説明

メクイノールをベースにした皮膚科学的色素脱失組成物

本発明は、メクイノールを、例えばα−ヒドロキシ酸等のもう1種の色素脱失剤と共に生理学的に許容可能な媒体中に含む、皮膚のための色素脱失組成物に関し、さらにこれらの医薬上または美容上の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的に適用することにより使用して皮膚の色素を脱失させることができる、メクイノール(すなわち、4−ヒドロキシアニソール)とα−ヒドロキシ酸(すなわち、AHA)との組み合わせを含む新規な化粧品用組成物または皮膚科学的組成物に関する。本発明の組成物は、日焼け止め剤を含んでいてもよい。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着は、真皮のメラニン形成細胞において、銅タンパク質酵素チロシナーゼの影響下でチロシンの変換によりメラニンが合成されることにより起こる。
【0003】
したがって、皮膚の色素脱失効果は、メラニンを分解する化合物、またはチロシンのメラニンへの変換機構を遮断するチロシナーゼ阻害剤を使用することによって得られる。
【0004】
メクイノール(すなわち、4−ヒドロキシアニソール)は、これまで長い間、色素脱失活性を有する化合物として知られてきた(Brun R, Journal of the Society of Cosmetic Chemists(1960), 11, 571-9)。
【0005】
色素脱失剤としてのメクイノールの作用機序は、チロシナーゼの基質として作用することによるものである(Riley P., Journal of Pathology (1969), 97(2), 1185-91およびJournal of Pathology (1969), 97(2), 193-206)。
【非特許文献1】Brun R, Journal of the Society of Cosmetic Chemists(1960), 11, 571-9
【非特許文献2】Riley P., Journal of Pathology (1969), 97(2), 1185-91
【非特許文献3】Riley P., Journal of Pathology (1969), 97(2), 193-206
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クエン酸およびリンゴ酸は、従来、化粧品用組成物または医薬組成物の分野で、総組成物重量に対して0.01%未満という低い濃度でのキレート剤または酸化剤として知られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、驚くべきことに、メクイノールとα−ヒドロキシ酸との組み合わせが、メクイノールだけで得られるものよりも大幅に迅速でより効果的な色素脱失応答を得ることを、活性剤だけを使用する場合に必要とされる量より少ない量で可能にすることを見出した。
【0008】
2種の活性剤をより少ない量用いて得られるこの色素脱失活性の相乗作用は、色素脱失剤の使用に伴う有害な副作用(発赤および炎症)を顕著に低下させることも可能にする。
【0009】
したがって、本発明は、メクイノールと、少なくとも1種のα−ヒドロキシ酸とを、生理学的に許容可能な媒体中に含む、皮膚の色素脱失組成物に関する。
【0010】
用語「生理学的に許容可能な媒体」は、皮膚、粘膜、および/または外皮に適合する媒体を意味する。
【0011】
本発明を適用するα−ヒドロキシ酸は、線状、分枝状、または環状であってよく、さらに、飽和または不飽和であってよい。その炭素鎖の水素原子は、ハロゲン、または、炭素原子2個〜28個を含む、ハロゲン化されたアルキル、アシル、アシロキシ、アルコキシカルボニル、もしくはアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0012】
本発明で使用され得るα−ヒドロキシ酸は、1種またはそれ以上のヒドロキシル官能基を有するモノカルボン酸またはポリカルボン酸からなっていてよく、これらのヒドロキシル官能基の少なくとも1個は必ず前記酸のα位を占めている。
【0013】
好ましくは、本発明のα−ヒドロキシ酸は、炭素原子2個〜18個を含むα−ヒドロキシアルカン酸である。
【0014】
本発明で使用され得るα−ヒドロキシ酸として、特に、グリコール酸(すなわちα−ヒドロキシエタン酸)、乳酸(すなわちα−ヒドロキシプロパン酸)、リンゴ酸(すなわちヒドロキシブタン二酸)、酒石酸(すなわちジヒドロキシブタン二酸)、クエン酸、マンデル酸、α−ヒドロキシカプリル酸(すなわちα−ヒドロキシオクタン酸)、α−ヒドロキシヘキサン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、およびα−ヒドロキシオクタコサン酸が挙げられる。
【0015】
これらの酸は、組成物中に、遊離の酸の形態、および/またはこれらの関連する塩の形態、あるいはこれらの対応するエステルまたはアミドの形態、あるいは任意選択的に対応するラクチドの形態(分子の自己エステル化により得られる形態)で存在していてよい。
【0016】
塩は、公知の方法、例えば、α−ヒドロキシ酸を適切な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウム等)または有機塩基(例えば、トリエタノールアミンまたはアミノ酸(リシンまたはアルギニン)等)で中和することにより調製することができる。
【0017】
α−ヒドロキシ酸のエステルを使用する場合、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはオクチルのエステルであってよい。
【0018】
リンゴ酸、クエン酸、乳酸、またはグリコール酸を、本発明において有効なα−ヒドロキシ酸として使用することが好ましい。
