説明

ミシン

【課題】1本の針棒だけで、シークインの列を2列同時に縫い付ける。
【解決手段】ミシンヘッドの1本の針棒11で、2本の縫製針13a,13bを上下方向に駆動する。そして、該2本の縫製針13a,13bの2箇所の針落点pa,pbに、2本のシークインテープTa,Tbを送るシークイン送り装置20を設ける。そのシークイン送り装置20は、送り方向fとその反対方向rとに変位可能に設けられ、送り方向fに変位する際には2本のシークインテープTa,Tbに係合し、反対方向rに変位する際には該2本のシークインテープTa,Tbとの係合が解除される1つ又は2つの送り部材33と、該1つ又は2つの送り部材33を駆動する駆動装置とを含み構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製針の針落点にシークインを送るシークイン送り装置を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンの中には、図15に示す従来例(引用文献1)のミシン90のように、ミシンヘッドの1本の針棒(図示略)で、1本の縫製針91を上下方向に駆動し、シークイン送り装置92で、該1本の縫製針91の針落点に、複数のシークインS,S・・が連結されてなる1本のシークインテープTを送るものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−205153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなミシンでは、図15(b)に示すように、加工布にシークインS,S・・の列を2列平行に縫い付ける場合でも、まず、図15(a)に示すように、一方のシークインS,S・・の列を縫い付けてから、次に、図15(b)に示すように、他方のシークインS,S・・の列を縫い付けなければならず、効率が悪い。
【0005】
そこで、1本の針棒だけで、シークインの列を2列同時に縫い付けられるようにすることを第一の目的とする。また、更に、該縫い付けるシークインの2列間のピッチが狭い場合にも、第一の目的を達成できるようにすることを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第一の目的を達成するため、本発明のシークイン送り装置は、ミシンヘッドの1本の針棒で、2本の縫製針を上下方向に駆動し、前記2本の縫製針の2箇所の針落点に、複数のシークインが連結されてなる2本のシークインテープを送るシークイン送り装置を備えている。
【0007】
ここで、前記シークイン送り装置は、特に限定されないが、その幅を小さくして、縫い付けるシークインの2列間のピッチが狭い場合にも対応できるようにする(上記第二の目的を達成する)ため、次の[a][b]のように構成されていることが好ましい。
【0008】
[a]前記シークイン送り装置は、前記2本のシークインテープを、前記2箇所の針落点に向かう送り方向に案内する案内部と、前記送り方向と該送り方向の反対方向とに変位可能に設けられ、前記送り方向に変位する際には前記2本のシークインテープに同時に係合し、前記反対方向に変位する際には該2本のシークインテープとの係合が解除される1つの送り部材と、前記1つの送り部材を前記送り方向と前記反対方向とに往復駆動する駆動装置とを含み構成されていること。
【0009】
[b]前記シークイン送り装置は、前記2本のシークインテープを、前記2箇所の針落点に向かう送り方向に案内する案内部と、前記送り方向と該送り方向の反対方向とに変位可能に設けられ、前記送り方向に変位する際には一方のシークインテープに係合し、前記反対方向に変位する際には該一方のシークインテープとの係合が解除される一方の送り部材と、前記送り方向と前記反対方向とに変位可能に設けられ、前記送り方向に変位する際には他方のシークインテープに係合し、前記反対方向に変位する際には該他方のシークインテープとの係合が解除される他方の送り部材と、前記一方の送り部材と前記他方の送り部材とを前記送り方向と前記反対方向とに往復駆動する駆動装置とを含み構成され、前記一方の送り部材を前記送り方向又は前記反対方向に延長した延長領域に、前記他方の送り部材の少なくとも一部が重なるように設けられていること。
【0010】
また、前記[b]の場合において、前記ミシンは、特に限定されないが、複数のシークインを縫い付けていく縫付パターンを多種多様にするため、次のように構成されていることが好ましい。すなわち、前記駆動装置で前記一方の送り部材のみを駆動して、前記一方のシークインテープのみを一方の針落点に送る第1状態と、前記駆動装置で前記他方の送り部材のみを駆動して、前記他方のシークインテープのみを他方の針落点に送る第2状態と、前記駆動装置で両方の送り部材を駆動して、両方のシークインテープを両方の針落点に送る第3状態との間で駆動状態を切り換える切換装置を備えていることである。
