説明

メカニカルシール装置

【課題】本発明は、長時間の運転において、漏出した被密封流体が密封面近傍の部材表面に付着して団子状になるような場合においても、密封要素の正常な動作が妨げられないようにした静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、静止側密封要素の外周部には、密封面側に回転軸の軸と直交するように撥水性の材料で形成された円板を、シールカバー側にシールカバー側面に弾性的に押圧するリップシールを設け、シールカバーの内周面と対峙するように延びた静止側密封要素の円環部分に軸方向に摺動して作動する作動用Oリングを設け、リップシールと作動用Oリングとで遮蔽された空間内に位置して、静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材および静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンを設けることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度の被密封流体または大気に接触すると粘度が増して固化する被密封流体を扱う機器、たとえば、ポンプ等の密封に使用される静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギヤポンプやスクリューポンプなどで扱われる酢酸ドープ、磁性塗料、溶融樹脂、キャラメルなどの高粘度の被密封流体や大気中に出ると粘度が増して固化する被密封流体の軸封部には、図2に示すような静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置が使用されている。
ここで、静止形というのは、スプリングなどを内蔵するシールリングが回転しない形式をいい、また、アウトサイド(形)というのは、摺動面(密封面)の内周から外周方向へ向かって漏れようとする流体をシールする形式をいう。
【0003】
図2に示す従来の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、シールカバー50とその内周に挿通された回転軸51との間に静止側密封要素52と回転側密封要素53とが互いに密接摺動される接触式メカニカルシール構造を有し、機内側の液体が摺動面(密封面)54の内周から外周方向(大気側)へ向かって漏れようとする流体をシールするようになっている。
静止側密封要素52は、シールカバー50にドライブピン55により軸方向にのみ移動可能に支持されており、スプリング56で回転側密封要素53側に押圧されている。
回転側密封要素53は、カラー57にノックピン58を介して保持され、カラー57はセットスクリュー59で回転軸51に固定されている。
【0004】
機内側において、例えば、酢酸ドープが扱われている場合、酢酸ドープは水と反応して固形化したり、溶剤でも洗浄できないため、水や溶剤のクエンチによる洗浄ができず、ノークエンチで使用されることが多い。この場合、運転時間の経過とともに、機内側から摺動面54を介して大気側に漏出した被密封流体が大気中で粘度が増して付着性が増大し、摺動面54近傍の部材表面に付着して団子状になり、さらに、その塊が大きくなって、遂には静止側密封要素52のドライブピン55およびスプリング56に付着し、静止側密封要素52の軸方向の作動性が低下して摺動面54からの漏れが増加したり、また、さらに塊が大きくなると、遂には静止側密封要素52がシールカバー50と完全に固着してシール機能を果たすことができず、多量漏れに至るという問題があった。
【0005】
高粘度の被密封流体やスラリーを含む被密封流体をシールするのに適し、被密封流体の固形物が付着したり、構成部品間に目詰まりしたりしないようにしたカートリッジ型のメカニカルシール装置として、特開2003−74713号公報に記載の発明が知られている(以下、「従来技術1」いう。)。
この従来技術1は、静止側密封要素の内周面と回転軸の外周面との間隙を大きくして、スラリーを含む被密封流体が固形化して静止側密封要素の内周面に付着しても洗浄により洗い落とすことを可能にすることで固形物の目詰まりを防止するというものである。
【0006】
また、高粘度スラリ流体のシール等に供しうるメカニカルシールとして、特開2001−173800号公報に記載の発明が知られている(以下、「従来技術2」いう。)。
この従来技術2では、回転側密封要素の密封端面の径方向幅(密封端面幅)を0.2〜1.0mmの程度の微小としておくことにより、両密封端面の接触圧(面圧)が高くなることと相俟って、密封端面間への高粘度,凝固性流体や微粒固形成分の侵入,噛み込みを防止することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−74713号公報
【特許文献2】特開2001−173800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術1は、酢酸ドープのように水分に反応して固形化したり、溶剤でも洗浄できない被密封流体に適用することができないという問題があった。