【0019】
本発明の組み合わせを含む組成物を適用することにより、顕著な皮膚の脱色を得ることが可能になる。
【0020】
本発明はまた、メクイノールと、例えば、AHA等の少なくとも1種の色素脱失剤と、少なくとも1種の日焼け止め剤とを、生理学的に許容可能な媒体中に含む、皮膚の色素脱失組成物に関する。
【0021】
本発明の組成物は、有利には、組成物の総重量に対して0.0001重量%〜20重量%のメクイノール、および組成物の総重量に対して0.025重量%〜20重量%の色素脱失剤を含み、そして好ましくは、組成物の総重量に対して0.001重量%〜10重量%のメクイノールおよび組成物の総重量に対して0.05重量%〜10重量%の色素脱失剤をそれぞれ含む。
【0022】
本組成物はさらに、少なくとも一種の日焼け止め剤を、好ましくは組成物の総重量に対して0.001重量%〜30.00重量%の範囲の濃度で含んでいてよい。
【0023】
日焼け止め剤の非限定的な例としては、物理的日焼け止め剤(例えば、二酸化チタンおよび酸化亜鉛等)、および化学的日焼け止め剤(例えば、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸エチルヘキシル、サリチル酸オクチル、アボベンゾン、オキシベンゾン、およびドロメトリゾールトリシロキサン等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
本発明の1つの変形態様では、組成物は数種の日焼け止め剤を含んでいて良く、この場合において、各日焼け止め剤は、組成物の総重量に対して0.001重量%〜20重量%の範囲の濃度で添加することができる。
【0025】
本発明の組成物は、化粧品または医薬品中に通常用いられる任意の添加物(例えば、金属イオン封鎖剤、抗酸化剤、保存料、充填剤、電解質、湿潤剤、着色料、一般的な無機もしくは有機の酸または塩基、香料、エッセンシャルオイル、化粧品用活性剤、保湿剤、ビタミン類、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、自己日焼け(self-tanning)化合物、鎮静剤、および皮膚保護剤等)をさらに含んでいてもよい。当然ながら、当業者であれば、本発明の組成物の有利な特性が損なわれないか実質的に損なわれないように、この(これらの)任意の添加物の選択、および/またはその量の選択に注意を払うであろう。
【0026】
これらの添加物は、組成物の総重量に対して0.001重量%〜20重量%の割合で組成物中に存在していてよい。
【0027】
本発明の主題はまた、医薬製品としての、上述した医薬組成物である。
【0028】
本発明の主題はまた、化粧品用組成物である。
【0029】
本発明の組み合わせを含む組成物は、局所的な適用に通常用いられる任意のガレン剤の形態、例えば、ローションもしくは血清タイプの溶液、ゲル、もしくは分散液の形態、ミルク様の半流動稠度のエマルション〔脂肪相を水性相に分散することにより得られるもの(O/W)もしくはその逆のもの(W/O)〕の形態、またはクリームもしくはゲル様の、滑らかな半固形もしくは固形の稠度の分散液もしくはエマルションの形態、あるいはイオン性および/もしくは非イオン性タイプのマイクロエマルション、マイクロカプセル、微粒子、もしくは小胞分散液の形態であってよい。これらの組成物は、通常の方法で調製することができる。
【0030】
公知の方法により、本発明の化粧品用組成物または皮膚科学的組成物は、化粧品または皮膚科学製品において一般的な補助剤(adjubant)(例えば、乳化剤、親水性または脂肪親和性のゲル化剤、酸化チタンおよびα−ヒドロキシ酸以外の親水性または脂肪親和性の活性剤、保存料、抗酸化剤、香料、充填剤、スクリーニング剤、および染料等)を含んでいてよい。これらのさまざまな補助剤の量は、化粧品および/または皮膚科学において従来用いられる量であり、例えば、組成物の総重量に対して0.01重量%〜20重量%である。これらの補助剤は、その性質次第で、脂肪相、水性相、および/または脂質小胞中に導入することができる。
【0031】
本発明はまた、上述した本発明の組成物の医薬品および化粧品における使用に関する。
【0032】
本発明の組成物は、特に、色素沈着障害の処置および予防に好適である。とりわけ、本発明の組成物は、色素沈着過剰障害(例えば黒皮症、褐色斑、黒子、老年性黒斑、白斑、そばかす、擦過傷・火傷・瘢痕・皮膚疾患・接触性アレルギーによる後炎症性色素沈着等)、母斑、遺伝的原因による色素沈着過剰症、代謝もしくは薬物に起因する色素沈着過剰症、メラノーマ、あるいは他のあらゆる色素沈着性病変(特に、皮膚または外皮の光誘発性老化または経時的老化により誘発される病変)の処置および予防に適している。
【0033】
より優先的には、本発明の組成物は、黒皮症の処置に好適である。
【0034】
本発明の組成物は、美容の分野において、とりわけ太陽光の有害な影響からの保護、とり わけ色素沈着痕に対して応用することができる。
【0035】
本発明はさらに、メクイノールと少なくとも1種の色素脱失剤とを含む組成物を皮膚および/またはその外皮に適用することを特徴とする、皮膚を美しくし、かつ/あるいはその表面外観を高めるための非治療的美容処理方法に関する。
【0036】
メクイノールと少なくとも1種のα−ヒドロキシ酸とは、前記組成物が適用されるとすぐに皮膚の脱色が視認可能となるような有効量で用いる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下の配合例により、本発明の組成物が例証されるが、本発明の範囲が制限されることはない。
【実施例】
【0038】
以下の組成物(実施例1〜6)において、種々の成分の割合は、組成物の総重量に対する重量パーセントで表されている。
【0039】
[実施例1]
【表1】