【0011】
また、前記案内部は、特に限定されないが、その幅を小さくできるように、次の[c][d]のように構成されていることが好ましい。
【0012】
[c]前記案内部は、前記一方のシークインテープを一方の針落点に案内する一対の案内面と、前記他方のシークインテープを他方の針落点に案内する別の一対の案内面とを備えた1つの案内部材を含み構成されていること。
【0013】
[d]前記案内部は、前記一方のシークインテープを一方の針落点に案内する一対の案内面を備えた一方の案内部材と、前記他方のシークインテープを他方の針落点に案内する別の一対の案内面を備えた他方の案内部材とを含み構成され、前記一方のシークインテープの上方又は下方に、前記他方の案内部材の少なくとも一部が重なるように設けられていること。
【0014】
また、更に、前記案内部は、特に限定されないが、その幅を小さくするとともに、既に縫い付けた一方のシークインテープを構成する一のシークインを縫製方向に延長した延長領域に、他方のシークインテープを構成する別のシークインの少なくとも一部が重なるように縫い付けられるように、次のように構成されていることが好ましい。すなわち、前記案内部は、前記一方のシークインテープを一方の針落点に案内する一対の案内面を備えた一方の案内部材と、前記他方のシークインテープを他方の針落点に案内する別の一対の案内面を備えた他方の案内部材とを含み構成され、前記一方のシークインテープの上方又は下方に、前記他方のシークインテープの少なくとも一部が重なるように設けられ、前記一方のシークインテープのみを一方の針落点に送り、該一方のシークインテープを構成する一のシークインを縫い付けた後、前記他方のシークインテープのみを他方の針落点に送り、該他方のシークインテープを構成する別のシークインを縫い付けることによって、前記一のシークインを縫製方向に延長した延長領域に、前記別のシークインの少なくとも一部が重なるように縫い付けることである。但し、前記縫製方向は、前記一のシークインを縫い付けた上糸の長さ方向をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1本の針棒で、2本の縫製針を上下方向に駆動し、シークイン送り装置で、該2本の縫製針の2箇所の針落点に2本のシークインテープを送ることによって、1本の針棒だけで、シークインの列を2列同時に縫い付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のミシンのシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す斜視図である。
【図2】同実施例1のシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す平面断面図である。
【図3】同実施例1のシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す左側面断面図である。
【図4】同実施例1のシークイン送り装置全体及びその周辺を示す左側面断面図である。
【図5】同実施例1のシークイン送り装置の中部及び下部並びにそれらの周辺を示す背面断面図である。
【図6】同実施例1の送り部材を(a)に平面視で示し、その変更形態を(b)に平面視で示し、同実施例1の2本の縫製針を(c)に正面視で示し、その変更形態を(d)に正面視で示す図である。
【図7】同実施例1のミシンでシークインを縫い付けた際の様子を(a)〜(c)に示す平面図である。
【図8】本発明の実施例2のミシンのシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す平面断面図である。
【図9】同実施例2のシークイン送り装置の中部及び下部並びにそれらの周辺を示す背面断面図である。
【図10】同実施例2のシークイン送り装置の駆動状態を切り換えた際の該装置の中部の様子を(a)(b)に示す背面断面図である。
【図11】同実施例2のミシンでシークインを縫い付けた際の様子を(a)〜(c)に示す平面図である。
【図12】本発明の実施例3のミシンのシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す平面断面図である。
【図13】同実施例3のシークイン送り装置の下部及びその周辺を示す左側面断面図である。
【図14】同実施例3のミシンでシークインを縫い付けた際の様子を(a)〜(c)に示す平面図である。
