縫製指令の検知を行い(ステップS2)、前踏みを検知するとミシンモータ5を起動させて縫製を開始する(ステップS3)。そして、ペダル7の前踏みが継続されているかを判定し(ステップS4)、継続されている間は縫製を続けて行う。このとき、ペダルの前踏み込み量に応じた速度指令を読み取り、CPU41は速度指令に応じた回転速度となるようにミシンモータ5の速度制御を実行する。
また、ペダル7の前踏み状態が解除されて縫製指令が途絶えていることが検知されると、CPU41は、エンコーダ15の出力を監視して所定の主軸角度(上死点を幾分通過した位置)で停止するようにミシンモータ5の駆動を停止させる(ステップS5)。
【0034】
ついで、CPU41は、ペダル7の後踏みによる縫い糸切断指令の入力の有無を検知し(ステップS6)、後踏みが行われてない場合にはステップS4に処理を戻して再びペダル7の前踏みが行われているかを判定する。
また、ステップS6においてペダル7の後踏みが検知されると、操作パネル20によりエラーの発生による縫い糸切断動作記録回数減算処理の実行が設定されているか否かを判定する(ステップS7)。そして、上記減算処理の設定が行われていない場合には、ステップS12に処理を進める。
一方、縫い糸切断動作記録回数減算処理の実行が設定されている場合には、CPU41は、糸切れ検出装置14の撓みを検出する素子33の検出信号から糸切れが発生しているか否かを判定する(ステップS8)。そして、発生していない場合には、ステップS12に処理を進める。
一方、糸切れの発生を検出した場合には、CPU41は、まず、ペダル7の後踏み操作に従って糸切断ソレノイド16を駆動させて糸切り装置による縫い糸の切断を実行させ(ステップS9)、縫い糸の切断動作の実行と共に、縫い糸の切断動作(イベント)の記録回数を1つ加算する(ステップS10)。しかしながら、今回の縫い糸の切断動作は糸切れ(エラー)の発生を要因とするものであるため、CPU41は、今回の記録回数の加算を修正するために切断動作記録回数から1つ減算を行う(ステップS11)。そして、処理をステップS2に戻し、縫製の再開待ちを行う。
【0035】
一方、ステップS12では、CPU41は、糸切断ソレノイド16を駆動させて糸切り装置による縫い糸の切断を実行させる。また、縫い糸の切断動作の実行と共に、CPU41は、縫い糸の切断動作(イベント)の記録回数を1つ加算する(ステップS13)。
そして、CPU41は、縫い糸の切断動作の記録回数が操作パネル20により設定された予定回数になったか否かを判定し(ステップS14)、予定回数に達していない場合にはステップS2に処理を戻し、縫製の再開待ちを行う。また、縫い糸切断動作の記録回数が予定回数に達した場合には、生産数量のカウント値を1加算する(ステップS15)。そして、縫い糸切断動作の記録回数を0にリセットすると共に、ステップS2に処理を戻し、次の縫製の開始待ちを行う。
かかる処理を繰り返すことにより、生産数量が逐一カウントアップされ、EEPROM44等にその積算値が記録される。
【0036】
一方、手動カウントモード(ステップS1:NO)の場合には、図9に示すように、CPU41は、カウントスイッチ45の入力の検知を行い(ステップS21)、スイッチオンされている場合には、生産数量のカウント値を1加算する(ステップS22)。そして、ステップS21に処理を戻し、再びカウントスイッチ45の入力検知を行う。
また、カウントスイッチ45がONされていない場合には、CPU41は、ペダル7の前踏みによる縫製指令の検知を行う(ステップS23)。そして、前踏みが検知されない場合は処理をステップS21に戻し、前踏みを検知するとミシンモータ5を起動させて縫製を開始する(ステップS24)。そして、ペダル7の前踏みが継続されているかを判定し(ステップS25)、継続されている間は縫製を続けて行う。このとき、ペダルの前踏み込み量に応じた速度指令を読み取り、CPU41は速度指令に応じた回転速度となるようにミシンモータ5の速度制御を実行する。
また、ペダル7の前踏み状態が解除されて縫製指令が途絶えていることが検知されると、CPU41は、エンコーダ15の出力を監視して所定の主軸角度(上死点を幾分通過した位置)で停止するようにミシンモータ5の駆動を停止させる(ステップS26)。
【0037】
ついで、CPU41は、ペダル7の後踏みによる縫い糸切断指令の入力の有無を検知し(ステップS27)、後踏みが行われてない場合にはステップS25に処理を戻して再びペダル7の前踏みが行われているかを判定する。
また、ステップS27においてペダル7の後踏みが検知されると、CPU41は、糸切断ソレノイド16を駆動させて糸切り装置による縫い糸の切断を実行させ(ステップS28)、縫い糸の切断動作を実行する(ステップS28)。そして、処理をステップS21に戻し、カウントスイッチ45の入力判定を行う。
かかる処理を繰り返すことにより、生産数量が逐一カウントアップされ、EEPROM44等にその積算値が記録される。
【0038】
(実施形態の効果)