【0040】
[実施例2]
【表2】

【0041】
[実施例3]
【表3】

【0042】
[実施例4]
【表4】

【0043】
[実施例5]
【表5】

【0044】
[実施例6]
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メクイノール(すなわち4−ヒドロキシアニソール)と、少なくとも1種のα−ヒドロキシ酸とからなる色素脱失活性を有する組合せを、組成物の総重量に対して0.025重量%から20重量%までの濃度で生理学的に許容可能な媒体中に含む、組成物。
【請求項2】
前記α−ヒドロキシ酸がリンゴ酸、クエン酸、乳酸、またはグリコール酸であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がさらに、少なくとも1種の日焼け止め剤を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
医薬製品としての、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が化粧品用組成物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
色素沈着障害の予防または処置のための医薬品製剤の製造のための、メクイノールとα−ヒドロキシ酸とを含む皮膚の色素脱失組成物の使用。
【請求項7】
前記色素沈着障害が黒皮症であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
メクイノールとα−ヒドロキシ酸とを生理学的に許容可能な媒体中に含む皮膚の色素脱失組成物の、太陽光の有害な影響を防ぐための、美容的使用。
【請求項9】
メクイノールとα−ヒドロキシ酸とを生理学的に許容可能な媒体中に含む皮膚の色素脱失組成物の、皮膚の脱色剤としての、美容的使用。
【請求項10】
メクイノールとα−ヒドロキシ酸とを含む組成物を皮膚および/またはその外皮に適用することを特徴とする、皮膚を美しくし、かつ/あるいはその表面外観を高めるための、非治療的美容処理方法。

【公表番号】特表2007−537217(P2007−537217A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512292(P2007−512292)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001212
【国際公開番号】WO2005/115323
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】