【図15】従来例のミシンでシークインを縫い付けた際の様子を(a)(b)に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1〜図7に示す本実施例1のミシンは、次の[ア]〜[キ]の各部材を含み構成されている。
[ア] 少なくとも一本の針棒11を備え、該1本の針棒11に、2本の上糸Qa,Qbを縫い付ける2本の縫製針13a,13bが左右方向に間隔をおいて取り付けられたことによって、該一本の針棒11で該2本の縫製針13a,13bを駆動するミシンヘッド10。
[イ] 2本の縫製針13a,13bの直下方に設けられた1つのミシン釜(図示略)と、該ミシン釜を駆動する釜駆動装置(図示略)とを含み構成され、該1つのミシン釜で、1本の下糸を2本の上糸Qa,Qbに対して絡ませるベッド(図示略)
[ウ] ミシンヘッド10とベッドとの間に加工布を展張する展張枠(図示略)。
[エ] 展張枠を前後左右に駆動する枠駆動装置(図示略)。
[オ] ミシンヘッド10の前方に左右方向に並べて設けられ、複数のシークインS,S・・が連結されてなる2本のシークインテープTa,Tbが巻かれた2つのリール(図示略)。
[カ] 2つのリールと2本の縫製針13a,13bの2箇所の針落点pa,pbとの間に設けられ、該2つのリールから解かれた2本のシークインテープTa,Tbを、該2箇所の針落点pa,pbに送るシークイン送り装置20。
[キ] シークイン送り装置20をその不使用時に上方に退避させるための退避機構60。
【0018】
ここで、[ア]のミシンヘッド10の2本の縫製針13a,13bは、共通の基端部を備え、該基端部から該2本の縫製針13a,13bの先端側に枝分かれする形で形成されている。また、該縫製針13a,13bが取り付けられている針棒11には、布押え棒16が上下方向に伸縮するバネを介して取り付けられている。その布押え棒16の下端には、2本の縫製針13a,13bの左右両側の下方にまで延びる布押え足17が取り付けられている。そして、その布押え足17には、2箇所の針落点pa,pbに送られたシークインS,Sとの接触を避けるための切欠18が設けられている。
【0019】
また、ここで、[カ]のシークイン送り装置20は、次に示す案内部21と、送り機構31と、駆動装置41と、切断機構51とを含み構成されている。
【0020】
[案内部21]
案内部21は、2本のシークインテープTa,Tbを、2箇所の針落点pa,pbの前方から該2箇所の針落点pa,pbに案内する部材であって、次に示す載置台22と、案内部材25とを含み構成されている。
【0021】
載置台22は、水平方向に延びる板状の部材であって、後述する送り機構フレーム32の下端部に取り付けられて2本の縫製針13a,13bの真前方の直下にまで延びている。この載置台22には、後述する一方の送りピン34aとの接触を避けるための一方の接触防止孔23aと、後述する他方の送りピン34bとの接触を避けるための他方の接触防止孔23bとが前後方向に長く設けられている。
【0022】
案内部材25は、載置台22の上面にネジ29,29・・等で取り付けられた板状の部材であって、その下面には、2本のシークインテープTa,Tbを2箇所の針落点pa,pbに向かう送り方向f(後方)に案内する前後方向に延びる左右2本の案内溝26a,26bが凹設されている。そして、それらの案内溝26a,26bの各溝の両端は、案内部材25の前面及び後面に開口している。そして、一方の案内溝26aの左右方向両側の内側面は、一方のシークインテープTaを一方の針落点paに案内する一対の案内面27a,27aを構成し、他方の案内溝26bの左右方向両側の内側面は、他方のシークインテープTbを他方の針落点pbに案内する別の一対の案内面27b,27bを構成している。また、案内部材25の上面には、該上面から一方の案内溝26aの天井面に貫通した、後述する一方の送りピン34aを挿通させるための前後方向に延びる一方の挿通孔28aと、該上面から他方の案内溝26bの天井面に貫通した、後述する他方の送りピン34bを挿通させるための前後方向に延びる他方の挿通孔28bとが貫設されている。
【0023】
[送り機構31]
送り機構31は、2本のシークインテープTa,Tbを2箇所の針落点pa,pbに送るための機構であって、次に示す送り機構フレーム32と、送り部材33と、4つの入力部材35〜38とを含み構成されている。
【0024】
送り機構フレーム32は、案内部21の左右一方側の側方から上方に延びる板状のフレームであって、その上端部は後述する駆動装置フレーム42の下端部に取り付けられている。
【0025】