また、従来技術2は、いわゆるナイフエッジシールといわれるもので、密封端面幅を微小としておくことにより、両密封端面の面圧が高くなり、密封端面間への高粘度,凝固性流体や微粒固形成分の侵入,噛み込みを防止する効果が期待できるものの、密封端面に漏出した被密封流体が付着し易く、かつ、摺動による熱が発散しにくいという構造上の問題、および、長時間の運転において、漏出した被密封流体が密封端面近傍の部材表面に付着して団子状になった場合の対策がなされていないという問題があった。
【0009】
本発明は、長時間の運転において、漏出した被密封流体が密封面近傍の部材表面に付着して団子状になるような場合においても、密封要素の正常な動作が妨げられないようにした静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、密封面周辺から漏出した被密封流体を落ち易くするとともに摺動熱の発散を良好にした静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、高面圧での密封方式とすることにより密封端面間の液膜を薄くして漏出量を少なくした静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、静止側密封要素とシールカバーのシール部に漏出した被密封流体が付着しにくくした静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第1に、シールカバーとその内周に挿通された回転軸との間に静止側密封要素と回転側密封要素とが互いに密接摺動される接触式メカニカルシール構造を有する静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置において、静止側密封要素の外周部には、密封面側に回転軸の軸と直交するように撥水性の材料で形成された円板を、シールカバー側にシールカバー側面に弾性的に押圧するリップシールを設け、シールカバーの内周面と対峙するように延びた静止側密封要素の円環部分に軸方向に摺動して作動する作動用Oリングを設け、リップシールと作動用Oリングとで遮蔽された空間内に位置して、静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材および静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンを設けることを特徴としている。
第1の特徴により、密封面から漏出する被密封流体は、静止側密封要素の外周部の密封面側に位置する円板により遮られるので係止ピンおよび付勢部材のところまでは回り込みにくくなり、漏出した被密封流体が円板を回り込んだとしても、リップシールでシールされるので、係止ピンおよび付勢部材のところに浸入することが防止される。したがって、長時間の運転において、漏出した被密封流体が密封面近傍の部材表面に付着して団子状になるような場合においても、密封要素の正常な動作が妨げられることはない。
【0011】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第2に、第1の特徴において、静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材をスプリングにより形成し、該スプリングをシールカバーに形成されたスプリング穴内に装着し、静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンをシールカバーにねじ込みまたは打ち込みにより固定することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第3に、第1または第2の特徴において、静止側密封要素または回転側密封要素の密封面側に形成されるノーズの高さが3〜6mmであることを特徴としている。
第3の特徴により、密封面における摺動熱の発散を良好にすることができる。
【0013】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第4に、第1ないし第3のいずれかの特徴において、静止側密封要素と回転側密封要素との密封面の幅が0.5±0.2mmの範囲内に形成されていることを特徴としている。
第4の特徴により、密封面の液膜の厚さがごく小さくなり、漏出する被密封流体の量を少なく抑えることができる。
【0014】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第5に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれテーパ面を形成し、各テーパ面の角度を密封面を基準として30〜45°の範囲に形成することを特徴としている。
第5の特徴により、密封面の外周側部分に大きな開口空間を形成することができ、密封面から漏出した被密封流体が下方に落下し易くなる。
【0015】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第6に、第5の特徴において、静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれ形成された各テーパ面に撥水性材料のコーティングを施すことを特徴としている。