生産管理ミシン10では、毎回の作業工程の実行ごとに、工程中で検出される縫い糸切断動作の記録回数が予め設定された予定回数に達するか否かに基づいて生産数量のカウントを行っており、糸切れの発生が検出された場合には、縫い糸切断動作の記録回数を一つ減じる処理を行うので、予定されていない不正規な縫い糸切断動作について発生回数として記録されることにより生産数量のカウントを誤るという事態を解消することが可能となり、より適切な生産数量のカウントが可能となる。
さらに、操作パネル20からの自動カウントモードと手動カウントモードとの選択設定により、カウントボタン45により作業工程の一工程の完了を手動で入力することができるので、エラーの発生にかかわらず手動で生産数量をカウントさせるようにすることもでき、より適切な生産数量のカウントが可能となる。
【0039】
(その他)
なお、前述した自動カウント処理のステップS10で縫い糸切断動作の記録回数を1つ加算した後でステップS11によりエラーとして記録回数を1つ減算する処理を行っているが、縫い糸切断動作の実行に前後して糸切れが検出された場合には、その縫い糸切断動作については記録回数として加算しないように無視する処理を行っても良い。つまり、ステップS10とS11の処理を行わず、ステップS9の次にはステップS2に処理を戻して縫製の再開待ちを行っても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、生産数量カウント装置が全て生産管理ミシン10に組み込まれているが、一部の構成については入力部と表示部とを備える外部の処理端末で行っても良い。例えば、「イベント回数設定手段」、「カウント選択手段」、「イベント検出手段」、「イベント計数手段」、「生産数量計数手段」としての機能を外部の処理端末で実行させても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、「イベント」を縫い糸の切断動作としているが、前述したように、布押さえの上昇動作が縫製工程中で決まった回数実行される場合には、当該布押さえの上昇動作を「イベント」としても良い。その場合、イベント検出手段は、例えば、布押さえの上昇又は下降を検出するセンサ(接点式や光学式等種類は問わない)を用いることが望ましく、「エラー検出手段」は糸切れ検出装置14がそのまま利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 生産管理ミシン
11 制御装置
14 糸切れ検出装置(エラー検出手段)
20 操作パネル(イベント回数設定手段、カウント選択手段)
41 CPU(イベント検出手段、イベント計数手段、生産数量計数手段)
45 カウントスイッチ(生産数量手動入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンが被縫製物に対して行う一つの作業工程の実行数を生産数量としてカウントするミシンの生産数量カウント装置において、
前記作業工程中に発生する所定のイベントを検出するイベント検出手段と、
前記作業工程中に発生する前記イベントの予定回数を設定入力するイベント回数設定手段と、
前記検出されたイベントの発生回数を記録するイベント計数手段と、
前記イベントの発生回数が前記設定入力された予定回数に達すると前記生産数量を一つカウントする生産数量計数手段と、
前記イベントを実行させるエラーの発生を検出するエラー検出手段とを備え、
前記イベント計数手段は、前記エラーの発生が検出された場合に、前記イベント発生回数の記録値を一つ減じる処理又は前記エラー検出時のイベントについて発生回数として記録しない処理を行うことを特徴とするミシンの生産数量カウント装置。
【請求項2】
前記作業工程の一工程の完了を手動で入力する生産数量手動入力手段を設け、
前記生産数量計数手段は、前記生産数量手動入力手段からの入力の場合にも前記作業工程の実行数を一つカウントする処理を行うことを特徴とする請求項1記載のミシンの生産数量カウント装置。
【請求項3】
前記生産数量計数手段は、前記イベント計数手段のイベント発生回数の記録値に基づく生産数量のカウントを行う自動処理と、前記生産数量手動入力手段の入力に基づく生産数量のカウントを行う手動処理のいずれかを実行すると共に、
前記自動処理と手動処理のいずれを実行するかの選択を設定入力するカウント選択手段を備えることを特徴とする請求項2記載のミシンの生産数量カウント装置。
【請求項4】
前記所定のイベントは縫い糸の切断動作であり、
前記エラー検出手段は、前記エラーとして糸切れの検出を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシンの生産数量カウント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−263977(P2010−263977A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116179(P2009−116179)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】