送り部材33は、2本のシークインテープTa,Tbを2箇所の針落点pa,pbの前方から該針落点pa,pbに送り出すための部材であって、送り方向f(後方)とその反対方向r(前方)とに変位可能、かつ、左右方向を軸とした回動方向に回動可能に設けられている。そして、その送り方向f側の端部に、送り方向fに突出してから下方に延びる2本の送りピン34a,34bを備えている。その2本の送りピン34a,34bは、共通の基端部を備え、該基端部から該2本の送りピン34a,34bの先端側に枝分かれする形で形成されている。そして、各送りピン34a,34bの下端部の下面は、送り方向f側から反対方向r側に向かうに従い上に上がる方向に傾斜しており、それによって、送り部材33が送り方向fに駆動された際には、該2本の送りピン34a,34bの下端部が2本のシークインテープTa,Tbに係合する一方、反対方向rに駆動された際には、送り部材33が該傾斜に沿って微小回動して該係合が解除されるようになっている。
【0026】
4つの入力部材35〜38は、駆動装置41からの駆動力を順に送り部材33にまで伝えるための部材であって、送り機構フレーム32に取り付けられている。そして、最も駆動装置41側に位置する入力部材38には、左右一方側から左右他方に突出した入力ピン39が設けられている。
【0027】
[駆動装置41]
駆動装置41は、送り部材33を、送り方向fと反対方向rとに往復駆動するための装置であって、次に示す駆動装置フレーム42と、駆動用モータ43と、3つの出力部材46〜48とを含み構成されている。
【0028】
駆動装置フレーム42は、送り機構フレーム32の上端の左右一方側の側方から上方に延びる板状のフレームであって、その上端部は退避機構60によって支持されている。
【0029】
駆動用モータ43は、送り部材33を駆動するための動力源となるモータであって、駆動装置フレーム42に取り付けられている。
【0030】
3つの出力部材46〜48は、駆動用モータ43からの駆動力を順に送り機構31の入力ピン39にまで伝えるための部材であって、駆動装置フレーム42に取り付けられている。そして、最も送り機構31側に位置する出力部材48には、入力ピン39に係合する出力孔49が設けられている。
【0031】
[切断機構51]
切断機構51は、針落点pa,pbに送られたシークインテープTa,Tbの先端のシークインS,Sを該シークインテープTa,Tbから切り離すための部材である。この切断機構51は、載置台22の上面に取り付けられた取付台52と、該取付台52に取り付けられたカッター53とを含み構成されている。そして、そのカッター53は、針棒11の下降時にその針止め12によって押し下げられることによって、先端のシークインS,SをシークインテープTa,Tbから切断する。
【0032】
本実施例1によれば、次の[A]〜[F]の効果を得ることができる。
[A]1本の針棒11で、2本の縫製針13a,13bを上下方向に駆動し、シークイン送り装置20で、該2本の縫製針13a,13bの2箇所の針落点pa,pbに2本のシークインテープTa,Tbを送ることによって、1本の針棒11だけで、図7(a)に示すように、シークインS,S・・の列を2列同時に縫い付けることができる。
【0033】
[B]1つの送り部材33に2本の送りピン34a,34bが設けられているので幅方向(左右方向)にスペースを取らない。そのため、2本の縫製針13a,13b間のピッチ(縫い付けるシークインS,S・・の2列間のピッチ)が狭く、幅方向に取れるスペースが限られている場合にも対応できる。また、図6(a)に示すように、2本の送りピン34a,34bは、共通の基端部を備えているので、従来どおりの通常の送り部材にも簡単に取り付けることができる。但し、このような効果を期待しない場合には、図6(b)に示すように、2本の送りピン34a,34bの基端部をそれぞれ別個に設けてもよい。
[C]1つの案内部材25に2つの案内溝26a,26bが設けられているので幅方向(左右方向)にスペースを取らない。そのため、2本の縫製針13a,13b間のピッチが狭く、幅方向に取れるスペースが限られている場合にも対応できる。
【0034】
[D]2本の縫製針13a,13bを、左右方向のピッチが異なるものに変更するとともに、案内部材25も、それと同じ左右方向のピッチで2本の案内溝26a,26bを備えたものに交換することによって、図7(b)に示すように、縫い付けるシークインS,S・・の2列間のピッチを変更することができる。