第6の特徴により、密封面から漏出した被密封流体はメイティングリングおよびシールリングの密封面近傍に付着しにくくなる。
【0016】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第7に、第1ないし第6のいずれかの特徴において、静止側密封要素の円環部分に設けられた作動用Oリングの表面または作動用Oリングと摺接するシールカバー内周面に撥水性材料のコーティングを施すことを特徴としている。
第7の特徴により、作動用Oリング近傍において漏出した被密封流体の付着がしにくくなり、漏出した被密封流体の固着による作動性の低下を防止できるので、密封性の低下も防止できることとなる。
【0017】
また、本発明の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、第8に、第1ないし第7のいずれかの特徴において、密封面の外周側には遮蔽物を設けないことを特徴としている。
第8の特徴により、密封面からの漏出した被密封流体が付近に付着して固着するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)静止側密封要素の外周部には、密封面側に回転軸の軸と直交するように撥水性の材料で形成された円板を、シールカバー側にシールカバー側面に弾性的に押圧するリップシールを設け、シールカバーの内周面と対峙するように延びた静止側密封要素の円環部分に軸方向に摺動して作動する作動用Oリングを設け、リップシールと作動用Oリングとで遮蔽された空間内に位置して、静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材および静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンを設けることにより、長時間の運転において、漏出した被密封流体が密封面近傍の部材表面に付着して団子状になるような場合においても、密封要素の正常な動作が妨げられることはないので、軸方向振動の追随性が優れ、密封面の摩耗を抑えることができ、密封面の面幅の拡大も防止することができ、長期間にわたる密封性を保持することができる。
(2)静止側密封要素または回転側密封要素の密封面側に形成されるノーズの高さを3〜6mmとすることにより、密封面における摺動熱の発散を良好にすることができる。
(3)静止側密封要素と回転側密封要素との密封面の幅が0.5±0.2mmの範囲内に形成することにより、密封面の液膜の厚さがごく小さくなり、漏出する被密封流体の量を少なく抑えることができる。
【0019】
(4)静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれテーパ面を形成し、各テーパ面の角度を密封面を基準として30〜45°の範囲に形成することにより、密封面の外周側部分に大きな開口空間を形成することができ、密封面から漏出した被密封流体の下方への落下を容易にすることができる。
(5)静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれ形成された各テーパ面に撥水性材料のコーティングを施すことにより、密封面から漏出した被密封流体がメイティングリングおよびシールリングの密封面近傍に付着することを防止することができる。
(6)静止側密封要素の円環部分に設けられた作動用Oリングの表面または作動用Oリングと摺接するシールカバー内周面に撥水性材料のコーティングを施すことにより、作動用Oリング近傍において漏出した被密封流体の付着がしにくくなり、漏出した被密封流体の固着による作動性の低下を防止できるので、密封性の低下も防止できる。
(7)密封面の外周側には遮蔽物を設けないことにより、密封面から漏出した被密封流体が付近に付着して固着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置の全体を説明する正面断面図である。
【図2】従来の静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置の全体を説明する正面断面図である。
図1において、参照符号1は、高粘度の被密封流体または大気に接触すると粘度が増して固化する被密封流体を扱う機器、例えば、ポンプ等における軸封部のハウジング、参照符号2はハウジング1に装着されるシールカバーで、図中左側が機内側、図中右側が大気側(機外側)である。
【0023】
シールカバー2は、金属からなる環状体の形状をしており、ボルト3でハウジング1に固定され、シールカバー2の内周には機内の回転部材を回転駆動させる回転軸4が、その軸心Oの周りに回転可能な状態で挿通されている。ハウジング1とシールカバー2との接合面にはOリング5が装着され、両者の間が密封されている。
【0024】
シールカバー2と回転軸4との軸周空間には、回転側密封要素6と静止側密封要素7の密封面8が互いに密接摺動される接触式メカニカルシールとしての構造を有する静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置が装着されている。
回転軸4の外周面には断面L字状をした円環状のカラー9がそのフランジ部10に螺合したセットスクリュー11により固定されている。回転軸4の外周面とカラー9の外周面との間にはOリング12が装着されている。