[E]一方のシークインテープTa若しくは他方のシークインテープTb又はその両方をサイズの異なるものに変更するとともに、案内部材25も、そのサイズに合った溝幅の案内溝26a,26bを備えたものに交換し、また、送り機構31a,31bによる1回の送り量も、そのサイズに合わせて変更することによって、図7(c)に示すように、縫い付けるシークインS,S・・のサイズを変更することができる。
[F]図6(c)に示すように、2本の縫製針13a,13bは、共通の基端部を備えているので、従来どおりの通常の針棒(針止め)にも簡単に取り付けることができる。但し、このような効果を期待しない場合には、図6(d)に示すように、2本の縫製針13a,13bの基端部をそれぞれ別個に設けてもよい。
【実施例2】
【0035】
図8〜図11に示す本実施例2のミシン70は、実施例1のミシン9と略同様であるが、次の点で相違している。すなわち、本実施例2では、実施例1の2本のシークインテープTa,Tbを2箇所の針落点pa,pbに送る送り機構31の代わりに、一方のシークインテープTaを一方の針落点paに送る一方の送り機構31aと、他方のシークインテープTbを他方の針落点pbに送る他方の送り機構31bとを備えている。また、駆動装置41で一方の送り部材33aのみを駆動して、一方のシークインテープTaのみを一方の針落点paに送る第1状態と、駆動装置41で他方の送り部材33bのみを駆動して、他方のシークインテープTbのみを他方の針落点pbに送る第2状態と、駆動装置41で両方の送り部材33a,33bを駆動して、両方のシークインテープTa,Tbを両方の針落点pa,pbに送る第3状態との間で駆動状態を切り換える切換装置71を備えている。
【0036】
詳しくは、一方の送り機構31aは、実施例1の送り機構31と同様に、一方の送り機構フレーム32aと、一方の送り部材33aと、一方の4つの入力部材35a〜38aとを含み構成されているが、そのうちの一方の送り部材33aに、一方の送りピン34aのみが設けられている点、及びその一方の送り部材33aが実施例1の送り部材33よりも反対方向r側に設けられている点で、該実施例1の送り機構31と相違している。また、他方の送り機構31bは、一方の送り機構31aを左右方向に反転させて同様に、他方の送り機構フレーム32bと、他方の送り部材33bと、他方の4つの入力部材35b〜38bとを含み構成されているが、一方の送り部材33aを送り方向fに延長した延長領域に、他方の送り部材33bの一部が重なるように設けられている点で、一方の送り機構31aの左右反転と相違している。
【0037】
このミシン70では、図10(a)に示すように、切換装置71で駆動装置41の出力部材48を左右方向一方に駆動して、その出力孔49を、一方の入力ピン39aに係合させることによって、一方の送り部材33aを駆動する第1状態とする。また、図10(b)に示すように、切換装置71で駆動装置41の出力部材48を左右方向他方に駆動して、その出力孔49を、他方の入力ピン39bに係合させることによって、他方の送り部材33bを駆動する第2状態とする。また、図9に示すように、切換装置71で駆動装置41の出力部材48を左右方向中間部に駆動して、その出力孔49を両方の入力ピン39a,39bに係合させることによって、両方の送り部材33a,33bを駆動する第3状態とする。
【0038】
本実施例2によれば、実施例1で示した[A],[C]〜[F]の効果を得ることができるのに加え、次の[B'],[G]の効果を得ることができる。
[B']一方の送り部材33aを送り方向fに延長した延長領域に、他方の送り部材33bの一部が重なるように設けられているので、幅方向(左右方向)にスペースを取らない。そのため、2本の縫製針13a,13b間のピッチ(縫い付けるシークインS,S・・の2列間のピッチ)が狭く、幅方向に取れるスペースが限られている場合にも対応できる。
【0039】
[G]2つの送り部材33a,33bを片方ずつでも駆動することができるので、図11(a)に示すように、途中まではシークインS,S・・の列を2列で縫い付け、途中からは一方の1列のみで縫い付けることや、図11(b)に示すように、途中まではシークインS,S・・の列を一方の1列のみで縫い付け、途中からは他方の1列のみで縫い付けることや、図11(c)に示すように、シークインS,S・・の列を千鳥上に2列で縫い付けることもできる。
【実施例3】
【0040】
図12〜図14に示す本実施例3のミシン80は、実施例2のミシン70と略同様であるが、実施例2(実施例1)の2本の案内溝26a,26b(及び2本の挿通孔28a,28b)を備えた案内部材25の代わりに、一方の案内溝26a(及び一方の挿通孔28a)のみを備えた一方の案内部材25aと、他方の案内溝26b(及び他方の挿通孔28b)のみを備えた他方の案内部材25bとを備えた点で相違している。
【0041】
詳しくは、一方の案内部材25aは、載置台22の上面にネジ29,29・・等で取り付けられている。また、該一方の案内部材25aよりも送り方向f側の載置台22の上面における一方のシークインテープTaの左右両側には、上面が送り方向f側に進むに従い下方に下がるように傾斜した一対の傾斜台83,83が設けられ、その上面に、それと平行に一枚の板状の補助載置台82が設けられている。その補助載置台82には、実施例1,2では載置台22に設けられていた他方の接触防止孔23bが設けられている。また、該補助載置台82の上面には、他方の案内部材25bがネジ29,29・・等で取り付けられている。このとき、該他方の案内部材25bの左右一方の案内面27b(すなわち、他方の案内溝26bの一部)は、一方のシークインテープTaの上方に重なっているおり、そのため、該他方の案内部材25bによって案内される他方のシークインテープTbの一部は、該一方のシークインテープTaの上方に重なっている。但し、後述する[H]の効果を期待しない場合には、このように上方に重ならなず左右方向にずれていてもよい。
【0042】
本実施例3によれば、実施例1,2で示した[A][B'][F][G]の効果を得ることができるのに加え、次の[C'][D'][E'][H]の効果を得ることができる。
[C']一方のシークインテープTaの上方に、他方の案内部材25bが重なっているので、幅方向(左右方向)にスペースを取らない。そのため、2本の縫製針13a,13b間のピッチ(縫い付けるシークインS,S・・の2列間のピッチ)が狭く、幅方向に取れるスペースが限られている場合にも対応できる。
【0043】
[D']2本の縫製針13a,13bを、左右方向のピッチが異なるものに変更するとともに、それに合わせて、2つの案内部材25a,25bの左右方向のピッチも変更することによって、縫い付けるシークインS,S・・の2列間のピッチを変更することができる。
[E']一方のシークインテープTa若しくは他方のシークインテープTb又はその両方をサイズの異なるものに変更するとともに、一方の案内部材25a又は他方の案内部材25bも、そのサイズに合った溝幅の案内溝26a,26bを備えたものに変更し、また、送り機構31a,31bによる1回の送り量も、そのサイズに合わせて変更することによって、縫い付けるシークインS,Sのサイズを変更することができる。そして、その際には、2つの案内部材25a,25bを片方ずつ交換することができる。
【0044】
[H]一方のシークインテープTaのみを一方の針落点paに送り、該一方のシークインテープTaを構成する一のシークインSを縫い付けた後、他方のシークインテープTbのみを他方の針落点pbに送り、該他方のシークインテープTbを構成する別のシークインSを縫い付けることによって、図14(a)(b)に示すように、上記一のシークインSを縫製方向に延長した延長領域zに、上記別のシークインSの一部が重なるように縫い付けることができる。また、両方のシークインテープTa,Tbを両方の針落点pa,pbに同時に送り、2つのシークインS,Sを同時に縫い付けることによって、図14(c)に示すように、一のシークインSの上方に別のシークインSの一部を重ねて縫い付けることもできる。
【0045】
なお、本発明は上記実施例1〜3に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【符号の説明】
【0046】
9 ミシン
11 針棒
13a 一方の縫製針
13b 他方の縫製針
20 シークイン送り装置
21 案内部
25 案内部材
25a 一方の案内部材
25b 他方の案内部材
27a 一方の案内面
27b 他方の案内面
33 送り部材
33a 一方の送り部材
33b 他方の送り部材
41 駆動装置
70 ミシン
71 切換装置
80 ミシン
pa 一方の針落点
pb 他方の針落点
Ta 一方のシークインテープ
Tb 他方のシークインテープ
S シークイン
f 送り方向
r 反対方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンヘッド(10)の1本の針棒(11)で、2本の縫製針(13a,13b)を上下方向に駆動し、
前記2本の縫製針(13a,13b)の2箇所の針落点(pa,pb)に、複数のシークイン(S)が連結されてなる2本のシークインテープ(Ta,Tb)を送るシークイン送り装置(20)を備えたミシン。
【請求項2】
前記シークイン送り装置(20)は、前記2本のシークインテープ(Ta,Tb)を、前記2箇所の針落点(pa,pb)に向かう送り方向(f)に案内する案内部(21)と、