【0025】
回転側密封要素6であるところのメイティングリング13が、カラー9に外挿されるともにカラー9のフランジ部10に背面を支持され、フランジ部10に固着されたノックピン14によりカラー9に保持されている。カラー9の外周面とメイティングリング13の内周面との間はOリング15により密封されている。
【0026】
一方、静止側密封要素7であるところのシールリング16がメイティングリング13に対向するようにして回転軸4の外周面と間隙を有して外挿され、シールカバー2に固着された係止ピン17を介して回り止めされ軸方向に移動可能な状態でシールカバー2に装着されている。シールリング16は、シールカバー2の側面に等配に複数個設けられたスプリング穴18に装着されたコイルスプリング19によって軸方向に付勢され、メイティングリング13と互いに密接摺動する密封面8を構成している。係止ピン17は、シールリング16の回り止めを行うものであって、本例においては図1に示すようなノックピンを使用している。
密封面8と反対側に位置するシールリング16の後部には、図1に示すようにシールカバー2の内周面と対峙するように延びた円環部分20が設けられ、該円環部分20には、シールカバー2の内周面と円環部分20の外周面との間で軸方向に摺動して作動する作動用Oリング21が設けられている。
【0027】
メイティングリング13は、例えば、超硬合金、炭化珪素、カーボン、その他のセラミックスなどの材料で環状に形成されたものであり、その外側に嵌合する金属製のリテーナ22により保持されている。メイティングリング13の密封端面23は回転軸Oに直交する環状面をしており、その外周側はリテーナ22の一端まで続くテーパ面24を形成している。テーパ面24の角度θmは密封面8を基準として30〜45°の範囲に形成されている。
【0028】
シールリング16は、例えば、超硬合金、炭化珪素、カーボン、その他のセラミックスなどの材料で環状に形成されたものであり、その外側に嵌合した金属製のリテーナ25により保持されている。シールリング16の密封面側には、先端側にいくにつれ幅の狭い断面形状を有する環状のノーズ26が突出形成されており、該ノーズ26の高さは3〜6mmの範囲に設定されている。このように、ノーズ26を設けその高さを3〜6mmと高くすることにより、密封面における摺動熱の発散を良好にしている。そのため、密封面を冷却するためのフラッシングが不要となる。
また、ノーズ26はメイティングリングとの密封面に向けて断面積が小さくなっていき、密封端面27の幅は0.5±0.2mmの範囲に設定している。そのため、密封面8の面圧を高くすることができ、例えば、面圧を1MPaを越える高面圧にすることも可能である。このように、密封面8の面圧を高圧とすることにより、密封面8の液膜の厚さがごく小さくなり、漏出した被密封流体の量を少なく抑えることができる。
【0029】
シールリング16のノーズ26の外周側には、ノーズ26の基端部からリテーナ25の一端まで続くテーパ面28が形成されている。テーパ面28の角度θsは密封面8を基準として30〜45°の範囲に形成される。
このように、シールリング16のテーパ面28とメイティングリング13のテーパ面24とは密封面8を基準として対称に位置することから、テーパ面24とテーパ面28とにより形成される密封面8の外周側部分の開口部は60〜90°の大きな開口空間を形成することになる。このため、密封面8からの漏出した被密封流体は下方に落下し易くなる。
また、メイティングリング13のテーパ面24およびシールリング16のテーパ面28には、PTFEなどの撥水性のある材料をコーティングする。これにより、密封面8からの漏出した被密封流体がメイティングリング13およびシールリング16の密封面8近傍に付着しにくくなる。
さらに、密封面8の外周側にはメカニカルシール部品の遮蔽物を一切設けず、全周にわたって開口させることが望ましい。
【0030】
シールリング16を保持するリテーナ25の外周部には、密封面8側に位置して環状溝29が形成され、該環状溝29に回転軸4の軸Oと直交するようにPTFEなどの撥水性の材料で形成された円板30を装着されている。また、リテーナ25の外周部のシールカバー2側に位置してシールカバー2側面に弾性的に押圧するリップシール31を装着する。リップシール31は、例えば、エラストマあるいは樹脂材料から製作され、その断面形状はV字型をした公知のものが用いられている。
【0031】
シールカバー2とシールリング16との間隙により形成された空間は、外周側においてリップシール31とシールカバー2の側面とで遮蔽され、内周側においてシールカバー2の内周面と作動用Oリング21とで遮蔽される。この遮蔽された空間内に位置して、シールリング16を密封面側に付勢するコイルスプリング19およびシールリング16を軸方向のみの移動を許容する係止ピン17が配置されている。
【0032】
密封面8から漏出した被密封流体は、シールリング16の密封面8側に位置する円板30により遮られて係止ピン17およびコイルスプリング19のところまでは回り込みにくくなる。漏出した被密封流体が円板30を回り込んだとしても、リップシール31でシールされるので、係止ピン17およびコイルスプリング19のところに漏出した被密封流体が浸入することは防止される。