前記送り方向(f)と該送り方向の反対方向(r)とに変位可能に設けられ、前記送り方向(f)に変位する際には前記2本のシークインテープ(Ta,Tb)に同時に係合し、前記反対方向(r)に変位する際には該2本のシークインテープ(Ta,Tb)との係合が解除される1つの送り部材(33)と、
前記1つの送り部材(33)を前記送り方向(f)と前記反対方向(r)とに往復駆動する駆動装置(41)とを含み構成された請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記シークイン送り装置(20)は、前記2本のシークインテープ(Ta,Tb)を、前記2箇所の針落点(pa,pb)に向かう送り方向(f)に案内する案内部(21)と、
前記送り方向(f)と該送り方向の反対方向(r)とに変位可能に設けられ、前記送り方向(f)に変位する際には一方のシークインテープ(Ta)に係合し、前記反対方向(r)に変位する際には該一方のシークインテープ(Ta)との係合が解除される一方の送り部材(33a)と、
前記送り方向(f)と前記反対方向(r)とに変位可能に設けられ、前記送り方向(f)に変位する際には他方のシークインテープ(Tb)に係合し、前記反対方向(r)に変位する際には該他方のシークインテープ(Tb)との係合が解除される他方の送り部材(33b)と、
前記一方の送り部材(33a)と前記他方の送り部材(33b)とを前記送り方向(f)と前記反対方向(r)とに往復駆動する駆動装置(41)とを含み構成され、
前記一方の送り部材(33a)を前記送り方向(f)又は前記反対方向(r)に延長した延長領域に、前記他方の送り部材(33b)の少なくとも一部が重なるように設けられた請求項1記載のミシン。
【請求項4】
前記駆動装置(41)で前記一方の送り部材(33a)のみを駆動して、前記一方のシークインテープ(Ta)のみを一方の針落点(pa)に送る第1状態と、前記駆動装置(41)で前記他方の送り部材(33b)のみを駆動して、前記他方のシークインテープ(Tb)のみを他方の針落点(pb)に送る第2状態と、前記駆動装置(41)で両方の送り部材(33a,33b)を駆動して、両方のシークインテープ(Ta,Tb)を両方の針落点(pa,pb)に送る第3状態との間で駆動状態を切り換える切換装置(71)を備えた請求項3記載のミシン。
【請求項5】
前記案内部(21)は、前記一方のシークインテープ(Ta)を一方の針落点(pa)に案内する一対の案内面(27a,27a)と、前記他方のシークインテープ(Tb)を他方の針落点(pb)に案内する別の一対の案内面(27b,27b)とを備えた1つの案内部材(25)を含み構成された請求項2,3又は4記載のミシン。
【請求項6】
前記案内部(21)は、前記一方のシークインテープ(Ta)を一方の針落点(pa)に案内する一対の案内面(27a,27a)を備えた一方の案内部材(25a)と、前記他方のシークインテープ(Tb)を他方の針落点(pb)に案内する別の一対の案内面(27b,27b)を備えた他方の案内部材(25b)とを含み構成され、
前記一方のシークインテープ(Ta)の上方又は下方に、前記他方の案内部材(25b)の少なくとも一部が重なるように設けられた請求項3又は4記載のミシン。
【請求項7】
前記案内部(21)は、前記一方のシークインテープ(Ta)を一方の針落点(pa)に案内する一対の案内面(27a,27a)を備えた一方の案内部材(25a)と、前記他方のシークインテープ(Tb)を他方の針落点(pb)に案内する別の一対の案内面(27b,27b)を備えた他方の案内部材(25b)とを含み構成され、
前記一方のシークインテープ(Ta)の上方又は下方に、前記他方のシークインテープ(Tb)の少なくとも一部が重なるように設けられ、
前記一方のシークインテープ(Ta)のみを一方の針落点(pa)に送り、該一方のシークインテープ(Tb)を構成する一のシークイン(S)を縫い付けた後、前記他方のシークインテープ(Tb)のみを他方の針落点(pb)に送り、該他方のシークインテープ(Tb)を構成する別のシークイン(S)を縫い付けることによって、
前記一のシークイン(S)を縫製方向に延長した延長領域(z)に、前記別のシークイン(S)の少なくとも一部が重なるように縫い付ける請求項6記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−252933(P2010−252933A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104575(P2009−104575)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】