【0033】
シールリング16の円環部分20に設けられた作動用Oリング21の表面または作動用Oリング21と摺接するシールカバー2の内周面には、PTFE等の撥水性のある材料をコーティングする。このため、作動用Oリング21近傍において漏出した被密封流体の付着がしにくくなり、漏出した被密封流体の固着による作動性の低下を防止できるので、密封性の低下も防止できることとなる。
【0034】
上記のように構成された静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置は、漏出した被密封流体による作動部の固着が防止できるので、軸方向振動の追随性が優れているので、密封面の摩耗を抑えることができ、密封面の面幅の拡大も防止することができ、長期間にわたる密封性を保持することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウジング
2 シールカバー
3 ボルト
4 回転軸
5 Oリング
6 回転側密封要素
7 静止側密封要素
8 密封面
9 カラー
10 フランジ部
11 セットスクリュー
12 Oリング
13 メイティングリング
14 ノックピン
15 Oリング
16 シールリング
17 係止ピン
18 スプリング穴
19 コイルスプリング
20 円環部分
21 作動用Oリング
22 リテーナ
23 密封端面
24 テーパ面
25 リテーナ
26 ノーズ
27 密封端面
28 テーパ面
29 環状溝
30 円板
31 リップシール



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールカバーとその内周に挿通された回転軸との間に静止側密封要素と回転側密封要素とが互いに密接摺動される接触式メカニカルシール構造を有する静止形アウトサイドシールに構成されたメカニカルシール装置において、静止側密封要素の外周部には、密封面側に回転軸の軸と直交するように撥水性の材料で形成された円板を、シールカバー側にシールカバー側面に弾性的に押圧するリップシールを設け、シールカバーの内周面と対峙するように延びた静止側密封要素の円環部分に軸方向に摺動して作動する作動用Oリングを設け、リップシールと作動用Oリングとで遮蔽された空間内に位置して、静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材および静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンを設けることを特徴とするメカニカルシール装置。
【請求項2】
静止側密封要素を密封面側に付勢する付勢部材をスプリングにより形成し、該スプリングをシールカバーに形成されたスプリング穴内に装着し、静止側密封要素の軸方向移動のみを許容する係止ピンをシールカバーにねじ込みまたは打ち込みにより固定することを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール装置。
【請求項3】
静止側密封要素または回転側密封要素の密封面側に形成されるノーズの高さが3〜6mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のメカニカルシール装置。
【請求項4】
静止側密封要素と回転側密封要素との密封面の幅が0.5±0.2mmの範囲内に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のメカニカルシール装置。
【請求項5】
静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれテーパ面を形成し、各テーパ面の角度を密封面を基準として30〜45°の範囲に形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のメカニカルシール装置。
【請求項6】
静止側密封要素および回転側密封要素の密封面側の外周側にそれぞれ形成された各テーパ面に撥水性材料のコーティングを施すことを特徴とする請求項5記載のメカニカルシール装置。
【請求項7】
静止側密封要素の円環部分に設けられた作動用Oリングの表面または作動用Oリングと摺接するシールカバー内周面に撥水性材料のコーティングを施すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のメカニカルシール装置。
【請求項8】
密封面の外周側には遮蔽物を設けないことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のメカニカルシール装置。





















【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−216489(P2010−216489A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60428(P2009−60428)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】